説明

車両およびその制御方法

【課題】シフト操作に対する走行用トルクの出力特性を向上させると共にシフト操作によりエネルギ効率を向上させることを可能とする。
【解決手段】運転者により仮想シフトレンジSR1〜SR6の何れか一つが選択されたときには、選択された仮想シフトレンジに対応した制御アクセル開度設定用マップを用いてアクセルペダルポジションセンサにより取得されたアクセル開度Accに対応した制御アクセル開度Acc*が設定されると共に当該制御アクセル開度Acc*と車速センサにより取得された車速Vとに対応した要求トルクTr*が設定され(ステップS110〜S130)、当該要求トルクTr*に基づくトルクがリングギヤ軸に出力されるようにエンジンとモータMG1およびMG2とが制御される(ステップS140〜S250)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも駆動輪に連結された駆動軸に動力を出力可能な電動機と当該電動機と電力をやり取り可能な蓄電手段とを備えた車両およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンと、エンジンのクランクシャフトに接続されたプラネタリキャリアと駆動輪に連結された駆動軸に接続されたリングギヤとを有する遊星歯車機構と、遊星歯車機構のサンギヤに接続された第1のモータと、駆動軸に接続された第2のモータとを備え、運転者に複数の仮想的なシフトポジションの選択を許容するハイブリッド車両が知られている(例えば、特許文献1参照)。このハイブリッド車両では、運転者により複数の仮想的なシフトポジションの何れか一つが選択されたときに、選択された仮想的なシフトポジションと車速とに基づいてエンジン下限回転数が設定され、当該エンジン下限回転数以上の回転数でエンジンが運転される。これにより、運転者により複数の仮想的なシフトポジションの何れか一つが選択されると共にアクセルペダルが踏み込まれているときにエンジン回転数をある程度高く保ってエンジンの出力応答性を良好に確保することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−201261号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来のハイブリッド車両のように仮想的なシフトポジションと車速とに基づいてエンジン下限回転数を設定するだけでは、運転者によるシフト操作に対する走行用駆動力の出力応答性は必ずしも充分なものとはならず、運転者によっては、シフト操作に応じた車両の加速フィーリングに物足りなさを覚えるかもしれない。その一方で、運転者の中には、上述のようなハイブリッド車両や電気自動車等においてシフト操作によりエネルギ効率(燃費)をより向上させることを志向する者もいるであろう。
【0005】
そこで、本発明は、少なくとも駆動輪に連結された駆動軸に動力を出力可能な電動機と当該電動機と電力をやり取り可能な蓄電手段とを備えた車両において、シフト操作に対する走行用駆動力の出力特性を向上させると共にシフト操作によりエネルギ効率を向上させることを可能とすることを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の車両およびその制御方法は、上記主目的を達成するために以下の手段を採っている。
【0007】
本発明による車両は、
駆動輪に連結された駆動軸に動力を出力可能な電動機と、
前記電動機と電力をやり取り可能な蓄電手段と、
運転者によるアクセル操作量を取得するアクセル操作量取得手段と、
車速を取得する車速取得手段と、
通常走行レンジおよび複数の仮想シフトレンジの中から運転者に任意のシフトレンジの選択を許容するシフトレンジ選択手段と、
それぞれ前記車速が高いほど同一の前記アクセル操作量に対応した前記駆動軸に出力すべき駆動力である要求駆動力を大きくする傾向をもつと共に、前記車速が一定であるときに前記仮想シフトレンジがロー側に移行するほど同一の前記アクセル操作量に対応した前記要求駆動力を大きくする傾向をもつように前記仮想シフトレンジごとに作成された複数の制約を記憶する制約記憶手段と、
運転者により前記仮想シフトレンジの何れか一つが選択されたときに、選択された仮想シフトレンジに対応した前記制約を用いて前記アクセル操作量取得手段により取得されたアクセル操作量と前記車速取得手段により取得された車速とに対応した前記要求駆動力を設定する要求駆動力設定手段と、
前記要求駆動力設定手段により設定された要求駆動力に基づく動力が前記駆動軸に出力されるように前記電動機を制御する制御手段と、
を備えるものである。
【0008】
この車両では、それぞれ車速が高いほど同一のアクセル操作量に対応した駆動軸に出力すべき駆動力である要求駆動力を大きくする傾向をもつと共に、車速が一定であるときに仮想シフトレンジがロー側に移行するほど同一のアクセル操作量に対応した要求駆動力を大きくする傾向をもつように仮想シフトレンジごとに作成された複数の制約が制約記憶手段により記憶されている。そして、運転者により仮想シフトレンジの何れか一つが選択されたときには、選択された仮想シフトレンジに対応した制約を用いてアクセル操作量取得手段により取得されたアクセル操作量と車速取得手段により取得された車速とに対応した要求駆動力が設定されると共に、当該要求駆動力に基づく動力が駆動軸に出力されるように電動機が制御される。上述のような複数の制約を仮想シフトレンジごとに作成しておけば、ある仮想シフトレンジが選択されているときには車速が高いほど走行用駆動力の出力応答性が高まり、車速一定の状態で仮想シフトレンジをロー側に移行させるほど走行用駆動力の出力応答性が高まることになるので、シフトレンジとして仮想シフトレンジを設定したり、仮想シフトレンジをロー側に移行させたりすることにより、走行用駆動力の出力応答性を高めて車両を良好に加速させることが可能となる。また、上述のような複数の制約を仮想シフトレンジごとに作成しておけば、ある仮想シフトレンジが選択されているときには車速が低いほど要求駆動力の増加が抑えられ、車速一定の状態で仮想シフトレンジをハイ側に移行させるほど要求駆動力の増加が抑えられることになるので、シフトレンジとして仮想シフトレンジを設定したり、仮想シフトレンジをハイ側に移行させたりすることにより、走行用駆動力の出力を抑えて車両のエネルギ効率を向上させることも可能となる。従って、この車両では、シフト操作に対する走行用駆動力の出力特性を向上させると共にシフト操作によりエネルギ効率を向上させることが可能となる。
【0009】
また、前記複数の制約のうち、ロー側の少なくとも一つの仮想シフトレンジに対応した制約は、前記アクセル操作量取得手段により取得されたアクセル操作量を前記車速が高いほど実際の値よりも大きい値に換算することにより該車速が高いほど同一の前記アクセル操作量に対応した前記要求駆動力を大きくする傾向をもつように作成されてもよく、前記複数の制約のうち、ハイ側の少なくとも一つの仮想シフトレンジに対応した制約は、前記アクセル操作量取得手段により取得されたアクセル操作量を前記車速が低いほど実際の値よりも小さい値に換算することにより該車速が低いほど同一の前記アクセル操作量に対応した前記要求駆動力を小さくする傾向をもつように作成されてもよい。これにより、仮想シフトレンジをロー側に移行させることにより、走行用駆動力の出力応答性を高めて車両を良好に加速させると共に、仮想シフトレンジをハイ側に移行させることにより、走行用駆動力の出力を抑えて車両のエネルギ効率を向上させることが可能となる。
【0010】
更に、前記車両は、通常走行用の第1の運転モード、該第1の運転モードに比べて走行用駆動力の出力応答性を優先する第2の運転モード、および前記第1および第2の運転モードに比べてエネルギ効率を優先する第3の運転モードの中から運転者に任意の運転モードの選択を許容する運転モード選択手段と、運転者により前記通常走行レンジが選択されると共に前記第1の運転モードが選択されているときには、前記アクセル操作量取得手段により取得されたアクセル操作量を制御アクセル操作量に設定し、運転者により前記通常走行レンジが選択されると共に前記第2の運転モードが選択されているときには、所定の操作量増加制約に従って前記アクセル操作量取得手段により取得されたアクセル操作量に対応した制御アクセル操作量を該アクセル操作量よりも大きくなる傾向に設定し、運転者により前記通常走行レンジが選択されると共に前記第3の運転モードが選択されているときには、所定の操作量減少制約に従って前記アクセル操作量取得手段により取得されたアクセル操作量に対応した制御アクセル操作量を該アクセル操作量よりも小さくなる傾向に設定する制御アクセル操作量設定手段とを備えてもよく、前記複数の制約は、前記操作量増加制約と前記操作量減少制約とに基づいて作成されてもよく、前記要求駆動力設定手段は、運転者により前記通常走行レンジが選択されているときに、前記制御アクセル操作量と前記車速と前記要求駆動力との関係を規定する通常走行用要求駆動力設定制約と前記制御アクセル操作量設定手段により設定された制御アクセル操作量と前記車速取得手段により取得された車速とを用いて前記要求駆動力を設定するものであってもよい。このように、車両の運転モードとして、通常走行用の第1の運転モードに加えて、第1の運転モードに比べて走行用駆動力の出力応答性を優先する第2の運転モードと第1および第2の運転モードに比べてエネルギ効率を優先する第3の運転モードとが用意されている場合には、第2のモード用の操作量増加制約と第3のモード用の操作量減少制約とを利用して、仮想シフトレンジ用の複数の制約をより適正に作成することが可能となる。
