車両の制御装置
【課題】変速時のショックを低減し、燃費の悪化を防止する車両の制御装置を提供する。
【解決手段】車両がコースト状態で走行しており、ダウンシフトが行われる場合に、フューエルカットリカバリが行われるかどうか判定し、フューエルカットリカバリが行われる場合には、オフセット油圧を設定し、締結側の摩擦締結要素の油圧をプリチャージ油圧まで上げた後に設定する初期油圧を、基準初期油圧からオフセット油圧を減算した油圧に設定する。
【解決手段】車両がコースト状態で走行しており、ダウンシフトが行われる場合に、フューエルカットリカバリが行われるかどうか判定し、フューエルカットリカバリが行われる場合には、オフセット油圧を設定し、締結側の摩擦締結要素の油圧をプリチャージ油圧まで上げた後に設定する初期油圧を、基準初期油圧からオフセット油圧を減算した油圧に設定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両の制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両がコースト状態であるときに自動変速機でダウンシフトを行うと、締結側の摩擦締結要素に比較的高圧の油圧を供給して、締結側のピストンストロークを促進させる。その後、低圧の油圧(以下、初期油圧とする)を供給して、ストロークを完了させる。そして、その後、締結側の摩擦締結要素の油圧を初期油圧から上昇させることで、トルクフェーズ、イナーシャフェーズを経て、自動変速機におけるダウンシフトを終了させるものが特許文献1に開示されている。
【特許文献1】特公平6−37931号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
コースト状態でのダウンシフトは、エンジン回転速度が比較的高回転速度領域でフューエルカットを行っている場合、エンジン回転速度が比較的低回転速度領域でフューエルカットリカバリを行っている場合など、異なる運転状態で行われることがある。
【0004】
しかし、上記の発明では、運転状態が異なっているにも関わらず、比較的高圧の油圧を供給した直後の初期油圧を変速の種類、もしくは係合する摩擦要素の種類に対して、一律に設定している。
【0005】
例えば、フューエルカットリカバリ後には、フューエルカット中に比べて逆駆動力が小さく、出力軸トルクはゼロ近傍にある。このため、初期油圧は、適切にピストンストロークを完了する油圧を指令でき、かつ指令通りの油圧がアクチュエータから供給されると、変速ショックは良好なものとなる。しかし、指令に対して、実際の油圧がばらついたり、ばらつき対策で学習などを行っていても、油圧が十分に収束していない場合には、ピストンストロークを丁度完了させる油圧に対して、初期油圧が高すぎる場合が生じる。このような場合、トルクフェーズ中は、出力軸トルクの変動量の絶対値は小さいものの、フューエルカットリカバリ後の出力軸トルクに対する出力軸トルクの変動量としては大きいために、運転者が変速ショックを体感し易くなる、といった問題点がある。
【0006】
これに対して、初期油圧を低く設定すると、運転者が変速ショックを感じることを抑制することができる。しかし、例えばフューエルカット中は、フューエルカットリカバリ後よりも逆駆動力が大きく、初期油圧が高くなった場合でも、運転者が変速ショックを感じることが抑制されるにもかかわらず、過剰に低い初期油圧から油圧を上昇させるので、所定油圧となるまでの時間が長くなる。その結果、フューエルカット中に行われたコーストダウンシフト時のイナーシャフェーズ開始までの時間が長くなり、その間にエンジン回転速度Neが低下して、フューエルカットリカバリが実行されて、フューエルカットリカバリの実行によるショックや燃費の悪化を招く、といった問題点がある。
【0007】
本発明はこのような問題点を解決するために発明されたもので、コースト状態でダウンシフトを行う際に、変速時のショックの発生を抑制し、燃費の悪化を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、複数の摩擦要素を有し、油圧によって一部の摩擦要素を締結状態、残りの摩擦要素を解放状態とすることで複数の変速段を切り替え、入力軸の回転速度を変速して出力軸から出力する自動変速機を備える車両の制御装置において、ダウンシフトを行うかを判定するダウンシフト判定手段と、コースト状態でダウンシフトを行う場合に、フューエルカット中及びフューエルカットリカバリ後のいずれの状態で行われるかを判定するフューエルカット判定手段と、コースト状態でダウンシフトを行う場合に、締結側の摩擦要素の指示油圧を第1の油圧まで高くした後に、第1の油圧よりも低い第2の油圧として、締結側の摩擦要素のピストンストロークを行う油圧制御手段と、を備え、油圧制御手段は、フューエルカットリカバリ後の第2の油圧を、フューエルカット中の第2の油圧よりも低い油圧で制御する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、車両がコースト状態で走行中に、ダウンシフトを行う場合に、フューエルカットリカバリ後の第2の油圧を、フューエルカット中の第2の油圧よりも低い油圧で制御するため、出力軸トルクに対する出力軸トルクの変動量が大きいフューエルカットリカバリ後のダウンシフトについて、実際の油圧がばらついたり、学習制御が収束をしていなくても、低い油圧からピストンをストロークさせることで、運転者が感じる変速ショックの発生を抑制できる。また、出力軸トルクに対する出力軸トルクの変動量が小さいフューエルカット中のダウンシフトの場合には、フューエルカットリカバリ後の油圧よりも高い油圧とすることで、フューエルカットリカバリ後よりもピストンストロークが促進されて、例えばエンジン回転速度が低下し、変速中にフューエルカットリカバリが実行されることを防止することができ、変速中にフューエルカットリカバリが実行されることによって生じるショックや燃費の悪化を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の実施形態の構成を、図1を用いて説明する。図1は、本実施形態の制御装置が適用された自動変速機の一例を示すスケルトン図である。
【0011】
本実施形態における自動変速機は、前進7速後退1速の有段式自動変速機である。自動変速機は、エンジンEgの駆動力がトルクコンバータTCを介して入力軸Inputから入力され、4つの遊星ギアと7つの摩擦締結要素(摩擦要素)とによって回転速度が変速されて出力軸Outputから出力される。また、トルクコンバータTCのポンプインペラと同軸上にオイルポンプOPが設けられ、エンジンEgの駆動力によって回転駆動され、オイルを加圧する。
【0012】
トルクコンバータTCは、ポンプインペラとタービンランナとの回転差をなくすためのロックアップクラッチLUCを備える。
【0013】
また、エンジンEgの駆動状態を制御するエンジンコントローラ(エンジン制御手段)10(ECU)と、有段変速機の変速状態等を制御する自動変速機コントローラ20(ATCU)と、自動変速機コントローラ20の出力信号に基づいて各摩擦締結要素の油圧を制御するコントロールバルブユニット(油圧制御手段)30(CVU)と、が設けられている。なお、エンジンコントローラ10と自動変速機コントローラ20とは、CAN通信線等を介して接続され、相互にセンサ情報や制御情報を通信により共有している。
【0014】
エンジンコントローラ10には、運転者のアクセルペダル操作量を検出するアクセル開度センサ(APOセンサ)1と、エンジン回転速度Neを検出するエンジン回転速度センサ(エンジン回転速度検出手段)2と、が接続されている。このエンジンコントローラ10は、エンジン回転速度Neやアクセルペダル操作量に基づいて燃料噴射量やスロットル開度を制御し、エンジン出力回転速度及びエンジントルクを制御する。
【0015】
自動変速機コントローラ20には、第1キャリアPC1の回転速度を検出する第1タービン回転速度センサ3、第1リングギアR1の回転速度を検出する第2タービン回転速度センサ4、出力軸Outputの回転速度を検出する出力軸回転速度センサ5、及び運転者のシフトレバーの操作により選択されたレンジ位置を検出するインヒビタスイッチ6が接続される。そして、Dレンジの選択時において、車速VSPとアクセルペダル操作量を示すアクセル開度APOとに基づく最適な指令変速段を選択し、コントロールバルブユニット30に指令変速段を達成する制御指令を出力する。
【0016】
次に、入力軸Inputと出力軸Outputとの間の変速ギア機構について説明する。
【0017】
入力軸Input側から出力軸Output側までの軸上に、順に第1遊星ギアG1と第2遊星ギアG2による第1遊星ギアセットGS1、及び第3遊星ギアG3と第4遊星ギアG4による第2遊星ギアセットGS2が配置されている。また、摩擦締結要素として第1クラッチC1、第2クラッチC2、第3クラッチC3及び第1ブレーキB1、第2ブレーキB2、第3ブレーキB3、第4ブレーキB4が配置されている。また、第1ワンウェイクラッチF1と第2ワンウェイクラッチF2が配置されている。
【0018】
第1遊星ギアG1は、第1サンギアS1と、第1リングギアR1と、両ギアS1、R1に噛み合う第1ピニオンP1を支持する第1キャリアPC1と、を有するシングルピニオン型遊星ギアである。
【0019】
第2遊星ギアG2は、第2サンギアS2と、第2リングギアR2と、両ギアS2、R2に噛み合う第2ピニオンP2を支持する第2キャリアPC2と、を有するシングルピニオン型遊星ギアである。
【0020】
第3遊星ギアG3は、第3サンギアS3と、第3リングギアR3と、両ギアS3、R3に噛み合う第3ピニオンP3を支持する第3キャリアPC3と、を有するシングルピニオン型遊星ギアである。
【0021】
第4遊星ギアG4は、第4サンギアS4と、第4リングギアR4と、両ギアS4、R4に噛み合う第4ピニオンP4を支持する第4キャリアPC4と、を有するシングルピニオン型遊星ギアである。
【0022】
入力軸Inputは、第2リングギアR2に連結され、エンジンEgからの回転駆動力を、トルクコンバータTC等を介して入力する。出力軸Outputは、第3キャリアPC3に連結され、出力回転駆動力を、ファイナルギア等を介して駆動輪に伝達する。
【0023】
第1リングギアR1と第2キャリアPC2と第4リングギアR4とは、第1連結メンバM1により一体的に連結される。第3リングギアR3と第4キャリアPC4とは、第2連結メンバM2により一体的に連結される。第1サンギアS1と第2サンギアS2とは、第3連結メンバM3により一体的に連結される。
【0024】
第1遊星ギアセットGS1は、第1遊星ギアG1と第2遊星ギアG2とを、第1連結メンバM1と第3連結メンバM3とによって連結することで、4つの回転要素を有して構成される。また、第2遊星ギアセットGS2は、第3遊星ギアG3と第4遊星ギアG4とを、第2連結メンバM2によって連結することで、5つの回転要素を有して構成される。
【0025】
第1遊星ギアセットGS1では、トルクが入力軸Inputから第2リングギアR2に入力され、入力されたトルクは第1連結メンバM1を介して第2遊星ギアセットGS2に出力される。第2遊星ギアセットGS2では、トルクが入力軸Inputから直接第2連結メンバM2に入力されると共に、第1連結メンバM1を介して第4リングギアR4に入力され、入力されたトルクは第3キャリアPC3から出力軸Outputに出力される。
【0026】
第1クラッチC1(インプットクラッチI/C)は、入力軸Inputと第2連結メンバM2とを選択的に断接するクラッチである。第2クラッチC2(ダイレクトクラッチD/C)は、第4サンギアS4と第4キャリアPC4とを選択的に断接するクラッチである。第3クラッチC3(H&LRクラッチH&m/C)は、第3サンギアS3と第4サンギアS4とを選択的に断接するクラッチである。
【0027】
また、第2ワンウェイクラッチF2は、第3サンギアS3と第4サンギアS4の間に配置されている。これにより、第3クラッチC3が解放され、第3サンギアS3よりも第4サンギアS4の回転速度が大きい時、第3サンギアS3と第4サンギアS4とは独立した回転速度を発生する。よって、第3遊星ギアG3と第4遊星ギアG4が第2連結メンバM2を介して接続された構成となり、それぞれの遊星ギアが独立したギア比を達成する。
