説明

車両用表示システム

【課題】運転者の視界が悪い場合に、見え難い標識等の情報を表示できると共に、運転者が視線を移動させることなく表示された標識等の情報を見ることを可能にする。
【解決手段】本発明の車両用表示システム1は、車両の現在位置と進行方向を検知し、車両に搭載された画像撮像手段10により撮像されたデータから気象や視界に関する安全度を判定し、現在位置と進行方向に基づいて標識情報データベース5と道路情報データベース6から仮想的な景色等の画像を作成し、そして、安全度が低いと判定されたとき、近くの現実の画像と上記仮想的な画像を視界距離に応じて両画像が違和感なくつながるように透過度を変化させて重ね合わせて車両のフロントガラスに表示するように構成したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載して使用するものであって、運転者の視認性を高めることができる車両用表示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
交通事故を少なくするために、車両にはいくつかの安全運転支援機能が搭載されている。ナイトビジョンと呼ばれる夜間の歩行者を検知して、表示器を用いて運転者に歩行者がどこにいるかを教える視覚支援システムがある。このシステムでは、自動車に搭載された赤外線等のセンサが歩行者を認識すると、運転者に対してその歩行者に衝突しないように運転を行うための情報を提供するように構成されている。また、カメラで標識を認識して運転者に標識情報を提供することも検討されている。
【0003】
標識には、通常反射板が表面に設置されており、夜間でも車両のランプの光の反射で標識の位置が把握できる。しかし、標識の(高さ)位置や周囲の環境(電柱、植え込み)や天候条件によっては標識が見えない場合がある。その場合、運転者は標識を見逃し、事故が発生するおそれがある。そのため、標識がどこに建てられているかを運転者に確実に知らせる方法が必要である。
【特許文献1】特開2004−61259号公報
【特許文献2】特許第3360400号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、ユーザの視線の先に標識がある場合、その画像を拡大表示する構成が開示されている。この構成では、運転者が標識を見つけられない場合、標識が拡大表示されないため、運転者が標識を見落とした場合には効果がない。
【0005】
また、特許文献2には、気象情報と発光受光装置のセンシング結果に基づいて視認性を判定し、視認性が悪くなったと判定されると、VICSセンターから情報送信をし、VICS情報として送信されたデータをナビが受信すると、ナビの表示器に標識を表示するようにした構成が記載されている。
【0006】
この構成においては、運転者は視界が悪い場合に、見え難い標識があることはわかるが、どの位置にそれがあるか明確に知ることができない。特に、標識が停止標識の場合、近くにある停止線の位置がわからないと、安全運転を行う(安全に停止する)ためには不十分な情報である。
【0007】
また、上記した2つの構成においては、標識を車内に配設された表示器に表示する構成であるため、標識の確認をするために運転者は視線を移動しなければならず、安全運転上好ましくなかった。
【0008】
そこで、本発明の目的は、運転者の視界が悪い場合に、見え難い標識等の情報を表示できると共に、運転者が視線を移動させることなく表示された標識等の情報を見ることができる車両用表示システムを提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の車両用表示システムは、現在位置を計測する手段と、進行方向を検知するする手段と、車両に搭載された画像撮像手段と、撮像されたデータから気象や視界に関する安全度を判定する外界安全度判定手段と、標識情報データベースと、道路情報データベースと、現在位置と進行方向に基づいて標識情報データベースと道路情報データベースから仮想的な景色等の画像を描画する仮想画像描画手段と、近くの現実の画像と仮想的な画像を視界距離に応じて両画像が違和感なくつながるように透過度を変化させて重ね合わせを補正した視界距離補正仮想画像生成手段と、前記外界安全度判定手段の結果に基づいて安全度が低いと判定されたとき、視界距離補正仮想画像生成手段の生成した画像を、車両のフロントガラスに表示する表示装置とを備えてなるところに特徴を有する。
