説明

車両およびその制御方法

【課題】エンジンとモータとを搭載した車両において、運転停止しているエンジンを始動する際により適正な制御を実行すると共にモータと電力をやり取りするバッテリの端子間電圧が下限電圧を下回ることを抑制する。
【解決手段】モータ走行しているときに、車速Vと残容量SOCとに基づいてエンジンを始動するための閾値としての電圧用閾値Vrefを設定し(ステップS160)、バッテリの端子間電圧Vbが設定した電圧用閾値Vref未満であるときには(ステップS170)エンジンをモータリングして始動する(ステップS200〜S230,S280〜S300)。こうすれば、バッテリの端子間電圧Vbがバッテリを放電可能な下限電圧を下回るのを抑制すると共により適正なタイミングでエンジンを始動することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の車両としては、走行用の動力を出力するエンジンと、エンジンをモータリング可能な第1モータと、走行用の動力を出力する第2モータと、第1モータや第2モータと電力のやり取りをするバッテリとを備える車両が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この車両では、第2モータからの動力を用いて走行しているときに、バッテリの現在の充電状態と所定の電圧モデルとに基づいてエンジンのモータリングに必要な電力を継続して出力できる継続時間を推定し、推定した継続時間が第1モータでエンジンをモータリングして始動するのに必要な継続時間になったときにはエンジンを始動することにより、バッテリを限界まで使用している。
【特許文献1】特開2003−153402号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述した車両では、運転停止しているエンジンを第1モータでモータリングして始動する際にはモータリングによりバッテリの電力を消費するためにバッテリの端子間電圧が低下する。こうしたバッテリの電力消費によってバッテリの端子間電圧がバッテリから電力を取り出せなくなる下限電圧を下回るのを抑制するために、一般に、現在のバッテリの状態や車両の状態に拘わらずバッテリの端子間電圧がバッテリの下限電圧より高い予め定められた電圧用閾値まで低下したときにエンジンを始動する制御が行なわれているが、こうした電圧用閾値がある定められた値として設定されているため、車両の状態やバッテリの状態などによっては適正なタイミングでエンジンを始動できないことがある。
【0004】
本発明の車両およびその制御方法は、内燃機関と電動機とを搭載し、内燃機関の始動に用いられる始動装置と、電動機および始動装置と電力のやりとりが可能な蓄電装置とを備える車両において、始動装置で運転停止している内燃機関を始動する際により適正なタイミングで内燃機関を始動すると共に蓄電装置の端子間電圧が下限電圧を下回ることを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の車両は、上述の目的を達成するために以下の手段を採った。
【0006】
本発明の車両は、
内燃機関と電動機とを搭載し、少なくとも前記電動機からの動力を用いて走行可能な車両であって、
前記内燃機関の始動に用いられる機関始動手段と、
前記電動機および前記機関始動手段と電力のやりとりが可能な蓄電手段と、
該蓄電手段の端子間電圧を検出する電圧検出手段と、
前記蓄電手段の端子間電圧の低下程度を推定する電圧低下程度推定手段と、
前記推定された端子間電圧の低下程度に基づいて前記内燃機関を始動するための電圧用閾値を設定する閾値設定手段と、
前記内燃機関を運転停止している状態のときに、前記検出された端子間電圧が前記設定された電圧用閾値未満に至るまでは前記内燃機関の運転停止を継続するよう前記内燃機関と前記機関始動手段とを制御し、前記検出された端子間電圧が前記設定された電圧用閾値未満に至ったときには前記内燃機関が始動されるよう前記内燃機関と前記機関始動手段とを制御する機関始動制御手段と、
を備えることを要旨とする。
【0007】
この本発明の車両では、蓄電手段の端子間電圧の低下程度を推定し、推定された端子間電圧の低下の程度に基づいて内燃機関を始動するための電圧用閾値を設定する。そして、内燃機関を運転停止している状態のときに、検出された端子間電圧が設定された電圧用閾値未満に至るまでは内燃機関の運転停止を継続するよう内燃機関と機関始動手段とを制御し、検出された端子間電圧が設定された電圧用閾値未満に至ったときには内燃機関が始動されるよう内燃機関と機関始動手段とを制御する。蓄電手段の端子間電圧の低下程度を推定して、推定された端子間電圧の低下程度に基づいて内燃機関を始動するための電圧用閾値を設定するから、内燃機関を始動する際に予め決められた値を電圧用閾値として用いるものに比してより適正なタイミングで内燃機関を始動できると共に蓄電手段の端子間電圧が蓄電手段の下限電圧を下回るのを抑制することができる。
【0008】
こうした本発明の車両において、前記電圧低下推定手段は、車速と前記蓄電手段の状態とアクセル開度とのうちの少なくとも一つに基づいて前記端子間電圧の低下程度を推定する手段であるものとすることもできる。この場合において、前記電圧低下推定手段は、前記蓄電手段の状態として前記蓄電手段の残容量と該蓄電手段の温度と該蓄電手段の開放電圧とのうちの少なくとも一つに基づいて前記端子間電圧の低下程度を推定する手段であるものとすることもできる。蓄電手段の状態として蓄電手段の残容量と蓄電手段の温度と蓄電手段の開放電圧とのうちの少なくとも一つに基づいて端子間電圧の低下程度を推定する場合において、前記電圧低下推定手段は、前記蓄電手段の残容量が大きくなるほど小さくなる傾向に前記端子間電圧の低下程度を推定し、前記閾値設定手段は、前記推定された端子間電圧の低下程度が小さくなるほど低くなる傾向に前記電圧用閾値を設定する手段であるものとすることもできる。また、前記電圧低下推定手段は、前記蓄電手段の温度が高くなるほど小さくなる傾向に前記端子間電圧の低下程度を推定したり、前記蓄電手段の開放電圧が高くなるほど小さくなる傾向に前記端子間電圧の低下程度を推定するものとすることもできる。蓄電手段の残容量が大きくなるほど、蓄電手段の温度や開放電圧が高くなるほど、内燃機関を始動する際の電力消費に伴う蓄電手段の電圧低下程度が小さくなると考えられる。したがって、蓄電手段の残容量が大きくなるほど電圧用閾値を小さく設定したり、蓄電手段の温度や開放電圧が高くなるほど電圧用閾値を小さく設定することにより、蓄電手段の状態に応じたタイミングで内燃機関を始動することができる。
【0009】
また、本発明の車両において、前記電圧低下推定手段は、前記アクセル開度が小さくなるほど大きくなる傾向に前記端子間電圧の低下程度を推定する手段であり、前記閾値設定手段は、前記推定された端子間電圧の低下程度が小さくなるほど低くなる傾向に前記電圧用閾値を設定する手段であるものとすることもできる。アクセル開度が小さくなるほど運転者が要求する要求駆動力が小さいため、内燃機関を始動する際に蓄電手段の端子間電圧の低下程度が小さいと考えられる。したがって、アクセル開度が小さくなるほど低くなる傾向に電圧用閾値を設定することにより、アクセル開度に応じたタイミングで内燃機関を始動することができる。
【0010】
さらに、本発明の車両において、前記機関始動制御手段は、前記内燃機関を運転停止している状態で前記電動機からの動力を用いて走行するモータ走行モードで走行しているときに、前記検出された端子間電圧が前記設定された電圧用閾値未満に至るまでは前記モータ走行モードでの走行が継続するよう前記内燃機関と前記機関始動手段と前記電動機とを制御し、前記検出された端子間電圧が前記設定された電圧用閾値未満に至ったときには前記内燃機関が始動されて走行するよう前記内燃機関と前記機関始動手段と前記電動機とを制御する手段であるものとすることもできる。こうすれば、モータ走行モードで走行しているときでも、より適正にモータ走行モードから内燃機関を始動して走行する状態に移行することができる。
【0011】
