説明

試料の搬送処理方法

【課題】半導体素子の微細化に伴って半導体製造装置から発生する微細粒径異物の低減が求められており、半導体処理装置のロードロック室と大気搬送手段間の試料搬入出処理時に乾燥窒素ガスを導入することにより、ロードロック室内のガス中に残留する水分を極力排除し、減圧排気時のガスの温度変化に伴う凝縮水の発生を大幅に抑制し、凝縮水の落下による試料上の付着異物によるパターン不良を低減しつつ、試料の生産効率を向上する。
【解決手段】ロードロック室9aと大気搬送手段間の試料搬入出処理操作に対し、乾燥窒素ガスを導入し、ロードロック室9a内の湿度を低減する構成とし、乾燥窒素ガスの導入時に多孔質材により構成するガス導入部材40を試料台14aに対向するロードロック室蓋21の上面に設置することにより構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造装置内の試料の搬送処理方法に係り、特に、処理装置内の試料の搬入出時の搬送異物を低減する試料の搬送処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造においては、サブミクロンレベルの異物が各々の製造工程に影響を及ぼす。例えば、半導体デバイスの製造工程においては半導体デバイスを形成する試料上に付着した異物がマスクとなって正確なパターンが形成されないため、製造歩留まりの悪化をもたらす場合がある。
【0003】
異物は種々の要因で発生するが、たとえば、半導体製造装置内で搬送中に装置内から微小粒子などが落下し、試料上の異物となる場合がある。
【0004】
半導体製造装置によっては、試料の処理が減圧下で行われるものがある。その際、試料の搬送処理については、搬送処理時間を短縮するため、大気圧からの減圧処理操作時に急速な排気処理を実施する場合がある。
【0005】
この際、減圧排気時のガスは急速な減圧処理により、ガス温度が低下し、水分の凝縮が発生する恐れがある。ガス中の水分が凝縮した場合には、凝縮した水分粒子が試料上に落下する。試料はその後所定の処理を実行されるが試料の品質検査の際、試料上に落下した凝縮水分の痕跡が試料のパターン不良とされ、製品の歩留まりを低下させる一因となっていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述したように、半導体素子の微細化に伴って半導体製造装置から発生する微細粒径異物の低減がさらに求められている。
【0007】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは前記半導体処理装置のロードロック室と大気搬送手段間の試料搬入出処理時に乾燥窒素ガスを導入することにより、ロードロック室内のガス中に残留する水分を極力排除し、減圧排気時のガスの温度変化に伴う凝縮水の発生を大幅に抑制し、凝縮水の落下による試料上の付着異物によるパターン不良を低減しつつ、試料の生産効率を向上することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的は、前記ロードロック室と大気搬送手段間の試料搬入出処理操作に対し、乾燥窒素ガスを導入し、ロードロック室内の湿度を低減する構成とする。
【0009】
また、乾燥窒素ガスの導入時に多孔質材により構成するガス導入部材を試料に対向する上面に設置することにより構成する。
【0010】
本願発明では、上記手段により、前記試料に対し、表面に付着する微小粒子状異物を増加することなく、試料の生産性を向上することができる。
【発明の効果】
【0011】
以上、本発明によれば、プラズマ処理後に試料表面上に残留する微小付着異物を抑制しつつ、試料の生産性を向上できる。以って、信頼性の高く、生産効率の良い半導体デバイスの製造ができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は本発明で用いられる半導体製造装置の概略構成を示した平面図である。(実施例1)
【図2】図2は本発明で用いられる半導体製造装置に配置される真空搬送容器の概略構成を示す断面図である。(実施例1)
【図3】図3は水の温度と水蒸気圧の関係を示す図である。(実施例1)
【図4】図4は相対湿度と大気圧露点の関係を示す図である。(実施例1)
【図5】図5は減圧排気時の経過時間とガス温度の関係を示す図である。(実施例1)
【図6】図6はロードロック室の断面を示す概略構成図(通常ガス供給配菅)である。(従来例)
【図7】図7はロードロック室の断面を示す概略構成図(大面積多孔質材によるガス供給部材設置時)である。(実施例1)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施例について図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0014】