【0010】
上記構成によれば、運転者の視界が悪い場合、外界安全度判定手段により安全度が低いと判定されることから、視界距離補正仮想画像生成手段の生成した画像、即ち、見え難い標識等の情報が車両のフロントガラスに表示されるようになる。これにより、運転者は、視線を移動させることなく表示された標識等の情報を見ることができる。
【0011】
本発明の他の車両用表示システムは、現在位置を計測する手段と、進行方向を検知するする手段と、車両に搭載された画像撮像手段と、撮像されたデータから気象や視界に関する安全度を判定する外界安全度判定手段と、車外の物体を検知する車外物体検出手段と、標識情報データベースと、道路情報データベースと、現在位置と進行方向に基づいて標識情報データベースと道路情報データベースから仮想的な景色等の画像を描画する仮想画像描画手段と、検知された車外の物体をその計測された位置に対応するように仮想的な物体の画像として描画する車外物体描画手段と、近くの現実の画像と仮想的な画像を視界距離に応じて両画像が違和感なくつながるように透過度を変化させて重ね合わせを補正した視界距離補正仮想画像生成手段と、外界安全度判定手段の結果に基づいて安全度が低いと判定されたとき、視界距離補正仮想画像生成手段と車外物体位置描画手段とが作成した画像を重ね合わせて、車両のフロントガラスに表示する表示装置とを備えてなるところに特徴を有する。
【0012】
上記構成の場合、撮像されたデータから気象や視界に関する外界安全度は、標識情報データベースの標識位置と車両の現在位置から得られた車両標識間距離における標識撮影画像の認識度で決定されるように構成されていることが好ましい。
【0013】
また、前記車外物体検出手段は、レーザレーダ、マイクロ波レーダー、超音波センサ、車車間通信装置、路車間通信装置であることが良い構成である。更に、前記標識情報データベースは、標識の種類、設置位置、設置方向、表示面の設置高さ、補助標識、通信機能の有無や種類等の情報を含むように構成されていることが好ましい。
【0014】
更にまた、道路情報データベースは、道路両端の位置を示す情報と、道路の表面状態を示す情報とを含むように構成されていることがより一層好ましい。また、前記仮想画像描画手段は、道路情報データベースに基づいて進行方向の道路付帯設備を含む道路画像を運転者の視野上に重畳して描画し、運転者の視認度に応じて描画結果の表示の強さを変更可能なように構成されていることが良い。
【0015】
更に、車両の停車位置、停止標識の位置及び停止線の位置を記憶する手段と、標識の視認性を検出する標識視認性確認手段とを備え、前記表示装置は、前記標識視認性確認手段の計測の結果、車両が停止すべき位置の標識の視認性が低いと判断されたとき、視認性の低いと判断された標識とその標識に応じた補助画像を運転者の視野の景色に重畳して表示するように構成されていることが好ましい。
【0016】
本発明の他の車両用表示システムは、車両の停車位置、停止標識の位置及び停止線の位置を記憶する手段と、現在位置を計測する手段と、進行方向を測定する手段と、標識の視認性を検出する標識視認性確認手段と、前記標識視認性確認手段の計測の結果、車両が停止すべき位置の標識の視認性が低いと判断されたとき、視認性の低いと判断された標識とその標識に応じた補助画像を運転者の視野の景色に重畳して表示する表示装置とを備えたところに特徴を有する。
【0017】
また、上記構成の場合、前記標識視認性確認手段は、標識の位置情報に基づき標識の存在位置を撮影した画像の標識の輪郭検出の結果に基づいて視認性の判定を行うように構成されていることが好ましい。更に、前記標識に応じた補助画像は、仮想的な画像であることを明示する表示形式であることがより一層好ましい。