【0028】
第1ブレーキB1(フロントブレーキFr/B)は、第1キャリアPC1の回転をトランスミッションケースCaseに対し選択的に停止させるブレーキである。また、第1ワンウェイクラッチF1は、第1ブレーキB1と並列に配置されている。第2ブレーキB2(ローブレーキLOW/B)は、第3サンギアS3の回転をトランスミッションケースCaseに対し選択的に停止させるブレーキである。第3ブレーキB3(2346ブレーキ2346/B)は、第1サンギアS1及び第2サンギアS2を連結する第3連結メンバM3の回転をトランスミッションケースCaseに対し選択的に停止させるブレーキである。第4ブレーキB4(リバースブレーキR/B)は、第4キャリアPC3の回転をトランスミッションケースCaseに対し選択的に停止させるブレーキである。
【0029】
図2は、本実施形態の制御装置が適用された自動変速機での変速段ごとの各摩擦締結要素の締結状態を示す締結作動表である。なお、図2において、○印は当該摩擦締結要素が締結状態となることを示す。(○)印はエンジンブレーキが作動するレンジ位置が選択されているときに当該摩擦締結要素が締結状態となることを示す。無印は当該摩擦締結要素が解放状態となることを示す。
【0030】
上記のように構成された変速ギア機構に設けられた各摩擦締結要素の締結状態を、隣接する変速段間のアップシフトやダウンシフトにおいては、締結していた1つの摩擦締結要素を解放し、解放していた1つの摩擦締結要素を締結するという掛け替え変速を行うことで、下記のように、前進7速で後退1速の変速段を実現することができる。
【0031】
すなわち、「1速段」では、第2ブレーキB2のみが締結状態となり、これにより第1ワンウェイクラッチF1及び第2ワンウェイクラッチF2が係合する。「2速段」では、第2ブレーキB2及び第3ブレーキB3が締結状態となり、第2ワンウェイクラッチF2が係合する。「3速段」では、第2ブレーキB2、第3ブレーキB3及び第2クラッチC2が締結状態となり、第1ワンウェイクラッチF1及び第2ワンウェイクラッチF2はいずれも係合しない。「4速段」では、第3ブレーキB3、第2クラッチC2及び第3クラッチC3が締結状態となる。「5速段」では、第1クラッチC1、第2クラッチC2及び第3クラッチC3が締結状態となる。「6速段」では、第3ブレーキB3、第1クラッチC1及び第3クラッチC3が締結状態となる。「7速段」では、第1ブレーキB1、第1クラッチC1及び第3クラッチC3が締結状態となり、第1ワンウェイクラッチF1が係合する。「後退速段」では、第4ブレーキB4、第1ブレーキB1及び第3クラッチC3が締結状態となる。
【0032】
図3は、本実施形態の自動変速機でDレンジ選択時における変速制御に用いられる変速マップの一例を示す変速線図である。なお、図3において、実線はアップシフト線を示し、点線はダウンシフト線を示す。
【0033】
Dレンジの選択時には、出力軸回転速度センサ5(車速センサ)からの車速VSPと、アクセル開度センサ1からのアクセル開度APOに基づき決まる運転点が、変速マップ上において存在する位置を検索する。そして、運転点が動かない、あるいは、運転点が動いても図3の変速マップ上で1つの変速段領域内に存在したままであれば、そのときの変速段をそのまま維持する。
【0034】
一方、運転点が動いて図3の変速マップ上でアップシフト線を横切ると、横切る前の運転点が存在する領域が示す変速段から横切った後の運転点が存在する領域が示す変速段へのアップシフト指令を出力する。また、運転点が動いて図3の変速マップ上でダウンシフト線を横切ると、横切る前の運転点が存在する領域が示す変速段から横切った後の運転点が存在する領域が示す変速段へのダウンシフト指令を出力する。
【0035】
エンジンEgは、車両が所定の条件を満たす場合には、フューエルカット制御を行い、燃費を向上させている。ここで、フューエルカットを行うかどうかを判定する制御について、図4のフローチャートを用いて説明する。
【0036】
ステップS1では、アクセル開度センサ1が所定値以上か否かを判定する。アクセル開度センサ1が所定値未満の場合には、ステップS2へ進み、アクセル開度センサ1が所定値以上の場合には、ステップS5へ進む。なお、当該判定は、図示しないアイドルスイッチがオンか否かに基づいて判定をしても良い。
【0037】
ステップS2では、出力軸回転速度センサ5によって、車速VSPを算出する。そして、車速VSPと所定車速V1とを比較し、車速VSPが所定車速V1以上である場合には、ステップS3へ進む。また、車速VSPが所定車速V1よりも小さい場合には、ステップS5へ進む。所定車速V1は予め設定された車速であり、例えば20km/hである。
【0038】
ステップS3では、エンジン回転速度センサ2によって、エンジン回転速度Neを算出する。そして、エンジン回転速度Neと所定回転速度N1とを比較し、エンジン回転速度Neが所定回転速度N1以上である場合には、ステップS4へ進み、エンジン回転速度Neが所定回転速度N1よりも小さい場合には、ステップS5へ進む。所定回転速度N1は、エンジンEgがストールしない回転速度である。
【0039】
アクセル開度センサ1が所定値未満であり、車速VSPが所定車速V1以上であり、エンジン回転速度Neが所定回転速度N1以上である場合には、ステップS4において、フューエルカットを行う。これによって、燃費を向上させることができる。
【0040】
ステップS5では、現在、フューエルカットを行っているかどうか判定する。そして、フューエルカットを行っている場合には、ステップS6へ進む。また、フューエルカットを行っていない場合には、ステップS7へ進む。
【0041】
ステップS6では、エンジンEgへの燃料噴射を再開することでフューエルカットリカバリを行う。
【0042】
ステップS7では、通常の燃料噴射制御を行う。
【0043】
次に本実施形態におけるコースト状態でのロックアップクラッチLUCの締結制御について、図5のフローチャートを用いて説明する。
【0044】
ステップS11では、車両の走行状態がコースト状態であるかどうか判定する。コースト状態であるかどうかは、図4のステップS1と同様にしても良いし、エンジン回転速度と入力軸Inputの回転速度との比に基づいて判定してもよい。そして、コースト状態である場合には、ステップS12へ進み、コースト状態ではない場合には、ステップS17へ進む。
【0045】
ステップS12では、コーストロックアップ条件が成立しているかどうか判定する。そして、コーストロックアップ条件が成立している場合には、ステップS13へ進み、コーストロックアップ条件が成立していない場合には、ステップS15へ進む。コーストロックアップ条件が成立する場合は、コースト状態で、エンジン回転速度Neが第2回転速度N2以上となる場合である。第2回転速度N2は、予め設定された速度であり、第1回転速度N1よりも大きい値である。
【0046】
ステップS13では、ロックアップフラグをオンするとともに、ステップS14へ進み、コースト状態で、エンジン回転速度Neが第2回転速度N2以上となっているので、ロックアップクラッチLUCを締結し、スリップ状態、または完全ロックアップ状態にする。
【0047】
ステップS15では、ロックアップフラグをオフするとともに、ステップS16へ進み、コースト状態で、エンジン回転速度Neが第2回転速度N2よりも小さいので、ロックアップクラッチLUCを解放する(ステップS14、S16がコーストロックアップ制御手段を構成する)。
【0048】
ステップS17では、コースト状態ではない状態におけるロックアップクラッチLUCの締結、解放制御を行う。ここでは、例えば、車速VSPとアクセル開度APOとから、予め設定されたマップなどに基づいて、ロックアップクラッチLUCの締結、解除制御を行う。
【0049】
次に、本実施形態の変速段切り替え制御について、図6のフローチャートを用いて説明する。
【0050】
ステップS21では、変速判断がなされたかどうか判定する。そして、変速判断がなされた場合には、ステップS22へ進み、変速判断がなされていない場合には、このステップにおける判定を繰り返す。
【0051】
ステップS22では、変速判断がダウンシフトであるかどうか判定する。そして、変速判断がダウンシフトである場合には、ステップS23へ進み、変速判断がアップシフトである場合には、ステップS24へ進む(ステップS22がダウンシフト判定手段を構成する)。
【0052】
ステップS23では、ダウンシフト判断に基づいて、締結側の摩擦締結要素を締結し、解放側の摩擦締結要素を解放し、変速を実現する。ダウンシフト時の摩擦締結要素の制御については、後述する。
【0053】
ステップS24では、アップシフト判断に基づいて、締結側の摩擦締結要素を締結し、解放側の摩擦締結要素を解放し、変速を実現する。アップシフト時には、設定された制御に基づいて、アップシフトを実行する。
【0054】
次に図6のステップ23におけるダウンシフト時の締結側の摩擦締結要素の締結制御について図7のフローチャートを用いて説明する。
【0055】
ステップS31では、締結側の摩擦締結要素の油圧指令をプリチャージ油圧(第1の油圧)まで上昇させて、その後締結側の摩擦締結要素の油圧を初期油圧(第2の油圧)まで低下させるピストンストローク制御を行う。これにより、締結側の摩擦締結要素のピストンをストロークさせる。この制御について詳しくは後述する。プリチャージ油圧は、ピストンのストロークを素早く終了させるために一時的に大きく設定された油圧指令である。初期油圧は、ピストンのストロークを完了させるための油圧であり、詳しくは後述するトルクフェーズ制御において、締結側の摩擦締結要素の油圧を上昇させる際の初期油圧でもある。
【0056】
ステップS32では、締結指令からの時間Tが第1時間T1以上であるかどうか判定する。そして、時間Tが第1時間T1以上である場合には、締結側の摩擦締結要素のピストンストロークが完了していると判定し、ステップS33へ進む。また、時間Tが第1時間T1よりも小さい場合には、締結側の摩擦締結要素のピストンストロークが完了していないと判定し、ステップS31へ戻る。第1時間T1は、ダウンシフト時において、締結側の摩擦締結要素のピストンストロークを完了させる時間である。第1時間T1は、詳しくは後述するオフセット油圧が設定された場合には、オフセット油圧が設定されていない場合と比較して、大きい値となる。
【0057】
オフセット油圧が設定された場合には、初期油圧が小さくなるが、オフセット油圧が設定された場合の第1時間T1をオフセット油圧が設定されていない場合と比較して、大きい値とすることで、ピストンストロークを確実に完了させることができる。
【0058】
ステップS33では、ステップS32において時間Tが第1時間T1以上であると判定されると、締結側の摩擦締結要素の油圧を、初期油圧から所定の上昇勾配で増加させるトルクフェーズ制御を行う。トルクフェーズ制御では、自動変速機への入力回転速度が変化せずに、出力軸Outputのトルクが変化する。
【0059】
フューエルカットリカバリ後の上昇勾配は、フューエルカット中の上昇勾配よりも小さい勾配である。なお、フューエルカット中の上昇勾配を、フューエルカットリカバリ後の上昇勾配よりも大きくしているのは、フューエルカットを行っているトルクフェーズ中にエンジン回転速度Neが低下して、フューエルカットリカバリが行われることを防止するためである。これによって、フューエルカットリカバリが行われることによって生じるショックを防止することができ、また燃費の悪化を抑制することができる。また、フューエルカットリカバリ後の上昇勾配を小さくしているのは、油圧指令がばらついたり、学習制御が収束していなくても、トルクフェーズ中に運転者が感じる変速ショックを低減するためである。
【0060】
