説明

薄膜結晶の製造方法、有機薄膜トランジスタの製造方法

【課題】簡単な方法でドメイン境界のほとんどない大きなドメインの薄膜結晶を形成する薄膜結晶の製造方法、有機薄膜トランジスタの製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】基板の上の所望の領域に薄膜結晶を形成する薄膜結晶の製造方法において、所望の領域に接する第1の隔壁層を基板の上に形成する工程と、所望の領域に有機半導体材料を含む溶液を滴下する工程と、溶液を乾燥させる工程と、をこの順で行うことを特徴とする薄膜結晶の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜結晶の製造方法、有機薄膜トランジスタの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
薄膜トランジスタ(TFT)は、特に大面積表示装置の駆動素子として利用されている。現在実用化されているTFTはa−Siやpoly−Siといったシリコン系の無機材料で製造されているが、このような無機TFTの製造工程においては、真空プロセスや高温プロセスを行うため高価な設備や複雑な工程が必要である。
【0003】
そこで近年、有機材料を用いたTFT(有機TFT)技術の研究開発が盛んに行なわれている。(特許文献1、非特許文献1等参照)。有機材料は無機材料と比較して材料の選択幅が大きい。また、有機TFTの製造工程においては、真空プロセス、高温プロセスの代わりに、印刷、塗布といった生産性に優れたプロセスを用いることができるので、製造コストが抑えられる。また耐熱性のない、例えばプラスティックフィルム基板等にも形成することができる可能性があり(非特許文献2参照)、多方面への応用が期待されている。
【0004】
一般にTFTにおいては、ある距離をおいて配置された2つの電極(ソース電極、ドレイン電極)をまたぐように半導体層が配置される。基板上に先に半導体層が形成され、あとから電極が形成される場合をトップコンタクト型、先に電極が形成され、あとから半導体層が形成される場合をボトムコンタクト型と呼んでいるが、いずれにしても半導体層は電極が形成される場所によって定められた所定の位置に形成される必要がある。
【0005】
有機半導体層の形成方法には、有機材料を真空中で加熱し、蒸発させて基板に堆積することで形成する蒸着法や、溶媒に有機材料を溶かし、この液を基板に塗布し、溶媒を乾燥させることで、半導体層を形成する塗布法がある。後者には、液体を基板に載せて基板を高速回転させることで、液体膜を基板全面に付着させるスピンコート法や、基板の所定の位置にのみ液滴を滴下する方法、例えばインクジェット法やディスペンサ法等がある。
【0006】
特に液滴を所定位置のみに滴下する方法では、材料を無駄なく利用することができ、他の方法に必要な不要部分の材料除去プロセスが必要なくなるので、工程を簡略にできる。
【0007】
例えば、基板上に形成された隔壁層で区画された画素部に有機半導体材料をインクジェット法で塗布し、有機半導体の非晶質薄膜を形成する方法が提案されている(例えば特許文献2参照)。
【0008】
また、液滴を滴下する方法はこのように利点が多いので、有機半導体層だけではなく電極形成への応用も検討されているが、液滴を滴下する方法では微小なパターンニングは困難である。そのため、例えば、液滴を塗布する位置の周辺に隔壁構造を設け、滴下した液体の移動を防ぐことによりソース電極、ドレイン電極を形成する方法が提案されている(例えば特許文献3参照)。
【非特許文献1】Advanced Material誌2002年第2号99頁(レビュー)
【非特許文献2】SID‘02 Digest p57
【特許文献1】特開平10ー190001号公報
【特許文献2】特開2006ー66294号公報
【特許文献3】特開2006ー165234号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来、特許文献2に開示されているように半導体層の形成に塗布法を用いる場合には、半導体材料として高分子系材料が用いられてきた。しかしながら、塗布法を用いることのできる可溶性の高分子有機半導体材料はキャリア移動度が小さいという問題がある。そのため最近、分子間の電荷移動がよりスムーズで、高い移動度が期待できる低分子結晶系材料を、TFTの半導体層として用いることが検討され始めている。低分子結晶系材料から薄膜結晶を形成すると高移動度の半導体層を形成することができる。
【0010】
このような低分子結晶系材料から薄膜結晶を形成する際に、もし薄膜結晶が多くのドメインを持っていると、ドメインの境界で電荷トラップが発生し、電荷移動が妨げられ、移動度が低下するという問題がある。したがって、低分子結晶系材料からドメイン境界のほとんどない大きなドメインの薄膜結晶を形成することが望ましい。
【0011】
大きなドメインの薄膜結晶を得るには、液体の乾燥速度を落として結晶をゆっくり成長させる必要がある。このため、従来は溶媒に沸点温度の高いものが用いられることがあるが、塗布してから乾燥までの時間が長いため、基板の傾斜や、外部振動、溶媒蒸発に伴う気流発生などの影響により液滴が移動してしまう問題がある。
【0012】
液滴の移動は、例えば特許文献2、3に開示されているように隔壁を設ければ防ぐことができる。しかしながら、隔壁を設けて隔壁の内側に液滴を滴下し、時間をかけて乾燥させても結晶成長の起点となる種結晶が複数発生する場合がある。種結晶が複数発生すると、それぞれの種結晶から結晶が成長するため、複数の結晶ドメインが発生し、ドメイン境界によって電荷の移動が妨げられ、移動度が低下する、という課題がある。
【0013】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、簡単な方法でドメイン境界のほとんどない大きなドメインの薄膜結晶を形成する薄膜結晶の製造方法、有機薄膜トランジスタの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
1.
基板の上の所望の領域に薄膜結晶を形成する薄膜結晶の製造方法において、
特定部分を除いて前記所望の領域の周囲を一定の厚みで囲む第1の隔壁層を前記基板の上に形成する工程と、
前記所望の領域に有機半導体材料を含む溶液を滴下する工程と、
前記溶液を乾燥させる工程と、をこの順で行うことを特徴とする薄膜結晶の製造方法。
【0015】
2.
前記特定部分を除いて前記所望の領域の周囲を一定の厚みで囲む第1の隔壁層を前記基板の上に形成する工程において、
前記所望の領域の全周を一定の厚みで囲む第1の隔壁層を前記基板の上に形成する工程の後、
前記第1の隔壁層の前記特定部分を圧接して前記第1の隔壁層より厚みが薄い段差部を形成する工程を行うことを特徴とする1に記載の薄膜結晶の製造方法。
【0016】
3.
前記所望の領域に有機半導体材料を含む溶液を滴下する工程において、
前記有機半導体材料を含む溶液を前記段差部を覆うまで滴下することを特徴とする2に記載の薄膜結晶の製造方法。
【0017】
4.