【0018】
本発明の他の車両用表示システムは、現在位置を計測する手段と、進行方向を検知するする手段と、車両に搭載された画像撮像手段と、撮像されたデータから気象や視界に関する安全度を判定する外界安全度判定手段と、標識情報データベースと、道路情報データベースと、表示効果データベースと、現在位置と進行方向に基づいて標識情報データベースと道路情報データベースと表示効果データベースとから仮想的な景色等の画像を描画する仮想画像描画手段と、近くの現実の画像と仮想的な画像を視界距離に応じて両画像が違和感なくつながるように透過度を変化させて重ね合わせを補正した視界距離補正仮想画像生成手段と、前記外界安全度判定手段の結果に基づいて安全度が低いと判定されたとき、視界距離補正仮想画像生成手段の生成した画像を、車両のフロントガラスに表示する表示装置とを備えたところに特徴を有する。
【0019】
また、本発明の他の車両用表示システムは、現在位置を計測する手段と、進行方向を検知するする手段と、車両に搭載された画像撮像手段と、撮像されたデータから気象や視界に関する安全度を判定する外界安全度判定手段と、車外の物体を検知する車外物体検出手段と、標識情報データベースと、道路情報データベースと、表示効果データベースと、現在位置と進行方向に基づいて標識情報データベースと道路情報データベースと表示効果データベースとから仮想的な景色等の画像を描画する仮想画像描画手段と、検知された車外の物体をその計測された位置に対応するように仮想的な物体の画像として描画する車外物体描画手段と、近くの現実の画像と仮想的な画像を視界距離に応じて両画像が違和感なくつながるように透過度を変化させて重ね合わせを補正した視界距離補正仮想画像生成手段と、外界安全度判定手段の結果に基づいて安全度が低いと判定されたとき、視界距離補正仮想画像生成手段と車外物体位置描画手段とが作成した画像を重ね合わせて、車両のフロントガラスに表示する表示装置とを備えたところに特徴を有する。
【0020】
更に、本発明の他の車両用表示システムは、車両の停車位置、停止標識の位置及び停止線の位置を記憶する手段と、現在位置を計測する手段と、進行方向を測定する手段と、標識情報データベースと、表示効果データベースと、標識の視認性を検出する標識視認性確認手段と、前記標識視認性確認手段の計測の結果、車両が停止すべき位置の標識の視認性が低いと判断されたとき、標識情報データベースと表示効果データベースとに基づいて視認性の低いと判断された標識とその標識に応じた補助画像を運転者の視野の景色に重畳して表示する表示装置とを備えたところに特徴を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の一実施例について、図面を参照しながら説明する。まず、図1は、本実施例の車両用表示システム1の電気的構成を概略的に示すブロック図である。この図1に示すように、車両用表示システム1は、カーナビゲーションシステム2と、外界計測システム3と、表示制御器4と、3D固定物配置データベース(3D固定物配置DB)5と、道路情報データベース(道路情報DB)6と、表示効果データベース(表示効果DB)7と、表示器8と、視線検知手段9とを備えて構成されている。
【0022】
カーナビゲーションシステム2は、自動車等の車両に搭載される周知のカーナビゲーションシステムで構成されており、内蔵する高精度GPS通信機からの検知信号と、外界計測システム3の車外カメラシステム10からの画像データ等を用いることにより、車両の現在位置と進行方向とを測定する機能を有している。この場合、カーナビゲーションシステム2は、位置検知手段11及び進行方向検知手段12としての機能を有している。
【0023】
外界計測システム3は、外界安全度判定手段13と、車外カメラシステム(画像撮像手段)10とを備えて構成されている。外界安全度判定手段13は、車外カメラシステム10により撮影されたカメラ撮影情報と、3D固定物配置DB5内に記録されている情報(標識、分離帯等の固定物の形状、設置位置、設置位置の地形(国土地理院の等高線図)等の情報)に従って作成した仮想的な画像情報とに基づいて、運転者の視界の良否を判定するように構成されている。この場合、外界安全度判定手段13は、仮想画像描画手段としての機能を有している。
