説明

車両の駆動制御装置

【課題】ハイブリッド車両の駆動制御装置において、蓄電装置の充放電の制限している際に、より適切に変速を行うことを可能とする。
【解決手段】相互に差動回転可能な複数の要素を有する自動変速部20と、車両の走行状態に基づいて、変速機構の一のギヤ段から一のギヤ段と異なる他のギヤ段へ変速する際の組み合わせである第1変速パターンを決定する決定手段と、電力の供給又は前記電力の充電が制限される場合、決定された第1変速パターンから、第1変速パターンと比較して変速段数が少ない第2変速パターンへ変更するように変速機構を制御する制御手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばハイブリッド車両等の差動作用が作動可能な差動機構を有する電気式差動部と、その電気式差動部から駆動輪への動力伝達経路に設けられた変速部とを備える車両の駆動制御装置の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の車両の駆動制御装置として、例えば特許文献1等では、変速の際に、電力の充電が制限される場合、所謂、入力制限WINの場合、又は、電力の供給が制限される場合、所謂、出力制限WOUTの場合、無段変速部の変速速度に有段変速部の変速速度を合わせる技術に関して開示されている。
【0003】
また、この種の車両の駆動制御装置として、例えば特許文献2等では、変速の際に、蓄電池における電力収支が適切になるようにエンジン回転数の変化を抑制する技術に関して開示されている。
【0004】
また、この種の車両の駆動制御装置として、例えば特許文献3等では、変速の際に、有段変速部に入力されるトルクを低下させる技術に関して開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−118727号公報
【特許文献2】特開2007−118698号公報
【特許文献3】特開2006−017033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した特許文献1又は2等によれば、例えば無段変速部及び有段変速部の回転速度を夫々算出し、無段変速部と有段変速部との係合圧を変化させて両者を同期させるなどの複雑な制御が行われるため、演算負荷が高まり制御処理に遅延が生じてしまい、ひいては、蓄電池と電動機との間での電力授受のバランスが崩れ、蓄電池の耐久性が低下する可能性が高くなってしまうという技術的な問題点が生じる。
【0007】
そこで、本発明は、例えば上記の問題点に鑑みなされたものであり、例えばハイブリッド車両において、蓄電装置の充放電の制限さている際に、より適切に変速を行うことが可能な車両の駆動制御装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る車両の駆動制御装置は、第1回転電機と、相互に差動回転可能な3つの分配要素を持ちこれらのうちのいずれか2つの分配要素の一方に内燃機関が他方に前記第1回転電機が夫々連結された動力分配機構と、前記動力分配機構の残りの分配要素に連結された前記第2回転電機と、前記動力分配機構の残りの分配要素に連結された伝達部材と、前記第1回転電機若しくは前記第2回転電機への電力の供給又は前記第1回転電機若しくは前記第2回転電機が発電する電力の充電を行う蓄電装置と、車両の駆動輪に動力を出力するための出力部材と、前記伝達部材から前記出力部材までの動力伝達経路に設けられると共に、相互に差動回転可能な複数の要素を有する変速機構と、前記車両の走行状態に基づいて、前記変速機構の一のギヤ段から前記一のギヤ段と異なる他のギヤ段へ変速する際の組み合わせである第1変速パターンを決定する決定手段と、前記電力の供給又は前記電力の充電が制限される場合、前記決定された第1変速パターンから、前記第1変速パターンと比較して変速段数が少ない第2変速パターンへ変更する(例えば「第3速ギヤ段から第1速ギヤ段への変速」を「第3速ギヤ段から第2速ギヤ段への変速」に変更する)ように前記変速機構を制御する制御手段とを備える。
【0009】
ここに、本発明に係る変速機構は、伝達部材から出力部材までの動力伝達経路に設けられると共に、相互に差動回転可能な複数の要素を有する機構を意味する。典型的には、本発明に係る変速機構は、伝達部材の回転速度と出力部材の回転速度との比を変化させる有段変速装置等の変速装置を意味する。
【0010】
例えばメモリやプロセッサ等を備えて構成される決定手段によって、車両の走行状態に基づいて、変速機構の一のギヤ段から、一のギヤ段と異なる他のギヤ段へ変速する際の組み合わせである第1変速パターンが決定される。ここに、本発明に係る「変速パターン」は、一のギヤ段から一のギヤ段と異なる他のギヤ段へ変速する際の組み合わせを意味する。典型的には、第3速ギヤ段から第1速ギヤ段へのダウンシフト変速、第3速ギヤ段から第2速ギヤ段へのダウンシフト変速、第2速ギヤ段から第3速ギヤ段へのアップシフト変速などの、第1速ギヤ段、第2速ギヤ段、及び、第3速ギヤ段のうちの異なる2つを選択する際の組み合わせを例示することができる。また、本発明に係る「第1変速パターン」とは、車両の走行状態に基づいて決定された変速パターンを意味する。また、走行状態とは、車両に要求される目標速度、目標加速度、目標駆動力、又は目標駆動パワー等の車両の走行に関する定量的若しくは定性的な状態を意味する。
【0011】
例えばメモリやプロセッサ等を備えて構成される制御手段は、電力の供給又は電力の充電が制限される場合、決定された第1変速パターンから、第1変速パターンと比較して変速段数が少ない第2変速パターンへ変更するように変速機構を制御する。ここに、本発明に係る「変速段数」とは、一のギヤ段から他のギヤ段へ変速する際に経由するギヤ段の個数に基づいて決定される数を意味する。典型的には、変速段数は、一のギヤ段から他のギヤ段へ変速する際に経由するギヤ段の個数に1を加算した数を意味してよい。より典型的には、第3速ギヤ段から第1速ギヤ段へのダウンシフト変速における変速段数は、2である。何故ならば、第3速ギヤ段から第1速ギヤ段へのダウンシフト変速の際には、第2速ギヤ段を1個だけ経由するので、この1個に1を加算することにより、変速段数として2が得られるからである。
【0012】
従って、第1変速パターンから第2変速パターンへ変更するとは、例えば、第3速ギヤ段から第1速ギヤ段へのダウンシフト変速であり、変速段数が2である第1変速パターンを、第3速ギヤ段から第2速ギヤ段へのダウンシフト変速であり、変速段数が1である第2変速パターンに変更することを意味する。
【0013】
仮に、蓄電装置において電力の供給又は電力の充電が制限される際に、例えば、内燃機関、第1回転電機、第2回転電機、及び動力分配機構によって構成される無段変速装置における回転速度と、例えば有段変速装置等の変速機構における回転速度とを近付けるなどのハイブリッド車両における各種の制御処理によって、第1回転電機と蓄電装置との間で授受される電力、或いは、第2回転電機と蓄電装置との間で授受される電力を許容範囲内にさせる場合、次のような技術的な問題点が生じる。即ち、このようなハイブリッド車両における制御処理においては、演算負荷が高くなってしまい制御処理に遅延が生じてしまい、第1回転電機と蓄電装置との間で授受される電力と、第2回転電機と蓄電装置との間で授受される電力との授受バランスを適切にさせることが技術的に困難になってしまうという問題点が生じる。
【0014】
これに対して、本発明によれば、制御手段は、蓄電装置において電力の供給又は電力の充電が制限される場合、第1変速パターンから、第1変速パターンと比較して変速段数が少ない第2変速パターンへ変更するように変速機構を制御する。
【0015】
このような変速機構における変速パターンの簡便な変更を行うことにより、制御処理における演算負荷を高くさせることを抑制しつつ、電力の供給又は電力の充電における制限に迅速に応答することが可能である。典型的には、第1回転電機と蓄電装置との間で授受される電力の急激な変化、或いは、第2回転電機と蓄電装置との間で授受される電力の急激な変化に迅速に応答することが可能である。
【0016】
典型的には、変速機構のダウンシフト変速により、伝達部材と変速機構とを接続する回転軸、即ち、変速機構の入力軸の回転速度が上昇する。変更された第2変速パターンにおける変速段数の減少に伴う制御負荷の減少によって、この上昇に伴って、第1回転電機の回転速度が過渡に低下することに迅速且つ確実に応答することができる。これにより、蓄電装置の充放電が制限された状態の下で、第1回転電機の回転速度が許容回転速度(即ち、負側の許容回転速度)を下回ることを効果的に抑制することができる。
【0017】
或いは、これにより、典型的には、変速機構のダウンシフト変速により、伝達部材と変速機構とを接続する回転軸、即ち、変速機構の入力軸の回転速度が上昇する。変更された第2変速パターンにおける変速段数の減少に伴う制御負荷の減少によって、この上昇に伴って、第2回転電機の回転速度が過渡に上昇することに迅速且つ確実に応答することができる。これにより、蓄電装置の充放電が制限された状態の下で、第2回転電機の回転速度が許容回転速度(即ち、正側の許容回転速度)を超えたり、第2回転電機の回転速度が高回転域に停滞し続けたりすることを効果的に抑制することができる。
【0018】
或いは、これにより、典型的には、変速機構のアップシフト変速により、伝達部材と変速機構とを接続する回転軸、即ち、変速機構の入力軸の回転速度が低下する。変更された第2変速パターンにおける変速段数の減少に伴う制御負荷の減少によって、この低下に伴って、第1回転電機の回転速度が過渡に上昇することに迅速且つ確実に応答することができる。これにより、蓄電装置の充放電が制限された状態の下で、第1回転電機の回転速度が許容回転速度(即ち、正側の許容回転速度)を超えることを効果的に抑制することができる。
【0019】
以上より、蓄電装置において電力の供給又は電力の充電が制限された状態の下で、変速が行われた場合においても、変速機構における変速パターンの簡便な変更を行うことにより、第1回転電機の回転速度を許容回転速度の範囲内に迅速且つ確実にさせ、第1回転電機の駆動又は発電において、第1回転電機と蓄電装置との間で授受される電力を迅速且つ確実に低減することができる。概ね同様にして、蓄電装置において電力の供給又は電力の充電が制限された状態の下で、変速が行われた場合においても、第2回転電機の回転速度を許容回転速度の範囲内に迅速且つ確実にさせ、第2回転電機の駆動又は発電において、第2回転電機と蓄電装置との間で授受される電力を迅速且つ確実に低減することができる。
【0020】
この結果、第1回転電機と蓄電装置との間で授受される電力と、第2回転電機と蓄電装置との間で授受される電力との間の適切な授受バランスを、迅速に実現することができる。
【0021】
以上の結果、電力の供給又は電力の充電における確実な制限と、蓄電装置の耐久性における効果的な向上との両立を実現可能である。
【0022】
本発明に係る車両の駆動制御装置の一の態様では、前記制御手段は、前記電力の供給又は前記電力の充電が制限され、且つ、前記決定された第1変速パターンの変速段数が2段以上である場合、前記第1変速パターンによる変速を禁止し、前記第2変速パターンへ変更するように前記変速機構を制御する。
【0023】
この態様によれば、変速機構の入力軸の回転速度の急激な変化を抑制することが可能であり、ひいては、第1回転電機の回転速度の急激な変化、或いは、第2回転電機の回転速度の急激な変化を適切に抑制することができる。これにより、第1回転電機と蓄電装置との間で授受される電力の変化を緩慢にさせることができる。或いは、第2回転電機と蓄電装置との間で授受される電力の変化を緩慢にさせることができる。
【0024】
本発明に係る車両の駆動制御装置の他の態様では、前記制御手段は、前記電力の供給又は前記電力の充電が制限され、且つ、前記第1変速パターンの変速段数が2段以上である場合、1段ずつ変速するように前記変速機構を制御する。
【0025】
