説明

車両の横転防止装置

【課題】トラクタとトレーラから成る車両の横転防止装置において、トラクタヘッド側でトレーラのロール角検出が正確に行えるようにする。
【解決手段】トラクタの後部ロール角(RHr)を検出し、トラクタ及びトレーラの連結総重量(Wtortal)を推定し、トラクタ及びトレーラを連結するカプラーが受ける荷重(Wfifth)を推定し、そしてトラクタの前軸及び後軸のサスペンションのロール剛性(KHf,KHr)を演算する。このようにして求めたトラクタ後部ロール角(RHr)と連結総重量(Wtortal)と荷重(Wfifth)と両サスペンションのロール剛性(KHf,KHr)と別途与えられるトレーラの所定のねじり剛性(KTtorsion)とに基づき、トレーラのロール角を推定して出力(ROUT)する。トラクタの横加速度(Gy)を加えてトレーラロール角を推定することもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の横転防止装置に関し、特にロール方向への自由度を持たない連結器(カプラー)で連結されたトラクタ・トレーラ連結車両で、トレーラのロール角を元に横転危険性を判定する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車(車両)は、旋回時、遠心力によって、外側へ傾く挙動が生じることは良く知られている。このため、自動車は、急旋回操作が行われ、外側へ傾かせようとする力が接地力を越えると、旋回内側の車輪が路面から浮き上がり横転を起こす。
【0003】
そこで、車両のロール角を検出して横転防止に備えることが行われている。ここで、車両のロール角の検出方法としては、(1)左右のサスペンションストロークの差から車両のロール角を算出する方法(例えば、特許文献1参照。)、(2)路面に対する車体の傾きを直接検出する対地変位計を採用してこの対地変位計の検出出力から車体のロール角を算出する方法(例えば、特許文献2参照。)、(3)車体の傾きを検出するロール角センサ(傾斜計)を用いて、このロール角センサの検出出力から車両の実際のロール角を検出する方法(例えば、特許文献3参照。)、或いは、(4)車速とヨーレートから演算される推定加速度と車体に取り付けられたセンサから得られた実際の横加速度とを用いてロール角を推定する方法(例えば、特許文献4参照。)など、様々な方法が提案されている。
【特許文献1】特開昭60-252011号公報
【特許文献2】特開平6-297985号公報
【特許文献3】実開平3-110903号公報
【特許文献4】特開平11-258260号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前述したロール角を検出する手段は、いずれもロール角を検出する対象の車体にセンサを取り付けることを前提としているが、トラクタとトレーラが連結された車両では、その時々に応じてトラクタはトレーラと切り離され、別のトレーラと連結されるため、トラクタ側でトレーラのロール角を検出する場合、ロール角の検出に必要なセンサがトレーラに装着されていることを必ずしも前提として考えることができない。
【0005】
そこで、トラクタヘッドとトレーラとの連結部にロール方向に自由度の無い連結器(カプラー)を用いている場合は、トラクタのロール角でトレーラのロール角の代用とすることが考えられるが、トレーラの積荷の前後位置の違いによっては代用できない場合がある。
【0006】
図15(1)及び(2)に、それぞれ、積荷の位置を前後に変えたときのトラクタの後部ロール角特性A、及びトレーラの後部ロール角特性Bを示す。同図(1)に示すように積荷の位置が前積の場合は、トラクタのロール角とトレーラのロール角がほぼ同じ値であるが、同図(2)に示すように積荷の位置が後積の場合は、トラクタのロール角がトレーラのロール角より小さな値にしかならず、トレーラのロール角の代用としてトラクタのロール角を利用することができない。
【0007】
例えば積荷が後積のとき、ロール角を利用して判定を行う横転防止装置にトレーラロール角の代用としてトラクタのロール角を用いた場合、実際トレーラの横転危険度が高くてもトラクタロール角がトレーラより小さいため、横転危険度が低いと誤判定してしまう恐れがある。
【0008】
本発明は、上記の従来技術の課題に着目してなされたもので、その目的は、トラクタヘッド側でトレーラのロール角検出が正確に行える連結車両の横転防止装置を提供することに在る。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明に係る車両の横転防止装置は、トラクタとトレーラから成る車両の横転防止装置であって、該トラクタの後部ロール角を検出するトラクタ後部ロール角検出手段と、該トラクタ及び該トレーラの連結総重量を推定する連結総重量推定手段と、該トラクタ及び該トレーラを連結するカプラーが受ける荷重を推定する荷重推定手段と、該トラクタの前軸サスペンションのロール剛性を演算するトラクタ前軸サスロール剛性演算部と、該トラクタの後軸サスペンションのロール剛性を演算するトラクタ後軸サスロール剛性演算部と、該トラクタ後部ロール角と該連結総重量と該荷重と該前軸サスペンションのロール剛性と該後軸サスペンションのロール剛性と該トレーラの所定のねじり剛性とに基づき、該トレーラのロール角を推定するトレーラロール角推定手段と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
ここで、上記の該トレーラの所定のねじり剛性は、トレーラねじり剛性入力部から与えられるか、又は予め該トレーラロール角推定手段に記憶されたものでよい。
【0011】