【0024】
3D固定物配置DB5には、それぞれの標識や固定物の作用範囲を地図上に表示するための情報が記録されている。道路情報DB6には、道路両端の位置を示す情報である道路両端(歩道と車道の境界)の位置座標(x、y、z)のグループ(あるいは道路中心位置と道路幅と幅方向角度パラメータ)と、道路の表面状態の情報(摩擦係数、設定サイズ以上の凹凸の位置等の情報)とが記録されている。
【0025】
表示制御器4は、外界安全度判定手段13によって判定(計測)された視界に基づいて、ユーザの視界が何m先から悪くなるかが判定されると、判定された距離よりも遠くの視野(ユーザの視野)に、3D固定物配置DB5及び道路情報DB6内の情報に基づいて作成された仮想的な画像を表示器8を用いて重畳表示を行なう機能を有している。この場合、表示制御器4は、外界安全度判定手段13からの視界判定情報に加えて、視線検知手段9により検出された視線情報を加味することにより、違和感のない重畳表示を行うように構成されている。尚、重畳表示の具体的動作については、後述する。上記表示制御器4は、視界距離補正仮想画像生成手段としての機能を有している。
【0026】
表示器8は、例えばHUD(ヘッドアップディスプレイ)や有機ELや半透過液晶等から構成されており、画像を車両のフロントガラス(運転者の視野)に表示することが可能な表示装置である。
【0027】
尚、表示効果DB7には、ユーザ(運転者等)の注意を引くために用いるさまざまな表示効果用の情報(点滅、ハイライト、スポット、スクリーン表示、看板、ブラインド等の情報)が記録されている。表示効果DB7に記録されているデータにより、表示制御器4は、標識の周囲を明るくしたり、滑りやすい道路をハイライト表示したり、標識に応じた補助画像を表示したりすることが可能となる。
【0028】
次に、上記構成の動作について、図2ないし図6を参照して説明する。
車両の周囲に霧が存在している場合、車外カメラシステム10により撮影したカメラ画像(実際の視界のイメージ)は、図2(a)に示すような画像となり、遠くの物体(例えば「止まれ」の標識)を認知することができない。ここで、外界計測システム3の仮想画像描画手段により、3D固定物配置DB5内に記録されている情報と、道路情報DB6内に記録されている情報とに従って仮想的な画像を作成すると、その仮想的な画像は、図2(b)に示すような画像となる。
【0029】
この仮想的な画像は、図3に示すような方法で作成することができる。まず、3D画像を描画するために、車両が現在走行している道路の両端座標で構成された道路オブジェクトデータと周辺の建造物のオブジェクトデータをそれぞれの配置場所に配置して、進行方向に向かって仮想カメラを向け、ワイヤフレーム画像の描画を行なう。この描画画像を、図3(a)に示す。このワイヤフレーム画像は、仮想カメラの位置、カメラの向きを設定することで描画する範囲を設定できる。
【0030】
また、実際のカメラにはレンズのゆがみがある。そのため、本実施例においては、ワイヤフレーム画像と、車外カメラシステム10の撮影画像とを比較して、仮想カメラのレンズの光学特性を補正するように構成されている。
【0031】
具体的には、車外カメラシステム10の車外カメラで撮影(認識)された道路の画像(図3(d)参照)から、道路の両端の輪郭を計測する(図3(e)に示すように、例えば道路の両端の白線を認識して計測する)。次に、仮想カメラの位置と方向を設定して描画し、近くの道路の幅について、ワイヤフレーム画像と車外カメラの撮影画像とが一致するように、仮想カメラのレンズ設定を行う。
【0032】
