説明

車両制御装置

【課題】運転者の旋回意思を判定し、旋回に必要な制御を早期に開始可能とする車両制御装置を提供する。
【解決手段】車輪の偏向時に車輪が路面から受ける反力トルクに基づいて運転者の旋回意思を検出する旋回意思検出器2と、車両の旋回運動を司るアクチュエータ4を制御するブレーキ制御器3とを備え、ブレーキ制御器3は、旋回意思検出器2の出力に基づき、アクチュエータ4の駆動を制御することにより、車輪の偏向時に路面から受ける反力トルクから運転者の旋回意思を検出し、運転者のハンドル操作もしくは車両状態量が発生する以前から制御を開始し、制御を早期のタイミングで実施する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両の偏向時に車輪が路面から受ける反力トルクを用いて運転者の旋回意思を検出し、車両の旋回状態を制御する車両制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の車両制御装置として、運転者のハンドル操作や車両に発生する状態量によって車両の旋回状態を判定し、他の車両挙動制御装置と連携して旋回状態を安定させる車両制御装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3588818号公報(段落0019、図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1に開示された技術によれば、車両のヨーレートもしくはハンドル操舵角が発生しているか否かによって車両の旋回状態を判定し、変速比やスロットル開度を制御することで車両の旋回状態を安定させることができる。
【0005】
しかしながら、運転者のハンドル操作もしくは車両状態量が発生してから制御を開始するため、制御のタイミングが遅れ、必ずしも安定した走行ができない問題があった。
【0006】
また、制御のタイミングが遅れることにより、制御開始時に大きな制御量が発生し、ショックが発生したり、運転者に違和感を与えたりする問題があった。
【0007】
また、これに加えて、車両の旋回状態を判定するためのハンドル角センサやヨーレートセンサ、横加速度センサが非常に高価であり、車両制御装置のコストアップを招く要因となっていた。
【0008】
この発明は、これらの問題を解決するためになされたもので、運転者の旋回意思を判定し、旋回に必要な制御を早期に開始可能とする車両制御装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係る車両制御装置は、運転者の操舵トルクを検出する操舵トルク検出手段と、前記運転者の操舵トルクをアシストする電動モータと、前記電動モータのモータ電流を検出するモータ電流検出手段と、前記車両の走行速度もしくは車輪速を検出する車速検出手段と、前記操舵トルク検出手段の出力と前記モータ電流検出手段の出力と前記車速検出手段の出力とに基づいて前記車輪の偏向時に前記車輪が路面から受ける反力トルクを検出し、該反力トルクに基づき前記運転者の旋回意思を検出する旋回意思検出手段と、前記旋回意思検出手段の出力に基づき、前記車両の旋回運動を司るアクチュエータの駆動を制御する旋回制御手段と、を具備し、前記旋回制御手段は、前記車両のロール運動やピッチ運動を抑制するサスペンション制御手段を備えたものである。
【発明の効果】
【0010】
この発明に係る車両制御装置によれば、車輪の偏向時に路面から受ける反力トルクから運転者の旋回意思を検出し、運転者のハンドル操作もしくは車両状態量が発生する以前から制御を開始するため、制御を早期のタイミングで実施することができ、車両が不安定になる前から安定した走行を維持することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の実施の形態1に係る車両制御装置の構成図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係る電動パワーステアリング制御器を含む車両の電動パワーステアリング装置の説明図である。
【図3】この発明の実施の形態1に係る電動パワーステアリング制御器の動作フロー図である。
【図4】この発明の実施の形態1に係る電動パワーステアリング制御器において、目標電流を決定するためのマップである。
【図5】この発明の実施の形態1に係る偏向トルクとハンドル角(実舵角)、ヨーレート、横加速度の位相関係を示す説明図である。
【図6】この発明の実施の形態1に係るブレーキ制御器の動作フロー図である。
