説明

軌道上移動体制御装置および進出方向検出装置

【課題】GPS観測を利用した軌道上を移動する移動体制御において、観測誤差により隣接する他の軌道に存在する移動体や停止目標による誤警報、誤ブレーキを回避する。
【解決手段】移動体制御装置100を、コントローラ108、GPS受信機113、他移動体の移動体制御装置と送受信する無線機115、ブレーキ107及び警報ユニット109を備えて構成し、コントローラを自移動体が走行している線別、線路名称等の軌道情報を記憶する手段及び他移動体又は停止目標と自移動体の軌道情報を比較する手段を備えて構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全地球測位システム(以下、「GPS」と記す)を用いて位置情報を取得し、軌道上を走行する移動体を制御する移動体制御装置に関し、特に鉄道車両の制御に好適な移動体制御装置、および該移動体制御装置が移動体の分岐方向を識別するために、分岐箇所における進出方向を検出する進出方向検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のGPSの普及に伴って、これを鉄道車両などの軌道上を走行する車両の位置検知に使用する提案がなされている。このような従来のGPSによる軌道上走行車両の位置検知は、GPSを備える位置検知手段により自己位置を検知し、これを地上無線通信手段によって他移動体と相互に送受信して、両者の相対距離を求め、これに基づき運転者に警報を発生している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、GPSにより検知した位置情報に誤差が含まれる場合、検知された位置情報を予め記憶している電子地図内の軌道上に補正してやることで、軌道上を走行する移動体の位置検知の精度を向上しているものもある(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平8−86853号公報(段落番号〔0011〕−段落番号〔0023〕、第1図)
【特許文献2】特開2000−127974号公報(段落番号〔0017〕−段落番号〔0068〕、第1−12図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特開平8−86853によるシステムは、単に移動体間の間隔が所定距離以下となることにより警報を発するので、これを鉄道線路の上下線のように隣接した異なる軌道を有する輸送システムに適用した場合、異なる軌道を走行する他移動体により生ずる誤警報を避けることができない。なぜならば、例えば隣接した異なる軌道上をすれ違う移動体どうしの間隔は、同一軌道上を走行する移動体の衝突を防止するために必要とされる間隔よりもはるかに小さいからである。
【0006】
また、特開2000−127974によるシステムを鉄道などの比較的長距離を走行する移動体に適用するには、電子地図の作成コストがかさむという欠点を有する。なぜならば、例えば鉄道線路では隣接線の軌道中心間の間隔が4m程度となる箇所が多く、このような隣接した軌道を走行する各移動体を識別するためにはGPS観測誤差と電子地図の誤差の和を2m程度以内に抑える必要がある。一方で移動体に搭載されるGPSは、リアルタイム観測可能な観測方法を使用するために、観測誤差を1m程度生じてしまう。したがって使用する電子地図は、許容誤差が1m程度のものが必要とされるが、通常これらの地図は衛星写真や航空写真による写真測量によって作られるため、測量対象に高低差がある場合は測量対象の比高の影響による誤差が生じてしまう。これを避けるためには、全ての測量点をできるだけ真上に近い位置から撮影しなければならないため、撮影点が多くなり測量コストが高くなってしまうからである。
【0007】
したがって、本発明では軌道上を走行する移動体の位置検知をGPS観測によって行う場合でも、隣接線などの異なる軌道上を走行する移動体を区別が可能であり、かつ前記のようなコストの高い電子地図を作成する必要のない移動体制御システムを実現することを目的とする。
【0008】
また、本発明は移動体間の間隔制御に限らず、例えば鉄道軌道を走行する保守作業車などの速度を制御する必要がある一旦停止箇所、速度制限箇所、線路閉鎖区間などの進入禁止箇所や基地線入口箇所などにおいても、GPS観測による移動体の速度制御が可能な移動体制御システムを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明による移動体制御装置は、GPS観測による位置検知に加えて自移動体が現在走行している軌道情報を記憶する手段を備える。軌道情報は、移動体が走行している軌道の線別情報(上り線、下り線など)および/または線種(駅構内、駅中間の別、番線、中線、基地線、通路線などの線路名称、軌道が通常の軌道であるか分岐器内にあるか、またはその軌道がトンネル内にあるかなどに関する情報)からなる。このような軌道情報を記憶しておき、これを停止目標の候補点の軌道情報と比較することにより、GPSによる位置情報取得手段だけでは観測誤差のために自移動体が隣接する軌道のいずれにいるか判断できない場合でも、自移動体が停止目標の候補点と同じ軌道上に存在するか否を判断し、同じ軌道上に存在する候補点のみを停止目標とすることができる。なおGPSによる位置情報取得手段には、補正情報(ディファレンシャル情報)を使用したDGPS(Differential GPS)受信機を使用することが望ましい。
【0010】
また、本発明による移動体制御装置では、分岐器などの特定の箇所でのみ上記記憶手段に記憶する軌道情報を取得する手段を備える。線別、線種などの軌道情報が変化するのは分岐器などの特定の場所に限られるため、これらの変化点で取得し直すだけで正しい軌道情報を保持することが可能となる。これにより移動体が移動する全ての範囲を網羅する高精度の電子地図を有しなくとも、隣接する複数の軌道のどの軌道を走行しているかを区別可能となる。軌道情報の取得は、まず軌道情報を取得する地点の座標情報を含む位置情報および該地点の軌道情報を含んだ地点情報を移動体上の記憶手段に記憶しておく。次にGPSによる位置情報取得手段により移動体の位置情報を取得して、取得した位置情報に一番近い地点情報を抽出する。そして抽出した地点情報の軌道情報のうち必要な一部または全てを新しい軌道情報として記憶することにより行われる。前記のとおり軌道情報を取得する地点は、分岐器付近の軌道上の地点であり予め座標情報を高精度に測量しておく。地点情報の座標情報は写真測量することにより、または直接その地点でDGPS観測することにより取得する。
【0011】
また、本発明による移動体制御装置は、位置情報および軌道情報を他移動体と地上無線で送受信しあってお互いの位置を停止目標の候補点とすることにより、両移動体の間隔制御を行うこととした。また、移動体どうしが接近中のときは他移動体の制動距離を推定して他移動体の制動位置より一定距離手前に停止するよう制御を行うこととした。
【0012】
また、上記目的を実現するために、本発明による移動体制御装置は、鉄道軌道上の線路閉鎖区間、保守基地線などに設置される無線送信機から送信された位置情報および軌道情報を受信して停止目標の候補点とすることとした。これにより、線路閉鎖区間、保守基地線などに接近する移動体に対する速度制御を行うことができる。
【0013】
また、本発明による移動体制御装置は、鉄道軌道上の一旦停止箇所などの位置情報および軌道情報を移動体上の記憶手段に記憶しておき、これを停止目標の候補点とすることとした。これにより、一旦停止箇所などに接近する移動体に対する速度制御を行うことができる。一旦停止位置の取得は、一旦停止する地点の座標情報を含む位置情報および該地点の軌道情報を含んだ地点情報を移動体上の記憶手段に記憶しておき、GPSによる取得した位置情報から所定の範囲内にある前記地点情報を抽出して行う。
【0014】