この場合、走行中の道路が直線道路であれば、車外カメラ撮影画像から設定距離離れた道路幅を計測し、その道路幅が一致するように仮想カメラのレンズ特性を調整する。また、走行中の道路が曲がっていれば、車外カメラの撮影画像中の特徴点(たとえば標識が設置された場所)を探し、仮想カメラの描画画像と一致するように仮想カメラのレンズ設定を行う。このような処理(仮想画像の調整(キャリブレーション)処理)を定期的に繰り返すことで、車外カメラの撮影画像と仮想カメラの描画画像とが一致(マッチング)するように制御される。図3(b)は、マッチング途中の近距離設定済みの仮想画像を示す。また、図3(c)(及び図2(b))は、マッチング後の遠距離設定済みの仮想画像を示す。仮想カメラの補正(調整)したレンズ特性は、内部のメモリに記憶しておく。
【0033】
尚、上述した仮想画像の調整(キャリブレーション)処理の制御をフローチャートにすると、図5に示すようなフローチャート(ステップS10〜ステップS110)となる。
また、本実施例では、標識のプロパティがわかっている場合、例えば「止まれ」の標識の場合、止まれという文字表示(図2(c)参照、この文字表示は標識に応じた補助画像を構成する)や、止まれという音声出力が、車両の速度に応じた設定距離手前で実行されるように構成されている。
【0034】
図2(d)、(e)は、標識に定義された関係情報を表示した例である。停止標識に関しては、その標識に対応する停止線が存在する。運転者は、停止標識を見逃すと停止しないまま進んでしまい、事故が起こる可能性がある。そのため、停止する場合、停止線位置に半透過のスクリーンのようなイメージを描画して、運転者に標識を認識させる。この表示を行なう際に、表示効果DB7を用いる。表示効果DB7には、制限速度、駐車違反、停止、徐行等をユーザが認識しやすいようにする種々の表示パターン(標識に応じた補助画像を描画するためのデータが含まれている)が記録されている。
【0035】
図2(d)は、標識が遠くにある場合に、停止線位置に仮想的な壁(1点鎖線参照)を描画する画像(標識に応じた補助画像)を示す例である。この場合、仮想的な壁を、せりあがる動画として描画しても良い。図2(e)は、標識が近くにある場合に、停止線位置に仮想的な壁、具体的には、半透明なスクリーンのような壁(斜線領域参照)を描画する画像(標識に応じた補助画像)を示す例である。
【0036】
また、図4は、霧等が発生して先行車が見にくい場合の仮想画像の表示例である。レーダ等で先行車を発見し、それが視認できない状況(図4(a)参照)と判断されると、先行車の仮想画像(イメージ)を作成し、その仮想画像をユーザの視野に車間距離に応じて表示するように構成されている(図4(b)参照)。この場合、レーダ等が車外物体検出手段としての機能を有し、表示制御器4が車外物体描画手段としての機能を有している。
【0037】
次に、標識の視認性を支援する表示制御器4の表示動作の制御内容について、図6のフローチャートを参照して説明する。まず、図6のステップS210において、表示制御器4は、位置検知手段11及び進行方向検知手段12からの検知信号に基づいて現在走行位置と進行方向を測定する。次に、外界計測システム3の車外カメラシステム10によって、3D固定配置DB5から前方の固定物を複数選定して、それぞれの固定物が車外カメラシステム10により撮影されているか否かを確認する(ステップS220)。この場合、設定された距離以上離れた固定物を認識できれば、視界は安全と判定し、ステップS230にて、「YES」へ進み、ステップS210へ戻る。
【0038】
これに対して、設定された距離以上離れた固定物が認識できない場合、どの距離まで固定物が認識できるかを計測し、それを視界距離Lとして設定する(ステップS220)。そして、視界(視界距離L)が設定距離確保できない場合には、ステップS230にて、「NO」へ進み、車両前方の設定距離内の固定物(標識)を含む道路周辺の仮想的な画像を生成する(ステップS240)。
【0039】
この場合、画像生成は、直線走行では、高精度の静止画を定期的にレンダリングし(仮想カメラで撮影して画像生成し)、その画像を進行方向に向かって拡大する表示処理を行なう。また、道路が曲がっていた場合、その曲率に応じて画像生成タイミングを変える。具体的には、道路の曲率が小さいほど、前方の景色の変化が早いため、画像生成の時間間隔を短くするように制御する。