【図7】この発明の実施の形態2に係る車両制御装置の構成図である。
【図8】この発明の実施の形態2に係る駆動力制御器の動作フロー図である。
【図9】この発明の実施の形態3に係る車両制御装置の構成図である。
【図10】この発明の実施の形態3に係るサスペンション制御器の動作フロー図である。
【図11】この発明の実施の形態4に係る車両制御装置の構成図である。
【図12】この発明の実施の形態4に係る偏向制御器の動作フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付の図面を参照して、この発明に係る車両制御装置について好適な実施の形態を説明する。なお、これらの実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0013】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に係る車両制御装置の構成図である。図1において、電動パワーステアリング制御器1は、後述するように操舵アシスト用の電動モータを制御するとともに、操舵トルク信号Tsおよびモータ電流信号Imtrを旋回意思検出手段である旋回意思検出器2に出力する。旋回意思検出器2は、電動パワーステアリング制御器1から出力される操舵トルク信号Tsおよびモータ電流信号Imtrに基づいて運転者の旋回意思指標Sを演算し、その旋回意思指標Sを、旋回制御手段、即ち、ブレーキ制御器3に出力する。ブレーキ制御器3は、旋回意思検出器2から出力される旋回意思指標Sに基づいて車両の旋回運動を司るアクチュエータ、即ち、ブレーキアクチュエータ4を制御する。
【0014】
次に、この実施の形態1に係る車両制御装置の動作について説明する。まず、電動パワーステアリング制御器1について説明する。図2は、電動パワーステアリング制御器1を含む車両の電動パワーステアリング装置を説明する図である。
【0015】
図2において、電動パワーステアリング装置20は、ハンドル21、ハンドル21の回転に応じて転舵される車輪のタイヤ22、運転者の操舵トルクThdlを検出し、操舵トルク信号Tsを出力する操舵トルク検出手段のトルクセンサ23、操舵アシストトルクTassistを発生する電動モータ24、電動モータ24の電流を検出してモータ電流信号Imtrを出力するモータ電流検出手段の電流センサ25、車両の走行速度を検出して車速信号Vhを出力する車速検出手段の車速センサ26、および電動パワーステアリング制御器1により構成されている。なお、Vsupplyは電動パワーステアリング制御器1が電動モータ24に供給する電圧を示し、また、Talignは、路面反力トルクを示している。
【0016】
次に、電動パワーステアリング制御器1の動作を説明する。図3は電動パワーステアリング制御器1の動作フローを示す図であるが、ステップS31〜ステップS34までの処理は一般的な電動パワーステアリング制御器と同様である。
【0017】
まず、操舵トルク信号Tsおよび車速信号Vhを入力する(ステップS31)。次に、操舵トルク信号Ts、車速信号Vhに基づいて、電動モータ24の目標電流Itagを決定する(ステップS32)。ここでは一般的に図4に示すようなマップに従って目標電流Itagを決定する。図4は、横軸を操舵トルク信号Ts、縦軸を電動モータ24の目標電流Itagとし、車速信号Vhをパラメータとするマップである。
【0018】
次に、モータ電流信号Imtrを入力し(ステップS33)、モータ電流信号Imtrが目標電流Itagに一致するようにモータ供給電圧Vsupplyを制御する(ステップS34)。このようにして電動パワーステアリング制御器1は操舵アシストトルクTassistを制御する。
【0019】
本実施の形態に係る電動パワーステアリング制御器1では、更に、旋回制御のために、操舵トルク信号Ts及びモータ電流信号Imtrを旋回意思検出器2へ出力する(ステップS35)。
【0020】
次に、旋回意思検出器2について説明する。本実施の形態に係る旋回意思検出器2は、前述のように、操舵トルク信号Tsおよびモータ電流信号Imtrを入力し、下記に示す式1に基づいて車輪の偏向トルクTstrを演算し、これを旋回意思指標Sとしてブレーキ制御器3へ出力する。
旋回意思指標S=車輪の偏向トルクTstr
=操舵トルク信号Ts+操舵アシストトルクTassist
−機構摩擦トルクTfric
=操舵トルク信号Ts+モータ電流信号Imtr*Kt
−機構摩擦トルクTfric・・・・・・・・・・・・・(式1)