前記所望の領域に接する第1の隔壁層を前記基板の上に形成する工程を行った後、
前記所望の領域に有機半導体材料を含む溶液を滴下する工程の前に、
前記第1の隔壁層の表面に親液性を有する親液層を形成する工程を行うことを特徴とする1乃至3の何れか1項に記載の薄膜結晶の製造方法。
【0018】
5.
前記第1の隔壁層は親液性の材料で形成されていることを特徴とする1乃至3の何れか1項に記載の薄膜結晶の製造方法。
【0019】
6.
前記所望の領域の周囲を特定部分を除いて一定の厚みで囲む第1の隔壁層を前記基板の上に形成する工程を行った後、
前記所望の領域に有機半導体材料を含む溶液を滴下する工程の前に、
前記所望の領域の周囲の前記第1の隔壁層が形成されていない部分を一定の厚みで囲む第2の隔壁層を前記基板の上に形成する工程を行うことを特徴とする1に記載の薄膜結晶の製造方法。
【0020】
7.
前記第2の隔壁層の厚みは前記第1の隔壁層の厚みより薄いことを特徴とする6に記載の薄膜結晶の製造方法。
【0021】
8.
前記第1の隔壁層は撥液性の材料で形成され、前記第2の隔壁層は親液性の材料で形成されていることを特徴とする6または7に記載の薄膜結晶の製造方法。
【0022】
9.
基板の上に、ソース電極、ドレイン電極、前記ソース電極と前記ドレイン電極とを連結する有機半導体層、ゲート電極及び前記有機半導体層と前記ゲート電極との間にゲート絶縁膜を有する有機薄膜トランジスタの製造方法において、
前記所望の領域は、前記ソース電極、前記ドレイン電極、および前記ソース電極と前記ドレイン電極に挟まれた部分であり、
基板の最上層としてソース電極とドレイン電極が設けられている基板を準備する工程と、
前記基板の上に1乃至8の何れか1項に記載の薄膜結晶の製造方法を用いて前記有機半導体層の薄膜結晶を形成する工程と、をこの順で行うことを特徴とする有機薄膜トランジスタの製造方法。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、薄膜結晶を形成する所望の領域の周囲に隔壁層を設け、所望の領域に滴下した有機半導体材料を含む溶液を所望の領域に留めるとともに、滴下した液体の一部分を早く乾燥させるので、その部分から結晶が成長し、種結晶が複数発生することがない。よって、簡単な方法でドメイン境界のほとんどない大きなドメインの薄膜結晶を形成する薄膜結晶の製造方法、有機薄膜トランジスタの製造方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、実施形態により本発明を詳しく説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0025】
次に、本発明に係わる有機半導体層10を薄膜結晶として成膜する有機薄膜トランジスタ(以下有機TFTと記す。)の製造方法を説明する。図1は本発明に係わる有機TFTの基板の最上層としてソース電極とドレイン電極が設けられている基板を準備する工程を説明する説明図である。図2は本発明に係わる有機TFTの製造方法の第1の実施形態を説明する説明図である。
【0026】
図1、図2を用いて、基板1上にゲート電極2を設け、更にゲート絶縁層7、ソース電極8とドレイン電極9を設けた後、有機半導体層10を形成したボトムゲート、ボトムコンタクト型の有機TFT素子を形成する場合の製造方法について順を追って説明する。図1では各実施形態に共通する第1の隔壁層20を基板1の上に形成する工程までを説明する。
【0027】
図1(1−b)、図1(2−b)、図1(3−b)は、基板1を上面から見た平面図である。図1(1−a)、図1(2−a)、図1(3−a)は、それぞれ基板1を図1(1−b)、図1(2−b)、図1(3−b)の断面A−A’で切断した断面図である。
【0028】
本発明に係る有機TFTの製造方法の一例として、次の工程S1〜S3を説明する。工程S1〜S3は本発明の基板の最上層としてソース電極とドレイン電極が設けられている基板を準備する工程である。
S1・・・・・ゲート電極2を形成する工程。
S2・・・・・ゲート絶縁層7を形成する工程。
S3・・・・・ソース電極8、ドレイン電極9を形成する工程。
【0029】
以下、各工程について順に説明する。
【0030】
S1・・・・・ゲート電極2を形成する工程。
【0031】
図1(1−a)、図1(1−b)に示すように、基板1上にゲート電極2を形成する。本発明において、基板1は特に材料を限定されない。例えばポリイミドやポリエチレンテフタノール(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエステルスルホン(PES)、ガラスなどを用いることができる。
【0032】
ゲート電極2には各種金属薄膜を利用できる。例えばAl、Cr、Au、Ag等の低抵抗金属材料やこれら金属の積層構造、また、金属薄膜の耐熱性向上、支持基板への密着性向上、欠陥防止のために他の材料のドーピングしたものを用いることができる。また、ITO、IZO、SnO、ZnOなどの透明電極を用いることもできる。製造方法は、目的の形状にパターニングすることのできるマスク蒸着法、フォトリソグラフィー法、各種印刷法が利用できる。
【0033】
S2・・・・・ゲート絶縁層7を形成する工程。
【0034】
図1(2−a)、図1(2−b)に示すように、ゲート絶縁層7を形成する。
【0035】
ゲート絶縁層7は、例えば、蒸着、スパッタリング、CVD法、大気圧プラズマ法などのドライプロセスやスピンコート法、インクジェット法などのウェットプロセスで形成する。ゲート絶縁層7としては、特に材料を限定されず種々の絶縁膜を用いることができる。無機材料では酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化チタン等の無機酸化物、窒化ケイ素、窒化アルミニウム等の無機窒化物が利用できる。有機材料ではポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリレート、光ラジカル重合系、光カチオン重合系の光硬化性樹脂、あるいはアクリロニトリル成分を含有する共重合体、ポリビニルフェノール、ポリビニルアルコール、ノボラック樹脂、およびシアノエチルプルラン等が利用できる。
【0036】
S3・・・・・ソース電極8、ドレイン電極9を形成する工程。
【0037】
図1(3−a)、図1(3−b)に示すように、ソース電極8、ドレイン電極9を形成する。
【0038】