ステップS34では、実ギア比Gr(現在のギア比)がイナーシャフェーズ開始判定ギア比Gr_St以上となる第1のギア比条件が成立したかどうか判定する。そして、実ギア比Grがイナーシャフェーズ開始判定ギア比Gr_St以上となるとステップS35へ進み、実ギア比Grがイナーシャフェーズ開始判定ギア比Gr_St以上となっていない場合には、ステップS33へ戻る。
【0061】
なお、実ギア比Grがイナーシャフェーズ開始判定ギア比Gr_St以上とならない場合でも、トルクフェーズ制御開始時にカウントを開始する第1バックアップタイマTB1aが第2時間TL1aとなる第1の時間条件が成立した場合には、締結側の摩擦締結要素の油圧をトルクフェーズ制御終了時下限圧に上昇させた後に、ステップS35へ進む。第2時間TL1aは、トルクフェーズ制御開始から、実ギア比Grがイナーシャフェーズ開始判定ギア比Gr_St以上となる時間であり、予め求められた時間である。第1バックアップタイマTB1aが、第2時間TL1aとなっても、実ギア比Grがイナーシャフェーズ開始判定ギア比Gr_St以上とならない場合には、締結側の摩擦締結要素の油圧をトルクフェーズ制御終了時下限圧とすることで、トルクフェーズを終了させて、強制的にイナーシャフェーズへ移行する。
【0062】
ステップS35では、ステップS34において第1のギア比条件、あるいは第1の時間条件のいずれかが成立していると判定されると、イナーシャフェーズ制御を行う。イナーシャフェーズは、変速の進行途中で発生し、駆動系の慣性力の変化を主な原因として変速機入力回転速度が変化するものである。イナーシャフェーズ制御では、締結側の摩擦締結要素の油圧を徐々に上昇させる。フューエルカットリカバリ後の上昇勾配は、フューエルカット中の上昇勾配よりも小さい勾配である。
【0063】
ステップS36では、実ギア比Grがイナーシャフェーズ終了判定ギア比Gr_End以上となる第2のギア比条件が成立したかどうか判定する。そして、実ギア比Grがイナーシャフェーズ終了判定ギア比Gr_End以上となるとステップS37へ進み、実ギア比Grがイナーシャフェーズ終了判定ギア比Gr_End以上となっていない場合には、ステップS35へ戻る。
【0064】
なお、実ギア比Grがイナーシャフェーズ終了判定ギア比Gr_End以上とならない場合でも、イナーシャフェーズ制御開始時にカウントを開始する第2バックアップタイマTB2aが第3時間TL2aとなる第2の時間条件が成立した場合には、締結側の摩擦締結要素の油圧をイナーシャフェーズ制御終了時下限圧に上昇させた後に、ステップS37へ進む。第3時間TL2aは、イナーシャフェーズ制御開始から、実ギア比Grがイナーシャフェーズ終了判定ギア比Gr_End以上となる時間であり、予め設定された時間である。第2バックアップタイマTB2aが、第3時間TL2aとなっても、実ギア比Grがイナーシャフェーズ終了判定ギア比Gr_End以上とならない場合には、締結側の摩擦締結要素の油圧をイナーシャフェーズ制御終了時下限圧とすることで、イナーシャフェーズを終了させて、強制的に変速終了フェーズへ移行する。
【0065】
ステップS37では、ステップS36において第2のギア比条件、あるいは第2の時間条件のいずれかが成立していると判定されると、変速終了フェーズ制御を行う。変速終了フェーズ制御は、実ギア比Grを変速後の変速段ギア比Grnに到達させて、締結側の摩擦締結要素の油圧を最大値まで上昇させる制御である。
【0066】
ステップS38では、実ギア比Grが変速後の変速段ギア比Grnとなってから第4時間T4経過した第3のギア比条件が成立したかどうか判定する。そして、変速段ギア比Grnとなってから第4時間T4経過した場合には、本制御を終了する。また、変速段ギア比Grnとなってから第4時間T4経過していない場合には、ステップS37へ戻る。第4時間T4は、実ギア比Grが変速後の変速段ギア比Grnとなってから、締結側の摩擦締結要素の油圧が確実に最大油圧となるまでの時間であり、予め設定された時間である。
【0067】
なお、第3のギア比条件が成立しない場合、つまり実ギア比Grが変速後の変速段ギア比Grnとならない場合にも、変速終了フェーズ制御開始からの第3バックアップタイマTB3が第5時間TL3となる第3の時間条件が成立した場合には、締結側の摩擦締結要素の油圧を最大油圧とする。第5時間TL3は、変速終了フェーズ制御開始から、実ギア比Grが変速後の変速段ギア比Grnとなり、さらに締結側の摩擦締結要素の油圧が最大油圧となる時間であり、予め設定された時間である。実ギア比Grが変速段ギア比Grnとならない場合には、締結側の摩擦締結要素の油圧を最大圧とすることで、変速を終了させることができる。
【0068】
次に図7のステップS31におけるピストンストローク制御について、図8のフローチャートを用いて説明する。
【0069】
ステップS41では、いったん基準初期油圧を初期油圧として設定しステップS42へ進む。なお、この基準初期油圧は、予め設定された油圧であるが、例えば、アップシフト時にイナーシャフェーズ開始時のタービン回転変化率が目標変化率となるように摩擦締結要素毎に学習補正値を算出している場合には、この学習補正値を反映させた油圧が基準初期油圧となる。
【0070】
ステップS42では、ロックアップクラッチLUCを解放しているかどうか判定する。そして、ロックアップクラッチLUCを解放している場合には、ステップS43へ進み、ロックアップクラッチLUCを解放していない場合には、ステップS45へ進む。ロックアップクラッチLUCを解放しているかどうかは、ロックアップフラグのオン又はオフを使用して判定する。なお、ロックアップフラグの代わりにロックアップクラッチLUCを制御する図示しない制御弁の油圧指令が所定値以上か否かを使用して判定してもよいが、油圧指令を行う前の結果であるロックアップフラグを用いて判定することで、変速制御の応答性がフューエルカットリカバリに間に合わないことが確実に防止できる。また、エンジン回転速度Neを直接検知して、フューエルカット中かフューエルカットリカバリ後かを判定してもよい。この場合、ロックアップクラッチLUCがスリップ状態、または完全ロックアップ状態である第2回転速度N2以上の場合はフューエルカット中、第2回転速度N2未満の場合は、フューエルカットリカバリ後とみなして制御を行うことが好ましい。
【0071】
コースト状態でダウンシフトを行っている最中に、ロックアップクラッチLUCが解放されると、エンジン回転速度Neは急激に低下するので、その後短期間でフューエルカットリカバリが行われると推測することができる。そのため、本実施形態では、実際のエンジンではフューエルカット中であってもロックアップが解除されている場合にはフューエルカットリカバリ後とみなしている(ステップS41がフューエルカット判定手段を構成する)。
【0072】
ステップS43では、ステップS42において、ロックアップクラッチLUCを解放しているため、エンジンの状態がフューエルカットリカバリ後とみなし、オフセット油圧を設定する。オフセット油圧は、基準初期油圧を減算する油圧である。ドライブ状態及びコースト状態に関わらず本ステップを経由することになるが、オフセット油圧は、図9に示すように、入力軸トルクが正の領域ではゼロ、負のトルクの領域には所定値αが設定されているため、実質的にコースト状態のときだけオフセット油圧が設定されるようなデータ設定がなされている。この所定値αは、油圧ばらつきや油圧の学習制御が未収束であっても、変速ショックが生じないような値に設定されている。
【0073】
ステップS44では、ステップS41にて設定した基準初期油圧から、ステップS43によって設定したオフセット油圧を減算することで、初期油圧として設定する。
【0074】
ステップS45では、変速指令が出力されてからの時間Tが第6時間T5よりも大きいかどうか判定する。そして、時間Tが第6時間T5よりも大きい場合には、締結側の摩擦締結要素の油圧のプリチャージが終了していると判定し、ステップS46へ進む。また、時間Tが第6時間T5よりも小さい場合には、締結側の摩擦締結要素の油圧のプリチャージが終了していないと判定し、ステップS47へ進む。第6時間T5は、締結側の摩擦締結要素の油圧のプリチャージが終了する時間であり、第1時間T1よりも短い時間である。
【0075】
ステップS46では、締結側の摩擦締結要素のプリチャージ油圧をゼロとする。
【0076】
ステップS47では、締結側の摩擦締結要素のプリチャージ油圧を第1所定油圧とする。第1所定油圧は、初期油圧(基準初期油圧)よりも大きい油圧であり、ピストンストロークを素早く終了させるために設定された油圧である。
【0077】
ステップS48では、初期油圧とプリチャージ油圧とを比較し、大きい油圧を制御指令(油圧指令)に設定する。ここでは、ステップS46によってプリチャージ油圧がゼロに設定されると、初期油圧がプリチャージ油圧よりも大きくなり、初期油圧が制御指令油圧として設定される。また、ステップS47によってプリチャージ油圧が第1所定油圧に設定されると、プリチャージ油圧が初期油圧よりも大きくなり、プリチャージ油圧が制御指令(油圧指令)として設定される。そして、締結側の摩擦締結要素の油圧が制御指令(油圧指令)に基づいて制御される。
【0078】
以上の制御によって、ピストンストローク制御を行う。本実施形態では、コースト状態でダウンシフトを行う場合に、エンジンがフューエルカットリカバリ後の場合に、オフセット油圧を設定し、フューエルカット中の場合と比較して、初期油圧を小さい油圧に設定する。とくに、このとき、ロックアップクラッチの締結・解放状態に基づいてフェールカット中かそれともフューエルカットリカバリ後かの判定を行うので、コースト状態でダウンシフトを行う場合に、事前にフューエルカットリカバリが行われることを予測することができて、ピストンストローク制御中にエンジン回転速度Neの低下によりフューエルカットリカバリが実行されたとしても、適切な油圧で締結側の摩擦要素を締結することができ、変速ショックを防止できる。
【0079】
次に、ダウンシフトを行う場合に解放する摩擦締結要素の制御について、図10のフローチャートを用いて説明する。
【0080】
ステップS51では、解放側の摩擦締結要素の油圧を第2所定油圧まで低下させるアンダーシュート防止制御を行う。アンダーシュート防止制御は、締結側の摩擦締結要素が締結を開始する前に、解放側の摩擦締結要素の油圧が急激に低下し、完全に解放しないように、解放側の摩擦締結要素の油圧を制御する。第2所定油圧は、予め設定された油圧であり、この油圧となるまで段階的に、または所定の減少勾配で油圧が低下する。
【0081】
ステップS52では、解放指令からの時間T’が第7時間T6以上であるかどうか判定する。そして時間T’が第7時間T6以上である場合には、解放側の摩擦締結要素の油圧が第2所定油圧となっていると判定し、ステップS52へ進む。また、時間T’が第7時間T6よりも小さい場合には、ステップS51へ戻る。第7時間T6は、予め設定された時間であり、アンダーシュート防止制御を開始してから、確実に第2所定油圧となる時間である。なお、第7時間T6は第1時間T1と同じ時間としても良い。
【0082】
ステップS53では、ステップS52において時間T’が第7時間T6以上であると判定されると、解放側の摩擦締結要素の油圧を、第2所定油圧から徐々に減少させる掛け替え制御を行う。
【0083】
ステップS54では、実ギア比Gr(現在のギア比)がイナーシャフェーズ開始判定ギア比Gr_St以上となる第1のギア比条件が成立したかどうか判定する。そして、実ギア比Grがイナーシャフェーズ開始判定ギア比Gr_StとなるとステップS55へ進み、実ギア比Grがイナーシャフェーズ開始判定ギア比Gr_Stとなっていない場合には、ステップS53へ戻る。
【0084】
なお、実ギア比Grがイナーシャフェーズ開始判定ギア比Gr_St以上とならない場合でも、掛け替え制御開始時にカウントを開始する第3バックアップタイマTB1bが第8時間TL1bとなる第4の時間条件が成立した場合には、解放側の摩擦締結要素の油圧を掛け替え制御終了時上限圧に下降させた後に、ステップS55へ進む。第8時間TL1bは、掛け替え制御開始から、実ギア比Grがイナーシャフェーズ開始判定ギア比Gr_St以上となる時間であり、予め求められた時間である。第3バックアップタイマTB1bが、第8時間TL1bとなっても、実ギア比Grがイナーシャフェーズ開始判定ギア比Gr_St以上とならない場合には、解放側の摩擦締結要素の油圧を掛け替え制御終了時上限圧とすることで、掛け替え制御を終了し、イナーシャフェーズ制御へ移行する。
