説明

車載装置

【課題】カーナビゲーション装置が携帯電話機を介して外部と通信する際、カーナビゲーション装置のブルートゥース通信機が所望の1台の携帯電話機とだけ通信リンクを確立できるようする。
【解決手段】電波シールドを施したケース7内に、ブルートゥース通信機3を設置する。外部と通信するとき、1台の携帯電話機12をケース7内に置き、扉10を閉じる。これにより、ブルートゥース通信機3が携帯電話機12だけと通信リンクを確立するので、通信リンクを確立した後に携帯電話機12をケース7から取り出すことにより、ブルートゥース通信機3、携帯電話機12を介してカーナビゲーション装置が外部と通信できるようになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯端末を介して外部と通信する車載装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車載装置、例えばカーナビゲーション装置では、最近、携帯電話機を介して外部の情報センタと通信し、交通情報や現在位置周辺の店舗情報などの各種情報を取得できるようになっている。この場合にカーナビゲーション装置と携帯電話機との通信は、近距離無線通信機能、例えばブルートゥース(Bluetooth;登録商標)通信機能によって行われる。
【0003】
ところで、カーナビゲーション装置が携帯電話機を介して外部と通信しようとする場合、車内にブルートゥース通信機能を備えた携帯電話機が複数存在すると、カーナビゲーション装置と運転者の携帯電話機とではなく、同乗車が所有する別の携帯電話機との通信リンクが確立(接続)されてしまうことがある。この問題を解決するために、所望の携帯電話機の識別データを記憶することにより、その携帯電話機とのみ接続され、他の携帯電話機には接続されないようにすることが考えられている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−115917号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の携帯電話機の識別データを記憶する方式では、例えば1台の車両を複数人で使用するような場合、運転者が変わると、それに伴って携帯電話機も変わるため、その度に識別データを入力し直さねばならず、大変面倒である。
【0005】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたもので、その目的は、複数の携帯端末のうち所望の携帯端末にだけ接続したい場合、識別データの入力などの面倒な操作をしなくとも済む車載装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明では、所望の形態端末を特定の範囲内に置くだけで、車載装置の近距離無線通信手段と当該所望の携帯端末とが接続されるので、識別データを入力するなどの面倒な操作を要しない。
【0007】
請求項2の発明では、所望の携帯端末をシールドルーム内に置いて扉を閉めると、車載装置の近距離無線通信手段と当該所望の携帯端末とが接続され、その後、扉を開けば、携帯端末は外部と通信できる状態となる。
【0008】
請求項3の発明では、所望の携帯端末をノイズ電波発生手段の近傍に置くと、近距離無線通信手段から出力された電波強度は、近距離無線通信手段の近くは強いが、近距離無線通信手段から遠くなるに従って電波強度は弱くなってゆく。このため、ノイズ電波発生手段の近く(近距離無線通信手段の近く)に置かれた所望の携帯端末は、近距離無線通信手段から出力された電波を受信して接続状態となるが、離れたところにある他の携帯端末は、ノイズ電波に邪魔されて近距離無線通信手段から出力された電波を受信できず、接続状態となることはない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態をカーナビゲーション装置に適用して図1ないし図4を参照しながら説明する。図3は車載装置としてのカーナビゲーション装置1の電気的構成を示すブロック図であり、同図のように、カーナビゲーション装置1の制御回路2には、近距離無線通信手段としてのブルートゥース通信機3、通信中表示灯4、エラー表示灯5、ブルートゥース解除スイッチ6が接続されている。
【0010】
なお、図示はしないが、制御回路2には、他にGPSなどの現在位置検出器、地図データ記憶装置、表示装置、操作入力装置などが接続され、現在位置検出器により車両の現在位置を検出し、検出した現在位置を中心とした地図データを地図データ記憶装置から読み出してこれを表示装置に表示したり、或いは目的地を入力すると、現在位置から目的地までの経路を探索してこれを表示装置の地図に重ねて表示したりするようになっている。
