説明

複合体、これを用いたプリプレグ、金属箔張積層板、プリント配線基板及びプリント配線基板の製造方法

【課題】 接着信頼性に十分優れ、且つ、脱落の虞のある樹脂粉又は繊維の発生が十分抑制されている複合体を提供すること。
【解決手段】 上記課題を解決する複合体は、繊維シートに硬化性樹脂組成物を含浸させてなる複合体であって、硬化性樹脂組成物の硬化物の25℃における貯蔵弾性率が、100〜2000MPaである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合体、これを用いたプリプレグ、金属箔張積層板、プリント配線基板及びプリント配線基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型軽量化および電子回路のディジタル化、高速化が一段と求められている。そして、これらに搭載するためのプリント配線基板もより高密度なものが要求されており、新規な電子機器の開発にはこれらのプリント配線基板そのものの開発も重要な要素となっている。
【0003】
高密度実装基板として一般的なものにガラスエポキシ基板が知られている。これは、ガラス織布に耐熱性のエポキシ樹脂を含浸させたものを絶縁基板材料として用いたものである。ガラスエポキシ多層基板は、例えば、ガラス織布にエポキシ樹脂を含浸させたもの(以下、「プリプレグ」という)に銅箔を熱プレスにより接着させ、フォトリソ技術によりパターン形成したものを基本とし、これに別のプリプレグと銅箔でさらに熱プレスすることで形成される。この積層体にドリルを用いてスルーホールを形成し、その内壁にメッキ法によって銅電極を形成することでそれぞれの層間の電気的接続を行う。そして表面の銅パターン形成をエッチング法で行うのが一般的である。
【0004】
しかしながら、このようにして形成されるガラスエポキシ多層基板は、高密度化の要求に対して十分であるとはいえない。通常のガラスエポキシ多層基板は、貫通スルーホールが形成されているため、高密度な配線を行う場合、貫通穴が配線スペースを狭めてしまい、この貫通穴を迂回して配線パターンを形成する必要が生じる。よって、結果的に配線長が長くなる。また、配線スペースが少ないため、CADによる自動配線が困難となる。さらに、小径のスルーホールを形成する場合にドリル加工が困難となり、ドリル加工に要するコスト比率が高くなっている。また、貫通スルーホールに必要な銅メッキ工程は、地球環境の上からも問題となっている。さらに、両面基板においても同様の課題を有しており、特に部品実装において、貫通孔部分が存在すると、その部分に部品が実装できないため高密度な基板が得られない。
【0005】
このような課題に対し、完全なインナービアホール(IVH)構成を有するプリント配線基板が提案されている。IVH構造では、必要な各層間のみの接続が可能であり、基板最上層にも貫通孔がなく実装性も優れている。
【0006】
このIVH構造を有する回路基板として、例えば、シート状の有機質の不織布に熱硬化性樹脂を含浸させてなるシート基板材に、レーザー加工により貫通孔を形成し、この貫通孔に導電性ペーストを充填し、シート基板材を加熱加圧することで、IVH構造を形成せしめた回路基板が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
また、IVH構造を有する多層基板としてSLC基板(登録商標)が挙げられる。SLC基板(登録商標)は、通常の銅パターン層を有する両面基板上に絶縁材料としての樹脂を表面コーティングし、フォトリソ法によってビアホールを形成し、次に銅メッキを全面に付加して、下部導体とビアホール部および表面層とする。そして同じくフォトリソ法によってパターン形成し、この工程を繰り返すことにより、多層化するものでる。この方法によれば非常に安価で、高精度な配線が形成できるため注目されている。
【0008】
更に、IVH構造を有する多層基板として熱可塑性樹脂を用いた多層基板が挙げられる。熱可塑性樹脂を用いた多層基板は、熱可塑性のシート状基材にビアホールを形成した後、シート表面にAg系の樹脂導電ペーストでパターン印刷を行い、別途作製したシートを重ね合わせて熱プレスすることで多層化する基板である。
【特許文献1】特開平6−268345号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述したようなIVH構造を有するプリント配線基板は、その製造の際に基板上に打痕が発生したり、配線の断線が発生したりすることがあり、十分な信頼性を有していないものがあった。特に、高密度化を図るために各層の層厚を薄くする場合に、上記の不良が多発する傾向にあった。
【0010】
そこで、本発明者らは、上記不良の原因について詳細に検討した結果、上記のように絶縁基板として繊維シートに樹脂を含浸したシート基板材を用いた場合、絶縁基板から脱落する樹脂粉又は繊維が上記不良の大きな原因であることを見出した。また、脱落する樹脂粉又は繊維は、特にビアホールを有する絶縁基板を形成する際に多く発生することが分かった。
【0011】
ここで、絶縁基板の材料として樹脂粉又繊維の脱落を抑制することのみ考慮したものを選択しても、プリント配線基板に用いる絶縁基板が必要な接着信頼性を十分に有していなければ、結果として十分な信頼性を有するプリント配線基板が得られない。
【0012】
本発明は、上記の課題を解決するものであり、接着信頼性に十分優れ、且つ、脱落の虞のある樹脂粉又は繊維の発生が十分抑制されている複合体を提供することを目的とする。また、本発明は、かかる複合体を用いたプリプレグ、金属箔張積層板、プリント配線基板及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明の複合体は、繊維シートに硬化性樹脂組成物を含浸させてなる複合体であって、硬化性樹脂組成物の硬化物の25℃における貯蔵弾性率が、100〜2000MPaであることを特徴とする。
