説明

車両の制御装置および制御方法

【課題】運転者が車両走行中に走行ポジションをNポジションからDポジションに切り換えた場合において、係合ショックを防止しつつ、運転者の意図に合った走行を実現する。
【解決手段】ECUは、NポジションからDポジションに切り換えるN/D操作が運転者によって行なわれると(S100にてYES)、目標ギヤ段を算出し(S102)、目標ギヤ段が2速以上であると(S104にてYES)、第1係合要素の目標指令圧を入力トルクに応じることなく即座に最大圧まで増加させる(S112)とともに、第2係合要素の目標指令圧を入力トルクに応じて徐々に増加させる(S114)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動変速機を備えた車両の制御に関し、特に、運転者によって選択される走行ポジションがニュートラルポジションから前進走行ポジションに切り換えられた場合の車両の制御に関する。
【背景技術】
【0002】
自動変速機を備えた車両において、運転者がシフトレバーを移動させて走行ポジションをニュートラルポジション(以下「Nポジション」ともいう)から前進走行ポジション(以下「Dポジション」ともいう)に切り換える操作(以下、このような操作を「N/D操作」ともいう)を行なうと、解放されていた摩擦係合要素が係合されて自動変速機がニュートラル状態から前進走行状態に切り換えられる。このような車両において、運転者がN/D操作を行なった直後にアクセルペダルを踏み込んだ場合、大きな変速ショックが生じることがある。このような変速ショックを抑制する技術が、たとえば特開昭61−105228号公報(特許文献1)に開示されている。
【0003】
特開昭61−105228号公報に開示された自動変速機の制御装置は、停止レンジから走行レンジへのシフト操作があったことを検出するシフト操作検出部と、車速を検出する車速検出部と、機関回転速度を検出する機関回転速度検出部と、車速が所定車速以下である期間に停止レンジから走行レンジへのシフト操作がありかつこのシフト操作から所定時間内に機関回転速度が所定機関回転速度以上になった場合に走行レンジ用摩擦係合装置の係合状態への移行に並行して機関出力トルクを減少させる出力トルク減少部とを含む。
【0004】
特開昭61−105228号公報に開示された自動変速機の制御装置によると、運転者がシフト操作とともに急発進しようとする場合、すなわち、車速が所定車速以下である期間に停止レンジから走行レンジへのシフト操作がありかつこのシフト操作から所定時間内に機関回転速度が所定機関回転速度以上になった場合、走行レンジ用摩擦係合装置の係合状態への移行に並行して機関出力トルクが減少させられる。そのため、走行レンジ用摩擦係合装置がその係合の際に負荷されるトルクは許容値内に保持され、走行レンジ用摩擦係合装置の係合の際の自動変速機の出力軸トルクの急激な変動が抑制される。これにより、変速衝撃、衝撃荷重を緩和することができる。さらに、走行レンジ用摩擦係合装置の係合動作を遅らせる必要がないので、発進が遅れることを回避することができる。
【特許文献1】特開昭61−105228号公報
【特許文献2】特開2003−287122号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述したN/D操作が車両走行中に行なわれた場合には、前進1速よりも高速側のギヤ段を形成するために、2つの摩擦係合要素を係合させる必要がある場合がある。このような場合において、運転者がN/D操作直後にアクセルペダルを踏み込んだ場合、各摩擦係合要素を係合させながら各摩擦係合要素に入力されるトルクが増加するため、摩擦係合要素の滑りを防止するために各摩擦係合要素への指示油圧を高くせざるを得なく、一方の摩擦係合要素の係合状態と他方の摩擦係合要素の係合状態とのバランスがばらついて係合ショックが生じる場合がある。
【0006】
この係合ショックを好適に抑制するために、摩擦係合要素の係合が終了するまで駆動源の出力トルク(自動変速機の入力トルク)を1つの摩擦係合要素を係合させる場合よりも大きく低下させると、アクセルを踏み込んでいるにも関わわらず車両が加速しないため、運転者に違和感を与えるという問題があった。
【0007】
しかしながら、特開昭61−105228号公報あるいは特開2003−287122号公報には、このような問題を解決する技術については何ら開示されていない。
【0008】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであって、その目的は、運転者が車両走行中に走行ポジションをニュートラルポジションから前進走行ポジションに切り換えた場合において、係合ショックを防止しつつ、運転者の意図に合った走行を実現することができる制御装置および制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明に係る制御装置は、複数の係合要素と複数の係合要素に供給される油圧を制御する油圧回路とを有し、駆動源の回転を変速して出力する自動変速機を備えた車両を制御する。複数の係合要素は、運転者によって選択される走行ポジションがニュートラルポジションである場合に解放状態に制御される。制御装置は、運転者によって走行ポジションがニュートラルポジションから前進走行ポジションに切り換えられたか否かを判断するための判断手段と、判断手段によって前進走行ポジションに切り換えられたと判断された場合、駆動源の出力トルクをアクセル開度に応じたトルクよりも低下させるように、駆動源を制御するための低下手段と、判断手段によって前進走行ポジションに切り換えられたと判断された場合、車速に応じた目標変速段を算出するための算出手段と、算出手段によって算出された目標変速段が少なくとも2つ以上の係合要素を係合して形成される変速段である場合、2つ以上の係合要素のうちの一部である第1の係合要素を残りの第2の係合要素よりも優先して係合させるように、油圧回路を制御するための制御手段とを含む。
【0010】
第2の発明に係る制御装置においては、第1の発明の構成に加えて、制御手段は、第1の係合要素に供給される油圧を所定の油圧まで増加させた後に、第2の係合要素に供給される油圧を増加させる。