この態様によれば、変速機構による変速の進行を遅くさせることができるので、第1回転電機と蓄電装置との間で授受される電力の変化を緩慢にさせることができる。或いは、第2回転電機と蓄電装置との間で授受される電力の変化を緩慢にさせることができる。
【0026】
本発明に係る車両の駆動制御装置の他の態様では、前記制御手段は、前記第1変速パターンから前記第2変速パターンへ変更するように前記変速機構を制御することに加えて、前記伝達部材から前記変速機構へ伝達されるトルクを低減するように前記内燃機関の駆動状態及び/または前記第1回転電機の回転状態、及び/または前記第2回転電機の回転状態を制御する。
【0027】
この態様によれば、伝達部材から変速機構へ伝達されるトルクの低減に伴って、変速機構内の各要素間で伝達される力を減少させることができる。この結果、変速の際に発生する衝撃力が大きくなることを効果的に抑制することができるので、変速機構内の各要素の摩擦材の耐久性を効果的に向上させることが可能である。
【0028】
本発明に係る車両の駆動制御装置の他の態様では、前記制御手段は、前記電力の供給が制限される場合として前記蓄電装置の充電容量(所謂、SOC(State Of Charge))に基づく電力の供給量が所定範囲外である場合、前記第1変速パターンから前記第2変速パターンへ変更するように前記変速機構を制御する。
【0029】
この態様によれば、蓄電装置の充電容量に応じて、電力の供給が制限される場合(所謂、出力制限WOUTの場合)を高精度に特定し、ダウンシフト変速である第1変速パターンから第2変速パターンに適切に切り替えることができる。
【0030】
本発明に係る車両の駆動制御装置の他の態様では、前記制御手段は、前記電力の充電が制限される場合として前記蓄電装置の充電容量(所謂、SOC(State Of Charge))に基づく電力の充電量が所定範囲外である場合、前記第1変速パターンから前記第2変速パターンへ変更するように前記変速機構を制御する。
【0031】
この態様によれば、蓄電装置の充電容量に応じて、電力の充電が制限される場合(所謂、入力制限WINの場合)を高精度に特定し、アップシフト変速である第1変速パターンから第2変速パターンに適切に切り替えることができる。
【0032】
本発明に係る車両の駆動制御装置の他の態様では、前記制御手段は、前記電力の供給又は前記電力の充電が制限され、且つ、前記決定された第1変速パターンがダウンシフト変速パターンである場合、前記第1変速パターンから前記第2変速パターンへ変更するように前記変速機構を制御する。
【0033】
この態様によれば、電力の供給を確実に制限することができ、蓄電装置の耐久性を効果的に向上させることができる。
【0034】
本発明に係る車両の駆動制御装置の他の態様では、前記制御手段は、前記電力の供給又は前記電力の充電が制限される場合、且つ、前記内燃機関の出力パワーが所定値を超える場合、前記第1変速パターンから前記第2変速パターンへ変更するように前記変速機構を制御する。
【0035】
ここに、本発明に係る所定値とは、典型的には、車両が高速道路を走行する際に必要な出力パワーを意味してよい。
【0036】
この態様によれば、例えば車両が高速走行している場合において、変速機構の変速により、伝達部材と変速機構とを接続する回転軸の回転速度が顕著に変化するに伴って、第1回転電機の回転速度又は第2回転電機の回転速度が過渡に変化することを、変更された第2変速パターンにおける変速段数の減少に伴う制御負荷の減少によって、効果的に抑制することができるので、実践上、大変有益である。
【0037】
本発明に係る車両の駆動制御装置の他の態様では、前記制御手段は、前記第2変速パターンへの変更として、変速を禁止するように前記変速機構を制御する。
【0038】
この態様によれば、変速機構の入力軸の回転速度の急激な変化を無くすことが可能であり、ひいては、第1回転電機の回転速度の急激な変化、或いは、第2回転電機の回転速度の急激な変化を無くすことができる。これにより、第1回転電機と蓄電装置との間で授受される電力を変化させなくすることができる。或いは、第2回転電機と蓄電装置との間で授受される電力を変化させなくすることができる。
【0039】
本発明に係る車両の駆動制御装置の他の態様では、前記制御手段は、前記第2変速パターンへの変更として、変速を遅延するように前記変速機構を制御する。
【0040】
この態様によれば、変速機構による変速を遅延させ、第1回転電機と蓄電装置との間で授受される電力の変化を緩慢にさせることができる。或いは、第2回転電機と蓄電装置との間で授受される電力の変化を緩慢にさせることができる。
【0041】
本発明のこのような作用及び他の利得は次に説明する実施形態から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の実施形態に係るハイブリッド車両の駆動装置における変速機構10の基本構成を示したブロック図である。
【図2】本発明の実施形態に係るハイブリッド車両の駆動装置における変速作動に用いられる油圧式摩擦係合装置の作動の組み合わせを説明する表である。
【図3】本発明の実施形態に係るハイブリッド車両の駆動装置における各ギヤ段の相対的回転速度を説明する共線図である。
【図4】本発明の実施形態に係るハイブリッド車両の駆動装置に設けられた電子制御装置の入出力信号を説明する図である。
【図5】本発明の実施形態に係る油圧制御回路のうちクラッチCおよびブレーキBの各油圧アクチュエータの作動を制御するリニアソレノイドバルブに関する回路図である。
【図6】本発明の実施形態に係るシフトレバーを備えた複数種類のシフトポジションを選択するために操作されるシフト操作装置の一例である。
【図7】本発明の実施形態に係る電子制御装置の制御作動の要部を説明する機能ブロック線図である。
【図8】本発明の実施形態に係るハイブリッド車両の駆動装置の変速制御において用いられる変速マップの一例と、エンジン走行とモータ走行とを切り換える駆動力源切換制御において用いられる駆動力源マップの一例と、それらの関係を示すグラフである。
【図9】本発明の実施形態に係るエンジンの最適燃費率曲線を含む燃費マップの一例を示すグラフである。
【図10】本発明の実施形態に係る車両の駆動制御装置における動作の流れを示したフローチャートである。
【図11】本発明の実施形態に係る蓄電装置温度と入出力制限との予め実験的に求められて定められた入出力制限マップの一例を示す図である。
【図12】本発明の実施形態に係る充電容量と入出力制限の補正係数との予め実験的に求められて定められた入出力制限用補正係数マップの一例を示す図である。
【図13】本発明の実施形態に係る電動機温度と電動機出力(駆動/発電)との予め実験的に求められて定められた電動機出力マップの一例を示す図である。
【図14】本発明の実施形態に係る車両の駆動制御装置における動作タイミングを示したタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0044】
(変速機構の基本構成)
図1は、本発明の実施形態に係るハイブリッド車両の駆動装置における変速機構10の基本構成を示したブロック図である。図1において、変速機構10は車体に取り付けられる非回転部材としてのトランスミッションケース12(以下、ケース12という)内において共通の軸心上に配設された入力回転部材としての入力軸14と、この入力軸14に直接に或いは図示しない脈動吸収ダンパー(振動減衰装置)などを介して間接に連結された無段変速部としての差動部11と、その差動部11と駆動輪34(図7参照)との間の動力伝達経路で伝達部材(伝動軸)18を介して直列に連結されている動力伝達部としての自動変速部20と、この自動変速部20に連結されている出力回転部材としての出力軸22とを直列に備えている。この変速機構10は、例えば車両において縦置きされるFR(フロントエンジン・リヤドライブ)型車両に好適に用いられるものであり、入力軸14に直接に或いは図示しない脈動吸収ダンパーを介して直接的に連結された走行用の駆動力源として例えばガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関であるエンジン8と一対の駆動輪34との間に設けられて、エンジン8からの動力を動力伝達経路の一部を構成する差動歯車装置(終減速機)32(図7参照)および一対の車軸等を順次介して一対の駆動輪34へ伝達する。尚、変速機構10は、後述される電子制御装置80を備え、当該電子制御装置80の制御下で、動作する。また、本発明に係る「変速機構」の一例が、自動変速部20を含む変速機構10によって構成されている。また、本発明に係る「出力部材」の一例が出力軸22によって構成されている。
【0045】
このように、本実施形態の変速機構10においてはエンジン8と差動部11とは直結されている。この直結にはトルクコンバータやフルードカップリング等の流体式伝動装置を介することなく連結されているということであり、例えば上記脈動吸収ダンパーなどを介する連結はこの直結に含まれる。なお、変速機構10はその軸心に対して対称的に構成されているため、図1の骨子図においてはその下側が省略されている。以下の各実施形態についても同様である。
【0046】
差動部11は、(i)第1電動機M1と、(ii)入力軸14に入力されたエンジン8の出力を機械的に分配する機械的機構であってエンジン8の出力を第1電動機M1および伝達部材18に分配する差動機構としての動力分配機構16と、(iii)伝達部材18と一体的に回転するように作動的に連結されている第2電動機M2とを備えている。本実施形態の第1電動機M1および第2電動機M2は発電機能をも有する所謂モータジェネレータであるが、第1電動機M1は反力を発生させるためのジェネレータ(発電)機能を少なくとも備え、第2電動機M2は走行用の駆動力源として駆動力を出力するためのモータ(電動機)機能を少なくとも備える。尚、本発明に係る「第1回転電機」の一例が第1電動機M1によって構成されている。また、本発明に係る「第2回転電機」の一例が第2電動機M2によって構成されている。また、本発明に係る「動力分配機構」の一例が動力分配機構16によって構成されている。また、本発明に係る「伝達部材」の一例が伝達部材18によって構成されている。
【0047】
動力分配機構16は、例えば「0.418」程度の所定のギヤ比ρ1を有するシングルピニオン型の第1遊星歯車装置24を主体として構成されている。この第1遊星歯車装置24は、第1サンギヤS1、第1遊星歯車P1、その第1遊星歯車P1を自転および公転可能に支持する第1キャリヤCA1、第1遊星歯車P1を介して第1サンギヤS1と噛み合う第1リングギヤR1を回転要素(即ち、要素)として備えている。第1サンギヤS1の歯数をZS1、第1リングギヤR1の歯数をZR1とすると、上記ギヤ比ρ1はZS1/ZR1である。
【0048】
この動力分配機構16においては、第1キャリヤCA1は入力軸14すなわちエンジン8に連結され、第1サンギヤS1は第1電動機M1に連結され、第1リングギヤR1は伝達部材18に連結されている。このように構成された動力分配機構16は、第1遊星歯車装置24の3要素である第1サンギヤS1、第1キャリヤCA1、第1リングギヤR1がそれぞれ相互に相対回転可能とされて差動作用が作動可能なすなわち差動作用が働く差動状態とされることから、エンジン8の出力が第1電動機M1と伝達部材18とに分配されるとともに、分配されたエンジン8の出力の一部で第1電動機M1から発生させられた電気エネルギで蓄電されたり第2電動機M2が回転駆動されるので、差動部11(即ち、動力分配機構16)は電気的な差動装置として機能させられて例えば差動部11は所謂無段変速状態(即ち、電気的CVT状態)とされて、エンジン8の所定回転に拘わらず伝達部材18の回転が連続的に変化させられる。すなわち、差動部11はその変速比γ0(即ち、入力軸14の回転速度NIN/伝達部材18の回転速度N18)が最小値γ0minから最大値γ0maxまで連続的に変化させられる電気的な無段変速機として機能する電気式差動部である。