そして、本発明の車両において、前記内燃機関が始動する際における前記端子間電圧の電圧低下量を学習する学習手段を備え、前記電圧低下推定手段は、前記学習した電圧低下量に基づいて前記端子間電圧の低下程度を推定する手段であるものとすることもできる。こうすれば、より適正に電圧用閾値を設定することができる。
【0012】
また、本発明の車両において、前記機関始動手段は、前記内燃機関の出力軸をモータリング可能な手段であり、前記機関始動制御手段は、前記内燃機関を始動するときには前記内燃機関の出力軸がモータリングされるよう前記機関始動手段を制御する手段であるものとすることもできる。こすうれば、内燃機関を始動する際に内燃機関の出力軸のモータリングに伴って蓄電手段の電力が消費されるときでも、より適正な制御を行なうことができる。この場合において、前記機関始動手段は、車軸に接続された駆動軸と前記内燃機関の出力軸とに接続され電力と動力の入出力により該駆動軸への動力の入出力を伴って該内燃機関の出力軸に動力を入出力可能な電力動力入出力手段を備える手段であり、前記電動機は、前記駆動軸に動力を入出力する電動機であるものすることもできる。こうした電力動力入出力手段を備える場合において、前記電力動力入出力手段は、前記内燃機関の出力軸と前記駆動軸と第3の軸とに接続され該3軸のうちのいずれか2軸に入出力される動力に基づいて残余の1軸に動力を入出力する3軸式動力入出力手段と、前記第3の軸に動力を入出力する発電機とを備える手段であるものとすることもできる。こうした電力動力出力手段が3軸式動力入出力手段と発電機とを備える場合において、前記駆動軸に要求される要求駆動力を設定する要求駆動力設定手段を備え、前記電圧低下推定手段は、車速が高いほど小さくなる傾向に前記端子間電圧の低下程度を推定する手段であり、前記閾値設定手段は、前記推定された端子間電圧の低下程度が小さくなるほど低くなる傾向に前記電圧用閾値を設定する手段であり、前記機関始動制御手段は、前記検出された端子間電圧が前記設定された電圧用閾値未満に至るまでは前記内燃機関の運転停止を継続すると共に前記設定された要求駆動力に基づく駆動力が前記駆動軸に出力されるよう前記内燃機関と前記発電機と前記電動機とを制御し、前記検出された端子間電圧が前記設定された電圧用閾値未満に至ったときには前記内燃機関の出力軸がモータリングされて始動されると共に前記発電機の回転数の変化に基づいて前記駆動軸に出力される駆動力と前記発電機から前記駆動軸へ出力される駆動力と前記電動機から前記駆動軸に出力される駆動力との和の駆動力により前記設定された要求駆動力に基づく駆動力が前記駆動軸に出力されるよう前記内燃機関と前記発電機と前記電動機とを制御する手段であるものとすることもできる。検出された端子間電圧が設定された電圧用閾値未満に至ったときには内燃機関の出力軸がモータリングされて始動されると共に発電機の回転数の変化に基づいて駆動軸に出力される駆動力とモータリング手段から駆動軸へ出力される駆動力と電動機から駆動軸に出力される駆動力との和の駆動力により設定された要求駆動力に基づく駆動力が駆動軸に出力されるよう内燃機関と発電機と電動機とを制御する。このとき、発電機の回転数の変化に基づいて駆動軸に出力される駆動力によっては電動機から回生制動力が出力されることがあるが、車速が高くなるほど電動機の回転数が高くなり電動機の発電電力が大きくなるため、蓄電手段の端子間電圧の低下程度が小さくなると考えられる。したがって、車速が高くなるほど小さくなる傾向に電圧用閾値を設定することにより、電圧用閾値をより適正な値に設定することができ、内燃機関を始動する際により適正なタイミングで始動することができる。
【0013】
本発明の車両の制御方法は、
内燃機関と電動機とを搭載し、前記内燃機関の始動に用いられる機関始動手段と、前記電動機および前記機関始動手段と電力のやりとりが可能な蓄電手段と、該蓄電手段の端子間電圧を検出する電圧検出手段とを備え、少なくとも前記電動機からの動力を用いて走行可能な車両の制御方法であって、
前記蓄電手段の端子間電圧の低下程度を推定し、
前記推定された端子間電圧の低下程度に基づいて前記内燃機関を始動するための電圧用閾値を設定し、
前記内燃機関を運転停止している状態のときに、前記検出された端子間電圧が前記設定された電圧用閾値未満に至るまでは前記内燃機関の運転停止を継続するよう前記内燃機関と前記機関始動手段とを制御し、前記検出された端子間電圧が前記設定された電圧用閾値未満に至ったときには前記内燃機関が始動されるよう前記内燃機関と前記機関始動手段とを制御する
ことを要旨とする。
【0014】
この本発明の車両の制御方法では、蓄電手段の端子間電圧の低下程度を推定し、推定された端子間電圧の低下の程度に基づいて内燃機関を始動するための電圧用閾値を設定する。そして、内燃機関を運転停止している状態のときに、検出された端子間電圧が設定された電圧用閾値未満に至るまでは内燃機関の運転停止を継続するよう内燃機関と機関始動手段とを制御し、検出された端子間電圧が設定された電圧用閾値未満に至ったときには内燃機関が始動されるよう内燃機関と機関始動手段とを制御する。蓄電手段の端子間電圧の低下程度を推定して、推定された端子間電圧の低下程度に基づいて内燃機関を始動するための電圧用閾値を設定するから、予め決められた値を電圧用閾値として用いるもの比して内燃機関をより適正なタイミングで始動することができると共に内燃機関を始動する際に電力の消費に伴って蓄電手段の端子間電圧が蓄電手段の下限電圧を下回るのを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、本発明を実施するための最良の形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0016】
図1は、本発明の一実施例であるハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。実施例のハイブリッド自動車20は、図示するように、エンジン22と、エンジン22の出力軸としてのクランクシャフト26にダンパ28を介して接続された3軸式の動力分配統合機構30と、動力分配統合機構30に接続された発電可能なモータMG1と、動力分配統合機構30に接続された駆動軸としてのリングギヤ軸32aに取り付けられた減速ギヤ35と、この減速ギヤ35に接続されたモータMG2と、動力出力装置全体をコントロールするハイブリッド用電子制御ユニット70とを備える。
【0017】
エンジン22は、ガソリンまたは軽油などの炭化水素系の燃料により動力を出力する内燃機関であり、エンジン22の運転状態を検出する各種センサから信号を入力するエンジン用電子制御ユニット(以下、エンジンECUという)24により燃料噴射制御や点火制御,吸入空気量調節制御などの運転制御を受けている。エンジンECU24は、ハイブリッド用電子制御ユニット70と通信しており、ハイブリッド用電子制御ユニット70からの制御信号によりエンジン22を運転制御すると共に必要に応じてエンジン22の運転状態に関するデータをハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。
【0018】
動力分配統合機構30は、外歯歯車のサンギヤ31と、このサンギヤ31と同心円上に配置された内歯歯車のリングギヤ32と、サンギヤ31に噛合すると共にリングギヤ32に噛合する複数のピニオンギヤ33と、複数のピニオンギヤ33を自転かつ公転自在に保持するキャリア34とを備え、サンギヤ31とリングギヤ32とキャリア34とを回転要素として差動作用を行なう遊星歯車機構として構成されている。動力分配統合機構30は、キャリア34にはエンジン22のクランクシャフト26が、サンギヤ31にはモータMG1が、リングギヤ32にはリングギヤ軸32aを介して減速ギヤ35がそれぞれ連結されており、モータMG1が発電機として機能するときにはキャリア34から入力されるエンジン22からの動力をサンギヤ31側とリングギヤ32側にそのギヤ比に応じて分配し、モータMG1が電動機として機能するときにはキャリア34から入力されるエンジン22からの動力とサンギヤ31から入力されるモータMG1からの動力を統合してリングギヤ32側に出力する。リングギヤ32に出力された動力は、リングギヤ軸32aからギヤ機構60およびデファレンシャルギヤ62を介して、最終的には車両の駆動輪63a,63bに出力される。