また、上記のトレーラロール角推定手段は、該連結総重量と既知のトラクタ重量からトレーラ重量を求め、該トレーラ重量と該荷重からトレーラホイールベースに対する連結軸−トレーラ前後重心間距離の比率を算出し、該比率と該トラクタ後部ロール角と両サスロール剛性と該トレーラねじり剛性、並びに既知のトラクタねじり剛性とに基づき該トレーラロール角を演算することができる。
【0012】
すなわち、該トレーラロール角推定手段は、連結総重量の推定値と既知であるトラクタ重量から積荷を含んだトレーラの重量を演算する。また、トレーラから連結器(カプラー)を通してトラクタに掛かる荷重を推定し、演算で求めたトレーラ重量と第5輪荷重から、連結軸−トレーラ前後重心位置間距離のトレーラホイールベースに対する比率を求める。このトレーラ重心位置の比率と、求めた該トラクタ後部ロール角と両サスロール剛性と該トレーラねじり剛性に加えて、既知のトラクタねじり剛性に基づきトラクタのロール角を推定している。この場合には、横加速度に関する項目を省略している。
【0013】
さらに、該トレーラロール角推定手段は、該連結総重量と既知のトラクタ重量からトレーラ重量を求め、該トレーラ重量と該荷重からトレーラホイールベースに対する連結軸−トレーラ前後重心間距離の比率を算出し、該比率と該トラクタ後部ロール角と両サスロール剛性と該トレーラねじり剛性、並びに既知のトラクタホイールベースとトラクタ前軸−連結軸間距離と連結軸−トレーラ後軸間距離とトラクタねじり剛性とに基づき該トレーラロール角を演算することもできる。この場合も、横加速度に関する項目は省略している。
【0014】
また、該トラクタの横加速度を検出する横加速度検出手段をさらに備え、該トラクタロール角の演算に該横加速度並びに既知のトラクタばね上重量とトラクタばね上重心のロール軸からの高さとを加えることもできる。
【0015】
なお、上記のトレーラホイールベースは、例えば、連結軸の位置から単数トレーラ軸の位置又は複数トレーラ軸の中間位置までの距離である。
【0016】
さらに、本発明は、該トレーラロール角に基づいて横転危険判定する手段と、この判定結果に基づいて警報を発する手段又はこの判定結果に基づいて横転抑制制御を行う手段と、を備えることも可能である。
【0017】
また本発明では、上記ロール角を、ロール角速度或いはロール角加速度に置き換えることができ、その場合はそれぞれ、トレーラのロール角速度推定装置、トレーラのロール角加速度推定装置として動作させることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、トレーラにロール角検出のためのセンサなどを付加することなく、従来より精度良くトレーラのロール角を推定することが可能になり、例えば車体ロール角を利用する横転危険度判定装置に適用すると、より正確にトレーラの横転危険度を判定することができ、安全運転に寄与することができる。
【0019】
また、本出願人による特願2007-21727号では、カプラー−トレーラ重心間距離のトレーラホイールベースに対する比(LCGratio)とロール補正係数とのマップを予め求め、このマップを用いてトレーラロール角を推定したが、本発明では上記のマップを必要とせず、その結果、エアサスなどのばね定数がその時々で変化する車両において、正確なトレーラロール角を算出できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明に適用される連結車両の一般的な構成例:図1〜図4
セミトレーラ型の連結車両は図1に示すような構成を有し、トラクタ100に取り付けられたカプラー200によりトレーラ300の前部の垂直荷重(第5輪荷重)Wfifthを受ける形となっている。積荷とトレーラ300を合わせた重心CGの位置は、たとえ積荷の重量が同一でも、積荷を積む位置により異なり、そのため、第5輪荷重Wfifthとトレーラ軸荷重Wrrもその時々で異なるものとなる。この荷重配分の違いが、トラクタ100とトレーラ300とで旋回時のロール状態が異なる要因と考えられる。
【0021】
ここで、トレーラ軸が複数軸ある場合が図2〜図4に示されており、図2の例はトラクタ後軸1軸でトレーラ軸2軸の場合、図3の例はトラクタ後軸2軸でトレーラ軸2軸の場合、そして図4の例はトラクタ後軸2軸でトレーラ軸3軸の場合を示している。これらの場合は、それぞれのトレーラ軸荷重の合計をトレーラ軸荷重Wrrとし、トレーラホイールベースLtrailerのトレーラ軸側の基点はそれぞれ、複数軸の中間位置とする。なお、Lfはカプラー200の連結軸とトレーラ重心CGとの距離を示し、Lrはトレーラ重心CGとトレーラ軸の中間位置との距離を示す。また、LHfはトラクタ前軸とカプラー200の連結軸との距離、LHrはカプラー200の連結軸とトラクタ後軸との距離、そして、LHeadはトラクタ100のホイールベース(LHf+LHr)をそれぞれ示す。
【0022】
実施例の全体構成:図5
実施例の構成は図5に示すように、トラクタ後部ロール角検出部1、連結総重量推定部2、第5輪荷重推定部3、トラクタ横加速度検出部4、トラクタ前軸サスロール剛性演算部5、トラクタ後軸サスロール剛性演算部6、トラクタねじり剛性入力部7、トレーラロール角推定部8、横転危険判定部9、及び横転危険警報部10から成る。これらはトラクタ100側に装備される。以下、各部について説明する。
【0023】
実施例各部の説明
1)トラクタ後部ロール角検出部:図6
トラクタ後部ロール角検出部1においては、図6(1)に示すようにトラクタ100のリアサスペンション11,12の左右にばね上とばね下の相対変位を計測するストロークセンサ13,14をそれぞれ取付け、その計測値を入力したロール角演算部15が、次式によりばね上ロール角RHrを求める。
【0024】
【数1】