【0040】
そして、前方に標識が有るか否かを判断する(ステップS250)。ここで、前方に標識が有る場合、ステップS250にて「YES」へ進み、その標識に応じた表示効果が設定されているかをチェックする(ステップS260)。この場合、表示効果があれば、ステップS260にて「YES」へ進み、その描画処理を行なう(ステップS270)。
【0041】
続いて、ステップS280へ進み、仮想画像・実画像切り替え距離を設定すると共に、表示データを作成して(ステップS290)、その作成した画像を表示する(ステップS300)。この場合、画像切り替え距離として視界距離Lを設定し、視界距離Lよりも近いところから徐々に実画像に仮想画像を重ね合わせる表示処理を行なう。
【0042】
具体的には、透過度グラデーションマスクを用いて、遠くは完全な仮想画像、近くは実画像(車両のフロントガラスを通して運転者が見ている画像)になるように仮想画像の透過度を変更する。これにより、視界距離L付近では、透過度が高いため実画像が見えるが、遠くは仮想画像のみとなる。また、車両の走行に従って、標識までの距離に応じて、仮想画像及び表示効果を拡大表示するように構成されている。
【0043】
そして、上記描画表示処理は、例えば標識を通り過ぎるまで標識画像の描画が継続される。即ち、ステップS310へ進み、標識を通過したか否かを判断し、標識を通過していない場合は、「NO」へ進み、描画表示処理を続ける。そして、標識を通過すると、ステップS310にて「YES」へ進み、最初のステップS210へ戻る。
【0044】
また、上記した表示動作においては、3D固定物配置DB5に記録されている固定物の視認性を向上させる例を示したが、車外カメラシステム10により車外の物体や歩行者等を検知する機能(車外物体検出手段としての機能)を備えている場合には、物体や歩行者等の検知位置に応じて、注意を引く仮想画像情報を実画像に重畳表示するように構成してもよい。
【0045】
上記構成の本実施例によれば、運転者の視界が悪い場合、外界安全度判定手段13により安全度が低いと判定されることから、表示制御器4によって、見え難い標識等の仮想画像を生成して、その仮想画像を車両のフロントガラスに表示するように構成したので、運転者は、環境条件が悪くても、視線を移動させることなく表示された標識等の情報を見ることができるため、安全運転を実行可能となる。
【0046】
尚、上記実施例においては、車両のフロントガラスのほぼ全面を使って、仮想画像を実画像に重畳表示するように構成したが、これに限られるものではなく、フロントガラスの一部の領域(比較的小さい領域)に仮想画像を重畳表示するように構成しても良い。この構成の場合、仮想画像だけを表示するように構成しても良い。
【0047】
また、上記実施例では、仮想画像の調整(キャリブレーション)を実行する場合に、道路の両端の白線を用いてキャリブレーションを行なうように構成したが、これに限られるものではなく、例えば標識や地名の看板等を用いてキャリブレーションを行なうように構成しても良い。更に、車外カメラシステム10の文字画像の読取能力のキャリブレーションも標識や地名の看板等を用いて定期的に行なうように構成しても良い。
【0048】
尚、上記実施例に置いては、車外物体検出手段を、レーダ(例えばレーザレーダやマイクロ波レーダ)または車外カメラシステム10(車外カメラ)で構成したが、これに限られるものではなく、例えば超音波センサや車車間通信装置や路車間通信装置等で構成しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の一実施例を示す車両用表示システムのブロック図
【図2】(a)は実画像を示す図、(b)〜(e)は仮想画像を実画像に重畳した例を示す図
【図3】(a)〜(c)は仮想画像を作成して調整する例を示す図、(d)は実画像を示す図、(e)は仮想画像を実画像に重畳した例を示す図
【図4】(a)は実画像を示す図、(b)は仮想画像を実画像に重畳した例を示す図