ソース電極8、ドレイン電極9には有機半導体層10との電気的コンタクト性がよい材料を用いる。例えばペンタセンに対してはAu、ITO等を利用することが好ましい。これらの材料を真空蒸着やスパッタリング等の方法で製膜した後、フォトリソグラフィー法で目的の形状にパターニングする。あるいは、各種印刷法により直接ソース電極8、ドレイン電極9のパターンを形成してもよい。
【0039】
このようにして基板の最上層としてソース電極8とドレイン電極9が設けられている基板を準備する。
【0040】
次に、図2を用いて第1の実施形態における工程S1,S2、S3以降の工程について説明する。
【0041】
図2(1−b)〜図2(5−b)は、基板1を上面から見た平面図である。図2(1−a)〜図2(5−a)は、それぞれ基板1を図2(1−b)〜図2(5−b)の断面A−A’で切断した断面図である。
【0042】
本発明に係る有機TFTの製造方法の一例として、図1で説明した本発明の基板の最上層としてソース電極とドレイン電極が設けられている基板を準備する工程以降の工程S4〜S7を説明する。
【0043】
有機TFTの場合、薄膜結晶の有機半導体層10を形成する所望の領域は、ソース電極8、ドレイン電極9、および前記ソース電極8と前記ドレイン電極9に挟まれた部分、すなわちチャネル部11である。
S4・・・・・特定部分を除いて所望の領域の周囲を一定の厚みで囲む第1の隔壁層20を基板1の上に形成する工程。
S5・・・・・所望の領域の周囲の前記第1の隔壁層が形成されていない部分を一定の厚みで囲む第2の隔壁層を前記基板の上に形成する工程。
S6・・・・・所望の領域に有機半導体材料を含む溶液を滴下する工程。
S7・・・・・有機半導体材料を含む溶液を乾燥させる工程。
【0044】
以下、各工程について順に説明する。
【0045】
S4・・・・・第1の隔壁層20を基板1の上に形成する工程。
【0046】
図2(1−a)、図2(1−b)に示すように、所望の領域の一部であるドレイン電極9を囲むように第1の隔壁層20を形成する。特定部分はソース電極8、チャネル部11である。
【0047】
本発明において、第1の隔壁層20は絶縁性を有する材料であれば特に限定されない。例えば、無機材料では酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化チタン等の無機酸化物、窒化ケイ素、窒化アルミニウム等の無機窒化物が利用できる。有機材料ではポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリレート、光ラジカル重合系、光カチオン重合系の光硬化性樹脂が利用できる。あるいはポリメチルメタクリレート(PMMA)などの熱可塑性樹脂、アクリロニトリル成分を含有する共重合体、ポリビニルフェノール、ポリビニルアルコール、ノボラック樹脂、およびシアノエチルプルラン等が利用できる。
【0048】
第1の隔壁層20は、例えば、蒸着、スパッタリング、CVD法、大気圧プラズマ法などのドライプロセスやスピンコート法などのウェットプロセスでソース電極8とドレイン電極9が設けられている基板1の最上層に形成する。その後、フォトリソグラフィー法などを用いて図2(1−a)、図2(1−b)に示す目的の形状にパターンニングする。あるいは、各種印刷法により直接第1の隔壁層20のパターンを形成しても良い。
【0049】
第1の隔壁層20の厚みt1は図2(1−a)のようにドレイン電極9の厚みより厚くする。ドレイン電極9の厚みは製法によって異なるが一般に10nm〜1μm程度であり、第1の隔壁層20の厚みt1はドレイン電極9より厚い100nm〜10μmの範囲で形成することが望ましい。
【0050】
S5・・・・・第2の隔壁層21を基板1の上に形成する工程。
【0051】
図2(2−a)、図2(2−b)に示すように、所望の領域の特定部分であるソース電極8、チャネル部11を囲むように第2の隔壁層21を形成する。本実施形態では、第1の隔壁層20の厚みt1、第2の隔壁層21の厚みt2とするとt1>t2となるよう第2の隔壁層21を形成する。また、第2の隔壁層21の厚みt2は図2(2−a)のようにソース電極8の厚みより厚くする。ソース電極8の厚みは10nm〜1μm程度であり、第2の隔壁層21の厚みt2はソース電極8より厚い100nm〜10μmの範囲で形成することが望ましい。
【0052】
なお、本実施形態では第1の隔壁層20をドレイン電極9側に、第2の隔壁層21をソース電極8に設けているが、特に限定されるものではなく何れの側に設けても良い。
【0053】
第2の隔壁層21には、第1の隔壁層20と同様の絶縁性を有する材料が利用できる。
【0054】
また、第2の隔壁層21は、例えば、蒸着、スパッタリング、CVD法、大気圧プラズマ法などのドライプロセスでソース電極8とドレイン電極9が設けられている基板1の最上層に形成する。その後、フォトリソグラフィー法などを用いて図2(2−a)、図2(2−b)に示す目的の形状にパターンニングする。あるいは、各種印刷法により直接第2の隔壁層21のパターンを形成しても良い。
【0055】
S6・・・・・所望の領域に有機半導体材料を含む溶液を滴下する工程。
【0056】
図2(3−a)、(3−b)ではインクジェット法を用いて、所望の領域であるチャネル部11とソース電極8、ドレイン電極9に向けて有機半導体材料溶液42を滴下する例を図示している。図2(3−b)のように所望の領域は第1の隔壁層20と第2の隔壁層21に周囲を囲まれている。有機半導体材料溶液42は、チャネル部11の真上に位置する図示せぬインクジェットのノズルから滴下される有機半導体材料を含む溶液である。本実施形態ではインクジェット法の例を説明するが、液体の滴下法としては例えばディスペンサ法を用いても良い。
【0057】
有機半導体材料溶液42に用いる低分子結晶形の有機半導体材料の代表例としては、例えばペンタセン、TIPSペンタセンなどがある。溶媒としては結晶を大きく成長させるため乾燥の遅い高沸点溶媒を用いることが望ましい。例えばテトラヒドロナフタレン、o−ジクロロベンゼン、シクロペンタノンなどを利用できる。
【0058】
図2(4−a)、(4−b)は有機半導体材料溶液42を滴下した直後の基板1の状態を図示している。このように滴下した直後の有機半導体材料溶液42が第1の隔壁層20を越えず、第2の隔壁層21を少し越える程度の量の有機半導体材料溶液42を滴下する。
【0059】
S7・・・・・有機半導体材料を含む溶液を乾燥させる工程。
【0060】
