説明

車載用ナビゲーション装置

【課題】有料道路に乗り入れる道路が密集している状況下で、有料道路に乗り入れる場合、位置検出器の検出誤差により進入ICを特定し誤ったとしても、正しい進入ICを特定して、有料道路の通行料金を正しく報知することのできる車載用ナビゲーション装置を提供する。
【解決手段】進入ICを通過する際に位置検出誤差が増大し、車両現在位置が不連続的に変化して、特定した走行道路と過去に特定した走行道路の履歴との連続性が失われたため、真の進入ICを一時的に特定し誤ったとしても、不連続となる以前に特定した走行道路に基づいて正しい進入ICを特定する。そして特定した進入IC、および接近する退出すると想定されるICから通行料金を計算する。進入ICを通過する際に誘導経路が設定されている場合には、走行道路と誘導経路とから正しい進入ICを特定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有料道路の通行料金を算出して案内を行う車載用ナビゲーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、現在地から目的地までの案内経路を探索して車両を誘導する車載用ナビゲーション装置において、その案内経路に高速道路などの有料道路が含まれている場合には、その有料道路に進入したIC(Inter Change:インターチェンジ、以後、進入ICという)から、退出しようとするIC(以後、退出ICという)までの通行料金計算をし、ユーザに提示する技術がある(たとえば特許文献1)。
【0003】
ところで、一般的な車載用ナビゲーション装置には、一旦探索した案内経路を再探索する機能がある。これは、(1)前記案内経路を案内中に車両現在位置が不連続的に変化した(検出された車両現在位置に対してマップマッチングと呼ばれる処理を行った結果、現在位置が大きく変化した)場合や、(2)ユーザが目的地を変更した場合、(3)ユーザが案内経路を逸脱した場合、(4)外部からの渋滞情報に基づいて案内経路変更を余儀なくされた場合に行われる。
【0004】
上記のように、案内経路の再探索が行われるときには、その再探索は車両現在位置から目的地まで行われる。そのため、たとえば有料道路に進入してから再探索が行われた場合、過去に走行したデータである有料道路の進入ICに関する情報が失われ、結果として有料道路の通行料金を正しく計算できない可能性がある。
【0005】
これに対して、特許文献2には、自車が進入ICに達したか否かを、ナビゲーションとは独立に判断して、その進入ICのデータをメモリに記憶し、たとえ上記案内経路の再探索が行われても、前記記憶した進入ICのデータを参照し、退出ICまでの正しい通行料金を計算し、ユーザに対して提示する車両用ナビゲーション装置について開示されている。
【特許文献1】特開平9−269236号公報
【特許文献2】特開平11−295094号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献2に記載の車両用ナビゲーション装置では、車両が進入ICに達したことを、位置検出器(GPSや車速センサ、ジャイロセンサ)によって検出した車両現在位置が、地図データ上での有料道路ICの位置の近傍であり、かつ窓が開閉したことや車両が一旦停止したこと、によって判断する。
【0007】
ここで、位置検出器の検出誤差のために、検出された車両現在位置が、現実から乖離することがある。これに備え、特許文献2では地図データとの整合性から、地図データ上での車両現在位置を定期的に補正(マップマッチング)する。このマップマッチング処理は地図データ上での車両現在位置に最も近い道路(リンク)に位置補正を行うものである。
【0008】
しかし、たとえば有料道路に乗り入れる道路が密集している地域では、マップマッチング処理がうまく機能せず、次のような状況が発生する。
【0009】
図11は、有料道路11に対して、その有料道路本線110に乗り入れるための道路111および112が近接して存在する場合を概略的に示す図である。
【0010】
図で破線にて示す矢印113は、車両の実際の走行軌跡を示しており、車両はIC111にて有料道路11に進入し、有料道路本線110に乗り入れている。しかし、車両がIC111を通過する際、上述のような位置検出の誤差が生じたとする。
【0011】
この誤差によって、車両現在位置が地図データ上でのIC111のある乗り入れ道路111から大きくずれ、IC112のある乗り入れ道路112に近くなった場合には、マップマッチングの結果、車両がIC112のある乗り入れ道路112に存在するとみなされる。その結果、車両がIC112にて有料道路11に進入したものと誤って判断されてしまう(このように、検出誤差のせいで、地図上で特定された車両現在位置が現実から乖離することを、以後‘ロケーションずれ’と称する)。すなわち、車両現在位置が不連続的に変化する(すなわち上記(1)の場合)。
【0012】
上記ロケーションずれが発生すると、特許文献2では、進入ICがIC112であると記憶され、その現在位置から経路の再探索が行われる。つまり、本来の車両の走行軌跡は113で示す矢印であるところ、このロケーションずれにより、長破線で示す矢印114とみなされる。そしてたとえばIC115(退出道路115への入り口)にて有料道路本線110より退出しようとする場合、現実には、IC111からIC115までの通行料金を計算するべきところ、IC112からIC115までの通行料金を計算し、誤った提示をする可能性がある。
【0013】
本発明は上記に例示するように、ロケーションずれによって生じる課題に鑑みてなされたものであり、その目的はロケーションずれが生じた場合でも進入ICを正しく判断し、通行料金計算をすることができる車載用ナビゲーション装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明では、車両の現在位置を取得する現在位置取得手段と、道路データおよび有料道路のICの少なくとも位置情報を含むデータ(以下、ICデータという)を記憶する記憶手段と、前記取得した車両の現在位置、前記道路データ、に基づいて前記車両の走行する走行道路を順次特定する走行道路特定手段と、前記取得した車両の現在位置および前記記憶手段に記憶されたICデータから車両が有料道路に進入した進入ICを特定する進入IC特定手段と、前記進入IC特定手段により前記進入ICが特定された状況において、前記車両が前記進入した有料道路から退出するための退出ICに接近したことを判定する退出IC接近判定手段と、前記退出IC接近判定手段により、前記退出ICに接近したことが判定された場合に、前記特定した進入ICから前記接近した退出ICまでの通行料金を算出する通行料金算出手段とを具備する車載用ナビゲーション装置であって、前記順次特定した走行道路が不連続となった場合には、前記走行道路特定手段は前記不連続となる以前の走行道路を前記車両の走行道路として特定し、前記進入IC特定手段は、前記特定された走行道路に基づいて前記特定した進入ICを特定すること、を特徴とする。
【0015】
