説明

車両の情報伝達装置およびそれを備える電動車両

【課題】充電ケーブルを用いて車両外部の電源により充電可能であってPLCを実施可能な車両において、PLCの通信不良発生時に車両外部と適切に通信する。
【解決手段】充電口110には、充電ケーブル30が接続される。PLC処理部150は、充電口110および充電ケーブル30を通信経路として利用することにより住宅20のPLC処理部220と通信する。無線通信部160は、車両外部の無線通信装置と無線により通信する。通信制御部170は、PLC処理部150による通信時に通信不良が発生したとき、予め定められた順位に従って通信データの通信順序を変更し、その変更された通信順序に従って無線通信部160により通信を行なう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両の情報伝達装置およびそれを備える電動車両に関し、特に、充電ケーブルを用いて車両外部の電源により充電可能な車両における車両外部との情報伝達技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2009−33265号公報(特許文献1)は、車両外部と通信可能な車両の情報伝達装置を開示する。この情報伝達装置においては、車両に搭載されたバッテリを充電するための充電口にケーブルを介して他車両の充電口が接続される。そして、PLC処理部は、充電口を通信経路として利用し、他車両との間で充電ケーブルを用いた電力線通信(以下「PLC(Power Line Communication)」とも称する。)を行なう。
【0003】
この情報伝達装置によると、充電口を利用して他車両との通信が行なわれるので、接続用のコネクタ等を特別に設ける必要がない。また、ケーブルによる有線接続ができるので、高速のデータ転送を容易に行なうことができる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−33265号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の公報に開示される情報伝達装置では、PLCの通信不良が発生した場合の対処については特に検討されていない。
【0006】
そこで、この発明は、かかる課題を解決するためになされたものであり、その目的は、充電ケーブルを用いて車両外部の電源により充電可能であってPLCを実施可能な車両において、PLCの通信不良発生時に車両外部と適切に通信することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明によれば、車両の情報伝達装置は、充電口と、第1および第2の通信部と、通信制御部とを備える。充電口には、車両外部の外部電源によって充電可能な車両へ外部電源から電力を供給するための充電ケーブルが接続される。第1の通信部は、充電口および充電ケーブルを通信経路として利用することにより車両外部の通信装置と通信する。第2の通信部は、車両外部の無線通信装置と無線により通信する。通信制御部は、第1の通信部による通信時に通信不良が発生したとき、予め定められた順位に従って通信データの通信順序を変更し、その変更された通信順序に従って第2の通信部により通信を行なう。
【0008】
好ましくは、通信制御部は、予め定められた優先度の高いデータを第1の優先順位とし、第1の通信部の通信不良が発生したときに通信中であったデータを第2の優先順位として、通信データの通信順序を変更する。
【0009】
さらに好ましくは、車両は、外部電源によって充電される蓄電装置を含む。そして、通信制御部は、蓄電装置の残存容量を示すデータおよび外部電源による充電に対する課金を示すデータの少なくとも一方をさらに第3の優先順位として、通信データの通信順序を変更する。
【0010】
好ましくは、通信制御部は、予め定められたセキュリティレベルの高いデータについては、第1の通信部の通信不良発生時に第2の通信部により通信されるデータから除外する。
【0011】
好ましくは、通信制御部は、第1の通信部の通信不良からの回復時、変更された通信順序に従って第1の通信部により通信を行なう。
【0012】
また、好ましくは、通信制御部は、第1の通信部の通信不良からの回復時、変更された通信順序に従って第2の通信部により通信を行なう。
【0013】
また、この発明によれば、電動車両は、再充電可能な蓄電装置と、車両外部の外部電源によって蓄電装置を充電するための充電器と、蓄電装置に蓄えられた電力によって走行駆動力を発生する電動機と、上述したいずれかの車両の情報伝達装置とを備える。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、PLCを実施する第1の通信部による通信時に通信不良が発生したとき、予め定められた順位に従って通信データの通信順序を変更し、その変更された通信順序に従って第2の通信部により無線通信を行なうので、PLCの通信不良発生時においても、車両外部と確実に通信することができる。さらに、PLCの通信不良発生時には、重要な情報のみを車両外部とやり取りすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明の実施の形態1による車両の情報伝達装置が適用される車両充電システムの全体構成図である。