図2(4−a)、(4−b)に示す状態の基板1を常温放置し、自然乾燥により有機半導体材料溶液42の溶媒を乾燥させる。図2(4−a)に示すように有機半導体材料溶液42が第2の隔壁層21を越えている部分は浅く、その部分から先に溶媒が全て乾燥し結晶化が始まる。一方、第1の隔壁層20と有機半導体材料溶液42とが接する部分は深く、なかなか乾燥しない。本実施形態では、第2の隔壁層21の側から溶媒が乾燥し結晶化が始まるので、一つの種結晶から大きな結晶ドメインを成長させることができる。
【0061】
このようにして、有機半導体材料溶液42の溶媒が乾燥すると、図2(5−a)、(5−b)のように有機半導体層10の薄膜結晶が形成できる。
【0062】
なお、本実施形態の第1の隔壁層20を撥液性に、第2の隔壁層21を親液性にするとさらに有機半導体材料溶液42の結晶化を促進することができる。有機半導体材料溶液42は、親液性のある材料で形成された第2の隔壁層21の上ではより広く薄く濡れ広がるので短時間で溶媒が蒸発し結晶化が促進される。また、有機半導体材料溶液42は、撥液性のある材料で形成された第1の隔壁層20には濡れ広がらないため溶媒の蒸発が遅れる。そのため、第2の隔壁層21の側で発生した種結晶を、第1の隔壁層20側で大きく成長させることができる。
【0063】
撥液性材料としては例えばフッ素系樹脂を、親液性材料としては例えばSiO2を利用できる。
【0064】
また、本実施形態では第1の隔壁層20の厚みt1より第2の隔壁層21の厚みt2を薄くして第2の隔壁層21の表面に有機半導体材料溶液42が濡れ広がるようにしたが、第1の隔壁層20を撥液性、第2の隔壁層21を親液性にすると第1の隔壁層20の厚みt1と第2の隔壁層21の厚みt2が同じ場合でも同様の効果が得られる。
【0065】
工程S7をもって有機TFTが完成する。
【0066】
次に、図3を用いて第2の実施形態における工程について説明する。
【0067】
図3(1−b)〜図3(4−b)は、基板1を上面から見た平面図である。図3(1−a)〜図3(4−a)は、それぞれ基板1を図3(1−b)〜図3(4−b)の断面A−A’で切断した断面図である。図3(3−a−BB’)は基板1を図3(3−b)の断面B−B’で切断した断面図である。
【0068】
本発明に係る有機TFTの製造方法の一例として、図1で説明した本発明の基板の最上層としてソース電極とドレイン電極が設けられている基板を準備する工程以降の工程S4、S6、S7を説明する。第1の実施形態と同じ工程には同じ工程番号を付し、説明を省略する。
【0069】
有機TFTの場合、薄膜結晶の有機半導体層10を形成する所望の領域は、ソース電極8、ドレイン電極9、および前記ソース電極8と前記ドレイン電極9に挟まれた部分、すなわちチャネル部11である。第2の実施形態では第2の隔壁層21を形成せず、第1の隔壁層20を所望の領域の大部分に接し、一部分が所望の領域に接しないようにパターンニングして形成する。
S4・・・・・特定部分を除いて所望の領域の周囲を一定の厚みで囲む第1の隔壁層20を基板1の上に形成する工程。
S6・・・・・所望の領域に有機半導体材料を含む溶液を滴下する工程。
S7・・・・・有機半導体材料を含む溶液を乾燥させる工程。
【0070】
以下、各工程について順に説明する。
【0071】
S4・・・・・特定部分を除いて所望の領域の周囲を一定の厚みで囲む第1の隔壁層20を基板1の上に形成する工程。
【0072】
図3(1−a)、図3(1−b)に示す形状に第1の隔壁層20を形成する。第2の実施形態では、図3(1−b)のソース電極8側のA−A’で示す部分は、特定部分であり第1の隔壁層20が凹形状になっていてソース電極8と接していない。そのため、図3(1−a)のA−A’の断面図のようにドレイン電極9の上には第1の隔壁層20があるが、ソース電極8の上には第1の隔壁層20が無い。
【0073】
第1の隔壁層20に用いる材料は、第1の実施形態と同様の材料が利用できる。
【0074】
第1の隔壁層20は、例えば、蒸着、スパッタリング、CVD法、大気圧プラズマ法などのドライプロセスやスピンコート法などのウェットプロセスでソース電極8とドレイン電極9が設けられている基板1の最上層に形成する。その後、フォトリソグラフィー法などを用いて図3(1−a)、図3(1−b)に示す目的の形状にパターンニングする。あるいは、各種印刷法により直接第1の隔壁層20のパターンを形成しても良い。
【0075】
第1の隔壁層20の厚みt1は図3(1−a)のようにドレイン電極9またはソース電極8の厚みより厚くする。ドレイン電極9とソース電極8の厚みは製法によって異なるが一般に10nm〜1μm程度であり、第1の隔壁層20の厚みt1はドレイン電極9、ソース電極8より厚い100nm〜10μmの範囲で形成することが望ましい。
【0076】
S6・・・・・所望の領域に有機半導体材料を含む溶液を滴下する工程。
【0077】
図3(2−a)、(2−b)ではインクジェット法を用いて、所望の領域であるチャネル部11とソース電極8、ドレイン電極9に向けて有機半導体材料溶液42を滴下する例を図示している。図3(2−b)のように所望の領域は第1の隔壁層20に特定部分を除いて周囲の大部分を囲まれている。
【0078】
有機半導体材料溶液42の材料および滴下方法は第1の実施形態と同様のものを利用できる。
【0079】
図3(3−b)は有機半導体材料溶液42を滴下した直後の基板1の状態を示している。図3(3−a)は有機半導体材料溶液42を滴下した直後の基板1の断面A−A’の状態を、図3(3−a−BB’)は有機半導体材料溶液42を滴下した直後の基板1の断面B−B’の状態を示している。図3(3−a)のように、滴下した直後の有機半導体材料溶液42が第1の隔壁層20を越えない程度の量の有機半導体材料溶液42を滴下する。このようにすると、断面B−B’ではソース電極8、ドレイン電極9のそれぞれの上に第1の隔壁層20が形成されているので、有機半導体材料溶液42はこの間に留まり、有機半導体材料溶液42の深さはソース電極8側とドレイン電極9側で均等になる。一方、特定部分では図3(3−a)に示すようにソース電極8の上には第1の隔壁層20が形成されていないので、有機半導体材料溶液42は図3(3−a)のように、ソース電極8側が雰囲気に触れる面積が、ドレイン9側に比べて大きくなる。
【0080】
S7・・・・・有機半導体材料を含む溶液を乾燥させる工程。
【0081】