【0014】
本発明の複合体は、硬化物の貯蔵弾性率が上記の範囲となる硬化性樹脂組成物が繊維シートに含浸されていることにより、脱落の虞のある樹脂粉又は繊維の発生が十分に抑制され、且つ、十分に優れた接着信頼性を有するものとなっている。したがって、本発明の複合体を絶縁基板の材料として用いることにより、信頼性に優れるプリント配線基板を製造することができる。
【0015】
硬化性樹脂組成物の硬化物の25℃における貯蔵弾性率が、100MPa未満であると、取扱い性及び寸法安定性が低下して、十分な接着信頼性を得ることができず、一方、2000MPaを越えると、硬化した樹脂が脆くなるために脱落の虞のある樹脂粉又は繊維の発生を十分に抑制することができない。
【0016】
また、本発明の複合体において、上記硬化性樹脂組成物が粘弾性樹脂を含有することが好ましい。このような複合体は、脱落の虞のある樹脂粉又は繊維の発生がより確実に抑制され、且つ、十分優れた接着信頼性を有するものとなっている。
【0017】
また、本発明の複合体において、上記硬化性樹脂組成物は、重量平均分子量が30000以上であるアクリル重合体を含有し、このアクリル重合体はグリシジルアクリレートを重合成分として2〜20質量%含み、エポキシ価が2〜36であることが好ましい。なお、エポキシ価は、HLC測定法により求めた値を採用する。
【0018】
アクリル重合体の重量平均分子量が30000未満であると、柔軟性が低下する傾向にある。また、アクリル重合体に重合成分として含まれるグリシジルアクリレートが、2質量%未満であると、硬化物のガラス転移温度Tgが低下して耐熱性が不十分となる傾向にあり、一方、20質量%を超えると、硬化物の貯蔵弾性率が上昇して樹脂粉又は繊維の発生を十分に抑制できなくなる傾向にある。さらに、アクリル重合体のエポキシ価が、2未満であると、硬化物のガラス転移温度Tgが低下して耐熱性が不十分となる傾向にあり、一方、36を超えると、硬化物の貯蔵弾性率が上昇して樹脂粉又は繊維の発生を十分に抑制できなくなる傾向にある。
【0019】
更に、本発明の複合体において、上記繊維シートは、10〜200μmの厚みを有するガラス布であることが好ましい。かかる複合体によれば、十分な機械的強度を有するとともに、プリント配線基板の高密度化を図ることがより容易となる絶縁基板を得ることができる。
【0020】
また、本発明の複合体において、複合体の総厚さが100μm以下であることが好ましい。複合体の総厚さが、100μm以下であることにより、プリント配線基板を構成する絶縁基板として用いる場合に、高密度化を図ることがより容易となる。
【0021】
更に、本発明の複合体において、複合体が貫通孔を有することが好ましい。かかる複合体によれば、予め所定位置に貫通孔が設けられていることで貫通孔を形成する工程を省略でき、このような複合体を用いることで信頼性に優れるIVH構造のプリント配線基板を歩留まりよく製造することができる。
【0022】
また、本発明のプリプレグは、上記本発明の複合体において、硬化性樹脂組成物が半硬化されてなることを特徴とする。
【0023】
本発明のプリプレグは、上述の硬化性樹脂組成物を用いることにより、脱落の虞のある樹脂粉又は繊維の発生が十分に抑制され、且つ、十分に優れた接着信頼性を有するものとなっている。したがって、本発明のプリプレグを用いてIVH構造を有するプリント配線基板を製造する場合、信頼性に優れるプリント配線基板を得ることができる。
【0024】
更に、本発明のプリプレグにおいて、貫通孔を有することが好ましい。かかるプリプレグによれば、予め所定位置に貫通孔が設けられていることで貫通孔を形成する工程を省略でき、このようなプリプレグを用いることで信頼性に優れるIVH構造のプリント配線基板をより容易に製造することができる。
【0025】
また、本発明の第1の金属箔張積層板は、貫通孔を有する本発明の複合体において、貫通孔に導電体を充填し、複合体の少なくとも一面上に金属箔を配したものを、加熱加圧して得られることを特徴とする。
【0026】
かかる金属箔張積層板は、上記本発明の複合体を用いることにより、金属箔張積層板からの樹脂粉又は繊維の脱落が十分に抑制されているとともに、十分に優れた接着信頼性を有している。したがって、本発明の金属箔張積層板を用いてIVH構造を有するプリント配線基板を製造する場合、信頼性に優れるプリント配線基板を歩留まりよく得ることができる。
【0027】
また、本発明の第2の金属箔張積層板は、貫通孔を有する本発明のプリプレグにおいて、貫通孔に導電体を充填し、プリプレグの少なくとも一面上に金属箔を配したものを、加熱加圧して得られることを特徴とする。
【0028】
かかる金属箔張積層板は、上記本発明のプリプレグを用いることにより、金属箔張積層板からの樹脂粉又は繊維の脱落が十分に抑制されているとともに、十分に優れた接着信頼性を有している。したがって、本発明の金属箔張積層板を用いてIVH構造を有するプリント配線基板を製造する場合、信頼性に優れるプリント配線基板を歩留まりよく得ることができる。
【0029】