【図2】図1に示す車両の全体ブロック図である。
【図3】PLCによる通信時およびPLCの通信不良発生時における通信データを示した図である。
【図4】図1に示す通信制御部により実行される処理の手順を説明するためのフローチャートである。
【図5】実施の形態2における通信制御部により実行される、PLCの通信不良からの回復時における処理の手順を説明するためのフローチャートである。
【図6】実施の形態3における通信制御部により実行される、PLCの通信不良からの回復時における処理の手順を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0017】
[実施の形態1]
図1は、この発明の実施の形態1による車両の情報伝達装置が適用される車両充電システムの全体構成図である。図1を参照して、この車両充電システムは、車両10と、住宅20と、充電ケーブル30とを備える。
【0018】
この車両充電システムにおいては、車両10と住宅20の電源コンセントとの間に充電ケーブル30を接続することによって、車両10に搭載される蓄電装置を商用電源(たとえば系統電源)によって充電することができる。なお、以下では、車両外部の電源による車両10の充電を「外部充電」とも称する。
【0019】
車両10は、充電口110と、電力入力線120と、充電器130と、動力出力装置140と、PLC処理部150と、無線通信部160と、通信制御部170とを含む。充電口110には、外部充電時に充電ケーブル30が接続される。なお、充電口110に充電ケーブル30が接続されると、その旨が通信制御部170に通知される。
【0020】
充電器130は、電力入力線120によって充電口110に接続される。そして、充電器130は、充電口110から入力される電力を所定の充電電圧に変換し、動力出力装置140に含まれる蓄電装置(図示せず)へ出力する。また、充電器130は、外部充電時、通信制御部170と予め定められた各種データのやり取りを行なう。
【0021】
動力出力装置140は、車両10の走行駆動力を出力する。また、動力出力装置140は、図示されない蓄電装置を含み、外部充電時、充電器130によって蓄電装置が充電される。さらに、動力出力装置140は、車両走行時および外部充電時、通信制御部170と予め定められた各種データのやり取りを行なう。
【0022】
PLC処理部150は、電力入力線120に接続される。そして、PLC処理部150は、外部充電時、充電口110および充電ケーブル30を通信経路として利用することにより、住宅20に設けられるPLC処理部220とPLCによる通信を行なうことができる。このPLC処理部150は、たとえばモデムによって構成され、外部充電時に住宅20側のPLC処理部220から送信される高周波信号のデータを電力入力線120から受けて復調したり、住宅20側のPLC処理部220へ送信されるデータを変調して電力入力線120へ出力したりする。なお、系統電源から充電ケーブル30を介して車両10に供給される交流電力の周波数は、たとえば日本国であれば50Hzまたは60Hzであるのに対し、PLCによる通信時に充電ケーブル30を介して通信される高周波信号の周波数は、たとえば数MHz〜数10MHzである。
【0023】
無線通信部160は、車両外部の無線通信装置と無線により通信を行なうことができ、たとえば、住宅20内に設けられる無線通信部230やディーラー等に設けられる無線通信部260と無線通信可能である。なお、無線規格としては、たとえば、Zigbeeや、Bluetooth、IEEE802.11/a/b/g等を用いることができる。
【0024】
通信制御部170は、PLC処理部150または無線通信部160により行なわれる車両外部との通信の制御を行なう。詳しくは、通信制御部170は、PLC処理部150を用いたPLCによる通信中に通信不良が発生したとき、予め定められた順位に従って通信データの通信順序を変更し、その変更された通信順序に従って無線通信部160により無線通信を行なう。なお、この通信制御部170の処理内容については、後ほど詳しく説明する。
【0025】
住宅20は、電力線210と、PLC処理部220と、無線通信部230と、通信サーバ240とを含む。電力線210は、系統電源に接続される。また、車両10の外部充電時、電力線210の電源コンセントに充電ケーブル30が接続される。
【0026】