図1は本発明にかかる真空搬送容器を内設する半導体製造装置の概略構成を示す図である。図1に示す半導体製造装置1はカセットが設置される大気側処理部17と真空側処理部19の二つの処理部で構成されている。真空側処理部19は試料2(2a、2b、2c)を真空処理する真空搬送容器6と複数の真空処理室7(7a、7b、7c、7d)と前記真空処理室7に試料2を搬入出する為の大気雰囲気と真空雰囲気に切り替え可能なロードロック室9(9a、9b)とで構成されている。
【0015】
真空処理室7(7a、7b、7c、7d)及びロードロック室9(9a、9b)は、それぞれの内側が真空搬送容器6内部と同等の真空度まで減圧され圧力が維持される真空室をそなえており、この真空処理室内部にその上面に処理対象の試料が載置される載置面を備えた載置台12が配置されている。特に、試料は真空処理室7(7a、7b、7c、7d)内に配置された載置台12(12a、12b、12c、12d)上に載置された状態で処理される。
【0016】
真空搬送容器6内には、各真空処理室7(7a、7b、7c、7d)内に配置された載置台12(12a、12b、12c、12d)及びロードロック室9(9a、9b)の試料台14(14a、14b)との間で試料を搬送するための真空搬送ロボット8が配置されている。この真空搬送ロボット8は二つのロボットアーム(8a、8b)を備え、それぞれはその上面に試料を載せて搬送し各載置台の間で試料をやり取りする。
【0017】
また、これら真空処理室7(7a、7b、7c、7d)及びロードロック室9(9a、9b)と真空搬送容器6との間にはこれらの間を仕切り、試料が開口部内を搬送されるゲートと、このゲートを開閉するゲートバルブを有するゲートユニット16(16a、16b、16c、16d、16e、16f)が配置されている。
【0018】
大気側処理部17は、大気圧下に配置され、複数の試料を収納可能なカセット3(3a、3b、3c)が上面に載せられる複数のカセット載置台10(10a、10b、10c)、内部に試料が搬送される空間を有する大気搬送容器11と、この大気搬送容器11内に配置されたカセット載置台10に載置されるカセット内の試料を挿入出可能となるような上下方向、左右方向に移動可能なように構成されたロボットア−ムなどの大気搬送手段4と試料の位置合わせを行う機構5と、真空搬送容器6と大気搬送容器11とを連結し大気圧と真空圧とに切り替え可能な複数のロードロック室9(9a、9b)とで構成されている。
【0019】
ロードロック室9(9a、9b)は大気搬送容器11と接続されている。このロードロック室9(9a、9b)内部は装置外部の雰囲気圧(大気圧)と同等の圧力から真空搬送容器6内と同等の圧力までの間で圧力を変更することができるように構成されている。
【0020】
ロードロック室9(9a、9b)と大気搬送容器11との間には、それぞれゲートユニット18(18a、18b)が配置されており、このゲートユニット18(18a、18b)内のゲートを介して大気搬送容器が連通されているとともに、ゲートユニット18に備えられたゲートバルブを駆動することによりこのゲートが開閉可能となっている。
【0021】
図2は真空搬送容器6、ロードロック室9、真空側ゲートユニット16及び大気側ゲートユニット18の概略構成を示す。真空搬送容器6は真空搬送容器本体6a、蓋6b、及び真空搬送ロボット8で構成され、真空搬送容器6の一部にはロードロック室9(9a、9b)との試料のやり取りを行う為の真空側ゲートユニット16(16e、16f)が設置されるとともに、ロードロック室9(9a、9b)の他端には大気側ゲートユニット18(18a、18b)が設置されている。
【0022】
図1〜図7を用いて本発明の実施例を説明する。半導体製造装置を用いた際の試料処理の流れの一例を以下に示す。被処理試料2aはカセット載置台10aに載置されたカセット3aより大気搬送手段4により1枚取り出され、試料の位置合わせを行う機構5をへて、大気圧に調圧されたロードロック室9aに内設されたウエハ載置台14a上に大気側ゲートユニット18aを介して大気搬送手段4により搬入される。
【0023】
ロードロック室9aは図示しない排気手段により減圧排気され、あらかじめ所定の圧力まで減圧排気されている真空搬送容器6と同等の圧力まで減圧される。その後、真空側ゲートユニット16eを介して真空搬送容器6に内設された真空搬送ロボット8によりロードロック室内の試料載置台14a上から取り出され、たとえば真空側ゲートユニット16bを介して真空処理室7bに内設された試料載置台12b上に載置される。
【0024】
真空処理室7b内で所定の条件下で処理された試料は真空側ゲートユニット16bを介して真空搬送容器6に内設された真空搬送ロボット8により真空処理室7b内の試料載置台12b上から取り出され、たとえば真空側ゲートユニット16fを介してロードロック室9bに内設された試料載置台14b上に載置される。
【0025】
その後、ロードロック室9bは図示しないパージ手段により大気圧まで加圧される。大気圧に戻された試料は大気搬送手段4により大気側ゲートユニット18bを介してロードロック室9b内に内設されたウエハ載置台14b上から搬出され、たとえばカセット載置台10cに載置されたカセット3cに収納され一連の処理を終了する。
【0026】