【0011】
また、前記複数の制約は、前記操作量増加制約と前記操作量減少制約とに基づいて前記仮想シフトレンジごとに前記アクセル操作量取得手段により取得されたアクセル操作量と前記制御アクセル操作量との関係を規定するように作成された複数の制御アクセル操作量設定制約であってもよく、前記制御アクセル操作量設定手段は、運転者により前記仮想シフトレンジの何れか一つが選択されたときに、選択された仮想シフトレンジに対応した制御アクセル操作量設定制約と前記アクセル操作量取得手段により取得されたアクセル操作量とを用いて前記制御アクセル操作量を設定するものであってもよく、前記要求駆動力設定手段は、運転者により前記仮想シフトレンジの何れか一つが選択されたときに、前記通常走行用要求駆動力設定制約と前記制御アクセル操作量設定手段により設定された制御アクセル操作量と前記車速取得手段により取得された車速とを用いて前記要求駆動力を設定するものであってもよい。これにより、第2のモード用の操作量増加制約と第3のモード用の操作量減少制約とを利用して仮想シフトレンジ用の複数の制御アクセル操作量設定制約を作成しておけば、通常走行用要求駆動力設定制約すなわち単一の要求駆動力設定制約を用いて仮想シフトレンジ選択時の要求駆動力をより適正に設定可能となる。
【0012】
更に、前記複数の制約は、前記操作量増加制約と前記操作量減少制約と前記通常走行用要求駆動力設定制約とに基づいて前記仮想シフトレンジごとに前記アクセル操作量と前記車速と前記要求駆動力との関係を規定するように作成された複数の要求駆動力設定制約であってもよく、前記要求駆動力設定手段は、運転者により前記仮想シフトレンジの何れか一つが選択されたときに、選択された仮想シフトレンジに対応した要求駆動力設定制約と前記アクセル操作量取得手段により取得されたアクセル操作量と前記車速取得手段により取得された車速とを用いて前記要求駆動力を設定するものであってもよい。
【0013】
そして、前記車両は、内燃機関と、動力を入出力可能な第2の電動機と、前記内燃機関の出力軸と前記第2の電動機の回転軸と前記駆動軸との3軸に接続され、これら3軸のうちの何れか2軸に入出力される動力に基づく動力を残余の軸に入出力する動力分配手段とを更に備えてもよく、前記制御手段は、前記要求駆動力設定手段により設定された要求駆動力に基づく動力が前記駆動軸に出力されるように前記内燃機関と前記電動機と前記第2の電動機とを制御するものであってもよい。
【0014】
本発明による車両の制御方法は、
駆動輪に連結された駆動軸に動力を出力可能な電動機と、該電動機と電力をやり取り可能な蓄電手段と、運転者によるアクセル操作量を取得するアクセル操作量取得手段と、車速を取得する車速取得手段と、通常走行レンジおよび複数の仮想シフトレンジの中から運転者に任意のシフトレンジの選択を許容するシフトレンジ選択手段とを備えた車両の制御方法であって、
(a)運転者により前記仮想シフトレンジの何れか一つが選択されたときに、それぞれ前記車速が高いほど同一の前記アクセル操作量に対応した前記駆動軸に出力すべき駆動力である要求駆動力を大きくする傾向をもつと共に前記車速が一定であるときに前記仮想シフトレンジがロー側に移行するほど同一の前記アクセル操作量に対応した前記要求駆動力を大きくする傾向をもつように前記仮想シフトレンジごとに作成された複数の制約から運転者により選択された仮想シフトレンジに対応したものを抽出し、抽出した制約を用いて前記アクセル操作量取得手段により取得されたアクセル操作量と前記車速取得手段により取得された車速とに対応した前記要求駆動力を設定するステップと、
(b)ステップ(a)にて設定された要求駆動力に基づく動力が前記駆動軸に出力されるように前記電動機を制御するステップと、
を含むものである。
【0015】
この方法によれば、シフト操作に対する走行用駆動力の出力特性を向上させると共にシフト操作によりエネルギ効率を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施例に係る車両であるハイブリッド自動車20の概略構成図である。
【図2】ノーマルモード制御アクセル開度設定用マップ、パワーモード制御アクセル開度設定用マップおよびECOモード制御アクセル開度設定用マップを例示する説明図である。
【図3】実施例のハイブリッドECU70により実行されるSレンジ選択時駆動制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図4】仮想シフトレンジSR1〜SR6に対応した制御アクセル開度設定用マップの一例を示す説明図である。
【図5】仮想シフトレンジSR1〜SR6に対応した制御アクセル開度設定用マップの他の例を示す説明図である。
【図6】仮想シフトレンジSR1〜SR6に対応した制御アクセル開度設定用マップの更に他の例を示す説明図である。
【図7】要求トルク設定用マップの一例を示す説明図である。
【図8】エンジン22の動作ラインと回転数NeとトルクTeとの相関曲線とを例示する説明図である。
【図9】下限エンジン回転数設定用マップの一例を示す説明図である。
【図10】動力分配統合機構30の回転要素における回転数とトルクとの力学的な関係を示す共線図の一例を示す説明図である。
【図11】換算係数設定用マップの一例を示す説明図である。
【図12】仮想シフトレンジSR1〜SR6に対応した要求トルク設定用マップの一例を示す説明図である。
【図13】仮想シフトレンジSR1〜SR6に対応した要求トルク設定用マップの他の例を示す説明図である。
【図14】変形例に係るハイブリッド自動車120の概略構成図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に、本発明を実施するための最良の形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0018】
図1は、本発明の実施例に係る車両であるハイブリッド自動車20の概略構成図である。同図に示すハイブリッド自動車20は、エンジン22と、エンジン22の出力軸であるクランクシャフト26にダンパ28を介して接続された3軸式の動力分配統合機構30と、動力分配統合機構30に接続された発電可能なモータMG1と、動力分配統合機構30に接続された駆動軸としてのリングギヤ軸32aに連結された減速ギヤ35と、この減速ギヤ35を介してリングギヤ軸32aに接続されたモータMG2と、モータMG1およびMG2と電力をやり取り可能なバッテリ50と、ハイブリッド自動車20の全体をコントロールするハイブリッド用電子制御ユニット(以下、「ハイブリッドECU」という)70等とを備えるものである。
【0019】
エンジン22は、ガソリンや軽油といった炭化水素系の燃料の供給を受けて動力を出力する内燃機関であり、エンジン用電子制御ユニット(以下、「エンジンECU」という)24による燃料噴射量や点火時期、吸入空気量等の制御を受ける。エンジンECU24には、エンジン22に対して設けられて当該エンジン22の運転状態を検出する各種センサからの信号が入力される。そして、エンジンECU24は、ハイブリッドECU70と通信しており、ハイブリッドECU70からの制御信号や上記センサからの信号等に基づいてエンジン22を運転制御すると共に必要に応じてエンジン22の運転状態に関するデータをハイブリッドECU70に送信する。
【0020】
動力分配統合機構30は、外歯歯車のサンギヤ31と、このサンギヤ31と同心円上に配置された内歯歯車のリングギヤ32と、サンギヤ31と噛合すると共にリングギヤ32と噛合する複数のピニオンギヤ33と、複数のピニオンギヤ33を自転かつ公転自在に保持するキャリア34とを有し、これら3つの要素が互いに差動回転できるように構成されたシングルピニオン式遊星歯車機構である。かかる動力分配統合機構30の第1要素であるキャリア34にはエンジン22のクランクシャフト26が、第2要素であるサンギヤ31にはモータMG1の回転軸が、第3要素であるリングギヤ32には駆動軸としてのリングギヤ軸32aと減速ギヤ35とを介してモータMG2の回転軸がそれぞれ連結されている。動力分配統合機構30は、モータMG1が発電機として機能するときにはキャリア34から入力されるエンジン22からの動力をサンギヤ31側とリングギヤ32側とにそのギヤ比に応じて分配し、モータMG1が電動機として機能するときにはキャリア34から入力されるエンジン22からの動力とサンギヤ31から入力されるモータMG1からの動力を統合してリングギヤ32側に出力する。リングギヤ32に出力された動力は、リングギヤ軸32aからギヤ機構37およびデファレンシャルギヤ38を介して最終的に駆動輪である車輪39a,39bに出力される。