また、本発明による移動体制御装置は、速度制限箇所などの位置情報および軌道情報を移動体上の記憶手段に記憶しておき、GPSによる取得した位置情報から所定の誤差範囲内にある速度制限箇所の制限速度に基づき、移動体の速度制御を行うこととした。制限速度の取得は、予め軌道情報に関連させて制限速度情報を移動体上の記憶手段に記憶しておき、取得した速度制限箇所の軌道情報に関連する制限速度情報を取得して行う。これにより速度制限箇所を走行する移動体に対する速度制御を行うことができる。
【0015】
また、本発明による移動体制御装置は、自移動体の位置検知をGPSで行うため、周辺のビルなどの障害物により位置精度が低下する場合がある。かかる精度低下が分岐箇所で発生すると、分岐するいずれの方向に自移動体が進行しているかを速やかに決定できず、前記軌道情報を更新するのが遅れてしまう。
そこで本発明による移動体制御装置では、周辺のビルなどの障害物によりGPSの位置精度が低下する箇所でも、分岐器における自移動体の進行方向を決定する進出方向検出装置を備えることとした。
【0016】
本発明に係る進出方向検出装置は、軌道に設けられた固定検出体を、移動体上にその長手軸線に対して第1の所定角度をなす線上の複数の点において検出し、その検出順序に基づき移動体の進出方向を検出することとする。
このような、移動体上にその長手軸線に対して第1の所定角度をなす線上の複数の点において、固定検出体を検出する検出手段を設けることにより、進出方向に応じて検出順序が変化するように、固定検出体を軌道側に設けることが可能である。
【0017】
このような進出方向検出装置を備えることにより、本発明による移動体制御装置は、GPSの位置精度が低下する箇所でも、分岐器における自移動体の進行方向を正確に取得して、前記軌道情報を取得することを可能とする。
【0018】
移動体が進出する方向によって前記検出手段による検出順序を変化させるためには、前記固定検出体を各分岐方向についてそれぞれ設ける必要がある。
さらに、それぞれの分岐方向に対して設ける固定検出体は、その分岐方向と異なる方向線上に設けることが必要である。かつ、各分岐方向に対するそれぞれの前記方向線の傾斜は、他の分岐方向に対する前記方向線の傾斜と反対方向に傾斜させて設けることが必要である。
【0019】
固定検出体は、前記方向線に沿って設ければ、前記方向線上の複数点に設けてもよく、前記方向線上に伸長する線状に設けてもよい。さらに分岐器内のリードレールを固定検出体として使用してもよい。
【0020】
前記検出手段は、固定検出体の種類によって適宜選択する。たとえば単なる金属物などの固形物体である固定検出体に対しては、一定距離の範囲内にある固形物体を検出しうる超音波センサや、固形物体による反射、遮断を検出する光学センサ、金属物の存在を検出するループコイルや、その他電磁センサを使用することができる。またRF−IDを有するIDタグのような固定検出体に対しては、RF−ID読み取り手段を採用することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、前述の通りGPS観測を利用した軌道上を移動する移動体の制御を行うので、制御に必要な地上設備を大幅に軽減することができる。また軌道回路に依存しない列車検知を行うため、移動体の進行方向に関係なく移動体間の間隔を制御することができる。また、GPS観測や電子地図の作成誤差のために生じる、隣接する複数の異なる軌道上の他移動体または停止位置による速度制御への影響を回避することが可能とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図1は、本発明の実施例の移動体制御装置100のブロック図である。電源ユニット101は移動体である車両の車両用バッテリ102から電源を取得し、インタフェース・ユニット103に電源を出力する。インタフェース・ユニット103は、この電源を本装置を構成する各機器に適した電源に変換して出力する。車速センサ104は、車両の移動速度に応じて変化する車速信号をインタフェース・ユニット103に出力する。車速センサには車軸に取り付けられた速度発電機もしくはエンコーダなどのパルス発生器、またはドップラーレーダなどが使用される。雨検出器105は、移動体の車外に設けられた漏水検知帯と車内に設けられた漏液検知器からなる。漏水検知帯に一定量の雨(水滴)が付着すると漏水検知帯の電極間抵抗が変化し、この変化を漏水検出器が捕らえ雨信号としてインタフェース・ユニット103に出力する。積載重量検出器106は、車両台車の軸バネ付近に設置された、空車検出用および積載検出用の2個の近接スイッチと保持機能付きのリレーユニットからなる。近接スイッチは車輪側から荷台までの距離を検出しており、空車検出用スイッチが空車時の距離を検出すると、これによりリレーユニットがONにされ、リレーユニットの保持機能により接点構成が保持される。積載検出用スイッチが積載時の距離を検出すると、リレーユニットがリセットされてOFFになる。積載重量検出器106はこのリレーユニットの出力を積載重量信号としてインタフェース・ユニット103に出力する。
【0023】
ブレーキ107は、インタフェース・ユニット103を介してコントローラ108から出力される「非常停止」信号に基づき移動体を減速する。また警報ユニット109は、インタフェース・ユニットを介してコントローラ108から出力される信号に基づき、移動体の運転者に注意を喚起する警報音を発する。コントローラ108は、危険度(例えば、停止位置との距離)に応じて信号の種類を「警報」信号、または「予告警報」信号のように変え、警報ユニット109はこれに応じて複数の警告音を発することができることとしてもよい。
【0024】
前後進SW110は、移動体の既設の操作回路に設けられた移動体の進行方向(前進、後進または中立)を切り換えるスイッチであって、インタフェース・ユニット103に前後進信号を出力する。また主機・補機・単車SW111は、同様に既設の操作回路に設けられたスイッチであり、当該移動体が他の移動体と連結され、かつ連結した編成の中で主機として取り扱われるのか(主機)、もしくは補機として扱われるのか(補機)、または他の移動体と連結されずに単体で運転されるのか(単車)の運転モードを切り換え、インタフェース・ユニット103に主機・補機・単車信号を出力する。解除信号112は、運転者が非常ブレーキを解除する操作を行うと既設の操作回路からインタフェース・ユニット103に出力される信号である。
【0025】
GPS受信機113は、GPS衛星からの電波と地上の基準局からの補正情報を受信することにより、2次元または3次元的に移動体の位置の観測を行い、観測結果をコントローラ108に出力する。前記したように、一般の鉄道における隣接線の軌道間中心は4m程度であるため、隣接線上の移動体を区別するためには、GPS受信機としてはリアルタイムで誤差1m程度の観測が可能なDGPS受信機が望ましい。
【0026】
地点情報記憶手段114は、軌道上の各点における位置情報、勾配、軌道情報、一旦停止場所などの設備情報を含む電子地図を記憶する。位置情報には、座標情報(経緯度など)および/またはキロ程などを含む。軌道情報には、線別情報および/または線種を含む。線別情報は上り線、下り線などの別を表す。線種は、その軌道の番線、中線、基地線、通路線などの線路名称、駅構内若しくは駅中間の別、軌道が通常の軌道であるか分岐器内にあるかの別、またはその軌道がトンネル内にあるかの別などを表す。電子地図内の各点の座標情報は、全ての点で高精度に測量しなくてもよく、分岐器などにより軌道が分岐して軌道情報が変わる点や、一旦停止場所、トンネルの出入り口付近や保守基地付近のように、本装置により移動体を制御する必要がある点だけを高精度に測量すれば足りる。また前記電子地図に、各点における制限速度に係る情報を含んでもよい。
【0027】
軌道情報記憶手段115は、移動体が存在している軌道の軌道情報を記憶する。軌道情報は、前記の通り移動体が走行している軌道の線別情報(上り線、下り線など)および/または線種(駅構内、駅中間の別、番線、中線、基地線、通路線などの線路名称、軌道が通常の軌道であるか分岐器内にあるか、またはその軌道がトンネル内にあるかなどに関する情報)からなる。