【0011】
第3の発明に係る制御装置においては、第2の発明の構成に加えて、制御手段は、第1の係合要素に供給される油圧の増加開始から最大圧に達するまでの時間を、第2の係合要素に供給される油圧の増加開始から最大圧に達するまでの時間よりも短くする。
【0012】
第4の発明に係る制御装置においては、第3の発明の構成に加えて、制御手段は、第1の係合要素に供給される油圧を駆動源から自動変速機に入力される入力トルクに応じることなく増加させ、第2の係合要素に供給される油圧を入力トルクに応じて増加させる。
【0013】
第5の発明に係る制御装置においては、第4の発明の構成に加えて、制御手段は、2つ以上の係合要素が、単独で係合されただけでも入力トルクが自動変速機から出力される主係合要素と、単独で係合されただけでは入力トルクが自動変速機から出力されない副係合要素との組合せである場合、副係合要素に供給される油圧を入力トルクに応じることなく即座に最大値まで増加させ、主係合要素に供給される油圧を入力トルクに応じて増加させる。
【0014】
第6の発明に係る制御装置においては、第4の発明の構成に加えて、制御手段は、2つ以上の係合要素が、単独で係合されただけでも入力トルクが自動変速機から出力される主係合要素同士の組合せである場合、一部の主係合要素に供給される油圧を入力トルクに応じることなく予め定められた態様で増加させ、残りの主係合要素に供給される油圧を入力トルクに応じて増加させる。
【0015】
第7〜12の発明に係る制御方法は、それぞれ第1〜6の発明に係る制御装置と同様の要件を備える。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、運転者によって走行ポジションがニュートラルポジションから前進走行ポジションに切り換えられた場合において、車速に応じて算出された目標変速段が少なくとも2つ以上の係合要素を係合して形成される変速段である場合、2つ以上の係合要素のうちの一部である第1の係合要素を残りの第2の係合要素よりも優先して係合させる。これにより、第1の係合要素の係合状態と第2の係合要素の係合状態とのバランスがばらつくことを抑制することができる。そのため、駆動源の出力トルクを過剰に低下させることなく係合ショックを抑制することができる。その結果、係合ショックを防止しつつ、アクセルの踏み込みに応じて車両を加速させるという運転者の意図に合った走行が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同一である。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0018】
図1を参照して、本発明の実施の形態に係る制御装置を搭載した車両について説明する。この車両は、FR(Front engine Rear drive)車両である。なお、FR以外の車両であってもよい。
【0019】
車両は、エンジン1000と、オートマチックトランスミッション2000と、トルクコンバータ2100と、オートマチックトランスミッション2000の一部を構成するプラネタリギヤユニット3000と、オートマチックトランスミッション2000の一部を構成する油圧回路4000と、プロペラシャフト5000と、デファレンシャルギヤ6000と、後輪7000と、ECU(Electronic Control Unit)8000とを含む。本実施の形態に係る制御装置は、たとえばECU8000のROM(Read Only Memory)に記録されたプログラムを実行することによって実現される。
【0020】
エンジン1000は、インジェクタ(図示せず)から噴射された燃料と空気との混合気を、シリンダの燃焼室内で燃焼させる内燃機関である。燃焼によってシリンダ内のピストンが押し下げられて、クランクシャフトが回転させられる。エンジン1000の駆動力によって、オルタネータおよびエアコンディショナーなどの補機1004が駆動される。なお、エンジン1000の代わりにもしくは加えて、動力源にモータを用いるようにしてもよい。
【0021】
オートマチックトランスミッション2000は、トルクコンバータ2100を経由してエンジン1000に連結される。オートマチックトランスミッション2000は、所望のギヤ段を形成することによって、クランクシャフトの回転数を所望の回転数に変速する。
【0022】
オートマチックトランスミッション2000から出力された駆動力は、プロペラシャフト5000およびデファレンシャルギヤ6000を経由して、左右の後輪7000に伝達される。
【0023】
ECU8000には、車速センサ8002と、シフトレバー8004のポジションスイッチ8006と、アクセルペダル8008のアクセル開度センサ8010と、ブレーキペダル8012の踏力センサ8014と、電子スロットルバルブ8016のスロットル開度センサ8018と、エンジン回転数センサ8020と、入力軸回転数センサ8022と、出力軸回転数センサ8024とがハーネスなどを経由して接続されている。
【0024】
車速センサ8002は、ドライブシャフト6100の回転数から車速Vを検出する。ポジションスイッチ8006は、シフトレバー8004の位置(シフトポジション)SPを検出する。アクセル開度センサ8010は、アクセルペダル8008の開度(アクセル開度)ACCを検出する。踏力センサ8014は、ブレーキペダル8012の踏力(運転者がブレーキペダル8012を踏む力)を検出する。スロットル開度センサ8018は、電子スロットルバルブ8016の開度(スロットル開度)THを検出する。エンジン回転数センサ8020は、エンジン1000のクランクシャフトの回転数(エンジン回転数)NEを検出する。入力軸回転数センサ8022は、オートマチックトランスミッション2000の入力軸回転数(トルクコンバータ2100のタービン回転数)NTを検出する。出力軸回転数センサ8024は、オートマチックトランスミッション2000の出力軸の回転数(出力軸回転数)NOUTを検出する。これらの各センサは、検出結果を表わす信号をECU8000に送信する。
【0025】