【0021】
モータMG1およびMG2は、何れも発電機として作動すると共に電動機として作動可能な周知の同期発電電動機として構成されており、インバータ41,42を介して二次電池であるバッテリ50と電力のやり取りを行う。インバータ41,42とバッテリ50とを接続する電力ライン54は、各インバータ41,42が共用する正極母線および負極母線として構成されており、モータMG1,MG2の何れか一方により発電される電力を他方のモータで消費できるようになっている。従って、バッテリ50は、モータMG1,MG2の何れかから生じた電力や不足する電力により充放電され、モータMG1,MG2により電力収支のバランスをとることにすれば、バッテリ50は充放電されないことになる。モータMG1,MG2は、何れもモータ用電子制御ユニット(以下、「モータECU」という)40により駆動制御される。モータECU40には、モータMG1,MG2を駆動制御するために必要な信号、例えばモータMG1,MG2の回転子の回転位置を検出する回転位置検出センサ43,44からの信号や、図示しない電流センサにより検出されるモータMG1,MG2に印加される相電流等が入力されており、モータECU40からは、インバータ41,42へのスイッチング制御信号等が出力される。また、モータECU40は、回転位置検出センサ43,44から入力した信号に基づいて図示しない回転数算出ルーチンを実行し、モータMG1,MG2の回転子の回転数Nm1,Nm2を計算している。更に、モータECU40は、ハイブリッドECU70と通信しており、ハイブリッドECU70からの制御信号等に基づいてモータMG1,MG2を駆動制御すると共に必要に応じてモータMG1,MG2の運転状態に関するデータをハイブリッドECU70に出力する。
【0022】
バッテリ50は、リチウムイオン二次電池あるいはニッケル水素二次電池として構成されており、バッテリ用電子制御ユニット(以下、「バッテリECU」という)52によって管理される。バッテリECU52には、バッテリ50を管理するのに必要な信号、例えば、バッテリ50の端子間に設置された図示しない電圧センサからの端子間電圧、バッテリ50の出力端子に接続された電力ライン54に取り付けられた図示しない電流センサからの充放電電流、バッテリ50に取り付けられた温度センサ51からのバッテリ温度Tb等が入力される。バッテリECU52は、必要に応じてバッテリ50の状態に関するデータを通信によりハイブリッドECU70に出力する。更に、バッテリECU52は、バッテリ50を管理するために、電流センサにより検出された充放電電流の積算値に基づいて残容量(充電割合)SOCを算出したり、当該残容量SOCに基づいてバッテリ50の充放電要求パワーPb*を算出したり、残容量SOCと電池温度Tbとに基づいてバッテリ50の充電に許容される電力である許容充電電力としての入力制限Winとバッテリ50の放電に許容される電力である許容放電電力としての出力制限Woutとを算出したりする。なお、バッテリ50の入出力制限Win,Woutは、バッテリ温度Tbに基づいて入出力制限Win,Woutの基本値を設定すると共に、バッテリ50の残容量SOCに基づいて出力制限用補正係数と入力制限用補正係数とを設定し、設定した入出力制限Win,Woutの基本値に補正係数を乗じることにより設定可能である。
【0023】
ハイブリッドECU70は、CPU72を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPU72の他に処理プログラムを記憶するROM74や、データを一時的に記憶するRAM76、図示しない入出力ポートおよび通信ポート等を備える。ハイブリッドECU70は、上述したようにエンジンECU24やモータECU40、バッテリECU52等と通信ポートを介して接続されており、エンジンECU24やモータECU40、バッテリECU52等と各種制御信号やデータのやり取りを行う。また、ハイブリッドECU70には、イグニッションスイッチ(スタートスイッチ)80からのイグニッション信号、シフトレバー81の操作位置(シフトポジション)に対応したシフトレンジSRを検出するシフトレンジセンサ82からのシフトレンジSR、アクセルペダル83の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Acc、ブレーキペダル85の踏み込み量を検出するブレーキペダルストロークセンサ86からのブレーキペダルストロークBS、車速センサ87からの車速V等が入力ポートを介して入力される。更に、実施例のハイブリッド自動車20の運転席近傍には、運転モードとして動力性能すなわちアクセル操作に対するトルク出力の応答性を優先するパワーモード(第2の運転モード)を選択するためのパワースイッチ(運転モード選択手段)88が設けられており、このパワースイッチ88もハイブリッドECU70に接続されている。加えて、実施例のハイブリッド自動車20の運転席近傍には、運転モードとしてエンジン22の燃費やエネルギ効率を優先するECOモード(第3の運転モード)を選択するためのECOスイッチ(運転モード選択手段)89が設けられており、このECOスイッチ89もハイブリッドECU70に接続されている。
【0024】
また、実施例のハイブリッド自動車20では、シフトレバー81のシフトポジションとして、駐車時に選択される駐車レンジに対応したPポジション、後進走行用のリバースレンジに対応したRポジション、中立のニュートラルレンジに対応したNポジション、通常の前進走行用のドライブレンジ(Dレンジ)に対応したDポジションに加えて、複数の仮想シフトレンジSR1,SR2,SR3,SR4,SR5およびSR6からの任意の仮想シフトレンジの選択を可能とするシーケンシャルシフトレンジ(Sレンジ)に対応したシーケンシャルシフトポジション(Sポジション)、アップシフト指示ポジションおよびダウンシフト指示ポジションが用意されている。運転者によりシフトレバー81がSポジションにセットされると、その際の車速V等に応じて仮想シフトレンジSR1〜SR6の中の何れかが初期レンジとして設定され、以後、シフトレバー81がアップシフト指示ポジションにセットされると仮想シフトレンジが1段階ずつ上げられる(アップシフトされる)一方、シフトレバー81がダウンシフト指示ポジションにセットされると仮想シフトレンジが1段階ずつ下げられる(ダウンシフトされる)。また、シフトレンジセンサ82は、シフトレバー81の操作に応じて現在の仮想シフトレンジ(SR1〜SR6の何れか)をシフトレンジSRとして出力する。
【0025】
上述のように構成された実施例のハイブリッド自動車20の走行に際しては、ハイブリッドECU70により、運転者によるアクセルペダル83の踏み込み量に対応したアクセル開度Accに基づいて制御アクセル開度Acc*が設定され、当該制御アクセル開度Acc*と車速Vとに基づいて駆動輪である車輪39a,39bに連結された駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力すべき要求トルクTr*が設定され、この要求トルクTr*に基づくトルクがリングギヤ軸32aに出力されるようにエンジン22とモータMG1とモータMG2とが制御される。エンジン22とモータMG1とモータMG2の運転制御モードとしては、要求トルクTr*に見合うパワーがエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にエンジン22から出力されるパワーのすべてが動力分配統合機構30とモータMG1とモータMG2とによってトルク変換されてリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御するトルク変換運転モードや、要求トルクTr*とバッテリ50の充放電に必要な電力との和に見合うパワーがエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にバッテリ50の充放電を伴ってエンジン22から出力されるパワーの全部またはその一部が動力分配統合機構30とモータMG1とモータMG2とによるトルク変換を伴って要求トルクTr*に基づくトルクがリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御する充放電運転モード、エンジン22の運転を停止して要求トルクTr*に基づくトルクをリングギヤ軸32aに出力するようにモータMG2を駆動制御するモータ運転モード等がある。そして、実施例のハイブリッド自動車20では、トルク変換運転モードや充放電運転モードのもとで所定条件が成立した場合、エンジン22を自動的に停止・始動させる間欠運転が実行される。