【0028】
また、コントローラ108は、図示しない記憶手段により移動体が現在走行しているキロ程を記憶する。キロ程の算出は、GPS観測により取得した自移動体の位置が高精度に測量された地点上にあるときに、その地点のキロ程を電子地図から取得し、次の高精度に測量された地点まで車速信号をコントローラ108は内蔵されたカウンタボードまたは積算器により積分して得た移動距離を加算して行う。またコントローラ108は、前記電子地図に記憶した各点毎の制限速度にかえて、図示しない記憶手段により軌道情報ごとに関連付けた制限速度を記憶してもよい。例として、軌道情報の線種が駅構内のときは30km/h、分岐器内のときは10km/hというように記憶する。
【0029】
コントローラ108は、GPS受信機113の観測結果により自移動体の座標情報を取得して位置情報とする。その際にGPS観測自体の観測誤差および電子地図を作成する際の測量誤差があるため、移動体の位置が電子地図上からずれることがある。この場合は、一番近い軌道上に補正をかけてモニタ116へ出力する。補正の際には前記記憶された軌道情報を考慮するので、仮にGPS観測誤差および電子地図作成誤差のために、GPS観測値に一番近い軌道が異なる隣接線となっても隣接線上に補正されることはない。
【0030】
また、コントローラ108は、図示しない記憶手段により、移動体の車種、号機、移動体の載置方向、移動体の全長、GPS受信機アンテナの車両前端からの位置、車両重量、ブレーキシリンダ力、ブレーキ倍率、晴天・雨天時の制動距離の相違を調節する天候係数、空走時間、トンネル内安全率を記憶する。またこれらの情報を図示しない入力手段により入力することができる。またコントローラ108は同様に、移動体が牽引する複数の種類の被牽引車について、各々の種類の被牽引車の空車・積載時の車両重量、ブレーキシリンダ力、ブレーキ倍率、車両数の各情報を入力し、記憶することができる。
【0031】
また、コントローラ108は、インタフェース・ユニット103から、前記車速信号、雨信号、積載重量信号の各信号を受信し、走行中の制動距離を下記の算出式を用いて算出する。
【0032】
【数1】

【0033】
ここでLは制動距離、Vは制動初速度、tは空走時間、riは勾配係数、ΣWiは、自重および被牽引車の重量の総和、Fiはブレーキシリンダ力、Riはブレーキ倍率、fmiは制輪子の平均摩擦係数(=天候係数×(1.01×V)/(1.05×V)とする。勾配係数は、GPS観測により取得した位置情報に対応する電子地図上の地点の勾配係数から取得する。天候係数は雨天、それ以外の天候におけるそれぞれレールと車輪の間の摩擦係数を算出するために使用される値であり、雨信号により使用する値を切り換えて使用する。
【0034】
また、コントローラ108はインタフェース・ユニット103から前後進信号を受信し、記憶した載置方向と前後進信号から移動体の進行方向を判断する。コントローラ108は、移動体が電子地図上に存在するとき、自移動体に関する情報(車種、号機、位置情報、軌道情報、進行方向、速度、時刻)を無線機117に出力する。より好適には、他移動体が自移動体の車両前端および後端の位置を正確に算出できるように、移動体の全長、GPS受信機アンテナの車両前端からの位置も送信することが好ましい。無線機117はこれを送信するとともに、受信した他移動体からの情報をコントローラ108に出力する。
【0035】
図2は、軌道上に自移動体201および他移動体202が存在するときの自移動体の速度制御を説明する図である。この場合では、他移動体202の位置を停止目標の候補点として扱う。自移動体201および他移動体202のそれぞれのGPS受信機は、GPS衛星203からのGPS信号を受信して自己の位置情報を取得する。他移動体202のコントローラは、記憶した車種、号機、軌道情報、載置方向および検知した車速情報、前後進信号から、自己に関する情報(車種、号機、位置情報、軌道情報、進行方向、速度、時刻)をその無線機を用いて送信する。
【0036】
自移動体201のコントローラは、他移動体202からの信号を無線機により受信すると、自移動体201および他移動体202の位置情報から両者の相対位置を算出して他移動体が自己のモニタに表示可能な範囲にあるか否かを判断し、もし表示可能であれば他移動体の位置情報、軌道情報を用いてモニタ内に表示する。さらにその際に両者の軌道情報を比較して、他移動体202が自移動体201と同一軌道上の進行方向前方に位置すると判断した場合は、「予告警報」信号を出力する。軌道情報の比較の際には、軌道情報に含まれる線別または線種のどちらか一方を比較してもよく、両方を比べてもよい。
【0037】
自移動体201がさらに進み、他移動体202との相対距離が、制動距離、現在速度で減速操作可能な一定時間内に移動する距離および停止余裕距離の和以下となると、自移動体201のコントローラは「警報」信号を出力する。このとき運転者が危険に気付き減速操作を行って、自移動体と他移動体との相対距離が広がると警報が解除される。しかし運転者が危険に気付かずに、更に自移動体201と他移動体202との相対距離が、制動距離および停止余裕距離の和以下となると、自移動体201のコントローラは、「非常停止」信号を出力する。一度、「非常停止」信号が出力されると、車速が一定時間0であることを認識した後に解除信号を取得するまで「非常停止」信号が停止しないので、自移動体201は確実に停止することができる。さらに実際の移動体制御装置の設計にあたってより詳細には、自移動体201の前端または後端から他移動体202の後端または前端までの相対距離をより正確に算出するために、相対距離の算出にあたっては自移動体または他移動体の移動体の全長及びGPS受信機アンテナの移動体前端からの位置も考慮する。例えば図2の例では、自移動体201の前端と他移動体202の後端の相対距離=両者のGPS受信機間の相対距離−(自移動体のGPS受信機アンテナの移動体前端からの距離+他移動体の移動体の全長)+自移動体のGPS受信機アンテナの移動体前端からの距離となり、実際の相対距離は、GPS受信機間の相対距離より小さくなるため、これを考慮して相対距離を算出することによりさらに安全な制御が可能となる。
【0038】
また前記制御方法は、他移動体202が停止している場合または自移動体201から遠ざかっている場合には問題ないが、他移動体202が接近してくる場合には自移動体201が非常ブレーキをかけた後に他移動体202が予め算出した制動距離よりも接近してくる場合が生じるため、両移動体の衝突を防止することができない。したがって、自移動体201のコントローラは、自移動体201と他移動体202の軌道情報を比較して両者が同一軌道上を走行していると判定し、かつ両者の進行方向を比較し相互に接近する方向に移動していると判定した場合には、自移動体201の制動距離とともに他移動体202の制動距離を算出して、両者の相対距離が、両者の制動距離の和と、現在速度で減速操作可能な一定時間内に移動する距離および停止余裕距離との和以下となると「警報」信号を出力し、両者の制動距離の和および停止余裕距離の和以下となると、「非常停止」信号を出力する。自移動体201が他移動体202の制動距離を算出する際には、他移動体202の自重、被牽引車の重量の総和、ブレーキシリンダ力、ブレーキ倍率、制輪子の平均摩擦係数といった制動性能を無線通信手段により取得することが好適であるが、自移動体201は、自移動体202の前記制動性能を自移動体のそれと同じとして計算して、他移動体202の制動距離を算出しても差し支えない。なぜならば移動体201,202の制動性能に差異がある場合、例えば自移動体201の制動性能が他移動体202の制動性能よりも良い場合では、制動性能の悪い他移動体202の方で、自移動体201の制動距離を本来の制動距離よりも長く見積もって自移動体201の停止位置よりも手前で停止するからである。
【0039】