このように、ロケーションずれが生じた場合には、順次特定した走行道路が不連続となることに着目し、前記不連続となる前に特定した走行道路を本来の走行道路として特定し直し、その特定し直した走行道路から進入ICを特定し直すので、有料道路に乗り入れる際に、乗り入れ道路が密集している状況において位置検出誤差増大によるロケーションずれが発生し、本来通過したIC(真の進入IC)でないICを進入ICと判断してしまったとしても、本来通過したICを特定し直すことができる。
【0016】
また、誘導経路が設定されていなくとも、進入ICを特定した後には、ユーザは有料道路から必ず退出するはずであるので、退出ICに接近した場合に真の進入ICからの通行料金(正しい通行料金)を算出することができる。
【0017】
なお、順次特定した走行道路が不連続となるとは、ある時点で特定した走行道路とそれ以前に特定した別の走行道路との連続性が失われることをいう。たとえば図11で、ロケーションずれが発生し、車両が乗り入れ道路111を本来走行するところ、乗り入れ道路112を走行していると判断される場合を例にとって説明する。このとき、現在の走行道路と判断された乗り入れ道路112とそれ以前に走行道路として特定していた乗り入れ道路111との間に連続性がないので、特定した走行道路が不連続となったといえる。このときには、ロケーションずれが発生したために特定する走行道路が変更されることがわかる。
【0018】
また、請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の車載用ナビゲーション装置において、前記取得した車両の現在位置から目的地までの誘導経路を探索する誘導経路探索手段を具備し、前記探索した誘導経路に前記有料道路が含まれ、前記進入IC特定手段により特定した進入ICが、前記誘導経路における前記有料道路への進入を予定する進入予定ICでない状況であって、前記順次特定した走行道路が不連続となり、しかも前記不連続となった後の走行道路が前記誘導経路から外れている場合には、前記走行道路特定手段は前記不連続となる以前の走行道路を前記車両の走行道路として特定し、前記進入IC特定手段は、前記特定された走行道路に基づいて前記進入ICを特定すること、を特徴とする。
【0019】
一般に、誘導経路が設定された場合には、ユーザが意図して誘導経路を逸脱する可能性があるが、そうでなく、ロケーションずれが発生して真の進入IC(進入予定IC)でないICを進入ICと判断してしまう場合には、特定した走行道路が不連続となり、かつ設定された誘導経路からも外れる状態となる。そこで、このような状態が発生した場合に、前記不連続となる以前の走行道路を本来の走行道路として特定し直し、その特定し直した走行道路から進入ICを特定し直すので、有料道路に乗り入れる際に、乗り入れ道路が密集している状況において位置検出誤差増大によるロケーションずれが発生し、本来通過したIC(真の進入IC)でないICを進入ICと判断してしまったとしても、本来通過したICを特定し直すことができる。また、誘導経路が設定されているので、より的確に進入ICを特定することができる。
【0020】
そして、請求項3に記載の発明のように、上記で算出した通行料金をユーザに対して報知するための報知手段を備えることにより、ユーザにとって接近する退出ICあるいは設定された誘導経路において退出を予定している退出予定ICまでの正しい通行料金が報知される。すなわち、ロケーションずれによって真の進入ICでないICを進入ICとみなし、誤った通行料金を算出し報知する結果、ユーザを混乱させるという事態を防止することが可能となる。
【0021】
次に請求項4に記載の発明では、請求項3に記載の発明のうち、請求項2に記載の車載用ナビゲーション装置において、前記接近した退出ICが前記探索した誘導経路における前記有料道路からの退出予定ICでない場合には、前記通行料金算出手段により算出した通行料金を報知しないこと、を特徴とする。
【0022】
このようにすれば、ユーザが退出予定ICを退出する前に、退出可能な退出ICに接近したとき、いちいち進入ICからの通行料金が報知されることがなく、ユーザにとって煩わしさを感じさせることがない。
【0023】
なお、上記では、退出予定ICでない退出ICまでの通行料金を報知しないとしたが、実際にはユーザが意図して誘導経路を逸脱し、退出予定ICでない退出ICから有料道路を退出しようとすることもあるため、その場合はたとえば、ユーザの指示があった場合にのみ前記通行料金を報知するようにしてもよい。
【0024】
請求項5に記載の発明では、請求項3乃至4記載の車載用ナビゲーション装置において、前記不連続が生じた場合、前記進入IC特定手段が前記進入ICを特定しないうちは、前記報知手段にエラーメッセージを報知させること、を特徴とする。
【0025】
ここで想定するのは、ロケーションずれが生じたために、本来通過した進入ICの特定動作を行うものの、その特定が間に合わない状況において、ユーザが退出ICあるいは退出予定ICに接近した場合である。このときには、真の進入ICが確定していないので、正しい通行料金を算出することができない。そこでこのようにエラーメッセージを報知するように構成すれば、誤った通行料金を報知され、ユーザが混乱する事態は防止できる。
【0026】
なお、ここでいうエラーメッセージはたとえば通行料金が不明である旨の表示もしくは音声案内が考えられる。
【0027】
請求項6に記載の発明では、請求項1乃至5のいずれかに記載の車載用ナビゲーション装置において、前記ICデータには前記ICが料金徴収所であるか否かを識別するためのデータが含まれており、前記ICデータに基づいて、前記特定した進入ICが料金徴収所であるか否かを判断する進入IC種別判断手段を備え、前記進入IC種別判断手段が前記特定した進入ICを料金徴収所であると判断した場合には、前記通行料金の算出を行わないこと、を特徴とする。
【0028】
一般に有料道路では進入ICにて料金を先払いすることもある。そこで、このような状況では、退出ICあるいは退出予定ICに接近した際、通行料金を算出しないようにする。このようにすれば、結局のところ、ユーザにとっていちいち既に支払った通行料金を報知されることがなく、煩わしさを感じさせないようにすることができる。
【0029】
一方で、進入ICで通行料金を先払いしたにもかかわらず、退出ICに接近するころにはそれをうっかり忘れてしまうユーザもいる可能性がある。そこで、進入ICが料金徴収所である場合に、退出ICに接近したときには、通行料金を既に支払った旨の報知を報知手段に行わせるようにしてもよい。
【0030】
以下、請求項7に記載の発明のように、請求項2に記載の発明を独立させることも可能である。このように誘導経路が設定された前提の下でも本発明の思想は成り立つ。そして請求項7に従属する請求項8乃至11に記載の発明の趣旨は、上記説明した請求項3乃至6に記載の発明の趣旨と全く同一である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明が適用された実施形態について説明する。
【0032】
[構成の説明]
図1は、本発明の車載用ナビゲーション装置1の構成を示すブロック図である。車載用ナビゲーション装置1は、車両の現在位置を検出する位置検出器10、地図データ等を格納する記憶媒体、およびその格納されたデータを読み出すデータ入力器が一体となったHDD装置11、ユーザが操作指示を入力するための操作スイッチ群12、ユーザに対して様々な表示を提供するための表示部13、外部との通信により情報を取得する外部通信装置14、マイク、スピーカ、音声認識装置からなる音声入出力部15、そしてこれら構成要素を制御する制御部17が、入出力部16を介して接続されてなる。