【0026】
また、実施例のハイブリッド自動車20においてパワースイッチ88とECOスイッチ89との双方がオフされていると、運転モードとしてノーマルモード(第1の運転モード)が選択されることになり、この状態では、ハイブリッドECU70により、所定のパワーモードフラグFpwrが値0に設定されると共にノーマルモード選択時用の各種制御手順に従ってハイブリッド自動車20が制御されることになる。実施例では、シフトレンジSRとしてDレンジが選択されると共に運転モードとしてノーマルモードが選択された状態でアクセルペダル83が踏み込まれると、アクセルペダルポジションセンサ84により検出されたアクセル開度Accとノーマルモード制御アクセル開度設定用マップとに基づいて制御アクセル開度Acc*が設定され、当該制御アクセル開度Acc*と車速Vとに基づいて駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力すべき要求トルクTr*が設定される。図2において一点鎖線で示すように実施例のノーマルモード制御アクセル開度設定用マップは、0〜100%の範囲でアクセル開度Accに対して制御アクセル開度Acc*が線形性をもつように、すなわちアクセル開度Accをそのまま制御アクセル開度Acc*として設定するように予め作成されてROM74に記憶されている。
【0027】
更に、パワースイッチ88がオンされてハイブリッド自動車20の運転モードとしてパワーモードが選択されると、ハイブリッドECU70により、上記パワーモードフラグFpwrが値1に設定されると共に予め定められたパワーモード選択時用の各種制御手順に従ってハイブリッド自動車20が制御されることになる。実施例では、シフトレンジSRとしてDレンジが選択されると共に運転モードとしてパワーモードが選択された状態でアクセルペダル83が踏み込まれると、アクセルペダルポジションセンサ84により検出されたアクセル開度Accとパワーモード制御アクセル開度設定用マップ(操作量増加制約)とに基づいて制御アクセル開度Acc*が設定され、当該制御アクセル開度Acc*と車速Vとに基づいて駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力すべき要求トルクTr*が設定される。実施例のパワーモード制御アクセル開度設定用マップは、図2において実線で示すような非線形マップであり、低車速時における車両の飛び出し感を抑制すべく任意の低アクセル開度領域にあるアクセル開度Accに対してはノーマルモード制御アクセル開度設定用マップにより設定されるものと同一の値を制御アクセル開度Acc*として設定し、低アクセル開度領域以外の100%までのアクセル開度Accに対してはアクセル操作に対するトルク出力の応答性を向上させるべくノーマルモード制御アクセル開度設定用マップにより設定されるものよりも大きな値を制御アクセル開度Acc*として設定するように作成されてROM74に記憶されている。これにより、運転者によりパワーモードが選択されたときには、ノーマルモードの選択時に比べてリングギヤ軸32aに出力されるトルクが高まるようにエンジン22、モータMG1およびMG2が制御され、それにより運転者によるアクセル操作に対するトルク出力の応答性を向上させることができる。
【0028】
更に、ECOスイッチ89がオンされてハイブリッド自動車20の運転モードとしてECOモードが選択されると、ハイブリッドECU70により、上記ECOフラグFecoが値1に設定されると共に予め定められたECOモード選択時用の各種制御手順に従ってハイブリッド自動車20が制御されることになる。実施例では、シフトレンジSRとしてDレンジが選択されると共に運転モードとしてECOモードが選択された状態でアクセルペダル83が踏み込まれると、アクセルペダルポジションセンサ84により検出されたアクセル開度AccとECOモード制御アクセル開度設定用マップ(操作量減少制約)とに基づいて制御アクセル開度Acc*が設定され、当該制御アクセル開度Acc*と車速Vとに基づいて駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力すべき要求トルクTr*が設定される。実施例のECOモード制御アクセル開度設定用マップは、図2において破線で示すような非線形マップであり、アクセル操作に対するトルク出力の応答性を低下させるべくノーマルモード制御アクセル開度設定用マップにより設定されるものよりも小さな値を制御アクセル開度Acc*として設定するように作成されてROM74に記憶されている。これにより、運転者によりECOモードが選択されたときには、ノーマルモードの選択時に比べて車軸としてのリングギヤ軸32aに出力されるトルクが低下するようにエンジン22、モータMG1およびMG2が制御され、それによりエンジン22の燃料消費率やモータMG2による消費電力を低下させてエネルギ効率を向上させることができる。
【0029】
次に、実施例のハイブリッド自動車20の動作、特に運転者によりシーケンシャルシフトレンジ(Sレンジ)が選択された状態でハイブリッド自動車20が走行しているときの動作について説明する。図3は、Sレンジが選択された状態で運転者によりアクセルペダル83が踏み込まれたときに実施例のハイブリッドECU70により所定時間ごとに(例えば、数msecごとに)実行されるSレンジ選択時駆動制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【0030】
図3のSレンジ選択時駆動制御ルーチンの開始に際して、ハイブリッドECU70のCPU72は、アクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Acc、シフトレンジセンサ82からのシフトレンジSR、車速センサ87からの車速V、モータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2、バッテリ50の充放電要求パワーPb*や入出力制限Win,Woutといった制御に必要なデータの入力処理を実行する(ステップS100)。なお、モータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2は、モータECU40から通信により入力されるものであり、バッテリ50の充放電要求パワーPb*や入出力制限Win,Woutは、バッテリECU52から通信により入力されるものである。ステップS100のデータ入力処理の後、入力したシフトレンジSRすなわち運転者により選択された仮想シフトレンジに対応した制御アクセル開度設定用マップをROM74から読み出す(ステップS110)。
【0031】
ここで、実施例のハイブリッド自動車20では、それぞれ仮想シフトレンジSR1〜SR6の何れかに対応付けされると共にアクセル開度Accと車速Vと制御アクセル開度Acc*との関係を規定する複数の制御アクセル開度設定用マップが予め作成されてROM74に記憶されている。実施例において、複数の制御アクセル開度設定用マップは、それぞれ車速Vが高いほど同一のアクセル開度Acc(アクセル操作量)に対応した要求トルクTr*(要求駆動力)を大きくする傾向をもつと共に、車速Vが一定であるときに仮想シフトレンジがロー側に移行するほど同一のアクセル開度Accに対応した要求トルクTr*を大きくする傾向をもつように仮想シフトレンジSR1〜SR6ごとに作成される。
【0032】
実施例において、仮想シフトレンジSR1〜SR6に対応した複数の制御アクセル開度設定用マップは、上述のパワーモード制御アクセル開度設定用マップおよびECOモード制御アクセル開度設定用マップとに基づいて作成される。ロー側の仮想シフトレンジに対応した制御アクセル開度設定用マップは、例えば、当該仮想シフトレンジにおける実用上の最高速度についてのアクセル開度Accと制御アクセル開度Acc*との相関曲線をパワーモード制御アクセル開度設定用マップにおけるアクセル開度Accと制御アクセル開度Acc*との相関曲線と一致させた上で、実験・解析結果に基づいて車速Vが低いほどアクセル開度Accと制御アクセル開度Acc*との相関曲線をノーマルモード制御アクセル開度設定用マップにおける直線(図2における一点鎖線参照)に近づくように定めることにより作成される。また、ハイ側の仮想シフトレンジに対応した制御アクセル開度設定用マップは、例えば、当該仮想シフトレンジにおける実用上の最低速度についてのアクセル開度Accと制御アクセル開度Acc*との相関曲線をECOモード制御アクセル開度設定用マップにおけるアクセル開度Accと制御アクセル開度Acc*との相関曲線と一致させた上で、実験・解析結果に基づいて車速Vが高いほどアクセル開度Accと制御アクセル開度Acc*との相関曲線をノーマルモード制御アクセル開度設定用マップにおける直線(図2における一点鎖線参照)に近づくように定めることにより作成される。