ここで、hLH:左側相対変位、hRH:右側相対変位、Treadsensor:ストロークセンサ取付けスパン、である。
【0025】
また、タイヤが浮上るまでのロール角が大きくないことからロール角RHrを次式で近似して求めても良い。
【0026】
【数2】

なおロール角検出部1はこれに限らず、他の方法を用いても良い。例えば、図6(2)に示すように、トラクタフレーム上に取り付けられたロールレートセンサ16で計測されるロール角速度の値をロール角演算部15に与え、ここで積分してロール角RHrを求めても良い。
【0027】
2)連結総重量推定部:図7
連結総重量推定部2は、図7(1)に示すように、アクセル開度センサ21、エンジン回転数センサ22、車両前後加速度センサ23、及び演算部24から成る。
【0028】
演算部24は、アクセル開度センサ21及びエンジン回転数センサ22からのアクセル開度及びエンジン回転数と、予め演算部24に記憶してあるマップとを参照してエンジントルクを求め、車両前後加速度センサ23からの車両の前後加速度を積分することで車両速度を求める。これらのエンジントルク、前後加速度、及び車両速度から、以下のとおり、トラクタ100、トレーラ300、及び積荷から成る連結総重量Wtotalを求める。
【0029】
まず、車両の走行抵抗をTfとすると、走行抵抗の演算式は次式で表される。
【0030】
Tf=μWtotal+ρAV2+(α/g)(Wtotal+ΔWtotal)+Wtotalsinθ ・・・式(3)
ここで、μ:ころがり抵抗、Wtotal:連結総重量、ρ:空気抵抗係数、A:車両前面投影面積、ΔWtotal:回転部等価慣性重量、α:加減速度、sinθ:路面勾配、V:車両速度、g:重力加速度である。この内、ころがり抵抗μ、路面勾配sinθ、及び車両速度Vは、状況に応じて変化する値であるが、その他は車両の固有値(車両の諸元)である。
【0031】
そこで、走行抵抗Tfを微少時間ΔT毎に計測する。ここで、現在の走行抵抗をTf0とし、ΔT後の走行抵抗をTf1とし、微少時間ΔTにおいて路面状況の変化はないとすれば、両時刻においてころがり抵抗μWtotal及び勾配抵抗Wtotalsinθは等しく、次式が得られる。
【0032】
Tf0=μWtotal+ρAV02+(α0/g)(Wtotal+ΔWtotal)+Wtotalsinθ ・・・式(4)
Tf1=μWtotal+ρAV12+(α1/g)(Wtotal+ΔWtotal)+Wtotalsinθ ・・・式(5)
次に式(4)と式(5)の差分を演算すると、次式が得られる。
【0033】
Tf0−Tf1=ρA(V02−V12)+(α0−α1)(Wtotal+ΔWtotal)/g ・・・式(6)
この式(6)から、次式が得られる。
【0034】
Wtotal+ΔWtotal=g〔Tf0−Tf1−ρA(V02−V12)〕/(α0−α1) ・・・式(7)
更に、ΔWtotalを、一例として0.1Wtotalとすると、上記の式(7)の左辺はWtotal+0.1Wtotal=1.1Wtotalとなるので次式が得られる。
【0035】
Wtotal=g〔Tf0−Tf1−ρA(V02−V12)〕/1.1(α0−α1) ・・・式(8)
一方、式(4)及び式(5)の各時点で演算部24で得られたエンジントルクをそれぞれTe0及びTe1とし、車輪の駆動力をそれぞれT0及びT1とすると、T0及びT1はそれぞれ次式で与えられる。
【0036】
T0 =(Te0・GT・GF・η)/R ・・・式(9)
T1 =(Te1・GT・GF・η)/R ・・・式(10)
ここで、GT:トランスミッションギヤ比、GF:終減速比、η:伝達効率、R:タイヤ半径である。これらは車両の固有値(車両の諸元)である。
【0037】
そして、走行抵抗Tfと駆動力T0,T1が釣り合った状態で車両が走行することから、式(8)のTf0及びTf1に、式(9)及び式(10)のT0及びT1をそれぞれに代入することで、走行中に微少時間ΔT毎に連結総重量Wtotalを検出し推定することができる。
【0038】
なお、連結総重量推定方法については、これに限らず他の方法を用いても良い。例えば図7(2)に示すように、トラクタ各輪のブレーキ圧力センサ25、トレーラブレーキの圧力センサ26及び車両前後加速度センサ23を備え、以下のとおり演算部27で連結総重量Wtotalを求めることができる。
【0039】
車両に作用する減速度(前後方向の加速度)αと、そのときのブレーキ力Fとの間には次式の関係がある。
【0040】
F=Wtotal(α/g) ・・・式(11)
この式(11)式から、次式が得られる。
【0041】