【0033】
位置検出器10は、車輪の回転数に応じたパルスを発生させ、そのパルスを計測することで車速を検出する車速センサ10a、車両の回転量を検出するジャイロスコープ10b、GPS(Global Positioning System)用の人工衛星からの電波を受信することで、車両の存在位置の緯度経度情報を得るためのGPS受信機10c、からなる。そして、位置検出器10は、これら各センサからの信号を一定周期で制御部17に、入出力部16を介して入力し、制御部17は入力された信号に基づいて一定周期で車両の現在位置を決定する。
【0034】
HDD装置11に格納されている地図データは、道路データとして、緯度経度情報が付与されたノードデータや各ノードデータを結ぶリンクデータ、これらノードデータ、リンクデータに関連付けられた案内経路探索用のコストデータ、有料道路のデータ、有料道路を乗り降りするためのICの位置データ、ICの種別データ、有料道路の料金に関するデータ(料金表)、一般道路のデータ、が格納されている。他の地図データとしては、マップマッチング用のデータ、描画用データなどが格納されている。
【0035】
ICの種別データとは、そのICが発券所なのか、料金徴収所なのかといったような種別を示すものである。
【0036】
料金表データは、有料道路の任意の進入ICと退出IC間の通行料金をまとめたものであり、進入ICと退出ICが特定されれば、この料金表データを用いて有料道路の通行料金を計算することができる。
【0037】
なお、HDD装置11には上記以外にも、案内用の音声データや音声認識データなどが格納されており、制御部17の指示に応じて、それら格納されたデータを読み出し、入出力部16を介して制御部17に入力する。
【0038】
操作スイッチ群12は、車両のインストルメントパネルに設けられたメカニカルなハードスイッチ(キースイッチ等)からなり、ユーザからの様々な操作指示を受け付け、受け付けた指示を信号として制御部17に入力するようになっている。また、操作スイッチ群12は、表示部13と一体となったタッチスイッチであってもよい。なお、これら操作スイッチ群12を、図示しないリモートコントロール端末に設け、前記端末からの電波をセンサ(不図示)により受信することで、指示を受け付けるようにすることもできる。
【0039】
表示部13は、CRT(Cathode Ray Tube:陰極線管)によるCRTディスプレイ13a、制御部17からの指示により、CRTに対しての電子ビーム照射を制御するCRTコントローラ13bからなる。そして、表示部13はユーザに様々な表示を提供することができるようになっており、たとえば、位置検出器17により検出した車両の現在位置と、HDD装置11から入力された地図データとから特定した現在地を示すシンボルマーク、現在地から目的地までの誘導経路などを重ねて表示できる。本実施形態では、表示部13として、上記CRTディスプレイ13aを採用するが、この他に、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイなどであってもかまわない。
【0040】
音声入出力部14は、地図データの施設案内や各種報知のための音声をスピーカから出力し、また、ユーザがマイクから入力した音声を音声認識装置により認識して、電気信号に変換し、制御部17に入力する。これにより、ユーザは、マイクから音声を入力することによって車載用ナビゲーション装置1を操作することができる。
【0041】
外部通信装置15は、たとえば路上に設置されたVICS(Vehicle Information and Communication System)センタから、光ビーコンや電波ビーコン、FM(Frequency Modulation)多重放送により周囲に発信された渋滞情報等を受信するVICS受信機である。
【0042】
入出力部16は、一例として、車載LAN(Local Area Network)の窓口となるインターフェースであり、各種構成エレメントからの制御部17への入力信号を受け付ける一方、制御部17からの指示(出力信号)を前記構成エレメントに対して送る役割を担う。
【0043】
制御部17はCPU(Central Processing Unit)17aに、周辺のROM(Read Only Memory)17bやRAM(Random Access Memory)17c、フラッシュメモリなどのメモリ(半導体メモリ:不図示)が、バスラインにより接続されてなる、マイクロコンピュータを主体として構成されている。
【0044】
たとえばROM17bには、車載用ナビゲーション装置1に給電が行われた際に読み出されるプログラムが記憶され、制御部17は、上述したさまざまな構成エレメントからの入力信号と、ROM17bに記憶されたプログラムとをRAM17cに読み出し、各種処理を実行する。
【0045】
上記各種処理とはたとえば、車両の走行道路を特定する特定処理や、位置検出器17からの入力信号の誤差を考慮して、前記特定した車両の走行道路の履歴を補正する補正処理や、HDD装置11に格納された地図データとユーザが操作スイッチ群12により設定した目的地とに基づいて、車両現在位置から目的地までの最適な経路を算出する誘導経路算出処理や、その算出した経路を表示部13に表示させたり、音声入出力部15に音声として出力させることにより経路案内する経路案内処理である。
【0046】
またROM17bには、プログラム実行の際に必要なフラグの定義がなされている。たとえば、車両が有料道路に進入するのか、退出するのかを示す二進フラグ(進入フラグ、退出フラグ)や、進入ICが料金徴収所なのかをプログラム上で識別するための二進フラグ(料金徴収所フラグ)、特定した車両の走行道路が不連続となったことを識別するための二進フラグ(不連続フラグ:後述する)、補正処理が完了したことを示す二進フラグ(補正済フラグ:これについても後述する)、補正処理が完了していないことを示す二進フラグ(エラーフラグ:これについても後述する)の定義がなされている。
【0047】
ここで進入フラグは、車両現在位置と、上記特定処理(この詳細については後述する)によって特定された走行道路および、HDD装置11からのICの位置情報に基づいて、車両が一般道路からICを経て有料道路へと進入したことを判断して、設定される。すなわち、車両の走行道路が一般道路に特定されていたところ、ICを経由して有料道路に乗り入れたために、走行道路が有料道路と特定された場合に、設定される。そしてこのとき、制御部17は前記ICを進入ICとみなし、進入ICの情報(位置情報や設定されるフラグなど)をたとえばフラッシュメモリに記憶する。
【0048】
また、退出フラグも同様に、進入フラグが設定されているときに、車両の走行道路が有料道路に特定されていたところ、ICを経由して一般道路に退出したために、走行道路が一般道路と特定された場合に、設定される。なお、退出フラグが設定された時点で、既に設定されたフラグがゼロリセットされるものとする。
【0049】
発券所フラグ、料金徴収所フラグは、HDD装置11に格納されている種別データ、料金所データに基づいて、各ICに設定されるフラグである。
【0050】