ECU8000は、車速センサ8002、ポジションスイッチ8006、アクセル開度センサ8010、踏力センサ8014、スロットル開度センサ8018、エンジン回転数センサ8020、入力軸回転数センサ8022、出力軸回転数センサ8024などから送られてきた信号、ROMに記憶されたマップおよびプログラムに基づいて、車両が所望の走行状態となるように、機器類を制御する。
【0026】
本実施の形態において、ECU8000は、シフトレバー8004がDポジションであることによって、オートマチックトランスミッション2000のシフトレンジにDレンジが選択された場合、前進1速〜8速ギヤ段のうちのいずれかのギヤ段が形成されるように、オートマチックトランスミッション2000を制御する。前進1速〜8速ギヤ段のうちのいずれかのギヤ段が形成されることによって、オートマチックトランスミッション2000は後輪7000に駆動力を伝達し得る。なお、Dレンジにおいて、8速ギヤ段よりも高速のギヤ段を形成可能であるようにしてもよい。
【0027】
ECU8000は、車速Vとアクセル開度ACCとをパラメータとして実験等によって予め作成された変速線図に基づいて目標ギヤ段を算出し、算出された目標ギヤ段を形成するようにオートマチックトランスミッション2000を制御する。なお、変速線図は、少なくとも車速Vが高いほど高速側の目標ギヤ段が算出されるように設定される。
【0028】
なお、本実施の形態においては、ECU8000が1つのユニットとして説明するが、ECU8000を2つ以上のユニットに分割するようにしてもよい。たとえば、ECU8000がエンジン1000を制御するエンジンECUと、オートマチックトランスミッション2000を制御するECT(Electronic Controlled Transmission)_ECUとを含むようにし、エンジンECUとECT_ECUとが互いに信号を送受信可能であるように構成するようにしてもよい。
【0029】
図2を参照して、プラネタリギヤユニット3000について説明する。プラネタリギヤユニット3000は、クランクシャフトに連結された入力軸2102を有するトルクコンバータ2100に接続されている。
【0030】
プラネタリギヤユニット3000は、フロントプラネタリ3100と、リアプラネタリ3200と、C1クラッチ3301と、C2クラッチ3302と、C3クラッチ3303と、C4クラッチ3304と、B1ブレーキ3311と、B2ブレーキ3312と、ワンウェイクラッチ(F)3320とを含む。
【0031】
フロントプラネタリ3100は、ダブルピニオン型の遊星歯車機構である。フロントプラネタリ3100は、第1サンギヤ(S1)3102と、1対の第1ピニオンギヤ(P1)3104と、キャリア(CA)3106と、リングギヤ(R)3108とを含む。
【0032】
第1ピニオンギヤ(P1)3104は、第1サンギヤ(S1)3102および第1リングギヤ(R)3108と噛合っている。第1キャリア(CA)3106は、第1ピニオンギヤ(P1)3104が公転および自転可能であるように支持している。
【0033】
第1サンギヤ(S1)3102は、回転不能であるようにギヤケース3400に固定される。第1キャリア(CA)3106は、プラネタリギヤユニット3000の入力軸3002に連結される。
【0034】
リアプラネタリ3200は、ラビニヨ型の遊星歯車機構である。リアプラネタリ3200は、第2サンギヤ(S2)3202と、第2ピニオンギヤ(P2)3204と、リアキャリア(RCA)3206と、リアリングギヤ(RR)3208と、第3サンギヤ(S3)3210と、第3ピニオンギヤ(P3)3212とを含む。
【0035】
第2ピニオンギヤ(P2)3204は、第2サンギヤ(S2)3202、リアリングギヤ(RR)3208および第3ピニオンギヤ(P3)3212と噛合っている。第3ピニオンギヤ(P3)3212は、第2ピニオンギヤ(P2)3204に加えて、第3サンギヤ(S3)3210と噛合っている。
【0036】
リアキャリア(RCA)3206は、第2ピニオンギヤ(P2)3204および第3ピニオンギヤ(P3)3212が公転および自転可能であるように支持している。リアキャリア(RCA)3206は、ワンウェイクラッチ(F)3320に連結される。リアキャリア(RCA)3206は、1速ギヤ段の駆動時(エンジン1000から出力された駆動力を用いた走行時)に回転不能となる。リアリングギヤ(RR)3208は、プラネタリギヤユニット3000の出力軸3004に連結される。
【0037】
ワンウェイクラッチ(F)3320は、B2ブレーキ3312と並列に設けられる。すなわち、ワンウェイクラッチ(F)3320のアウターレースはギヤケース3400に固定され、インナーレースはリアキャリア(RCA)3206に連結される。
【0038】
C1クラッチ3301およびC2クラッチ3302は、単独で係合されただけでも入力軸3002に入力されたトルク(以下、単に「入力トルク」ともいう)が出力軸3004に出力される摩擦係合要素(以下、このような摩擦係合要素を「主係合要素」ともいう)である。
【0039】
C3クラッチ3303、C4クラッチ3304、B1ブレーキ3311、B2ブレーキ3312は、主係合要素が係合された場合の反力を受け持ち、単独で係合されただけでは入力トルクが出力軸3004に出力されない摩擦係合要素(以下、このような摩擦係合要素を「副係合要素」ともいう)である。
【0040】
図3に、各変速ギヤ段と、各クラッチおよび各ブレーキの作動状態との関係を表した作動表を示す。この作動表に示された組合せで各ブレーキおよび各クラッチを作動させることによって、前進1速〜8速のギヤ段と、後進1速および前進2速のギヤ段が形成される。
【0041】
図3に示すように、前進1速のギヤ段を形成する場合、ECU8000は、主係合要素であるC1クラッチ3301を係合させ、他のクラッチおよびブレーキを解放させる。
【0042】
また、たとえば前進2速のギヤ段を形成する場合、ECU8000は、主係合要素であるC1クラッチ3301と副係合要素であるB1ブレーキ3311とを係合させ、他のクラッチおよびブレーキを解放させる。
【0043】