図3(3−a)、(3−b)に示す状態の基板1を放置し、自然乾燥により有機半導体材料溶液42の溶媒を乾燥させる。図3(3−a)に示すように有機半導体材料溶液42がソース電極8の上に広がっている部分は雰囲気に触れている面積が大きく、その部分から先に溶媒が全て乾燥し結晶化が始まる。一方、第1の隔壁層20と有機半導体材料溶液42とが接する部分は雰囲気に触れている面積が小さく、なかなか乾燥しない。本実施形態では、ソース電極8の上に広がっている部分から溶媒が乾燥し結晶化が始まるので、一つの種結晶から大きな結晶ドメインを成長させることができる。
【0082】
このようにして、図3(4−a)、(4−b)のように有機半導体材料溶液42の溶媒が乾燥し、有機半導体層10の薄膜結晶が形成される。
【0083】
工程S7をもって有機TFTが完成する。
【0084】
次に、図4を用いて第3の実施形態における工程について説明する。
【0085】
図4(1−b)〜図4(5−b)は、基板1を上面から見た平面図である。図4(1−a)〜図4(5−a)は、それぞれ基板1を図4(1−b)〜図4(5−b)の断面A−A’で切断した断面図である。
【0086】
本発明に係る有機TFTの製造方法の一例として、図1で説明した本発明の基板の最上層としてソース電極とドレイン電極が設けられている基板を準備する工程以降の工程S4、S5B、S6、S7を説明する。第3の実施形態は、第2の実施形態の工程S4とS6の間に親液層40を形成する工程S5Bを行う点以外は第2の実施形態と同様であり、同じ工程には同じ工程番号を付し、説明を省略する。
【0087】
有機TFTの場合、薄膜結晶の有機半導体層10を形成する所望の領域は、ソース電極8、ドレイン電極9、および前記ソース電極8と前記ドレイン電極9に挟まれた部分、すなわちチャネル部11である。
S4・・・・・特定部分を除いて所望の領域の周囲を一定の厚みで囲む第1の隔壁層20を基板1の上に形成する工程。
S5B・・・・親液層40を第1の隔壁層20の一部に形成する工程。
S6・・・・・所望の領域に有機半導体材料を含む溶液を滴下する工程。
S7・・・・・有機半導体材料を含む溶液を乾燥させる工程。
【0088】
以下、各工程について順に説明する。
【0089】
S4・・・・・特定部分を除いて所望の領域の周囲を一定の厚みで囲む第1の隔壁層20を基板1の上に形成する工程。
【0090】
図3で説明した第2の実施形態の工程S4と同じ工程であり説明を省略する。
【0091】
S5B・・・・親液層40を第1の隔壁層20の一部に形成する工程。
【0092】
図4(2−a)、(2−b)のように第1の隔壁層20の一部に親液層40を形成する。親液層40は、例えば界面活性処理剤をスピンコートにより基板1上に塗布し、乾燥させて形成する。あるいは、マスク露光法を用いて、樹脂材料で形成された第1の隔壁層20の一部に紫外線を照射し、表面を親液層40とする。
【0093】
S6・・・・・所望の領域に有機半導体材料を含む溶液を滴下する工程。
【0094】
図4(3−a)、(3−b)ではインクジェット法を用いて、所望の領域であるチャネル部11とソース電極8、ドレイン電極9に向けて有機半導体材料溶液42を滴下する例を図示している。有機半導体材料溶液42の材料および滴下方法は第2の実施形態と同様のものを利用できる。
【0095】
図4(4−b)は有機半導体材料溶液42を滴下した直後の基板1の状態を示している。図4(4−a)は有機半導体材料溶液42を滴下した直後の基板1の断面A−A’の状態を示している。
【0096】
断面A−A’では第2の実施形態と同様に、ソース電極8の上には第1の隔壁層20が形成されていないので、有機半導体材料溶液42は図3(4−a)のようにソース電極8
側の雰囲気に触れる面積が、ドレイン電極9側と比べて大きくなる。
【0097】
親液層40を設けると、第1の隔壁層20を親液性材料で形成した場合と同様に、有機半導体材料溶液42が親液層40に付着するので、乾燥中に有機半導体材料溶液42が移動することを防止できる。
【0098】
S7・・・・・有機半導体材料を含む溶液を乾燥させる工程。
【0099】
第2の実施形態と同じ工程であり説明を省略する。
【0100】
このようにして、図3(5−a)、(5−b)のように有機半導体材料溶液42の溶媒が乾燥し、有機半導体層10の薄膜結晶が形成される。
【0101】
工程S7をもって有機TFTが完成する。
【0102】
次に、図5を用いて第4の実施形態における工程について説明する。
【0103】
図5(1−b)〜図5(6−b)は、基板1を上面から見た平面図である。図5(1−a)〜図5(6−a)は、それぞれ基板1を図5(1−b)〜図5(6−b)の断面A−A’で切断した断面図である。図5(5−a−BB’)は基板1を図5(5−b)の断面B−B’で切断した断面図である。
【0104】
本発明に係る有機TFTの製造方法の一例として、図1で説明した本発明の基板の最上層としてソース電極とドレイン電極が設けられている基板を準備する工程以降の工程S4A、S4B、S6、S7を説明する。第4の実施形態は、工程S4を工程S4A、S4Bの2工程で行う点以外は第2の実施形態と同様であり、同じ工程には同じ工程番号を付し、説明を省略する。
【0105】
有機TFTの場合、薄膜結晶の有機半導体層10を形成する所望の領域は、ソース電極8、ドレイン電極9、および前記ソース電極8と前記ドレイン電極9に挟まれた部分、すなわちチャネル部11である。
S4A・・・・所望の領域の全周を一定の厚みで囲む第1の隔壁層20を前記基板の上に形成する工程。
S4B・・・・第1の隔壁層20の特定部分を圧接して第1の隔壁層20より厚みが薄い段差部を形成する工程。
S6・・・・・所望の領域に有機半導体材料を含む溶液を滴下する工程。
S7・・・・・有機半導体材料を含む溶液を乾燥させる工程。
【0106】
以下、各工程について順に説明する。
【0107】
S4A・・・・・所望の領域の全周を一定の厚みで囲む第1の隔壁層20を前記基板の上に形成する工程。
【0108】
図5(1−a)、図5(1−b)に示すように、所望の領域であるドレイン電極9、ソース電極8、チャネル部11を囲むように第1の隔壁層20を形成する。
【0109】
本実施形態では、例えばポリメチルメタクリレートのような熱可塑性樹脂材料を用いて、例えばフォトリソグラフィー法により図5(1−b)の形状に第1の隔壁層20を形成する。
【0110】
第1の隔壁層20の厚みt1は図5(1−a)のようにドレイン電極9の厚みより厚くする。ドレイン電極9の厚みは製法によって異なるが一般に10nm〜1μm程度であり、第1の隔壁層20の厚みt1はドレイン電極9より厚い100nm〜10μmの範囲で形成することが望ましい。
【0111】