なお、これらフラグの定義とは、たとえば発券所フラグでは、あるICの発券所フラグが「0」に設定されれば、そのICは発券所でなく、逆に「1」に設定されていれば発券所であること、などである。
【0051】
[動作の説明]
以下、本発明に係る制御部17の動作について、実施例を挙げて説明する。
【実施例1】
【0052】
本実施例の概要は、まず、車両の現在位置を算出し、その現在位置により車両の走行道路を順次特定する。そして、順次特定した走行道路の履歴をとっておき、その履歴にもとづいて、特定した走行道路の連続性を常時監視しておく。そして、高架道路(有料道路)への乗り入れ道路が密集している地域にて、進入ICを通過する際に位置検出誤差増大によるロケーションずれが発生し、車両現在位置が不連続的に変化して、順次特定した走行道路の連続性が失われたとしても、不連続となる以前に特定した走行道路から正しい進入ICを特定する。そして特定した進入IC、および接近する退出すると想定されるICから通行料金を計算するというものである。
【0053】
以下、上記動作について、図2乃至図6に示すフローチャート及び図を参照しつつ、より詳しく説明する。なお、これらフローチャートが示す動作は互いに並行して行われる。
【0054】
まず、図2に示すフローチャートは、車両現在位置から特定した走行道路の連続性を監視し、真の走行道路を特定するための動作を示すものである。この動作を司るプログラム(以下、補正プログラム200という)はROM17bに記憶されている。
【0055】
制御部17は、ユーザが車両の駆動源を始動するか、アクセサリーオンする(車両の駆動源は停止しているが、車載用ナビゲーション装置1には給電が行われ、起動する状態にする)とともに、補正プログラム200をROM17bより読み出し、動作を開始する(ステップS20)。
【0056】
次に、制御部17は、位置検出器11から入力される信号に基づいて、車両の現在位置を算出し(ステップS21)、次に、ステップS22では、制御部17は、HDD装置11から地図データを取得し、車両の走行道路を特定する。この特定は、ステップS21にて算出した車両の現在位置(緯度経度情報)から、車両が地図データ上で存在するべきノード、あるいはリンクを特定し、そこに関連づけられた道路データから、走行道路を特定するものである。より具体的には、あらかじめ所定の許容誤差(所定の角度誤差および距離誤差)を設定しておき、算出した車両現在位置が、前記誤差内に含まれるようなノード、あるいはリンクを特定する。そして車両現在位置を、特定したノード、あるいはリンクに関連づけられた緯度経度に補正し、走行道路を特定し、特定した走行道路の情報を履歴(走行道路履歴)としてメモリに格納し、ステップS23に進む。
【0057】
ここで、上記算出した車両現在位置の算出誤差が、上記許容誤差を超えた場合、特定される走行道路が変わる可能性がある。たとえば図3にて、車両の現在位置から、道路Aに対応するリンク30に車両現在位置を補正し、道路Aを走行道路としていたとする。図3(a)は補正前の様子であり、図3(b)は補正後の様子を示す。図3(a)で算出した車両現在位置31はリンク30から所定距離(距離誤差)分だけ乖離しているが、距離誤差が予め想定する所定範囲内に収まっているために、補正によりリンク30に引き込み、車両現在位置は図3(b)に示す補正後の車両現在位置32となる。
【0058】
ところが、算出した車両現在位置が、前記所定の角度誤差および距離誤差の想定範囲を大きく逸脱したために、図4で示すように、道路Aに並行する道路Bに対応するリンク40に補正される場合がある。図4(a)は補正前の様子であり、図4(b)は補正後の様子を示す。図4(a)で算出した車両現在位置41は、誤差の想定範囲を大きく超え、リンク40に近くなってしまったために、補正によりリンク40に引き込み、車両現在位置は図4(b)に示す補正後の車両現在位置42となる。
【0059】
つまりこのときには、過去に特定した走行道路(リンク30で示す道路A)と、車両現在位置がリンク40に補正された後の走行道路(道路B)が不連続となる。このように、特定する走行道路が不連続となったか否かを判別すれば、ロケーションずれの発生のために、車両が本来走行している、特定すべき走行道路でない道路を走行道路と判断してしまったのか否かを識別することができる。
【0060】
そこで、ステップS23では、ステップS22にて特定した走行道路(現在特定された走行道路)が、過去に履歴としてメモリに記憶された別の走行道路(過去に特定された走行道路)と連続しているか否かを判断する。具体的には、現在特定した走行道路の道路リンクが、過去の走行道路履歴として記憶された道路リンクと連続しているか否かを判断する。
【0061】
[課題を解決するための手段]でも述べたように、図11に示す例にあてはめれば、ロケーションずれが生じた場合に、走行道路として特定された乗り入れ道路112の道路リンクは、それまで車両が走行道路の履歴として記憶していた道路リンク(乗り入れ道路111まで連続して連なる、過去に特定された走行道路の道路リンク)とは不連続となっている。
【0062】
さて、上記のように、特定した走行道路が不連続になったと判断した(ステップS23:yes)場合には、制御部17は、ステップS24に進んでその旨をフラグ(不連続フラグ)として設定し、ステップS25に進む(この設定により不連続フラグはたとえば1に設定される)。逆に、不連続になっていないと判断した(ステップS23:no)場合にはステップS22にて特定した走行道路を走行しているものとみなし、ステップS21に戻って上述した一連の動作を繰り返す。
【0063】
そしてステップS25では、走行道路の連続性を維持するように走行道路履歴を補正する。具体的には、不連続になる前の走行道路を走行していたものと判断し、走行道路履歴を修正する補正を行う。その後、ステップS26に進み、設定されている不連続フラグをゼロリセットするとともに、補正を完了した旨を示す補正済フラグを設定する。
【0064】
たとえば、ステップS25の処理を図11の例に当てはめて説明する。つまり、車両が乗り入れ道路111から有料道路本線110に乗り入れたにもかかわらず、ロケーションずれにより、ステップS22で、乗り入れ道路112から有料道路本線110に乗り入れたものとみなされた場合での処理である。このとき制御部17は走行道路が乗り入れ道路112とみなされたあと、有料道路本線110を走行する際になって、過去の走行道路履歴(乗り入れ道路113に至るまでの道路リンクの履歴情報)から、道路リンクの連続性を維持するように、走行道路履歴を補正する。つまりは、乗り入れ道路112ではなく、乗り入れ道路111から本線110に乗り入れたものと推定し、走行道路履歴を補正する。
【0065】
なお、再度ステップS24にて不連続フラグを設定する際は、補正済フラグが設定されていればその補正済フラグをリセットするものとする。
【0066】
このようにすれば、たとえばユーザが意識的に走行道路を乗り換えたのか、それとも検出誤差が大きくなり誤って別の道路に補正されたのかを、不連続フラグ、補正済フラグを参照することで判断することができる。たとえば、図4で示すように、ユーザが意識的に道路Aから道路Bに乗り換えたのか、あるいは、本来は道路Aを走行しているにもかかわらず誤って道路Bに補正されているのかを判断することができる。
【0067】