【0019】
モータMG1およびモータMG2は、いずれも発電機として駆動することができると共に電動機として駆動できる周知の同期発電電動機として構成されており、インバータ41,42を介してバッテリ50と電力のやりとりを行なう。インバータ41,42とバッテリ50とを接続する電力ライン54は、各インバータ41,42が共用する正極母線および負極母線として構成されており、モータMG1,MG2のいずれかで発電される電力を他のモータで消費することができるようになっている。したがって、バッテリ50は、モータMG1,MG2のいずれかから生じた電力や不足する電力により充放電されることになる。なお、モータMG1,MG2により電力収支のバランスをとるものとすれば、バッテリ50は充放電されない。モータMG1,MG2は、いずれもモータ用電子制御ユニット(以下、モータECUという)40により駆動制御されている。モータECU40には、モータMG1,MG2を駆動制御するために必要な信号、例えばモータMG1,MG2の回転子の回転位置を検出する回転位置検出センサ43,44からの信号や図示しない電流センサにより検出されるモータMG1,MG2に印加される相電流などが入力されており、モータECU40からは、インバータ41,42へのスイッチング制御信号が出力されている。モータECU40は、ハイブリッド用電子制御ユニット70と通信しており、ハイブリッド用電子制御ユニット70からの制御信号によってモータMG1,MG2を駆動制御すると共に必要に応じてモータMG1,MG2の運転状態に関するデータをハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。なお、モータECU40は、回転位置検出センサ43,44からの信号に基づいてモータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2も演算している。
【0020】
バッテリ50は、バッテリ用電子制御ユニット(以下、バッテリECUという)52によって管理されている。バッテリECU52には、バッテリ50を管理するのに必要な信号、例えば、バッテリ50の端子間に設置された電圧センサ50aからの端子間電圧Vb,バッテリ50の出力端子に接続された電力ライン54に取り付けられた図示しない電流センサからの充放電電流,バッテリ50に取り付けられた温度センサ51からの電池温度Tbなどが入力されており、必要に応じてバッテリ50の状態に関するデータを通信によりハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。また、バッテリECU52は、バッテリ50を管理するために電流センサにより検出された充放電電流の積算値に基づいて残容量(SOC)を演算したり、演算した残容量(SOC)と電池温度Tbとに基づいてバッテリ50を充放電してもよい最大許容電力である入出力制限Win,Woutを演算している。なお、バッテリ50の入出力制限Win,Woutは、電池温度Tbに基づいて入出力制限Win,Woutの基本値を設定し、バッテリ50の残容量(SOC)に基づいて出力制限用補正係数と入力制限用補正係数とを設定し、設定した入出力制限Win,Woutの基本値に補正係数を乗じることにより設定することができる。図3に電池温度Tbと入出力制限Win,Woutとの関係の一例を示し、図4にバッテリ50の残容量(SOC)と入出力制限Win,Woutの補正係数との関係の一例を示す。
【0021】
ハイブリッド用電子制御ユニット70は、CPU72を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPU72の他に処理プログラムを記憶するROM74と、データを一時的に記憶するRAM76と、図示しない入出力ポートおよび通信ポートとを備える。ハイブリッド用電子制御ユニット70には、イグニッションスイッチ80からのイグニッション信号,シフトレバー81の操作位置を検出するシフトポジションセンサ82からのシフトポジションSP,アクセルペダル83の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Acc,ブレーキペダル85の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ86からのブレーキペダルポジションBP,車速センサ88からの車速Vなどが入力ポートを介して入力されている。ハイブリッド用電子制御ユニット70は、前述したように、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52と通信ポートを介して接続されており、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52と各種制御信号やデータのやりとりを行なっている。
【0022】
こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20は、運転者によるアクセルペダル83の踏み込み量に対応するアクセル開度Accと車速Vとに基づいて駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力すべき要求トルクを計算し、この要求トルクに対応する要求動力がリングギヤ軸32aに出力されるように、エンジン22とモータMG1とモータMG2とが運転制御される。エンジン22とモータMG1とモータMG2の運転制御としては、要求動力に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にエンジン22から出力される動力のすべてが動力分配統合機構30とモータMG1とモータMG2とによってトルク変換されてリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御するトルク変換運転モードや要求動力とバッテリ50の充放電に必要な電力との和に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にバッテリ50の充放電を伴ってエンジン22から出力される動力の全部またはその一部が動力分配統合機構30とモータMG1とモータMG2とによるトルク変換を伴って要求動力がリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御する充放電運転モード、エンジン22の運転を停止してモータMG2からの要求動力に見合う動力をリングギヤ軸32aに出力するよう運転制御するモータ運転モードなどがある。
【0023】
次に、こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20の動作について説明する。図5はハイブリッド用電子制御ユニット70により実行される駆動制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、所定時間毎(例えば数msec毎)に繰り返し実行される。
【0024】
駆動制御ルーチンが実行されると、ハイブリッド用電子制御ユニット70のCPU72は、まず、アクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Accや車速センサ88からの車速V,エンジン22の回転数Ne,モータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2,バッテリ50の入出力制限Win,Wout,端子間電圧Vbなど制御に必要なデータを入力する処理を実行する(ステップS100)。ここで、エンジン22の回転数Neはクランクポジションセンサ140からの信号に基づいて演算されたものをエンジンECU24から通信により入力するものとした。また、モータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2は、回転位置検出センサ43,44により検出されたモータMG1,MG2の回転子の回転位置に基づいて演算されたものをモータECU40から通信により入力するものとした。さらに、バッテリ50の入出力制限Win,Woutは、バッテリ50の電池温度Tbとバッテリ50の残容量(SOC)とに基づいて設定されたものをバッテリECU52から通信により入力するものとした。そして、バッテリ50の端子間電圧Vbは、電圧センサ50aにより検出されたものをバッテリECU52から通信により入力するものとした。