【0033】
これにより、仮想シフトレンジSR1〜SR6に対応した制御アクセル開度設定用マップのうち、例えば最もロー側の仮想シフトレンジSR1に対応した制御アクセル開度設定用マップは、図4に示すように、車速Vが高いほどアクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Accに対応した制御アクセル開度Acc*を当該アクセル開度Accよりも非線形に大きく設定するものとされ、実質的にアクセル開度Accを車速Vが高いほど実際の値よりも大きい値に換算する傾向を有する。また、実施例において、例えば最もハイ側の仮想シフトレンジSR6に対応した制御アクセル開度設定用マップは、図5に示すように、車速Vが低いほどアクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Accに対応した制御アクセル開度Acc*を当該アクセル開度Accよりも非線形に小さく設定するものとされ、実質的にアクセル開度Accを車速Vが低いほど実際の値よりも小さい値に換算する傾向を有する。更に、例えば中間段の仮想シフトレンジSR4に対応した制御アクセル開度設定用マップは、図6に示すように、高車速域では車速Vが高いほどアクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Accに対応した制御アクセル開度Acc*を当該アクセル開度Accよりも非線形に大きく設定すると共に、低車速域では車速Vが低いほどアクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Accに対応した制御アクセル開度Acc*を当該アクセル開度Accよりも非線形に小さく設定するものとされる。
【0034】
ステップS110にて、シフトレンジSRすなわち運転者により選択された仮想シフトレンジに対応した制御アクセル開度設定用マップを読み出したならば、当該制御アクセル開度設定用マップからステップS100にて入力したアクセル開度Accおよび車速Vに対応した制御アクセル開度Acc*を導出・設定する(ステップS120)。そして、ステップS100にて入力した車速VとステップS120にて設定した制御アクセル開度Acc*とに基づいてリングギヤ軸32aに出力すべき要求トルクTr*を設定した上で、車両全体に要求される要求パワーP*を設定する(ステップS130)。実施例では、制御アクセル開度Acc*と車速Vと要求トルクTr*との関係が図7に例示する要求トルク設定用マップとして予め定められてROM74に記憶されており、このマップから制御アクセル開度Acc*と車速Vとに対応した要求トルクTr*が導出・設定される。これにより、仮想シフトレンジSR1〜SR6の何れが選択されていても車速Vが高いほど同一のアクセル開度Accに対応した要求トルクTr*が大きく設定されることになり、車速Vが一定であればシフトレンジSRが仮想シフトレンジSR1〜SR6のうちのロー側のものであるほど同一のアクセル開度Accに対応した要求トルクTr*が大きく設定されることになる。また、実施例において、要求パワーP*は、要求トルクTr*にリングギヤ軸32aの回転数Nrを乗じたものと充放電要求パワーPb*とロスLossとの総和として計算される。なお、リングギヤ軸32aの回転数Nrは、図示するようにモータMG2の回転数Nm2を減速ギヤ35のギヤ比Grで除するか、あるいは車速Vに換算係数kを乗じることによって求めることができる。
【0035】
次いで、エンジン22が運転されているか否かを判定し(ステップS140)、エンジン22が運転されている場合には、更にエンジン22の運転を続行すべきか否かを判定する(ステップS150)。ステップS150では、例えば、車速Vが所定の間欠禁止車速以上であること、要求パワーP*が所定のエンジン停止閾値以上であることといった間欠禁止条件の何れか一つが成立しているとエンジン22の運転を続行すべきと判断される。また、ステップS150にてエンジン22の運転を続行すべきではないと判断された場合、所定のエンジン停止フラグがオンされ(ステップS155)、本ルーチンが終了する。エンジン停止フラグがオンされた場合には、ハイブリッドECU70により図示しないエンジン停止制御ルーチンが実行される。エンジン停止制御ルーチンは、エンジン22に対する燃料供給を停止した状態で、例えばエンジン22の回転数Neが所定の停止直前回転数に達するまでエンジン22の回転を抑制するための負のトルクをモータMG1に対するトルク指令Tm1*として設定すると共に、回転数Neが停止直前回転数に達したタイミングでピストンを保持するための正のトルクをモータMG1に対するトルク指令Tm1*として設定し、更に要求トルクTr*に基づくトルクがリングギヤ軸32aに出力されるようにモータMG2のトルク指令Tm2*を設定する処理であり、かかるエンジン停止制御ルーチンが終了するとエンジン停止フラグがオフされる。
【0036】
ステップS150にてエンジン22の運転を続行すべきと判断された場合には、要求パワーP*に基づいてエンジン22の仮の目標運転ポイントである仮目標回転数Netmpと仮目標トルクTetmpとを設定する(ステップS160)。実施例では、エンジン22を効率よく動作させるために予め定められた動作ラインと要求パワーP*とに基づいてエンジン22の仮目標回転数Netmpと仮目標トルクTetmpとが設定される。図8に、エンジン22の動作ラインと回転数NeとトルクTeとの相関曲線とを例示する。同図に示すように、仮目標回転数Netmpと仮目標トルクTetmpとは、上記動作ラインと要求パワーP*(Ne×Te)が一定となることを示す相関曲線との交点として求めることができる。
【0037】
エンジン22の仮目標回転数Netmpと仮目標トルクTetmpとを設定したならば、ステップS100にて入力した車速VとシフトレンジSR(仮想シフトレンジ)とに基づいてエンジン22の回転数Neの下限値である下限エンジン回転数Neminを設定する(ステップS170)。実施例では、Sレンジが選択されているときに、車速VとシフトレンジSR(SR1〜SR6)とに応じて下限エンジン回転数Neminを定めることとしており、下限エンジン回転数Neminは、同一の車速Vに対してシフトレンジSRの段数が大きくなるほど(SR1からSR6に至るほど)小さな値に設定される。そして、実施例では、車速VとシフトレンジSRと下限エンジン回転数Neminとの関係が予め定められて図9に例示するような下限エンジン回転数設定用マップとしてROM74に記憶されており、下限エンジン回転数Neminとしては、与えられた車速VとシフトレンジSRとに対応したものが当該マップから導出・設定される。これにより、運転者により仮想シフトレンジSR1〜SR6の何れか一つが選択されると共にアクセルペダル83が踏み込まれているときにエンジン22の回転数Neをある程度高く保ってエンジン22の出力応答性を良好に確保することができる。ステップS170にて下限エンジン回転数Neminを設定したならば、仮目標回転数Netmpと下限エンジン回転数Neminとの大きい方をエンジン22の目標回転数Ne*として設定すると共に、ステップS130にて設定した要求パワーP*を目標回転数Ne*で除することによりエンジン22の目標トルクTe*を設定する(ステップS180)。
【0038】
ステップS180の処理の後、目標回転数Ne*とリングギヤ軸32aの回転数Nr(Nm2/Gr)と動力分配統合機構30のギヤ比ρ(サンギヤ31の歯数/リングギヤ32の歯数)とを用いて次式(1)に従いモータMG1の目標回転数Nm1*を計算した上で、目標トルクTe*や計算した目標回転数Nm1*、現在の回転数Nm1等を用いて次式(2)に従いモータMG1に対するトルク指令Tm1*を設定する(ステップS190)。ここで、式(1)は、動力分配統合機構30の回転要素に対する力学的な関係式である。図10に動力分配統合機構30の回転要素における回転数とトルクとの力学的な関係を示す共線図を例示する。図中、左側のS軸はモータMG1の回転数Nm1に一致するサンギヤ31の回転数を示し、中央のC軸はエンジン22の回転数Neに一致するキャリア34の回転数を示し、右側のR軸はモータMG2の回転数Nm2を減速ギヤ35のギヤ比Grで除したリングギヤ32の回転数Nrを示す。また、R軸上の2つの太線矢印は、モータMG1にトルクTm1を出力させたときにこのトルク出力によりリングギヤ軸32aに作用するトルクと、モータMG2にトルクTm2を出力させたときに減速ギヤ35を介してリングギヤ軸32aに作用するトルクとを示す。モータMG1の目標回転数Nm1*を求めるための式(1)は、この共線図における回転数の関係を用いれば容易に導出することができる。そして、式(2)は、モータMG1を目標回転数Nm1*で回転させるためのフィードバック制御における関係式であり、式(2)中、右辺第2項の「k1」は比例項のゲインであり、右辺第3項の「k2」は積分項のゲインである。