【0011】
前記制御回路2は、カーナビゲーション装置1の動作全般を制御する機能を有しており、マイクロコンピュータを主体として構成されている。即ち、制御回路2は、CPU、ROM、RAM、I/Oおよびこれらを接続するバスなど(いずれも図示せず)を備えて構成されている。このうち、ROMには車両用ナビゲーション装置1を動作させるための実行プログラムが格納され、RAMにはプログラム実行時の一時データや地図データ記憶装置から取得した地図データなどが一時的に格納されるようになっている。
【0012】
前記ブルートゥース通信機3は、制御回路2の制御下において、近距離にあるブルートゥース接続可能な携帯電話機(ブルートゥース通信機を備えた携帯端末)をスキャンウォッチ(検索)し、接続可能な携帯電話機の存在を検索する。検索の結果、1台の携帯電話機しか存在しないときは、その携帯電話機とブルートゥース通信リンクを確立(接続)する。なお、ブルートゥースは、2.4GHzの周波数帯の電波を用い、例えば半径10m程度以内にあるブルートゥース搭載機器と通信が可能である。
【0013】
前記通信中表示灯4は、ブルートゥース通信機3が携帯電話機と接続状態になった時に点灯され、その接続を解除した時に消灯される。前記エラー表示灯5は、ブルートゥース通信機3がスキャンウォッチしたとき、周辺に接続可能な携帯電話機がなく接続できない場合などに点灯される。また、ブルートゥース解除スイッチ6は、ブルートゥース通信機3が運転者の接続したくない携帯電話機と接続状態になった場合などにおいて、強制的にその接続を解除する場合に操作される。
【0014】
なお、ブルートゥース通信機3が接続可能な携帯電話機を検索する場合、検索した形態電話機の例えば番号が図示しない表示装置に表示されるようになっている。この表示装置に表示された携帯電話機の番号が運転者の携帯電話機の番号でなかったようなときには、ブルートゥース解除スイッチ6を操作すれば、ブルートゥース通信機3とその携帯電話機との接続は解除される。
【0015】
前記ブルートゥース通信機3は、図1に示すように、端末選択手段としてのケース7内に設けられている。このケース1は、車両内の例えばダッシュボード(図示せず)に配設されている。ケース1は、電波を遮蔽するシールド材を貼り付けてシールドケースとして構成されている。このようなケース1の内部空間は、外部と電波の往来が遮断されたシールドルーム8とされている。
【0016】
シールドケース7には、携帯電話機などを出し入れできる大きさの出し入れ口9が形成され、この出し入れ口9を開閉するための扉10が例えば上下方向に回動可能に取り付けられている。勿論、扉10にもシールド材が貼り付けられており、扉10を閉じた状態では、出し入れ口9を通じた電波の往来が遮断される。また、シールドケース7には、扉10の開閉を検出するための開閉センサ11が設けられており、この開閉センサ11の検出信号は、制御回路2に入力されるようになっている。なお、開閉センサ11は、例えばマイクロスイッチからなるが、扉10が磁性体である場合、近接スイッチや磁気センサなどから構成しても良い。
なお、上記シールドケース8および扉10に貼り付けられたシールド材は、少なくともブルートゥース通信に用いられる2.5GHzの周波数帯の電波を遮断できるものであれば良い。
【0017】
次に、上記構成において、カーナビゲーション装置1が外部と通信する場合の作用を図4に示すフローチャートをも参照しながら説明する。まず、運転者は、シールドケース7の扉10を開いて出し入れ口9からシールドルーム8内に自分の携帯電話機12を入れ、扉10を閉じる(図1参照)。この状態では、シールドルーム8内にブルートゥース通信機3と運転者の携帯電話機12だけが納められた状態となる。
【0018】
さて、カーナビゲーション装置1が外部と通信する必要を生じた場合、例えば運転者が図示しない操作入力装置を操作して外部の情報センタから現在位置周辺のレストラン情報を取得しようとしたような場合、制御回路2は、開閉センサ11の検出信号に基づき、扉10が開か閉かを判断する(図4のステップS1;扉開閉判断手段)。扉10が閉じられていた場合(ステップS1で「YES」)には、制御回路2は、ブルートゥース通信機3に接続動作指令を出力する(接続指令手段)。
【0019】