【0085】
ステップS55では、ステップS54において第1のギア比条件、あるいは第4の時間条件のいずれかが成立していると判定されると、イナーシャフェーズ制御を行う。イナーシャフェーズ制御では、解放側の摩擦締結要素の油圧を最小圧(ドレーン圧)とする。
【0086】
本実施形態では、イナーシャフェーズ制御において、解放側の摩擦締結要素の油圧を最小圧としたが、徐々に減少させ、その後、図6を用いて説明したように締結側の変速終了フェーズで解放側の摩擦締結要素の油圧を最小圧としてもよい。
【0087】
次に、本制御を用いた場合の摩擦締結要素の油圧変化などについて、図11、12のタイムチャートを用いて説明する。図11は、エンジンEgのフューエルカット中にダウンシフトが行われる場合の摩擦締結要素の油圧変化などを示している。図12は、エンジンEgのフューエルカットリカバリ後にダウンシフトが行われる場合の摩擦締結要素の油圧変化などを示している。
【0088】
フューエルカット中のコーストダウンシフトの場合、つまりロックアップクラッチLUCを締結状態の場合、時間t0において、コースト状態で、ダウンシフト指令が出力されると、締結側の摩擦締結要素では、ピストンストローク制御を開始する。そして、締結側の摩擦締結要素のプリチャージ油圧を第1所定油圧に設定する。また、解放側の摩擦締結要素では、アンダーシュート防止制御を開始する。そして、解放側の摩擦締結要素の油圧を急激に減少させ、その後第2所定油圧まで徐々に減少させる。
【0089】
時間t1では、締結側の摩擦締結要素のプリチャージが終了すると、締結側の摩擦締結要素の油圧を初期油圧に設定する。ここでは、初期油圧として、基準初期油圧が設定される。
【0090】
時間t2では、締結側の摩擦締結要素ではピストンストローク制御を終了し、トルクフェーズ制御を開始する。これによって、締結側の摩擦締結要素の油圧は初期油圧からフューエルカット中の上昇勾配として設定された勾配で徐々に上昇する。また、解放側の摩擦締結要素では、アンダーシュート防止制御を終了し、掛け替え制御を開始する。これによって、解放側の摩擦締結要素の油圧がさらに減少し、解放側の摩擦締結要素が解放される。解放側の摩擦締結要素が解放され、締結側の摩擦締結要素が締結を開始するので、実ギア比Grが変化(ダウンシフト)する。また、それに伴い車両の加速度が小さくなる。
【0091】
時間t3では、実ギア比Grがイナーシャフェーズ開始判定ギア比Gr_Stとなると、締結側の摩擦締結要素ではトルクフェーズ制御を終了し、締結側の摩擦締結要素の油圧は予め設定された勾配で徐々に上昇する。また、解放側の摩擦締結要素では掛け替え制御を終了し、イナーシャフェーズ制御を開始する。
【0092】
時間t4では、実ギア比Grがイナーシャフェーズ終了判定ギア比Gr_Endとなると、締結側の摩擦締結要素ではイナーシャフェーズ制御を終了し、変速終了フェーズ制御を開始する。これによって、締結側の摩擦締結要素の油圧がさらに大きくなり、実ギア比Grが大きくなる。
【0093】
時間t5では、実ギア比Grが変速段ギア比Grnとなり、実ギア比Grが変速段ギア比Grnとなってから、第4時間T4経過すると、時間t6において、変速終了フェーズを終了し、変速を終了する。
【0094】
一方、ロックアップクラッチLUCを解放し、フューエルカットリカバリ後のコーストダウンシフトの場合、つまりロックアップクラッチLUCを解放している場合、時間t0でピストンストローク制御およびアンダーシュート防止制御を開始し、時間t1’では、締結側の摩擦締結要素の油圧を、基準初期油圧からオフセット油圧を減算した、初期油圧に設定する。したがって、初期油圧は、フューエルカット中の場合の初期油圧と比べて、小さい油圧となる。
【0095】
時間t2’では、締結側の摩擦締結要素ではピストンストローク制御を終了し、トルクフェーズ制御を開始する。これによって、締結側の摩擦締結要素の油圧は初期油圧からフューエルカット後の上昇勾配として設定された勾配で徐々に上昇する。また、解放側の摩擦締結要素では、アンダーシュート防止制御を終了し、掛け替え制御を開始する。時間t2’は、時間t2よりも大きい時間である。基準初期油圧からオフセット油圧を減算して初期油圧を設定しており、フューエルカット中よりも低圧となっているため、ピストンストロークを保障するためにロックアップクラッチLUCを解放している場合には、ピストンストローク制御を長く行う。
【0096】
時間t3’以降は、ロックアップクラッチLUCを締結している場合の時間t3以降と同様となる。
【0097】
本発明の本実施形態の効果について説明する。
【0098】
コースト状態でダウンシフトをフューエルカットリカバリ後に行う場合には、締結側の摩擦締結要素の初期油圧を、フューエルカット中の場合の初期油圧よりも低い油圧に制御する。これにより、出力軸トルクに対する出力軸トルクの変動量が大きいフューエルカットリカバリ後のコーストダウンシフトについて、実際の油圧がばらついたり、学習制御が収束していなくても、低い油圧でピストンストロークさせるため、締結側の摩擦締結要素の油圧が大きくなることによって生じる変速ショックを防止し、運転者が感じる違和感を低減することができる。また、出力軸トルクに対する出力軸トルクの変動量が小さいフューエルカット中のダウンシフトの場合、フューエルカットリカバリ後の油圧よりも高い油圧とすることで、フューエルカットリカバリ後よりもピストンストロークが促進されて、締結側の摩擦締結要素の油圧上昇が遅れることを防止することができ、変速中にエンジン回転速度Neが減少し、フューエルカットリカバリが実行されることを防止することができる。そのため、フューエルカットリカバリが実行されることによるショックや、燃費の悪化を抑制することができる(請求項1に対応)。
【0099】
また、コースト状態でダウンシフトを行う場合に、エンジン回転速度を直接使うか、又はロックアップクラッチの締結状態を示す信号を使って、ロックアップクラッチの締結・解放状態に基づいてフューエルカット中またはフューエルカットリカバリ後の判定を行うので、実際にはエンジンがフューエルカット中であっても、直後にフューエルカットリカバリが行われることを予測することができるため、ピストンストローク制御中にエンジン回転速度Neの低下によりフューエルカットリカバリが実行されたとしても、適切な油圧で締結側の摩擦要素を締結することができ、変速ショックを防止できる(請求項2、4に対応)。
【0100】
また、コースト状態でダウンシフトを行う場合に、フューエルカットリカバリ後の場合の油圧の上昇勾配を、フューエルカット中の場合の油圧の上昇勾配よりも小さくすることで、フューエルカットリカバリ後の場合に、運転者が感じる変速ショックを低減することができる。また、フューエルカット中の場合に、エンジン回転速度Neが低下し、フューエルカットリカバリが実行されることを防止することができる。そのため、フューエルカットリカバリが実行されることによるショックや、燃費の悪化を抑制することができる(請求項3に対応)。
【0101】
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内でなしうるさまざまな変更、改良が含まれることは言うまでもない。例えば、本実施形態では、ピストンストローク制御中の、プリチャージ制御直後からトルクフェーズ開始まで期間の油圧について、一定値として説明したが、所定の勾配で上昇させるものであってもよい。この場合、プリチャージ制御直後からトルクフェーズ制御開始までの期間の油圧について、フューエルカットリカバリ後の油圧指令の方がフューエルカット中より低い油圧指令となるよう上記所定の勾配を設定すればよい。また、本実施形態では、フューエルカット中かフューエルカットリカバリ後かの判定について、ロックアップクラッチの締結状態に基づいて判定しているが、これに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】本発明の実施形態の自動変速機のスケルトン図である。
【図2】本発明の実施形態の摩擦締結要素の締結作動表である。
【図3】本発明の実施形態の変速マップである。
【図4】本発明の実施形態のフューエルカット判定制御を説明するためのフローチャートである。
【図5】本発明の実施形態のロックアップクラッチ締結制御を説明するためのフローチャートである。
【図6】本発明の実施形態の変速段切り替え制御を説明するためのフローチャートである。
【図7】ダウンシフト時の締結側の摩擦締結要素の制御を説明するためのフローチャートである。
【図8】ピストンストローク制御を説明するためのフローチャートである。
【図9】入力軸トルクとオフセット油圧との関係を示すマップである。
【図10】ダウンシフト時の解放側の摩擦締結要素の制御を説明するためのフローチャートである。
【図11】エンジンのフューエルカット中にダウンシフトが行われる場合の摩擦締結要素の油圧などの変化を示すタイムチャートである。
【図12】エンジンのフューエルカットリカバリ後にダウンシフトが行われる場合の摩擦締結要素の油圧などの変化を示すタイムチャートである。
【符号の説明】
【0103】
1 アクセルペダルセンサ
2 エンジン回転速度センサ(エンジン回転速度検出手段)
10 エンジンコントローラ(エンジン制御手段)
20 自動変速機コントローラ
30 コントロールバルブユニット(油圧制御手段)
Eg エンジン
LUC ロックアップクラッチ
TC トルクコンバータ
【技術分野】
【0001】
本発明は車両の制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両がコースト状態であるときに自動変速機でダウンシフトを行うと、締結側の摩擦締結要素に比較的高圧の油圧を供給して、締結側のピストンストロークを促進させる。その後、低圧の油圧(以下、初期油圧とする)を供給して、ストロークを完了させる。そして、その後、締結側の摩擦締結要素の油圧を初期油圧から上昇させることで、トルクフェーズ、イナーシャフェーズを経て、自動変速機におけるダウンシフトを終了させるものが特許文献1に開示されている。
【特許文献1】特公平6−37931号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
コースト状態でのダウンシフトは、エンジン回転速度が比較的高回転速度領域でフューエルカットを行っている場合、エンジン回転速度が比較的低回転速度領域でフューエルカットリカバリを行っている場合など、異なる運転状態で行われることがある。
【0004】
しかし、上記の発明では、運転状態が異なっているにも関わらず、比較的高圧の油圧を供給した直後の初期油圧を変速の種類、もしくは係合する摩擦要素の種類に対して、一律に設定している。
【0005】
例えば、フューエルカットリカバリ後には、フューエルカット中に比べて逆駆動力が小さく、出力軸トルクはゼロ近傍にある。このため、初期油圧は、適切にピストンストロークを完了する油圧を指令でき、かつ指令通りの油圧がアクチュエータから供給されると、変速ショックは良好なものとなる。しかし、指令に対して、実際の油圧がばらついたり、ばらつき対策で学習などを行っていても、油圧が十分に収束していない場合には、ピストンストロークを丁度完了させる油圧に対して、初期油圧が高すぎる場合が生じる。このような場合、トルクフェーズ中は、出力軸トルクの変動量の絶対値は小さいものの、フューエルカットリカバリ後の出力軸トルクに対する出力軸トルクの変動量としては大きいために、運転者が変速ショックを体感し易くなる、といった問題点がある。
【0006】