【0039】
Nm1*=Ne*・(1+ρ)/ρ-Nm2/(Gr・ρ) …(1)
Tm1*=-ρ/(1+ρ)・Te*+k1・(Nm1*-Nm1)+k2・∫(Nm1*-Nm1)dt …(2)
【0040】
モータMG1に対するトルク指令Tm1*を設定したならば、バッテリ50の入出力制限Win,WoutとステップS190にて設定したモータMG1に対するトルク指令Tm1*とモータMG1,MG2の現在の回転数Nm1,Nm2とを用いてモータMG2から出力してもよいトルクの上下限としてのトルク制限Tmin,Tmaxを次式(3)および(4)に従い計算する(ステップS200)。更に、要求トルクTr*とトルク指令Tm1*と動力分配統合機構30のギヤ比ρと減速ギヤ35のギヤ比Grとを用いてモータMG2から出力すべきトルクの仮の値である仮モータトルクTm2tmpを次式(5)に従い計算する(ステップS210)。そして、モータMG2に対するトルク指令Tm2*をトルク制限Tmin,Tmaxで仮モータトルクTm2tmpを制限した値に設定する(ステップS220)。このようしてモータMG2に対するトルク指令Tm2*を設定することにより、リングギヤ軸32aに出力されるトルクをバッテリ50の入出力制限Win,Woutの範囲内に制限することができる。なお、式(5)は、図10の共線図から容易に導出することができる。こうしてエンジン22の目標回転数Ne*や目標トルクTe*、モータMG1,MG2に対するトルク指令Tm1*,Tm2*を設定したならば、目標回転数Ne*および目標トルクTe*をエンジンECU24に、モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*をモータECU40にそれぞれ送信し(ステップS230)、再度ステップS100以降の処理を実行する。なお、トルク指令Tm1*,Tm2*を受信したモータECU40は、トルク指令Tm1*に従ってモータMG1が駆動されると共にトルク指令Tm2*に従ってモータMG2が駆動されるようにインバータ41,42のスイッチング素子のスイッチング制御を行なう。また、目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを受信したエンジンECU24は、目標回転数Ne*と目標トルクTe*とに従ってエンジン22が作動するようにスロットル開度制御や燃料噴射制御、点火時期制御等を実行する。
【0041】
Tmin=(Win-Tm1*・Nm1)/Nm2 …(3)
Tmax=(Wout-Tm1*・Nm1)/Nm2 …(4)
Tm2tmp=(Tr*+Tm1*/ρ)/Gr …(5)
【0042】
一方、ステップS140にてエンジン22が運転されていないと判断された場合には、更にエンジン22の運転停止を続行すべきか否かを判定する(ステップS240)。ステップS240では、例えば、車速Vが所定の間欠許可車速以下であること、要求パワーP*がエンジン始動閾値未満であることといったエンジン停止条件のすべてが成立しているとエンジン22の運転停止を続行すべきと判断される。また、ステップS240にてエンジン22の運転停止を続行すべきではないと判断された場合、所定のエンジン始動フラグがオンされ(ステップS245)、本ルーチンが終了する。エンジン始動フラグがオンされた場合には、ハイブリッドECU70により図示しないエンジン始動制御ルーチンが実行される。エンジン始動時駆動制御ルーチンは、モータMG1によりエンジン22をクランキングしながらエンジン22を始動させると共に、エンジン22のクランキングに伴ってリングギヤ軸32aに作用する駆動トルクに対する反力としてのトルクをキャンセルしつつ要求トルクTr*に基づくトルクがリングギヤ軸32aに出力されるようにモータMG2を駆動制御する処理であり、エンジン始動時駆動制御ルーチンが終了するとエンジン始動フラグがオフされることになる。これに対して、ステップS240にてエンジン22の運転停止を続行すべきと判断された場合には、エンジン22の目標回転数Ne*および目標トルクTe*とモータMG1に対するトルク指令Tm1*をそれぞれ値0に設定した上で(ステップS250)、上述のステップS200〜S220の処理を実行する。そして、エンジン22の目標回転数Ne*および目標トルクTe*をエンジンECU24に送信すると共に、モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*をモータECU40に送信した後(ステップS230)、再度ステップS100以降の処理を実行する。
【0043】
以上説明したように、実施例のハイブリッド自動車20では、それぞれ車速Vが高いほど同一のアクセル開度Accに対応した要求トルクTr*を大きくする傾向をもつと共に、車速Vが一定であるときにシフトレンジSR(仮想シフトレンジ)がロー側に移行するほど同一のアクセル開度Accに対応した要求トルクTr*を大きくする傾向をもつように仮想シフトレンジSR1〜SR6ごとに作成された複数の制御アクセル開度設定用マップがROM74に記憶されている。そして、運転者により仮想シフトレンジSR1〜SR6の何れか一つが選択されたときには、選択された仮想シフトレンジSR1〜SR6の何れかに対応した制御アクセル開度設定用マップを用いてアクセルペダルポジションセンサ84により取得されたアクセル開度Accに対応した制御アクセル開度Acc*が設定されると共に当該制御アクセル開度Acc*と車速センサ87により取得された車速Vとに対応した要求トルクTr*が設定され(ステップS110〜S130)、当該要求トルクTr*に基づくトルクがリングギヤ軸32aに出力されるようにエンジン22とモータMG1およびMG2とが制御される(ステップS140〜S250)。
【0044】
すなわち、上記実施例において、例えばロー側の仮想シフトレンジSR1に対応した制御アクセル開度設定用マップは、アクセルペダルポジションセンサ84により取得されたアクセル開度Accを車速Vが高いほど実際の値よりも大きい値(制御アクセル開度Acc*)に換算することにより車速Vが高いほど同一のアクセル開度Accに対応した要求トルクTr*を大きくする傾向をもつように作成されている。また、例えばハイ側の仮想シフトレンジSR6に対応した制御アクセル開度設定用マップは、アクセルペダルポジションセンサ84により取得されたアクセル開度Accを車速Vが低いほど実際の値よりも小さい値(制御アクセル開度Acc*)に換算することにより車速Vが低いほど同一のアクセル開度Accに対応した要求トルクTr*を小さくする傾向をもつように作成されている。従って、仮想シフトレンジSR1〜SR6の何れかが選択されているときには車速Vが高いほど走行用トルクの出力応答性が高まり、車速Vが一定の状態でシフトレンジSR(仮想シフトレンジ)をロー側に移行させるほど走行用トルクの出力応答性が高まることになるので、シフトレンジSRとして仮想シフトレンジSR1〜SR6の何れかを設定したり、シフトレンジSR(仮想シフトレンジ)をロー側に移行させたりすることにより、走行用トルクの出力応答性を高めてハイブリッド自動車20を良好に加速させることが可能となる。また、仮想シフトレンジSR1〜SR6の何れかが選択されているときには車速Vが低いほど要求トルクTr*が低めに設定され、車速Vが一定の状態でシフトレンジSR(仮想シフトレンジ)をハイ側に移行させるほど要求トルクTr*が低めに設定されることになるので、シフトレンジSRとして仮想シフトレンジSR1〜SR6の何れかを設定したり、シフトレンジSR(仮想シフトレンジ)をハイ側に移行させたりすることにより、走行用トルクの出力すなわちエンジン22の燃料消費率やモータMG2による消費電力を低下させてエネルギ効率を向上させることも可能となる。この結果、実施例のハイブリッド自動車20では、シフト操作に対する走行用トルクの出力特性を向上させると共にシフト操作によりエネルギ効率を向上させることが可能となる。
【0045】
また、実施例のハイブリッド自動車20では、仮想シフトレンジSR1〜SR6に対応した複数の制御アクセル開度設定用マップがパワーモード制御アクセル開度設定用マップ(操作量増加制約)およびECOモード制御アクセル開度設定用マップ(操作量減少制約)とに基づいて作成されている。すなわち、ハイブリッド自動車20の運転モードとして、通常走行用のノーマルモードに加えて、ノーマルモードに比べて走行用トルクの出力応答性を優先するパワーモードと、ノーマルモードおよびパワーモードに比べてエネルギ効率を優先するECOモードとが用意されている場合には、パワーモード制御アクセル開度設定用マップとECOモード制御アクセル開度設定用マップとを利用して、仮想シフトレンジSR1〜SR6に対応した複数の制御アクセル開度設定用マップをより適正に作成することが可能となる。そして、このようにパワーモード制御アクセル開度設定用マップとECOモード制御アクセル開度設定用マップとを利用して仮想シフトレンジSR1〜SR6に対応した複数の制御アクセル開度設定用マップを作成しておけば、ノーマルモード用の要求トルク設定用マップすなわち単一の要求トルク設定用マップを用いて仮想シフトレンジ選択時の要求トルクTr*をより適正に設定することができる。