S4B・・・・第1の隔壁層20の特定部分を圧接して第1の隔壁層20より厚みが薄い段差部を形成する工程。
【0112】
本工程では、例えばナノインプリント技術を用いて第1の隔壁層20に段差部20bを形成する。基板1全体を加熱し、図5(2−a)に示すようにモールド金型50を図中の矢印方向に押し下げて第1の隔壁層20を圧接する。その後、冷却してからモールド金型50を剥離する。
【0113】
図5(3−a)、図5(3−b)にはモールド金型50によって形成された段差部20bを図示している。段差部20bは、所望の領域に接する第1の隔壁層20の一部がモールド金型50によって薄くなり段差を形成している。段差部20bの厚みは図5(3−a)のようにソース電極8の厚みより厚くする。ソース電極8の厚みは10nm〜1μm程度であり、第2の隔壁層21の厚みt1はソース電極8より厚い100nm〜10μmの範囲で形成することが望ましい。本工程以降、第1の隔壁層20の段差部20bが設けられていない部分を第1の隔壁層20aと図示する。
【0114】
なお、第1の隔壁層20の材料は熱可塑性樹脂に限定されるものではなく、光硬化性樹脂を用いて第1の隔壁層20を形成し、モールド金型50で段差部20bを形成した後、光を照射することにより第1の隔壁層20を硬化させても良い。
【0115】
S6・・・・・所望の領域に有機半導体材料を含む溶液を滴下する工程。
【0116】
図5(4−a)、(4−b)ではインクジェット法を用いて、所望の領域であるチャネル部11とソース電極8、ドレイン電極9に向けて有機半導体材料溶液42を滴下する例を図示している。
【0117】
有機半導体材料溶液42の材料および滴下方法は第1の実施形態と同様のものを利用できる。
【0118】
図5(5−b)は有機半導体材料溶液42を滴下した直後の基板1の状態を示している。図5(5−a)は有機半導体材料溶液42を滴下した直後の基板1の断面A−A’の状態を、図5(5−a−BB’)は有機半導体材料溶液42を滴下した直後の基板1の断面B−B’の状態を示している。
【0119】
図5(5−a)のように、滴下した直後の有機半導体材料溶液42が第1の隔壁層20を越えない程度の量の有機半導体材料溶液42を滴下する。このようにすると、断面B−B’ではソース電極8、ドレイン電極9のそれぞれの上に第1の隔壁層20が形成されているので、有機半導体材料溶液42はこの間に留まり、有機半導体材料溶液42の深さはソース電極8側とドレイン電極9側で均等になる。一方、断面A−A’ではソース電極8に接する第1の隔壁層20の一部に段差部20bが形成されているので、有機半導体材料溶液42の深さは図5(5−a)のようにソース電極8の上など、段差部20bが形成されている部分で浅くなる。
【0120】
乾燥中に有機半導体材料溶液42がどんどん広がっていくのを防止するため、第1の隔壁層20を親液性材料で形成することが望ましい。このようにすると、有機半導体材料溶液42が第1の隔壁層20に付着するので、乾燥中に有機半導体材料溶液42が移動することを防止できる。第1の隔壁層20に用いる親液性材料は例えばSiO2である。
【0121】
S7・・・・・有機半導体材料を含む溶液を乾燥させる工程。
【0122】
図5(5−a)、(5−b)に示す状態の基板1を放置し、自然乾燥により有機半導体材料溶液42の溶媒を乾燥させる。図5(5−a)に示すように有機半導体材料溶液42がソース電極8の上に広がっている部分は浅く、その部分から先に溶媒が全て乾燥し結晶化が始まる。一方、第1の隔壁層20と有機半導体材料溶液42とが接する部分は深く、なかなか乾燥しない。本実施形態では、段差部20bの上に広がっている部分から溶媒が乾燥し結晶化が始まるので、一つの種結晶から大きな結晶ドメインを成長させることができる。
【0123】
このようにして、図5(6−a)、(6−b)のように有機半導体材料溶液42の溶媒が乾燥し、有機半導体層10の薄膜結晶が形成される。
【0124】
工程S7をもって有機TFTが完成する。
【0125】
なお、本発明はトップゲート型の有機TFTにも適用できる。
【0126】
トップゲート型の有機TFTの製造方法では、下記のようにゲート絶縁層7を形成する工程とゲート電極を形成する工程が後になるだけであり、有機半導体層10を形成する工程は例えば下記のように今まで説明した工程の順と変わらない。
S3・・・・・ソース電極8、ドレイン電極9を形成する工程。
S4・・・・・特定部分を除いて所望の領域の周囲を一定の厚みで囲む第1の隔壁層20を基板1の上に形成する工程。
S5・・・・・所望の領域の周囲の前記第1の隔壁層が形成されていない部分を一定の厚みで囲む第2の隔壁層を前記基板の上に形成する工程。
S6・・・・・所望の領域に有機半導体材料を含む溶液を滴下する工程。
S7・・・・・有機半導体材料を含む溶液を乾燥させる工程。
S2・・・・・ゲート絶縁層7を形成する工程。
S1・・・・・ゲート電極2を形成する工程。
【実施例】
【0127】
以下、本発明の効果を確認するために行った実施例について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0128】
[実施例1]
本実施例では第1の実施形態の工程に基づいて、基板上に有機TFTを作製した。以下、第1の実施形態で説明した工程番号の順に説明する。
S1・・・・・ゲート電極2を形成する工程。
S2・・・・・ゲート絶縁層7を形成する工程。
S3・・・・・ソース電極8、ドレイン電極9を形成する工程。
S4・・・・・特定部分を除いて所望の領域の周囲を一定の厚みで囲む第1の隔壁層20を基板1の上に形成する工程。
S5・・・・・所望の領域の周囲の前記第1の隔壁層が形成されていない部分を一定の厚みで囲む第2の隔壁層を前記基板の上に形成する工程。
S6・・・・・所望の領域に有機半導体材料を含む溶液を滴下する工程。
S7・・・・・有機半導体材料を含む溶液を乾燥させる工程。
【0129】
S1・・・・・ゲート電極2を形成する工程。
【0130】
Al膜を予め形成した基板1に対してフォトリソグラフィー法を用いて、ゲート電極2を形成した。
【0131】
S2・・・・・ゲート絶縁層7を形成する工程。
【0132】
ゲート絶縁層7として、プラズマCVD法でTEOS(テトラエトキシシラン)ガスを用いてSiO2膜を基板1上に300nm形成した。
【0133】
S3・・・・・ソース電極8、ドレイン電極9を形成する工程。
【0134】
次に洗浄後、スパッタ法にて錫ドープ酸化インジウム膜(ITO)をゲート絶縁層7上に100nm形成し、フォトリソグラフィー法によりソース電極8、ドレイン電極9を形成した。