【0025】
こうしてデータを入力すると、入力したアクセル開度Accと車速Vとに基づいて車両に要求されるトルクとして駆動輪63a,63bに連結された駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力すべき要求トルクTr*とエンジン22に要求される要求パワーPe*とを設定する(ステップS110)。要求トルクTr*は、実施例では、アクセル開度Accと車速Vと要求トルクTr*との関係を予め定めて要求トルク設定用マップとしてROM74に記憶しておき、アクセル開度Accと車速Vとが与えられると記憶したマップから対応する要求トルクTr*を導出して設定するものとした。図5に要求トルク設定用マップの一例を示す。要求パワーPe*は、設定した要求トルクTr*にリングギヤ軸32aの回転数Nrを乗じたものとバッテリ50が要求する充放電要求パワーPb*とロスLossとの和として計算することができる。なお、リングギヤ軸32aの回転数Nrは、車速Vに換算係数kを乗じること(Nr=k・V)によって求めたり、モータMG2の回転数Nm2を減速ギヤ35のギヤ比Grで割ること(Nr=Nm2/Gr)によって求めることができる。
【0026】
続いて、設定した要求パワーPe*とモータ走行を開始する閾値Prefとを比較して(ステップS120)、要求パワーPe*が閾値Pref以下であるときには、エンジン22の運転を停止してモータMG2からの動力を出力するモータ運転モードでエンジン22やモータMG1,MG2を制御すべきと判断して、続いて、エンジン22が運転停止中であるか否かを調べる(ステップS130)。エンジン22が運転中であるときには、エンジン22を停止すべきと判断して、エンジン22を停止するようエンジンECU24に停止指示を送信して(ステップS140)、モータMG1のトルク指令Tm1*に値0を設定する(ステップS180)。ステップS140の処理で送信された停止指示を受信したエンジンECU24は、エンジン22における燃料噴射制御や点火制御を停止する処理を実行する。
【0027】
一方、エンジン22が運転停止中であるときには、エンジン22が後述するエンジン始動制御中であるか否かを調べる(ステップS150)。エンジン22が始動制御中でないときには、車速Vと残容量SOCとに基づいてエンジン22を始動するか否かを判定するバッテリ50の端子間電圧の閾値としての電圧用閾値Vrefを設定する(ステップS160)。電圧用閾値Vrefの設定方法については、後述する。
【0028】
続いて、バッテリ50の端子間電圧Vbと電圧用閾値Vrefとを比較すると共に(ステップS170)他のモータ運転モードでの制御を継続して走行するモータ走行条件が成立するか否かを判定する(ステップS175)。ここで、モータ走行条件としては、バッテリ50の残容量SOCモータ走行を継続可能な残容量の閾値より高いなどの条件を含む。バッテリ50の端子間電圧Vbが電圧用閾値Vref以上であると共にモータ走行条件が成立しているときには(ステップS170,S175)、モータ走行を継続できると判断して、モータMG1のトルク指令Tm1*に値0を設定する(ステップS180)。
【0029】
こうしてモータMG1のトルク指令Tm1*を設定したら、要求トルクTr*を減速ギヤ35のギヤ比Grで除したものをモータMG2から出力すべきトルクの仮の値である仮モータトルクTm2tmpとして次式(1)により計算する(ステップS190)。
【0030】
Tm2tmp=Tr*/Gr (1)
【0031】
モータMG1の目標回転数Nm1*とトルク指令Tm1*とを計算すると、バッテリ50の入出力制限Win,Woutと設定したトルク指令Tm1*に現在のモータMG1の回転数Nm1を乗じて得られるモータMG1の消費電力(発電電力)との偏差をモータMG2の回転数Nm2で割ることによりモータMG2から出力してもよいトルクの上下限としてのトルク制限Tm2min,Tm2maxを次式(2)および次式(3)により計算して(ステップS280)、計算した仮モータトルクTm2tmpを式(4)によりトルク制限Tm2min,Tm2maxで制限してモータMG2のトルク指令Tm2*を設定する(ステップS290)。
【0032】
Tm2min=(Win-Tm1*・Nm1)/Nm2 (2)
Tm2max=(Wout-Tm1*・Nm1)/Nm2 (3)
Tm2*=max(min(Tm2tmp,Tm2max),Tm2min) (4)
【0033】
こうしてモータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*を設定すると、モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*についてはモータECU40にそれぞれ送信し(ステップS300)、駆動制御ルーチンを終了する。トルク指令Tm1*,Tm2*を受信したモータECU40は、トルク指令Tm1*でモータMG1が駆動されると共にトルク指令Tm2*でモータMG2が駆動されるようインバータ41,42のスイッチング素子のスイッチング制御を行なう。こうした制御により、モータ走行条件が成立していてバッテリ50の端子間電圧Vbが電圧用閾値Vref以上であるときには、エンジン22の運転を停止した状態でモータMG2からバッテリ50の入出力制限Win,Woutの範囲内で駆動軸としてのリングギヤ軸32aに要求トルクTr*を出力して走行することができる。
【0034】
こうしてモータ運転モードで制御をしている最中に、バッテリ50の端子間電圧Vbが電圧用閾値Vref未満となったり(ステップS170)、モータ走行条件が成立しなくなったときには(ステップS175)、エンジン22を始動する必要があると判断して、エンジン22を始動するためのエンジン始動制御を実行する。エンジン始動制御は、まず、エンジン22のトルクマップとエンジン22の始動開始からの経過時間tとに基づいてモータMG1のトルク指令Tm1*を設定する。(ステップS200)。エンジン22の始動時にモータMG1のトルク指令Tm1*に設定するトルクマップの一例とエンジン22の回転数Neの変化の様子の一例とを図6に示す。実施例のトルクマップは、エンジン22の始動指示がなされた時間t11の直後からレート処理を用いて比較的大きなトルクをトルク指令Tm1*に設定してエンジン22の回転数Neを迅速に増加させる。エンジン22の回転数Neが共振回転数帯を通過したか共振回転数帯を通過するのに必要な時間以降の時間t12にエンジン22を安定して点火開始回転数Nref以上でモータリングすることができるトルクをトルク指令Tm1*に設定し、電力消費や駆動軸としてのリングギヤ軸32aにおける反力を小さくする。そして、エンジン22の回転数Neが回転数Nrefに至った時間t13からレート処理を用いてトルク指令Tm1*を値0とし、エンジン22の完爆が判定された時間t15から発電用のトルクをトルク指令Tm1*に設定する。ここで、点火開始回転数Nrefは、エンジン22の燃料噴射制御や点火制御を開始する回転数である。
【0035】