また、たとえば前進5速のギヤ段を形成する場合、ECU8000は、いずれも主係合要素であるC1クラッチ3301およびC2クラッチ3302を係合させ、他のクラッチおよびブレーキを解放させる。
【0044】
図4を参照して、油圧回路4000の要部について説明する。なお、油圧回路4000は、以下に説明するものに限られない。
【0045】
油圧回路4000は、オイルポンプ4004と、プライマリレギュレータバルブ4006と、マニュアルバルブ4100と、ソレノイドモジュレータバルブ4200と、SL1リニアソレノイド(以下、SL(1)ともいう)4210と、SL2リニアソレノイド(以下、SL(2)ともいう)4220と、SL3リニアソレノイド(以下、SL(3)ともいう)4230と、SL4リニアソレノイド(以下、SL(4)ともいう)4240と、SL5リニアソレノイド(以下、SL(5)ともいう)4250と、SLTリニアソレノイド(以下、SLTともいう)4300と、B2コントロールバルブ4500とを含む。
【0046】
オイルポンプ4004は、エンジン1000のクランクシャフトに連結されている。クランクシャフトが回転することによって、オイルポンプ4004が駆動し、油圧を発生する。
【0047】
オイルポンプ4004で発生した油圧は、プライマリレギュレータバルブ4006によって調圧され、ライン圧が生成される。プライマリレギュレータバルブ4006は、SLT4300によって調圧されたスロットル圧をパイロット圧として作動する。ライン圧は、ライン圧油路4010を経由してマニュアルバルブ4100に供給される。
【0048】
マニュアルバルブ4100は、ドレンポート4105を含む。ドレンポート4105から、Dレンジ圧油路4102およびRレンジ圧油路4104の油圧が排出される。
【0049】
マニュアルバルブ4100のスプールがDポジションにある場合、ライン圧油路4010とDレンジ圧油路4102とが連通させられ、Dレンジ圧油路4102に油圧が供給される。このとき、Rレンジ圧油路4104とドレンポート4105とが連通させられ、Rレンジ圧油路4104のRレンジ圧がドレンポート4105から排出される。
【0050】
マニュアルバルブ4100のスプールがRポジションにある場合、ライン圧油路4010とRレンジ圧油路4104とが連通させられ、Rレンジ圧油路4104に油圧が供給される。このとき、Dレンジ圧油路4102とドレンポート4105とが連通させられ、Dレンジ圧油路4102のDレンジ圧がドレンポート4105から排出される。
【0051】
マニュアルバルブ4100のスプールがNポジションにある場合、Dレンジ圧油路4102およびRレンジ圧油路4104の両方と、ドレンポート4105とが連通させられ、Dレンジ圧油路4102のDレンジ圧およびRレンジ圧油路4104のRレンジ圧がドレンポート4105から排出される。
【0052】
B2コントロールバルブ4500は、Dレンジ圧油路4102およびRレンジ圧油路4104のいずれか一方からの油圧を選択的に、B2ブレーキ3312に供給する。B2コントロールバルブ4500に、Dレンジ圧油路4102およびRレンジ圧油路4104が接続されている。B2コントロールバルブ4500は、SLUソレノイドバルブ(図示せず)から供給された油圧とスプリングの付勢力とによって制御される。
【0053】
SLUソレノイドバルブがオンの場合、B2コントロールバルブ4500は、図4において左側の状態となる。この場合、B2ブレーキ3312には、SLUソレノイドバルブから供給された油圧をパイロット圧として、Dレンジ圧を調圧した油圧が供給される。なお、Dレンジ圧油路4102に供給された油圧は、最終的には、C1クラッチ3301、C2クラッチ3302およびC3クラッチ3303に供給される。
【0054】
SLUソレノイドバルブがオフの場合、B2コントロールバルブ4500は、図4において右側の状態となる。この場合、B2ブレーキ3312には、Rレンジ圧油路4104のRレンジ圧が供給される。
【0055】
SL(1)4210、SL(2)4220、SL(3)4230、SL(4)4240、SL(5)4250は、ノーマルクローズ型のリニアソレノイドバルブである。これらのリニアソレノイドバルブの出力油圧は、駆動信号としてECU8000からそれぞれのリニアソレノイドバルブに出力される駆動電流Iによって制御される。すなわち、これらのリニアソレノイドバルブは、非通電時に出力油圧が最小(「0」)になり、ECU8000からの各駆動電流Iの増大に伴ない出力油圧が増大する。
【0056】
C1クラッチ3301に供給される油圧は、SL(1)4210によって調圧される。C2クラッチ3302に供給される油圧は、SL(2)4220によって調圧される。C3クラッチ3303に供給される油圧は、SL(3)4230によって調圧される。C4クラッチ3304に供給される油圧は、SL(4)4240によって調圧される。B1ブレーキ3311に供給される油圧は、SL(5)4250によって調圧される。
【0057】
ECU8000は、入力トルクなどに基づいて、C1クラッチ3301の目標指令圧P(C1)、C2クラッチ3302の目標指令圧P(C2)、C3クラッチ3303の目標指令圧P(C3)、C4クラッチ3304の目標指令圧P(C4)、B1ブレーキ3311の目標指令圧P(B1)をそれぞれ算出する。
【0058】
ECU8000は、目標指令圧P(C1)に応じた駆動電流I(C1)、目標指令圧P(C2)に応じた駆動電流I(C2)、目標指令圧P(C3)に応じた駆動電流I(C3)、目標指令圧P(C4)に応じた駆動電流I(C4)、目標指令圧P(B1)に応じた駆動電流I(B1)を、それぞれSL(1)4210、SL(2)4220、SL(3)4230、SL(4)4240、SL(5)4250に出力する。
【0059】
ソレノイドモジュレータバルブ4200は、ライン圧を元圧とし、SLT4300に供給する油圧(ソレノイドモジュレータ圧)を一定の圧力に調圧する。
【0060】
SLT4300は、アクセル開度センサ8010によって検出されたアクセル開度ACCなどに基づいたECU8000からの駆動電流I(T)に応じて、ソレノイドモジュレータ圧を調圧し、スロットル圧を生成する。スロットル圧は、SLT油路4302を経由して、プライマリレギュレータバルブ4006に供給される。スロットル圧は、プライマリレギュレータバルブ4006のパイロット圧として利用される。