【0021】
前記の式1において、Ktはモータ電流Imtrから操舵アシストトルクTassistへの変換定数を示し、Tfricはステアリング機構の摩擦トルクを示す。旋回における偏向トルクTstrは、車輪が路面から受ける反力トルク、すなわち路面反力トルクであり、路面反力トルクは運転者の操舵トルクTsと電動パワーステアリング装置20の操舵アシストトルクTassistの合計トルクから、ステアリング機構の摩擦トルクTfricを引いた値に等しく、操舵トルクTsは電動パワーステアリング装置20に搭載されるトルクセンサ23によって検出され、操舵アシストトルクTassistは電動モータ24に発生するモータ電流信号Imtrから検出される。ステアリング機構の摩擦トルクTfricは車速Vhによって変化するパラメータであり、車速Vhが検出できれば演算などで求められる値である。
【0022】
ここで、旋回意思指標Sとした車輪の偏向トルクTstrの特性を、図5を用いて説明する。図5は直進走行から旋回走行に入った際の、車輪の偏向トルクTstrとハンドル角(実舵角)、ヨーレート、横加速度の位相を比較したものである。旋回のため車輪を偏向すると車輪はキングピンを中心軸とする回転運動を行う。運転者が旋回の意思を持ち、操舵トルクTsを発生させると、その操舵トルクTsに応じて電動パワーステアリング装置20を構成する電動モータ24に電流が流れ、操舵アシストトルクTassistが発生する。そして、操舵トルクTsと操舵アシストトルクTassistの合計トルクから、車輪を偏向するための偏向トルクTstrが得られるが、偏向トルクTstrがタイヤ22と路面の間の摩擦Tμを超えたところで、実際に転舵が開始される(実舵角が生じる)。そして、車輪の転舵により、タイヤ22に横力が発生し、車両にヨー方向、横方向の運動が発生し、ようやくヨーレートや横加速度が発生する。このような原理によって、車輪の偏向トルクTstrによれば、ハンドル角やヨーレートセンサ、横加速度センサを用いるよりも早期に運転者の旋回意思を検出することができる。
【0023】
なお、本実施の形態では、偏向トルク(路面反力トルク)を、操舵トルクとアシスト電流、車速によって求める例について説明したが、キングピン軸に取り付けたトルクセンサや、車軸受け等に搭載されたロードセルなどのセンサ信号によって検出しても、同様の効果を得ることができる。
【0024】
次に、ブレーキ制御器3およびブレーキアクチュエータ4について説明する。図6はブレーキ制御器3の動作を示すフロー図である。まず、旋回意思検出器2から出力される旋回意思指標Sを入力する(ステップS61)、そして旋回意思指標Sに基づいて、目標減速度Dtagを決定する(ステップS62)。次に、目標減速度Dtagに基づいてブレーキアクチュエータ4の目標ブレーキ圧Ptagを演算する(ステップS63)。そして演算された目標ブレーキ圧Ptagに基づいてブレーキアクチュエータ4の駆動制御を行う(ステップS64)。ブレーキ制御器3はこれらステップS61〜ステップS64の処理を所定周期ごとに繰り返す。
【0025】
ここで、例えば旋回意思指標Sが大きいほど、目標減速度Dtagが大きくなるよう設定すれば、運転者が車線変更などで軽い操舵トルクで操舵を行う場合は小さな減速度で制御が行われるが、緊急回避など強い操舵トルクが加わった場合は大きな減速が行われる等、必要に応じて最適な制御が実施されるようになる。
【0026】
更に、ブレーキ制御器3に制動力配分制御手段を設け、旋回内側や前輪側のブレーキアクチュエータにより目標ブレーキ圧Ptagを大きく配分するように設定すれば、車両の旋回モーメントを一層最適に制御できるようになる。
【0027】
以上のように、実施の形態1に係る車両制御装置は、電動パワーステアリング制御器1から出力される操舵トルク信号Ts及びモータ電流信号Imtrに基づいて、運転者の旋回意思を検出し、旋回時のブレーキ制御を行うようにしたものである。これによって、従来よりも早期に旋回意思を検出でき、早期の制御開始や違和感のない車両制御が可能になる。
【0028】
また、従来のハンドル角やヨーレートセンサ、横加速度センサ等のセンサに代えて、電動パワーステアリング制御器1から得られる信号を用いるので、車両制御装置のコストダウンを実現することができる。
【0029】
なお、実施の形態1で説明した旋回意思指標Sに基づく目標減速度Dtagや目標ブレーキ圧Ptagの設定方法は一例であり、ブレーキシステムによる旋回の制御方法を限定するものではない。
【0030】
実施の形態2.