つまりこのようにすれば、ユーザが意識的に走行道路を乗り換えたのでなく、車両現在位置の検出誤差が大きくなったために誤って別の道路を走行道路と特定された場合にも、真の走行道路を正しく特定することができる。
【0068】
次に、図5に示すフローチャートは、車両が高架道路(有料道路)へ進入したか否かを判定し、進入ICを正確に特定するための動作を示すものである。この動作を司るプログラム(以下、進入判定プログラム500という)はたとえばROM27bに記憶され、動作開始のきっかけ(ステップS500)も図2におけるステップS20と同様である。すなわち、車両の駆動源が始動されるか、アクセサリーオンの状態になると、制御部17は進入判定プログラム500をROM17bより読み出し、動作を開始する。
【0069】
ステップS500の動作開始をうけて、制御部17はステップS510に移行し、車両が進入ICあるいは退出すると想定されるICに接近したか否かを判断する。この判断は、たとえば車両現在位置と、地図データにおけるICの位置データとを比較し、双方が所定距離以内となるか否かで判断する。
【0070】
ステップS510にて、車両がICの所定距離以内に接近したと判断した(ステップS510:yes)場合、ステップS520に進み、一方車両がICの所定距離以内に接近していない(ステップS510:no)場合には、接近するまで待機する。
【0071】
次に、ステップS520では、まず進入フラグが設定されているか否かを調べる。そして進入フラグが設定されていない(ステップS520:no)場合には、当該接近しているICが有料道路への進入ICになる可能性があるので、次にステップS530に進み、当該接近しているICを通過した否かを判断する。この判断は、補正プログラム200のステップS21にて位置検出器10により検出した車両現在位置と、HDD装置11が格納する当該接近しているICの位置情報と、補正プログラム200のステップS22にて特定した走行道路によりなされる。
【0072】
一方、進入フラグが設定されている(ステップS520:yes)場合には、過去に進入ICを通過し、有料道路から未だ退出していないことがわかるので、ステップS510に戻る。
【0073】
そしてステップS530で当該接近したICを通過した(ステップS530:yes)場合には、そのICが進入ICであるとみなし、進入フラグを設定するとともに、そのICの位置情報をメモリに記憶し(ステップS540)、ステップS550に進む。逆に通過しない(ステップS530:no)場合には有料道路に進入していないので、ステップS510に戻る。
【0074】
続くステップS550では、補正プログラム200によって不連続フラグが設定されているか否かを調べる。そして不連続フラグが設定されている(ステップS550:yes)場合には、有料道路への乗り入れ道路が密集している状況で、車両現在位置の検出誤差が大きくなったために誤って別の道路に車両現在位置が補正された可能性があるので、補正プログラム200による補正が完了し、不連続フラグがリセットされるまでの間、エラーフラグを設定する(ステップS551)。逆に、不連続フラグが設定されていない(ステップS550:no)場合には、エラーフラグをゼロリセットしてステップS560に進み、補正済フラグが設定されているか否かを調べる。
【0075】
ステップS560で補正済フラグが設定されている(ステップS560:yes)場合には、走行道路が不連続となり、補正プログラム200による走行道路履歴の連続性を維持するような補正がなされたことがわかる。すなわち、この場合には、進入ICを間違えて記憶している可能性もあるので、これをうけ、制御部17は、補正されたあとの走行道路履歴から、車両が本当に通過したICを特定し(ステップS561)、そのICを真の進入ICとしみなしてステップS570に進む。
【0076】
このようにすることで、ロケーションずれが発生したために、走行道路が不連続となったことを判断し、誤ったICを進入ICとしみなしてしまうことを防止できる。
【0077】
逆にステップS560で補正済フラグが設定されていない(ステップS560:no)場合には、ステップS540で進入ICとみなしたICを真の進入ICと判断してステップS570に進む。
【0078】
次にステップS570では、進入ICが料金徴収所か否かをHDD装置11に格納されたデータを参照して判断し、料金徴収所である(ステップS570:yes)場合には、ステップS580に進んで、進入ICに対して料金徴収所フラグを設定し、ステップS510に戻る。一方で、料金徴収所でない(ステップS570:no)場合には、単にステップS570に戻る。
【0079】
このようにすれば、たとえば進入ICで通行料金を先払いする有料道路であるのか否かを料金徴収フラグによって判断することが可能となる。
【0080】
以上の動作によれば、有料道路への乗り入れ道路が密集している状況で、車両現在位置の検出誤差が大きくなったとしても、進入ICを誤って特定することを防止できる。
【0081】
さて次に、図6に示すフローチャートは、車両が高架道路(有料道路)から退出すると想定される時に、特定した進入ICから退出が予想されるICまでの正しい通行料金を計算するための動作を示すものである。
【0082】
この動作を司るプログラム(以下、料金計算プログラム600という)はたとえばROM27bに記憶されている。この動作開始(ステップS60)は、進入判定プログラム500により進入フラグが設定され(すなわち進入ICを通過し)、かつ料金徴収所フラグが設定されていない状態となることをきっかけとする。
【0083】
さてステップS60の動作開始をうけて、制御部17はステップS61に移行し、車両がICに接近したか否かを判断する。この判断は、進入判定プログラム500のステップS510と同様である。ステップS61にて、車両がICに接近したと判断した(ステップS61:yes)場合、ステップS62に進み、一方車両がICに接近していない(ステップS61:no)場合には、接近するまで待機する。
【0084】
次いで、ステップS62では、進入判定プログラム500によってエラーフラグが設定されているか否かを調べる。そしてエラーフラグが設定されている(ステップS62:yes)場合には、補正プログラム200による処理が間に合わなかったものとみなし、ステップS63に進んで通行料金の計算ができない旨のエラーメッセージを表示する。たとえば「料金不明です」などの表示、音声報知などを行う。
【0085】
このようにすれば、ユーザが誤った通行料金を報知されて混乱することを防止できる。
【0086】
逆に、エラーフラグが設定されていない(ステップS62:no)場合には、ステップS64に進み、進入ICから当該接近するICまでの通行料金を、HDD装置11に格納された料金表データを参照して計算する。そして、算出した通行料金を表示部13による表示や、スピーカによる音声案内により報知する。
【0087】
続くステップS65は、当該接近しているICを通過したか否かを判断する。この判断は進入判定プログラム500のステップS530と同様に行われる。そしてステップS65で、当該接近しているICを通過した(ステップS65:yes)場合には、退出ICを通過したとみなし、ステップS66にて退出フラグを設定し、ステップS61に戻る。結局これにより、設定されたフラグはすべてゼロリセットされる。