【0049】
自動変速部20は、シングルピニオン型の第2遊星歯車装置26、シングルピニオン型の第3遊星歯車装置28、およびシングルピニオン型の第4遊星歯車装置30を備え、有段式の自動変速機として機能する遊星歯車式の多段変速機である。第2遊星歯車装置26は、第2サンギヤS2、第2遊星歯車P2、その第2遊星歯車P2を自転および公転可能に支持する第2キャリヤCA2、第2遊星歯車P2を介して第2サンギヤS2と噛み合う第2リングギヤR2を備えており、例えば「0.562」程度の所定のギヤ比ρ2を有している。第3遊星歯車装置28は、第3サンギヤS3、第3遊星歯車P3、その第3遊星歯車P3を自転および公転可能に支持する第3キャリヤCA3、第3遊星歯車P3を介して第3サンギヤS3と噛み合う第3リングギヤR3を備えており、例えば「0.425」程度の所定のギヤ比ρ3を有している。第4遊星歯車装置30は、第4サンギヤS4、第4遊星歯車P4、その第4遊星歯車P4を自転および公転可能に支持する第4キャリヤCA4、第4遊星歯車P4を介して第4サンギヤS4と噛み合う第4リングギヤR4を備えており、例えば「0.421」程度の所定のギヤ比ρ4を有している。第2サンギヤS2の歯数をZS2、第2リングギヤR2の歯数をZR2、第3サンギヤS3の歯数をZS3、第3リングギヤR3の歯数をZR3、第4サンギヤS4の歯数をZS4、第4リングギヤR4の歯数をZR4とすると、上記ギヤ比ρ2はZS2/ZR2、上記ギヤ比ρ3はZS3/ZR3、上記ギヤ比ρ4はZS4/ZR4である。
【0050】
自動変速部20では、第2サンギヤS2と第3サンギヤS3とが一体的に連結されて第2クラッチC2を介して伝達部材18に選択的に連結されるとともに第1ブレーキB1を介してケース12に選択的に連結され、第2キャリヤCA2は第2ブレーキB2を介してケース12に選択的に連結され、第4リングギヤR4は第3ブレーキB3を介してケース12に選択的に連結され、第2リングギヤR2と第3キャリヤCA3と第4キャリヤCA4とが一体的に連結されて出力軸22に連結され、第3リングギヤR3と第4サンギヤS4とが一体的に連結されて第1クラッチC1を介して伝達部材18に選択的に連結されている。
【0051】
このように、自動変速部20内と差動部11(伝達部材18)とは自動変速部20の各ギヤ段(即ち、変速段)を成立させるために用いられる第1クラッチC1または第2クラッチC2を介して選択的に連結されている。言い換えれば、第1クラッチC1および第2クラッチC2は、伝達部材18と自動変速部20との間の動力伝達経路すなわち差動部11(即ち、伝達部材18)から駆動輪34への動力伝達経路を、その動力伝達経路の動力伝達を可能とする動力伝達可能状態と、その動力伝達経路の動力伝達を遮断する動力伝達遮断状態とに選択的に切り換える係合装置として機能している。つまり、第1クラッチC1および第2クラッチC2の少なくとの一方が係合されることで上記動力伝達経路が動力伝達可能状態とされ、或いは第1クラッチC1および第2クラッチC2が解放されることで上記動力伝達経路が動力伝達遮断状態とされる。
【0052】
また、この自動変速部20は、解放側係合装置の解放と係合側係合装置の係合とによりクラッチツウクラッチ変速が実行されて各ギヤ段が選択的に成立させられることにより、略等比的に変化する変速比γ(=伝達部材18の回転速度N18/出力軸22の回転速度NOUT)が各ギヤ段毎に得られる。
【0053】
図2は、図1の駆動装置の変速作動に用いられる油圧式摩擦係合装置の作動の組み合わせを説明する作動図表である。例えば、図2の係合作動表に示されるように、第1クラッチC1および第3ブレーキB3の係合により変速比γ1が最大値例えば「3.357」程度である第1速ギヤ段が成立させられ、第1クラッチC1および第2ブレーキB2の係合により変速比γ2が第1速ギヤ段よりも小さい値例えば「2.180」程度である第2速ギヤ段が成立させられ、第1クラッチC1および第1ブレーキB1の係合により変速比γ3が第2速ギヤ段よりも小さい値例えば「1.424」程度である第3速ギヤ段が成立させられ、第1クラッチC1および第2クラッチC2の係合により変速比γ4が第3速ギヤ段よりも小さい値例えば「1.000」程度である第4速ギヤ段が成立させられる。また、第2クラッチC2および第3ブレーキB3の係合により変速比γRが第1速ギヤ段と第2速ギヤ段との間の値例えば「3.209」程度である後進ギヤ段(後進変速段)が成立させられる。また、第1クラッチC1、第2クラッチC2、第1ブレーキB1、第2ブレーキB2、および第3ブレーキB3の解放によりニュートラル「N」状態とされる。
【0054】
前記第1クラッチC1、第2クラッチC2、第1ブレーキB1、第2ブレーキB2、および第3ブレーキB3(以下、特に区別しない場合はクラッチC、ブレーキBと表す)は、従来の車両用自動変速機においてよく用いられている係合要素としての油圧式摩擦係合装置であって、互いに重ねられた複数枚の摩擦板が油圧アクチュエータにより押圧される湿式多板型や、回転するドラムの外周面に巻き付けられた1本または2本のバンドの一端が油圧アクチュエータによって引き締められるバンドブレーキなどにより構成され、それが介挿されている両側の部材を選択的に連結するためのものである。
【0055】
以上のように構成された変速機構10において、無段変速機として機能する差動部11と自動変速部20とで全体として無段変速機が構成される。また、差動部11の変速比を一定となるように制御することにより、差動部11と自動変速部20とで有段変速機と同等の状態を構成することが可能とされる。
【0056】
具体的には、差動部11が無段変速機として機能し、且つ差動部11に直列の自動変速部20が有段変速機として機能することにより、自動変速部20の少なくとも1つの変速段Mに対して自動変速部20に入力される回転速度(以下、自動変速部20の入力回転速度)すなわち伝達部材18の回転速度(以下、伝達部材回転速度N18)が無段的に変化させられてその変速段Mにおいて無段的な変速比幅が得られる。したがって、変速機構10の総合変速比γT(=入力軸14の回転速度NIN/出力軸22の回転速度NOUT)が無段階に得られ、変速機構10において無段変速機が構成される。この変速機構10の総合変速比γTは、差動部11の変速比γ0と自動変速部20の変速比γとに基づいて形成される変速機構10全体としてのトータル変速比γTである。
【0057】
例えば、図2の係合作動表に示される自動変速部20の第1速ギヤ段乃至第4速ギヤ段や後進ギヤ段の各ギヤ段に対し伝達部材回転速度N18が無段的に変化させられて各ギヤ段は無段的な変速比幅が得られる。したがって、その各ギヤ段の間が無段的に連続変化可能な変速比となって、変速機構10全体としてのトータル変速比γTが無段階に得られる。
【0058】
また、差動部11の変速比が一定となるように制御され、且つクラッチCおよびブレーキBが選択的に係合作動させられて第1速ギヤ段乃至第4速ギヤ段のいずれか或いは後進ギヤ段(後進変速段)が選択的に成立させられることにより、略等比的に変化する変速機構10のトータル変速比γTが各ギヤ段毎に得られる。したがって、変速機構10において有段変速機と同等の状態が構成される。
【0059】
例えば、差動部11の変速比γ0が「1」に固定されるように制御されると、図2の係合作動表に示されるように自動変速部20の第1速ギヤ段乃至第4速ギヤ段や後進ギヤ段の各ギヤ段に対応する変速機構10のトータル変速比γTが各ギヤ段毎に得られる。また、自動変速部20の第4速ギヤ段において差動部11の変速比γ0が「1」より小さい値例えば0.7程度に固定されるように制御されると、第4速ギヤ段よりも小さい値例えば「0.7」程度であるトータル変速比γTが得られる。
【0060】
図3は、差動部11と自動変速部20とから構成される変速機構10において、ギヤ段毎に連結状態が異なる各回転要素の回転速度の相対関係を直線上で表すことができる共線図を示している。この図3の共線図は、各遊星歯車装置24、26、28、30のギヤ比ρの関係を示す横軸と、相対的回転速度を示す縦軸とから成る二次元座標であり、横線X1が回転速度零を示し、横線X2が回転速度「1.0」すなわち入力軸14に連結されたエンジン8の回転速度NEを示し、横線XGが伝達部材18の回転速度を示している。
【0061】
また、差動部11を構成する動力分配機構16の3つの要素に対応する3本の縦線Y1、Y2、Y3は、左側から順に第2回転要素(即ち、第2要素)RE2に対応する第1サンギヤS1、第1回転要素(即ち、第1要素)RE1に対応する第1キャリヤCA1、第3回転要素(第3要素)RE3に対応する第1リングギヤR1の相対回転速度を示すものであり、それらの間隔は第1遊星歯車装置24のギヤ比ρ1に応じて定められている。さらに、自動変速部20の5本の縦線Y4、Y5、Y6、Y7、Y8は、左から順に、第4回転要素(即ち、第4要素)RE4に対応し且つ相互に連結された第2サンギヤS2および第3サンギヤS3を、第5回転要素(即ち、第5要素)RE5に対応する第2キャリヤCA2を、第6回転要素(即ち、第6要素)RE6に対応する第4リングギヤR4を、第7回転要素(即ち、第7要素)RE7に対応し且つ相互に連結された第2リングギヤR2、第3キャリヤCA3、第4キャリヤCA4を、第8回転要素(即ち、第8要素)RE8に対応し且つ相互に連結された第3リングギヤR3、第4サンギヤS4をそれぞれ表し、それらの間隔は第2、第3、第4遊星歯車装置26、28、30のギヤ比ρ2、ρ3、ρ4に応じてそれぞれ定められている。共線図の縦軸間の関係においてサンギヤとキャリヤとの間が「1」に対応する間隔とされるとキャリヤとリングギヤとの間が遊星歯車装置のギヤ比ρに対応する間隔とされる。すなわち、差動部11では縦線Y1とY2との縦線間が「1」に対応する間隔に設定され、縦線Y2とY3との間隔はギヤ比ρ1に対応する間隔に設定される。また、自動変速部20では各第2、第3、第4遊星歯車装置26、28、30毎にそのサンギヤとキャリヤとの間が「1」に対応する間隔に設定され、キャリヤとリングギヤとの間がρに対応する間隔に設定される。
【0062】
上記図3の共線図を用いて表現すれば、本実施形態の変速機構10は、動力分配機構16(即ち、差動部11)において、第1遊星歯車装置24の第1回転要素RE1(即ち、第1キャリヤCA1)が入力軸14すなわちエンジン8に連結され、第2回転要素RE2が第1電動機M1に連結され、第3回転要素(即ち、第1リングギヤR1)RE3が伝達部材18および第2電動機M2に連結されて、入力軸14の回転を伝達部材18を介して自動変速部20へ伝達する(入力させる)ように構成されている。このとき、Y2とX2の交点を通る斜めの直線L0により第1サンギヤS1の回転速度と第1リングギヤR1の回転速度との関係が示される。
【0063】
例えば、差動部11においては、第1回転要素RE1乃至第3回転要素RE3が相互に相対回転可能とされる差動状態とされており、直線L0と縦線Y3との交点で示される第1リングギヤR1の回転速度が車速Vに拘束されて略一定である場合には、エンジン回転速度NEを制御することによって直線L0と縦線Y2との交点で示される第1キャリヤCA1の回転速度が上昇或いは下降させられると、直線L0と縦線Y1との交点で示される第1サンギヤS1の回転速度すなわち第1電動機M1の回転速度が上昇或いは下降させられる。
【0064】
また、差動部11の変速比γ0が「1」に固定されるように第1電動機M1の回転速度を制御することによって第1サンギヤS1の回転がエンジン回転速度NEと同じ回転とされると、直線L0は横線X2と一致させられ、エンジン回転速度NEと同じ回転で第1リングギヤR1の回転速度すなわち伝達部材18が回転させられる。或いは、差動部11の変速比γ0が「1」より小さい値例えば0.7程度に固定されるように第1電動機M1の回転速度を制御することによって第1サンギヤS1の回転が零とされると、エンジン回転速度NEよりも増速された回転で伝達部材回転速度N18が回転させられる。
【0065】