【0046】
ただし、仮想シフトレンジSR1〜SR6ごとに制御アクセル開度設定用マップを用意する代わりに、図11に示すような車速Vと換算係数k(−1≦k≦1)との関係を規定する換算係数設定用マップを用意し、当該換算係数設定用マップとパワーモード制御アクセル開度設定用マップとECOモード制御アクセル開度設定用マップとを利用して制御アクセル開度Acc*を設定してもよい。この場合、換算係数設定用マップから取得された車速Vに対応した換算係数kが正の値であれば、パワーモード制御アクセル開度設定用マップからアクセルペダルポジションセンサ84に検出されたアクセル開度Accに対応した値を取得すると共に、取得した値と換算係数kとの積を当該アクセル開度Accに加算することにより制御アクセル開度Acc*を設定することができる。また、換算係数設定用マップから取得された車速Vに対応した換算係数kが負の値であれば、ECOモード制御アクセル開度設定用マップからアクセルペダルポジションセンサ84に検出されたアクセル開度Accに対応した値を取得すると共に、取得した値と換算係数kとの積を当該アクセル開度Accに加算することにより制御アクセル開度Acc*を設定することができる。
【0047】
更に、仮想シフトレンジSR1〜SR6ごとに制御アクセル開度設定用マップを用意する代わりに、パワーモード制御アクセル開度設定用マップとECOモード制御アクセル開度設定用マップと要求トルク設定用マップ(図7)とを利用して、仮想シフトレンジSR1〜SR6ごとにアクセル開度Accと車速Vと要求トルクTr*との関係を規定する要求トルク設定用マップを用意してもよい。図12にロー側の仮想シフトレンジに対応した要求トルク設定マップの一例を示し、図13にハイ側の仮想シフトレンジに対応した要求トルク設定マップの一例を示す。なお、図12および図13における二点鎖線は、図7の要求トルク設定用マップをそれぞれ示す。このように仮想シフトレンジSR1〜SR6ごとに要求トルク設定用マップを用意した場合には、例えば図3のルーチンのステップS120を省略すると共にステップS110にて入力したシフトレンジSRすなわち運転者により選択された仮想シフトレンジに対応した要求トルク設定用マップをROM74から読み出し、ステップS130にてアクセル開度Accと車速Vとに対応した要求トルクTr*を仮想シフトレンジに対応した要求トルク設定用マップから導出すればよい。
【0048】
また、実施例のハイブリッド自動車20では、駆動軸としてのリングギヤ軸32aとモータMG2とが減速ギヤ35を介して連結されているが、減速ギヤ35の代わりに、例えばHi,Loの2段の変速段あるいは3段以上の変速段を有したモータMG2の回転数を変速してリングギヤ軸32aに伝達する変速機を採用してもよい。更に、実施例のハイブリッド自動車20は、モータMG2の動力を減速ギヤ35により減速してリングギヤ軸32aに出力するものであるが、本発明の適用対象は、これに限られるものではない。すなわち、本発明は、図14に示す変形例に係るハイブリッド自動車120のように、モータMG2の動力をリングギヤ軸32aに接続された車軸(車輪39a,39bが接続された車軸)とは異なる車軸(図14における車輪39c,39dに接続された車軸)に出力するものに適用されてもよい。そして、本発明が走行用動力の出力源として電動機のみを有する電気自動車にも適用され得ることはいうまでもない。
【0049】
ここで、上記実施例および変形例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明しておく。すなわち、上記実施例および変形例では、駆動輪である車輪39a,39bに連結されたリングギヤ軸32aに動力を出力可能なモータMG2が「電動機」に相当し、モータMG2と電力やり取り可能なバッテリ50が「蓄電手段」に相当し、運転者によるアクセル開度Accを検出するアクセルペダルポジションセンサ84が「アクセル操作量取得手段」に相当し、車速Vを検出する車速センサ87が「車速取得手段」に相当し、通常走行用のDレンジおよび複数の仮想シフトレンジSR1〜SR6の中から運転者に任意のシフトレンジSRの選択を許容するシフトレバー81が「シフトレンジ選択手段」に相当し、仮想シフトレンジSR1〜SR6ごとに作成された複数の制御アクセル開度設定用マップを記憶するROM74が「制約記憶手段」に相当し、図3のステップS110〜S130の処理を実行するハイブリッドECU70が「要求駆動力設定手段」に相当し、図3のステップS140〜S250の処理を実行するハイブリッドECU70とエンジンECU24とモータECU40との組み合わせが「制御手段」に相当する。また、パワースイッチ88およびECOスイッチ89が「運転モード選択手段」に相当し、ハイブリッドECU70が「制御アクセル操作量設定手段」に相当し、エンジン22が「内燃機関」に相当し、モータMG1が「第2の電動機」に相当し、動力分配統合機構30が「動力分配手段」に相当する。
【0050】
ただし、「電動機」や「第2の電動機」は、モータMG1,MG2のような同期発電電動機に限られず、誘導電動機といったような他の如何なる形式のものであっても構わない。「蓄電手段」は、バッテリ50のような二次電池に限られず、キャパシタといったような他の如何なる形式のものであっても構わない。「アクセル操作量取得手段」は、運転者によるアクセル操作量を取得可能なものであれば、如何なる形式のものであっても構わない。「車速取得手段」は、車速を取得可能なものであれば、如何なる形式のものであっても構わない。「シフトレンジ選択手段」は、通常走行レンジおよび複数の仮想シフトレンジの中から運転者に任意のシフトレンジの選択を許容するものであれば、ボタン操作によりシフトレンジの選択を可能とするもののようなシフトレバー81以外の如何なる形式のものであっても構わない。「制約記憶手段」は、それぞれ車速が高いほど同一のアクセル操作量に対応した要求駆動力を大きくする傾向をもつと共に、車速が一定であるときに仮想シフトレンジがロー側に移行するほど同一のアクセル操作量に対応した要求駆動力を大きくする傾向をもつように仮想シフトレンジごとに作成された複数の制約を記憶するものであれば、如何なる形式のものであっても構わない。「要求駆動力設定手段」は、運転者により仮想シフトレンジの何れか一つが選択されたときに、選択された仮想シフトレンジに対応した制約を用いてアクセル操作量取得手段により取得されたアクセル操作量と車速取得手段により取得された車速とに対応した要求駆動力を設定するものであれば、如何なる形式のものであっても構わない。「制御手段」は、要求駆動力に基づく動力が駆動軸に出力されるように電動機等を制御するものであれば、単一の電子制御ユニットといったようなハイブリッドECU70とエンジンECU24とモータECU40との組み合わせ以外の他の如何なる形式のものであっても構わない。「運転モード選択手段」は、通常走行用の第1の運転モード、走行用駆動力の出力応答性を優先する第2の運転モード、およびエネルギ効率を優先する第3の運転モードの中から運転者に任意の運転モードの選択を許容するものであれば、単一のスイッチといったようなパワースイッチ88およびECOスイッチ89との組み合わせ以外の他の如何なる形式のものであっても構わない。「内燃機関」は、ガソリンや軽油といった炭化水素系の燃料の供給を受けて動力を出力するエンジン22に限られず、水素エンジンといったような他の如何なる形式のものであっても構わない。「動力分配手段」は、内燃機関の機関軸と第1電動機の回転軸と駆動輪に動力を伝達する駆動軸との3軸に接続され、これら3軸のうちの何れか2軸に入出力される動力に基づく動力を残余の軸に入出力するものであれば、動力分配統合機構30以外のダブルピニオン式遊星歯車機構やデファレンシャルギヤといった他の如何なる形式のものであっても構わない。何れにしても、これら実施例および変形例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための最良の形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。すなわち、実施例はあくまで課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎず、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の解釈は、その欄の記載に基づいて行なわれるべきものである。
【0051】