また、本発明のプリント配線基板は、上記本発明の複合体からなる第1の基材と、該第1の基材の両表面上に形成された第1の熱硬化型樹脂層と、該第1の熱硬化型樹脂層の表層にパターニングされた回路電極と、を備え、上記第1の基材と上記第1の熱硬化型樹脂層とを貫通する第1の貫通孔が形成されており、上記第1の貫通孔に上記両表面の回路電極同士を電気的に接続するための導電性物質が充填されてなる両面プリント配線基板を少なくとも二枚用い、二枚の上記両面プリント配線基板の間に、上記複合体からなる第2の基材と、該第2の基材の両表面上に形成された第2の熱硬化型樹脂層と、を備え、上記第2の基材と上記第2の熱硬化型樹脂層とを貫通する第2の貫通孔が形成されており、上記第2の貫通孔に導電性物質が充填されてなる中間板が挟持されているとともに、上記両面プリント配線基板の少なくとも片面に、上記複合体からなる第3の基材と、該第3の基材の両表面上に形成された第3の熱硬化型樹脂層と、一方の上記第3の熱硬化型樹脂層の表層にパターニングされた回路電極と、を備え、上記第3の基材と上記第3の熱硬化型樹脂層とを貫通する第3の貫通孔が形成されており、上記第3の貫通孔に導電性物質が充填されてなる片面プリント配線基板が、該片面プリント配線基板の上記回路電極が外側になるように積層されていることを特徴とする。
【0030】
先に説明したような従来のプリント配線基板の構成では、次のような課題を有していた。第1に、従来のガラスエポキシ多層基板の構成においては、多層板積層後の貫通孔の加工が容易でないことが挙げられる。これは、これからの高密度配線に対応するために、より微細な穴加工が必要とされる点と、内層の配線に正確に穴加工することが難しい点にある。微細な穴加工としては、ドリル径が今後は益々小さいものが要求され、それによるドリル加工コストが無視できなくなる。また、微細なドリルでは正確な穴加工が厚み方向でさらに困難が予想される。また、内層配線と外層配線の位置合わせ精度が益々高精度化に向かう反面、基板材料の寸法ズレや伸びのバラツキのため正確な位置に穴加工することが難しくなりつつある。このことは、今後のより多層化が進む現在、なお内層どうしの位置あわせが困難となってくる。以上のような課題を有しているために、従来の回路形成用基板では単位面積当たりに形成できるスルーホール接続の個数および回路パターン密度に限界があり、今後ますます需要が増大する高密度実装用多層基板を実現することが困難である。
【0031】
一方、高密度化を達成する上で重要な点は、多層基板の場合、各層間で接続できるインナービア接続可能な基板を得ることであり、両面基板の場合では貫通孔がない接続方法が必要とされる。しかし、前述の様なインナービア多層基板においても、従来の方法では多層基板の場合、基板表面の段差、耐熱性、電極接着強度等の課題が多い。また、両面基板の場合、銅箔接着の後穴あけ加工を行うため、基板表面を平坦化するためメッキによる接続が必要となる。
【0032】
すなわち、導電性ペーストによりビア充填を形成し、さらにその後銅箔との接着を行う両面プリント基板とさらに前記プリント基板を組み合わせることで各層間のみを接続するIVH接続を可能ならしめ、高信頼性および高品質のプリント基板を実現することが要求される。
【0033】
上記本発明のプリント配線基板によれば、第1の基材の両表面に、第1の熱硬化型樹脂層が存在し、この第1の熱硬化型樹脂層の表層にパターニングされた回路電極が形成され、かつ第1の基材と第1の熱硬化型樹脂層とを貫通する第1の貫通孔が形成されており、第1の貫通孔に上記両表面の回路電極同士を電気的に接続するための導電性物質が充填されていることにより、導電性ペーストによりビア充填を形成し、さらにその後銅箔との接着を行う両面プリント基板とさらに上記プリント基板を組み合わせることで各層間のみを接続するIVH接続を可能ならしめ、高信頼性および高品質の両面プリント基板を実現できる。また、本発明のプリント配線基板の構成によれば、IVH接続を可能ならしめ、高信頼性および高品質の多層配線プリント基板を実現できる。
【0034】
ここで、本発明のプリント配線基板において、上記導電性物質は導電性樹脂ペーストであることが好ましく、導電性樹脂ペースト中の導電材料は、銀、銅及びこれらの合金から選択される少なくとも一つの金属からなる粉末を含むことが好ましい。更に、上記第1〜第3の熱硬化型樹脂層の主成分はエポキシ樹脂であることが好ましい。
【0035】
また、本発明のプリント配線基板の製造方法は、上記本発明の複合体からなる基材の両面に、あらかじめ片面に熱硬化型樹脂を塗布して熱硬化型樹脂塗布層を形成した離型フィルムを、上記熱硬化型樹脂塗布層が上記基材側となるように配置し、上記熱硬化型樹脂の硬化温度以下の温度で圧力を加えて貼り合わせ、上記熱硬化型樹脂層を形成した離型フィルムを貼り合わせた上記基材の所望の位置に貫通孔を形成し、上記貫通孔に導電性樹脂ペーストを上記離型フィルム表面まで充填させ、上記熱硬化型樹脂を上記基材表面に残して両面の上記離型フィルムのみを剥離し、剥離後の上記基材の表面に銅箔を配し、加熱加圧する事により上記熱硬化型樹脂を硬化させ上記銅箔を接着させ、上記基材表面の銅箔をパターンニングする工程を少なくとも有することを特徴とする。
【0036】
かかる製造方法によれば、本発明の複合体からなる基材を用い、この基材の両方の面に、あらかじめ片面に一定厚みの熱硬化型樹脂をコーティングした離型フィルムを用意し、この離型フィルムの熱硬化型樹脂塗布層が内側となるように貼り合わせる。この時、上記離型フィルム上に塗布された熱硬化樹脂の硬化温度以下の温度で圧力を加えて貼り合わせる。次に、上記熱硬化型樹脂を塗布した離型フィルムを貼り合わせた基材の所望の位置に貫通孔を形成し、この貫通孔に導電性樹脂ペーストを用いて上記離型フィルム表面まで充填させる。この時、外側の離型フィルムは貫通孔以外の部分に導電性ペーストが付着しないようにするための保護膜として働く。次に、上記熱硬化型樹脂を基材表面に残したまま両面の離型フィルムのみ剥離する。これにより、両面の電気的接続を得るためのビア導体と上記基材の表面に銅箔との接着を得るための接着層が形成できる。この後、上記剥離済み基材の表面に銅箔を配し、加熱加圧する事により上記熱硬化型樹脂層を硬化させ上記銅箔と接着させることができる。さらに上記基材表面の銅箔をエッチング法でパターンニングすることにより、効率良く合理的に両面プリント配線基板が得られる。