また、自動変速部20において第4回転要素RE4は第2クラッチC2を介して伝達部材18に選択的に連結されるとともに第1ブレーキB1を介してケース12に選択的に連結され、第5回転要素RE5は第2ブレーキB2を介してケース12に選択的に連結され、第6回転要素RE6は第3ブレーキB3を介してケース12に選択的に連結され、第7回転要素RE7は出力軸22に連結され、第8回転要素RE8は第1クラッチC1を介して伝達部材18に選択的に連結されている。
【0066】
自動変速部20では、差動部11において直線L0が横線X2と一致させられてエンジン回転速度NEと同じ回転速度が差動部11から第8回転要素RE8に入力されると、図3に示すように、第1クラッチC1と第3ブレーキB3とが係合させられることにより、第8回転要素RE8の回転速度を示す縦線Y8と横線X2との交点と第6回転要素RE6の回転速度を示す縦線Y6と横線X1との交点とを通る斜めの直線L1と、出力軸22と連結された第7回転要素RE7の回転速度を示す縦線Y7との交点で第1速(1st)の出力軸22の回転速度が示される。同様に、第1クラッチC1と第2ブレーキB2とが係合させられることにより決まる斜めの直線L2と出力軸22と連結された第7回転要素RE7の回転速度を示す縦線Y7との交点で第2速(2nd)の出力軸22の回転速度が示され、第1クラッチC1と第1ブレーキB1とが係合させられることにより決まる斜めの直線L3と出力軸22と連結された第7回転要素RE7の回転速度を示す縦線Y7との交点で第3速(3rd)の出力軸22の回転速度が示され、第1クラッチC1と第2クラッチC2とが係合させられることにより決まる水平な直線L4と出力軸22と連結された第7回転要素RE7の回転速度を示す縦線Y7との交点で第4速(4th)の出力軸22の回転速度が示される。
【0067】
図4は、本実施形態の変速機構10を制御するための電子制御装置80に入力される信号及びその電子制御装置80から出力される信号を例示している。この電子制御装置80は、CPU、ROM、RAM、及び入出力インターフェースなどから成る所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、RAMの一時記憶機能を利用しつつROMに予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことによりエンジン8、第1、第2電動機M1、M2に関するハイブリッド駆動制御、自動変速部20の変速制御等の駆動制御を実行するものである。
【0068】
電子制御装置80には、図4に示すような各センサやスイッチなどから、エンジン水温TEMPWを表す信号、シフトレバー52(図6参照)のシフトポジションPSHや「M」ポジションにおける操作回数等を表す信号、エンジン8の回転速度であるエンジン回転速度NEを表す信号、ギヤ比列設定値を表す信号、Mモード(手動変速走行モード)を指令する信号、エアコンの作動を表す信号、車速Vに対応する出力軸22の回転速度(以下、出力軸回転速度)NOUTを表す信号、ATFの温度(以下、ATF温度という)TOILを表す信号、サイドブレーキ操作を表す信号、フットブレーキ操作を表す信号、触媒温度を表す信号、運転者の出力要求量に対応するアクセルペダルの操作量であるアクセル開度Accを表す信号、カム角を表す信号、スノーモード設定を表す信号、車両の前後加速度Gを表す信号、オートクルーズ走行を表す信号、車両の重量(車重)を表す信号、各車輪の車輪速を表す信号、第1電動機M1の回転速度(以下、第1電動機回転速度という)NM1を表す信号、第2電動機M2の回転速度(以下、第2電動機回転速度という)NM2を表す信号、第1電動機M1の温度(以下、第1電動機温度という)THM1を表す信号、第2電動機M2の温度(以下、第2電動機温度という)THM2を表す信号、蓄電装置56(図7を参照)の充電容量(充電状態)SOCを表す信号などが、それぞれ供給される。
【0069】
また、上記電子制御装置80からは、エンジン出力を制御するエンジン出力制御装置58(図7参照)への制御信号例えばエンジン8の吸気管60に備えられた電子スロットル弁62のスロットル弁開度θTHを操作するスロットルアクチュエータ64への駆動信号や燃料噴射装置66による吸気管60或いはエンジン8の筒内への燃料供給量を制御する燃料供給量信号や点火装置68によるエンジン8の点火時期を指令する点火信号、過給圧を調整するための過給圧調整信号、電動エアコンを作動させるための電動エアコン駆動信号、電動機M1およびM2の作動を指令する指令信号、シフトインジケータを作動させるためのシフトポジション(操作位置)表示信号、ギヤ比を表示させるためのギヤ比表示信号、スノーモードであることを表示させるためのスノーモード表示信号、制動時の車輪のスリップを防止するABSアクチュエータを作動させるためのABS作動信号、Mモードが選択されていることを表示させるMモード表示信号、差動部11や自動変速部20の油圧式摩擦係合装置の油圧アクチュエータを制御するために油圧制御回路70(図5、図7を参照)に含まれる電磁弁(リニアソレノイドバルブ)を作動させるバルブ指令信号、この油圧制御回路70に設けられたレギュレータバルブ(調圧弁)によりライン油圧PLを調圧するための信号、そのライン油圧PLが調圧されるための元圧の油圧源である電動油圧ポンプを作動させるための駆動指令信号、電動ヒータを駆動するための信号、クルーズコントロール制御用コンピュータへの信号等が、それぞれ出力される。
【0070】
図5は、油圧制御回路70のうちクラッチC1、C2、およびブレーキB1〜B3の各油圧アクチュエータ(油圧シリンダ)AC1、AC2、AB1、AB2、AB3の作動を制御するリニアソレノイドバルブSL1〜SL5に関する回路図である。
【0071】
図5において、各油圧アクチュエータAC1、AC2、AB1、AB2、AB3には、ライン油圧PLがそれぞれリニアソレノイドバルブSL1〜SL5により電子制御装置80からの指令信号に応じた係合圧PC1、PC2、PB1、PB2、PB3に調圧されてそれぞれ直接的に供給されるようになっている。このライン油圧PLは、図示しない電動オイルポンプやエンジン30により回転駆動される機械式オイルポンプから発生する油圧を元圧として例えばリリーフ型調圧弁(レギュレータバルブ)によって、アクセル開度Acc或いはスロットル弁開度θTHで表されるエンジン負荷等に応じた値に調圧されるようになっている。
【0072】
リニアソレノイドバルブSL1〜SL5は、基本的には何れも同じ構成で、電子制御装置80により独立に励磁、非励磁され、各油圧アクチュエータAC1、AC2、AB1、AB2、AB3の油圧が独立に調圧制御されてクラッチC1〜C4、ブレーキB1、B2の係合圧PC1、PC2、PB1、PB2、PB3が制御される。そして、自動変速部20は、例えば図2の係合作動表に示すように予め定められた係合装置が係合されることによって各変速段が成立させられる。また、自動変速部20の変速制御においては、例えば変速に関与するクラッチCやブレーキBの解放と係合とが同時に制御される所謂クラッチツウクラッチ変速が実行される。
【0073】
図6は複数種類のシフトポジションPSHを人為的操作により切り換える切換装置としてのシフト操作装置50の一例を示す図である。このシフト操作装置50は、例えば運転席の横に配設され、複数種類のシフトポジションPSHを選択するために操作されるシフトレバー52を備えている。
【0074】
そのシフトレバー52は、変速機構10内つまり自動変速部20内の動力伝達経路が遮断されたニュートラル状態すなわち中立状態とし且つ自動変速部20の出力軸22をロックするための駐車ポジション「P(パーキング)」、後進走行のための後進走行ポジション「R(リバース)」、変速機構10内の動力伝達経路が遮断された中立状態とするための中立ポジション「N(ニュートラル)」、自動変速モードを成立させて差動部11の無段的な変速比幅と自動変速部20の第1速ギヤ段乃至第4速ギヤ段の範囲で自動変速制御される各ギヤ段とで得られる変速機構10の変速可能なトータル変速比γTの変化範囲内で自動変速制御を実行させる前進自動変速走行ポジション「D(ドライブ)」、または手動変速走行モード(手動モード)を成立させて自動変速部20の自動変速制御における高速側の変速段を制限する所謂変速レンジを設定するための前進手動変速走行ポジション「M(マニュアル)」へ手動操作されるように設けられている。
【0075】
上記シフトレバー52の各シフトポジションPSHへの手動操作に連動して図2の係合作動表に示す後進ギヤ段「R」、ニュートラル「N」、前進ギヤ段「D」における各変速段等が成立するように、例えば油圧制御回路70が電気的に切り換えられる。
【0076】
上記「P」乃至「M」ポジションに示す各シフトポジションPSHにおいて、「P」ポジションおよび「N」ポジションは、車両を走行させないときに選択される非走行ポジションであって、例えば図2の係合作動表に示されるように第1クラッチC1および第2クラッチC2のいずれもが解放されるような自動変速部20内の動力伝達経路が遮断された車両を駆動不能とする第1クラッチC1および第2クラッチC2による動力伝達経路の動力伝達遮断状態へ切換えを選択するための非駆動ポジションである。また、「R」ポジション、「D」ポジションおよび「M」ポジションは、車両を走行させるときに選択される走行ポジションであって、例えば図2の係合作動表に示されるように第1クラッチC1および第2クラッチC2の少なくとも一方が係合されるような自動変速部20内の動力伝達経路が連結された車両を駆動可能とする第1クラッチC1および/または第2クラッチC2による動力伝達経路の動力伝達可能状態への切換えを選択するための駆動ポジションでもある。
【0077】
具体的には、シフトレバー52が「P」ポジション或いは「N」ポジションから「R」ポジションへ手動操作されることで、第2クラッチC2が係合されて自動変速部20内の動力伝達経路が動力伝達遮断状態から動力伝達可能状態とされ、シフトレバー52が「N」ポジションから「D」ポジションへ手動操作されることで、少なくとも第1クラッチC1が係合されて自動変速部20内の動力伝達経路が動力伝達遮断状態から動力伝達可能状態とされる。また、シフトレバー52が「R」ポジションから「P」ポジション或いは「N」ポジションへ手動操作されることで、第2クラッチC2が解放されて自動変速部20内の動力伝達経路が動力伝達可能状態から動力伝達遮断状態とされ、シフトレバー52が「D」ポジションから「N」ポジションへ手動操作されることで、第1クラッチC1および第2クラッチC2が解放されて自動変速部20内の動力伝達経路が動力伝達可能状態から動力伝達遮断状態とされる。
【0078】
(電子制御装置)
図7は、電子制御装置80による制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。図7に示されるように、電子制御装置80は、後述されるハイブリッド制御手段84、油圧制御回路70、有段変速制御手段82、充放電制限時変速制御手段96、充放電制限判定手段98、及び、電動機出力制限判定手段100を備えて構成されている。尚、本発明に係る「制御手段」及び「決定手段」の一例がこの電子制御装置80によって構成されている。
【0079】
図7において、有段変速制御手段82は、図8(a)及び図8(b)に示すような車速Vと自動変速部20の出力トルクTOUTとを変数として予め記憶されたアップシフト線(実線)およびダウンシフト線(点線)を有する関係(変速線図、変速マップ)から実際の車速Vおよび自動変速部20の要求出力トルクTOUTで示される車両状態に基づいて、自動変速部20の変速を実行すべきか否かを判断しすなわち自動変速部20の変速すべき変速段を判断し、その判断した変速段が得られるように自動変速部20の自動変速制御を実行する。ここに、図8は、本実施形態に係るダウンシフト変速における車速Vと自動変速部20の出力トルクTOUTとの関係を示したグラフ(図8(a))、及び、アップシフト変速における車速Vと自動変速部20の出力トルクTOUTとの関係を示したグラフ(図8(b))である。