PLC処理部220は、電力線210に接続される。そして、PLC処理部220は、車両10の外部充電時、充電ケーブル30および車両10の充電口110を通信経路として利用することにより、車両10のPLC処理部150とPLCによる通信を行なうことができる。このPLC処理部220も、車両10のPLC処理部150と同様にたとえばモデムによって構成され、外部充電時に車両10のPLC処理部150から送信される高周波信号のデータを電力線210から受けて復調したり、車両10のPLC処理部150へ送信されるデータを変調して電力線210へ出力したりする。
【0027】
無線通信部230は、車両10に搭載される無線通信部160と無線により通信を行なうことができる。通信サーバ240は、PLC処理部220または無線通信部230により行なわれる車両10との通信の制御を行なう。また、通信サーバ240は、インターネット等のデータ通信網250に接続され、ディーラー等に設けられるサーバとデータ通信網250を介して通信することもできる。
【0028】
図2は、図1に示した車両10の全体ブロック図である。なお、この図2では、一例として、車両10がハイブリッド自動車の場合が示される。図2を参照して、車両10は、エンジン310と、動力分割装置320と、モータジェネレータ330,350と、減速機340と、駆動軸360と、駆動輪370とを含む。また、車両10は、蓄電装置380と、昇圧コンバータ390と、インバータ400,410と、ECU(Electronic Control Unit)420とをさらに含む。さらに、車両10は、図1に示したように、充電口110と、電力入力線120と、充電器130と、PLC処理部150と、無線通信部160と、通信制御部170とをさらに含む。
【0029】
エンジン310およびモータジェネレータ330,350は、動力分割装置320に連結される。そして、車両10は、エンジン310およびモータジェネレータ350の少なくとも一方からの駆動力によって走行する。エンジン310が発生する動力は、動力分割装置320によって2経路に分割される。すなわち、一方は減速機340を介して駆動軸360へ伝達される経路であり、もう一方はモータジェネレータ330へ伝達される経路である。
【0030】
モータジェネレータ330は、交流回転電機であり、たとえば三相交流同期電動機である。モータジェネレータ330は、動力分割装置320によって分割されたエンジン310の動力を用いて発電する。たとえば、蓄電装置380の残存容量(「SOC(State Of Charge)」とも称される。)が予め定められた値よりも低くなると、エンジン310が始動してモータジェネレータ330により発電が行なわれる。そして、モータジェネレータ330によって発電された電力は、インバータ400により交流から直流に変換され、昇圧コンバータ390により降圧されて蓄電装置380に蓄えられる。
【0031】
モータジェネレータ350は、交流回転電機であり、たとえば三相交流同期電動機である。モータジェネレータ350は、蓄電装置380に蓄えられた電力およびモータジェネレータ330により発電された電力の少なくとも一方を用いて車両の駆動力を発生する。そして、モータジェネレータ350の駆動力は、減速機340を介して駆動軸360に伝達される。
【0032】
なお、車両の制動時には、車両の運動エネルギーを用いてモータジェネレータ350が駆動され、モータジェネレータ350が発電機として動作する。これにより、モータジェネレータ350は、制動エネルギーを電力に変換する回生ブレーキとして動作する。そして、モータジェネレータ350により発電された電力は、蓄電装置380に蓄えられる。
【0033】
動力分割装置320は、サンギヤと、ピニオンギヤと、キャリアと、リングギヤとを含む遊星歯車から成る。ピニオンギヤは、サンギヤおよびリングギヤと係合する。キャリアは、ピニオンギヤを自転可能に支持するとともに、エンジン310のクランクシャフトに連結される。サンギヤは、モータジェネレータ330の回転軸に連結される。リングギヤはモータジェネレータ350の回転軸および減速機340に連結される。
【0034】
蓄電装置380は、再充電可能な直流電源であり、たとえば、ニッケル水素やリチウムイオン等の二次電池から成る。蓄電装置380には、モータジェネレータ330,350によって発電される電力のほか、外部充電時に車両外部の電源(図1の系統電源)から供給され充電口110から入力される電力も蓄えられる。なお、蓄電装置380として、大容量のキャパシタを用いてもよい。
【0035】
昇圧コンバータ390は、ECU420からの制御信号に基づいて、インバータ400,410に与えられる直流電圧を蓄電装置380の電圧以上に調整する。昇圧コンバータ390は、たとえば昇圧チョッパ回路によって構成される。
【0036】