【0037】
本発明はまた、上記本発明のプリント配線基板の製造方法によりプリント配線基板を作製した後、上記プリント配線基板の両面に、上記本発明のプリント配線基板の製造方法において離型フィルムを剥離した後に得られる、未硬化状態の熱硬化型樹脂塗布層を有する未硬化基板を配置して上記プリント配線基板を挟み、上記未硬化基板の表面に銅箔を配して加熱加圧して、上記プリント配線基板と上記未硬化基板とを積層硬化し、表面の上記銅箔をパターニングして回路形成する工程を少なくとも1回以上行うことにより多層配線の形成を行う、プリント配線基板の製造方法を提供する。
【0038】
かかる製造方法によれば、上記同様の方法により作製されたプリント配線基板の両面に、別途作製した上記の離型フィルムを剥離した未硬化の樹脂層を有する基材で挟み、さらにその表面に銅箔を配して加熱加圧して、上記プリント配線基板と未硬化状態の熱硬化型樹脂塗布層を有する未硬化基板を積層硬化し、表面の銅箔をパターニングにより回路形成する工程を少なくとも1回以上行うことにより、効率良く合理的に多層配線が得られる。
【0039】
本発明は更に、上記本発明のプリント配線基板の製造方法により作製したプリント配線基板と、上記本発明のプリント配線基板の製造方法において離型フィルムを剥離した後に得られる、未硬化状態の熱硬化型樹脂塗布層を有する未硬化基板とを、上記プリント配線基板が常に最外層になるように所望の数だけ交互に配し、加熱加圧して上記プリント配線基板と上記未硬化基板を積層硬化することにより多層配線の形成を行う、プリント配線基板の製造方法を提供する。
【0040】
かかる製造方法のように、同様に上述の方法で離型フィルムを剥離した未硬化状態の熱硬化型樹脂塗布層を有する未硬化基板と、上記両面基板とを上記硬化済みプリント配線基板が常に最外層になるよう所望の数だけ交互に配し、加熱加圧して、上記プリント配線基板と上記未硬化基板を積層硬化しても、効率良く合理的に多層配線を得ることができる。
【0041】
このように熱硬化型樹脂層を有する離型フィルムで挟み込まれた基材を用い、かつ貫通孔に導電性ペーストを離型フィルム表面まで埋め込んだ構造を有する基材を使用することによって、比較的安定に表面の平滑性に優れたIVH構造の両面プリント基板が得られる。また、表面平滑性に優れたIVH構造の両面プリント基板を用いて簡便に高多層な基板にする事が可能となるものである。この方法によれば、ビア導体を充填してから銅箔を接着する事ができるので、メッキによる銅電極層の形成が不必要になり、地球環境上有利である。
【0042】
また、基材に硬化済みのものを用いるので、ビア導体と積層基材との不必要な反応もなく、安定した層間接続抵抗とその信頼性が得られる。また基材表面の熱硬化樹脂層が銅箔と基材の接着に寄与し、強固な密着強度が得られる。
【0043】
これら本発明のプリント配線基板の製造方法において、上記導電性樹脂ペースト中の導電材料は、銀、銅及びこれらの合金から選択される少なくとも一つの金属からなる粉末を含むことが好ましい。また、上記貫通孔は、ドリル加工法又はレーザー加工法により形成することが好ましい。更に、上記熱硬化型樹脂塗布層の主成分はエポキシ樹脂であることが好ましい。
【発明の効果】
【0044】
本発明によれば、接着信頼性に十分優れ、且つ、脱落の虞のある樹脂粉又は繊維の発生が十分抑制されている複合体を提供することができる。また、本発明によれば、かかる複合体を用いたプリプレグ、金属箔付きシートを提供することができる。また、本発明によれば、導電性ペーストによりビア充填を形成し、さらにその後銅箔との接着を行う両面プリント基板とさらに上記プリント基板を組み合わせることで各層間のみを接続するIVH接続を可能ならしめ、高信頼性および高品質のプリント配線基板を実現できる。更に、本発明によれば、上記本発明のプリント配線基板を効率良く合理的に得ることが可能なプリント配線基板の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0046】
先ず、本発明の複合体の実施形態について説明する。図1は、本発明の複合体の一実施形態を示す模式断面図である。図1の複合体100は、繊維シート101に硬化性樹脂組成物102を含浸してなるものである。また、複合体100は、貫通孔103を備えている。
【0047】
繊維シート101としては、例えば、紙、ガラス繊維織布及びガラス繊維不織布等のガラス布、アラミド不織布等の耐熱性合成繊維が挙げられる。これらのうち、ガラス繊維織布及びガラス繊維不織布が好ましく、ガラス繊維織布が特に好ましい。ガラスの材質としては、Eガラス、Sガラス、Dガラス等が挙げられる。また、繊維シートとして織布を用いる場合の繊維の織り方については、例えば、平織、朱子織、綾織等が挙げられる。
【0048】
繊維シートの厚みについては、繊維シートが十分な強度を有するのであれば薄い方が好ましい。具体的には、例えば、10〜200μmであることが好ましく、15〜80μmであることがより好ましい。また、繊維シートは、線膨張率がより小さいものが好ましい。
【0049】
硬化性樹脂組成物102としては、その硬化物の25℃における貯蔵弾性率が100〜2000MPaとなるものであればよく、例えば、硬化性樹脂とこの硬化性樹脂を硬化させる硬化剤とを含有するものが挙げられる。硬化性樹脂の樹脂成分としては、粘弾性樹脂を用いることが好ましく、例えば、エポキシ樹脂、ゴム変性エポキシ樹脂、SBR、NBR、CTBN、アクリル樹脂、ポリアミド、ポリアミドイミド、シリコーン変性ポリアミドイミド等が挙げられる。また、硬化剤としては、ジシアンジアミド、フェノール樹脂、イミダゾール、アミン化合物、酸無水物等が挙げられる。