【0080】
尚、図8(a)及び図8(b)中の実線L12、L23、L34は、第1速(即ち、図2中の1st)から第2速(即ち、図2中の2nd)への変速、第2速から第3速(即ち、図2中の3rd)への変速、第3速から第4速(即ち、図2中の4th)への変速線を夫々示す。図8(a)及び図8(b)中の点線L43、L32、L21は、第4速から第3速への変速、第3速から第2速への変速、第2速から第1速への変速線を夫々示す。特に、図8(a)中の一点鎖線L21’は、補正された第2速から第1速への変速線を示す。この補正により、図8(a)中の上向きの矢印AR3に示されるように、第3速から第1速への変速を、第3速から第2速への変速へ補正することができる。
【0081】
また、図8(b)中の一点鎖線L23’は、補正された第2速から第3速への変速線を示す。この補正により、図8(b)中の下向きの矢印AR1に示されるように、第1速から第3速への変速を、第1速から第2速への変速へ補正することができる。
【0082】
このとき、有段変速制御手段82は、例えば図2に示す係合表に従って変速段が達成されるように、自動変速部20の変速に関与する油圧式摩擦係合装置を係合および/または解放させる指令(変速出力指令、油圧指令)を、すなわち自動変速部20の変速に関与する解放側係合装置を解放すると共に係合側係合装置を係合することによりクラッチツウクラッチ変速を実行させる指令を油圧制御回路70へ出力する。油圧制御回路70は、その指令に従って、例えば解放側係合装置を解放すると共に係合側係合装置を係合して自動変速部20の変速が実行されるように、油圧制御回路70内のリニアソレノイドバルブSLを作動させてその変速に関与する油圧式摩擦係合装置の油圧アクチュエータを作動させる。
【0083】
ハイブリッド制御手段84は、差動部制御手段として機能するものであり、エンジン8を効率のよい作動域で作動させる一方で、エンジン8と第2電動機M2との駆動力の配分や第1電動機M1の発電による反力を最適になるように変化させて差動部11の電気的な無段変速機としての変速比γ0を制御する。例えば、そのときの走行車速Vにおいて、運転者の出力要求量としてのアクセル開度Accや車速Vから車両の目標(要求)出力を算出し、その車両の目標出力と充電要求値から必要なトータル目標出力を算出し、そのトータル目標出力が得られるように伝達損失、補機負荷、第2電動機M2のアシストトルク等を考慮して目標エンジン出力を算出し、その目標エンジン出力が得られるエンジン回転速度NEとエンジントルクTEとなるようにエンジン8を制御するとともに第1電動機M1の発電量を制御する。
【0084】
例えば、ハイブリッド制御手段84は、その制御を動力性能や燃費向上などのために自動変速部20の変速段を考慮して実行する。このようなハイブリッド制御では、エンジン8を効率のよい作動域で作動させるために定まるエンジン回転速度NEと車速Vおよび自動変速部20の変速段で定まる伝達部材18の回転速度とを整合させるために、差動部11が電気的な無段変速機として機能させられる。すなわち、ハイブリッド制御手段84は、エンジン回転速度NEとエンジン8の出力トルク(エンジントルク)TEとで構成される二次元座標内において無段変速走行の時に運転性と燃費性とを両立するように予め実験的に求められて記憶された図9の点線に示すようなエンジン8の最適燃費率曲線(燃費マップ、関係)に沿ってエンジン8が作動させられるように、例えば目標出力(トータル目標出力、要求駆動力)を充足するために必要なエンジン出力を発生するためのエンジントルクTEとエンジン回転速度NEとなるように、変速機構10のトータル変速比γTの目標値を定め、その目標値が得られるように自動変速部20の変速段を考慮して差動部11の変速比γ0を制御し、トータル変速比γTをその変速可能な変化範囲内で無段階に制御する。
【0085】
このとき、ハイブリッド制御手段84は、第1電動機M1により発電された電気エネルギをインバータ54を通して蓄電装置56や第2電動機M2へ供給するので、エンジン8の動力の主要部は機械的に伝達部材18へ伝達されるが、エンジン8の動力の一部は第1電動機M1の発電のために消費されてそこで電気エネルギに変換され、インバータ54を通してその電気エネルギが第2電動機M2へ供給され、その第2電動機M2が駆動されて第2電動機M2から伝達部材18へ伝達される。この電気エネルギの発生から第2電動機M2で消費されるまでに関連する機器により、エンジン8の動力の一部を電気エネルギに変換し、その電気エネルギを機械的エネルギに変換するまでの電気パスが構成される。尚、本発明に係る「蓄電装置」の一例が蓄電装置56によって構成されている。
【0086】
特に、前記有段変速制御手段82により自動変速部20の変速制御が実行される場合には、自動変速部20の変速比が段階的に変化させられることに伴ってその変速前後で変速機構10のトータル変速比γTが段階的に変化させられる。トータル変速比γTが段階的に変化することにより、すなわち変速比が連続的ではなく飛ぶことにより、連続的なトータル変速比γTの変化に比較して速やかに駆動トルクを変化させることが可能となる。その反面、変速ショックが発生したり、最適燃費率曲線に沿うようにエンジン回転速度NEを制御できず燃費が悪化する可能性がある。
【0087】
そこで、ハイブリッド制御手段84は、そのトータル変速比γTの段階的変化が抑制されるように、自動変速部20の変速に同期して自動変速部20の変速比の変化方向とは反対方向の変速比の変化となるように差動部11の変速を実行する。言い換えれば、自動変速部20の変速前後で変速機構10のトータル変速比γTが連続的に変化するようにハイブリッド制御手段84は自動変速部20の変速制御に同期して差動部11の変速制御を実行する。例えば、ハイブリッド制御手段84は、自動変速部20の変速前後で過渡的に変速機構10のトータル変速比γTが変化しないような所定のトータル変速比γTを形成するために自動変速部20の変速制御に同期して、自動変速部20の変速比の段階的な変化に相当する変化分だけその変化方向とは反対方向に変速比を段階的に変化させるように差動部11の変速制御を実行する。
【0088】
別の見方をすれば、ハイブリッド制御手段84は自動変速部20の変速が実行されて自動変速部20の変速比が段階的に変化させられたとしても、エンジン8の動作点が変速前後で変化しないように差動部11の変速比γ0を制御するのである。例えば、図9に示す曲線P1、P2、P3はそれぞれエンジン8における等パワー線Pの一例であり、点Aは必要なエンジン出力P2を発生する際にエンジン8の燃費効率(最適燃費率)に基づいて設定されたエンジン回転速度NEとエンジントルクTEとで規定されるエンジン8の動作点すなわちエンジン8の駆動状態の一例である。そして、ハイブリッド制御手段84は、自動変速部20の変速前後で、図9中の点Aに示されるようなエンジン8の動作点が変化しないように、すなわちエンジン8の動作点が最適燃費率曲線に沿い且つ等パワーが維持されるように、差動部11を変速する所謂、等パワー変速を実行する。より具体的には、ハイブリッド制御手段84は、自動変速部20の変速中において、エンジントルクTEを略一定に維持するようにスロットル制御を実行すると共に、エンジン回転速度NEを略一定に維持するように自動変速部20の変速に伴う第2電動機回転速度NM2の変化とは反対方向に第1電動機回転速度NM1を変化させる。
【0089】
尚、上述の図9中の点Aに示されるように、等パワー変速というのは自動変速部20の変速前後でエンジン8の動作点が最適燃費率曲線に沿い且つ等パワーが維持されるように差動部11を変速することであるので、自動変速部20の変速前後でエンジン8の動作点が最適燃費率曲線に沿わない場合にはたとえ等パワーが維持されたとしても等パワー変速とはならず非等パワー変速に含まれるようにしてよい。
【0090】
また、ハイブリッド制御手段84は、車両の停止中又は走行中に拘わらず、差動部11の電気的CVT機能によって例えば第1電動機回転速度NM1を制御してエンジン回転速度NEを略一定に維持したり任意の回転速度に回転制御させられる。言い換えれば、ハイブリッド制御手段84は、エンジン回転速度NEを略一定に維持したり任意の回転速度に制御しつつ第1電動機回転速度NM1を任意の回転速度に回転制御することができる。例えば、図3の共線図からもわかるようにハイブリッド制御手段84は車両走行中にエンジン回転速度NEを引き上げる場合には、車速V(駆動輪34)に拘束される第2電動機回転速度NM2を略一定に維持しつつ第1電動機回転速度NM1の引き上げを実行する。
【0091】
また、ハイブリッド制御手段84は、スロットル制御のためにスロットルアクチュエータ64により電子スロットル弁62を開閉制御させる他、燃料噴射制御のために燃料噴射装置66による燃料噴射量や噴射時期を制御させ、点火時期制御のためにイグナイタ等の点火装置68による点火時期を制御させる指令を単独で或いは組み合わせてエンジン出力制御装置58に出力して、必要なエンジン出力を発生するようにエンジン8の出力制御を実行するエンジン出力制御手段を機能的に備えている。
【0092】
例えば、ハイブリッド制御手段84は、基本的には図示しない予め記憶された関係からアクセル開度Accに基づいてスロットルアクチュエータ60を駆動し、アクセル開度Accが増加するほどスロットル弁開度θTHを増加させるようにスロットル制御を実行する。また、このエンジン出力制御装置58は、ハイブリッド制御手段84による指令に従って、スロットル制御のためにスロットルアクチュエータ64により電子スロットル弁62を開閉制御する他、燃料噴射制御のために燃料噴射装置66による燃料噴射を制御し、点火時期制御のためにイグナイタ等の点火装置68による点火時期を制御するなどしてエンジントルク制御を実行する。
【0093】
また、ハイブリッド制御手段84は、エンジン8の停止又はアイドル状態に拘わらず、差動部11の電気的CVT機能(差動作用)によってモータ走行させることができる。例えば、ハイブリッド制御手段84は、図8(a)及び図8(b)に示すような車速Vと自動変速部20の出力トルクTOUTとを変数として予め記憶された走行用駆動力源をエンジン8と第2電動機M2とで切り換えるためのエンジン走行領域とモータ走行領域との境界線を有する関係(駆動力源切換線図、駆動力源マップ)から実際の車速Vおよび自動変速部20の要求出力トルクTOUTで示される車両状態に基づいて、モータ走行領域とエンジン走行領域との何れであるかを判断してモータ走行或いはエンジン走行を実行する。図8(a)及び図8(b)の実線Aに示す駆動力源マップは、例えば同じ図8(a)及び図8(b)中の実線および点線に示す変速マップと共に予め記憶されている。このように、ハイブリッド制御手段84によるモータ走行は、図8(a)及び図8(b)から明らかなように一般的にエンジン効率が高トルク域に比較して悪いとされる比較的低出力トルクTOUT域すなわち低エンジントルクTE域、或いは車速Vの比較的低車速域すなわち低負荷域で実行される。
【0094】
ハイブリッド制御手段84は、このモータ走行時には、停止しているエンジン8の引き摺りを抑制して燃費を向上させるために、第1電動機回転速度NM1を負の回転速度で制御して例えば第1電動機M1を無負荷状態とすることにより空転させて、差動部11の電気的CVT機能(差動作用)により必要に応じてエンジン回転速度NEを零乃至略零に維持する。
【0095】
また、ハイブリッド制御手段84は、エンジン走行領域であっても、上述した電気パスによる第1電動機M1からの電気エネルギに加えて又は代えて蓄電装置56からの電気エネルギを第2電動機M2へ供給し、その第2電動機M2を駆動して駆動輪34にトルクを付与することにより、エンジン8の動力を補助するための所謂トルクアシストが可能である。
【0096】