【0135】
S4・・・・・第1の隔壁層20を基板1の上に形成する工程。
【0136】
第1の隔壁層20として、プラズマCVD法でTEOS(テトラエトキシシラン)ガスを用いてSiO2膜を基板1上に500nm形成した。その後、フォトリソグラフィー法を用いて図2(1−a)、図2(1−b)に示す目的の形状にパターンニングした。
【0137】
S5・・・・・第2の隔壁層21を基板1の上に形成する工程。
【0138】
第2の隔壁層21として、プラズマCVD法でTEOS(テトラエトキシシラン)ガスを用いてSiO2膜を基板1上に300nm形成した。その後、フォトリソグラフィー法を用いて図2(2−a)、図2(2−b)に示す目的の形状にパターンニングした。
【0139】
S6・・・・・所望の領域に有機半導体材料を含む溶液を滴下する工程。
【0140】
インクジェットを用いて図2(3−a)、図2(3−b)のように有機半導体材料溶液42を滴下した。有機半導体材料溶液42の有機半導体材料はTIPSペンタセン、溶媒はテトラヒドロナフタレンを使用した。
【0141】
S7・・・・・有機半導体材料を含む溶液を乾燥させる工程。
【0142】
基板1を常温で放置し溶媒を乾燥させた。その結果、厚み40〜50nmの有機半導体層10の薄膜結晶を形成できた。
【0143】
また、工程S4、S5は省き、工程S1〜S3、S6、S7を同じ条件で行って比較例の半導体素子を作製した。
【0144】
〔実験結果〕
実施例1で作製した有機TFTの半導体層10と比較例の有機TFTの半導体層10を顕微鏡で観察して結晶の形状を観察した。その結果、実施例1で作製した有機TFTの半導体層10には、比較例より大きな結晶ドメインが形成されていることが確認できた。
【0145】
[実施例2]
本実施例では第2の実施形態の工程に基づいて、基板上に有機TFTを作製した。以下、第1の実施形態で説明した工程番号の順に説明する。
S1・・・・・ゲート電極2を形成する工程。
S2・・・・・ゲート絶縁層7を形成する工程。
S3・・・・・ソース電極8、ドレイン電極9を形成する工程。
S4・・・・・特定部分を除いて所望の領域の周囲を一定の厚みで囲む第1の隔壁層20を基板1の上に形成する工程。
S6・・・・・所望の領域に有機半導体材料を含む溶液を滴下する工程。
S7・・・・・有機半導体材料を含む溶液を乾燥させる工程。
【0146】
S1〜S3までの工程は実施例1と同じ条件で行った。
【0147】
S4・・・・・第1の隔壁層20を基板1の上に形成する工程。
【0148】
第1の隔壁層20として、プラズマCVD法でTEOS(テトラエトキシシラン)ガスを用いてSiO2膜を基板1上に500nm形成した。その後、フォトリソグラフィー法を用いて図3(1−a)、図3(1−b)に示す目的の形状にパターンニングした。
【0149】
S6・・・・・所望の領域に有機半導体材料を含む溶液を滴下する工程。
【0150】
インクジェットを用いて図3(3−a)、図3(3−b)のように有機半導体材料溶液42を滴下した。有機半導体材料溶液42の有機半導体材料はTIPSペンタセン、溶媒はテトラヒドロナフタレンを使用した。
【0151】
S7・・・・・有機半導体材料を含む溶液を乾燥させる工程。
【0152】
基板1を常温で放置し溶媒を乾燥させた。その結果、厚み40〜50nmの有機半導体層10の薄膜結晶を形成できた。
【0153】
また、工程S4、S5は省き、工程S1〜S3、S6、S7を同じ条件で行って比較例の半導体素子を作製した。
【0154】
〔実験結果〕
実施例2で作製した有機TFTの半導体層10と比較例の有機TFTの半導体層10を顕微鏡で観察して結晶の形状を観察した。その結果、実施例2で作製した有機TFTの半導体層10には、比較例より大きな結晶ドメインが形成されていることが確認できた。
【0155】
[実施例3]
本実施例では第3の実施形態の工程に基づいて、基板上に有機TFTを作製した。以下、第1の実施形態で説明した工程番号の順に説明する。
S1・・・・・ゲート電極2を形成する工程。
S2・・・・・ゲート絶縁層7を形成する工程。
S3・・・・・ソース電極8、ドレイン電極9を形成する工程。
S4・・・・・特定部分を除いて所望の領域の周囲を一定の厚みで囲む第1の隔壁層20を基板1の上に形成する工程。
S5B・・・・親液層40を第1の隔壁層20の一部に形成する工程。
S6・・・・・所望の領域に有機半導体材料を含む溶液を滴下する工程。
S7・・・・・有機半導体材料を含む溶液を乾燥させる工程。
【0156】
S1〜S3までの工程は実施例1と同じ条件で行った。
【0157】
S4・・・・・第1の隔壁層20を基板1の上に形成する工程。
【0158】
S4の工程は実施例2と同じ条件で行った。
【0159】
S5B・・・・親液層40を第1の隔壁層20の一部に形成する工程。
【0160】
界面活性剤をスピンコートにより基板1上に塗布し、乾燥させて形成した。
【0161】
S6・・・・・所望の領域に有機半導体材料を含む溶液を滴下する工程。
【0162】
S6の工程は実施例2と同じ条件で行った。
【0163】
S7・・・・・有機半導体材料を含む溶液を乾燥させる工程。
【0164】
基板1を常温で放置し溶媒を乾燥させた。その結果、厚み40〜50nmの有機半導体層10の薄膜結晶を形成できた。
【0165】
また、工程S4、S5Bは省き、工程S1〜S3、S6、S7を同じ条件で行って比較例の有機TFTを作製した。
【0166】
〔実験結果〕
実施例3で作製した有機TFTの半導体層10と比較例の有機TFTの半導体層10を顕微鏡で観察して結晶の形状を観察した。その結果、実施例3で作製した有機TFTの半導体層10は、比較例より大きな結晶ドメインが形成されていることが確認できた。
【0167】
[実施例4]
本実施例では第4の実施形態の工程に基づいて、基板上に有機TFTを作製した。以下、第1の実施形態で説明した工程番号の順に説明する。
S1・・・・・ゲート電極2を形成する工程。
S2・・・・・ゲート絶縁層7を形成する工程。
S3・・・・・ソース電極8、ドレイン電極9を形成する工程。
S4A・・・・所望の領域の全周を一定の厚みで囲む第1の隔壁層20を前記基板の上に形成する工程。
S4B・・・・第1の隔壁層20の特定部分を圧接して第1の隔壁層20より厚みが薄い段差部を形成する工程。
S6・・・・・所望の領域に有機半導体材料を含む溶液を滴下する工程。
S7・・・・・有機半導体材料を含む溶液を乾燥させる工程。