【図5】仮想画像の調整(キャリブレーション)処理の制御内容を示すフローチャート
【図6】標識の視認性を支援する表示動作の制御内容を示すフローチャート
【符号の説明】
【0050】
図面中、1は車両用表示システム、2はカーナビゲーションシステム、3は外界計測システム、4は表示制御器(視界距離補正仮想画像生成手段)、5は3D固定物配置データベース、6は道路情報データベース、7は表示効果データベース、8は表示器(表示装置)、9は視線検知手段、10は車外カメラシステム(画像撮像手段)、11は位置検知手段、12は進行方向検知手段、13は外界安全度判定手段(仮想画像描画手段)を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
現在位置を計測する手段と、
進行方向を検知するする手段と、
車両に搭載された画像撮像手段と、
撮像されたデータから気象や視界に関する安全度を判定する外界安全度判定手段と、
標識情報データベースと、
道路情報データベースと、
現在位置と進行方向に基づいて標識情報データベースと道路情報データベースから仮想的な景色等の画像を描画する仮想画像描画手段と、
近くの現実の画像と仮想的な画像を視界距離に応じて両画像が違和感なくつながるように透過度を変化させて重ね合わせを補正した視界距離補正仮想画像生成手段と、
前記外界安全度判定手段の結果に基づいて安全度が低いと判定されたとき、視界距離補正仮想画像生成手段の生成した画像を、車両のフロントガラスに表示する表示装置とを備えたことを特徴とする車両用表示システム。
【請求項2】
現在位置を計測する手段と、
進行方向を検知するする手段と、
車両に搭載された画像撮像手段と、
撮像されたデータから気象や視界に関する安全度を判定する外界安全度判定手段と、
車外の物体を検知する車外物体検出手段と、
標識情報データベースと、
道路情報データベースと、
現在位置と進行方向に基づいて標識情報データベースと道路情報データベースから仮想的な景色等の画像を描画する仮想画像描画手段と、
検知された車外の物体をその計測された位置に対応するように仮想的な物体の画像として描画する車外物体描画手段と、
近くの現実の画像と仮想的な画像を視界距離に応じて両画像が違和感なくつながるように透過度を変化させて重ね合わせを補正した視界距離補正仮想画像生成手段と、
外界安全度判定手段の結果に基づいて安全度が低いと判定されたとき、視界距離補正仮想画像生成手段と車外物体位置描画手段とが作成した画像を重ね合わせて、車両のフロントガラスに表示する表示装置とを備えたことを特徴とする車両用表示システム。
【請求項3】
撮像されたデータから気象や視界に関する外界安全度は、標識情報データベースの標識位置と車両の現在位置から得られた車両標識間距離における標識撮影画像の認識度で決定されることを特徴とする請求項2記載の車両用表示システム。
【請求項4】
前記車外物体検出手段は、車外カメラ、レーザレーダ、マイクロ波レーダ、超音波センサ、車車間通信装置、路車間通信装置であることを特徴とする請求項2記載の車両用表示システム。
【請求項5】
前記標識情報データベースは、標識の種類、設置位置、設置方向、表示面の設置高さ、補助標識、通信機能の有無や種類等の情報を含むことを特徴とする請求項2記載の車両用表示システム。
【請求項6】
道路情報データベースは、道路両端の位置を示す情報と、道路の表面状態を示す情報とを含むことを特徴とする請求項2記載の車両用表示システム。
【請求項7】
前記仮想画像描画手段は、道路情報データベースに基づいて進行方向の道路付帯設備を含む道路画像を運転者の視野上に重畳して描画し、運転者の視認度に応じて描画結果の表示の強さを変更可能なように構成されていることを特徴とする請求項2記載の車両用表示システム。
【請求項8】
車両の停車位置、停止標識の位置及び停止線の位置を記憶する手段と、
標識の視認性を検出する標識視認性確認手段とを備え、
前記表示装置は、前記標識視認性確認手段の計測の結果、車両が停止すべき位置の標識の視認性が低いと判断されたとき、視認性の低いと判断された標識とその標識に応じた補助画像を運転者の視野の景色に重畳して表示するように構成されていることを特徴とする請求項2記載の車両用表示システム。