また、ハイブリッド制御手段84は、第1電動機M1を無負荷状態として自由回転すなわち空転させることにより、差動部11がトルクの伝達を不能な状態すなわち差動部11内の動力伝達経路が遮断された状態と同等の状態であって、且つ差動部11からの出力が発生されない状態とすることが可能である。すなわち、ハイブリッド制御手段84は、第1電動機M1を無負荷状態とすることにより差動部11をその動力伝達経路が電気的に遮断される中立状態(ニュートラル状態)とすることが可能である。
【0097】
また、ハイブリッド制御手段84は自動変速部20の変速の際に第1電動機回転速度NM1を制御することによりエンジン回転速度NEを所定の回転速度に制御する。例えば、ハイブリッド制御手段84は自動変速部20の変速中にエンジン回転速度NEを略一定に維持する場合には、エンジン回転速度NEを略一定に維持しつつ自動変速部20の変速に伴う第2電動機回転速度NM2の変化とは反対方向に第1電動機回転速度NM1を変化させる。
【0098】
一般的に、自動変速部20の変速の際には、前記ハイブリッド制御手段84によりエンジン8の動作点が最適燃費率曲線に沿って作動させられるように例えば変速前後でエンジン8の動作点が略一定に維持されるように自動変速部20の変速段を考慮して第1電動機回転速度NM1が制御されて差動部11の変速が行われる。このとき第1電動機回転速度NM1が制御される際に第1電動機M1により発電された電力はインバータ54を通して蓄電装置56や第2電動機M2へ供給されている。
【0099】
ここで、蓄電装置56は蓄電装置温度THBATや充電容量SOCに応じて充電可能または放電可能(以下、充放電可能という)な電力(パワー)すなわち入力制限または出力制限(以下、入出力制限という)WIN/WOUTが変化することから、耐久性を低下させないように入出力制限WIN/WOUTに基づいて蓄電装置56の充電または放電(以下、充放電という)を制限する必要が生じる。或いはまた、第2電動機M2は第2電動機温度THM2に応じて可能な出力(パワー)PM2が変化することから、出力PM2が制限される。その可能な出力PM2の範囲で駆動するように第2電動機M2の出力を制限する必要が生じる。
【0100】
そうすると、蓄電装置56の充放電制限や第2電動機M2の出力制限がかかっている場合には、上述した第1電動機M1の駆動時に蓄電装置56から供給される電力、或いはまた第1電動機M1の発電時に蓄電装置56や第2電動機M2へ供給される電力との電力収支をバランス(均衡)できない可能性があり、自動変速部20の変速が行われた際に第1電動機回転速度NM1を適切に制御できず変速ショックが増大するおそれがある。これとは別に、第1電動機M1の出力制限がかかっている場合にも、自動変速部20の変速が行われた際に第1電動機回転速度NM1を適切に制御できない可能性がある。
【0101】
そこで、本実施形態では、第1電動機M1の駆動時または発電時における電力を供給または充電する蓄電装置56の充放電が制限されるときには、蓄電装置56の充放電が制限されないときに比較して、蓄電装置56の充放電の電力が少なくなるように自動変速部20の変速判断を行う充放電制限時変速制御手段96を備える。
【0102】
この充放電制限時変速制御手段96による変速判断に基づいて、ハイブリッド制御手段84及び有段変速制御手段82の協調的な制御の下で、変速機構10は、第1変速パターン又は第2変速パターンの変速を実行する。
【0103】
仮に、蓄電装置56において電力の供給又は電力の充電が制限される際に、例えば、差動部11における回転速度と、自動変速部20における回転速度とを近付けるなどのハイブリッド車両における各種の制御処理によって、第1電動機M1と蓄電装置56との間で授受される電力、或いは、第2電動機M2と蓄電装置56との間で授受される電力を許容範囲内にさせる場合、次のような技術的な問題点が生じる。即ち、このようなハイブリッド車両における制御処理においては、演算負荷が高くなってしまい制御処理に遅延が生じてしまい、第1電動機M1と蓄電装置56との間で授受される電力と、第2電動機M2と蓄電装置56との間で授受される電力との授受バランスを適切にさせることが技術的に困難になってしまうという問題点が生じる。
【0104】
これに対して、本実施形態によれば、この充放電制限時変速制御手段96による変速判断に基づいて、ハイブリッド制御手段84及び有段変速制御手段82の協調的な制御の下で、変速機構10は、第1変速パターン又は第2変速パターンの変速を実行する。即ち、充放電制限判定手段98は、蓄電装置56の電力の受け渡しが制限されているか否かすなわち蓄電装置56の充放電が制限されているか否かを判定する。蓄電装置56の電力の受け渡しが制限されていると判定される場合、ハイブリッド制御手段84及び有段変速制御手段82の協調的な制御の下で、変速機構10は、第1変速パターンから、この第1変速パターンと比較して変速段数が少ない第2変速パターンへ変更し、第2変速パターンの変速を実行する。他方、蓄電装置56の電力の受け渡しが制限されていると判定されない場合、ハイブリッド制御手段84及び有段変速制御手段82の協調的な制御の下で、変速機構10は、第1変速パターンから第2変速パターンへ変更せずに、第1変速パターンの変速を実行する。
【0105】
このような変速機構10における変速パターンの簡便な変更を行うことにより、制御処理における演算負荷を高くさせることを抑制しつつ、電力の供給又は電力の充電における制限に迅速に応答することが可能である。典型的には、第1電動機M1と蓄電装置56との間で授受される電力の急激な変化、或いは、第1電動機M1と蓄電装置56との間で授受される電力の急激な変化に迅速に応答することが可能である。
【0106】
典型的には、変速機構10のダウンシフト変速により、伝達部材18と変速機構10とを接続する回転軸、即ち、変速機構の入力軸の回転速度が上昇する。変更された第2変速パターンにおける変速段数の減少に伴う制御負荷の減少によって、この上昇に伴って、第1電動機M1の回転速度が過渡に低下することに迅速且つ確実に応答することができる。これにより、蓄電装置56の充放電が制限された状態の下で、第1電動機M1の回転速度が許容回転速度(即ち、負側の許容回転速度)を下回ることを効果的に抑制することができる。
【0107】
或いは、これにより、典型的には、変速機構10のダウンシフト変速により、伝達部材18と変速機構10とを接続する回転軸、即ち、変速機構10の入力軸の回転速度が上昇する。変更された第2変速パターンにおける変速段数の減少に伴う制御負荷の減少によって、この上昇に伴って、第2電動機M2の回転速度が過渡に上昇することに迅速且つ確実に応答することができる。これにより、蓄電装置56の充放電が制限された状態の下で、第2電動機M2の回転速度が許容回転速度(即ち、正側の許容回転速度)を超えたり、第2電動機M2の回転速度が高回転域に停滞し続けたりすることを効果的に抑制することができる。
【0108】
或いは、これにより、典型的には、変速機構10のアップシフト変速により、伝達部材18と変速機構10とを接続する回転軸、即ち、変速機構10の入力軸の回転速度が低下する。変更された第2変速パターンにおける変速段数の減少に伴う制御負荷の減少によって、この低下に伴って、第1電動機M1の回転速度が過渡に上昇することに迅速且つ確実に応答することができる。これにより、蓄電装置56の充放電が制限された状態の下で、第1電動機M1の回転速度が許容回転速度(即ち、正側の許容回転速度)を超えることを効果的に抑制することができる。
【0109】
以上より、蓄電装置56において電力の供給又は電力の充電が制限された状態の下で、変速が行われた場合においても、変速機構10における変速パターンの簡便な変更を行うことにより、第1電動機M1の回転速度を許容回転速度の範囲内に迅速且つ確実にさせ、第1電動機M1の駆動又は発電において、第1電動機M1と蓄電装置56との間で授受される電力を迅速且つ確実に低減することができる。概ね同様にして、蓄電装置56において電力の供給又は電力の充電が制限された状態の下で、変速が行われた場合においても、第2電動機M2の回転速度を許容回転速度の範囲内に迅速且つ確実にさせ、第2電動機M2の駆動又は発電において、第2電動機M2と蓄電装置56との間で授受される電力を迅速且つ確実に低減することができる。
【0110】
この結果、第1電動機M1と蓄電装置56との間で授受される電力と、第2電動機M2と蓄電装置56との間で授受される電力との間の適切な授受バランスを、迅速に実現することができる。
【0111】
以上の結果、蓄電装置56の耐久性を効果的に向上させることができる。
【0112】
(車両の駆動装置の動作原理)
次に、図10乃至図13を参照して、本実施形態に係る車両の駆動制御装置の動作原理について説明する。ここに、図10は、本発明の実施形態に係る車両の駆動制御装置における動作の流れを示したフローチャートである。尚、この図10で示された動作は、例えば数マイクロ秒等の所定周期で繰り返し実行される。
【0113】
図10に示されるように、先ず、ハイブリッド制御手段84の制御下で、エンジン8の引き摺り状態が正常な状態であるか否かが判定される(ステップS101)。典型的には、例えば、エンジン8の引き摺り状態が正常な状態は、エンジン8の引き摺りの度合いが所定値を下回っている状態である状態を意味する。より典型的には、エンジンオイルの温度が高くなり、エンジンオイルの粘度が低くなっている状態を意味する。
【0114】
上述したステップS101の判定の結果、エンジン8の引き摺りの度合いが所定値を下回っている正常な状態であると判定される場合(ステップS101:Yes)、更に、上述した図8に示すような駆動力源マップに基づいて、車両の走行状態がエンジン走行状態であるか否かが判定される(ステップS102)。ここで、車両の走行状態がエンジン走行状態であると判定される場合(ステップS102:Yes)、更に、充放電制限時変速制御手段96の制御下で、蓄電装置56の充放電が制限されているか否かが判定される(ステップS103)。典型的には、蓄電装置56と、第1電動機M1との電力の受け渡しが制限されているか否かが判定されると共に、蓄電装置56と、第2電動機M2との電力の受け渡しが制限されているか否かが判定される。
【0115】
より典型的には、電力の受け渡しが制限されている状態には、蓄電装置56に充電される電力が制限されている状態である入力制限WINの状態と、蓄電装置56から放電される電力が制限されている状態である出力制限WOUTの状態とがある。自動変速部20において発生する変速が、アップシフト変速及びダウンシフト変速のうちいずれであるかによって、不具合の発生を助長する入出力制限の状態が相違する。即ち、アップシフト変速は、入力制限WINの状態において不具合が発生することを助長する。他方、ダウンシフト変速は、出力制限WOUTの状態において不具合が発生することを助長する。
【0116】
より典型的には、充放電制限判定手段98は、蓄電装置温度THBATおよび充電容量SOCに基づいて入力制限WINおよび出力制限WOUTを算出し、その入力制限WINが予め充電制限判定値として設定された入力制限閾値WINth以下であるか、および出力制限WOUT予め放電制限判定値として設定された出力制限閾値WOUTth以下であるかの少なくとも一方が成立するか否かに基づいて蓄電装置56の充放電が制限されているか否かを判定する。
【0117】
図11は、蓄電装置温度THBATと入出力制限WIN/WOUTとの予め実験的に求められて定められた関係(入出力制限マップ)である。また、図12は、充電容量SOCと入出力制限WIN/WOUTの補正係数との予め実験的に求められて定められた関係(入出力制限用補正係数マップ)を示したグラフ(図12(a)及び図12(b))である。そして、前記充放電制限判定手段98は、例えば図11の入出力制限マップから蓄電装置温度THBATに基づいて入力制限WINおよび出力制限WOUTの基本値をそれぞれ算出し、図12(a)の出力制限用補正係数マップ及び図12図12(b)の入力制限用補正係数マップから充電容量SOCに基づいて入力制限用補正係数および出力制限用補正係数をそれぞれ算出し、入力制限WINおよび出力制限WOUTの基本値に入力制限用補正係数および出力制限用補正係数をそれぞれ乗算して入力制限WINおよび出力制限WOUTを算出する。