Wtotal=F(g/α) ・・・式(12)
またブレーキ力Fがブレーキ係数Bとブレーキエア圧Pとの関数として示される。具体的には前輪、後輪およびトレーラの各ブレーキ係数Bf, Br, Btと、ブレーキエア圧Pf,Pr,Ptとからブレーキ力Fは次式により求められる。
【0042】
F=Bf・Pf+Br・Pr+Bt・Pt(=B・P) ・・・式(13)
この式(13)のブレーキ力Fを式(12)に代入することで、連結総重量Wtotalを演算し推定することができる。
【0043】
3)第5輪荷重推定部:図8
第5輪荷重推定部3では、トラクタ100がエアサスペンションで構成されている連結車両において、図8(1)に示すように、トラクタ100における各輪のエアスプリング内圧を計測する圧力センサ31を備え、計測した内圧の計測値を演算部32に送り、以て第5輪荷重Wfifthを推定演算する構成となっている。
【0044】
まず、トラクタ100の各車輪のエアスプリング荷重Fi(i:トラクタ各車輪)は、次式のようにエアスプリング内圧Piと予め演算部32に記憶されているエアスプリングの有効断面積Aiとの積で求めることができる。
【0045】
Fi=Ai・Pi ・・・式(14)
よって、トラクタ100の第5輪荷重Wfifthも含めたばね上荷重WTractor_allは次式で求められる。
【0046】
WTractor_all=ΣFi
=ΣAi・Pi ・・・式(15)
第5輪荷重Wfifthは式(15)で求めたトラクタばね上荷重WTractor_allから、予め演算部32に記憶されているトラクタ単車時のばね上荷重WTractor_0を引くことで、次式に示すように求めることができる。
【0047】
Wfifth=WTractor_all−WTractor_0 ・・・式(16)
或いは、別の第5輪荷重推定方法として、カプラー200の取付位置が概略トラクタ100の後軸の上になっていることから、エアスプリング内圧の圧力センサ31を後軸のエアスプリングのみに取付け、iをトラクタ後軸各車輪、WTractor_allを後軸に掛かるばね上荷重、WTractor_0をトラクタ単車時の後軸のばね上荷重とそれぞれ読み替えて、式(14)から式(16)を計算することで第5輪荷重Wfifthを求めても良い。
【0048】
さらに別の第5輪荷重推定方法として、例えばサスペンションに金属ばねを用いたトラクタ車両において、図8(2)に示すようにトラクタ各輪にサスストロークセンサ33を備え、計測したサスストロークの計測値を演算部34に送って第5輪荷重Wfifthを演算する構成を採ることもできる。トラクタ各輪のばねに掛かる荷重Fi(i:トラクタ各車輪)はサスストロークセンサ33によって計測したばねのたわみ量Hiの関数fiとなっている。
【0049】
Fi=fi(Hi) ・・・式(17)
例えば、ばね定数kiが一定である線形ばねの場合は次式となる。
【0050】
Fi=ki・Hi ・・・式(18)
よって、トラクタの第5輪荷重Wfifthも含めたばね上荷重WTractor_allは次式で求められる。
【0051】
WTractor_all=ΣFi
=Σfi(Hi) ・・・式(19)
第5輪荷重Wfifthは、式(19)で求めたトラクタばね上荷重WTractor_allから、予め演算部34に記憶されているトラクタ単車時のばね上荷重WTractor_0を引くことで求めることができる。
【0052】
Wfifth=WTractor_all−WTractor_0 ・・・式(20)
この方法も上記のエアサス内圧を用いた方法と同様に、サスストロークセンサ33をトラクタ後軸のサスペンションのみに取り付け、iをトラクタ後軸各車輪、WTractor_allを後軸に掛かるばね上荷重、WTractor_0をトラクタ単車時の後軸のばね上荷重とそれぞれ読み替えて式(17)から式(20)を計算することで第5輪荷重Wfifthを求めても良い。
【0053】
4)トラクタ横加速度検出部:図9
トラクタ横加速度検出部4では、図9(1)に示すようにトラクタ100に取り付けた横加速度センサ41によりトラクタ横加速度値Gyを検出し、信号処理部42において、ローパスフィルタなどによりノイズ除去を行う。
【0054】
なお、トラクタ横加速度検出方法としては、上記の方法に限らず、他の方法を用いてもよい。例えば、図9(2)に示すように、トラクタ100に操舵角センサ43と車両速度センサ44とを設け、それぞれのセンサからの出力値を横加速度演算部45に送る構成となっている。
【0055】
横加速度演算部45においてはセンサ43及び44から得られた操舵角δ及び車両速度Vを用いて次式から横加速度Gyを演算する。
【0056】
【数3】