これに対して、初期油圧を低く設定すると、運転者が変速ショックを感じることを抑制することができる。しかし、例えばフューエルカット中は、フューエルカットリカバリ後よりも逆駆動力が大きく、初期油圧が高くなった場合でも、運転者が変速ショックを感じることが抑制されるにもかかわらず、過剰に低い初期油圧から油圧を上昇させるので、所定油圧となるまでの時間が長くなる。その結果、フューエルカット中に行われたコーストダウンシフト時のイナーシャフェーズ開始までの時間が長くなり、その間にエンジン回転速度Neが低下して、フューエルカットリカバリが実行されて、フューエルカットリカバリの実行によるショックや燃費の悪化を招く、といった問題点がある。
【0007】
本発明はこのような問題点を解決するために発明されたもので、コースト状態でダウンシフトを行う際に、変速時のショックの発生を抑制し、燃費の悪化を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、複数の摩擦要素を有し、油圧によって一部の摩擦要素を締結状態、残りの摩擦要素を解放状態とすることで複数の変速段を切り替え、入力軸の回転速度を変速して出力軸から出力する自動変速機を備える車両の制御装置において、ダウンシフトを行うかを判定するダウンシフト判定手段と、コースト状態でダウンシフトを行う場合に、フューエルカット中及びフューエルカットリカバリ後のいずれの状態で行われるかを判定するフューエルカット判定手段と、コースト状態でダウンシフトを行う場合に、締結側の摩擦要素の指示油圧を第1の油圧まで高くした後に、第1の油圧よりも低い第2の油圧として、締結側の摩擦要素のピストンストロークを行う油圧制御手段と、を備え、油圧制御手段は、フューエルカットリカバリ後の第2の油圧を、フューエルカット中の第2の油圧よりも低い油圧で制御する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、車両がコースト状態で走行中に、ダウンシフトを行う場合に、フューエルカットリカバリ後の第2の油圧を、フューエルカット中の第2の油圧よりも低い油圧で制御するため、出力軸トルクに対する出力軸トルクの変動量が大きいフューエルカットリカバリ後のダウンシフトについて、実際の油圧がばらついたり、学習制御が収束をしていなくても、低い油圧からピストンをストロークさせることで、運転者が感じる変速ショックの発生を抑制できる。また、出力軸トルクに対する出力軸トルクの変動量が小さいフューエルカット中のダウンシフトの場合には、フューエルカットリカバリ後の油圧よりも高い油圧とすることで、フューエルカットリカバリ後よりもピストンストロークが促進されて、例えばエンジン回転速度が低下し、変速中にフューエルカットリカバリが実行されることを防止することができ、変速中にフューエルカットリカバリが実行されることによって生じるショックや燃費の悪化を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の実施形態の構成を、図1を用いて説明する。図1は、本実施形態の制御装置が適用された自動変速機の一例を示すスケルトン図である。
【0011】
本実施形態における自動変速機は、前進7速後退1速の有段式自動変速機である。自動変速機は、エンジンEgの駆動力がトルクコンバータTCを介して入力軸Inputから入力され、4つの遊星ギアと7つの摩擦締結要素(摩擦要素)とによって回転速度が変速されて出力軸Outputから出力される。また、トルクコンバータTCのポンプインペラと同軸上にオイルポンプOPが設けられ、エンジンEgの駆動力によって回転駆動され、オイルを加圧する。
【0012】
トルクコンバータTCは、ポンプインペラとタービンランナとの回転差をなくすためのロックアップクラッチLUCを備える。
【0013】
また、エンジンEgの駆動状態を制御するエンジンコントローラ(エンジン制御手段)10(ECU)と、有段変速機の変速状態等を制御する自動変速機コントローラ20(ATCU)と、自動変速機コントローラ20の出力信号に基づいて各摩擦締結要素の油圧を制御するコントロールバルブユニット(油圧制御手段)30(CVU)と、が設けられている。なお、エンジンコントローラ10と自動変速機コントローラ20とは、CAN通信線等を介して接続され、相互にセンサ情報や制御情報を通信により共有している。
【0014】
エンジンコントローラ10には、運転者のアクセルペダル操作量を検出するアクセル開度センサ(APOセンサ)1と、エンジン回転速度Neを検出するエンジン回転速度センサ(エンジン回転速度検出手段)2と、が接続されている。このエンジンコントローラ10は、エンジン回転速度Neやアクセルペダル操作量に基づいて燃料噴射量やスロットル開度を制御し、エンジン出力回転速度及びエンジントルクを制御する。
【0015】
自動変速機コントローラ20には、第1キャリアPC1の回転速度を検出する第1タービン回転速度センサ3、第1リングギアR1の回転速度を検出する第2タービン回転速度センサ4、出力軸Outputの回転速度を検出する出力軸回転速度センサ5、及び運転者のシフトレバーの操作により選択されたレンジ位置を検出するインヒビタスイッチ6が接続される。そして、Dレンジの選択時において、車速VSPとアクセルペダル操作量を示すアクセル開度APOとに基づく最適な指令変速段を選択し、コントロールバルブユニット30に指令変速段を達成する制御指令を出力する。
【0016】
次に、入力軸Inputと出力軸Outputとの間の変速ギア機構について説明する。
【0017】
入力軸Input側から出力軸Output側までの軸上に、順に第1遊星ギアG1と第2遊星ギアG2による第1遊星ギアセットGS1、及び第3遊星ギアG3と第4遊星ギアG4による第2遊星ギアセットGS2が配置されている。また、摩擦締結要素として第1クラッチC1、第2クラッチC2、第3クラッチC3及び第1ブレーキB1、第2ブレーキB2、第3ブレーキB3、第4ブレーキB4が配置されている。また、第1ワンウェイクラッチF1と第2ワンウェイクラッチF2が配置されている。
【0018】
第1遊星ギアG1は、第1サンギアS1と、第1リングギアR1と、両ギアS1、R1に噛み合う第1ピニオンP1を支持する第1キャリアPC1と、を有するシングルピニオン型遊星ギアである。
【0019】
第2遊星ギアG2は、第2サンギアS2と、第2リングギアR2と、両ギアS2、R2に噛み合う第2ピニオンP2を支持する第2キャリアPC2と、を有するシングルピニオン型遊星ギアである。
【0020】
第3遊星ギアG3は、第3サンギアS3と、第3リングギアR3と、両ギアS3、R3に噛み合う第3ピニオンP3を支持する第3キャリアPC3と、を有するシングルピニオン型遊星ギアである。
【0021】
第4遊星ギアG4は、第4サンギアS4と、第4リングギアR4と、両ギアS4、R4に噛み合う第4ピニオンP4を支持する第4キャリアPC4と、を有するシングルピニオン型遊星ギアである。
【0022】
入力軸Inputは、第2リングギアR2に連結され、エンジンEgからの回転駆動力を、トルクコンバータTC等を介して入力する。出力軸Outputは、第3キャリアPC3に連結され、出力回転駆動力を、ファイナルギア等を介して駆動輪に伝達する。
【0023】
第1リングギアR1と第2キャリアPC2と第4リングギアR4とは、第1連結メンバM1により一体的に連結される。第3リングギアR3と第4キャリアPC4とは、第2連結メンバM2により一体的に連結される。第1サンギアS1と第2サンギアS2とは、第3連結メンバM3により一体的に連結される。
【0024】
第1遊星ギアセットGS1は、第1遊星ギアG1と第2遊星ギアG2とを、第1連結メンバM1と第3連結メンバM3とによって連結することで、4つの回転要素を有して構成される。また、第2遊星ギアセットGS2は、第3遊星ギアG3と第4遊星ギアG4とを、第2連結メンバM2によって連結することで、5つの回転要素を有して構成される。
【0025】
第1遊星ギアセットGS1では、トルクが入力軸Inputから第2リングギアR2に入力され、入力されたトルクは第1連結メンバM1を介して第2遊星ギアセットGS2に出力される。第2遊星ギアセットGS2では、トルクが入力軸Inputから直接第2連結メンバM2に入力されると共に、第1連結メンバM1を介して第4リングギアR4に入力され、入力されたトルクは第3キャリアPC3から出力軸Outputに出力される。
【0026】
第1クラッチC1(インプットクラッチI/C)は、入力軸Inputと第2連結メンバM2とを選択的に断接するクラッチである。第2クラッチC2(ダイレクトクラッチD/C)は、第4サンギアS4と第4キャリアPC4とを選択的に断接するクラッチである。第3クラッチC3(H&LRクラッチH&m/C)は、第3サンギアS3と第4サンギアS4とを選択的に断接するクラッチである。
【0027】
また、第2ワンウェイクラッチF2は、第3サンギアS3と第4サンギアS4の間に配置されている。これにより、第3クラッチC3が解放され、第3サンギアS3よりも第4サンギアS4の回転速度が大きい時、第3サンギアS3と第4サンギアS4とは独立した回転速度を発生する。よって、第3遊星ギアG3と第4遊星ギアG4が第2連結メンバM2を介して接続された構成となり、それぞれの遊星ギアが独立したギア比を達成する。
【0028】
第1ブレーキB1(フロントブレーキFr/B)は、第1キャリアPC1の回転をトランスミッションケースCaseに対し選択的に停止させるブレーキである。また、第1ワンウェイクラッチF1は、第1ブレーキB1と並列に配置されている。第2ブレーキB2(ローブレーキLOW/B)は、第3サンギアS3の回転をトランスミッションケースCaseに対し選択的に停止させるブレーキである。第3ブレーキB3(2346ブレーキ2346/B)は、第1サンギアS1及び第2サンギアS2を連結する第3連結メンバM3の回転をトランスミッションケースCaseに対し選択的に停止させるブレーキである。第4ブレーキB4(リバースブレーキR/B)は、第4キャリアPC3の回転をトランスミッションケースCaseに対し選択的に停止させるブレーキである。
【0029】
図2は、本実施形態の制御装置が適用された自動変速機での変速段ごとの各摩擦締結要素の締結状態を示す締結作動表である。なお、図2において、○印は当該摩擦締結要素が締結状態となることを示す。(○)印はエンジンブレーキが作動するレンジ位置が選択されているときに当該摩擦締結要素が締結状態となることを示す。無印は当該摩擦締結要素が解放状態となることを示す。
【0030】
上記のように構成された変速ギア機構に設けられた各摩擦締結要素の締結状態を、隣接する変速段間のアップシフトやダウンシフトにおいては、締結していた1つの摩擦締結要素を解放し、解放していた1つの摩擦締結要素を締結するという掛け替え変速を行うことで、下記のように、前進7速で後退1速の変速段を実現することができる。
【0031】
すなわち、「1速段」では、第2ブレーキB2のみが締結状態となり、これにより第1ワンウェイクラッチF1及び第2ワンウェイクラッチF2が係合する。「2速段」では、第2ブレーキB2及び第3ブレーキB3が締結状態となり、第2ワンウェイクラッチF2が係合する。「3速段」では、第2ブレーキB2、第3ブレーキB3及び第2クラッチC2が締結状態となり、第1ワンウェイクラッチF1及び第2ワンウェイクラッチF2はいずれも係合しない。「4速段」では、第3ブレーキB3、第2クラッチC2及び第3クラッチC3が締結状態となる。「5速段」では、第1クラッチC1、第2クラッチC2及び第3クラッチC3が締結状態となる。「6速段」では、第3ブレーキB3、第1クラッチC1及び第3クラッチC3が締結状態となる。「7速段」では、第1ブレーキB1、第1クラッチC1及び第3クラッチC3が締結状態となり、第1ワンウェイクラッチF1が係合する。「後退速段」では、第4ブレーキB4、第1ブレーキB1及び第3クラッチC3が締結状態となる。
【0032】
図3は、本実施形態の自動変速機でDレンジ選択時における変速制御に用いられる変速マップの一例を示す変速線図である。なお、図3において、実線はアップシフト線を示し、点線はダウンシフト線を示す。
【0033】
Dレンジの選択時には、出力軸回転速度センサ5(車速センサ)からの車速VSPと、アクセル開度センサ1からのアクセル開度APOに基づき決まる運転点が、変速マップ上において存在する位置を検索する。そして、運転点が動かない、あるいは、運転点が動いても図3の変速マップ上で1つの変速段領域内に存在したままであれば、そのときの変速段をそのまま維持する。