【0168】
S1〜S3までの工程は実施例1と同じ条件で行った。
S4A・・・・所望の領域の全周を一定の厚みで囲む第1の隔壁層20を前記基板の上に形成する工程。
【0169】
第1の隔壁層20の材料としてポリメチルメタクリレートを用いて、フォトリソグラフィー法により図5(1−b)に示す形状の第1の隔壁層20を形成した。
【0170】
S4B・・・第1の隔壁層20の特定部分を圧接して第1の隔壁層20より厚みが薄い段差部を形成する工程。
【0171】
基板1全体を加熱し、モールド金型50を図中の矢印方向に押し下げて第1の隔壁層20を圧接し、その後、冷却してからモールド金型50を剥離して段差部20bを形成した。
【0172】
S6・・・・・所望の領域に有機半導体材料を含む溶液を滴下する工程。
【0173】
S6の工程は実施例2と同じ条件で行った。
【0174】
S7・・・・・有機半導体材料を含む溶液を乾燥させる工程。
【0175】
基板1を常温で放置し溶媒を乾燥させた。その結果、厚み40〜50nmの有機半導体層10の薄膜結晶を形成できた。
【0176】
また、工程S4A、S4Bは省き、工程S1〜S3、S6、S7を同じ条件で行って比較例の半導体素子を作製した。
【0177】
〔実験結果〕
実施例4で作製した有機TFTの半導体層10と比較例の有機TFTの半導体層10を顕微鏡で観察して結晶の形状を観察した。その結果、実施例4で作製した有機TFTの半導体層10には、比較例より大きな結晶ドメインが形成されていることが確認できた。
【0178】
なお、本実施形態では有機TFTを作成する例について説明したが、本発明の適用は有機TFTの製造に限定されるものではなく、有機ダイオード、有機フォトダイオードなどの電子デバイスにも適用可能である。
【0179】
以上このように、本発明によれば、簡単な方法でドメイン境界のほとんどない大きなドメインの薄膜結晶を形成する薄膜結晶の製造方法、有機薄膜トランジスタの製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0180】
【図1】本発明に係わる基板の最上層としてソース電極とドレイン電極が設けられている基板を準備する工程を説明する説明図である。
【図2】本発明に係わる有機薄膜有機TFTの製造方法の第1の実施形態を説明する説明図である。
【図3】本発明に係わる有機薄膜有機TFTの製造方法の第2の実施形態を説明する説明図である。
【図4】本発明に係わる有機薄膜有機TFTの製造方法の第3の実施形態を説明する説明図である。
【図5】本発明に係わる有機薄膜有機TFTの製造方法の第4の実施形態を説明する説明図である。
【符号の説明】
【0181】
1 基板
2 ゲート電極
7 ゲート絶縁層
8 ソース電極
9 ドレイン電極
10 有機半導体層
20 第1の隔壁層
20b 段差部
21 第2の隔壁層
42 有機半導体材料溶液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の上の所望の領域に薄膜結晶を形成する薄膜結晶の製造方法において、
特定部分を除いて前記所望の領域の周囲を一定の厚みで囲む第1の隔壁層を前記基板の上に形成する工程と、
前記所望の領域に有機半導体材料を含む溶液を滴下する工程と、
前記溶液を乾燥させる工程と、をこの順で行うことを特徴とする薄膜結晶の製造方法。
【請求項2】
前記特定部分を除いて前記所望の領域の周囲を一定の厚みで囲む第1の隔壁層を前記基板の上に形成する工程において、
前記所望の領域の全周を一定の厚みで囲む第1の隔壁層を前記基板の上に形成する工程の後、
前記第1の隔壁層の前記特定部分を圧接して前記第1の隔壁層より厚みが薄い段差部を形成する工程を行うことを特徴とする請求項1に記載の薄膜結晶の製造方法。
【請求項3】
前記所望の領域に有機半導体材料を含む溶液を滴下する工程において、
前記有機半導体材料を含む溶液を前記段差部を覆うまで滴下することを特徴とする請求項2に記載の薄膜結晶の製造方法。
【請求項4】
前記所望の領域に接する第1の隔壁層を前記基板の上に形成する工程を行った後、
前記所望の領域に有機半導体材料を含む溶液を滴下する工程の前に、
前記第1の隔壁層の表面に親液性を有する親液層を形成する工程を行うことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の薄膜結晶の製造方法。
【請求項5】
前記第1の隔壁層は親液性の材料で形成されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の薄膜結晶の製造方法。
【請求項6】
前記所望の領域の周囲を特定部分を除いて一定の厚みで囲む第1の隔壁層を前記基板の上に形成する工程を行った後、
前記所望の領域に有機半導体材料を含む溶液を滴下する工程の前に、
前記所望の領域の周囲の前記第1の隔壁層が形成されていない部分を一定の厚みで囲む第2の隔壁層を前記基板の上に形成する工程を行うことを特徴とする請求項1に記載の薄膜結晶の製造方法。
【請求項7】
前記第2の隔壁層の厚みは前記第1の隔壁層の厚みより薄いことを特徴とする請求項6に記載の薄膜結晶の製造方法。
【請求項8】
前記第1の隔壁層は撥液性の材料で形成され、前記第2の隔壁層は親液性の材料で形成されていることを特徴とする請求項6または7に記載の薄膜結晶の製造方法。
【請求項9】
基板の上に、ソース電極、ドレイン電極、前記ソース電極と前記ドレイン電極とを連結する有機半導体層、ゲート電極及び前記有機半導体層と前記ゲート電極との間にゲート絶縁膜を有する有機薄膜トランジスタの製造方法において、
前記所望の領域は、前記ソース電極、前記ドレイン電極、および前記ソース電極と前記ドレイン電極に挟まれた部分であり、
基板の最上層としてソース電極とドレイン電極が設けられている基板を準備する工程と、
前記基板の上に請求項1乃至8の何れか1項に記載の薄膜結晶の製造方法を用いて前記有機半導体層の薄膜結晶を形成する工程と、をこの順で行うことを特徴とする有機薄膜トランジスタの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−227141(P2008−227141A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−63246(P2007−63246)
【出願日】平成19年3月13日(2007.3.13)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】