ここで、LHead:トラクタ100のホイールベース、Gr:操舵角δに対する前輪実舵角の比であり、予め横加速度演算部45に記憶させておく。
【0057】
5)トラクタ前輪サスロール剛性演算部:図10
トラクタ前輪サスロール剛性演算部5では、トラクタ100の前軸がエアサスペンションで構成されている車両について、図10(1)に示すように、トラクタ前軸の各輪におけるエアスプリング内圧を計測する圧力センサ51を備え、この計測した内圧を前軸ロール剛性推定演算部52に送る構成となっている。
【0058】
この前軸ロール剛性推定演算部52においては、送られたエアサス圧力を用いて予め記憶してあるエアスプリング内圧とエアスプリングばね定数の関係を示すマップを参照してエアスプリングのばね定数Kfspを算出する。このエアスプリングのばね定数Kfspからエアスプリングによるロール剛性Kφfspを次式から算出する。
【0059】
【数4】

ここで、dfsp:トラクタ前軸スプリングトレッドであり、予め推定演算部52に記憶させておく。このエアスプリングによるロール剛性Kφfspと予め記憶させている前軸サスペンションスタビライザのロール剛性Kφfstbとの和を前軸サスペンションのロール剛性KHfとして算出し、トレーラロール角推定部8に送る。
【0060】
KHf=Kφfsp+Kφfspb ・・・式(23)
なお、トラクタ前軸サスが金属ばねで構成されているなどでばね定数Kfspが一定と見做せる場合には、事前に前軸サスペンションのロール剛性KHfを求めて記憶しておき、常にその値をトレーラロール角推定部8に送るようにしてもよい(図10(2)参照。)。
【0061】
6)トラクタ後軸サスロール剛性演算部:図11
トラクタ後軸サスロール剛性演算部6では、トラクタ後軸がエアサスペンションで構成されている車両について、図11(1)に示すように、トラクタ後軸の各輪におけるエアスプリング内圧を計測する圧力センサ61を備え、この計測した内圧の計測値を後軸ロール剛性推定演算部62に送る構成となっている。この後軸ロール剛性推定演算部62においては、送られたエアサス圧力を用いて、予め記憶してあるエアスプリング内圧とエアスプリングばね定数の関係を示すマップを参照しエアスプリングのばね定数Krspを算出する。このエアスプリングのばね定数Krspからエアスプリングによるロール剛性Kφrspを次式から算出する。
【0062】
【数5】

ここで、drsp:トラクタ後軸スプリングトレッドであり、予め推定演算部62に記憶させておく。このエアスプリングによるロール剛性Kφrspと予め記憶させている後軸サスペンションスタビライザのロール剛性Kφrstbとの和を後軸サスペンションのロール剛性KHrとして算出し、トレーラロール角推定演算部に送る。
【0063】
KHr=Kφrsp+Kφrspb ・・・式(25)
なお、トラクタ後軸サスが金属ばねで構成されているなどでばね定数が一定と見做せる場合では、事前に後軸サスペンションのロール剛性KHrを求めて記憶させておき、常にその値をトレーラロール角推定部8に送るようにしてもよい(図11(2)参照。)。
【0064】
7)トレーラねじり剛性入力部
トレーラねじり剛性入力部7では、テンキー、ダイヤル、数種類の中からの選択スイッチなどにより、手動でトレーラのねじり剛性KTtorsionを入力する。
【0065】
なお、トレーラねじり剛性入力手段はこれに限らず、他の方法を用いてもよい。例えば、特開平6-144303号に開示されているようにトレーラに設置されトレーラの諸元が記憶されたメモリから読み取る方法や、代表的なトレーラねじり剛性値を予め記憶させておくなど各種の方法でトレーラねじり剛性を取得してもよい。このため、トレーラねじり剛性入力部7は点線で図示してある。
【0066】
8)トレーラロール角推定部:図12及び図13
トレーラロール角推定部8においては、図12に示すフローチャートに従いトレーラロール角の推定を行う。フローチャートの各ステップの処理内容は以下のとおりである。
【0067】
・ステップS1:キーSWがONであるとき、まずトラクタ後部ロール角検出部1からトラクタ後部ロール角RHrを取得する。
【0068】
・ステップS2:連結総重量推定部2から連結総重量の推定値Wtotalを取得する。
【0069】
・ステップS3:第5輪荷重推定部3から第5輪荷重の推定値Wfifthを取得する。
【0070】
・ステップS4:予め推定部8に記憶されているトラクタ100の既知の重量Wtractorと,
取得した連結総重量Wtotalから、積荷を含めたトレーラ重量Wtrailerを次式により演算する。
【0071】
Wtrailer=Wtotal−Wtractor ・・・式(26)
・ステップS5:式(26)により演算したトレーラ重量Wtrailerが非常に小さく、下記の式(27)が成り立つ場合、トレーラ300を連結していないと判定し、トレーラロール角推定演算を行わずにステップS10へ進む。
【0072】
Wtrailer<α(αはトレーラ空車重量より小さな正の定数) ・・・式(27)
なお、式(27)における判定にはトレーラ重量Wtrailerの代わりに、次式に示すように、第5輪荷重の推定値Wfifthを用いて次式で判定しても良い。
【0073】
Wfifth<β(βはトレーラ連結空車時の第5輪荷重より小さな正の定数)
・・・式(28)
・ステップS6:トレーラ重量Wtrailerは、次式に示すとおり第5輪荷重Wfifthとトレーラ軸荷重Wrrの和と考えることができる。
【0074】
Wtrailer =Wfifth+Wrr ・・・式(29)
ここで、前述の如く、連結軸−トレーラ重心間距離をLf、トレーラホイールベースをLtrailerとすると、力の釣り合いから次式が成り立つ。
【0075】
Lf・Wtrailer =Ltrailer・Wrr ・・・式(30)
連結軸−トレーラ重心間距離LfのトレーラホイールベースLtrailerに対する比率をLCGratioとすると、この比率LCGratioは、式(29)及び式(30)から、次式により得られる。
【0076】
【数6】

・ステップS7:
ステップS6で求めたLCGratio、トラクタ後部ロール角検出部1で求めたロール角RHr、横加速度検出部4で求めた横加速度Gy、トラクタ前軸サスロール剛性演算部5で求めた前軸サスロール剛性KHf、トラクタ後軸サスロール剛性演算部6で求めた後軸サスロール剛性KHr、トレーラねじり剛性入力部7から入力されたトレーラねじり剛性値KTtorsionを用いて次式からトレーラ300のロール角推定値RTCGを求める。
【0077】
【数7】

