説明

車両のブレーキ保持力制御装置

【課題】車両が停止している路面の勾配と自動変速機の油圧状態に応じてブレーキ力の保持を開放するタイミングを変更することによって車両の違和感の無いスムーズな発進を可能とする車両のブレーキ力保持制御装置を提供すること。
【解決手段】油圧で駆動される自動変速機4を備え、ブレーキ装置7のマスタシリンダ11とホイールシリンダ12とを連通させる液圧通路13に設けられた電磁弁14によってマスタシリンダ11とホイールシリンダ12との連通を遮断し、ブレーキペダル9の踏み込みが解除された後もブレーキ液圧をホイールシリンダ12に残してブレーキ力を保持することができる車両のブレーキ力保持制御装置において、車両が停止状態にあるときに前記自動変速機4の油圧が予め定められた閾値を超えると、その時点で車両の発進が可能であると判断してブレーキ力の保持を解除するECU(制御手段)3を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレーキペダルの踏み込みが解除された後もブレーキ力を保持することができる車両のブレーキ保持力制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の停止時において、ブレーキのマスタシリンダとホイールシリンダとを連通させる液圧通路に設けられた電磁弁によってマスタシリンダとホイールシリンダとの連通を遮断し、ブレーキペダルの踏み込みが解除された後もブレーキ液圧をホイールシリンダに残してブレーキ力を保持するブレーキ力保持制御(ヒルホールド制御)が知られている。斯かるブレーキ力保持制御においては、予め定められた所定時間が経過したとき、或いはアクセルペダルの踏み込み動作がなされたときに電磁弁を開放してブレーキ力の保持を解除することによって車両のスムーズな発進を可能としている。
【0003】
他方、燃費性能向上のため、車両停止時であって、且つ、エンジン自動停止条件が満たされたときにエンジンを自動停止させるアイドルストップを行う車両も知られている。このアイドルストップを行う車両においては、エンジンが再始動して車両が発進可能な状態になるまでブレーキ力を保持しておく必要がある。そして、ブレーキペダルの踏み込みを止めた時点でエンジン自動停止条件が満足されなくなるためにエンジンが再始動されるが、このようにエンジンが再始動された状態においても、必ずしも車両が発進可能な状態にあるとは限らない。
【0004】
例えば、上り坂においてアイドルストップによってエンジンが自動停止している状態から運転者がブレーキペダルの踏み込みを止めたためにエンジンが再始動した場合には、上り坂を車両が上るために必要な駆動力が発生していない間に車両が運転者の意図に反して動き出して後退してしまうため、所定時間(車両が後退しない程度の駆動力が発生するまでの時間)だけブレーキ力を保持して車両の後退(ずり下がり)を防ぐ必要がある。又、油圧で駆動される自動変速機を備えた車両においては、エンジンが再始動しても油圧が所定値に達しないと車両の発進が可能な状態とはならない。
【0005】
ところで、特許文献1には、路面傾斜角を路面傾斜センサによって検出し、検出された路面傾斜角に応じて必要制動力(ブレーキペダルの踏み込み量)を求めるようにしたエンジン自動停止・始動装置が提案されている。
【0006】
又、特許文献2には、Gセンサの出力によって路面勾配を判定し、下り坂であると判断されたときには下り坂用のヒルホールド制御を実行し、下り坂でないと判断されたときには平坦路・上り坂用のヒルホールド制御を実行するようにしたエンジン自動停止・始動制御装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3635927号公報
【特許文献2】特許第3758422号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来のブレーキ力保持制御においては、ブレーキ力を保持する時間と保持されていたブレーキ力を完全に開放するまでの時間が上り坂と下り坂で同じであったため、例えば車両が下り坂を下る場合、運転者がブレーキペダルの踏み込みを止めてから実際に車両が動き出すまでにタイムラグが生じ、運転者が違和感を感じてしまうという問題があった。
【0009】