次に、この発明の実施の形態2に係る車両制御装置について説明する。図7は実施の形態2に係る車両制御装置の構成図である。図7において、電動パワーステアリング制御器1は、操舵アシスト用の電動モータを制御するとともに、操舵トルク信号Tsおよびモータ電流信号Imtrを旋回意思検出手段である旋回意思検出器2に出力する。旋回意思検出器2は、電動パワーステアリング制御器1から出力される操舵トルク信号Tsおよびモータ電流信号Imtrに基づいて運転者の旋回意思指標Sを演算し、その旋回意思指標Sを駆動力制御手段である駆動力制御器73に出力する。駆動力制御器73は、旋回意思検出器2から出力される旋回意思指標Sに基づいてエンジン74、あるいは駆動力配分制御手段である駆動力配分アクチュエータ75を制御する。
【0031】
ここで、エンジン74として、一般的なレシプロエンジンを用いて説明するが、電気自動車などモータを駆動源とする車両においても説明の内容は同様である。また、駆動力配分アクチュエータ75は、エンジン74で発生した駆動トルクを、拘束力の制御が可能なディファレンシャルギアや多板クラッチ等(図示しない)で左右輪や前後輪に配分する電子制御LSD(リミテッドスリップディファレンシャルギア)や電子制御センターディファレンシャルギアなどである。
【0032】
次に、実施の形態2に係る車両制御装置の動作について説明する。電動パワーステアリング制御器1および旋回意思検出器2の動作については、実施の形態1と同様であり、その説明を省略し、駆動力制御器73およびエンジン74、駆動力配分アクチュエータ75について説明する。
【0033】
図8は駆動力制御器73の動作を示すフロー図である。まず、旋回意思検出器2から出力される旋回意思指標Sを入力する(ステップS81)、そして旋回意思指標Sに基づいて、目標減速度Dtag、目標ヨーレートYtagを決定する(ステップS82)。次に、目標減速度Dtag、目標ヨーレートYtagに基づいてエンジン74の駆動トルク低減量DTtag、駆動力配分アクチュエータ75の左右トルク配分量DStagを演算する(ステップS83)。そして演算された駆動トルク低減量DTtagに基づいてエンジンの駆動トルク低減、左右トルク配分量DStagに基づいて駆動力配分アクチュエータ75の駆動制御を行う(ステップS84)。駆動力制御器73はこれらステップS81〜ステップS84の処理を所定周期ごとに繰り返す。
【0034】
ここで、例えば旋回意思指標Sが大きいほど、目標減速度Dtagが大きくなるよう設定すれば、運転者が車線変更などで軽い操舵トルクで操舵を行う場合は小さな減速度で制御が行われるが、緊急回避など強い操舵トルクが加わった場合は大きな減速が行われるようになり、必要に応じて最適な駆動制御が実施されるようになる。
【0035】
更に、例えば旋回意思指標Sが大きいほど目標ヨーレートYtagが大きくなるよう設定すれば、運転者の旋回意思に合わせて旋回外側の車輪の駆動トルクを増加させるなど、車両の旋回モーメントを最適に制御できるようになる。
【0036】
以上のように、実施の形態2に係る車両制御装置は、電動パワーステアリング制御器1から出力される操舵トルク信号Ts及びモータ電流信号Imtrに基づいて、運転者の旋回意思を検出し、旋回時の駆動力制御を行うようにしたものである。これによって、従来よりも早期に旋回意思を検出でき、早期の制御開始や違和感のない車両制御が可能になる。また、従来のハンドル角やヨーレートセンサ、横加速度センサ等のセンサに代えて、電動パワーステアリング制御器1から得られる信号を用いるので、車両制御装置のコストダウンを実現することができる。
【0037】
なお、実施の形態2で説明した旋回意思指標Sに基づく目標減速度Dtagや目標ヨーレートYtag、駆動トルク低減量DTtagや左右トルク配分量DStagの設定方法は一例であり、駆動力による旋回の制御方法を限定するものではない。
【0038】
実施の形態3.