自移動体201および/または他移動体202がトンネル内にある場合はGPS観測を行うことができないため、座標情報を利用した相対距離の算出はできない。この場合は、両移動体が記憶している自己が位置するキロ程の比較により相対距離の算出を行う。移動体のコントローラはトンネル入口において、GPS観測して得た座標情報と対応する座標情報を持つ電子地図上の点の軌道情報を参照することにより、自己がトンネルに入ることを判断することができる。トンネル入口付近の電子地図上の地点は精密に測量されているので、コントローラは、前記の通り現在走行している正確なキロ程を電子地図から取得することができる。コントローラはそのキロ程に車速信号を積算した移動距離を加算して現在走行しているキロ程を算出する。またコントローラはこうして算出したキロ程と対応するキロ程をもつ電子地図上の軌道情報を参照することにより、自己がトンネルから出ることを判断することができる。トンネルから出た移動体のコントローラは、再びGPS観測により座標情報を取得する。
【0040】
自移動体201がトンネル内にある場合は、自移動体201は座標情報を取得することができないので、他移動体202へ座標情報の送信および座標情報同士の比較による他移動体202との相対距離の算出ができない。したがって、自移動体201のコントローラはキロ程のみを含む位置情報をその無線機から送信する。また他移動体202から送信された位置情報のうちキロ程だけを取り出し、それを自移動体のキロ程と比較して相対距離の算出を行う。反対に他移動体202がトンネル内にある場合は、他移動体202から送信された位置情報にはキロ程しか含まれないので、それを自移動体のキロ程と比較して相対距離の算出を行う。
【0041】
前記の通り、自移動体201および/または他移動体202がトンネル内にある場合は、相対距離の算出に車速信号を積分して得たキロ程を用いる。しかし車速信号の積算による移動距離には力行時またはブレーキ時のスリップによる誤差が含まれるため、その誤差により生じる危険を回避する必要がある。このため警報および非常停止の出力可否を判断する算出の際に安全率を加算する。例えば、警報を出力可否の判断の際に、制動距離を安全率120%で乗算して、すなわち20%増しで算出するなどである。
【0042】
本移動体制御装置を搭載した複数の移動体を連結する場合には、両移動体を停止余裕距離以下に接近させる必要がある。このため、他移動体と一定距離内において、移動体の車速センサが車速0を検知している間に、図示しないスイッチなどの入力手段による「確認操作」が行われると、コントローラは再接近を許容する。この間、移動体の速度が所定の速度以下の低速であれば、コントローラは「非常停止」信号を出力しないが、所定の速度を超えた場合には「非常停止」信号を出力する。
【0043】
本移動体制御装置を搭載した移動体を複数連結して同一方向に運転する場合には、複数の移動体が近接しているため不要な警報鳴動、ブレーキ動作が生じてしまうことになる。特に移動体が動力付きの保守作業車の場合には、このような運転形態に重連運転および協調運転と呼ばれる2つの形態がある。重連運転とは連結する複数の動力車の1つを主機、それ以外を補機と定めて操作回路を接続しておき、運転者が主機だけを操作することにより補機の操作も同時に行われる運転形態である。この場合にコントローラは、インタフェース・ユニットを介して入力される主機・補機・単車信号により、自移動体が主機または補機であるか否かを判断し、自移動体が補機であると判断した場合は「警報」および「非常停止」の出力機能を停止する。また自移動体が主機の場合、進行方向前位に連結された主機が前進運転(牽引運転)する場合は、何ら問題なく運転することができるが、後進運転(推進運転)する場合には、進行方向の前方に存在する補機のために主機に速度制限がかかるため、「非常停止」信号が出力される速度未満で走行する必要がある。特に主機の進行方向直前に補機が連結された場合には、主機と補機の相対距離が常に停止余裕距離以下となる。この場合は前記の連結時の「確認操作」を行うことにより所定の速度以下で運転を行う。このような速度制御を回避するため重連運転の場合には、図示しない入力手段、記憶手段により連結相手の車種および号機を入力、記憶して、連結相手の存在による「警報」「非常停止」出力をキャンセルすることとしてもよい。
【0044】
協調運転とは、前記の主機・補機機能を有しない複数の動力車が間にトロや貨車などの非動力車を連結して編成を構成した運転形態をいう。この場合、運転者は連結時に図示しない入力手段、記憶手段により連結相手の車種および号機をコントローラに入力、記憶させて連結相手の存在による「警報」「非常停止」出力をキャンセルさせる。その後に連結が切り離され、連結相手が一定範囲内から離れていった場合は、連結相手に関する情報は自動的に記憶手段から削除される。
【0045】
また、移動体が他の動力車である移動体を連結させずに、単車でトロ等を連結して運転する際には、移動体の全長としてトロ等の長さも含めた全長を入力、記憶することができる。
【0046】
また、コントローラは、前記のように制動距離を算出して「警報」「非常停止」信号の出力可否の判断を行う他に、自移動体と他移動体の相対距離(+停止余裕距離)以内に、通常ブレーキ操作または非常ブレーキ動作によって停止しうる制動初速度をそれぞれ算出し、これと車速センサから取得した車速信号を比較し、移動体の現在速度が、通常ブレーキ操作によって停止しうる制動初速度を越えている場合には「警報」信号を、非常ブレーキ操作によって停止しうる制動初速度を越えている場合には「非常停止」信号を出力するように構成してもよい。
【0047】
図3は、移動体301が予め軌道上に設けられている停止箇所に接近したときの制御を説明する図である。この場合では地点情報記憶の1地点の位置を停止目標の候補点として扱う。移動体の運用上、安全のために軌道上に一旦停止位置を設ける必要が生じる場合がある。特に鉄道の保守作業車の場合には駅の外方から駅構内に接近する場合に信号機302の手前で一旦停止することが義務付けられている。本発明の移動体制御装置は、このような一旦停止箇所を無視して駅構内に進入しようとする移動体を一旦停止箇所に停止させることにも利用しうる。
【0048】
このような一旦停止箇所は前記の移動体のように移動するものではなく、駅の新設、線路の形状変更によって一度定められるとその後は頻繁に更新するものではないので、前記の電子地図上に予め登録しておくことができる。自移動体301のコントローラは図示しない記憶手段により、これら一旦停止箇所の位置情報および軌道情報を記憶する。自移動体301のGPS受信機は、GPS衛星303からのGPS信号を受信して自己の位置情報を取得する。自移動体301のコントローラは、取得した自移動体の位置情報および現在走行している軌道情報から、自移動体から一定距離内にありかつ同一軌道上にある一旦停止箇所を抽出する。もしそのような一旦停止箇所が存在する場合には、コントローラは「予告警報」信号を出力する。
【0049】
自移動体301がさらに進み、一旦停止箇所との相対距離が、制動距離および現在速度で減速操作可能な一定時間内に移動する距離の和以下となると、自移動体301のコントローラは、「警報」信号を出力する。このとき運転者が危険に気付き減速操作を行って、自移動体と他移動体との相対距離が広がると警報が解除される。しかし運転者が危険に気付かずに、更に自移動体301と一旦停止箇所との相対距離が制動距離以下となると、自移動体301のコントローラは、「非常停止」信号を出力する。一度、「非常停止」の信号が出力されると、車速が一定時間0であることを認識した後に解除信号を取得するまでブレーキが解除されないので、自移動体301は確実に停止することができる。また、自移動体301の前端から一旦停止箇所までの相対距離をより正確に算出するために、相対距離の算出にあたっては自移動体のGPS受信機アンテナの車両前端からの位置も考慮することが好ましい。
【0050】