又、上り坂と下り坂では、車両の発進に要する駆動力に差があり、下り坂では、上り坂に比べて発進したい方向に車両が容易に動くために必要な駆動力が上り坂での駆動力よりも小さくて済む。このため、上り坂での車両のずり下がりを防ぐためにブレーキ力の保持時間を比較的長く設定すると、下り坂においてはブレーキ力の保持状態から開放されるときに十分過ぎる駆動力が発生しており、ブレーキ力の保持が解除されると同時に車両が勢い良く飛び出し、車両の発進にショックを伴うためにスムーズな発進ができないという問題が発生する。
【0010】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、車両が停止している路面の勾配と自動変速機の油圧状態に応じてブレーキ力の保持を開放するタイミングを変更することによって車両の違和感の無いスムーズな発進を可能とする車両のブレーキ保持力制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、油圧で駆動される自動変速機を備え、ブレーキ装置のマスタシリンダとホイールシリンダとを連通させる液圧通路に設けられた電磁弁によってマスタシリンダとホイールシリンダとの連通を遮断し、ブレーキペダルの踏み込みが解除された後もブレーキ液圧をホイールシリンダに残してブレーキ力を保持することができる車両のブレーキ保持力制御装置において、
車両が停止状態にあるときに前記自動変速機の油圧が予め定められた閾値を超えると、その時点で車両の発進が可能であると判断してブレーキ力の保持を解除する制御手段を設けたことを特徴とする。
【0012】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、車両が停止している路面の勾配に応じて前記閾値を変更し、車両の下り方向への発進時の閾値を上り方向への発進時の閾値よりも小さく設定したことを特徴とする。
【0013】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の発明において、車両が停止状態にあるときに前記自動変速機をニュートラル状態として車両のクリープを低減するアイドルニュートラル制御が可能であって、路面の上り勾配が所定値以上である場合にはアイドルニュートラル制御を禁止するとともに、前記閾値をアイドルニュートラル制御が禁止されない場合の閾値よりも大きく設定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1記載の発明によれば、車両が停止状態にあるときに自動変速機の油圧が予め定められた閾値を超えると、その時点で車両の発進が可能であると判断してブレーキ力の保持を解除するようにしたため、車両の発進可能状態での自動変速機の油圧を正確に把握することができ、車両の違和感の無いスムーズな発進が可能となる。
【0015】
請求項2記載の発明によれば、ブレーキ力の保持を解除するときの自動変速機の油圧の閾値を車両が停止している路面の勾配に応じて変更し、車両の下り方向への発進時の閾値を上り方向への発進時の閾値よりも小さく設定したため、車両の自重の分力のために上り坂よりも発進したい方向に車両が容易に動く下り坂ではブレーキ力の保持を解除するまでの時間が上り坂でのそれに比して短くなり、坂の勾配を利用した早期の動き出しを可能とするとともに、ブレーキ力を保持している間に発生する駆動力が比較的小さい状態で車両をスムーズに発進させることができる。又、上り坂ではブレーキ力の保持を解除するまでの時間が下り坂でのそれに比して長くなり、車両のずり下がりが防がれるとともに、ブレーキ力を保持している間に発生する駆動力を大きくすることが可能となる。そして、駆動力が車両がずり下がることなく上り坂で発進することができる程度まで大きくなってからブレーキ力の保持が解除されるため、車両をスムーズに発進させることができる。
【0016】
請求項3記載の発明によれば、路面の上り勾配が所定値以上である場合にはアイドルニュートラル制御を禁止するとともに、ブレーキ力の保持を解除するときの自動変速機の油圧の閾値をアイドルニュートラル制御が禁止されない場合(下り坂又は所定値未満の勾配の上り坂での停車時)の閾値よりも大きく設定したため、急勾配の上り坂においても車両をずり下がることなくスムーズに発進させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係るブレーキ保持力制御装置を備える車両の駆動系と制動系のシステム構成図である。
【図2】本発明に係るブレーキ保持力制御装置によるブレーキ保持力制御のタイミングチャートである。