【0061】
以上のような構成を有する車両において、運転者が車両停止時にN/D操作を行なった場合は、目標ギヤ段が前進1速となり1つの摩擦係合要素(C1クラッチ3301)を係合させるが、運転者が車両走行中にN/D操作を行なった場合は、車速Vが高いため目標ギヤ段が前進1速よりも高速側のギヤ段(前進2〜8速のギヤ段)となり得る。そのため、図3の作動表に示したように、2つの摩擦係合要素を係合させる必要がある。
【0062】
本発明は、本実施の形態においては、運転者が車両走行中にN/D操作を行なった場合において、2つ以上(本実施の形態においては2つ)の摩擦係合要素を係合させる必要がある場合、一部の摩擦係合要素を残りの摩擦係合要素よりも優先して係合させる点に特徴を有する。
【0063】
図5に、本実施の形態に係る車両の制御装置であるECU8000の機能ブロック図を示す。ECU8000は、入力インターフェイス8100と、演算処理部8200と、記憶部8300と、出力インターフェイス8400とを含む。
【0064】
入力インターフェイス8100は、車速センサ8002からの車速V、ポジションスイッチ8006からのシフトポジションSP、アクセル開度センサ8010からのアクセル開度ACCを受信して、演算処理部8200に送信する。
【0065】
記憶部8300には、各種情報、プログラム、上述した変速線図を含むしきい値やマップ等が記憶され、必要に応じて演算処理部8200からデータが読み出されたり、格納されたりする。
【0066】
演算処理部8200は、N/D操作検出部8210と、目標ギヤ段算出部8220と、トルクダウン制御部8230と、第1油圧制御部8240と、第2油圧制御部8250とを含む。
【0067】
N/D操作検出部8210は、シフトポジションSPに基づいて、運転者によるN/D操作を検出する。
【0068】
目標ギヤ段算出部8220は、N/D操作検出部8210によって運転者によるN/D操作が検出された場合、車速V、アクセル開度ACCおよび変速線図に基づいて、目標ギヤ段を算出する。
【0069】
トルクダウン制御部8230は、N/D操作検出部8210によって運転者によるN/D操作が検出されてから目標ギヤ段が形成されるまでに、運転者によってアクセルペダル8008が踏み込まれた(アクセルがオンされた)場合、吸入空気量(スロットル開度TH)を調整してエンジン1000の出力トルクをアクセル開度ACCに応じた通常値よりも低下させるトルクダウン制御を実行する。これにより、エンジン1000からオートマチックトランスミッション2000に入力される入力トルクが低減され、係合ショックが抑制される。なお、スロットル開度THに代えてあるいは加えて、エンジン1000の燃料噴射量あるいは点火時期を制御してトルクダウン制御を実行するようにしてもよい。
【0070】
第1油圧制御部8240は、目標ギヤ段が前進2速以上である場合、すなわち目標ギヤ段を形成するために2つの摩擦係合要素を係合する必要がある場合、第1係合要素の目標指令圧を入力トルクに応じることなく早期に増加させる駆動電流Iを、第1係合要素に対応するソレノイドに出力する。
【0071】
ここで、第1係合要素とは、目標ギヤ段が前進5速以外である場合は副係合要素を意味し、目標ギヤ段が前進5速である場合はC2クラッチ3302を意味するものとする。以下の説明においても同様である。
【0072】
たとえば、目標ギヤ段が前進2速である場合、第1油圧制御部8240は、前進2速を形成する副係合要素であるB1ブレーキ3311の目標指令圧P(B1)を即座に最大圧まで増加させる駆動電流I(B1)をSL(5)4250に出力する。
【0073】
また、目標ギヤ段が前進5速である場合、第1油圧制御部8240は、前進5速を形成する主係合要素の1つであるC2クラッチ3302の目標指令圧P(C2)を早期に増加させる駆動電流I(C2)をSL(2)4220に出力する。この際、第1油圧制御部8240は、C2クラッチ3302が主係合要素であることを考慮して、少なくとも即座に最大圧まで増加する場合よりも係合ショックを低減できるように予め定められた態様で目標指令圧P(C2)を増加させる。
【0074】
第2油圧制御部8250は、第1油圧制御部8240による第1係合要素の係合を優先させた後に、第2係合要素の目標指令圧を入力トルクに応じて徐々に増加させる駆動電流Iを、第2係合要素に対応するソレノイドに出力する。
【0075】
ここで、第2係合要素とは、目標ギヤ段を形成する2つの摩擦係合要素のうちの第1係合要素とは異なる他方の係合要素であり、目標ギヤ段が前進5速以外である場合は主係合要素を意味し、目標ギヤ段が前進5速である場合はC1クラッチ3301を意味するものとする。以下の説明においても同様である。
【0076】
たとえば、目標ギヤ段が前進2速である場合、第2油圧制御部8250は、前進2速を形成する主係合要素であるC1クラッチ3301の目標指令圧P(C1)を入力トルクに応じて徐々に増加させる駆動電流I(C1)をSL(1)4210に出力する。
【0077】
また、目標ギヤ段が前進5速である場合、第2油圧制御部8250は、前進5速を形成する2つの主係合要素のうちのC2クラッチ3302とは異なる他方のC1クラッチ3301の目標指令圧P(C1)を入力トルクに応じて徐々に増加させる駆動電流I(C1)をSL(1)4210に出力する。この際、第2油圧制御部8250は、上述したように、第1係合要素であるC2クラッチ3302の目標指令圧P(C2)が即座に最大圧まで増加されないことを考慮して、目標指令圧P(C2)が予め定められた油圧を超えた、あるいは、目標指令圧P(C2)の増加開始からの経過時間が所定時間を越えた時点から、C1クラッチ3301の目標指令圧P(C1)を増加させる。
【0078】
なお、第2油圧制御部8250は、第2係合要素の目標指令圧を増加させる際、制御応答性を向上させるために目標指令圧を所定油圧まで増加させるクイックアプライ制御を所定時間行ない、クイックアプライ制御後、入力トルクに応じた低圧待機油圧まで目標指令圧を低下させる低圧待機制御を所定時間行ない、低圧待機制御後、入力トルクに応じたスイープ量(単位時間あたりの増加量)で目標指令圧を最大圧まで増加させるスイープ制御を行なう。なお、このような制御態様に限定されるものではない。