「非常停止」信号が出力されない速度で接近し、一旦停止箇所から一定距離内で一旦停止を行うとコントローラはそれを記憶し、その後一旦停止箇所を越えて駅構内に進入しても、前記非常停止信号を出力しなくなる。またコントローラは、一旦停止箇所の位置情報、軌道情報に加えて前記停止制御を行う進行方向を記憶することにより、または移動体301が現在走行している軌道情報から判断することにより、駅外方から駅構内に進入する場合にのみ一旦停止箇所で停止制御を行い、駅構内から駅外方へ進出する場合には停止制御を行わないこととすることができる。
【0051】
また、コントローラは前記他移動体に対する制御と同様に、自移動体と一旦停止位置との相対距離以内に、通常ブレーキ操作または非常ブレーキ動作によって停止しうる制動初速度をそれぞれ算出し、これと車速センサから取得した車速信号を比較し、移動体の現在速度が、通常ブレーキ操作によって停止しうる制動初速度を越えている場合には「警報」信号を、非常ブレーキ操作によって停止しうる制動初速度を越えている場合には「非常停止」信号を出力するように構成してもよい。
【0052】
図4は、移動体401が予め軌道上に設けられている速度制限箇所を走行する際の制御を説明する図である。移動体の運用上、安全のために駅構内や分岐器402内においては、他の軌道とは異なる制限速度を課す場所がある。本発明の移動体制御装置は、このような特定の速度制限箇所内において、移動体が制限速度を無視して走行しようとするとき移動体を停止させ、運転手に警報を発することにも利用しうる。
【0053】
このような速度制限箇所は頻繁に更新するものではないので、前記の電子地図上に座標情報および軌道情報予め登録しておくことができる。また、制限速度が線種などの軌道情報に関連して定まる場合は、特定の軌道情報に対応させて記憶してもよい。自移動体401のGPS受信機は、GPS衛星403からのGPS信号を受信して自己の座標情報を取得する。自移動体401のコントローラは、取得した自移動体の座標情報および現在走行している軌道情報または自移動体の座標情報だけから、自移動体が位置する軌道の軌道情報を取得して、自移動体が速度制限箇所に入るまたは出ることを判断することができる。この判断は、例えばGPS観測により取得した自移動体の位置情報と対応する位置情報を有する電子地図上の地点情報の軌道情報の線種が、駅中間を示す値から分岐器または駅構内の線路名称を示す値に変化したことにより行うことができる。図4は、例として駅構内について第1制限速度が課され分岐器内で第2制限速度が課された場合を示す。このような速度制限区間に入ったと判断した自移動体401のコントローラは、その軌道情報に対応する制限速度情報を取得する。移動体401が速度制限箇所内で所定の制限速度を超えて走行すると、コントローラは「警報」および/または「非常停止」信号を出力する。
【0054】
図5は、分岐器内を走行する移動体501が軌道情報を取得する動作を説明する図である。上り線、下り線などの線別、線路名称などの線種が変化する箇所は分岐器付近に限定されるために、自移動体がこれらを通過する際に移動体のコントローラが電子地図から軌道情報を取得すれば、常時自己が走行する軌道情報を保持していることができる。このために分岐器付近の電子地図は高精度に測量された座標情報が記憶されている。
【0055】
移動体501が分岐器502内を走行し、ちょうど分岐位置503を通過して分岐する軌道のいずれかに入ったばかりの状態では、GPS観測誤差および電子地図作成誤差の影響により、GPS観測による観測点の座標が電子地図上の分岐する軌道の両方にかかるように観測されるので、まだ移動体がいずれの軌道に入ったかを判断できない。
【0056】
その後移動体501が走行して、分岐する両軌道の軌道中心が一定距離以上離れると、GPS観測点はどちらかの軌道に偏って観測されることが判断できるようになる地点504に達する。このとき、移動体501のコントローラは一定時間内に観測した複数のGPS観測点のうち近い観測点が多い地点の軌道情報(線別=上り線、線種=上り本線)を電子地図から取得して、自移動体が走行している軌道の軌道情報として図示しない記憶手段に記憶する。GPS観測誤差が1m以内のDGPSを用いた場合、前記により軌道情報を取得する地点の両軌道の軌道中心間の距離は3m程度が望ましい。
【0057】
次に図6,7は、軌道上の所定地点の位置情報および軌道情報を含む情報を送信する無線送信手段により送信された地点情報を停止目標の候補点として速扱う場合である。図6は、横取り装置604に接近する移動体601、602、および保守基地内の移動体603の制御を説明する図である。横取り装置604とは、鉄道軌道の本線または測線と保守作業車の保守基地につながる基地線605を接続する装置である。駅構内の本線等の上に設置されている通常の転てつ機とは別に設けられており、使用中は使用位置606に位置して保守作業車を保守基地から出入りさせるが、それ以外は本線等から外されて退避位置607にある。本発明の移動体制御装置は、このような横取り装置604が使用されている際に誤って保守基地に進入したり、または使用されていないのに誤って保守基地から出発する事故を防止することにも利用しうる。
【0058】
横取り装置604付近には、横取り装置604の作動およびその位置を無線送信する横取り装置用無線装置608が設置される。横取り装置用無線装置608は、移動体に搭載している移動体制御装置と同様の無線機、アンテナ設備を備え、予め測量された横取り装置604の座標情報、キロ程、軌道情報、設備方向および車種(横取り装置)を送信する。設備方向とは、当該横取り装置604が本線等の走行方向に対して対向に設置されているか背向に設置されているかを示す。例えば図6の横取り装置604は、上り方向に対して対向、下り方向に対して背向に設置されている。また設備方向は、例えば対向となる上り下りの線別、または上りに対する対向または背向の別により表わされることとしてよい。横取り装置用無線装置608は、横取り装置604が使用されていることを検知する検知手段を有する。例えば横取り装置604が機械式の場合には、横取り装置604の電源が投入されたときにその電気信号を取得して使用されていることを検知し、また可搬式の場合は横取りレールの格納部に設置された検出器により横取りレールの有無を検知して使用中であることを検出する。
【0059】
移動体601、602および603のそれぞれのGPS受信機は、GPS衛星609からのGPS信号を受信して位置情報を取得する。横取り装置が使用されていることを検知した横取り装置用無線装置608は、位置情報、キロ程、軌道情報および設備方向などの情報を送信する。本線等の軌道上を横取り装置604に向かって走行している移動体601,602のコントローラは前記情報を受信することにより「予告警報」を出力する。移動体601、602がさらに進み、横取り装置604の位置情報との相対距離が、制動距離、現在速度で減速操作可能な一定時間内に移動する距離および停止余裕距離の和以下となると、自移動体601、602のコントローラは、自移動体の軌道情報と受信した軌道情報を比較して同一軌道上にあると判定した場合に「警報」信号を出力する。このとき運転者が減速操作を行って前記相対距離が広がると警報が解除される。しかし前記相対距離が、制動距離および停止余裕距離の和以下となると、移動体601、602のコントローラは、「非常停止」信号を出力する。一度、「非常停止」信号が出力されると、車速が一定時間0であることを認識した後に解除信号を取得するまでブレーキが解除されないので、移動体601、602は確実に停止することができる。
【0060】
使用中の横取り装置604の一定距離内に一旦停止した移動体601のコントローラは前記制御を行うことを停止し、移動体601は所定の制限速度で走行することができる。移動体601が所定の制限速度を超えて走行すると、コントローラは「警報」および/または「非常停止」信号を出力する。一方、移動体602は横取り装置604に対して背向の方向から接近しているため、そのまま横取り装置にぶつかると横取り装置604または移動体602自体を破損してしまう。このため移動体602のコントローラは、横取り装置用無線装置607から受信した設備方向を再接近禁止方向として使用して、前記制御を継続し移動体602が横取り装置604に再接近することを防止する。