インバータ400は、ECU420からの制御信号に基づいて、モータジェネレータ330により発電された電力を直流電力に変換して昇圧コンバータ390およびインバータ410の少なくとも一方へ出力する。インバータ410は、ECU420からの制御信号に基づいて、昇圧コンバータ390およびインバータ400の少なくとも一方から供給される電力を交流電力に変換してモータジェネレータ350へ出力する。なお、エンジン310の始動時、インバータ400は、昇圧コンバータ390から供給される電力を交流電力に変換してモータジェネレータ330へ出力する。また、インバータ410は、車両の制動時、モータジェネレータ350により発電された電力を直流電力に変換して昇圧コンバータ390へ出力する。
【0037】
ECU420は、昇圧コンバータ390およびモータジェネレータ330,350を駆動するための制御信号を生成し、その生成した制御信号を昇圧コンバータ390およびインバータ400,410へそれぞれ出力する。また、ECU420は、外部充電時、充電器130を駆動するための制御信号を生成して充電器130へ出力する。
【0038】
なお、充電口110、電力入力線120、充電器130、PLC処理部150、無線通信部160および通信制御部170については、図1で説明したので説明を繰返さない。なお、充電器130は、蓄電装置380と昇圧コンバータ390との間に接続される。
【0039】
また、エンジン310、動力分割装置320、モータジェネレータ330,350、減速機340、駆動軸360、駆動輪370、蓄電装置380、昇圧コンバータ390、インバータ400,410およびECU420は、図1に示した動力出力装置140を構成する。
【0040】
図3は、PLCによる通信時およびPLCの通信不良発生時における通信データを示した図である。図3を参照して、PLCによる通信時、予め定められたデータd1〜dNが車両10と住宅20との間で充電口110および充電ケーブル30を介して順次通信される。ここで、通信データd1〜dNには、優先度およびセキュリティレベルが予め設定されている。緊急性の高い情報を含むデータは、優先度が「高」に設定され、図3では、一例としてデータd2,d6に優先度「高」が設定されている。なお、緊急性の高い情報とは、たとえば、車両の盗難情報や、外部充電実施中の車両移動情報、各種ダイアグ情報、前回走行中に収集された車両利用者の身体情報等である。また、高いセキュリティが必要とされるデータには、セキュリティレベルが「高」に設定され、図3では、一例としてデータd1にセキュリティ「高」が設定されている。
【0041】
ここで、PLCの通信不良が発生すると、この実施の形態1では、予め定められた順位に従って通信データの通信順序が変更され、その変更された通信順序に従って無線通信部160により車両10と住宅20との間で無線通信が行なわれる。具体的には、優先度が「高」に設定されたデータd2,d6に対して優先順位「1」が設定され、次いで、PLCの通信不良発生時に通信中であったデータ(たとえばデータd4とする。)に対して優先順位「2」が設定される。そして、蓄電装置380(図2)のSOCを示すデータd3および外部充電に対する課金を示すデータd5の少なくとも一方に対して優先順位「3」がさらに設定され、この優先順位に従って、無線通信部160により順次通信が行なわれる。なお、セキュリティレベルが「高」に設定されたデータd1については、無線通信による情報漏洩を防止するために、無線通信部160により通信されるデータから除外される。
【0042】
図4は、図1に示した通信制御部170により実行される処理の手順を説明するためのフローチャートである。図4を参照して、通信制御部170は、充電口110への充電ケーブル30の接続が検知されたか否かを判定する(ステップS10)。たとえば、充電ケーブル30が充電口110に接続されると作動するリミットスイッチを充電口110または充電ケーブル30のコネクタ部に設けておくことで、充電口110と充電ケーブル30との接続を検知することができる。このステップS10において充電口110と充電ケーブル30との接続が検知されていないと判定されると(ステップS10においてNO)、通信制御部170は、以降の一連の処理を実行することなくステップS140へ処理を移行する。
【0043】
ステップS10において充電口110と充電ケーブル30との接続が検知されていると判定されると(ステップS10においてYES)、通信制御部170は、PLCの通信不良が発生したか否かを判定する(ステップS20)。たとえば、信号ノイズの大きさが予め定められた値を超えたときや、PLCの実施中であるにも拘わらず予め定められた時間データ通信が行なわれないときなどは、PLCの通信不良が発生したものと判定される。
【0044】