接続動作指令を受けたブルートゥース通信機3は、スキャンウォッチ信号を出力し、周辺に接続可能な携帯電話機が存在するか否かを検索する(ステップS2)。ブルートゥース通信機3の近くに接続可能な携帯電話機が存在する場合には、その携帯電話機は、スキャンウォッチ信号に応答する信号を出力する。そして、ブルートゥース通信機3は、スキャンウォッチ信号に対する応答信号に基づき、検索の結果(接続可能な携帯電話機の台数とその番号)を制御回路2に出力する。制御回路2は、検索結果を判断し(ステップS3;検索結果判断手段)、接続可能な携帯電話機が1台である場合には、ブルートゥース通信機3に通信リンク確立のための処理指令を出力する。ブルートゥース通信機3は、通信リンク確立の処理指令を受けると、携帯電話機と通信リンクを確立する処理を実行する(ステップS4)。
【0020】
即ち、図1に示すように、シールドルーム8内に1台の携帯電話機12が置かれ、扉10が閉じられていた場合には、ブルートゥース通信機3が出力するスキャンウォッチ信号はシールドケース7により遮蔽されて外部に放射されることはない。このため、ブルートゥース通信機3が出力するスキャンウォッチ信号は、シールドルーム8内の1台の携帯電話機12だけが受信して応答信号を出力する。従って、ブルートゥース通信機3は、1台の携帯電話機12だけを検索し、その携帯電話機12と通信リンクを確立する処理を実行するのである。
【0021】
これに対し、扉10が閉められたシールドルーム8内に、携帯電話機が1台も置かれていなかった場合には、ブルートゥース通信機3は、携帯電話機を1台も検索しない。また、シールドルーム8内に複数台の携帯電話機が置かれていたり、或いは、シールドルーム8内には1台の携帯電話機12しか置かれていないが、スキャンウォッチ信号の出力時に一時的に扉10が開かれてそのスキャンウォッチ信号が出し入れ口9から外部に放射されたりした場合、シールドルーム8内に置かれた複数台の携帯電話機、或いはシールドルーム8内に置かれた1台の携帯電話機12に加えて、車両の同乗者が所持するブルートゥース通信機能付きの携帯電話機がスキャンウォッチ信号に対する応答信号を出力する。このため、ブルートゥース通信機3は、複数台の携帯電話機の存在を検索する。
【0022】
すると、制御回路2は、エラー表示灯4を点灯させて運転者に異常を報知する(ステップS6)。シールドルーム8内に複数台の携帯電話機が置かれている場合、運転者は、扉10を開いてシールドルーム8内から所望の1台の携帯電話機12を残して他の携帯電話機を取り出し、扉10を閉じる。すると、制御回路2は、扉10の開によりエラー表示灯4を消灯させ(ステップS7で「NO」、ステップS8、ステップS1で「YES」)、再度、ブルートゥース通信機3にスキャンウォッチ信号を出力させる(ステップS2)。
【0023】
また、シールドルーム8の扉10が開かれたままになっていた場合には、エラー表示灯4は、点灯後、直ぐに消灯(ステップS7で「NO」、ステップS8)されるが、シールドルーム8内に携帯電話機12が1台だけあることを確認して扉10を閉じると、ブルートゥース通信機3は、再びスキャンウォッチ信号を出力する(ステップS1で「YES」、ステップS2)。
【0024】
ブルートゥース通信機3が1台の携帯電話機12を検出し、通信リンク確立処理を実行すると、制御回路2は、その後、通信リンクが確立されたか否かを判断する(ステップS5;接続判断手段)。ブルートゥース通信機6と携帯電話機12との通信リンクが正常に確立された場合(ステップS5で「YES」)には、制御回路2は、通信リンク確立後の所定の処理を実行(ステップS9)した後、ブルートゥース通信中であることを示す通信中表示灯5を点灯させる(ステップS10)。
【0025】
この通信中表示灯5の点灯を見て、図2に示すように、扉10を開き(ステップS11で「YES」)、携帯電話機12をシールドルーム8から取り出して所定の場所、例えば水平に開かれた扉10の上に置く。すると、制御回路2は、扉10の開を検出し、ブルートゥース通信機3を通じて携帯電話機12に携帯電話網との接続処理を実行させる(ステップS12)。これにより携帯電話機12が携帯電話網に接続され、情報センタに接続されるので、制御回路2は、携帯電話機12を介して情報センタと通信し、所定の情報を取得する(ステップS13)。
【0026】
制御回路2は、情報センタから所定の情報を取得し終えると、ブルートゥース通信機3にブルートゥース通信を断つ旨の指令を出力する(切断指令手段)。これにより、携帯電話機12は、情報センタとの通信を終了するので、制御回路2は、通信中表示灯5を消灯させる(ステップS14で「YES」、ステップS15)。
【0027】
このように本実施形態によれば、シールドルーム8内(特定の範囲内)に所望の1台の携帯電話機12を置くことにより、ブルートゥース通信機3は、その携帯電話機12だけと通信リンクを確立する。このため、ブルートゥース通信機3が1台の携帯電話機とだけ通信リンクを確立するように、その携帯電話機の識別データを予め入力するという面倒な操作をしなくとも済む。