以下に、上記の各変数及びこの連結車両の諸元値を列挙する(一部は後述する。)。
【0078】
× RHf:トラクタ前部ロール角
〇 RHr:トラクタ後部ロール角
× RC:トラクタカプラー部ロール角
◎ LHead:トラクタホイールベース(=LHf+LHr)
◎ LHf:トラクタ前軸−連結軸間距離
◎ LHr:連結軸−トラクタ後軸間距離
〇 KHf:トラクタ前軸サスペンションのロール剛性
〇 KHr:トラクタ後軸サスペンションのロール剛性
◎ KHtorsion:トラクタ前部−後部間ねじり剛性
〇 KHtorsion_f:トラクタ前部−カプラー部ねじり剛性
〇 KHtorsion_r:カプラー部−トラクタ後部間ねじり剛性
◎ mH:トラクタばね上重量
△ mT:トレーラばね上質量
◎ hH:トラクタばね上重心のロール軸からの高さ
△ hT:トレーラばね上重心のロール軸からの高さ
〇 Gy:横加速度
〇 RTCG:トレーラ重心部ロール角
△ RTf:トレーラ前部ロール角
× RTr:トレーラ後部ロール角
× Ltrailer:トレーラホイールベース (=LTf+LTr)
× LTf:連結軸−トレーラ重心間距離
× LTr:トレーラ重心−トレーラ軸間距離
△ KT:トレーラ軸サスペンションのロール剛性
◎ KTtorsion:トレーラ前部−後部間ねじり剛性
〇 KTtorsion_f:トレーラ前部−トレーラ重心部ねじり剛性
〇 KTtorsion_r:トレーラ重心部−トレーラ後部間ねじり剛性
なお、付した記号はそれぞれ次の意味を含んでいる。
【0079】
◎:既知の車両諸元値で、予めトレーラロール角推定部に記憶されている値
〇:式又は他の手段によって導出されるもの
△:必要ないが便宜上記載したもの
×:計算の過程で消去されてしまうため、値として求めなくてもよいもの
また、通常、トラクタ100のねじり剛性KHtorsionはトレーラ300のねじり剛性KTtorsionよりも小さい値であるため、横加速度Gyに関する右辺第4項を省略して、下記の式(33)からトレーラロール角推定値RTCGを求めてもよい。この場合には、図5の構成例にあるトラクタ横加速度検出部4は省略してよい。
【0080】
【数8】


さらに、カプラー200はトラクタ100の後軸のほぼ真上に設置されていることから、トラクタカプラー部とトラクタ後部とを一体と考えることもできる。その場合、LHr=0(LHead=LHf)となるため、次式からトレーラロール角推定値RTCGを求めてもよい。
【0081】
【数9】

また、上記の式(32)と同様、横加速度Gyに関する項を省略して、次式からトレーラロール角推定値RTCGを求めてもよい。この場合も、図5の構成例にあるトラクタ横加速度検出部4は省略してよい。
【0082】
【数10】

・ステップS8:ステップS7で求めたトレーラロール角推定値RTCGをロール角出力値ROUTとする。
【0083】
・ステップS9:トラクタロール角値RHrをロール角出力値ROUTとする。
【0084】
式(32)及び式(34)の導出過程
ここで、上記の式(32)及び式(34)の導出過程を以下に説明する。
【0085】
今、図13に示すようにトラクタ100を前部101、カプラー部102、及び後部103、そしてトレーラ300を前部301、重心部302、及び後部303にそれぞれ前後方向に3つの剛体に分け、その3分割した剛体はロール方向に自由度の有るねじりばねで接続されているというモデルを考え、定常円旋回時などの定常時のロール方向のモーメントの釣り合いを考える。ここでは、トラクタ100のばね上質量mHはトラクタ前部101に、トレーラばね上質量mTはトレーラ重心部302に、それぞれ集中しているものとする。また、ロール方向に自由度のないカプラーを考えているため、トラクタカプラー部102とトレーラ前部301はロール方向には一体となって動くものとする。さらにトラクタ100とトレーラ300の連結角Ψがあることによってトラクタカプラー部102のロール角Rcとトレーラ前部301のロール角RTfの関係は、θTをトレーラ車体のピッチ角として下記の式(36)で表されるが、低速時を除けば連結角は小さく、ここでは連結角の影響を無視して下記の式(37)として検討する。
【0086】
RC=RTf・cos(Ψ)+θT・sin(Ψ) ・・・式(36)
【0087】
【数11】