【請求項9】
車両の停車位置、停止標識の位置及び停止線の位置を記憶する手段と、
現在位置を計測する手段と、
進行方向を測定する手段と、
標識の視認性を検出する標識視認性確認手段と、
前記標識視認性確認手段の計測の結果、車両が停止すべき位置の標識の視認性が低いと判断されたとき、視認性の低いと判断された標識とその標識に応じた補助画像を運転者の視野の景色に重畳して表示する表示装置とを備えたことを特徴とする車両用表示システム。
【請求項10】
前記標識視認性確認手段は、標識の位置情報に基づき標識の存在位置を撮影した画像の標識の輪郭検出の結果に基づいて視認性の判定を行うように構成されていることを特徴とする請求項9記載の車両用表示システム。
【請求項11】
前記標識に応じた補助画像は、仮想的な画像であることを明示する表示形式であることを特徴とする請求項9記載の車両用表示システム。
【請求項12】
現在位置を計測する手段と、
進行方向を検知するする手段と、
車両に搭載された画像撮像手段と、
撮像されたデータから気象や視界に関する安全度を判定する外界安全度判定手段と、
標識情報データベースと、
道路情報データベースと、
表示効果データベースと、
現在位置と進行方向に基づいて標識情報データベースと道路情報データベースと表示効果データベースとから仮想的な景色等の画像を描画する仮想画像描画手段と、
近くの現実の画像と仮想的な画像を視界距離に応じて両画像が違和感なくつながるように透過度を変化させて重ね合わせを補正した視界距離補正仮想画像生成手段と、
前記外界安全度判定手段の結果に基づいて安全度が低いと判定されたとき、視界距離補正仮想画像生成手段の生成した画像を、車両のフロントガラスに表示する表示装置とを備えたことを特徴とする車両用表示システム。
【請求項13】
現在位置を計測する手段と、
進行方向を検知するする手段と、
車両に搭載された画像撮像手段と、
撮像されたデータから気象や視界に関する安全度を判定する外界安全度判定手段と、
車外の物体を検知する車外物体検出手段と、
標識情報データベースと、
道路情報データベースと、
表示効果データベースと、
現在位置と進行方向に基づいて標識情報データベースと道路情報データベースと表示効果データベースとから仮想的な景色等の画像を描画する仮想画像描画手段と、
検知された車外の物体をその計測された位置に対応するように仮想的な物体の画像として描画する車外物体描画手段と、
近くの現実の画像と仮想的な画像を視界距離に応じて両画像が違和感なくつながるように透過度を変化させて重ね合わせを補正した視界距離補正仮想画像生成手段と、
外界安全度判定手段の結果に基づいて安全度が低いと判定されたとき、視界距離補正仮想画像生成手段と車外物体位置描画手段とが作成した画像を重ね合わせて、車両のフロントガラスに表示する表示装置とを備えたことを特徴とする車両用表示システム。
【請求項14】
車両の停車位置、停止標識の位置及び停止線の位置を記憶する手段と、
現在位置を計測する手段と、
進行方向を測定する手段と、
標識情報データベースと、
表示効果データベースと、
標識の視認性を検出する標識視認性確認手段と、
前記標識視認性確認手段の計測の結果、車両が停止すべき位置の標識の視認性が低いと判断されたとき、標識情報データベースと表示効果データベースとに基づいて視認性の低いと判断された標識とその標識に応じた補助画像を運転者の視野の景色に重畳して表示する表示装置とを備えたことを特徴とする車両用表示システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−257286(P2007−257286A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−80772(P2006−80772)
【出願日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】