【0061】
また、横取り装置604が使用されないときは横取り装置用無線装置608は信号を送信しないため、本線等上を走行する移動体601,602に何ら影響しない。一方、基地線にある移動体603のコントローラは、GPS観測による座標情報から自己が基地線605にあることと判断すると、横取り装置用無線装置608からの情報を受信しないときは「非常停止」信号を出力するなどにより、不使用中の横取り装置604が退避位置606にあるときに移動体603が横取り装置604に接近することを防止する。
【0062】
図7は、線路閉鎖区間に接近する移動体701の制御を説明する図である。線路閉鎖とは、鉄道施設の保守作業を行う際に作業をおこなう区間への列車など鉄道車両の進入を禁止する手続をいう。本発明の移動体制御装置は、このような線路閉鎖区間に進入しようとする移動体を一旦停止箇所に停止させることにも利用しうる。
【0063】
線路閉鎖による保守作業を行う作業員は、線路閉鎖区間用無線装置702を線路閉鎖区間付近に設置する。線路閉鎖区間用無線装置702は、移動体に搭載している移動体制御装置と同様の無線機、アンテナ設備、線路閉鎖区間両端のキロ程の入力手段および記憶手段を備え、線路閉鎖区間両端のキロ程、軌道情報および車種(線路閉鎖区間)を送信する。
【0064】
線路閉鎖区間に向かって走行している移動体701のコントローラは前記情報を受信することにより「予告警報」を出力する。移動体701がさらに進み、車速信号を積算して算出しているキロ程と線路閉鎖区間の一端のキロ程との相対距離が、制動距離、現在速度で減速操作可能な一定時間内に移動する距離および停止余裕距離の和以下となると、自移動体701のコントローラは、自移動体の軌道情報と受信した軌道情報を比較して同一軌道上にあると判定した場合に「警報」信号を出力する。このとき運転者が減速操作を行って、前記相対距離が広がると警報が解除される。しかし前記相対距離が、制動距離および停止余裕距離の和以下となると、移動体701のコントローラは、「非常停止」信号を出力する。一度、「非常停止」信号が出力されると、車速が一定時間0であることを認識した後に解除信号を取得するまでブレーキが解除されないので、移動体701は確実に停止することができる。
【0065】
線路閉鎖区間の一方の端の一定距離内に一旦停止した移動体701のコントローラは、前記制御を行うことを停止し、移動体701は所定の制限速度で走行することができる。移動体701が所定の制限速度を超えて走行すると、コントローラは「警報」および/または「非常停止」信号を出力する。またコントローラは、移動体701が線路閉鎖区間一方の端との相対距離が制動距離以下となると「非常停止」信号を出力して移動体701の線路閉鎖区間への進入を阻止する。
【0066】
また代替実施例では、線路閉鎖区間用無線装置702に移動体701に搭載された移動体制御装置と同様のGPS受信機を搭載する、または座標情報入力手段および記憶手段を設けることにより、線路閉鎖区間用無線装置702がキロ程の代わりに座標情報を送信することとし、移動体701がGPS衛星703からのGPS信号を受信して自己の座標情報を取得し、移動体701のコントローラは座標情報に基づいて相対距離を算出して、前記と同様の処理をすることとしてもよい。また、線路閉鎖区間用無線装置702が線路閉鎖区間両端のキロ程の代わりに線路閉鎖区間無線装置702が設置される位置、線路閉鎖区間の一方の端から線路閉鎖区間無線装置702が設置される位置までの距離、および線路閉鎖区間の全長を送信し、これを受信した移動体701のコントローラが線閉鎖区間両端のキロ程を算出することとしてよい。
【0067】
図8は、レール801a〜801iからなる分岐器上を走行する移動体803に設けられた、本発明に係る進出方向検出装置の検出手段および固定検出体の位置関係を説明する説明図である。
【0068】
一般に鉄道車両用軌道の分岐器は、基本レール(直)801a、基本レール(曲)801b、主レール(直)801c、主レール(曲)801d、トングレール801eおよび801f、リードレール(曲)801g、リードレール(直)801h、ならびにクロッシング801iからなる。
基本レール801a、801bに進入した移動体803は、転てつ機(図示せず)により移動されるトングレール801eおよび801fの方向により、直進側軌道801jまたは分岐側軌道801kのいずれかに分岐させられる。ここに直進方向線805は直進側軌道801jの軌道中心線とし、分岐側方向線807は分岐側軌道801kの軌道中心線とする。なお、簡単のため図8において基本レール(曲)801b、リードレール(曲)801g、主レール(曲)801dは直線状に示されているが、これらは実際には移動体が緩やかに進行方向を変えることができるように曲線状に形成される。また、これに伴い分岐側方向線807も曲線状となる。以下図13、14においても同様である。
【0069】
移動体803には、本発明に係る進出方向検出装置の検出手段813aおよび813bが設けられ、移動体803の進行方向と第1の所定角度φをなす検知手段方向線819上に設けられている。
移動体803が直進側に進出するとき、すなわち直進側軌道801jに進出するとき、検出手段813aは直線815a上を、検出手段813bは直線815b上をそれぞれ通るものとする。また、移動体803が分岐側に進出するとき、すなわち分岐側軌道801kに進出するとき、検出手段813aは曲線817a上を、検出手段813bは曲線817b上をそれぞれ通るものとする。
【0070】
直進側への分岐方向に対する固定検出体809aおよび809bは、直進側方向線805と第2の所定角度θ1をなす直進側固定検出体方向線821と、直線815aおよび直線815bとの交差点付近にそれぞれ設けられ、分岐側への分岐方向に対する固定検出体811aおよび811bは、分岐側方向線807と第3の所定角度θ2をなす固定検出体方向線823と、曲線817aおよび曲線817bとの交差点付近にそれぞれ設けられる。
ここに直進側固定検出体方向線821が直進側方向線805となす角θ1と、分岐側固定検出体方向線823が直進側方向線807となす第2所定角度θ2とは、相互に反対となるように固定検出体809a、809b、811a、811bが設けられる。
【0071】
図9は、移動体803が分岐器上を各方向に進出する際の、検出手段813a、813bの検出順序の説明図である。
移動体803が直進側へ進出するときは、まず移動体803は、位置803aから位置803bへ移動する(図9(a))。このとき検出手段813bが固定検出体809bを検出するより先に、検出手段813aが固定検出体809aを検出する。
さらに移動体803が進み、位置803cに至ったとき(図9(b))、検出手段813bが固定検出体809bを検出する。このように、移動体803が直進側に進出するときは、検出手段813a、813bの順序で固定検出体809a、809bを検出する。
【0072】
次に、移動体803が分岐側へ進出するときは、まず移動体803は、位置803aから位置803dへ移動する(図9(c))。このとき検出手段813aが固定検出体811aを検出するより先に、検出手段813bが固定検出体811bを検出する。
さらに移動体803が進み、位置803eに至ったとき(図9(d))、検出手段813aが固定検出体811aを検出する。このように、移動体803が分岐側に進出するときは、検出手段813b、813aの順序で固定検出体811b、811bを検出する。
【0073】
以上のように、検出手段813aから813bの順序で検出した際には、移動体803は直進側(または進行方向左側)に進出したことが分かり、検出手段813bから813aの順序で検出した際には、移動体803は分岐側(または進行方向右側)に進出したことが分かる。
【0074】