【0079】
本実施の形態において、N/D操作検出部8210と、目標ギヤ段算出部8220と、トルクダウン制御部8230と、第1油圧制御部8240と、第2油圧制御部8250とは、いずれも演算処理部8200であるCPUが記憶部8300に記憶されたプログラムを実行することにより実現される、ソフトウェアとして機能するものとして説明するが、ハードウェアにより実現されるようにしてもよい。なお、このようなプログラムは記憶媒体に記録されて車両に搭載される。
【0080】
以下、図6を参照して、本実施の形態に係る制御装置であるECU8000で実行されるプログラムの制御構造について説明する。なお、このプログラムは、予め定められたサイクルタイムで繰り返し実行される。
【0081】
ステップ(以下、ステップをSと略す)100にて、ECU8000は、シフトポジションSPに基づいて、運転者によってN/D操作が行なわれたか否かを判断する。N/D操作が行なわれると(S100にてYES)、処理はS102に移される。そうでないと(S100にてNO)、この処理は終了する。
【0082】
S102にて、ECU8000は、車速V、アクセル開度ACCおよび変速線図に基づいて、目標ギヤ段を算出する。
【0083】
S104にて、ECU8000は、目標ギヤ段が前進2速以上(すなわち前進1速よりも高速側)であるか否かを判断する。目標ギヤ段が前進2速以上であると(S104にてYES)、処理はS106に移される。目標ギヤ段が前進2速以上でない(すなわち前進1速)であると(S104にてNO)、処理はS122に移される。
【0084】
S106にて、ECU8000は、アクセル開度ACCに基づいて、アクセルがオンされたか否かを判断する。アクセルがオンされると(S106にてYES)、処理はS108に移される。そうでないと(S106にてNO)、処理はS110に移される。
【0085】
S108にて、ECU8000は、アクセル開度ACCに応じて、エンジン1000のトルクダウン制御を実行する。
【0086】
S110にて、ECU8000は、目標ギヤ段が前進5速であるか否かを判断する。目標ギヤ段が前進5速であると(S110にてYES)、処理はS116に移される。そうでないと(S110にてNO)、処理はS112に移される。
【0087】
S112にて、ECU8000は、第1係合要素の目標指令圧を入力トルクに応じることなく即座に最大値まで増加させる。
【0088】
S114にて、ECU8000は、第2係合要素の目標指令圧を入力トルクに応じて徐々に増加させる。ECU8000は、上述したように、クイックアプライ制御を所定時間行ない、クイックアプライ制御後、入力トルクに応じた低圧待機油圧まで目標指令圧を低下させる低圧待機制御を所定時間行ない、低圧待機制御後、入力トルクに応じたスイープ量で目標指令圧を最大圧まで増加させるスイープ制御を行なう。
【0089】
S116にて、ECU8000は、第1係合要素の目標指令圧(すなわちC2クラッチ3302の目標指令圧P(C2))を、入力トルクに応じることなく予め定められた態様で早期に増加させる。この予め定められた態様は、目標指令圧P(C2)の増加開始から最大圧に達するまでの増加時間を予め設定し、この増加時間内で入力トルクに応じることなくクイックアプライ制御、低圧待機制御、スイープ制御を行なうものである。なお、この増加時間は、第2係合要素の増加開始から最大圧に達するまでの時間よりも短くなるように設定される。
【0090】
S118にて、ECU8000は、第2係合要素(C1クラッチ3301)の係合開始条件が成立したか否かを判断する。ECU8000は、C2クラッチ3302の目標指令圧P(C2)が予め定められた油圧を超えた場合、あるいは、C2クラッチ3302の目標指令圧P(C2)の増加開始からの経過時間が所定時間を越えた場合に、第2係合要素の係合開始条件が成立したと判断する。第2係合要素の係合開始条件が成立すると(S118にてYES)、処理はS120に移される。そうでないと(S120にてNO)、処理はS118に戻され、第2係合要素の係合開始条件が成立するまで待つ。
【0091】
S120にて、ECU8000は、第2係合要素(C1クラッチ3301)の目標指令圧を入力トルクに応じて徐々に増加させる。ECU8000は、上述したように、クイックアプライ制御を所定時間行ない、クイックアプライ制御後、入力トルクに応じた低圧待機油圧まで目標指令圧を低下させる低圧待機制御を所定時間行ない、低圧待機制御後、入力トルクに応じたスイープ量で目標指令圧を最大圧まで増加させるスイープ制御を行なう。なお、この処理における低圧待機油圧およびスイープ量は、S114と同様であって異なってもよい。
【0092】
S122にて、ECU8000は、アクセル開度ACCに基づいて、アクセルがオンされたか否かを判断する。アクセルがオンされると(S122にてYES)、処理はS124に移される。そうでないと(S124にてNO)、処理はS126に移される。
【0093】
S124にて、ECU8000は、アクセル開度に応じて、エンジン1000のトルクダウン制御を実行する。なお、この処理は、S108と同様の処理であっても、異なる処理であってもよい。
【0094】
S126にて、C1クラッチ3301の目標指令圧P(C1)を入力トルクに応じて徐々に増加させる。なお、この処理は、S114あるいはS120と同様の処理であっても、異なる処理であってもよい。
【0095】
以上のような構造およびフローチャートに基づく本実施の形態に係る車両の制御装置であるECU8000の動作について、図7を参照しつつ説明する。
【0096】
車両走行中の時刻t(1)にて、運転者がN/D操作を行なうとともにアクセルペダル8008を踏み込んだ場合を想定する。この場合、N/D操作(S100にてYES)に伴なって目標ギヤ段が算出される(S102)。目標ギヤ段が前進2速であると(S104にてYES)、アクセルがオンされているため(S106にてYES)、図7に示すように、エンジントルクが低下される(S108)。