次に、この発明の実施の形態3に係る車両制御装置について説明する。図9は実施の形態3に係る車両制御装置の構成図である。図9において、電動パワーステアリング制御器1は、操舵アシスト用の電動モータを制御するとともに、操舵トルク信号Tsおよびモータ電流信号Imtrを旋回意思検出手段である旋回意思検出器2に出力する。旋回意思検出器2は、電動パワーステアリング制御器1から出力される操舵トルク信号Tsおよびモータ電流信号Imtrに基づいて運転者の旋回意思指標Sを演算し、その旋回意思指標Sをサスペンション制御手段であるサスペンション制御器93に出力する。サスペンション制御器93は、旋回意思検出器2から出力される旋回意思指標Sに基づいてサスペンションアクチュエータ94を制御する。ここで、サスペンションアクチュエータ94は、ダンパーの流量制御を行う減衰量制御アクチュエータや、スタビライザーのねじれ量を制御する電子スタビライザーなどである。
【0039】
次に、実施の形態3に係る車両制御装置の動作について説明する。電動パワーステアリング制御器1および旋回意思検出器2の動作については、実施の形態1と同様であり、その説明を省略し、サスペンション制御器93およびサスペンションアクチュエータ94について説明する。
【0040】
図10はサスペンション制御器93の動作を示すフロー図である。まず、旋回意思検出器2から出力される旋回意思指標Sを入力する(ステップS1001)、そして旋回意思指標Sに基づいて、目標旋回度YGtagを決定する(ステップS1002)。次に、目標旋回度YGtagに基づいてサスペンションアクチュエータ94の制御量QStagを演算する(ステップS1003)。そして演算された制御量QStagに基づいてサスペンションアクチュエータ94の駆動制御を行う(ステップS1004)。サスペンション制御器93はこれらステップS1001〜ステップS1004の処理を所定周期ごとに繰り返す。
【0041】
ここで、例えば旋回意思指標Sが大きいほど、目標旋回度YGtagが大きくなるように設定し、目標旋回度YGtagに応じて旋回外側のサスペンションの減衰度を大きく、旋回内側のサスペンションの減衰度を小さくなるようにサスペンション制御量QStagを設定すれば、運転者の旋回意思に応じて最適にロール量を抑えた制御が実施されるようになる。
【0042】
更に、サスペンション配分制御手段を設け、サスペンション制御量QStagを、前輪側のサスペンション減衰度を大きく配分するように設定すれば、旋回に備えた減速時のピッチを抑制することも可能になる。
【0043】
以上のように、実施の形態3に係る車両制御装置は、電動パワーステアリング制御器1から出力される操舵トルク信号Ts及びモータ電流信号Imtrに基づいて、運転者の旋回意思を検出し、旋回時のサスペンション制御を行うようにしたものである。これによって、従来よりも早期に旋回意思を検出でき、早期の制御開始や違和感のない車両制御が可能になるだけでなく、従来のハンドル角やヨーレートセンサ、横加速度センサ等のセンサに代えて、電動パワーステアリング制御器1から得られる信号を用いるので、車両制御装置のコストダウンを実現することができる。
【0044】
なお、本実施の形態で説明した旋回意思指標Sに基づく目標旋回度YGtagやサスペンション制御量QStagの設定方法は一例であり、サスペンションシステムによる旋回の制御方法を限定するものではない。
【0045】
実施の形態4.