図10は、移動体803に設けられた、本発明に係る進出方向検出装置831の概略構成図である。進出方向検出装置831は、検出手段813a、813bおよび方向判断手段833を備える。検出手段813aは、移動体803が図9(a)に示す位置にあるとき、レール801間に設けられた固定検出体809aを検出し(図10(a))、または図9(d)に示す位置において図示しない固定検出体811aを検出する。また、検出手段813bは、図9(b)に示す位置において固定検出体809bを検出し(図10(b))、または図9(c)に示す位置において図示しない固定検出体811bを検出する。方向判断手段833は、検出手段813a、813bの検出順序により、上記の通り移動体803の進出方向を判断し、進出方向を識別する信号を、列車位置を算出するために前記コントローラ108(図示せず)に出力する。
【0075】
次に、移動体803の進行方向と検知手段方向線819とがなす第1所定角度φと、直進側方向線805と直進側固定検出体方向線821とがなす第2所定角度θ1、および分岐側方向線807と分岐側固定検出体方向線823とがなす第3所定角度θ2とが満たす関係を、図11および図12を参照して説明する。
【0076】
図11は、移動体803が分岐器上を各方向に進出する際の、検知手段方向線819と、直進側固定検出体方向線821または分岐側固定検出体方向線823とがなす交差点の移動を示す図である。
移動体803が直進側へ進出し、位置803aから位置803bへ移動するとき(図11(a))、検知手段方向線819と直進側固定検出体方向線821との交差点は、検知手段方向線819上の任意の基準点から距離x1離れた位置にある。
さらに移動体803が進み、位置803cに至ったとき(図11(b))、検知手段方向線819と直進側固定検出体方向線821との交差点は、前記距離x1より大きい距離x2だけ前記基準点から離れた位置となる。
移動体803が直進側に進出する際に、検知手段813a、813bの順序で固定検出体809aおよび809bを検出するためには、このように前記基準点から前記交差点までの変位が増加する必要がある。
【0077】
次に移動体803が分岐側へ進出し、位置803aから位置803dへ移動するとき(図11(c))、検知手段方向線819と分岐側固定検出体方向線823との交差点は、検知手段方向線819上の任意の基準点から距離x3離れた位置にある。
さらに移動体803が進み、位置803eに至ったとき(図11(d))、検知手段方向線819と直進側固定検出体方向線823との交差点は、前記距離x3より大きい距離x4だけ前記基準点から離れた位置となる。すなわち前記基準点から交差点までの変位が減少する。
移動体803が分岐側に進出する際に、検知手段813b、813aの順序で固定検出体811bおよび811aを検出するためには、このように前記基準点から前記交差点までの変位が減少する必要がある。
【0078】
図12は、第1所定角度φと、第2所定角度θ1、第3所定角度θ2の関係を説明する図である。
上述のように、検知手段方向線819と直進側固定検出体方向線821との交点が、移動体803が直進側へ進出した際に移動するにつれ増加するためには、図12(a)に示すように、検知手段方向線819と移動体803の進行方向線843と下記の式、
0<φ<180−θ1 …(1)
を満たす範囲になければならない。
【0079】
さらに、検知手段方向線819と分岐側固定検出体方向線823との交点が、移動体803が分岐側へ進出した際に移動するにつれ減少するためには、図12(b)に示すように、検知手段方向線819と移動体803の進行方向線842と下記の式、
−180+θ2<φ<0 …(2)
を満たす範囲になければならない。
【0080】
したがって、上記式(1)、(2)により、第1所定角度φ、第2所定角度θ1および第3所定角度θ2は、下記の式
θ2<φ<180−θ1
を満足するように、検出手段813aおよび813b、ならびに固定検出体809a、809b、811aおよび811bを設ける必要がある。
なお、固定検出体方向線821および823は、それぞれの進行方向805、807に対して相互に反対側に傾斜していれば、進行方向に対してどちらに傾いているかによらず、検出順序は逆になる。
【0081】
図13は、固定検出体の他の実施例を示す図である。
直進側固定検出体851は、固定検出体809aおよび809bに代えて、直進側方向線805と第2の所定角度θ1をなして伸長して設けられ、分岐側固定検出体853は、固定検出体811aおよび811bに代えて、分岐側方向線807と第3の所定角度θ12なして伸長して設けられる。
このように設けられた固定検出体851、853によっても、前記固定検出体809a、809b、811aおよび811bと同様に、進出方向によって検出手段813a、813bの検出順序に差を生じさせることができる。
【0082】
実際の鉄道用軌道の分岐器内には、前記トングレールに転てつ機の駆動力を伝達する鉄管装置や、レールと転てつ機を固定する直結装置、降雪時の分岐器凍結を防止するためのヒータなどが設けられるため、上記の固定検出体を新たに加えて設置するのは難しい。
したがって実際には、図14に示すように前記の直進側固定検出体851としてリードレール(曲)801gを、前記の分岐側固定検出体853としてリードレール(直)801hを使用することが好適である。
【0083】
ここに、移動体803が直進側に進出する際には、検出手段813aがリードレール(曲)801gを点861aにおいて検出した後に、検出手段813bがリードレール(曲)801gを点861bにおいて検出する。逆に分岐側に進出する際には、検出手段813bがリードレール(直)801hを点863bにおいて検出した後に、検出手段81aがリードレール(直)801hを点863aにおいて検出する。このように進出する方向により検出手段813aおよび813bの検出順序が変化する。
【0084】
移動体803の進行方向と検知手段方向線819とがなす第1所定角度φのとりうる角度は、分岐器のクロッシング角をθ3とすると、θ1=θ2=θ3および式(3)より、
θ3<φ<180−θ3 …(4)
となる。
【0085】
図15(a)は、検出手段813aがリードレール(曲)801gを点861a付近で検出する位置である、図14のA−A’位置における軌道断面を示す断面図である。また、図15(b)は、トングレール801eおよび801f付近のB−B’位置における軌道断面を示す図である。
上述のように、分岐器内には種々の機器が取り付けられており、検知手段813aおよび813bは、これらの機器をリードレール801gおよび801hと間違えて検出しないように、検出範囲を調整する必要がある。
図15(b)に示すように、軌道内に転てつ機861が設けられている分岐器において、検出手段813aが、リードレール801gと間違えて転てつ機861を検出しないように配慮する必要がある。したがって、リードレール801gを検出する位置は、リードレール801gが、軌道中心805からの転てつ機861端部までの距離xiよりも、離れた距離xdにあるときに検出する。
【0086】
また、トングレール付近のB−B’位置には、転てつ機861とトングレールとを接続する接続部材862aおよび862bとが設けられている。接続部材(およびボルトなどの付属部材)の上端が地面からhlだけ上方にあるとすると、検出手段813aが、リードレール801gと間違えて接続部材862aを検出しないようにするためには、検出手段813aの検出範囲は、hlよりも高いことが望ましい。
【0087】
したがって検出手段の検出範囲Δx、Δhは、下記の式
xi<Δx<xo …(5)
hl<Δh …(6)
にあることが好ましい。ここに、xiは軌道中心から計測した軌道内設置機器の幅とし、xoは軌道中心から基本レール801a、801b、または主レール801c、801dまでの幅とし、hlは、前記接続部材上端の地面からの高さとする。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明による移動体制御装置のブロック図である。