【0050】
また、硬化性樹脂組成物102は、所定の溶媒を含有することができる。溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒;テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;メチルセロソルブ、ジエチレングリコール等のグリコールエーテル系溶媒;メチルセロソルブアセテート等のエステル系溶媒;エチレングリコールジメチルエーテル等のジアルキルグリコール系溶媒;N−メチルピロリドン、N,N’−ジメチルホルムアミド、N,N’−ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒;メタノール、ブタノール、イソプロパノール等のアルコール系溶媒;2−メトキシエタノール、2−ブトキシエタノール等のエーテルアルコール系溶媒等を用いることができ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0051】
本実施形態においては、硬化性樹脂組成物として、硬化性のアクリル重合体と、このアクリル重合体を硬化させる硬化剤とを組み合わせたものを用いることが好ましい。この場合、アクリル重合体100質量部に対して、硬化剤を60〜350質量部の割合で用いることが好ましい。硬化剤が、アクリル樹脂100質量部に対して60質量部未満であると、硬化物の貯蔵弾性率が300MPaを下回る傾向にあり、取扱い性が低下するとともに、硬化物のTgが低下して高温放置時の劣化による寸法収縮、半田耐熱性の低下等の問題が生じやすくなる傾向にある。一方、硬化剤の割合が350質量部を越えると、硬化物の貯蔵弾性率が2000MPaを上回る傾向にあり、この場合、硬化物が脆くなるので樹脂粉又は繊維が脱落しやすくなる傾向にある。
【0052】
また、上記アクリル重合体は、重量平均分子量(Mw)が、30000以上であることが好ましく、更にこのアクリル重合体は、重合体中に重合成分として2〜20質量%のグリシジルアクリレートを有し、エポキシ価が2〜36であることが好ましい。
【0053】
複合体100の製造方法としては、例えば、硬化性樹脂組成物を繊維シートに含浸させて乾燥した後、所定の位置に貫通孔を形成する方法が挙げられる。硬化性樹脂組成物を繊維シートに含浸させる方法としては、例えば、ウェット方式やドライ方式等の樹脂組成物溶液に繊維シートを浸漬させる方法や、繊維シートに硬化性樹脂組成物を塗工する方法等が挙げられる。
【0054】
次に、本発明のプリプレグの好適な実施形態について説明する。
【0055】
図2は、本発明のプリプレグの一実施形態を示す模式断面図である。図2に示すプリプレグ200は、繊維シート201と、この繊維シート201に含浸した硬化性樹脂組成物を半硬化させた半硬化樹脂組成物層202とからなる。また、プリプレグ200は、貫通孔203を備えている。
【0056】
プリプレグ200は、上述の複合体100における硬化性樹脂組成物102を半硬化させることにより得ることができる。この場合、繊維シート201は繊維シート101と同様であり、半硬化樹脂組成物層202は硬化性樹脂組成物102を半硬化させてなるものである。また、別の方法として、プリプレグ200は、上記の硬化性樹脂組成物を上記の繊維シートに含浸させて乾燥したものを用意し、次いで、硬化性樹脂組成物を半硬化させて半硬化樹脂組成物層202を形成した後、所定の位置に貫通孔203を形成することにより得ることもできる。
【0057】
硬化性樹脂組成物を半硬化させる方法としては、加熱、紫外線照射、電子線照射等の方法が挙げられる。加熱により半硬化を行う場合の条件としては、例えば、100〜200℃、1〜30分間の条件が挙げられる。
【0058】
本実施形態のプリプレグにおいては、硬化性樹脂組成物の硬化率を10〜70%の範囲とすることが好ましい。硬化性樹脂組成物の硬化率が10%未満であると、金属箔と一体化した場合、一体化した金属箔表面に繊維シートの凹凸が反映されて表面平滑性が低下する傾向にあり、また、絶縁基板の厚みの制御が困難となる傾向にある。一方、硬化性樹脂組成物の硬化率が70%を越えると、金属箔と一体化する場合に樹脂成分が不足し、高速で一体化させると気泡やかすれが生じやすくなり、金属箔との接着力が不十分となる傾向にある。
【0059】
次に、本発明の金属箔張積層板の実施形態について説明する。
【0060】
図3は、本発明の金属箔張積層板の一実施形態を示す模式断面図である。図3に示される金属箔張積層板300は、貫通孔303を有する絶縁基板301と、貫通孔303に充填された導電体304と、絶縁基板301上に積層された導電体層302とから構成されている。
【0061】
導電体層302としては、例えば、銅箔、アルミニウム箔、ニッケル箔等の金属箔が挙げられる。本実施形態の金属箔張積層板においては、導電体層302が銅箔であることが好ましく、その厚さは1〜70μmであることが好ましい。また、銅箔は、電解銅箔、圧延銅箔等を用いることができる。なお、本実施形態の金属箔張積層板においては、導電体層302は導電性を有する膜であればよく、上記の金属箔以外に、例えば、金属、有機物及びこれらの複合物であってもよい。
【0062】
導電体304としては、例えば、金、銀、ニッケル、銅、白金、パラジウム若しくは酸化ルテニウム等の金属若しくは金属酸化物又は有機金属化合物等を含む導電ペーストの加熱加圧されたものが挙げられる。
【0063】
貫通孔303を有する絶縁基板301は、上述した複合体100又はプリプレグ200を用いて形成されている。