以上、実施例を用いて本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、様々な変更をなし得ることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、ハイブリッド車両の製造産業等において利用可能である。
【符号の説明】
【0053】
20,120 ハイブリッド自動車、22 エンジン、24 エンジン用電子制御ユニット(エンジンECU)、26 クランクシャフト、28 ダンパ、30 動力分配統合機構、31 サンギヤ、32 リングギヤ、32a リングギヤ軸、33 ピニオンギヤ、34 キャリア、35 減速ギヤ、37 ギヤ機構、38 デファレンシャルギヤ、39a〜39d 車輪、40 モータ用電子制御ユニット(モータECU)、41,42 インバータ、43,44 回転位置検出センサ、50 バッテリ、51 温度センサ、52 バッテリ用電子制御ユニット(バッテリECU)、54 電力ライン、70 ハイブリッド用電子制御ユニット(ハイブリッドECU)、72 CPU、74 ROM、76 RAM、80 イグニッションスイッチ、81 シフトレバー、82 シフトレンジセンサ、83 アクセルペダル、84 アクセルペダルポジションセンサ、85 ブレーキペダル、86 ブレーキペダルストロークセンサ、87 車速センサ、88 パワースイッチ、89 ECOスイッチ、MG1,MG2 モータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動輪に連結された駆動軸に動力を出力可能な電動機と、
前記電動機と電力をやり取り可能な蓄電手段と、
運転者によるアクセル操作量を取得するアクセル操作量取得手段と、
車速を取得する車速取得手段と、
通常走行レンジおよび複数の仮想シフトレンジの中から運転者に任意のシフトレンジの選択を許容するシフトレンジ選択手段と、
それぞれ前記車速が高いほど同一の前記アクセル操作量に対応した前記駆動軸に出力すべき駆動力である要求駆動力を大きくする傾向をもつと共に、前記車速が一定であるときに前記仮想シフトレンジがロー側に移行するほど同一の前記アクセル操作量に対応した前記要求駆動力を大きくする傾向をもつように前記仮想シフトレンジごとに作成された複数の制約を記憶する制約記憶手段と、
運転者により前記仮想シフトレンジの何れか一つが選択されたときに、選択された仮想シフトレンジに対応した前記制約を用いて前記アクセル操作量取得手段により取得されたアクセル操作量と前記車速取得手段により取得された車速とに対応した前記要求駆動力を設定する要求駆動力設定手段と、
前記要求駆動力設定手段により設定された要求駆動力に基づく動力が前記駆動軸に出力されるように前記電動機を制御する制御手段と、
を備える車両。
【請求項2】
請求項1に記載の車両において、
前記複数の制約のうち、ロー側の少なくとも一つの仮想シフトレンジに対応した制約は、前記アクセル操作量取得手段により取得されたアクセル操作量を前記車速が高いほど実際の値よりも大きい値に換算することにより該車速が高いほど同一の前記アクセル操作量に対応した前記要求駆動力を大きくする傾向をもつように作成されており、前記複数の制約のうち、ハイ側の少なくとも一つの仮想シフトレンジに対応した制約は、前記アクセル操作量取得手段により取得されたアクセル操作量を前記車速が低いほど実際の値よりも小さい値に換算することにより該車速が低いほど同一の前記アクセル操作量に対応した前記要求駆動力を小さくする傾向をもつように作成されている車両。
【請求項3】
請求項1または2に記載の車両において、
通常走行用の第1の運転モード、該第1の運転モードに比べて走行用駆動力の出力応答性を優先する第2の運転モード、および前記第1および第2の運転モードに比べてエネルギ効率を優先する第3の運転モードの中から運転者に任意の運転モードの選択を許容する運転モード選択手段と、
運転者により前記通常走行レンジが選択されると共に前記第1の運転モードが選択されているときには、前記アクセル操作量取得手段により取得されたアクセル操作量を制御アクセル操作量に設定し、運転者により前記通常走行レンジが選択されると共に前記第2の運転モードが選択されているときには、所定の操作量増加制約に従って前記アクセル操作量取得手段により取得されたアクセル操作量に対応した制御アクセル操作量を該アクセル操作量よりも大きくなる傾向に設定し、運転者により前記通常走行レンジが選択されると共に前記第3の運転モードが選択されているときには、所定の操作量減少制約に従って前記アクセル操作量取得手段により取得されたアクセル操作量に対応した制御アクセル操作量を該アクセル操作量よりも小さくなる傾向に設定する制御アクセル操作量設定手段とを更に備え、
前記複数の制約は、前記操作量増加制約と前記操作量減少制約とに基づいて作成されており、前記要求駆動力設定手段は、運転者により前記通常走行レンジが選択されているときに、前記制御アクセル操作量と前記車速と前記要求駆動力との関係を規定する通常走行用要求駆動力設定制約と前記制御アクセル操作量設定手段により設定された制御アクセル操作量と前記車速取得手段により取得された車速とを用いて前記要求駆動力を設定する車両。
【請求項4】
請求項3に記載の車両において、
前記複数の制約は、前記操作量増加制約と前記操作量減少制約とに基づいて前記仮想シフトレンジごとに前記アクセル操作量取得手段により取得されたアクセル操作量と前記制御アクセル操作量との関係を規定するように作成された複数の制御アクセル操作量設定制約であり、
前記制御アクセル操作量設定手段は、運転者により前記仮想シフトレンジの何れか一つが選択されたときに、選択された仮想シフトレンジに対応した制御アクセル操作量設定制約と前記アクセル操作量取得手段により取得されたアクセル操作量とを用いて前記制御アクセル操作量を設定し、
前記要求駆動力設定手段は、運転者により前記仮想シフトレンジの何れか一つが選択されたときに、前記通常走行用要求駆動力設定制約と前記制御アクセル操作量設定手段により設定された制御アクセル操作量と前記車速取得手段により取得された車速とを用いて前記要求駆動力を設定する車両。
【請求項5】
請求項3に記載の車両において、
前記複数の制約は、前記操作量増加制約と前記操作量減少制約と前記通常走行用要求駆動力設定制約とに基づいて前記仮想シフトレンジごとに前記アクセル操作量と前記車速と前記要求駆動力との関係を規定するように作成された複数の要求駆動力設定制約であり、
前記要求駆動力設定手段は、運転者により前記仮想シフトレンジの何れか一つが選択されたときに、選択された仮想シフトレンジに対応した要求駆動力設定制約と前記アクセル操作量取得手段により取得されたアクセル操作量と前記車速取得手段により取得された車速とを用いて前記要求駆動力を設定する車両。
【請求項6】
請求項1から5の何れか一項に記載の車両において、
内燃機関と、
動力を入出力可能な第2の電動機と、
前記内燃機関の出力軸と前記第2の電動機の回転軸と前記駆動軸との3軸に接続され、これら3軸のうちの何れか2軸に入出力される動力に基づく動力を残余の軸に入出力する動力分配手段とを更に備え、
前記制御手段は、前記要求駆動力設定手段により設定された要求駆動力に基づく動力が前記駆動軸に出力されるように前記内燃機関と前記電動機と前記第2の電動機とを制御する車両。
【請求項7】
駆動輪に連結された駆動軸に動力を出力可能な電動機と、該電動機と電力をやり取り可能な蓄電手段と、運転者によるアクセル操作量を取得するアクセル操作量取得手段と、車速を取得する車速取得手段と、通常走行レンジおよび複数の仮想シフトレンジの中から運転者に任意のシフトレンジの選択を許容するシフトレンジ選択手段とを備えた車両の制御方法であって、
(a)運転者により前記仮想シフトレンジの何れか一つが選択されたときに、それぞれ前記車速が高いほど同一の前記アクセル操作量に対応した前記駆動軸に出力すべき駆動力である要求駆動力を大きくする傾向をもつと共に前記車速が一定であるときに前記仮想シフトレンジがロー側に移行するほど同一の前記アクセル操作量に対応した前記要求駆動力を大きくする傾向をもつように前記仮想シフトレンジごとに作成された複数の制約から運転者により選択された仮想シフトレンジに対応したものを抽出し、抽出した制約を用いて前記アクセル操作量取得手段により取得されたアクセル操作量と前記車速取得手段により取得された車速とに対応した前記要求駆動力を設定するステップと、
(b)ステップ(a)にて設定された要求駆動力に基づく動力が前記駆動軸に出力されるように前記電動機を制御するステップと、
を含む車両の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−166995(P2011−166995A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−28825(P2010−28825)
【出願日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】