【図2】同一軌道上に他の移動体が存在する場合の、本発明による移動体制御装置の制御を説明する図である。
【図3】同一軌道上に予め停止箇所が設けられている場合の、本発明による移動体制御装置の制御を説明する図である。
【図4】同一軌道上に予め速度制限箇所が設けられている場合の、本発明による移動体制御装置の制御を説明する図である。
【図5】分岐器付近を走行する移動体に搭載された本発明による移動体制御装置が、軌道情報を取得する際の動作を説明する図である。
【図6】同一軌道上に横取り装置が設けられている場合の、本発明による移動体制御装置の制御を説明する図である。
【図7】同一軌道上に線路閉鎖区間が存在する場合の、本発明による移動体制御装置の制御を説明する図である。
【図8】本発明に係る進出方向検出装置の検出手段および固定検出体の位置関係を示す図である。
【図9】移動体が分岐器上を進出する際の、本発明に係る進出方向検出装置の検出手段の検出順序の説明図である。
【図10】本発明に係る進出方向検出装置の概略構成図である。
【図11】移動体が分岐器上を進出する際の、検知手段方向線と固定検出体方向線との交点の説明図である。
【図12】各所定角度の関係を説明する図である。
【図13】固定検出体の他の実施例を示す図である。
【図14】固定検出体としてリードレールを用いた場合の本発明に係る進出方向検出装置の検出手段の位置関係を示す図である。
【図15】図14各部の断面図である。
【符号の説明】
【0089】
100 移動体制御装置
107 ブレーキ
108 コントローラ
109 警報ユニット
113 GPS受信機
114 地点情報記憶手段
115 軌道情報記憶手段
116 モニタ
117 無線機
801g リードレール(曲)
801h リードレール(直)
803 移動体
809a、809b、811a、811b、851、853 固定検出体
813a、813b 検出手段
833 方向判断手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軌道上に存在する自移動体の位置情報を全地球測位システムにより取得する自己位置取得手段、および前記自移動体が存在する軌道の軌道情報を記憶する軌道情報記憶手段を備える移動体制御装置。
【請求項2】
軌道上の1以上の地点の位置情報および該地点が存在する軌道情報を含む地点情報を記憶する地点情報記憶手段を備える請求項1に記載の移動体制御装置。
【請求項3】
前記地点情報記憶手段から前記自移動体の自己位置に一番近い地点情報を抽出する手段、および前記抽出された地点情報の軌道情報の一部または全てを前記軌道情報記憶手段に記憶させる軌道情報取得手段を備える請求項2に記載の移動体制御装置。
【請求項4】
前記自移動体の停止目標の候補となる地点である停止目標候補点の位置情報および前記停止目標候補点が存在する軌道の軌道情報を取得する停止目標候補点取得手段、前記自移動体の位置情報と前記停止目標候補点の位置情報に基づき前記自移動体と前記停止目標候補点との相対距離を算出する相対距離算出手段、前記自移動体の軌道情報と前記停止目標候補点の軌道情報を比較する軌道情報比較手段、ならびに前記相対距離および前記軌道情報比較手段の比較結果に基づいて前記自移動体の速度を制御する速度制御手段を備える請求項1から3のいずれか一項に記載の移動体制御装置。
【請求項5】
前記速度制御手段は、さらに自移動体の制動距離の推定値に基づいて前記自移動体の速度を制御する請求項4に記載の移動体制御装置。
【請求項6】
前記自移動体の位置情報と軌道情報を含む情報を送信する無線送信手段を備える請求項5に記載の移動体制御装置。
【請求項7】
他の無線送信手段により送信された情報を受信する無線受信手段を備える請求項6に記載の移動体制御装置。
【請求項8】
前記停止目標候補点取得手段は、他移動体がその無線送信手段から送信した情報を前記無線受信手段により受信し、前記受信された情報から前記他移動体の位置情報と軌道情報を取得する請求項7に記載の移動体制御装置。
【請求項9】
前記送信される情報はさらに自移動体の速度情報および自移動体の走行方向に関する情報を含み、前記受信される情報はさらに他移動体の速度情報および他移動体の走行方向に関する情報を含み、ならびに前記速度制御手段はさらに他移動体の制動距離の推定値に基づいて前記自移動体の速度を制御する請求項8に記載の移動体制御装置。
【請求項10】
前記停止目標候補点取得手段は、軌道上の所定地点の位置情報および前記所定地点の軌道情報を含む情報を送信する無線送信手段により送信された情報を、前記無線受信手段により受信し、前記受信された情報から前記所定地点の位置情報と軌道情報を取得する請求項7に記載の移動体制御装置。
【請求項11】
前記停止目標候補点取得手段は、前記地点情報記憶手段から自移動体の所定の範囲内にある地点情報を抽出し、抽出した地点情報から位置情報と軌道情報を取得する請求項4から7のいずれか1項に記載の移動体制御装置。
【請求項12】
軌道上に存在する自移動体の位置情報を全地球測位システムにより取得する自己位置取得手段、軌道上の1以上の地点の位置情報および該地点が存在する軌道情報を含む地点情報を記憶する地点情報記憶手段、軌道情報の種類に関連して制限速度情報を記憶する制限速度記憶手段、前記地点情報記憶手段から自移動体の所定の範囲内にある地点情報を抽出する手段、前記抽出された地点の軌道情報に基づき制限速度情報を取得する手段、および前記取得した制限速度情報に基づいて前記自移動体の速度を制御する速度制御手段を備える移動体制御装置。
【請求項13】
軌道上を移動する移動体上に設けられ、該移動体が2方向に分岐する軌道のいずれに進出するかを検出する進出方向検出装置において、
前記移動体の長手軸線に対して第1の所定角度をなす線上の複数の点において、固定検出体を検出する検出手段を備え、
該検出手段が前記固定検出体を検出する順序に基づき、前記移動体の進出方向を検出することを特徴とする進出方向検出装置。
【請求項14】
前記固定検出体は、分岐する前記軌道の各分岐方向についてそれぞれ設けられ、
前記各分岐方向について設けられる前記固定検出体は、当該分岐方向とは異なる方向線上に設けられ、
当該分岐方向と該方向についての前記方向線は、他の分岐方向と該方向についての前記方向線とは、それぞれ反対側に傾斜していることを特徴とする請求項13に記載の進出方向検出装置。
【請求項15】
前記各分岐方向について設けられる前記固定検出体は、当該分岐方向とは異なる方向線上の複数の点に設けられることを特徴とする請求項14に記載の進出方向検出装置。
【請求項16】
前記各分岐方向について設けられる前記固定検出体は、当該分岐方向とは異なる方向線上に伸長して設けられることを特徴とする請求項14に記載の進出方向検出装置。
【請求項17】
前記固定検出体は、リードレールであることを特徴とする請求項16に記載の進出方向検出装置。
【請求項18】
前記検出手段は、各々所定範囲内にある前記検出体を検知するセンサであることを特徴とする請求項13から17のいずれか1項に記載の進出方向検出装置。
【請求項19】
前記検出手段は、超音波センサであることを特徴とする請求項13から18のいずれか1項に記載の進出方向検出装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2008−137652(P2008−137652A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−313153(P2007−313153)
【出願日】平成19年12月4日(2007.12.4)
【分割の表示】特願2003−140536(P2003−140536)の分割
【原出願日】平成15年5月19日(2003.5.19)
【出願人】(390021577)東海旅客鉄道株式会社 (413)
【出願人】(591256701)日本機械保線株式会社 (3)
【出願人】(591199682)株式会社東京保機エンジニアリング (1)
【Fターム(参考)】