トラクタカプラー部102とトラクタ100の前後を結ぶねじりばねのねじり剛性は、それぞれ次式のように表される。
【0088】
【数12】

【数13】

また、同様にトレーラ重心部とトレーラの前後を結ぶねじりばねのねじり剛性をそれぞれ次式のように表すことができる。
【0089】
【数14】

【数15】

定常状態のそれぞれの部位毎にロール方向のモーメントの釣り合いを考えると次のようになる。
【0090】
・トラクタ前部101:
定常状態にあるとき、トラクタばね上質量に働く横加速度によるロール角を増加させようとするモーメント(mH・Gy・hH)、サスペンションによるロール角を水平に保持しようとするモーメント(KHf・RHf)及びトラクタ前部101とトラクタカプラー部102のロール角差によるねじりモーメント(KHtorsion_f・(RHf-RC))が釣り合い状態にあるので次式が成り立つ。
【0091】
KHtorsion_f・(RHf-RC)+ KHf・RHf=mH・Gy・hH ・・・式(42)
・トラクタ後部103:
定常状態にあるとき、サスペンションによるロール角を水平に保持しようとするモーメント(KHr・RHr)及びトラクタ後部103とトラクタカプラー部102のロール角差によるねじりモーメント(KHtorsion_r・(RHr-RC))が釣り合い状態にあるので次式が成り立つ。
【0092】
KHtorsion_r・(RHr-RC)+ KHr・RHr=0 ・・・式(43)
・トラクタカプラー部102 (=トレーラ前部301):
定常状態にあるとき、トラクタ前部101とトラクタカプラー部102のロール角差によるねじりモーメント(KHtorsion_f・(RC-RHf))、トラクタ後部103とトラクタカプラー部102のロール角差によるねじりモーメント(KHtorsion_r・(RC-RHr))、及びトレーラ前部301とトレーラ重心部302のロール角差によるねじりモーメント(KTtorsion_f・(RC-RTCG))、が釣り合い状態にあるので次式が成り立つ。
【0093】
KHtorsion_f・(RC-RHf)+ KHtorsion_r・(RC-RHr)+ KTtorsion_f・(RC-RTCG)=0
・・・式(44)
・トレーラ重心部302:
定常状態にあるとき、トレーラばね上質量に働く横加速度によるロール角を増加さえようとするモーメント(mH・Gy・hH)、トレーラ前部301とトレーラ重心部302のロール角差によるねじりモーメント(KTtorsion_f・(RTCG-RC))、及びトレーラ後部303とトレーラ重心部302のロール角差によるねじりモーメント(KTtorsion_r・(RTCG-RTr))が釣り合い状態にあるので次式が成り立つ。
【0094】
KTtorsion_f・(RTCG-RC)+ KTtorsion_r・(RTCG-RTr)=mT・Gy・hT ・・・式(45)
・トレーラ後部303:
定常状態にあるとき、サスペンションによるロール角を水平に保持しようとするモーメント(KTr・RTr)、及びトレーラ後部303とトレーラ重心302のロール角差によるねじりモーメント(KTtorsion_r・(RTr-RTCG))が釣り合い状態にあるので次式が成り立つ。
【0095】
KT・RTr+KTtorsion_r・(RTr-RTCG)=0 ・・・式(46)
以上の式をトレーラ重心位置のロール角RTCGについてまとめると上記の式(32)が導出できる。
【0096】
また、カプラーはトラクタ後部103のほぼ真上に設置されていることから、トラクタカプラー部102とトラクタ後部103を一体と考えることもできる。その場合、LHr=0(LHead=LHf)となり、上記の式(34)が導出できる。
【0097】
9)横転危険判定部
横転危険判定部9では、トレーラロール角推定部8からのロール角出力値Routと横転危険判定しきい値Rthresholdとの関係が次式を満たす場合、横転危険性が高いと判定し、横転危険警報部10に横転危険信号を送る。
【0098】
|ROUT|> Rthreshold ・・・式(47)
10)横転危険警報部
横転危険警報部10では、横転危険信号を受け取った場合、運転者に警報ランプ、警報音などで警告する。
【0099】
なお、図14に示すように、横転危険警報部10の代わりに横転抑制制御部20を設け、横転危険信号を受け取った場合、車両のブレーキやエンジンをコントロールし、車両を減速させ横転を抑制させる構成としても良い。
【0100】
変形例:
上記のロール角をロール角速度或いはロール角加速度に置き換えることができ、その場合はそれぞれ、トレーラのロール角速度推定装置、トレーラのロール角加速度推定装置として動作せることができる。
【0101】
例えば上記の実施例において、トレーラ300のロール角速度推定装置とした場合、図6(1)の構成においてロール角演算部をロール角速度演算部に置き換え、ロール角速度演算部において、式(1)或いは式(2)で求めたロール角を微分することで、ロール角速度を求める。或いは、同図(2)の構成においてロールレートセンサの計測値をそのままトレーラロール角速度推定演算部に出力するようにし、他の構成部分でのロール角をロール角速度に置き換える。
【0102】
このようにすることでトレーラのロール角速度推定装置とすることができ、推定したトレーラのロール角速度を用いて、横転危険判定を行い、横転の危険性がある場合、警報を出す、或いは車両を減速制御し横転を抑制することができる。
【0103】
なお、本発明は、上記実施例によって限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づき、当業者によって種々の変更が可能なことは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】一般的なトラクタ及びトレーラから成る連結車両の概略側面図(トラクタ後軸1軸でトレーラ軸1軸の場合)である。
【図2】一般的なトラクタ及びトレーラから成る連結車両の概略側面図(トラクタ後軸1軸でトレーラ軸2軸の場合)である。
【図3】一般的なトラクタ及びトレーラから成る連結車両の概略側面図(トラクタ後軸2軸でトレーラ軸2軸の場合)である。
【図4】一般的なトラクタ及びトレーラから成る連結車両の概略側面図(トラクタ後軸2軸でトレーラ軸3軸の場合)である。
【図5】本発明に係る車両の横転防止装置の実施例の構成を示したブロック図である。