ステップS20においてPLCの通信不良は発生していないと判定されているときは(ステップS20においてNO)、通信制御部170は、PLCによる通常通信を実施する(ステップS30)。具体的には、図3の左表に示される通信データd1〜dNについて、PLCにより順次通信が行なわれる。そして、通信制御部170は、PLCによる通信が終了したか否かを判定し(ステップS40)、PLCによる通信が終了したと判定されると(ステップS40においてYES)、ステップS140へ処理が移行され、PLCによる通信が未終了であると判定されると(ステップS40においてNO)、ステップS20へ処理が戻される。
【0045】
一方、ステップS20においてPLCの通信不良が発生したものと判定されると(ステップS20においてYES)、通信制御部170は、通信途中で通信が遮断されたか否かを判定する(ステップS50)。なお、ここでは、通信される各データの通信中に通信が遮断された場合に、通信途中で通信が遮断されたものとする。そして、通信途中で通信が遮断されたと判定されると(ステップS50においてYES)、通信制御部170は、そのときの通信中データの残内容を選定する(ステップS60)。なお、通信途中での遮断ではないと判定されたときは(ステップS50においてNO)、ステップS60は実行されずにステップS70へ処理が移行される。
【0046】
次いで、通信制御部170は、通信対象のデータのうち、優先度が「高」に設定されたデータが有るか否かを判定する(ステップS70)。そして、優先度が「高」に設定されたデータが有ると判定されると(ステップS70においてYES)、通信制御部170は、その優先度「高」が設定されたデータを通信対象データの中から選定する(ステップS80)。なお、優先度が「高」に設定されたデータは無いと判定されたときは(ステップS70においてNO)、ステップS80は実行されずにステップS90へ処理が移行される。
【0047】
次いで、通信制御部170は、蓄電装置380(図2)のSOCおよび外部充電に対する課金情報を通信対象データの中から選定する(ステップS90)。続いて、通信制御部170は、セキュリティレベルが「高」に設定されたデータが有るか否かを判定する(ステップS100)。セキュリティレベルが「高」に設定されたデータが有ると判定されると(ステップS100においてYES)、通信制御部170は、そのセキュリティレベルが「高」に設定されたデータを通信対象データから除外する(ステップS110)。セキュリティレベルが「高」に設定されたデータを通信対象データから除外するのは、後述の無線通信における情報漏洩を防止するためである。なお、セキュリティレベルが「高」に設定されたデータは無いと判定されたときは(ステップS100においてYES)、ステップS110は実行されずにステップS120へ処理が移行される。
【0048】
次いで、通信制御部170は、予め定められた順序に従って通信データの通信順序を変更する(ステップS120)。具体的には、ステップS80において選定された、優先度が「高」に設定されたデータが優先順位「1」に変更され、ステップS60において選定された通信中データの残データが優先順位「2」に変更される。さらに、ステップS90において選定された蓄電装置380のSOCおよび外部充電に対する課金情報が優先順位「3」に変更される。そして、通信制御部170は、ステップS120において変更された優先順位に従って、無線通信部160(図1)により順次無線通信を実施する(ステップS130)。
【0049】
なお、上記においては、データd3は、蓄電装置380のSOCを示すものとしたが、蓄電装置380のSOCに代えて、またはSOCとともに、SOCから算出できる残存電池容量(kWh)およびSOCから算出できる充電可能容量(kWh)の少なくとも一方をデータd3としてもよい。また、データd5は、外部充電に対する課金を示すものとしたが、課金情報に代えて、または課金情報とともに、使用電力量等をデータd5としてもよい。
【0050】
以上のように、この実施の形態1によれば、PLCを実施するPLC処理部150による通信時に通信不良が発生したとき、予め定められた順位に従って通信データの通信順序を変更し、その変更された通信順序に従って無線通信部160により無線通信を行なうので、PLCの通信不良発生時においても、車両外部と確実に通信することができる。
【0051】
また、この実施の形態1によれば、PLCの通信不良発生時には、優先度の高い重要なデータを通信対象データの中から選定して車両外部とやり取りすることができる。さらに、この実施の形態1によれば、PLCの通信不良発生時には、セキュリティレベルの高いデータは無線通信による通信対象から除外されるので、無線通信時に発生し得る情報漏洩を防止することができる。
【0052】
[実施の形態2]
この実施の形態2では、PLCの通信不良から回復したときの通信制御が示される。この実施の形態2における車両充電システムおよび車両10の全体構成は、図1,2に示した実施の形態1のそれらと同じである。また、PLCの通信不良発生時における通信制御も、図4に示した実施の形態1の処理フローと同じである。