【0034】
一方、運転点が動いて図3の変速マップ上でアップシフト線を横切ると、横切る前の運転点が存在する領域が示す変速段から横切った後の運転点が存在する領域が示す変速段へのアップシフト指令を出力する。また、運転点が動いて図3の変速マップ上でダウンシフト線を横切ると、横切る前の運転点が存在する領域が示す変速段から横切った後の運転点が存在する領域が示す変速段へのダウンシフト指令を出力する。
【0035】
エンジンEgは、車両が所定の条件を満たす場合には、フューエルカット制御を行い、燃費を向上させている。ここで、フューエルカットを行うかどうかを判定する制御について、図4のフローチャートを用いて説明する。
【0036】
ステップS1では、アクセル開度センサ1が所定値以上か否かを判定する。アクセル開度センサ1が所定値未満の場合には、ステップS2へ進み、アクセル開度センサ1が所定値以上の場合には、ステップS5へ進む。なお、当該判定は、図示しないアイドルスイッチがオンか否かに基づいて判定をしても良い。
【0037】
ステップS2では、出力軸回転速度センサ5によって、車速VSPを算出する。そして、車速VSPと所定車速V1とを比較し、車速VSPが所定車速V1以上である場合には、ステップS3へ進む。また、車速VSPが所定車速V1よりも小さい場合には、ステップS5へ進む。所定車速V1は予め設定された車速であり、例えば20km/hである。
【0038】
ステップS3では、エンジン回転速度センサ2によって、エンジン回転速度Neを算出する。そして、エンジン回転速度Neと所定回転速度N1とを比較し、エンジン回転速度Neが所定回転速度N1以上である場合には、ステップS4へ進み、エンジン回転速度Neが所定回転速度N1よりも小さい場合には、ステップS5へ進む。所定回転速度N1は、エンジンEgがストールしない回転速度である。
【0039】
アクセル開度センサ1が所定値未満であり、車速VSPが所定車速V1以上であり、エンジン回転速度Neが所定回転速度N1以上である場合には、ステップS4において、フューエルカットを行う。これによって、燃費を向上させることができる。
【0040】
ステップS5では、現在、フューエルカットを行っているかどうか判定する。そして、フューエルカットを行っている場合には、ステップS6へ進む。また、フューエルカットを行っていない場合には、ステップS7へ進む。
【0041】
ステップS6では、エンジンEgへの燃料噴射を再開することでフューエルカットリカバリを行う。
【0042】
ステップS7では、通常の燃料噴射制御を行う。
【0043】
次に本実施形態におけるコースト状態でのロックアップクラッチLUCの締結制御について、図5のフローチャートを用いて説明する。
【0044】
ステップS11では、車両の走行状態がコースト状態であるかどうか判定する。コースト状態であるかどうかは、図4のステップS1と同様にしても良いし、エンジン回転速度と入力軸Inputの回転速度との比に基づいて判定してもよい。そして、コースト状態である場合には、ステップS12へ進み、コースト状態ではない場合には、ステップS17へ進む。
【0045】
ステップS12では、コーストロックアップ条件が成立しているかどうか判定する。そして、コーストロックアップ条件が成立している場合には、ステップS13へ進み、コーストロックアップ条件が成立していない場合には、ステップS15へ進む。コーストロックアップ条件が成立する場合は、コースト状態で、エンジン回転速度Neが第2回転速度N2以上となる場合である。第2回転速度N2は、予め設定された速度であり、第1回転速度N1よりも大きい値である。
【0046】
ステップS13では、ロックアップフラグをオンするとともに、ステップS14へ進み、コースト状態で、エンジン回転速度Neが第2回転速度N2以上となっているので、ロックアップクラッチLUCを締結し、スリップ状態、または完全ロックアップ状態にする。
【0047】
ステップS15では、ロックアップフラグをオフするとともに、ステップS16へ進み、コースト状態で、エンジン回転速度Neが第2回転速度N2よりも小さいので、ロックアップクラッチLUCを解放する(ステップS14、S16がコーストロックアップ制御手段を構成する)。
【0048】
ステップS17では、コースト状態ではない状態におけるロックアップクラッチLUCの締結、解放制御を行う。ここでは、例えば、車速VSPとアクセル開度APOとから、予め設定されたマップなどに基づいて、ロックアップクラッチLUCの締結、解除制御を行う。
【0049】
次に、本実施形態の変速段切り替え制御について、図6のフローチャートを用いて説明する。
【0050】
ステップS21では、変速判断がなされたかどうか判定する。そして、変速判断がなされた場合には、ステップS22へ進み、変速判断がなされていない場合には、このステップにおける判定を繰り返す。
【0051】
ステップS22では、変速判断がダウンシフトであるかどうか判定する。そして、変速判断がダウンシフトである場合には、ステップS23へ進み、変速判断がアップシフトである場合には、ステップS24へ進む(ステップS22がダウンシフト判定手段を構成する)。
【0052】
ステップS23では、ダウンシフト判断に基づいて、締結側の摩擦締結要素を締結し、解放側の摩擦締結要素を解放し、変速を実現する。ダウンシフト時の摩擦締結要素の制御については、後述する。
【0053】
ステップS24では、アップシフト判断に基づいて、締結側の摩擦締結要素を締結し、解放側の摩擦締結要素を解放し、変速を実現する。アップシフト時には、設定された制御に基づいて、アップシフトを実行する。
【0054】
次に図6のステップ23におけるダウンシフト時の締結側の摩擦締結要素の締結制御について図7のフローチャートを用いて説明する。
【0055】
ステップS31では、締結側の摩擦締結要素の油圧指令をプリチャージ油圧(第1の油圧)まで上昇させて、その後締結側の摩擦締結要素の油圧を初期油圧(第2の油圧)まで低下させるピストンストローク制御を行う。これにより、締結側の摩擦締結要素のピストンをストロークさせる。この制御について詳しくは後述する。プリチャージ油圧は、ピストンのストロークを素早く終了させるために一時的に大きく設定された油圧指令である。初期油圧は、ピストンのストロークを完了させるための油圧であり、詳しくは後述するトルクフェーズ制御において、締結側の摩擦締結要素の油圧を上昇させる際の初期油圧でもある。
【0056】
ステップS32では、締結指令からの時間Tが第1時間T1以上であるかどうか判定する。そして、時間Tが第1時間T1以上である場合には、締結側の摩擦締結要素のピストンストロークが完了していると判定し、ステップS33へ進む。また、時間Tが第1時間T1よりも小さい場合には、締結側の摩擦締結要素のピストンストロークが完了していないと判定し、ステップS31へ戻る。第1時間T1は、ダウンシフト時において、締結側の摩擦締結要素のピストンストロークを完了させる時間である。第1時間T1は、詳しくは後述するオフセット油圧が設定された場合には、オフセット油圧が設定されていない場合と比較して、大きい値となる。
【0057】
オフセット油圧が設定された場合には、初期油圧が小さくなるが、オフセット油圧が設定された場合の第1時間T1をオフセット油圧が設定されていない場合と比較して、大きい値とすることで、ピストンストロークを確実に完了させることができる。
【0058】
ステップS33では、ステップS32において時間Tが第1時間T1以上であると判定されると、締結側の摩擦締結要素の油圧を、初期油圧から所定の上昇勾配で増加させるトルクフェーズ制御を行う。トルクフェーズ制御では、自動変速機への入力回転速度が変化せずに、出力軸Outputのトルクが変化する。
【0059】
フューエルカットリカバリ後の上昇勾配は、フューエルカット中の上昇勾配よりも小さい勾配である。なお、フューエルカット中の上昇勾配を、フューエルカットリカバリ後の上昇勾配よりも大きくしているのは、フューエルカットを行っているトルクフェーズ中にエンジン回転速度Neが低下して、フューエルカットリカバリが行われることを防止するためである。これによって、フューエルカットリカバリが行われることによって生じるショックを防止することができ、また燃費の悪化を抑制することができる。また、フューエルカットリカバリ後の上昇勾配を小さくしているのは、油圧指令がばらついたり、学習制御が収束していなくても、トルクフェーズ中に運転者が感じる変速ショックを低減するためである。
【0060】
ステップS34では、実ギア比Gr(現在のギア比)がイナーシャフェーズ開始判定ギア比Gr_St以上となる第1のギア比条件が成立したかどうか判定する。そして、実ギア比Grがイナーシャフェーズ開始判定ギア比Gr_St以上となるとステップS35へ進み、実ギア比Grがイナーシャフェーズ開始判定ギア比Gr_St以上となっていない場合には、ステップS33へ戻る。
【0061】
なお、実ギア比Grがイナーシャフェーズ開始判定ギア比Gr_St以上とならない場合でも、トルクフェーズ制御開始時にカウントを開始する第1バックアップタイマTB1aが第2時間TL1aとなる第1の時間条件が成立した場合には、締結側の摩擦締結要素の油圧をトルクフェーズ制御終了時下限圧に上昇させた後に、ステップS35へ進む。第2時間TL1aは、トルクフェーズ制御開始から、実ギア比Grがイナーシャフェーズ開始判定ギア比Gr_St以上となる時間であり、予め求められた時間である。第1バックアップタイマTB1aが、第2時間TL1aとなっても、実ギア比Grがイナーシャフェーズ開始判定ギア比Gr_St以上とならない場合には、締結側の摩擦締結要素の油圧をトルクフェーズ制御終了時下限圧とすることで、トルクフェーズを終了させて、強制的にイナーシャフェーズへ移行する。
【0062】
ステップS35では、ステップS34において第1のギア比条件、あるいは第1の時間条件のいずれかが成立していると判定されると、イナーシャフェーズ制御を行う。イナーシャフェーズは、変速の進行途中で発生し、駆動系の慣性力の変化を主な原因として変速機入力回転速度が変化するものである。イナーシャフェーズ制御では、締結側の摩擦締結要素の油圧を徐々に上昇させる。フューエルカットリカバリ後の上昇勾配は、フューエルカット中の上昇勾配よりも小さい勾配である。
【0063】
ステップS36では、実ギア比Grがイナーシャフェーズ終了判定ギア比Gr_End以上となる第2のギア比条件が成立したかどうか判定する。そして、実ギア比Grがイナーシャフェーズ終了判定ギア比Gr_End以上となるとステップS37へ進み、実ギア比Grがイナーシャフェーズ終了判定ギア比Gr_End以上となっていない場合には、ステップS35へ戻る。
【0064】
なお、実ギア比Grがイナーシャフェーズ終了判定ギア比Gr_End以上とならない場合でも、イナーシャフェーズ制御開始時にカウントを開始する第2バックアップタイマTB2aが第3時間TL2aとなる第2の時間条件が成立した場合には、締結側の摩擦締結要素の油圧をイナーシャフェーズ制御終了時下限圧に上昇させた後に、ステップS37へ進む。第3時間TL2aは、イナーシャフェーズ制御開始から、実ギア比Grがイナーシャフェーズ終了判定ギア比Gr_End以上となる時間であり、予め設定された時間である。第2バックアップタイマTB2aが、第3時間TL2aとなっても、実ギア比Grがイナーシャフェーズ終了判定ギア比Gr_End以上とならない場合には、締結側の摩擦締結要素の油圧をイナーシャフェーズ制御終了時下限圧とすることで、イナーシャフェーズを終了させて、強制的に変速終了フェーズへ移行する。
【0065】
ステップS37では、ステップS36において第2のギア比条件、あるいは第2の時間条件のいずれかが成立していると判定されると、変速終了フェーズ制御を行う。変速終了フェーズ制御は、実ギア比Grを変速後の変速段ギア比Grnに到達させて、締結側の摩擦締結要素の油圧を最大値まで上昇させる制御である。
【0066】