【図3】本発明に係るブレーキ保持力制御装置のアイドルストップでの制御フローを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0019】
図1は本発明に係るブレーキ保持力制御装置を備える車両の駆動系と制動系のシステム構成図であり、駆動源であるエンジン1には燃料を噴射するインジェクタ2が装着されており、このインジェクタ2は制御手段であるECU(電子制御ユニット)3によって制御される。即ち、ECU3は、吸入空気量とエンジン回転数、冷却水温等に基づいて最適な空燃比(A/F)の混合気が得られるようインジェクタ2からの燃料噴射量を制御する。
【0020】
又、エンジン1の出力軸には油圧で駆動される自動変速機4が連結されており、この自動変速機4は、エンジン1の出力を変速機構6に伝達するトルクコンバータ5(又は、発進クラッチ)と、該トルクコンバータ5等から回転入力を変速して駆動輪側に出力する変速機構6と、車速やエンジン1の出力(スロットル開度等)に応じて変速機構6の変速比を切り替える不図示の油圧回路によって構成されている。そして、この自動変速機4は、運転席に設けられた不図示のシフトレバーの操作によって運転モードをP(パーキング)、R(後進)、N(ニュートラル)、D(ドライブ)、3速、2速及び1速の各レンジに切り替え、そのときの運転状態に対して最適な変速比となるよう油圧回路が切り替えられる。尚、自動変速機4の出力は不図示のディファレンシャルギヤを経て駆動輪に伝達され、この駆動輪が回転駆動されることによって車両が所定の速度で走行する。
【0021】
他方、車両の制動系を構成するブレーキ装置7には、上端を中心として車両の前後方向に揺動するブレーキアーム8が設けられており、該ブレーキアーム8の下端には運転者が足で踏み込むためのブレーキペダル9が取り付けられている。そして、ブレーキアーム8は、踏力を軽減するためのブレーキブースタ10を介してマスタシリンダ11に連結されており、マスタシリンダ11は、ブレーキペダル9の踏み込み量に応じたブレーキ液圧(MC圧)を発生する。
【0022】
上記マスタシリンダ11と前輪又は後輪に設けられたホイールシリンダ12とは液圧通路13によって接続されており、液圧通路13にはマスタシリンダ11とホイールシリンダ12との連通を断接するための電磁弁14が設けられており、この電磁弁14の開閉は前記ECU3によって制御される。
【0023】
ここで、ECU3には、エンジン1の回転数を検出するエンジン回転センサ15、車速を検出する車速センサ16、ブレーキペダル9の踏み込み操作を検出するブレーキスイッチ(ブレーキSW)17、自動変速機4の油圧を検出する油圧センサ18、マスタシリンダ11の液圧(MC圧)を検出するMC圧センサ19、ホイールシリンダ12の液圧(WC圧)を検出するWC圧センサ20、車両が停止した路面の傾斜を検出するスロープセンサ21、自動変速機4のシフトレバーの位置を検出するシフトポジションセンサ22等の各種センサ群が入力側に接続されている。又、ECU3の出力側には、エンジン1に装着された前記インジェクタ2と、エンジン1を始動させるスタータモータ23と、液圧通路13に設けられた前記電磁弁14がそれぞれ接続されている。
【0024】
而して、本実施の形態に係る車両は、燃費性能向上のため、車両停止時であって、且つ、エンジン自動停止条件が満たされたときにエンジン1を自動停止させるアイドルストップを行うものであって、具体的には、ECU3がインジェクタ2への燃料供給と不図示の点火プラグへの電力供給を遮断することによってエンジン1を自動停止させる。
【0025】
斯かるアイドルストップを行う車両においては、運転者がブレーキペダル9から足を離す等の条件がによってECU3がスタータモータ23を駆動するとともに、インジェクタ2への燃料供給と点火プラグへの電力供給を再開することによってエンジン1が再始動されるが、エンジン1が再始動して車両が発進可能な状態になるまでブレーキ力を保持しておく必要があり、そのための装置が本発明に係るブレーキ力保持制御装置であって、これは電磁弁14とこれを開閉制御するECU3によって基本的に構成されている。
【0026】
本発明に係るブレーキ力保持制御装置は、ブレーキ装置7のマスタシリンダ11とホイールシリンダ12とを連通させる液圧通路13に設けられた電磁弁14によってマスタシリンダ11とホイールシリンダ12との連通を遮断し、ブレーキペダル9の踏み込みが解除された後もブレーキ液圧(WC圧)をホイールシリンダ12に残してブレーキ力を保持するものである。