【0097】
以下の説明においては、目標ギヤ段が前進2速である場合(すなわち、目標ギヤ段を形成するために主係合要素と副係合要素とを係合する必要がある場合)と、目標ギヤ段が前進5速である場合(すなわち、目標ギヤ段を形成するために2つの主係合要素を係合する必要がある場合)とに分けて説明する。
【0098】
[目標ギヤ段が前進2速である場合]
第1係合要素(前進2速を形成する副係合要素)であるB1ブレーキ3311の目標指令圧P(B1)が即座に最大圧まで増加される(S100にてYES、S112)とともに、第2係合要素(前進2速を形成する主係合要素)であるC1クラッチ3301の目標指令圧P(C1)が入力トルクに応じた低圧待機油圧、スイープ量で徐々に増加される。
【0099】
このように、主係合要素と副係合要素とを係合する必要がある場合、単独で係合されただけでは出力トルクが変化しない副係合要素の目標指令圧を即座に最大圧まで増加させることにより副係合要素の係合を即座に終了させ、その後、単独で係合されただけでも出力トルクが変化する主係合要素の目標指令圧を、1つの係合要素を係合する場合と同様に、入力トルクに応じて徐々に増加させる。
【0100】
そのため、2つの係合要素に供給される油圧を入力トルクに応じて同時に増加させる場合に比べて、係合油圧制御の複雑化を回避することができる。さらに、主係合要素の係合状態と副係合要素の係合状態とのバランスがばらつくことを抑制することができるので、係合ショックを防止するために図7の一点鎖線に示すようにエンジントルクダウン量を過剰に低減する必要がなくなる。そのため、係合ショックを防止しつつ、アクセルの踏み込みに応じて車両を加速させる運転者の意図に合った走行が可能となる。
【0101】
[目標ギヤ段が前進5速である場合]
前進5速を形成するC1クラッチ3301、C2クラッチ3302の2つの主係合要素のうち、まずC2クラッチ3302の目標指令圧P(C2)が、入力トルクに関係なく予め定められた低圧待機油圧、スイープ量で早期に増加される(S116)。
【0102】
その後の時刻t(2)にて、C2クラッチ3302の目標指令圧P(C2)が予め定められた油圧を超えると(S118にてYES)、残りのC1クラッチ3301の目標指令圧P(C1)が、入力トルクに応じた低圧待機油圧、スイープ量で徐々に増加される。
【0103】
このように、2つの主係合要素をそれぞれ係合する必要がある場合、いずれか一方の係合要素をショックが生じない程度に早期に係合させ、一方の主係合要素の係合がほぼ完了した時点で、他方の主係合要素の目標指令圧を、1つの摩擦係合要素を係合する場合と同等に、入力トルクに応じて徐々に増加させる。そのため、主係合要素と副係合要素とを係合する場合と同様に、係合油圧制御の複雑化を回避し、かつ係合ショックを防止しつつ運転者の意図に合った走行が可能となる。
【0104】
以上のように、本実施の形態に係る制御装置によれば、運転者によるN/D操作によって2つの係合要素をそれぞれ係合する必要がある場合、一方の係合要素を他方の係合要素に優先させて早期に係合させる。これにより、一方の係合要素の係合状態と他方の係合要素の係合状態とのバランスがばらつくことを抑制することができる。そのため、N/D操作後即アクセルオンされた場合であっても、エンジントルクを過剰に低下させることなく係合ショックを抑制することができる。その結果、係合ショックを防止しつつ、アクセルの踏み込みに応じて車両を加速させることができる。
【0105】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】車両のパワートレーンを示す概略構成図である。
【図2】オートマチックトランスミッションのプラネタリギヤユニットを示すスケルトン図である。
【図3】オートマチックトランスミッションの作動表を示す図である。
【図4】オートマチックトランスミッションの油圧回路を示す図である。
【図5】ECUの機能ブロック図である。
【図6】ECUが実行するプログラムの制御構造を示すフローチャートである。
【図7】ECUによって制御される第1係合要素の目標指令圧と第2係合要素の目標指令圧のタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0107】
1000 エンジン、1004 補機、2000 オートマチックトランスミッション、2100 トルクコンバータ、2102 入力軸、3000 プラネタリギヤユニット、3002 入力軸、3004 出力軸、3100 フロントプラネタリ、3200 リアプラネタリ、3301 C1クラッチ、3302 C2クラッチ、3303 C3クラッチ、3304 C4クラッチ、3311 B1ブレーキ、3312 B2ブレーキ、3400 ギヤケース、4000 油圧回路、5000 プロペラシャフト、6000 デファレンシャルギヤ、6100 ドライブシャフト、7000 後輪、8000 ECU、8002 車速センサ、8004 シフトレバー、8006 ポジションスイッチ、8008 アクセルペダル、8010 アクセル開度センサ、8012 ブレーキペダル、8014 踏力センサ、8016 電子スロットルバルブ、8018 スロットル開度センサ、8020 エンジン回転数センサ、8022 入力軸回転数センサ、8024 出力軸回転数センサ、8100 入力インターフェイス、8200 演算処理部、8210 N/D操作検出部、8220 目標ギヤ段算出部、8230 トルクダウン制御部、8240 油圧制御部、8250 油圧制御部、8300 記憶部、8400 出力インターフェイス。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の係合要素と前記複数の係合要素に供給される油圧を制御する油圧回路とを有し、駆動源の回転を変速して出力する自動変速機を備えた車両の制御装置であって、前記複数の係合要素は、運転者によって選択される走行ポジションがニュートラルポジションである場合に解放状態に制御され、
前記制御装置は、