【0088】
一方、当該接近しているICを通過していない(ステップS65:no)場合には、ステップS61に戻る。
【0089】
このようにすれば、誘導経路が設定されていなくとも、有料道路への進入ICを的確に特定することが可能となり、有料道路の通行料金を正しく計算し、ユーザに対して報知することができる。つまり乗り入れ道路(IC)が密集しているとき、有料道路に進入する際、ロケーションずれが発生したとしても、正しい進入ICを特定するので、退出すると想定されるIC手前にて前記進入ICからの通行料金をユーザに対して報知することができる。
【0090】
ところで、本フローチャートを説明するにあたってその冒頭で述べたように、上記料金計算プログラム600は料金徴収所フラグが設定されている場合には、通行料金の計算を行わない。
【0091】
この意味は、進入ICで通行料金を先払いする有料道路にてユーザが、既に進入ICで通行料金を支払ったにもかかわらず、退出ICあるいは退出予定ICに接近すると、その通行料金をいちいち報知しないためである。これによってユーザは煩わしさを感じることがなくなる。また、制御部17の処理負荷をも軽減することができる。
【0092】
一方、料金徴収所フラグが設定されている場合には退出ICあるいは退出予定ICに接近すると、通行料金を支払った旨を表示又は音声によりたとえば「通行料金は既に支払われています。」などと報知してもよい。このようにすれば、通行料金を支払ったことをユーザがうっかり忘れている場合に有用である。
【0093】
また、進入フラグが設定されているうちは、ユーザが車両の駆動源を停止しても、データをフラッシュメモリに格納し、あらたに車両の駆動源を始動した場合に、そのデータを参照するようにする。
【0094】
このようにすれば、たとえば、ユーザが有料道路に進入したのち、サービスエリアなどで休憩をとるなど、車両の駆動原が停止した場合に、記憶されている進入ICやフラグのデータが消去されることなく、ユーザに対して正確な通行料金を提示することができる。
【実施例2】
【0095】
実施例1では、誘導経路を案内中であるか否かにかかわらず、過去の走行道路履歴の連続性から、進入ICを特定した。しかし、誘導経路が設定されていれば、進入IC付近にてロケーションずれが発生した場合に、過去の走行道路履歴のみならず、設定された誘導経路も活用することができ、より確実な特定が可能となる。
【0096】
以下、本実施例の制御部17の動作について、図7乃至図10に示すフローチャートおよび図を参照しつつ、より詳しく説明する。本実施例の前提は前述の通り、出発地から目的地までの誘導経路が設定され、その誘導経路にそってユーザが移動している場合である。
【0097】
図7に示すフローチャートは本実施例における補正プログラム700の動作を示すものである。なお、誘導経路がユーザによって設定されないうちは、実施例1の補正プログラム200が動作する。
【0098】
図7に示すフローチャートの動作開始のきっかけ(ステップS70)は、図2に示すフローチャートのステップS20と何ら変わりない。そして、動作開始をうけて、制御部17はステップS71に移行し、位置検出器10の検出信号により車両現在位置を算出し、ステップS72ではステップS71で算出した車両現在位置から、車両の走行道路を特定する。車両現在位置の算出(ステップS71)および走行道路の特定処理(ステップS72)は実施例1と変わらない。
【0099】
次にステップS73に進んだ制御部17は、前のステップ群で特定した走行道路が過去の走行道路履歴と比較して、不連続となり、かつ設定された誘導経路に対して不連続になったか(誘導経路から外れたか)否かを判断する。
【0100】
すなわち上記のような状況が発生するのは、たとえば図8(a)に示すように、ステップS71で算出した車両現在位置80が、所定の角度誤差および距離誤差の範囲を大きく逸脱したために、図8(b)に示すように、道路A(誘導経路リンク81)に並行する道路Bに対応するリンク82に補正される場合がある。このときには、補正後の車両現在位置83が道路Bに対応するリンク82に引き込まれるので、それまで特定した走行道路(走行道路履歴)と、自車位置を補正した後の走行道路が不連続となり、しかも、設定された誘導経路からも外れることとなる。
【0101】
ステップS73で、特定した走行道路が走行道路履歴と比較して不連続となり、しかも誘導経路からも外れたと判断した(ステップS73:yes)場合には、制御部17は、不連続フラグを設定し(ステップS74)、ステップS75に進む。
【0102】
逆に、特定した走行道路が不連続になっていないと判断した(ステップS73:no)場合にはステップS72にて特定した走行道路を走行しているものとみなし、ステップS70に戻って上述した一連の動作を繰り返す。
【0103】
そしてステップS75では、走行道路履歴の連続性を維持するような補正を行う。具体的には、不連続になる前の走行道路を車両が走行しているものと判断し、走行道路履歴を修正する補正を行う。その後、ステップS76に進み、設定されている不連続フラグをゼロリセットするとともに、補正を完了した旨を示す補正済フラグを設定する。
【0104】
また図2に示す補正プログラム200と同様に、再度ステップS74にて不連続フラグを設定する際は、補正済フラグが設定されていればその補正済フラグをリセットするものとする。
【0105】
このようにすることで、たとえばユーザが意識的に走行道路を乗り換えて誘導経路を外れたのか、それとも検出誤差が大きくなり誤って別の道路に補正されたのかを、走行道路履歴の連続性と誘導経路とから設定される、不連続フラグ、補正済フラグを参照することで判断することができる。
【0106】
続いて図9に示すフローチャートは、本実施例における進入判定プログラム900の動作を示すものである。なお、誘導経路がユーザによって設定されないうちは、実施例1の進入判定プログラム500が動作する。
【0107】
本フローチャートの動作開始のきっかけ(ステップS900)も図5に示すフローチャートのステップS500と同様である。
【0108】
上記動作開始をうけて、制御部17は、ユーザによって出発地、目的地が設定され、誘導経路の探索を行うように指示されるまで待機する(ステップS910)。そして、誘導経路を探索する旨の指示がなされた(ステップS910:yes)場合には、ステップS920に進み、誘導経路算出処理を実行して、誘導経路を算出する。このとき、誘導経路が有料道路を利用した経路である場合には、その有料道路への進入を予定しているIC(進入予定IC)から、退出を予定しているIC(退出予定IC)までの通行料金を料金表データより算出して、ユーザに報知する。
【0109】
一方、前記指示がなされない(ステップS910:no)場合には待機状態を維持する。
【0110】
次にステップS930では、進入フラグが設定されているか否かを判断し、進入フラグが設定されている(ステップS930:yes)場合には、すでに有料道路に進入したものとみなし、ステップS910に戻る。逆に進入フラグが設定されていない(ステップS930:no)場合にはまだ有料道路に進入していないので、ステップS940に進む。
【0111】