こうしてモータMG1のトルク指令Tm1*を設定したら、エンジン22の回転数Neと点火開始回転数Nrefとを比較する(ステップS210)。回転数Neが点火開始回転数Nref未満のときには、要求トルクTr*と設定したトルク指令Tm1*からモータMG1の回転数変化に伴うイナーシャトルクTiを減じて動力分配統合機構30のギヤ比ρで除したものとの和のトルクを減速ギヤ35のギヤ比Grで除したものとしてモータMG2から出力すべきトルクの仮の値である仮トルクTm2tmpを次式(5)により計算し(ステップS230)、計算した仮トルクTm2tmpを前述の式(4)によりトルク制限Tm2min,Tm2maxで制限してモータMG2のトルク指令Tm2*を設定する(ステップS280,S290)。ここで、式(5)は、図7の共線図から容易に導くことができる。なお、図7の共線図におけるR軸上の2つの太線矢印で示すトルクは、モータMG1から出力されるトルクからイナーシャトルクTiを減じたものがリングギヤ軸32aに作用するトルクとモータMG2から出力されるトルクTm2*が減速ギヤ35を介してリングギヤ軸32aに作用するトルクとである。
【0036】
Tm2tmp=(Tr*+(Tm1*-Ti)/ρ)/Gr (5)
【0037】
仮モータトルクTm2tmpを設定すると、バッテリ50の入出力制限Win,Woutの範囲内で要求トルクTr*がリングギヤ軸32aに出力されるモータMG2のトルク指令Tm2*を設定してモータECU40に送信して(ステップS280〜S300)、本ルーチンを終了し、こうしてエンジン22を始動する制御を行なっている間は(ステップS150)、S100〜S130,S150,ステップS200〜S230,S280〜S300の処理を繰り返す。こうした制御により、モータMG1でエンジン22をモータリングすると共にバッテリ50の入出力制限Win,Woutの範囲内で駆動軸としてのリングギヤ軸32aに要求トルクTr*を出力して走行する。
【0038】
こうしてエンジン22をモータリングしてエンジン22の回転数Neが点火開始回転数Nref以上になったときには(ステップS210)、エンジン22における燃料噴射制御や点火制御を開始するよう制御信号をエンジンECU24に送信すると共に(ステップS220)設定したトルク指令Tm1*に基づいてバッテリ50の入出力制限Win,Woutの範囲内で要求トルクTr*がリングギヤ軸32aに出力されるモータMG2のトルク指令Tm2*を設定してモータECU40に送信して(ステップS230,S280〜S300)、本ルーチンを終了する。こうした制御により、モータMG1でエンジン22をモータリングしてエンジン22を始動すると共にバッテリ50の入出力制限Win,Woutの範囲内で駆動軸としてのリングギヤ軸32aに要求トルクTr*を出力して走行する。
【0039】
ここで、ステップS160の処理における電圧用閾値Vrefの設定方法について説明する。電圧用閾値Vrefは、車速Vとバッテリ50の残容量SOCと電圧用閾値Vrefとの関係を予め定めて電圧用閾値設定用マップとしてROM24bやデータ74に記憶しておき、車速Vとバッテリ50の残容量SOCとが与えられると記憶したマップから対応する電圧用閾値Vrefを導出して設定するものとした。図8に電圧用閾値設定用マップの一例を示す。電圧用閾値Vrefは、バッテリ50から電力を取り出せなくなる下限電圧よりエンジン22をモータリングを開始してからエンジン22の始動が終了するまでのバッテリ50の端子間電圧の低下量と推定される電圧分だけ高い電圧として設定され、図示すように、残容量SOCが大きくなるほど小さくなる傾向に、且つ、車速Vが大きくなるほど小さくなる傾向に設定するものとし、例えば、バッテリ50の下限電圧が200[V]のときには260[V]〜290[V]程度の範囲で設定されるものとする。つまり、電圧用閾値設定用マップでは、車速Vや残容量SOCにより推定されるエンジン22を始動する際のバッテリ50の端子間電圧の低下量を予め求めておき、求めた低下量に基づいてエンジン22を始動する際にバッテリ50の端子間電圧が下限電圧を下回らないよう車速Vと残容量SOCと電圧用閾値Vrefとが関係づけられているのである。ここで、電圧用閾値Vrefを残容量SOCが大きくなるほど小さくなる傾向に設定したのは、エンジン22のモータリングを開始する際の残容量SOCが大きいほどエンジン22のモータリングを開始してからエンジン22の始動が完了するまでのバッテリ50の端子間電圧Vbの低下量が小さいと推定されるため、残容量SOCが小さいときに比して電圧用閾値Vrefを小さく設定してもバッテリ50の端子間電圧Vbが下限電圧以下にならないためである。また、電圧用閾値Vrefを車速Vが大きくなるほど小さくなる傾向に設定したのは、以下の理由に基づく。図9に例示するように、車速Vが比較的高い場合には、モータMG1で発電をしながらモータMG2で電力を消費する状態となる。こうした状態では、モータMG2から出力されるトルクを上述した式(5)の仮モータトルクTm2tmpとして考えると、モータMG2での消費電力(Tm2tmp・Nm2)にモータMG1の消費電力(Tm1・Nm1、モータMG1が発電している場合を考えると負の値になる)を加えた車両全体の消費電力Pは、次式(6)に示すようになる。ここで、要求トルクTr*は図5に例示したようにアクセル開度Accが一定だとすると車速Vが高くなるほど小さくなる傾向に設定され、トルク指令Tm1*は車速Vに拘わらず図7に例示したマップを用いて設定され、イナーシャトルクTiは車速Vに関わらずほぼ一定である。したがって、消費電力Pは、全体として車速Vが大きくなるほど小さなると推定され、エンジン22のモータリングを開始する際の車速Vが大きいほどエンジン22のモータリングを開始してからエンジン22の始動が完了するまでのバッテリ50の端子間電圧Vbの低下量が小さいと推定されるため、車速Vが小さいときに比して電圧用閾値Vrefを小さく設定してもバッテリ50の端子間電圧Vbが下限電圧以下にならない。このように、車速Vや残容量SOCに基づいて推定されるバッテリ50の端子間電圧の低下量に基づいて電圧用閾値Vrefを設定することにより、より適正なタイミングでエンジン22を始動することができる。
【0040】
P=(Tr*-Ti/ρ)/Gr・Nm2+Tm1*/ρ・Ne・(1+ρ) (6)
【0041】
要求パワーPe*が閾値Prefより大きいときには(ステップS120)、エンジン22からの動力を用いて走行するトルク変換運転モードや充放電運転モードでエンジン22やモータMG1,MG2を運転制御する必要があると判断して、エンジン22が運転されていなければ(ステップS240)、ステップS200〜S230,S280〜S300の処理を実行してエンジン22を始動し、エンジン22が運転中であるときには、設定した要求パワーPe*に基づいてエンジン22を効率よく運転する運転ポイントとしての目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定し(ステップS250)、続いて、エンジン22の目標回転数Ne*とモータMG2の回転数Nm2と動力分配統合機構30のギヤ比ρとを用いて次式(7)によりモータMG1の目標回転数Nm1*を計算すると共に計算した目標回転数Nm1*と入力したモータMG1の回転数Nm1とに基づいて式(8)によりモータMG1が回転数Nm1*で回転するようモータMG1から出力すべきトルクとしてのトルク指令Tm1*を計算する(ステップS270)。図10は、エンジン22からパワーを出力している状態で走行しているときの動力分配統合機構30の回転要素における回転数とトルクとの力学的な関係を示す共線図の一例を示す説明図である。なお、式(8)は、モータMG1を目標回転数Nm1*で回転させるためのフィードバック制御における関係式であり、式(8)中、右辺第2項の「k1」は比例項のゲインであり、右辺第3項の「k2」は積分項のゲインである。
【0042】
Nm1*=Ne*・(1+ρ)/ρ-Nm2/ρ (7)
Tm1*=ρ・Te*/(1+ρ)+k1(Nm1*-Nm1)+k2∫(Nm1*-Nm1)dt (8)
【0043】