ステップS38では、実ギア比Grが変速後の変速段ギア比Grnとなってから第4時間T4経過した第3のギア比条件が成立したかどうか判定する。そして、変速段ギア比Grnとなってから第4時間T4経過した場合には、本制御を終了する。また、変速段ギア比Grnとなってから第4時間T4経過していない場合には、ステップS37へ戻る。第4時間T4は、実ギア比Grが変速後の変速段ギア比Grnとなってから、締結側の摩擦締結要素の油圧が確実に最大油圧となるまでの時間であり、予め設定された時間である。
【0067】
なお、第3のギア比条件が成立しない場合、つまり実ギア比Grが変速後の変速段ギア比Grnとならない場合にも、変速終了フェーズ制御開始からの第3バックアップタイマTB3が第5時間TL3となる第3の時間条件が成立した場合には、締結側の摩擦締結要素の油圧を最大油圧とする。第5時間TL3は、変速終了フェーズ制御開始から、実ギア比Grが変速後の変速段ギア比Grnとなり、さらに締結側の摩擦締結要素の油圧が最大油圧となる時間であり、予め設定された時間である。実ギア比Grが変速段ギア比Grnとならない場合には、締結側の摩擦締結要素の油圧を最大圧とすることで、変速を終了させることができる。
【0068】
次に図7のステップS31におけるピストンストローク制御について、図8のフローチャートを用いて説明する。
【0069】
ステップS41では、いったん基準初期油圧を初期油圧として設定しステップS42へ進む。なお、この基準初期油圧は、予め設定された油圧であるが、例えば、アップシフト時にイナーシャフェーズ開始時のタービン回転変化率が目標変化率となるように摩擦締結要素毎に学習補正値を算出している場合には、この学習補正値を反映させた油圧が基準初期油圧となる。
【0070】
ステップS42では、ロックアップクラッチLUCを解放しているかどうか判定する。そして、ロックアップクラッチLUCを解放している場合には、ステップS43へ進み、ロックアップクラッチLUCを解放していない場合には、ステップS45へ進む。ロックアップクラッチLUCを解放しているかどうかは、ロックアップフラグのオン又はオフを使用して判定する。なお、ロックアップフラグの代わりにロックアップクラッチLUCを制御する図示しない制御弁の油圧指令が所定値以上か否かを使用して判定してもよいが、油圧指令を行う前の結果であるロックアップフラグを用いて判定することで、変速制御の応答性がフューエルカットリカバリに間に合わないことが確実に防止できる。また、エンジン回転速度Neを直接検知して、フューエルカット中かフューエルカットリカバリ後かを判定してもよい。この場合、ロックアップクラッチLUCがスリップ状態、または完全ロックアップ状態である第2回転速度N2以上の場合はフューエルカット中、第2回転速度N2未満の場合は、フューエルカットリカバリ後とみなして制御を行うことが好ましい。
【0071】
コースト状態でダウンシフトを行っている最中に、ロックアップクラッチLUCが解放されると、エンジン回転速度Neは急激に低下するので、その後短期間でフューエルカットリカバリが行われると推測することができる。そのため、本実施形態では、実際のエンジンではフューエルカット中であってもロックアップが解除されている場合にはフューエルカットリカバリ後とみなしている(ステップS41がフューエルカット判定手段を構成する)。
【0072】
ステップS43では、ステップS42において、ロックアップクラッチLUCを解放しているため、エンジンの状態がフューエルカットリカバリ後とみなし、オフセット油圧を設定する。オフセット油圧は、基準初期油圧を減算する油圧である。ドライブ状態及びコースト状態に関わらず本ステップを経由することになるが、オフセット油圧は、図9に示すように、入力軸トルクが正の領域ではゼロ、負のトルクの領域には所定値αが設定されているため、実質的にコースト状態のときだけオフセット油圧が設定されるようなデータ設定がなされている。この所定値αは、油圧ばらつきや油圧の学習制御が未収束であっても、変速ショックが生じないような値に設定されている。
【0073】
ステップS44では、ステップS41にて設定した基準初期油圧から、ステップS43によって設定したオフセット油圧を減算することで、初期油圧として設定する。
【0074】
ステップS45では、変速指令が出力されてからの時間Tが第6時間T5よりも大きいかどうか判定する。そして、時間Tが第6時間T5よりも大きい場合には、締結側の摩擦締結要素の油圧のプリチャージが終了していると判定し、ステップS46へ進む。また、時間Tが第6時間T5よりも小さい場合には、締結側の摩擦締結要素の油圧のプリチャージが終了していないと判定し、ステップS47へ進む。第6時間T5は、締結側の摩擦締結要素の油圧のプリチャージが終了する時間であり、第1時間T1よりも短い時間である。
【0075】
ステップS46では、締結側の摩擦締結要素のプリチャージ油圧をゼロとする。
【0076】
ステップS47では、締結側の摩擦締結要素のプリチャージ油圧を第1所定油圧とする。第1所定油圧は、初期油圧(基準初期油圧)よりも大きい油圧であり、ピストンストロークを素早く終了させるために設定された油圧である。
【0077】
ステップS48では、初期油圧とプリチャージ油圧とを比較し、大きい油圧を制御指令(油圧指令)に設定する。ここでは、ステップS46によってプリチャージ油圧がゼロに設定されると、初期油圧がプリチャージ油圧よりも大きくなり、初期油圧が制御指令油圧として設定される。また、ステップS47によってプリチャージ油圧が第1所定油圧に設定されると、プリチャージ油圧が初期油圧よりも大きくなり、プリチャージ油圧が制御指令(油圧指令)として設定される。そして、締結側の摩擦締結要素の油圧が制御指令(油圧指令)に基づいて制御される。
【0078】
以上の制御によって、ピストンストローク制御を行う。本実施形態では、コースト状態でダウンシフトを行う場合に、エンジンがフューエルカットリカバリ後の場合に、オフセット油圧を設定し、フューエルカット中の場合と比較して、初期油圧を小さい油圧に設定する。とくに、このとき、ロックアップクラッチの締結・解放状態に基づいてフェールカット中かそれともフューエルカットリカバリ後かの判定を行うので、コースト状態でダウンシフトを行う場合に、事前にフューエルカットリカバリが行われることを予測することができて、ピストンストローク制御中にエンジン回転速度Neの低下によりフューエルカットリカバリが実行されたとしても、適切な油圧で締結側の摩擦要素を締結することができ、変速ショックを防止できる。
【0079】
次に、ダウンシフトを行う場合に解放する摩擦締結要素の制御について、図10のフローチャートを用いて説明する。
【0080】
ステップS51では、解放側の摩擦締結要素の油圧を第2所定油圧まで低下させるアンダーシュート防止制御を行う。アンダーシュート防止制御は、締結側の摩擦締結要素が締結を開始する前に、解放側の摩擦締結要素の油圧が急激に低下し、完全に解放しないように、解放側の摩擦締結要素の油圧を制御する。第2所定油圧は、予め設定された油圧であり、この油圧となるまで段階的に、または所定の減少勾配で油圧が低下する。
【0081】
ステップS52では、解放指令からの時間T’が第7時間T6以上であるかどうか判定する。そして時間T’が第7時間T6以上である場合には、解放側の摩擦締結要素の油圧が第2所定油圧となっていると判定し、ステップS52へ進む。また、時間T’が第7時間T6よりも小さい場合には、ステップS51へ戻る。第7時間T6は、予め設定された時間であり、アンダーシュート防止制御を開始してから、確実に第2所定油圧となる時間である。なお、第7時間T6は第1時間T1と同じ時間としても良い。
【0082】
ステップS53では、ステップS52において時間T’が第7時間T6以上であると判定されると、解放側の摩擦締結要素の油圧を、第2所定油圧から徐々に減少させる掛け替え制御を行う。
【0083】
ステップS54では、実ギア比Gr(現在のギア比)がイナーシャフェーズ開始判定ギア比Gr_St以上となる第1のギア比条件が成立したかどうか判定する。そして、実ギア比Grがイナーシャフェーズ開始判定ギア比Gr_StとなるとステップS55へ進み、実ギア比Grがイナーシャフェーズ開始判定ギア比Gr_Stとなっていない場合には、ステップS53へ戻る。
【0084】
なお、実ギア比Grがイナーシャフェーズ開始判定ギア比Gr_St以上とならない場合でも、掛け替え制御開始時にカウントを開始する第3バックアップタイマTB1bが第8時間TL1bとなる第4の時間条件が成立した場合には、解放側の摩擦締結要素の油圧を掛け替え制御終了時上限圧に下降させた後に、ステップS55へ進む。第8時間TL1bは、掛け替え制御開始から、実ギア比Grがイナーシャフェーズ開始判定ギア比Gr_St以上となる時間であり、予め求められた時間である。第3バックアップタイマTB1bが、第8時間TL1bとなっても、実ギア比Grがイナーシャフェーズ開始判定ギア比Gr_St以上とならない場合には、解放側の摩擦締結要素の油圧を掛け替え制御終了時上限圧とすることで、掛け替え制御を終了し、イナーシャフェーズ制御へ移行する。
【0085】
ステップS55では、ステップS54において第1のギア比条件、あるいは第4の時間条件のいずれかが成立していると判定されると、イナーシャフェーズ制御を行う。イナーシャフェーズ制御では、解放側の摩擦締結要素の油圧を最小圧(ドレーン圧)とする。
【0086】
本実施形態では、イナーシャフェーズ制御において、解放側の摩擦締結要素の油圧を最小圧としたが、徐々に減少させ、その後、図6を用いて説明したように締結側の変速終了フェーズで解放側の摩擦締結要素の油圧を最小圧としてもよい。
【0087】
次に、本制御を用いた場合の摩擦締結要素の油圧変化などについて、図11、12のタイムチャートを用いて説明する。図11は、エンジンEgのフューエルカット中にダウンシフトが行われる場合の摩擦締結要素の油圧変化などを示している。図12は、エンジンEgのフューエルカットリカバリ後にダウンシフトが行われる場合の摩擦締結要素の油圧変化などを示している。
【0088】
フューエルカット中のコーストダウンシフトの場合、つまりロックアップクラッチLUCを締結状態の場合、時間t0において、コースト状態で、ダウンシフト指令が出力されると、締結側の摩擦締結要素では、ピストンストローク制御を開始する。そして、締結側の摩擦締結要素のプリチャージ油圧を第1所定油圧に設定する。また、解放側の摩擦締結要素では、アンダーシュート防止制御を開始する。そして、解放側の摩擦締結要素の油圧を急激に減少させ、その後第2所定油圧まで徐々に減少させる。
【0089】
時間t1では、締結側の摩擦締結要素のプリチャージが終了すると、締結側の摩擦締結要素の油圧を初期油圧に設定する。ここでは、初期油圧として、基準初期油圧が設定される。
【0090】
時間t2では、締結側の摩擦締結要素ではピストンストローク制御を終了し、トルクフェーズ制御を開始する。これによって、締結側の摩擦締結要素の油圧は初期油圧からフューエルカット中の上昇勾配として設定された勾配で徐々に上昇する。また、解放側の摩擦締結要素では、アンダーシュート防止制御を終了し、掛け替え制御を開始する。これによって、解放側の摩擦締結要素の油圧がさらに減少し、解放側の摩擦締結要素が解放される。解放側の摩擦締結要素が解放され、締結側の摩擦締結要素が締結を開始するので、実ギア比Grが変化(ダウンシフト)する。また、それに伴い車両の加速度が小さくなる。
【0091】
時間t3では、実ギア比Grがイナーシャフェーズ開始判定ギア比Gr_Stとなると、締結側の摩擦締結要素ではトルクフェーズ制御を終了し、締結側の摩擦締結要素の油圧は予め設定された勾配で徐々に上昇する。また、解放側の摩擦締結要素では掛け替え制御を終了し、イナーシャフェーズ制御を開始する。
【0092】
時間t4では、実ギア比Grがイナーシャフェーズ終了判定ギア比Gr_Endとなると、締結側の摩擦締結要素ではイナーシャフェーズ制御を終了し、変速終了フェーズ制御を開始する。これによって、締結側の摩擦締結要素の油圧がさらに大きくなり、実ギア比Grが大きくなる。
【0093】
時間t5では、実ギア比Grが変速段ギア比Grnとなり、実ギア比Grが変速段ギア比Grnとなってから、第4時間T4経過すると、時間t6において、変速終了フェーズを終了し、変速を終了する。