【0027】
而して、本実施の形態では、ECU3は、車両が停止状態にあるときに前記油圧センサ18によって検出される自動変速機4の油圧が予め定められた閾値を超えると、その時点で車両の発進が可能であると判断してブレーキ力の保持を解除するようにしたことを特徴とする。そして、本実施の形態では、ECU3は、車両が停止している路面の勾配をスロープセンサ21からの検出信号によってモニターし、車両が停止している路面の勾配に応じて前記閾値(ブレーキ力の保持を解除するときの自動変速機4の油圧の値)を変更し、車両の下り方向への発進時の閾値を上り方向への発進時の閾値よりも小さく設定している。
【0028】
ここで、ブレーキ力保持制御装置の動作を図2に示すタイミングチャートと図3に示すフローチャートに基づいて以下に説明する。
【0029】
車両の走行中、運転者が車両を停止させるために図2に示す時間t1において図1に示すブレーキペダル9を踏み込むと、ブレーキスイッチ(ブレーキSW)17によってこのことが検出されてON信号がECU3に対して出力されるとともに、ブレーキブースタ10での倍力作用を経てマスタシリンダ11にブレーキペダル9の踏み込み量に応じた大きさのMC圧が発生する(図2参照)。このとき、液圧通路13に設けられた電磁弁14は開状態にあってマスタシリンダ11とホイールシリンダ12とは液圧通路13を介して互いに連通しているため、ホイールシリンダ12にも同様の液圧(WC圧)が発生する。すると、車輪の回転に制動が加えられるため、図2に示すように車速とエンジン回転数が次第に減少し、時間t2において車速が0となって車両が停止し、この時点でアイドルストップが実行されてエンジン1が停止され、エンジン回転数が0となるとともに、ECU3は発進可能判定をON(発進可)からOFF(発進不可)に切り替える。
【0030】
ここで、アイドルストップにおける制御フローを図3を参照しながら以下に説明する。
【0031】
即ち、アイドルストップが開始されると(ステップS1)、運転者によってブレーキが解除されたか否か(ブレーキペダル9から運転者の足が離れたか否か)が判定される(ステップS2)。本実施の形態では、マスタシリンダ11の液圧(MC圧)を検出するMC圧センサ19を利用して、MC圧の降下の開始を検出している。これによって、ブレーキスイッチよりも早期に運転者のペダルの踏み込みの解除を検出するようにしている。そして、図2に示す時間t3において運転者によってブレーキが解除されると図2に示すようにMC圧とWC圧が次第に低下し、運転者によってブレーキが解除されたと判断し(ステップS2での判定結果がYseとなる)、次にMC圧が所定値(Pm)barまで下がったか否かが判定される(ステップS3)。
【0032】
MC圧が図2に示す時間t4において所定値Pm(bar)まで下がると(ステップS3での判定結果がYesとなると)、ECU3は、スタータモータ23を起動してエンジン1を再始動させるとともに、電磁弁14を閉じてマスタシリンダ11とホイールシリンダ12との連通を遮断し、ブレーキペダル9の踏み込みが解除された後もブレーキ液圧Pm(bar)をホイールシリンダ12に残してブレーキ力を保持する(ステップS4)。
【0033】
上記状態において、ECU3は、油圧センサ18によって検出される自動変速機4の油圧が予め定められた閾値を超えたか否かを判定し(ステップS5)、図2に示す時間aが経過した後、時間t5において自動変速機4の油圧が閾値を超えると(ステップS5での判定結果がYesとなると、ECU3は、図2に示すように発進可能判定をOFF(発進不可)からON(発進可)に切り替えるとともに、電磁弁14を開いてマスタシリンダ11とホイールシリンダ12とを連通させてブレーキ力の保持を解除し(ステップS6)、処理を終了する(ステップS7)。
【0034】
而して、本実施の形態では、車両が停止状態にあるときに自動変速機4の油圧が予め定められた閾値を超えると、その時点で車両の発進が可能であると判断してブレーキ力の保持を解除するようにしたため、自動変速機4の油圧から車両が発進可能な状態であるかを正確に把握することができ、車両の違和感の無いスムーズな発進が可能となる。尚、油圧センサ18によって検出される自動変速機4の油圧とは、ライン油圧、発進クラッチ油圧、発進ギヤ段のクラッチ油圧や、CVTのプライマリ油圧等を利用することができる。又、各油圧に関し、センサ出力値をECU3に直接入力する他、自動変速機4の制御装置がその他のセンサ出力とを総合判断して自動変速機4が発進可能状態となっていることや閾値との比較を判断し、結果をECU3に出力して、本発明の車両のブレーキ保持力制御装置を構成しても良い。