次にステップS940では、ICを通過したか否かを判断する。この判断は、図5に示すステップS510およびステップS530と同様である。そして、ICを通過した(ステップS940:yes)場合にはステップS950に進み、そのICを進入ICとみなして、進入フラグを設定する。逆に、ICを通過しない(ステップS940:no)場合には、ステップS940に戻る。
【0112】
ステップS960は、ステップS950にて特定したICが誘導経路上の進入が予定されていたIC(進入予定IC)であるか否かを判断する。そして、進入予定ICである(ステップS960:yes)場合にはステップS990、逆に進入予定ICでない場合にはステップS970に進む。
【0113】
ステップS970以下ステップ981に至るステップ群は、ステップS950で進入ICとみなしたICがロケーションずれによって誤って進入予定ICでないICに特定されたのか、またはユーザが意図的に誘導経路を逸脱した結果、当初の進入予定ICでないICから有料道路に進入したのかを判断するためのものである。
【0114】
ステップS970は、補正プログラム700によって不連続フラグが設定されているか否かを調べる。そして不連続フラグが設定されている(ステップS970:yes)場合には、有料道路への乗り入れ道路が密集している状況で、車両現在位置の検出誤差が大きくなったために誤って別の道路に車両現在位置が補正された可能性があるので、補正プログラム700による補正が完了し、不連続フラグがリセットされるまでの間、エラーフラグを設定する(ステップS971)。逆に、不連続フラグが設定されていない(ステップS970:no)場合には、エラーフラグをゼロリセットしてステップS980に進み、補正済フラグが設定されているか否かを調べる。
【0115】
ステップS980で補正済フラグが設定されている(ステップS980:yes)場合には、走行道路が不連続となりしかも誘導経路からはずれたので、補正プログラム700による走行道路履歴の連続性を維持するような補正がなされたことがわかる。すなわち、この場合には、進入ICを間違えて記憶している可能性もあるので、これをうけ、制御部17は、補正されたあとの走行道路履歴から、車両が本当に通過したICを進入予定ICと特定し(ステップS981)、当初の誘導経路上の進入予定ICを真の進入ICとしみなしてステップS990に進む。
【0116】
このようにすることで、走行道路が走行道路履歴と不連続となり、しかも誘導経路を外れたときに、本来なら当初から進入を予定していたICを通過して有料道路に進入したにもかかわらず、誤ったICを進入ICとみなしてしまうことを防止できる。
【0117】
逆にステップS980で補正済フラグが設定されていない(ステップS980:no)場合には、ステップS950で進入ICとみなしたICを真の進入ICと判断する。すなわちこの場合は、ユーザが意図的に誘導経路を逸脱したものと判断することができるので、制御部17はこのステップS980がnoであることをうけて誘導経路を変更するために、誘導経路の再探索を行うなどの動作を行い、ステップS990に進む。
【0118】
続くステップ990およびステップS991は、図5に示すフローチャートのステップS570およびステップS580と全く同様であるので説明は省く。
【0119】
続いて図10に示すフローチャートは、本実施例における料金計算プログラム1000の動作を示すものである。なお、誘導経路がユーザによって設定されないうちは、実施例1の料金計算プログラム600が動作する。
【0120】
図10に示すフローチャートの動作開始のきっかけ(ステップS100)は、図6に示すフローチャートのステップS60と何ら変わりない。ステップS100の動作開始をうけて、制御部17は、ステップS101に進み、車両がICに接近したか否かを判断する。この判断は図6に示すフローチャートのステップS61と同一である。
【0121】
続くステップS102、ステップS103も図6に示すフローチャートのステップS62、ステップS63と同一であるので説明は省く。
【0122】
次に、ステップS104では、当該接近しているICが、設定された誘導経路で有料道路から退出を予定するIC(退出予定IC)であるか否かを判断する。この判断は、たとえば退出予定ICの位置と当該接近しているICとの位置を比較することにより行う。そして、ステップS104において、接近するICが退出予定ICである(ステップS104:yes)場合には、ステップS105に進み、進入判定プログラム900にて特定した進入ICから、退出予定ICまでの通行料金を計算し、ユーザに対して報知し、ステップS107へと動作を進める。
【0123】
逆にステップS104において、接近するICが退出予定ICでない(ステップS104:no)場合には、ステップS106に進み、進入判定プログラム900にて特定した進入ICから、当該接近するICまでの通行料金を計算する。ここで、通行料金の報知は自動的に行ってもよいし、逆に報知は行わず、ユーザの操作スイッチ群12からの指示をうけた場合にのみ行うようにしてもよい。この意味は、ユーザが退出予定ICを通過しようとする場合、退出予定ICでない他のICに接近したからといって、いちいちそのたびに通行料金が自動的に報知されるのは、ユーザにとって煩わしさを感じさせる可能性もあるからである。また一方で、このように当該接近するICまでの通行料金を計算しておけば、ユーザが予定を変更し、退出予定ICでない他のICから有料道路を退出しようとした場合に、そのICまでの通行料金を報知することができる点で、有用である。
【0124】
次にステップS107では、接近するICを通過したか否かを判断する。このステップは図6に示すステップS65と全く同一である。
【0125】
ステップS108も図6に示すステップS66と同一であるので説明は省く。
【0126】
本実施例によれば、誘導経路が設定されている状況であっても同様に、有料道路への進入ICを的確に特定することが可能となり、有料道路の通行料金を正しく計算し、ユーザに対して報知することができる。つまり乗り入れ道路(IC)が密集しているとき、有料道路に進入する際、ロケーションずれが発生したとしても、正しい進入ICを特定するので、退出すると想定されるIC手前にて前記進入ICからの通行料金をユーザに対して報知することができる。
【0127】
以上、本発明によれば、ロケーションずれによって誤ったICを進入ICとみなした結果、誤った通行料金を算出して報知してしまう、という不都合を防止し、ユーザの混乱を避けるとともに、正しい通行料金を報知することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1】本発明の車載用ナビゲーション装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施例1に係る制御部の補正動作フローチャートである。
【図3】本発明の実施例1に係る制御部の補正動作を補足的に説明する図である。
【図4】本発明の実施例1に係る制御部の補正動作を補足的に説明する図である。
【図5】本発明の実施例1に係る制御部の進入判定動作フローチャートである。
【図6】本発明の実施例1に係る制御部の料金計算動作フローチャートである。
【図7】本発明の実施例2に係る制御部の補正動作フローチャートである。
【図8】本発明の実施例2に係る制御部の補正動作を補足的に説明する図である。