【0118】
上述したステップS103の判定の結果、蓄電装置56の充放電が制限されていると判定される場合(ステップS103:Yes)、更に、ハイブリッド制御手段84の制御下で、例えば図8に示すような変速マップに基づいて、車両状態に対応した自動変速部20の変速段が判断されると共に、この自動変速部20の変速段によって、入力制限WINの状態、又は、出力制限WOUTの状態における不具合が発生したか否かが判定される(ステップS104)。典型的には、入力制限WINの状態、又は、出力制限WOUTの状態における不具合とは、自動変速部20による変速に伴って、第1電動機M1と蓄電装置56との間での電力の授受と、第2電動機M2と蓄電装置56との間での電力の授受において、電力の実際の授受量が、入力制限WIN又は出力制限WOUTとの兼ね合いで、所望の値から顕著にズレてしまい、蓄電装置56における電力の充放電が所望の状態になっていないことを意味する。言い換えると、入力制限WINの状態、又は、出力制限WOUTの状態における不具合とは、自動変速部20による変速に伴って、第1電動機M1、第2電動機M2、及び蓄電装置56によって構成される電力システムにおけるシステム電圧が、所望となる範囲外にあることを意味してよい。
【0119】
このステップS104の判定の結果、自動変速部20の変速によって、入力制限WINの状態、又は、出力制限WOUTの状態における不具合が発生したと判定される場合(ステップS104:Yes)、更に、電動機出力制限判定手段100の制御下で、例えば発熱等に起因して、第1電動機M1に加えて又は代えて第2電動機M2において出力制限が実施されているか否かが判定される(ステップS105)。
【0120】
典型的には、電動機出力制限判定手段100は、第1電動機M1および/または第2電動機M2が出力制限されているか否かを判定する。例えば、電動機出力制限判定手段100は、図13に示すような電動機温度THMと電動機出力(駆動/発電)PMとの予め実験的に求められて定められた関係(電動機出力マップ)関係から実際の電動機温度THM1、THM2に基づいてそれぞれ出力可能な電動機出力PM1、PM2を算出し、その第1電動機出力PM1が予め出力制限判定値として設定された第1電動機出力制限閾値PM1th以下であるか、および第2電動機出力PM2が予め出力制限判定値として設定された第2電動機出力制限閾値PM2th以下であるかの少なくとも一方が成立するか否かに基づいて電動機M1/M2が出力制限されているか否かを判定する。
【0121】
上述したステップS105の判定の結果、第1電動機M1に加えて又は代えて第2電動機M2において出力制限が実施されていると判定される場合(ステップS105:Yes)、充放電制限時変速制御手段96の制御下で、第1変速パターンと比較して変速段数が少ない第2変速パターンへの変更が実施され、第2変速パターンの変速が実行される(ステップS106)。
【0122】
ここに、本実施形態に係る「変速パターン」とは、一のギヤ段から一のギヤ段と異なる他のギヤ段へ変速する際の組み合わせを意味する。典型的には、第3速ギヤ段から第1速ギヤ段へのダウンシフト変速、第3速ギヤ段から第2速ギヤ段へのダウンシフト変速、第2速ギヤ段から第3速ギヤ段へのアップシフト変速などの、第1速ギヤ段、第2速ギヤ段、及び、第3速ギヤ段のうちの異なる2つを選択する際の組み合わせを例示することができる。
【0123】
また、本実施形態に係る「変速段数」とは、一のギヤ段から他のギヤ段へ変速する際に経由するギヤ段の個数に1を加算した数を意味する。典型的には、第3速ギヤ段から第1速ギヤ段へのダウンシフト変速における変速段数は、2である。何故ならば、第3速ギヤ段から第1速ギヤ段へのダウンシフト変速の際には、第2速ギヤ段を1個だけ経由するので、この1個に1を加算することにより、変速段数として2が得られるからである。概ね同様にして、第3速ギヤ段から第2速ギヤ段へのダウンシフト変速における変速段数は、1である。何故ならば、第3速ギヤ段から第2速ギヤ段へのダウンシフト変速の際には、他のギヤ段は経由しない、言い換えると、ギヤ段を0個だけ経由するので、この0個に1を加算することにより、変速段数として1が得られるからである。
【0124】
尚、「蓄電装置56の充放電が制限されていると判定される場合(ステップS103:Yes)」、「自動変速部20の変速によって、入力制限WINの状態、又は、出力制限WOUTの状態における不具合が発生したと判定される場合(ステップS104:Yes)」及び「第1電動機M1に加えて又は代えて第2電動機M2において出力制限が実施されていると判定される場合(ステップS105:Yes)」という3つの条件が真であることによって、本発明に係る「前記電力の供給又は前記電力の充電が制限される場合」の一例が構成されている。
【0125】
再び、上述のステップS106に戻って、典型的には、第1変速パターンの変速として、第3速ギヤ段から第1速ギヤ段へのダウンシフト変速が指示された場合、充放電制限時変速制御手段96の制御下で、第1変速パターンと比較して変速段数が少ない第2変速パターンの変速として、第3速ギヤ段から第2速ギヤ段へのダウンシフト変速が実施されるように変速機構10が制御される。
【0126】
或いは、典型的には、第1変速パターンの変速として、第3速ギヤ段から第1速ギヤ段へのダウンシフト変速が指示された場合、充放電制限時変速制御手段96の制御下で、第2変速パターンの変速として、第3速ギヤ段から第2速ギヤ段へのダウンシフト変速に加えて、第2速ギヤ段から第1速ギヤ段へのダウンシフト変速が実施されるように変速機構10が制御される。これにより、充放電制限時変速制御手段96は、第3速ギヤ段から第1速ギヤ段へのダウンシフト変速における進行を、通常の第3速ギヤ段から第1速ギヤ段へのダウンシフト変速と比較して遅延するように自動変速部20を含む変速機構10を制御する。言い換えると、充放電制限時変速制御手段96は、第3速ギヤ段から第1速ギヤ段へのダウンシフト変速を完了するまでの時間が、通常の第3速ギヤ段から第1速ギヤ段へのダウンシフト変速と比較して遅くなるように自動変速部20を含む変速機構10を制御する。
【0127】
典型的には、第1変速パターンの変速として、第1速ギヤ段から第3速ギヤ段へのアップシフト変速が指示された場合、充放電制限時変速制御手段96の制御下で、第2変速パターンの変速として、第1速ギヤ段から第2速ギヤ段へのアップシフト変速が実施されるように変速機構10が制御される。
【0128】
或いは、典型的には、第1変速パターンの変速として、第1速ギヤ段から第3速ギヤ段へのアップシフト変速が指示された場合、充放電制限時変速制御手段96の制御下で、第2変速パターンの変速として、第1速ギヤ段から第2速ギヤ段へのアップシフト変速に加えて、第2速ギヤ段から第3速ギヤ段へのアップシフト変速が実施されるように変速機構10が制御される。これにより、充放電制限時変速制御手段96は、第1速ギヤ段から第3速ギヤ段へのアップシフト変速における進行を、通常の第1速ギヤ段から第3速ギヤ段へのアップシフト変速と比較して遅延するように自動変速部20を含む変速機構10を制御する。言い換えると、充放電制限時変速制御手段96は、第1速ギヤ段から第3速ギヤ段へのアップシフト変速を完了するまでの時間が、通常の第1速ギヤ段から第3速ギヤ段へのアップシフト変速と比較して遅くなるように自動変速部20を含む変速機構10を制御する。
【0129】
より典型的には、後述される図14に示されるように、アップシフト変速である第2変速パターンの変速として、第1速ギヤ段から第2速ギヤ段への変速が実行される場合、イナーシャ相の最中にエンジン8の電子スロットル弁の開度を低下させ、エンジン8の出力トルクを低下させてよい。ここに、本実施形態に係るイナーシャ相とは、車両がエンジン8、第1電動機M1、及び第2電動機M2からの駆動力によらずに、慣性により走行している走行状態を意味する。このイナーシャ相の走行状態により変速機構10の各要素間で伝達される力を減少させることにより、変速前後の第1電動機M1の回転速度の変化量を、比較例と比べて、より小さくさせることができる。これにより、変速機構10の各要素の摩擦材の耐久性を効果的に向上させることができるので、実践上、大変有益である。より典型的には、イナーシャ相の最中においてエンジン8で発生する出力トルクの低下に伴って、エンジン8の回転速度を低下させる際の発生する、変速機構10の各要素間での伝達力を減少することができる。この結果、変速の際に発生する衝撃力が大きくなることを効果的に抑制することができるので、変速機構10の各要素の摩擦材の耐久性を効果的に向上させることが可能である。
【0130】
尚、アップシフト変速において、ギヤ段が1段ずつ変速される場合は、変速パターンの変更を実施しなくてよい。これにより、高速なエンジン8の回転速度に起因したフューエルカット走行が行われる可能性を低減させることができる。
【0131】
他方、上述したステップS103の判定の結果、蓄電装置56の充放電が制限されていると判定されない場合(ステップS103:No)、更に、ハイブリッド制御手段84の制御下で、例えば図8に示すような変速マップに基づいて、車両状態に対応した自動変速部20の変速段が判断されると共に、自動変速部20による変速が実際に発生したか否かが判定される(ステップS107)。ここで、自動変速部20による変速が実際に発生したと判定される場合(ステップS107:Yes)、充放電制限時変速制御手段96の制御下で、上述した第1変速パターンの変速が実行される(ステップS108)。
【0132】
他方、上述したステップS101の判定の結果、エンジン8の引き摺りの状態が正常な状態であると判定されない場合、即ち、エンジン8の引き摺りの状態が異常な状態であると判定される場合(ステップS101:No)、ハイブリッド制御手段84の制御下で、例えば車両状態が図8に示すような駆動力源マップにおけるモータ走行領域であったとしても、モータ走行が禁止されて、エンジン走行が継続される、或いは、モータ走行からエンジン走行への切換えが実行される(ステップS109)。何故ならば、エンジン8の引き摺りの状態が異常な状態である場合、モータ走行時にエンジン回転速度NEが零乃至略零に維持されない可能性があり、正常なモータ走行を行うことができない可能性が高いからである。
【0133】
他方、上述したステップS104の判定の結果、ステップS104の判定の結果、自動変速部20の変速によって、入力制限WINの状態、又は、出力制限WOUTの状態における不具合が発生したと判定されない場合(ステップS104:No)、上述したステップS105の判定の結果、第1電動機M1に加えて又は代えて第2電動機M2において出力制限が実施されていると判定されない場合(ステップS105:No)、或いは、上述したステップS107の判定の結果、自動変速部20による変速が実際に発生したと判定されない場合(ステップS107:No)、本ルーチンを終了する。
【0134】
尚、上述したステップS104の判定の結果、ステップS104の判定の結果、自動変速部20の変速によって、入力制限WINの状態、又は、出力制限WOUTの状態における不具合が発生したと判定されない場合(ステップS104:No)、上述したように、充放電制限時変速制御手段96の制御下で、上述した第1変速パターンの変速が実行される(ステップS108)ようにしてもよい。
【0135】
(車両の駆動装置の動作タイミング)
次に、図14を参照して、本実施形態に係る車両の駆動制御装置の動作タイミングについて説明する。ここに、図14は、本実施形態に係る車両の駆動制御装置における動作タイミングを示したタイミングチャートである。尚、図14中の実線は、本実施形態に係る第1速ギヤ段から第2速ギヤ段へのアップシフト変速の進行を遅延させた場合を示し、図14中の点線は、比較例に係る第1速ギヤ段から第2速ギヤ段へのアップシフト変速の進行を遅くさせない場合を示す。また、図14は、エンジン8を駆動力源とし、Dポジションで発進した走行状態を示す。また、図14中の実線が本実施形態に対応し、鎖線が一般例に対応している。