こうしてモータMG1の目標回転数Nm1*とトルク指令Tm1*とを計算すると、要求トルクTr*にモータMG1のトルク指令Tm1*を動力分割機構30のギヤ比ρで除したものを加えて減速ギヤGrのギヤ比で除したものを次式(9)により求めて仮モータトルクTm2tmpとして設定する(ステップS270)。ここで、式(9)は、図10に例示した共線図から容易に導くことができる。こうして、仮モータトルクTm2tmpを設定すると、バッテリ50の入出力制限Win,Woutの範囲内で要求トルクTr*がリングギヤ軸32aに出力されるモータMG2のトルク指令Tm2*を設定して(ステップS280,S290)、設定したエンジン22の目標回転数Ne*,目標トルクTe*をエンジンECU24に、設定したモータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*をモータECU40にそれぞれ送信して(ステップS300)、本ルーチンを終了する。目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを受信したエンジンECU24は、エンジン22が目標回転数Ne*と目標トルクTe*とによって示される運転ポイントで運転されるようにエンジン22における吸入空気量制御や燃料噴射制御,点火制御などの制御を行なう。こうした制御により、こうした制御により、エンジン22の始動後は、バッテリ50の入出力制限Win,Woutの範囲内でエンジン22を効率よく運転して駆動軸としてのリングギヤ軸32aに要求トルクTr*を出力して走行することができる。
【0044】
Tm2tmp=(Tr*+Tm1*/ρ)/Gr (9)
【0045】
以上説明した実施例のハイブリッド自動車20によれば、運転停止しているエンジンを始動する際に車速Vと残容量SOCとに基づいてエンジン22のモータリングを開始してからエンジン22の始動が完了するまで(エンジン22の運転開始まで)のバッテリ50の端子間電圧Vbの低下量を推定してエンジン22を始動するための閾値としての電圧用閾値Vrefを設定し、バッテリ50の端子間電圧Vrefが設定した電圧用閾値Vref未満であるときにはエンジン22をモータリングして始動するから、バッテリ50の端子間電圧が下限電圧を下回るのを抑制すると共により適正なタイミングでエンジンを始動することができる。
【0046】
実施例のハイブリッド自動車20では、車速Vや残容量SOCに基づいてバッテリ50の端子間電圧の低下量を推定して電圧用閾値を設定するものとしたが、車速Vや残容量SOCとに基づいてバッテリ50の端子間電圧の低下量を推定するものに限定したものではなく、車速Vのみに基づいて端子間電圧の低下量を推定したり残容量SOCのみに基づいて端子間電圧の低下量を推定したりするものとしてもよい。また、バッテリ50の電圧の低下量を推定できるものであれば、如何なる状態量に基づいてバッテリ50の端子間電圧の低下程度を推定するものとしてもよく、例えば、バッテリ50の温度やバッテリ50の開放電圧やアクセル開度Accなどに基づいてバッテリ50の低下量を推定するものとしてもよい。この場合において、バッテリ50の端子間電圧の低下量は、バッテリ50の温度が高くなるほど大きくなり、バッテリ50の開放電圧が高くなるほど大きくなり、アクセル開度Accが大きく要求トルクTr*が大きくなるほど大きく傾向になると推定されることから、電圧用閾値Vrefは、バッテリ50の温度が高くなるほど、バッテリ50の開放電圧が高くなるほど、アクセル開度が小さくなるほど小さくなる傾向に設定するものとするのが望ましい。
【0047】
実施例のハイブリッド自動車20では、車速Vと残容量SOCとに基づいて予めバッテリ50の端子間電圧の低下量を求めておくものとしたが、低下量を予め求めておくものに限定したものではなく、車速Vや残容量SOCに対するバッテリ50の端子間電圧の低下の傾向に基づいてバッテリ50の端子間電圧の低下程度を推定するものとしてもよい。
【0048】
実施例のハイブリッド自動車20では、図8に例示した電圧用閾値設定用マップを用いて車速Vや残容量SOCに基づいて電圧用閾値Vrefを設定するものとしたが、エンジン22を始動するたびにエンジン22の始動時の車速V,残容量SOCとエンジン22を始動してから始動が終了するまでのバッテリ50の端子間電圧の電圧低下量を学習してて、バッテリ50の下限電圧に学習した電圧低下量を加えたものを図8に例示したエンジン22の始動時の車速V,残容量SOCに対応する電圧用閾値Vrefとして設定されれば、より適正に電圧用閾値Vrefを設定することができる。
【0049】
実施例のハイブリッド自動車20では、エンジン22の運転を停止してモータMG2からの動力でモータ走行しているときに、バッテリ50の端子間電圧Vbが閾値Vref以上であるときにはモータ走行を継続し、バッテリ50の端子間電圧Vbが閾値Vref未満であるときにエンジン22を始動する制御を実行するものとしたが、こうした制御を実行するのはモータ走行しているときに限定したものではなく、エンジン22の運転を停止した状態であるがモータMG2からの動力を用いて走行していない状態のときにこうした制御を実行するものとしてもよい。この場合には、バッテリ50の端子間電圧Vbが閾値Vref以上であるときにはエンジン22の運転停止を継続し、バッテリ50の端子間電圧Vbが閾値Vref未満であるときにエンジン22を始動する制御を実行するものとしてもよい。
【0050】
実施例のハイブリッド自動車20では、モータMG1を用いてエンジン22をモータリングするものとしたが、モータMG1とは別にエンジン22の始動専用のスタータモータを備え、こうしたスタータモータを用いてエンジンを始動するものとしてもよい。
【0051】
実施例のハイブリッド自動車20では、減速ギヤ35を介して駆動軸としてのリングギヤ軸32aにモータMG2を取り付けるものとしたが、リングギヤ軸32aにモータMG2を直接取り付けるものとしてもよいし、減速ギヤ35に代えて2段変速や3段変速,4段変速などの変速機を介してリングギヤ軸32aにモータMG2を取り付けるものとしても構わない。
【0052】
実施例のハイブリッド自動車20では、モータMG2の動力を減速ギヤ35により変速してリングギヤ軸32aに出力するものとしたが、図11の変形例のハイブリッド自動車120に例示するように、モータMG2の動力をリングギヤ軸32aが接続された車軸(駆動輪63a,63bが接続された車軸)とは異なる車軸(図11における車輪64a,64bに接続された車軸)に接続するものとしてもよい。
【0053】
実施例のハイブリッド自動車20では、エンジン22の動力を動力分配統合機構30を介して駆動輪63a,63bに接続された駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力するものとしたが、図12の変形例のハイブリッド自動車220に例示するように、エンジン22のクランクシャフト26に接続されたインナーロータ232と駆動輪63a,63bに動力を出力する駆動軸に接続されたアウターロータ234とを有し、エンジン22の動力の一部を駆動軸に伝達すると共に残余の動力を電力に変換する対ロータ電動機230を備えるものとしてもよい。
【0054】
実施例では、2つのモータとエンジンとを備える車両に適用ものとしたが、エンジンとモータとを搭載して少なくともモータからの動力を用いて走行可能な車両であれば如何なる車両に適用してもよい。
【0055】
また、こうしたハイブリッド自動車に適用するものに限定されるものではなく、こうした車両の制御方法の形態としてもよい。
【0056】