【0053】
図5は、実施の形態2における通信制御部170により実行される、PLCの通信不良からの回復時における処理の手順を説明するためのフローチャートである。図5を参照して、通信制御部170は、PLCの通信不良から回復したか否かを判定する(ステップS210)。たとえば、信号ノイズの大きさが予め定められた値を超えたことにより通信不良と判定されていた場合に信号ノイズの大きさがその値以下となったときや、中断していたPLCによる通信が回復したとき等に、PLCの通信不良から回復したものと判定される。
【0054】
そして、ステップS210においてPLCの通信不良から回復したものと判定されると(ステップS210においてYES)、通信制御部170は、図4に示した、通信不良発生時に変更された通信順序に従って、残余のデータにつきPLCによる通信を行なう(ステップS220)。一方、ステップS210においてPLCの通信不良から未だ回復していないと判定されたときは(ステップS210においてNO)、ステップS220は実行されずにステップS230へ処理が移行される。
【0055】
以上のように、この実施の形態2においては、PLCの通信不良から回復すると、通信不良発生時に変更された通信順序に従って残余のデータにつきPLCによる通信が行なわれる。したがって、この実施の形態2によれば、通信不良回復時の処理を簡略化することができる。また、PLCの通信不良が再度発生した場合に通信順序を再度変更する必要がなく、この点についても処理を簡略にできる。
【0056】
[実施の形態3]
実施の形態2では、PLCの通信不良から回復すると、通信不良発生時に変更された通信順序に従ってPLCにより残データを通信するものとしたが、この実施の形態3では、PLCの通信不良から回復しても、そのまま無線通信が継続され、優先順位に従った無線通信の終了後、PLCにより残余のデータの通信が行なわれる。
【0057】
この実施の形態3における車両充電システムおよび車両10の全体構成も、図1,2に示した実施の形態1のそれらと同じである。また、PLCの通信不良発生時における通信制御も、図4に示した実施の形態1の処理フローと同じである。
【0058】
図6は、実施の形態3における通信制御部170により実行される、PLCの通信不良からの回復時における処理の手順を説明するためのフローチャートである。図6を参照して、通信制御部170は、PLCの通信不良から回復したか否かを判定する(ステップS310)。なお、この処理は、図5に示したステップS210により実行される処理と同じである。ステップS310においてPLCの通信不良から未だ回復していないと判定されたときは(ステップS310においてNO)、以降の一連の処理は実行されずにステップS360へ処理が移行される。
【0059】
ステップS310においてPLCの通信不良から回復したものと判定されると(ステップS310においてYES)、通信制御部170は、PLCによる通信を再開せずに、無線通信部160による無線通信を継続する(ステップS320)。次いで、通信制御部170は、無線通信部160による無線通信が終了したか否かを判定し(ステップS330)、通信が終了したと判定されると(ステップS330においてYES)、通信制御部170は、PLCの通信不良が発生しているか否かを判定する(ステップS340)。なお、この処理は、図4に示したステップS20により実行される処理と同じである。
【0060】
そして、ステップS340においてPLCの通信不良は発生していないと判定されると(ステップS340においてNO)、通信制御部170は、残余のデータにつきPLCによる通信を行なう(ステップS350)。一方、ステップS340においてPLCの通信不良が再度発生していると判定された場合には(ステップS340においてYES)、ステップS350は実行されずにステップS360へ処理が移行される。
【0061】
以上のように、この実施の形態3においては、一度PLCの通信不良が発生すると、通信不良から回復しても再発する可能性があるので、PLCの通信不良から回復しても代替手段の無線通信が継続される。そして、予め定められた優先順位に従って優先データの無線通信が終了すると、残余のデータについてPLCによる通信が再開される。したがって、この実施の形態3によっても、通信不良回復時の処理を簡略化することができる。
【0062】
なお、上記の実施の形態3においては、予め定められた優先順位に従って優先データの無線通信が終了すると、残余のデータについてはPLCにより通信するものとしたが、残余の通信データについてもそのまま無線により通信を行なってもよい。
【0063】
なお、上記の各実施の形態においては、車両10は、住宅20の電源コンセントに接続されて系統電源により充電されるものとしたが、車両10に充電電力を供給する外部電源は、そのような電源に限定されるものではない。たとえば、住宅20に設置された分散電源を充電に用いてもよいし、住宅外の専用の充電スタンドに車両10を接続することによって車両10の充電が行なわれてもよい。