【図6】図5に示すトラクタ後部ロール角検出部の構造を概略的に示した図である。
【図7】図5に示す連結総重量推定部の構成を示したブロック図である。
【図8】図5に示す第5輪荷重推定部の構成を示したブロック図である。
【図9】図5に示すトラクタ横加速度検出部の構成を示したブロック図である。
【図10】図5に示すトラクタ前軸サスロール剛性演算部の構成を示したブロック図である。
【図11】図5に示すトラクタ後軸サスロール剛性演算部の構成を示したブロック図である。
【図12】図5に示すトレーラロール角推定部の演算フローチャート図である。
【図13】連結車両のロール運動をモデル化した図である。
【図14】本発明の変形例を示したブロック図である。
【図15】実車走行試験(ステップ操舵)時のトラクタ及びトレーラのロール角特性を示したグラフ図である。
【符号の説明】
【0105】
1 トラクタ後部ロール角検出部
2 連結総重量推定部
3 第5輪荷重推定部
4 トラクタ横加速度検出部
5 トラクタ前輪サスロール剛性演算部
6 トラクタ後輪サスロール剛性演算部
7 トレーラねじり剛性入力部
8 トレーラロール角推定部
9 横転危険判定部
10 横転危険警報部
11,12 リアサスペンション
13,14 サスペンションストロークセンサ
15 ロール角演算部
16 ロールレートセンサ
20 横転抑制制御部
21 アクセル開度センサ
22 エンジン回転数センサ
23 車両前後加速度センサ
24,27 演算部
25 トラクタ各輪ブレーキ圧力センサ
26 トレーラブレーキ圧力センサ
31 トラクタ各輪エアサス圧力センサ
32,34 演算部
33 トラクタ各輪エアサスストロークセンサ
41 トラクタ横加速度センサ
42 信号処理部
43 操舵角センサ
44 車両速度センサ
45 トラクタ横加速度演算部
51 トラクタ前軸各輪エアサス圧力センサ
52 前軸ロール剛性推定演算部
53 トラクタ前軸サスロール剛性
61 トラクタ後軸各輪エアサス圧力センサ
62 後軸ロール剛性推定演算部
63 トラクタ後軸サスロール剛性
100 トラクタ
200 カプラー
300 トレーラ
CG トレーラ重心
図中、同一符号は同一又は相当部分を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラクタとトレーラから成る車両の横転防止装置であって、
該トラクタの後部ロール角を検出するトラクタ後部ロール角検出手段と、
該トラクタ及び該トレーラの連結総重量を推定する連結総重量推定手段と、
該トラクタ及び該トレーラを連結するカプラーが受ける荷重を推定する荷重推定手段と、
該トラクタの前軸サスペンションのロール剛性を演算するトラクタ前軸サスロール剛性演算部と、
該トラクタの後軸サスペンションのロール剛性を演算するトラクタ後軸サスロール剛性演算部と、
該トラクタ後部ロール角と該連結総重量と該荷重と該前軸サスペンションのロール剛性と該後軸サスペンションのロール剛性と該トレーラの所定のねじり剛性とに基づき、該トレーラのロール角を推定するトレーラロール角推定手段と、
を備えたことを特徴とする車両の横転防止装置。
【請求項2】
請求項1において、
該トレーラの所定のねじり剛性が、トレーラねじり剛性入力部から与えられるか、又は予め該トレーラロール角推定手段に記憶されていることを特徴とした車両の横転防止装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、
該トレーラロール角推定手段が、該連結総重量と既知のトラクタ重量からトレーラ重量を求め、該トレーラ重量と該荷重からトレーラホイールベースに対する連結軸−トレーラ前後重心間距離の比率を算出し、該比率と該トラクタ後部ロール角と両サスロール剛性と該トレーラねじり剛性、並びに既知のトラクタねじり剛性とに基づき該トレーラロール角を演算することを特徴とした車両の横転防止装置。
【請求項4】
請求項1又は2において、
該トレーラロール角推定手段が、該連結総重量と既知のトラクタ重量からトレーラ重量を求め、該トレーラ重量と該荷重からトレーラホイールベースに対する連結軸−トレーラ前後重心間距離の比率を算出し、該比率と該トラクタ後部ロール角と両サスロール剛性と該トレーラねじり剛性、並びに既知のトラクタホイールベースとトラクタ前軸−連結軸間距離と連結軸−トレーラ後軸間距離とトラクタねじり剛性とに基づき該トレーラロール角を演算することを特徴とした車両の横転防止装置。
【請求項5】
請求項3又は4において、
該トラクタの横加速度を検出する横加速度検出手段をさらに備え、該トラクタロール角の演算に該横加速度並びに既知のトラクタばね上重量とトラクタばね上重心のロール軸からの高さとを加えることを特徴とした車両の横転防止装置。
【請求項6】
請求項3から5のいずれか1つにおいて、
該トレーラホイールベースが、連結軸の位置から単数トレーラ軸の位置又は複数トレーラ軸の中間位置までの距離であることを特徴とした車両の横転防止装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1つにおいて、
該トレーラロール角に基づいて横転危険判定する手段と、この判定結果に基づいて警報を発する手段と、をさらに備えたことを特徴とする車両の横転防止装置。
【請求項8】
請求項1から6のいずれか1つにおいて、
該トレーラロール角に基づいて横転危険判定する手段と、この判定結果に基づいて横転抑制制御を行う手段と、をさらに備えたことを特徴とする車両の横転防止装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1つにおいて、
該ロール角の代わりに、ロール角速度又はロール角加速度を用いることを特徴とした車両の横転防止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2008−302865(P2008−302865A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−153221(P2007−153221)
【出願日】平成19年6月8日(2007.6.8)
【特許番号】特許第4169082号(P4169082)
【特許公報発行日】平成20年10月22日(2008.10.22)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【Fターム(参考)】