ここで、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、エンジン22が「内燃機関」に相当し、モータMG2が「電動機」に相当し、動力分配統合機構30とモータMG1とが「機関始動手段」に相当し、バッテリ50が「蓄電手段」に相当し、電圧センサ50aが「電圧検出手段」に相当し、車速Vや残容量SOCに基づいてバッテリ50の端子間電圧の低下量を求めるステップS160の処理を実行するハイブリッド用電子制御ユニット70が「電圧低下推定手段」に相当し、推定されたバッテリ50の端子間電圧の低下量に基づいて電圧用閾値Vrefを設定するステップS160の処理を実行するハイブリッド用電子制御ユニット70が「閾値設定手段」に相当し、エンジン22を運転停止しているときにバッテリ50の端子間電圧Vbが閾値Vref以上であるときにエンジン22の運転停止を継続するステップS130〜S170,S300の処理やエンジン22を運転停止しているときにバッテリ50の端子間電圧Vbが閾値Vref未満に至ったときにはエンジン22を始動するためにエンジン22をモータリングするトルクをモータMG1のトルク指令Tm1*に設定してモータECU40に送信する処理やエンジンECU24に燃料噴射制御指示や点火制御指示を送信するステップS130,S150〜S170,S200〜S230,S280〜S300の処理を実行するハイブリッド用電子制御ユニット70とエンジン22における燃料噴射制御や点火制御を実行するエンジンECU24とトルク指令Tm1*でモータMG1が駆動するようインバータ41を制御するモータEUC40とが「機関始動制御手段」に相当する。また、エンジン22を運転停止しているときにバッテリ50の端子間電圧Vbが閾値Vref以上であるときに要求トルクTr*に基づくトルクがモータMG2から出力されるようモータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*を設定してモータECU40に送信するステップS180,S190,ステップS280〜S300の処理やエンジン22を運転停止しているときにバッテリ50の端子間電圧Vbが閾値Vref未満に至ったときには要求トルクTr*に基づくトルクがモータMG2から出力されるようモータMG2のトルク指令Tm2*を設定してモータECU40に送信するステップS230,S280〜S300の処理を実行するハイブリッド用電子制御ユニット70とトルク指令Tm2*でモータMG2が駆動するようインバータ42を制御するモータEUC40とも「機関始動制御手段」に相当する。さらに、エンジン22を始動するたびにエンジン22の始動時の車速V,残容量SOCとエンジン22を始動してから始動が終了するまでのバッテリ50の端子間電圧の電圧低下量を検出して学習するハイブリッド用電子制御ユニット70が「学習手段」に相当する。さらに、動力分配統合機構30とモータMG1とが「電力動力入出力手段」に相当する。そして、動力分配統合機構30が「3軸式動力入出力手段」に相当し、モータMG1が「発電機」に相当する。また、対ロータ電動機230も「電力動力入出力手段」に相当する。ここで、「内燃機関」としては、ガソリンまたは軽油などの炭化水素系の燃料により動力を出力する内燃機関に限定されるものではなく、水素エンジンなど如何なるタイプの内燃機関であっても構わない。「電動機」としては、同期発電電動機として構成されたモータMG2に限定されるものではなく、誘導電動機など、駆動軸に動力を入出力可能なものであれば如何なるタイプの電動機であっても構わない。「機関始動手段」としては、動力分配統合機構30とモータMG1とからなる組み合わせに限定されるものではなく、エンジンのクランクシャフトをモータリングするスタータモータなど、内燃機関の始動に用いられるものであれば如何なるものとしても構わない。「蓄電手段」としては、二次電池としてのバッテリ50に限定されるものではなく、キャパシタなど、電動機および機関始動手段と電力のやりとりが可能であれば如何なるものとしても構わない。「電圧検出手段」としては、電圧センサ50aに限定されるものではなく、蓄電手段の端子間電圧を検出するものであれば如何なるものとしても構わない。「電圧低下程度推定手段」は、車速Vや残容量SOCに基づいてバッテリ50の端子間電圧の低下量を推定するものに限定されるものではなく、車速Vのみに基づいて端子間電圧の低下量を推定するものや残容量SOCのみに基づいて端子間電圧の低下量を推定するもの,アクセル開度Accやバッテリ50の開放電圧,バッテリ50の温度に基づいて端子間電圧の低下量を推定するものなど、蓄電手段の端子間電圧の低下程度を推定するものであれば如何なるものとしても構わない。「閾値設定手段」は、推定された端子間電圧の低下程度に基づいて内燃機関を始動するための電圧用閾値を設定するものであれば如何なるものとしても構わない。「機関始動制御手段」としては、ハイブリッド用電子制御ユニット70とエンジンECU24とモータECU40とからなる組み合わせに限定されるものではなく単一の電子制御ユニットにより構成されるなどとしてもよい。また、「機関始動制御手段」としては、エンジン22を運転停止しているときにバッテリ50の端子間電圧Vbが閾値Vref以上であるときにエンジン22の運転を停止した状態を継続してモータMG2からの動力で走行し、エンジン22を運転停止しているときにバッテリ50の端子間電圧Vbが閾値Vref未満に至ったときにはエンジン22の始動をするものに限定されるものではなく、内燃機関を運転停止している状態のときに、検出された端子間電圧が前記設定された電圧用閾値未満に至るまでは内燃機関の運転停止を継続するよう内燃機関と機関始動手段とを制御し、検出された端子間電圧が設定された電圧用閾値未満に至ったときには内燃機関が始動されるよう内燃機関と機関始動手段とを制御するものであれば如何なるものとしても構わない。「発電機」としては、同期発電電動機として構成されたモータMG1に限定されるものではなく、誘導電動機など、動力を入出力可能なものであれば如何なるタイプの発電機としても構わない。「3軸式動力入出力手段」としては、上述の動力分配統合機構30に限定されるものではなく、ダブルピニオン式の遊星歯車機構を用いるものや複数の遊星歯車機構を組み合わせて4以上の軸に接続されるものやデファレンシャルギヤのように遊星歯車とは異なる差動作用を有するものなど、駆動軸と出力軸と発電機の回転軸との3軸に接続され3軸のうちのいずれかに軸に入出力される動力に基づいて残余の軸に動力を入出力するものであれば如何なるものとしても構わない。なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための最良の形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0057】
以上、本発明を実施するための最良の形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、自動車の製造業等に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の一実施例であるハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。
【図2】バッテリ50における電池温度Tbと入出力制限Win,Woutとの関係の一例を示す説明図である。
【図3】バッテリ50の残容量(SOC)と入出力制限Win,Woutの補正係数との関係の一例を示す説明図である。
【図4】実施例のハイブリッド用電子制御ユニット70により実行される駆動制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図5】要求トルク設定用マップの一例を示す説明図である。
【図6】エンジン22の始動時にモータMG1のトルク指令Tm1*に設定するトルクマップの一例とエンジン22の回転数Neの変化の様子の一例とを示す説明図である。
【図7】エンジン22を始動しているときの動力分配統合機構30の回転要素における回転数とトルクとの力学的な関係を示す共線図の一例を示す説明図である。
【図8】電圧用閾値設定用マップの一例を示す説明図である。
【図9】車速Vが比較的高い状態でエンジン22を始動しているときの動力分配統合機構30の回転要素における回転数とトルクとの力学的な関係を示す共線図の一例を示す説明図である。
【図10】エンジン22からパワーを出力している状態で走行しているときの動力分配統合機構30の回転要素における回転数とトルクとの力学的な関係を示す共線図の一例を示す説明図である。
【図11】変形例のハイブリッド自動車120の構成の概略を示す構成図である。
【図12】変形例のハイブリッド自動車220の構成の概略を示す構成図である。
【符号の説明】
【0060】