【0064】
また、上記においては、車両10において、外部充電専用の充電器130を用いて外部電源により蓄電装置380を充電するものとしたが、専用の充電器130を設けることなく、充電口110に接続される電力入力線120をモータジェネレータ330,350の中性点にそれぞれ接続し、インバータ400,410により中性点間の電圧を調整することによって、外部電源から供給される電力を充電電圧に変換して蓄電装置380を充電してもよい。
【0065】
また、上記においては、車両10は、走行用の動力源としてエンジン310およびモータジェネレータ350を搭載するハイブリッド自動車としたが、この発明の適用範囲は、ハイブリッド自動車に限定されるものではなく、エンジンを搭載しない電気自動車や、直流電源として燃料電池を搭載した燃料電池自動車なども含む。
【0066】
なお、上記において、PLC処理部150は、この発明における「第1の通信部」の一実施例に対応し、無線通信部160は、この発明における「第2の通信部」の一実施例に対応する。また、モータジェネレータ350は、この発明における「電動機」の一実施例に対応する。
【0067】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0068】
10 車両、20 住宅、30 充電ケーブル、110 充電口、120 電力入力線、130 充電器、140 動力出力装置、150,220 PLC処理部、160,230,260 無線通信部、170 通信制御部、210 電力線、240 通信サーバ、250 データ通信網、310 エンジン、320 動力分割装置、330,350 モータジェネレータ、340 減速機、360 駆動軸、370 駆動輪、380 蓄電装置、390 昇圧コンバータ、400,410 インバータ、420 ECU。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両外部の外部電源によって充電可能な車両へ前記外部電源から電力を供給するための充電ケーブルが接続される充電口と、
前記充電口および前記充電ケーブルを通信経路として利用することにより車両外部の通信装置と通信するための第1の通信部と、
車両外部の無線通信装置と無線により通信するための第2の通信部と、
前記第1の通信部による通信時に通信不良が発生したとき、予め定められた順位に従って通信データの通信順序を変更し、その変更された通信順序に従って前記第2の通信部により通信を行なうための通信制御部とを備える、車両の情報伝達装置。
【請求項2】
前記通信制御部は、予め定められた優先度の高いデータを第1の優先順位とし、前記第1の通信部の通信不良が発生したときに通信中であったデータを第2の優先順位として、通信データの通信順序を変更する、請求項1に記載の車両の情報伝達装置。
【請求項3】
前記車両は、前記外部電源によって充電される蓄電装置を含み、
前記通信制御部は、前記蓄電装置の残存容量を示すデータおよび前記外部電源による充電に対する課金を示すデータの少なくとも一方をさらに第3の優先順位として、通信データの通信順序を変更する、請求項2に記載の車両の情報伝達装置。
【請求項4】
前記通信制御部は、予め定められたセキュリティレベルの高いデータについては、前記第1の通信部の通信不良発生時に前記第2の通信部により通信されるデータから除外する、請求項1に記載の車両の情報伝達装置。
【請求項5】
前記通信制御部は、前記第1の通信部の通信不良からの回復時、前記変更された通信順序に従って前記第1の通信部により通信を行なう、請求項1に記載の車両の情報伝達装置。
【請求項6】
前記通信制御部は、前記第1の通信部の通信不良からの回復時、前記変更された通信順序に従って前記第2の通信部により通信を行なう、請求項1に記載の車両の情報伝達装置。
【請求項7】
再充電可能な蓄電装置と、
車両外部の外部電源によって前記蓄電装置を充電するための充電器と、
前記蓄電装置に蓄えられた電力によって走行駆動力を発生する電動機と、
請求項1に記載の車両の情報伝達装置とを備える電動車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−151717(P2011−151717A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−13087(P2010−13087)
【出願日】平成22年1月25日(2010.1.25)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ZIGBEE
2.Bluetooth
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】