本願発明では前記半導体製造装置内での試料搬送時の試料上での発生異物量を低減するべくなされたものであり、図1に示したロードロック室9(9a、9b)と大気搬送手段4との間の試料の搬入出処理及びロードロック室内の減圧排気処理に関するものである。
【0027】
図3は水の温度と水蒸気圧との関係を示し、図4は半導体製造装置を室温25℃の室内に設置した場合の相対湿度と大気圧露点との関係を示したものである。
【0028】
半導体製造装置をクリーンルームに設置し、大気側ロードロック室のゲートバルブオープンと試料搬送時のロードロック室内の湿度を計測した。計測された湿度は、この場合、ほぼ3.5%の値となった。
【0029】
図4に示した相対湿度と大気圧露点との関係を示す折れ線とロードロック室の測定湿度3.5%が交わる交点(約−19℃)より大気圧露点が低い温度域でガス中の水分が凝縮する可能性が高いと予測される。
【0030】
図5はロードロック室9(9a、9b)の減圧排気処理時間の経過時間(任意単位)とロードロック室9内のガス温度との関係を示した例を示している。図5は図示しない排気配管中に設置したオリフィスの径を6mmとした場合の排気経過時間とガス温度の関係を示したものである。減圧処理中のガス温度は、最低温時には、−38℃程度にまで低下しており、かなりの温度降下を生じている。
【0031】
図5に示した結果ではロードロック室9内のガス温度は−38℃程度まで低下しており、ガス中に含まれる水分の凝縮が発生しているものと推測される。
【0032】
一方、ロードロック室9内の湿度をより低湿度側に移動すれば、ガス中に含有する水分は微量となり、減圧排気処理時の水分の凝縮を防ぐことが期待できる。
【0033】
減圧排気処理時の水分の凝縮を防ぐため、ロードロック室9の減圧排気前に室内の湿度を1%以下に保持するように乾燥窒素ガスを導入する。
【0034】
試料2のロードロック室9(9a、9b)への搬入出の際には、ゲートユニット18の開動作から前記室内での試料2の搬送手段による搬入出、ゲートユニット18閉動作に至るまでの間、ロードロック室内へ大気ガスが流入し、前記室内の湿分が増加しないように、ロードロック室9内への乾燥窒素ガスの導入を絶え間なく実施する。減圧排気前のロードロック室9の湿度を1%以下に保持することで、減圧排気時のガス中水分の凝縮をほぼ解消できる。このため、ロードロック室内ガス中の凝縮水分の発生を大幅に抑制し、凝縮水の落下による試料上の付着異物によるパターン不良を低減できる効果が得られる。
【0035】
また、図7に示すように、ロードロック室9a内にガス供給配管30から乾燥窒素ガスを導入する際に多孔質材により構成するガス導入部材40をロードロック室9a内の試料載置台14aに対向するようにロードロック室蓋21に設置する。
【0036】
ガス導入部材40を設置し、ガス供給面積を増大することにより、単位面積当たりのガス供給量を抑制する。このため、図6のロードロック室蓋20に多孔質材を用いずに外径6mm程度のガス供給配管(図示しないガスフィルタ含む)を用いた場合に比較して、ガス供給面の単位面積あたりのガス供給速度を抑制することが可能となる。
【0037】
ロードロック室9内へ供給する乾燥窒素ガスのガス流速による異物への流体エネルギが抑制され、壁に付着したり、容器の底面に落下している異物の巻き上げが抑制できる。このため、試料上に落下する異物の発生量をさらに抑制できる効果が得られる。
【符号の説明】
【0038】
1 半導体製造装置
2 試料
3 カセット
4 大気搬送手段
5 ウエハ位置合わせ機構
6 真空搬送容器
7 真空処理室
8 真空搬送ロボット
9 ロードロック室
9a ロードロック室
9b ロードロック室
10 カセット載置台
11 大気搬送容器
12 ウエハ載置台
14 ウエハ載置台
14a ウエハ載置台
14b ウエハ載置台
16 ゲートユニット
17 大気側処理部
18 ゲートユニット
19 真空側処理部
20 ロードロック室蓋
21 ロードロック室蓋
30 ガス供給配管
40 ガス導入部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料をプラズマ処理する半導体処理装置のロードロック室と大気搬送手段間の試料の搬送処理方法において、ロードロック室内に乾燥窒素ガスを流入しながら前記大気搬送手段間の試料の搬入出を行うことを特徴とする試料の搬送処理方法。
【請求項2】
請求項1記載の試料の搬送処理方法において、前記乾燥窒素ガスの導入時に、多孔質材により構成するガス導入部材を前記試料に対向するロードロック室蓋の上面に設置し、前記ガス導入部材を介して前記乾燥窒素ガスを前記ロードロック室内に導入することを特徴とする試料の搬送処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−216591(P2011−216591A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−81971(P2010−81971)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】