【0028】
図5は、本発明の他の実施形態を示す。この実施形態では、ブルートゥース通信機3の近くにノイズ電波発生手段としてのノイズ電波送信機(端末選択手段)13が設置されている。このノイズ電波送信機13は、ブルートゥース通信機3の送受信電波の周波数帯と同じ周波数帯のノイズ電波を送信する。このノイズ電波の強さは、ノイズ電波送信機13を中心にした所定範囲内(特定の範囲内)であれば、ブルートゥース通信機3から送信される電波強度は強いので、当該範囲内に置かれた携帯電話機は、ブルートゥース通信機3と通信リンクを確立可能である。しかし、ノイズ電波送信機13を中心にした所定範囲内の外側ではブルートゥース通信機3の送信電波強度は弱くなるので、当該範囲外に置かれた携帯電話機は、ブルートゥース通信機13と通信リンクを確立できなくなる。
【0029】
ノイズ電波送信機13は、ブルートゥース通信機3がスキャンウォッチ信号を出力し始めてから1台の携帯電話機と通信リンクを確立するまでの間、ノイズ電波を送信する。このノイズ電波の送信は、制御回路2の制御下で行われる。
【0030】
本発明は、上記し且つ図面に示す実施形態に限定されるものではなく、以下のような拡張或いは変更が可能である。
シールドルーム8内には、ブルートゥース通信機3の必ずしも全体を設置する必要はない。その送受信用のアンテナだけをシールドルーム8内に設置しても良い。
近距離無線通信手段は、ブルートゥース通信機3に限られない。他の近距離無線通信規格の通信機であっても良い。
携帯端末は、携帯電話機に限られない。車載装置の持つ近距離無線通信手段と通信可能な近距離無線通信機能を有し、且つ移動電話網と接続できる携帯端末であれば良い。
車載装置は、カーナビゲーション装置1に限られない。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施形態を示す要部の断面図
【図2】図1とは異なる状態で示す要部の断面図
【図3】電気的構成を示すブロック図
【図4】外部と通信する場合の制御内容を示すフローチャート
【図5】本発明の他の実施形態を示す電気的構成のブロック図
【符号の説明】
【0032】
図面中、1はカーナビゲーション装置(車載装置)、2は制御回路、3はブルートゥース通信機(近距離無線通信手段)、7はケース(端末選択手段)、8はシールドルーム、9は出し入れ口、10は扉、12は携帯電話機(形態端末)、13はノイズ電波送信機(ノイズ電波発生手段、端末選択手段)を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
近距離無線通信手段を備え、外部との通信を、前記近距離無線通信手段と通信する近距離無線通信機能を有した携帯端末を介して行う車載装置において、
前記近距離無線通信手段と通信可能な前記携帯端末が複数存在するとき、当該複数の携帯端末のうち、所望の携帯端末を特定の範囲内に置くことによって当該所望の携帯端末とのみ接続するための端末選択手段を備えてなる車載装置。
【請求項2】
前記端末選択手段は、
出し入れ口と、前記出し入れ口を開閉可能な扉とを備え、前記扉を閉じた状態では前記近距離無線通信手段の出力電波と同じ周波数帯の電波を遮断する機能を有したシールドルームから構成され、
前記近距離無線通信手段は、電波を前記シールドルーム内に出力し、前記所望の携帯端末を前記シールドルーム内に置いて前記扉を閉じた状態では、前記近距離無線通信手段の出力電波は前記所望の携帯端末のみに受信されて両者間が接続されるようにしたことを特徴とする請求項1記載の車載装置。
【請求項3】
前記端末選択手段は、前記近距離無線通信手段の近傍に設けられ、当該近距離無線通信手段の出力電波と同じ周波数のノイズ電波を出力するノイズ電波発生手段から構成され、
前記所望の携帯端末を前記ノイズ電波発生手段の近傍に置くことによって前記近距離無線通信手段の出力電波が前記所望の携帯端末のみに受信されて両者間が接続されることを特徴とする請求項1記載の車載装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−288964(P2008−288964A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−132887(P2007−132887)
【出願日】平成19年5月18日(2007.5.18)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】