【0064】
例えば、プリプレグ200を用いて金属箔張積層板300を得る場合、先ず、プリプレグ200の貫通孔203に導電ペーストを充填する。次に、プリプレグ200の表面上に導電体層としての金属箔を配し、金属箔とプリプレグとを一体化し金属箔張積層板300を製造することができる。また、プリプレグ200の代わりに複合体100を用いても同様に金属箔張積層板300を製造することができる。
【0065】
金属箔と、プリプレグ又は複合体とを一体化する方法としては、例えば、メタライズ、プレス積層方法、熱ロール連続積層法等が挙げられる。本実施形態においては、効率よく導電体層302を形成する観点から、プレス積層法を用いることが好ましい。プレス積層法により、金属箔と、プリプレグ又は複合体とを一体化する際の加熱加圧条件としては、例えば、温度120〜230℃、圧力1.0〜6.0MPa、加熱時間30〜120分間の範囲の条件が挙げられる。
【0066】
また、金属箔と、プリプレグ又は複合体とを連続積層する前に、金属箔の表面にプリプレグ又は複合体に含まれているものと同様の感光性樹脂組成物を塗布し、かかる樹脂組成物からなる層を形成することが好ましい。これにより、プリプレグ又は複合体に含まれる繊維シートの表面の凹凸が導電体層の表面に反映されることを更に低減することができる。
【0067】
次に、本発明のプリント配線基板及びその製造方法の好適な実施形態について説明する。
【0068】
図4(a)〜(f)は、本発明のプリント配線基板の製造方法の第1実施形態を示す一連の工程図である。まず、図4(a)に示すように、ポリエステルフィルムなどの離型性フィルム1に熱硬化型樹脂を塗布し、乾燥して溶剤分を除去することで、離型性フィルム1上に熱硬化型樹脂塗布層2を形成する。
【0069】
ここで、離型性フィルム1の厚みは、3〜50μmであることが好ましい。
【0070】
また、熱硬化型樹脂には、本発明の熱硬化性樹脂のみならず、エポキシ樹脂を主成分とするFR−5相当の耐熱性を有する樹脂が選択できる。また、熱硬化型樹脂の塗布方法は、ドクターブレード法やコーターによる方法などが有効であるが、ドクターブレード法が好ましい。更に、乾燥後の熱硬化型樹脂塗布層2の厚みは、10〜60μmであることが好ましい。
【0071】
次に、図4(b)に示すように、基材3の両面に熱硬化型樹脂塗布層2及び離型性フィルム1を配置する。
【0072】
ここで、基材3は、上述した本発明の複合体からなるものであり、例えば、複合体を耐熱離型フィルムで挟んで熱硬化させ、耐熱離型フィルムを剥離することで得ることができる。なお、基材3は、上述したプリプレグからなるものであってもよい。また、基材3の厚みは、10〜700μmであることが好ましい。
【0073】
このようにして作製した基材3の両面に、上記の熱硬化型樹脂塗布層2を形成した離型フィルム1を貼り付ける。貼る付けは、離型フィルム1上に塗布された熱硬化樹脂の硬化温度以下の温度で加圧することで行われる。例えば、熱硬化樹脂の硬化開始温度が約130℃である場合には、105℃程度の温度で2MPa程度の圧力で加圧して行うことができる。これにより熱硬化樹脂塗布層2はやや軟化し、基材3と離型フィルム1の接着に寄与する。このとき、離型フィルム1と基材3との接着強度は、弱すぎるとその後の穴加工で剥離してしまう虞があり、また強すぎると離型フィルムが剥がせなくなるため、適切な接着強度に調節する必要がある。
【0074】
次に、図4(c)に示すように、離型フィルム1接着後の基材3の所定の箇所にレーザー加工法、ドリル加工法等を利用して貫通孔4を形成し、その貫通孔4に導電性ペースト5を充填する。
【0075】
導電性ペースト5を充填する方法としては、例えば、貫通孔4を有する基材3を印刷機(図示せず)のテーブル上に設置し、直接導電性ペースト5を離型性フィルム1の上から印刷する方法が挙げられる。このとき、上面の離型性フィルム1は印刷マスクの役割と、基材3の表面の汚染防止の役割を果たすこととなる。
【0076】
また、使用する導電性ペーストとしては、銀粉、銅粉及びこれらの合金粉等の金属粉を導電性フィラーとして用い、これをエポキシ樹脂及びその硬化剤等の上述した硬化性樹脂組成物に分散させてなるものが挙げられる。
【0077】
次に、図4(d)に示すように、導電性ペースト5を充填した後の基材3から、基材3表面に熱硬化型樹脂層2が残るように離型フィルム1のみを剥離する。
【0078】
次に、このように作製されたものに片面を粗化処理した片面粗化金属箔(回路電極)6を粗化面を内側にして図4(e)に示すように積層圧着する。
【0079】
この金属箔としては、例えば、銅箔等が用いられ、その厚さは1〜35μmであることが好ましい。
【0080】
また、圧着は、熱硬化型樹脂塗布層2中の熱硬化型樹脂が硬化する温度で所定の圧力を加えることで行われ(例えば、真空中、170℃で1時間)、これにより熱硬化型樹脂を硬化させて金属箔を接着させる。
【0081】
その後、更に図4(f)に示すように、周知の技術であるフォトリソ法(ドライフィルムレジストラミネートDFR、紫外線硬化、DFR現像、エッチング、DFR剥離)によって銅箔のパターニングを行う。この後、必要に応じてソルダーレジスト形成、文字形成、基板加工などを行い両面プリント配線基板が得られる。
【0082】
このようにして作製された両面プリント配線基板は、IVH構造を有するものであり、高い信頼性および高い品質を得ることができる。
【0083】
次に、本発明のプリント配線基板の製造方法の第2実施形態について説明する。図5(a)〜(b)は、本発明のプリント配線基板の製造方法の第2実施形態を示す一連の工程図である。第2実施形態に係るプリント配線基板の製造方法においては、上記第1実施形態で示した両面プリント配線基板を用い多層プリント配線基板を作製する。