【0136】
図14に示されるように、時間軸に沿った時刻T1において、充放電制限時変速制御手段96の制御下で、蓄電装置56の充放電が制限されていると判定される。典型的には、蓄電装置56と、第1電動機M1との電力の受け渡しが制限されていると判定される、或いは、蓄電装置56と、第2電動機M2との電力の受け渡しが制限されていると判定される。より典型的には、蓄電装置56に充電される電力が制限されている状態である入力制限WINの状態となったと判定される。より典型的には、走行中に何らかの理由で蓄電池(ニッケル水素電池或いはリチウムイオン電池)に入力制限WINの状態となったと判定される。
【0137】
次に、時間軸に沿った時刻T2において、ハイブリッド制御手段84の制御下で、例えば図8に示すような変速マップに基づいて、車両状態に対応した自動変速部20の変速ギヤ段が判断され、第1速ギヤ段から第2速ギヤ段へのアップシフト変速の実施が判定される。
【0138】
次に、時間軸に沿った時刻T3において、第1速ギヤ段に対応した自動変速部20の要素における油圧が低下し始める。特に、この時刻T3は、車両がイナーシャ相の走行状態を開始した時点である。
【0139】
次に、時間軸に沿った時刻T4において、第2速ギヤ段に対応した自動変速部20の要素における油圧が増加し始める。
【0140】
次に、時間軸に沿った時刻T5において、充放電制限時変速制御手段96は、第1速ギヤ段から第2速ギヤ段へのアップシフト変速における進行を、比較例に係る通常のアップシフト変速と比較して遅延するように自動変速部20を含む変速機構10を制御する。言い換えると、充放電制限時変速制御手段96は、第1速ギヤ段から第2速ギヤ段へのアップシフト変速を完了するまでの時間が通常のアップシフト変速と比較して遅くなるように自動変速部20を含む変速機構10を制御する。典型的には、第1速ギヤ段に対応した自動変速部20の油圧、所謂、第1速ギヤ段の解放圧の低下に伴って、第2速ギヤ段に対応した自動変速部20の油圧、所謂、係合圧が上昇する際の上昇速度を、比較例に係る変速(図14中の点線の参照)と比較して、遅くさせ、第1速ギヤ段から第2速ギヤ段へのアップシフト変速の進行を遅らせる(図14中の実線の参照)。続いて、時間軸に沿った時刻T6において、第2速ギヤ段に対応した自動変速部20の要素における油圧の増加が完了し、第1速ギヤ段から第2速ギヤ段へのアップシフト変速が完了する。尚、時間軸に沿った時刻T6xは、比較例に係る第1速ギヤ段から第2速ギヤ段へのアップシフト変速の進行を遅くさせない場合において、第1速ギヤ段から第2速ギヤ段へのアップシフト変速が完了した時点を示す。
【0141】
このような本実施形態に係る第1速ギヤ段から第2速ギヤ段へのアップシフト変速の進行の遅延により、第1電動機M1の回転速度が上昇する際の変化速度を、比較例に係る第1速ギヤ段から第2速ギヤ段へのアップシフト変速の進行を遅くさせない場合(図14中の点線の参照)と比較して、低下することができる(図14中の実線の参照)。これにより、蓄電装置56の充放電が制限された状態の下で、第1電動機M1の回転速度が許容回転速度(即ち、正側の許容回転速度)を超えることを効果的に抑制することができる。
【0142】
以上より、蓄電装置56において電力の供給又は電力の充電が制限された状態の下で、変速機構10の変速が行われた場合においても、第1電動機M1の回転速度を許容回転速度の範囲内にさせ、第1電動機M1の駆動又は発電において、第1電動機M1と蓄電装置56との間で授受される電力を低減することができる。概ね同様にして、蓄電装置56において電力の供給又は電力の充電が制限された状態の下で、変速機構10の変速が行われた場合においても、第2電動機M2の回転速度を許容回転速度の範囲内にさせ、第2電動機M2の駆動又は発電において、第2電動機M2と蓄電装置56との間で授受される電力を低減することができる。
【0143】
以上の結果、蓄電装置56の耐久性を効果的に向上させることができる。
【0144】
特に、この第1速ギヤ段から第2速ギヤ段へのアップシフト変速の進行を遅くさせる変速機構10の制御を実施することに伴って、自動変速部20の入力軸の回転トルクを低下させてよい。典型的には、エンジン8の電子スロットル弁の開度を低下させることによって、自動変速部20の入力軸の回転トルクを低下させてよいし、エンジン8の点火時期を通常よりも遅角させることによって、自動変速部20の入力軸の回転トルクを低下させてよい。
【0145】
これにより、変速前後の第1電動機M1の回転速度の変化の度合いを、比較例(図14中の点線の参照)と比べて、より小さくさせることができる(図14中の実線の参照)。或いは、これにより、変速前後の第2電動機M2の回転速度の変化の度合いを、比較例(図14中の点線の参照)と比べて、より小さくさせることができる(図14中の実線の参照)。この結果、蓄電装置56の耐久性を効果的に向上させることができるので、実践上、大変有益である。
【0146】
特に、イナーシャ相の開始後にエンジン8の電子スロットル弁の開度を低下させ、エンジン8の出力トルクを低下させることにより、このイナーシャ相の走行状態により変速機構10の各要素間で伝達される力を減少させる。これにより、変速前後の第1電動機M1の回転速度の変化量を、比較例と比べて、より小さくさせることができ、変速機構10の各要素の摩擦材の耐久性を効果的に向上させることができるので、実践上、大変有益である。より典型的には、イナーシャ相の開始後においてエンジン8で発生する出力トルクの低下に伴って、エンジン8の回転速度を低下させる際の発生する、変速機構の各要素間での伝達力を減少することができる。この結果、変速の際に発生する衝撃力が大きくなることを効果的に抑制することができるので、変速機構10の各要素の摩擦材の耐久性を効果的に向上させることが可能である。
【0147】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う車両の駆動制御装置もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0148】
本発明は、例えばハイブリッド車両等の差動作用が作動可能な差動機構を有する電気式差動部と、その電気式差動部から駆動輪への動力伝達経路に設けられた変速部とを備える車両の駆動制御装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0149】
8:エンジン
10:変速機構(車両用駆動装置)
11:電気式差動部
16:動力分配機構(差動機構)
18:伝達部材
20:自動変速部(変速部、自動変速機)
22:出力軸
34:駆動輪
56:蓄電装置
70:油圧制御回路
80:電子制御装置(制御装置)
84:ハイブリッド制御手段、
82:有段変速制御手段
96:充放電制限時変速制御手段
98:充放電制限判定手段
100:電動機出力制限判定手段
M1:第1電動機
M2:第2電動機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1回転電機と、
相互に差動回転可能な3つの分配要素を持ちこれらのうちのいずれか2つの分配要素の一方に内燃機関が他方に前記第1回転電機が夫々連結された動力分配機構と、
前記動力分配機構の残りの分配要素に連結された前記第2回転電機と、
前記動力分配機構の残りの分配要素に連結された伝達部材と、
前記第1回転電機若しくは前記第2回転電機への電力の供給又は前記第1回転電機若しくは前記第2回転電機が発電する電力の充電を行う蓄電装置と、
車両の駆動輪に動力を出力するための出力部材と、
前記伝達部材から前記出力部材までの動力伝達経路に設けられると共に、相互に差動回転可能な複数の要素を有する変速機構と、
前記車両の走行状態に基づいて、前記変速機構の一のギヤ段から前記一のギヤ段と異なる他のギヤ段へ変速する際の組み合わせである第1変速パターンを決定する決定手段と、
前記電力の供給又は前記電力の充電が制限される場合、前記決定された第1変速パターンから、前記第1変速パターンと比較して変速段数が少ない第2変速パターンへ変更するように前記変速機構を制御する制御手段と
を備えることを特徴とする車両の駆動制御装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記電力の供給又は前記電力の充電が制限され、且つ、前記決定された第1変速パターンの変速段数が2段以上である場合、前記第1変速パターンによる変速を禁止し、前記第2変速パターンへ変更するように前記変速機構を制御することを特徴とする請求項1に記載の車両の駆動制御装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記電力の供給又は前記電力の充電が制限され、且つ、前記第1変速パターンの変速段数が2段以上である場合、1段ずつ変速するように前記変速機構を制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の車両の駆動制御装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記第1変速パターンから前記第2変速パターンへ変更するように前記変速機構を制御することに加えて、前記伝達部材から前記変速機構へ伝達されるトルクを低減するように前記内燃機関の駆動状態及び/または前記第1回転電機の回転状態、及び/または前記第2回転電機の回転状態を制御することを特徴とする請求項1から3のうちいずれか一項に記載の車両の駆動制御装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記電力の供給が制限される場合として前記蓄電装置の充電容量に基づく電力の供給量が所定範囲外である場合、前記第1変速パターンから前記第2変速パターンへ変更するように前記変速機構を制御することを特徴とする請求項1から4のうちのいずれか一項に記載の車両の駆動制御装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記電力の充電が制限される場合として前記蓄電装置の充電容量に基づく電力の充電量が所定範囲外である場合、前記第1変速パターンから前記第2変速パターンへ変更するように前記変速機構を制御することを特徴とする請求項1から5のうちのいずれか一項に記載の車両の駆動制御装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記電力の供給又は前記電力の充電が制限され、且つ、前記決定された第1変速パターンがダウンシフト変速パターンである場合、前記第1変速パターンから前記第2変速パターンへ変更するように前記変速機構を制御することを特徴とする請求項1から6のうちのいずれか一項に記載の車両の駆動制御装置。
【請求項8】
前記制御手段は、前記電力の供給又は前記電力の充電が制限される場合、且つ、前記内燃機関の出力パワーが所定値を超える場合、前記第1変速パターンから前記第2変速パターンへ変更するように前記変速機構を制御することを特徴とする請求項1から7のうちのいずれか一項に記載の車両の駆動制御装置。
【請求項9】
前記制御手段は、前記第2変速パターンへの変更として、変速を禁止するように前記変速機構を制御することを特徴とする請求項1から8のうちのいずれか一項に記載の車両の駆動制御装置。
【請求項10】
前記制御手段は、前記第2変速パターンへの変更として、変速を遅延するように前記変速機構を制御することを特徴とする請求項1から8のうちのいずれか一項に記載の車両の駆動制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−201397(P2011−201397A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−69979(P2010−69979)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】