【図9】本発明の実施例2に係る制御部の進入判定動作フローチャートである。
【図10】本発明の実施例2に係る制御部の料金計算動作フローチャートである。
【図11】本発明で想定する課題を補足的に説明するための概略図である。
【符号の説明】
【0129】
1・・・車載用ナビゲーション装置
10・・・位置検出器
11・・・HDD装置
13・・・表示部
15・・・音声入出力部
16・・・制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の現在位置を取得する現在位置取得手段と、
道路データおよび有料道路のICの少なくとも位置情報を含むデータ(以下、ICデータという)を記憶する記憶手段と、
前記取得した車両の現在位置、前記道路データ、に基づいて前記車両の走行する走行道路を順次特定する走行道路特定手段と、
前記取得した車両の現在位置および前記記憶手段に記憶されたICデータから車両が有料道路に進入した進入ICを特定する進入IC特定手段と、
前記進入IC特定手段により前記進入ICが特定された状況において、前記車両が前記進入した有料道路から退出するための退出ICに接近したことを判定する退出IC接近判定手段と、
前記退出IC接近判定手段により、前記退出ICに接近したことが判定された場合に、前記特定した進入ICから前記接近した退出ICまでの通行料金を算出する通行料金算出手段とを具備する車載用ナビゲーション装置であって、
前記順次特定した走行道路が不連続となった場合には、前記走行道路特定手段は前記不連続となる以前の走行道路を前記車両の走行道路として特定し、前記進入IC特定手段は、前記特定された走行道路に基づいて前記特定した進入ICを特定すること、
を特徴とする車載用ナビゲーション装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車載用ナビゲーション装置において、
前記取得した車両の現在位置から目的地までの誘導経路を探索する誘導経路探索手段を具備し、
前記探索した誘導経路に前記有料道路が含まれ、前記進入IC特定手段により特定した進入ICが、前記誘導経路における前記有料道路への進入を予定する進入予定ICでない状況であって、
前記順次特定した走行道路が不連続となり、しかも前記不連続となった後の走行道路が前記誘導経路から外れている場合には、前記走行道路特定手段は前記不連続となる以前の走行道路を前記車両の走行道路として特定し、前記進入IC特定手段は、前記特定された走行道路に基づいて前記進入ICを特定すること、
を特徴とする車載用ナビゲーション装置。
【請求項3】
請求項1乃至2のいずれかに記載の車載用ナビゲーション装置において、
前記計算した通行料金をユーザに対して報知する報知手段を備えること、
を特徴とする車載用ナビゲーション装置。
【請求項4】
請求項3に記載の発明のうち、請求項2に記載の車載用ナビゲーション装置において、
前記接近した退出ICが前記探索した誘導経路における前記有料道路からの退出予定ICでない場合には、前記通行料金算出手段により算出した通行料金を報知しないこと、
を特徴とする車載用ナビゲーション装置。
【請求項5】
請求項3乃至4記載の車載用ナビゲーション装置において、
前記不連続が生じた場合、前記進入IC特定手段が前記進入ICを特定しないうちは、前記報知手段にエラーメッセージを報知させること、
を特徴とする車載用ナビゲーション装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の車載用ナビゲーション装置において、
前記ICデータには前記ICが料金徴収所であるか否かを識別するためのデータが含まれており、
前記ICデータに基づいて、前記特定した進入ICが料金徴収所であるか否かを判断する進入IC種別判断手段を備え、
前記進入IC種別判断手段が前記特定した進入ICを料金徴収所であると判断した場合には、前記通行料金の算出を行わないこと、
を特徴とする車載用ナビゲーション装置。
【請求項7】
車両の現在位置を取得する現在位置取得手段と、
道路データおよび有料道路のICの少なくとも位置情報を含むデータ(以下、ICデータという)を記憶する記憶手段と、
前記取得した車両の現在位置、前記道路データ、に基づいて前記車両の走行する走行道路を順次特定する走行道路特定手段と、
前記取得した車両の現在位置および前記記憶手段に記憶されたICデータから車両が有料道路に進入した進入ICを特定する進入IC特定手段と、
前記進入IC特定手段により前記進入ICが特定された状況において、前記車両が前記進入した有料道路から退出するための退出ICに接近したことを判定する退出IC接近判定手段と、
前記退出IC接近判定手段により、前記退出ICに接近したことが判定された場合に、前記特定した進入ICから前記接近した退出ICまでの通行料金を算出する通行料金算出手段と、
前記取得した車両の現在位置から目的地までの誘導経路を探索する誘導経路探索手段とを具備する車載用ナビゲーション装置において、
前記探索した誘導経路に前記有料道路が含まれ、前記進入IC特定手段により特定した進入ICが、前記誘導経路における前記有料道路への進入を予定する進入予定ICでない状況であって、
前記順次特定した走行道路が不連続となり、しかも前記不連続となった後の走行道路が前記誘導経路から外れている場合には、前記走行道路特定手段は前記不連続となる以前の走行道路を前記車両の走行道路として特定し、前記進入IC特定手段は、前記特定された走行道路に基づいて前記進入ICを特定すること、
を特徴とする車載用ナビゲーション装置。
【請求項8】
請求項7に記載の車載用ナビゲーション装置において、
前記計算した通行料金をユーザに対して報知する報知手段を備えること、
を特徴とする車載用ナビゲーション装置。
【請求項9】
請求項8のいずれかに記載の車載用ナビゲーション装置において、
前記接近した退出ICが前記探索した誘導経路における前記有料道路からの退出予定ICでない場合には、前記通行料金算出手段により算出した通行料金を報知しないこと、
を特徴とする車載用ナビゲーション装置。
【請求項10】
請求項8乃至9に記載の車載用ナビゲーション装置において、
前記不連続が生じた場合、前記進入IC特定手段が前記進入ICを特定しないうちは、前記報知手段にエラーメッセージを報知させること、
を特徴とする車載用ナビゲーション装置。
【請求項11】
請求項7乃至10のいずれかに記載の車載用ナビゲーション装置において、
前記ICデータにはICが料金徴収所であるか否かを識別するためのデータが含まれており、
前記ICデータに基づいて、前記特定した進入ICが料金徴収所であるか否かを判断する進入IC種別判断手段を備え、
前記進入IC種別判断手段が前記特定した進入ICを料金徴収所であると判断した場合には、前記通行料金の算出を行わないこと、
を特徴とする車載用ナビゲーション装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−134086(P2008−134086A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−318728(P2006−318728)
【出願日】平成18年11月27日(2006.11.27)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】