【0084】
まず、内層用の両面板の作製方法は、第1実施形態と同様、ポリエチレンテレフタレートの離型性フィルム1に熱硬化型樹脂を塗布し、溶剤分除去のため乾燥して熱硬化型樹脂塗布層2を形成する。
【0085】
次に、基材3の両面に上記離型フィルム1及び熱硬化型樹脂塗布層2を第1実施形態と同様に配して接着させる。基材3としては、上述した本発明の複合体又はプリプレグを硬化させたものが用いられる。なお、基材3としては、複数の複合体又はプリプレグを積層して硬化させたものを用いてもよい。
【0086】
このようにして作製した基材3と、上記熱硬化型樹脂を塗布した離型フィルム1を貼り合せる。貼り合わせの条件は、上記と同様離型フィルム1に塗布された熱硬化樹脂の硬化温度以下の温度で加圧して行われる。
【0087】
次に、離型フィルム1接着後の基材3の所定の箇所にドリル加工法を利用して貫通孔4を形成する。この貫通孔4に導電性ペースト5を充填する。導電性ペースト5を充填する方法としては、貫通孔4を有する基材3を印刷機(図示せず)のテーブル上に設置し、直接導電性ペースト5を離型性フィルム1の上から印刷する。このとき印刷下面は焼結金属を介して真空吸引される様にし、かつペーストが吸引され焼結金属内に取り込まれないよう紙を基材3と焼結金属の間に設置する。また上面の離型性フィルム1は印刷マスクの役割と、基材3の表面の汚染防止の役割を果たしている。
【0088】
導電性ペースト5を充填した基材3から、第1実施形態と同様に離型フィルム1のみを剥離する。このように作製されたものに両面を粗化処理した両面粗化金属箔6で挟み込み積層圧着する。これにより、基材3表面の熱硬化型樹脂塗布層2が硬化接着し、金属箔6と基材3の接合が行われる。このようにして作製された金属箔張り積層基材を、配線を形成するためフォトリソ法にて回路パターンを形成する。
【0089】
以上のようにして作製した両面プリント配線基板を内層配線用中間材として用い、多層配線基板を作製する。まず、上記の両面プリント配線基板とは別に、上述した方法と同様にして基材3の貫通孔4に導電ペースト5を充填し、離型フィルム1を剥離した図4(d)に示した状態の中間板を用意する。
【0090】
そして、図5(a)に示すように、両面プリント配線基板の両面に中間板を配置し、さらに中間板の外側に片面粗化金属箔(回路電極)7を配置する。これらを矢印A及びBの方向に加熱加圧して積層一体化する。積層時の加熱加圧の条件は、両面プリント配線基板作製時における片面粗化金属箔(回路電極)6を積層する際の条件と同様である。
【0091】
その後、配線を形成するためフォトリソ法にて回路パターンを形成し、図5(b)に示すように4層プリント配線基板を作製する。
【0092】
このようにして作製された4層プリント配線基板は、IVH構造を有するものであり、高い信頼性および高い品質を得ることができる。
【0093】
なお、ここでは4層プリント配線基板の作製方法について説明したが、さらに中間板を組み合わせて積層し、パターニングを行うことで6層プリント配線基板や、それ以上の高多層配線基板を得ることができる。このとき、最外層以外の金属箔は、両面粗化銅金属箔を用いることが好ましい。
【0094】
次に、本発明のプリント配線基板の製造方法の第3実施形態について説明する。図6(a)〜(b)は、本発明のプリント配線基板の製造方法の第3実施形態を示す一連の工程図である。第3実施形態に係るプリント配線基板の製造方法においては、上記第2実施形態で示した両面プリント配線基板及び中間板を用いて多層プリント配線基板を作製する。
【0095】
すなわち、図6(a)に示すように、2枚の両面プリント配線基板と3枚の中間板を交互に配置し、更に片面粗化金属箔(回路電極)7を最外層になるように配置して積層、パターニングを行う。積層は、熱プレス(例えば、真空中、170℃、4MPaで1時間の条件)により矢印A及びBの方向に加熱加圧することにより、金属箔の接着を行う。金属箔接着後のパターニングは、フォトリソ法で配線パターンの形成を行う。これにより、図6(b)に示す構造を有する6層プリント配線基板を得ることができる。
【0096】
このようにして作製された6層プリント配線基板は、IVH構造を有するものであり、高い信頼性および高い品質を得ることができる。
【0097】
本発明のプリント配線基板は、以上説明した本発明のプリント配線基板の製造方法によって製造されるものであり、例えば、図6(b)に示すような構成を有するものである。
【0098】
このような構成を有する本発明のプリント配線基板は、IVH構造を有し、高信頼性および高品質を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】図1は、本発明の複合体の一実施形態を示す模式断面図である。
【図2】図2は、本発明のプリプレグの一実施形態を示す模式断面図である。
【図3】図3は、本発明の金属箔張積層板の一実施形態を示す模式断面図である。
【図4】(a)〜(f)は、本発明のプリント配線基板の製造方法の第1実施形態を示す一連の工程図である。
【図5】(a)〜(b)は、本発明のプリント配線基板の製造方法の第2実施形態を示す一連の工程図である。
【図6】(a)〜(b)は、本発明のプリント配線基板の製造方法の第3実施形態を示す一連の工程図である。
【符号の説明】
【0100】
100…複合体、101…繊維シート、102…硬化性樹脂組成物、103,203,303…貫通孔、200…プリプレグ、201…繊維シート、202…半硬化樹脂組成物層、300…金属箔張積層板、301…絶縁基板、302…導電体層、304…導電部。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維シートに硬化性樹脂組成物を含浸させてなる複合体であって、