【0094】
一方、ロックアップクラッチLUCを解放し、フューエルカットリカバリ後のコーストダウンシフトの場合、つまりロックアップクラッチLUCを解放している場合、時間t0でピストンストローク制御およびアンダーシュート防止制御を開始し、時間t1’では、締結側の摩擦締結要素の油圧を、基準初期油圧からオフセット油圧を減算した、初期油圧に設定する。したがって、初期油圧は、フューエルカット中の場合の初期油圧と比べて、小さい油圧となる。
【0095】
時間t2’では、締結側の摩擦締結要素ではピストンストローク制御を終了し、トルクフェーズ制御を開始する。これによって、締結側の摩擦締結要素の油圧は初期油圧からフューエルカット後の上昇勾配として設定された勾配で徐々に上昇する。また、解放側の摩擦締結要素では、アンダーシュート防止制御を終了し、掛け替え制御を開始する。時間t2’は、時間t2よりも大きい時間である。基準初期油圧からオフセット油圧を減算して初期油圧を設定しており、フューエルカット中よりも低圧となっているため、ピストンストロークを保障するためにロックアップクラッチLUCを解放している場合には、ピストンストローク制御を長く行う。
【0096】
時間t3’以降は、ロックアップクラッチLUCを締結している場合の時間t3以降と同様となる。
【0097】
本発明の本実施形態の効果について説明する。
【0098】
コースト状態でダウンシフトをフューエルカットリカバリ後に行う場合には、締結側の摩擦締結要素の初期油圧を、フューエルカット中の場合の初期油圧よりも低い油圧に制御する。これにより、出力軸トルクに対する出力軸トルクの変動量が大きいフューエルカットリカバリ後のコーストダウンシフトについて、実際の油圧がばらついたり、学習制御が収束していなくても、低い油圧でピストンストロークさせるため、締結側の摩擦締結要素の油圧が大きくなることによって生じる変速ショックを防止し、運転者が感じる違和感を低減することができる。また、出力軸トルクに対する出力軸トルクの変動量が小さいフューエルカット中のダウンシフトの場合、フューエルカットリカバリ後の油圧よりも高い油圧とすることで、フューエルカットリカバリ後よりもピストンストロークが促進されて、締結側の摩擦締結要素の油圧上昇が遅れることを防止することができ、変速中にエンジン回転速度Neが減少し、フューエルカットリカバリが実行されることを防止することができる。そのため、フューエルカットリカバリが実行されることによるショックや、燃費の悪化を抑制することができる(請求項1に対応)。
【0099】
また、コースト状態でダウンシフトを行う場合に、エンジン回転速度を直接使うか、又はロックアップクラッチの締結状態を示す信号を使って、ロックアップクラッチの締結・解放状態に基づいてフューエルカット中またはフューエルカットリカバリ後の判定を行うので、実際にはエンジンがフューエルカット中であっても、直後にフューエルカットリカバリが行われることを予測することができるため、ピストンストローク制御中にエンジン回転速度Neの低下によりフューエルカットリカバリが実行されたとしても、適切な油圧で締結側の摩擦要素を締結することができ、変速ショックを防止できる(請求項2、4に対応)。
【0100】
また、コースト状態でダウンシフトを行う場合に、フューエルカットリカバリ後の場合の油圧の上昇勾配を、フューエルカット中の場合の油圧の上昇勾配よりも小さくすることで、フューエルカットリカバリ後の場合に、運転者が感じる変速ショックを低減することができる。また、フューエルカット中の場合に、エンジン回転速度Neが低下し、フューエルカットリカバリが実行されることを防止することができる。そのため、フューエルカットリカバリが実行されることによるショックや、燃費の悪化を抑制することができる(請求項3に対応)。
【0101】
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内でなしうるさまざまな変更、改良が含まれることは言うまでもない。例えば、本実施形態では、ピストンストローク制御中の、プリチャージ制御直後からトルクフェーズ開始まで期間の油圧について、一定値として説明したが、所定の勾配で上昇させるものであってもよい。この場合、プリチャージ制御直後からトルクフェーズ制御開始までの期間の油圧について、フューエルカットリカバリ後の油圧指令の方がフューエルカット中より低い油圧指令となるよう上記所定の勾配を設定すればよい。また、本実施形態では、フューエルカット中かフューエルカットリカバリ後かの判定について、ロックアップクラッチの締結状態に基づいて判定しているが、これに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】本発明の実施形態の自動変速機のスケルトン図である。
【図2】本発明の実施形態の摩擦締結要素の締結作動表である。
【図3】本発明の実施形態の変速マップである。
【図4】本発明の実施形態のフューエルカット判定制御を説明するためのフローチャートである。
【図5】本発明の実施形態のロックアップクラッチ締結制御を説明するためのフローチャートである。
【図6】本発明の実施形態の変速段切り替え制御を説明するためのフローチャートである。
【図7】ダウンシフト時の締結側の摩擦締結要素の制御を説明するためのフローチャートである。
【図8】ピストンストローク制御を説明するためのフローチャートである。
【図9】入力軸トルクとオフセット油圧との関係を示すマップである。
【図10】ダウンシフト時の解放側の摩擦締結要素の制御を説明するためのフローチャートである。
【図11】エンジンのフューエルカット中にダウンシフトが行われる場合の摩擦締結要素の油圧などの変化を示すタイムチャートである。
【図12】エンジンのフューエルカットリカバリ後にダウンシフトが行われる場合の摩擦締結要素の油圧などの変化を示すタイムチャートである。
【符号の説明】
【0103】
1 アクセルペダルセンサ
2 エンジン回転速度センサ(エンジン回転速度検出手段)
10 エンジンコントローラ(エンジン制御手段)
20 自動変速機コントローラ
30 コントロールバルブユニット(油圧制御手段)
Eg エンジン
LUC ロックアップクラッチ
TC トルクコンバータ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の摩擦要素を有し、油圧によって一部の前記摩擦要素を締結状態、残りの前記摩擦要素を解放状態とすることで複数の変速段を切り替え、入力軸の回転速度を変速して出力軸から出力する自動変速機を備える車両の制御装置において、
ダウンシフトを行うかを判定するダウンシフト判定手段と、
コースト状態で前記ダウンシフトを行う場合に、フューエルカット中及びフューエルカットリカバリ後のいずれの状態で行われるかを判定するフューエルカット判定手段と、
前記コースト状態で前記ダウンシフトを行う場合に、締結側の前記摩擦要素の指示油圧を第1の油圧まで高くした後に、前記第1の油圧よりも低い第2の油圧として、前記締結側の前記摩擦要素のピストンストロークを行う油圧制御手段と、を備え、
前記油圧制御手段は、前記フューエルカットリカバリ後の前記第2の油圧を、前記フューエルカット中の前記第2の油圧よりも低い油圧で制御することを特徴とする車両の制御装置。
【請求項2】
エンジン回転速度を検出するエンジン回転速度検出手段と、
前記コースト状態で、前記エンジン回転速度が第1回転速度以上の場合には、前記フューエルカットを行い、前記エンジン回転速度が前記第1回転速度よりも小さい場合には、前記フューエルカットリカバリを行うエンジン制御手段と、
前記コースト状態で、前記エンジン回転速度が前記第1回転速度よりも大きい第2回転速度以上となるとロックアップクラッチを締結し、前記第2回転速度よりも小さくなると前記ロックアップクラッチを解放するコーストロックアップ制御手段と、を備え、
前記フューエルカット判定手段は、前記コースト状態で前記ダウンシフトを行う場合には、前記エンジン回転速度が前記第2回転速度よりも小さい場合に前記フューエルカットリカバリ後と判定することを特徴とする請求項1に記載の車両の制御装置。
【請求項3】
前記油圧制御手段は、前記第2の油圧から、前記締結側の前記摩擦要素の指示油圧を所定の上昇勾配で上昇させて、前記締結側の前記摩擦要素を締結させ、
前記コースト状態で前記ダウンシフトを行う場合に、前記フューエルカットリカバリ後と判定されたときの前記上昇勾配は、前記フューエルカット中の前記上昇勾配よりも小さいことを特徴とする請求項1または2に記載の車両の制御装置。
【請求項4】
前記フューエルカット判定手段は、前記ロックアップクラッチの締結又は解放状態に基づいて、前記フェールカット中又は前記フューエルカットリカバリ後と判定することを特徴とする請求項2に記載の車両の制御装置。
【請求項1】
複数の摩擦要素を有し、油圧によって一部の前記摩擦要素を締結状態、残りの前記摩擦要素を解放状態とすることで複数の変速段を切り替え、入力軸の回転速度を変速して出力軸から出力する自動変速機を備える車両の制御装置において、
ダウンシフトを行うかを判定するダウンシフト判定手段と、
コースト状態で前記ダウンシフトを行う場合に、フューエルカット中及びフューエルカットリカバリ後のいずれの状態で行われるかを判定するフューエルカット判定手段と、
前記コースト状態で前記ダウンシフトを行う場合に、締結側の前記摩擦要素の指示油圧を第1の油圧まで高くした後に、前記第1の油圧よりも低い第2の油圧として、前記締結側の前記摩擦要素のピストンストロークを行う油圧制御手段と、を備え、
前記油圧制御手段は、前記フューエルカットリカバリ後の前記第2の油圧を、前記フューエルカット中の前記第2の油圧よりも低い油圧で制御することを特徴とする車両の制御装置。
【請求項2】
エンジン回転速度を検出するエンジン回転速度検出手段と、
前記コースト状態で、前記エンジン回転速度が第1回転速度以上の場合には、前記フューエルカットを行い、前記エンジン回転速度が前記第1回転速度よりも小さい場合には、前記フューエルカットリカバリを行うエンジン制御手段と、
前記コースト状態で、前記エンジン回転速度が前記第1回転速度よりも大きい第2回転速度以上となるとロックアップクラッチを締結し、前記第2回転速度よりも小さくなると前記ロックアップクラッチを解放するコーストロックアップ制御手段と、を備え、
前記フューエルカット判定手段は、前記コースト状態で前記ダウンシフトを行う場合には、前記エンジン回転速度が前記第2回転速度よりも小さい場合に前記フューエルカットリカバリ後と判定することを特徴とする請求項1に記載の車両の制御装置。
【請求項3】
前記油圧制御手段は、前記第2の油圧から、前記締結側の前記摩擦要素の指示油圧を所定の上昇勾配で上昇させて、前記締結側の前記摩擦要素を締結させ、
前記コースト状態で前記ダウンシフトを行う場合に、前記フューエルカットリカバリ後と判定されたときの前記上昇勾配は、前記フューエルカット中の前記上昇勾配よりも小さいことを特徴とする請求項1または2に記載の車両の制御装置。
【請求項4】
前記フューエルカット判定手段は、前記ロックアップクラッチの締結又は解放状態に基づいて、前記フェールカット中又は前記フューエルカットリカバリ後と判定することを特徴とする請求項2に記載の車両の制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−60065(P2010−60065A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−227057(P2008−227057)
【出願日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【出願人】(000231350)ジヤトコ株式会社 (899)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【出願人】(000231350)ジヤトコ株式会社 (899)
【Fターム(参考)】
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