20,120,220 ハイブリッド自動車、22 エンジン、24 エンジン用電子制御ユニット(エンジンECU)、24a CPU、24b ROM、24c RAM、26 クランクシャフト、28 ダンパ、30 動力分配統合機構、31 サンギヤ、32 リングギヤ、32a リングギヤ軸、33 ピニオンギヤ、34 キャリア、35 減速ギヤ、40 モータ用電子制御ユニット(モータECU)、41,42 インバータ、43,44 回転位置検出センサ、50 バッテリ、50a 電圧センサ、51 温度センサ、52 バッテリ用電子制御ユニット(バッテリECU)、54 電力ライン、60 ギヤ機構、62 デファレンシャルギヤ、63a,63b 駆動輪、64a,64b 車輪、70 ハイブリッド用電子制御ユニット、72 CPU、74 ROM、76 RAM、80 イグニッションスイッチ、81 シフトレバー、82 シフトポジションセンサ、83 アクセルペダル、84 アクセルペダルポジションセンサ、85 ブレーキペダル、86 ブレーキペダルポジションセンサ、88 車速センサ、122 エアクリーナ、124 スロットルバルブ、126 燃料噴射弁、128 吸気バルブ、130 点火プラグ、132 ピストン、134 浄化装置、136,スロットルモータ、138 イグニッションコイル、140 クランクポジションセンサ、142 水温センサ、143 圧力センサ、144 カムポジションセンサ、146 スロットルバルブポジションセンサ、148 エアフローメータ、149 温度センサ、150 可変バルブタイミング機構、230 対ロータ電動機、232 インナーロータ 234 アウターロータ、MG1,MG2 モータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関と電動機とを搭載し、少なくとも前記電動機からの動力を用いて走行可能な車両であって、
前記内燃機関の始動に用いられる機関始動手段と、
前記電動機および前記機関始動手段と電力のやりとりが可能な蓄電手段と、
該蓄電手段の端子間電圧を検出する電圧検出手段と、
前記蓄電手段の端子間電圧の低下程度を推定する電圧低下程度推定手段と、
前記推定された端子間電圧の低下程度に基づいて前記内燃機関を始動するための電圧用閾値を設定する閾値設定手段と、
前記内燃機関を運転停止している状態のときに、前記検出された端子間電圧が前記設定された電圧用閾値未満に至るまでは前記内燃機関の運転停止を継続するよう前記内燃機関と前記機関始動手段とを制御し、前記検出された端子間電圧が前記設定された電圧用閾値未満に至ったときには前記内燃機関が始動されるよう前記内燃機関と前記機関始動手段とを制御する機関始動制御手段と、
を備える車両。
【請求項2】
前記電圧低下推定手段は、車速と前記蓄電手段の状態とアクセル開度とのうちの少なくとも一つに基づいて前記端子間電圧の低下程度を推定する手段である請求項1記載の車両。
【請求項3】
前記電圧低下推定手段は、前記蓄電手段の状態として前記蓄電手段の残容量と該蓄電手段の温度と該蓄電手段の開放電圧とのうちの少なくとも一つに基づいて前記端子間電圧の低下程度を推定する手段である請求項2記載の車両。
【請求項4】
請求項3記載の車両であって、
前記電圧低下推定手段は、前記蓄電手段の残容量が大きくなるほど小さくなる傾向に前記端子間電圧の低下程度を推定し、
前記閾値設定手段は、前記推定された端子間電圧の低下程度が小さくなるほど低くなる傾向に前記電圧用閾値を設定する手段である
車両。
【請求項5】
請求項1ないし4いずれか記載の車両であって、
前記電圧低下推定手段は、前記アクセル開度が小さくなるほど小さくなる傾向に前記端子間電圧の低下程度を推定する手段であり、
前記閾値設定手段は、前記推定された端子間電圧の低下程度が小さくなるほど低くなる傾向に前記電圧用閾値を設定する手段である
車両。
【請求項6】
前記機関始動制御手段は、前記内燃機関を運転停止している状態で前記電動機からの動力を用いて走行するモータ走行モードで走行しているときに、前記検出された端子間電圧が前記設定された電圧用閾値未満に至るまでは前記モータ走行モードでの走行が継続するよう前記内燃機関と前記機関始動手段と前記電動機とを制御し、前記検出された端子間電圧が前記設定された電圧用閾値未満に至ったときには前記内燃機関が始動されて走行するよう前記内燃機関と前記機関始動手段と前記電動機とを制御する手段である請求項1ないし5いずれか記載の車両。
【請求項7】
請求項1記載の車両であって、
前記内燃機関が始動する際における前記端子間電圧の電圧低下量を学習する学習手段を備え、
前記電圧低下推定手段は、前記学習した電圧低下量に基づいて前記端子間電圧の低下程度を推定する手段である
車両。
【請求項8】
請求項1ないし7いずれか記載の車両であって、
前記機関始動手段は、前記内燃機関の出力軸をモータリング可能な手段であり、
前記機関始動制御手段は、前記内燃機関を始動するときには前記内燃機関の出力軸がモータリングされるよう前記機関始動手段を制御する手段である
車両。
【請求項9】
請求項8記載の車両であって、
前記機関始動手段は、車軸に接続された駆動軸と前記内燃機関の出力軸とに接続され電力と動力の入出力により該駆動軸への動力の入出力を伴って該内燃機関の出力軸に動力を入出力可能な電力動力入出力手段を備える手段であり、
前記電動機は、前記駆動軸に動力を入出力する電動機である
車両。
【請求項10】
前記電力動力入出力手段は、前記内燃機関の出力軸と前記駆動軸と第3の軸とに接続され該3軸のうちのいずれか2軸に入出力される動力に基づいて残余の1軸に動力を入出力する3軸式動力入出力手段と、前記第3の軸に動力を入出力する発電機とを備える手段である請求項9記載の車両
【請求項11】
請求項10記載の車両であって、
前記駆動軸に要求される要求駆動力を設定する要求駆動力設定手段を備え、
前記電圧低下推定手段は、車速が高いほど小さくなる傾向に前記端子間電圧の低下程度を推定する手段であり、
前記閾値設定手段は、前記推定された端子間電圧の低下程度が小さくなるほど低くなる傾向に前記電圧用閾値を設定する手段であり、
前記機関始動制御手段は、前記検出された端子間電圧が前記設定された電圧用閾値未満に至るまでは前記内燃機関の運転停止を継続すると共に前記設定された要求駆動力に基づく駆動力が前記駆動軸に出力されるよう前記内燃機関と前記発電機と前記電動機とを制御し、前記検出された端子間電圧が前記設定された電圧用閾値未満に至ったときには前記内燃機関の出力軸がモータリングされて始動されると共に前記発電機の回転数の変化に基づいて前記駆動軸に出力される駆動力と前記発電機から前記駆動軸へ出力される駆動力と前記電動機から前記駆動軸に出力される駆動力との和の駆動力により前記設定された要求駆動力に基づく駆動力が前記駆動軸に出力されるよう前記内燃機関と前記発電機と前記電動機とを制御する手段である
車両。
【請求項12】
内燃機関と電動機とを搭載し、前記内燃機関の始動に用いられる機関始動手段と、前記電動機および前記機関始動手段と電力のやりとりが可能な蓄電手段と、該蓄電手段の端子間電圧を検出する電圧検出手段とを備え、少なくとも前記電動機からの動力を用いて走行可能な車両の制御方法であって、
前記蓄電手段の端子間電圧の低下程度を推定し、
前記推定された端子間電圧の低下程度に基づいて前記内燃機関を始動するための電圧用閾値を設定し、
前記内燃機関を運転停止している状態のときに、前記検出された端子間電圧が前記設定された電圧用閾値未満に至るまでは前記内燃機関の運転停止を継続するよう前記内燃機関と前記機関始動手段とを制御し、前記検出された端子間電圧が前記設定された電圧用閾値未満に至ったときには前記内燃機関が始動されるよう前記内燃機関と前記機関始動手段とを制御する
車両の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−254603(P2008−254603A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−99455(P2007−99455)
【出願日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】