前記硬化性樹脂組成物の硬化物の25℃における貯蔵弾性率が、100〜2000MPaである複合体。
【請求項2】
前記硬化性樹脂組成物が粘弾性樹脂を含有する、請求項1に記載の複合体。
【請求項3】
前記硬化性樹脂組成物は、重量平均分子量が30000以上であるアクリル重合体を含有し、該アクリル重合体はグリシジルアクリレートを重合成分として2〜20質量%含み且つエポキシ価が2〜36である、請求項1又は2に記載の複合体。
【請求項4】
前記繊維シートが、10〜200μmの厚みを有するガラス布である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の複合体。
【請求項5】
複合体の総厚さが100μm以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の複合体。
【請求項6】
貫通孔を有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の複合体。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の複合体において、前記硬化性樹脂組成物が半硬化されてなる、プリプレグ。
【請求項8】
貫通孔を有する、請求項7記載のプリプレグ。
【請求項9】
請求項6に記載の複合体において、前記貫通孔に導電体を充填し、前記複合体の少なくとも一面上に金属箔を配したものを、加熱加圧して得られる、金属箔張積層板。
【請求項10】
請求項8に記載のプリプレグにおいて、前記貫通孔に導電体を充填し、前記プリプレグの少なくとも一面上に金属箔を配したものを、加熱加圧して得られる、金属箔張積層板。
【請求項11】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の複合体からなる第1の基材と、該第1の基材の両表面上に形成された第1の熱硬化型樹脂層と、該第1の熱硬化型樹脂層の表層にパターニングされた回路電極と、を備え、前記第1の基材と前記第1の熱硬化型樹脂層とを貫通する第1の貫通孔が形成されており、前記第1の貫通孔に前記両表面の回路電極同士を電気的に接続するための導電性物質が充填されてなる両面プリント配線基板を少なくとも二枚用い、
二枚の前記両面プリント配線基板の間に、前記複合体からなる第2の基材と、該第2の基材の両表面上に形成された第2の熱硬化型樹脂層と、を備え、前記第2の基材と前記第2の熱硬化型樹脂層とを貫通する第2の貫通孔が形成されており、前記第2の貫通孔に導電性物質が充填されてなる中間板が挟持されているとともに、
前記両面プリント配線基板の少なくとも片面に、前記複合体からなる第3の基材と、該第3の基材の両表面上に形成された第3の熱硬化型樹脂層と、一方の前記第3の熱硬化型樹脂層の表層にパターニングされた回路電極と、を備え、前記第3の基材と前記第3の熱硬化型樹脂層とを貫通する第3の貫通孔が形成されており、前記第3の貫通孔に導電性物質が充填されてなる片面プリント配線基板が、該片面プリント配線基板の前記回路電極が外側になるように積層されている、プリント配線基板。
【請求項12】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の複合体からなる基材の両面に、あらかじめ片面に熱硬化型樹脂を塗布して熱硬化型樹脂塗布層を形成した離型フィルムを、前記熱硬化型樹脂塗布層が前記基材側となるように配置し、前記熱硬化型樹脂の硬化温度以下の温度で圧力を加えて貼り合わせ、前記熱硬化型樹脂層を形成した離型フィルムを貼り合わせた前記基材の所望の位置に貫通孔を形成し、前記貫通孔に導電性樹脂ペーストを前記離型フィルム表面まで充填させ、前記熱硬化型樹脂を前記基材表面に残して両面の前記離型フィルムのみを剥離し、剥離後の前記基材の表面に銅箔を配し、加熱加圧する事により前記熱硬化型樹脂を硬化させ前記銅箔を接着させ、前記基材表面の銅箔をパターンニングする工程を少なくとも有する、プリント配線基板の製造方法。
【請求項13】
請求項12に記載の製造方法によりプリント配線基板を作製した後、前記プリント配線基板の両面に、請求項12に記載の製造方法において離型フィルムを剥離した後に得られる、未硬化状態の熱硬化型樹脂塗布層を有する未硬化基板を配置して前記プリント配線基板を挟み、前記未硬化基板の表面に銅箔を配して加熱加圧して、前記プリント配線基板と前記未硬化基板とを積層硬化し、表面の前記銅箔をパターニングして回路形成する工程を少なくとも1回以上行うことにより多層配線の形成を行う、プリント配線基板の製造方法。
【請求項14】
請求項12に記載の製造方法により作製したプリント配線基板と、請求項12に記載の製造方法において離型フィルムを剥離した後に得られる、未硬化状態の熱硬化型樹脂塗布層を有する未硬化基板とを、前記プリント配線基板が常に最外層になるように所望の数だけ交互に配し、加熱加圧して前記プリント配線基板と前記未硬化基板を積層硬化することにより多層配線の形成を行う、プリント配線基板の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−176677(P2006−176677A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−371980(P2004−371980)
【出願日】平成16年12月22日(2004.12.22)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】