次に、この発明の実施の形態4に係る車両制御装置について説明する。図11は実施の形態4に係る車両制御装置の構成図である。図11において、電動パワーステアリング制御器1は、操舵アシスト用の電動モータを制御するとともに、操舵トルク信号Tsおよびモータ電流信号Imtrを旋回意思検出手段である旋回意思検出器2に出力する。旋回意思検出器2は、電動パワーステアリング制御器1から出力される操舵トルク信号Tsおよびモータ電流信号Imtrに基づいて運転者の旋回意思指標Sを演算し、その旋回意思指標Sを偏向制御器113に出力する。偏向制御器113は、旋回意思検出器2から出力される旋回意思指標Sに基づいてステアリング制御手段である偏向アクチュエータ114を制御する。ここで、偏向アクチュエータ114は、車輪の偏向をモータによって行うステア・バイ・ワイヤや4WS機構である。
【0046】
次に、実施の形態4に係る車両制御装置の動作について説明する。電動パワーステアリング制御器1および旋回意思検出器2の動作については、実施の形態1と同様であり、その説明を省略し、偏向制御器113および偏向アクチュエータ114について説明する。
【0047】
図12は偏向制御器113の動作を示すフロー図である。まず、旋回意思検出器2から出力される旋回意思指標Sを入力する(ステップS1201)、そして旋回意思指標Sに基づいて、目標ヨーレートYtagを決定する(ステップS1202)。次に、目標ヨーレートYtagに基づいて偏向アクチュエータ114の制御量Qtagを演算する(ステップS1203)。そして演算された制御量Qtagに基づいて偏向アクチュエータ114の駆動制御を行う(ステップS1204)。偏向制御器113はこれらステップS1201〜ステップS1204の処理を所定周期ごとに繰り返す。
【0048】
ここで、例えば旋回意思指標Sが大きいほど、目標ヨーレートYtagが大きくなるように設定し、目標ヨーレートYtagに応じて偏向制御量Qtagを設定すれば、運転者が車線変更などで軽い操舵トルクで操舵を行う場合は小さな制御量で制御が行われるが、緊急回避など強い操舵トルクが加わった場合は大きな制御量による旋回制御が行われるようになり、必要に応じて最適な制御が実施されるようになる。
【0049】
以上のように、実施の形態4に係る車両制御装置は、電動パワーステアリング制御器1から出力される操舵トルク信号Ts及びモータ電流信号Imtrに基づいて、運転者の旋回意思を検出し、旋回時の偏向制御を行うようにしたものである。これによって、従来よりも早期に旋回意思を検出でき、早期の制御開始や違和感のない車両制御が可能になるだけでなく、従来のハンドル角やヨーレートセンサ、横加速度センサ等のセンサに代えて、電動パワーステアリング制御器1から得られる信号を用いるので、車両制御装置のコストダウンを実現することができる。
【0050】
なお、本実施の形態で説明した旋回意思指標Sに基づく目標ヨーレートYtagや偏向制御量Qtagの設定方法は一例であり、偏向システムによる旋回の制御方法を限定するものではない。
【符号の説明】
【0051】
1 電動パワーステアリング制御器
2 旋回意思検出器
3 ブレーキ制御器
20 電動パワーステアリング装置
21 ハンドル
22 タイヤ
23 トルクセンサ
24 電動モータ
25 電流センサ
26 車速センサ
73 駆動力制御器
74 エンジン
75 駆動力配分アクチュエータ
93 サスペンション制御器
94 サスペンション
113 偏向制御器
114 偏向アクチュエータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者の操舵トルクを検出する操舵トルク検出手段と、
前記運転者の操舵トルクをアシストする電動モータと、
前記電動モータのモータ電流を検出するモータ電流検出手段と、
前記車両の走行速度もしくは車輪速を検出する車速検出手段と、
前記操舵トルク検出手段の出力と前記モータ電流検出手段の出力と前記車速検出手段の出力とに基づいて前記車輪の偏向時に前記車輪が路面から受ける反力トルクを検出し、該反力トルクに基づき前記運転者の旋回意思を検出する旋回意思検出手段と、
前記旋回意思検出手段の出力に基づき、前記車両の旋回運動を司るアクチュエータの駆動を制御する旋回制御手段と、を具備し、
前記旋回制御手段は、前記車両のロール運動やピッチ運動を抑制するサスペンション制御手段を備えたことを特徴とする車両制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−57214(P2011−57214A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−223716(P2010−223716)
【出願日】平成22年10月1日(2010.10.1)
【分割の表示】特願2008−222030(P2008−222030)の分割
【原出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】