【0035】
又、本実施の形態では、ブレーキ力の保持を解除するときの自動変速機4の油圧の閾値を車両が停止している路面の勾配に応じて変更し、車両の下り方向への発進時の閾値を上り方向への発進時の閾値よりも小さく設定したため、車両の自重の分力のために上り坂よりも車両が容易に動く下り坂ではブレーキ力の保持を解除するまでの時間が上り坂でのそれに比して短くなり、ブレーキ力を保持している間に発生する駆動力が比較的小さい間に車両をスムーズに発進させることができる。そして、上り坂ではブレーキ力の保持を解除するまでの時間(図2に示す時間a)が下り坂でのそれに比して長くなり、車両のずり下がりが防がれるとともに、ブレーキ力を保持している間に発生する駆動力が車両がずり下がることなく上り坂で発進することができる程度まで大きくなってからブレーキ力の保持が解除されるため、車両をスムーズに発進させることができる。
【0036】
ところで、車両が停止状態にあるときに自動変速機4をニュートラル状態として車両のクリープを低減するアイドルニュートラル制御を行う車両にあっては、自動変速機4の変速を制御するECU3に路面の勾配(傾斜)を検出するスロープセンサの出力が入力されており、路面の上り勾配が所定値以上である場合にはアイドルニュートラル制御を禁止することが行われている。このようなセンサや制御を有する場合、アイドルニュートラル制御の禁止、許可の判断やセンサ出力を利用して、ブレーキ力の保持を解除するときの自動変速機4の油圧の閾値を、アイドルニュートラル制御が禁止された場合はアイドルニュートラル制御が禁止されない場合(下り坂又は所定値未満の勾配の上り坂での停車時)の閾値よりも大きく設定することによって、急勾配の上り坂においても車両をずり下がることなくスムーズに発進させることができる。
【符号の説明】
【0037】
1 エンジン
3 ECU(制御手段)
4 自動変速機
7 ブレーキ装置
9 ブレーキペダル
11 マスタシリンダ
12 ホイールシリンダ
13 液圧通路
14 電磁弁
15 エンジン回転センサ
16 車速センサ
17 ブレーキスイッチ
18 油圧センサ
19 MC圧センサ
20 WC圧センサ
21 スロープセンサ
23 スタータモータ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧で駆動される自動変速機を備え、ブレーキ装置のマスタシリンダとホイールシリンダとを連通させる液圧通路に設けられた電磁弁によってマスタシリンダとホイールシリンダとの連通を遮断し、ブレーキペダルの踏み込みが解除された後もブレーキ液圧をホイールシリンダに残してブレーキ力を保持することができる車両のブレーキ力保持制御装置において、
車両が停止状態にあるときに前記自動変速機の油圧が予め定められた閾値を超えると、その時点で車両の発進が可能であると判断してブレーキ力の保持を解除する制御手段を設けたことを特徴とする車両のブレーキ力保持制御装置。
【請求項2】
車両が停止している路面の勾配に応じて前記閾値を変更し、車両の下り方向への発進時の閾値を上り方向への発進時の閾値よりも小さく設定したことを特徴とする請求項1記載の車両のブレーキ力保持制御装置。
【請求項3】
車両が停止状態にあるときに前記自動変速機をニュートラル状態として車両のクリープを低減するアイドルニュートラル制御が可能であって、路面の上り勾配が所定値以上である場合にはアイドルニュートラル制御を禁止するとともに、前記閾値をアイドルニュートラル制御が禁止されない場合の閾値よりも大きく設定することを特徴とする請求項1記載の車両のブレーキ力保持制御装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−40899(P2012−40899A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−181509(P2010−181509)
【出願日】平成22年8月16日(2010.8.16)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】