運転者によって前記走行ポジションが前記ニュートラルポジションから前進走行ポジションに切り換えられたか否かを判断するための判断手段と、
前記判断手段によって前記前進走行ポジションに切り換えられたと判断された場合、前記駆動源の出力トルクをアクセル開度に応じたトルクよりも低下させるように、前記駆動源を制御するための低下手段と、
前記判断手段によって前記前進走行ポジションに切り換えられたと判断された場合、車速に応じた目標変速段を算出するための算出手段と、
前記算出手段によって算出された前記目標変速段が少なくとも2つ以上の係合要素を係合して形成される変速段である場合、前記2つ以上の係合要素のうちの一部である第1の係合要素を残りの第2の係合要素よりも優先して係合させるように、前記油圧回路を制御するための制御手段とを含む、車両の制御装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記第1の係合要素に供給される油圧を所定の油圧まで増加させた後に、前記第2の係合要素に供給される油圧を増加させる、請求項1に記載の車両の制御装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記第1の係合要素に供給される油圧の増加開始から最大圧に達するまでの時間を、前記第2の係合要素に供給される油圧の増加開始から最大圧に達するまでの時間よりも短くする、請求項2に記載の車両の制御装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記第1の係合要素に供給される油圧を前記駆動源から前記自動変速機に入力される入力トルクに応じることなく増加させ、前記第2の係合要素に供給される油圧を前記入力トルクに応じて増加させる、請求項3に記載の車両の制御装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記2つ以上の係合要素が、単独で係合されただけでも前記入力トルクが前記自動変速機から出力される主係合要素と、単独で係合されただけでは前記入力トルクが前記自動変速機から出力されない副係合要素との組合せである場合、前記副係合要素に供給される油圧を前記入力トルクに応じることなく即座に最大値まで増加させ、前記主係合要素に供給される油圧を前記入力トルクに応じて増加させる、請求項4に記載の車両の制御装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記2つ以上の係合要素が、単独で係合されただけでも前記入力トルクが前記自動変速機から出力される主係合要素同士の組合せである場合、一部の主係合要素に供給される油圧を前記入力トルクに応じることなく予め定められた態様で増加させ、残りの主係合要素に供給される油圧を前記入力トルクに応じて増加させる、請求項4に記載の車両の制御装置。
【請求項7】
複数の係合要素と前記複数の係合要素に供給される油圧を制御する油圧回路とを有し、駆動源の回転を変速して出力する自動変速機を備えた車両を制御する制御装置が行なう制御方法であって、前記複数の係合要素は、運転者によって選択される走行ポジションがニュートラルポジションである場合に解放状態に制御され、
前記制御方法は、
運転者によって前記走行ポジションが前記ニュートラルポジションから前進走行ポジションに切り換えられたか否かを判断する判断ステップと、
前記判断ステップで前記前進走行ポジションに切り換えられたと判断された場合、前記駆動源の出力トルクをアクセル開度に応じたトルクよりも低下させるように、前記駆動源を制御する低下ステップと、
前記判断ステップで前記前進走行ポジションに切り換えられたと判断された場合、車速に応じた目標変速段を算出する算出ステップと、
前記算出ステップで算出された前記目標変速段が少なくとも2つ以上の係合要素を係合して形成される変速段である場合、前記2つ以上の係合要素のうちの一部である第1の係合要素を残りの第2の係合要素よりも優先して係合させるように、前記油圧回路を制御する制御ステップとを含む、車両の制御方法。
【請求項8】
前記制御ステップは、前記第1の係合要素に供給される油圧を所定の油圧まで増加させた後に、前記第2の係合要素に供給される油圧を増加させる、請求項7に記載の車両の制御方法。
【請求項9】
前記制御ステップは、前記第1の係合要素に供給される油圧の増加開始から最大圧に達するまでの時間を、前記第2の係合要素に供給される油圧の増加開始から最大圧に達するまでの時間よりも短くする、請求項8に記載の車両の制御方法。
【請求項10】
前記制御ステップは、前記第1の係合要素に供給される油圧を前記駆動源から前記自動変速機に入力される入力トルクに応じることなく増加させ、前記第2の係合要素に供給される油圧を前記入力トルクに応じて増加させる、請求項9に記載の車両の制御方法。
【請求項11】
前記制御ステップは、前記2つ以上の係合要素が、単独で係合されただけでも前記入力トルクが前記自動変速機から出力される主係合要素と、単独で係合されただけでは前記入力トルクが前記自動変速機から出力されない副係合要素との組合せである場合、前記副係合要素に供給される油圧を前記入力トルクに応じることなく即座に最大値まで増加させ、前記主係合要素に供給される油圧を前記入力トルクに応じて増加させる、請求項10に記載の車両の制御方法。
【請求項12】
前記制御ステップは、前記2つ以上の係合要素が、単独で係合されただけでも前記入力トルクが前記自動変速機から出力される主係合要素同士の組合せである場合、一部の主係合要素に供給される油圧を前記入力トルクに応じることなく予め定められた態様で増加させ、残りの主係合要素に供給される油圧を前記入力トルクに応じて増加させる、請求項10に記載の車両の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−299878(P2009−299878A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−158273(P2008−158273)
【出願日】平成20年6月17日(2008.6.17)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】