説明

通信サービス圏外で地図データを表示する携帯端末、地図配信システム及びプログラム

【課題】携帯端末が通信サービス圏外へ移動する際に、狭帯域の無線リンクしか確保できない通信サービス圏の境界付近であっても、地図データの更新を可能とする携帯端末、地図配信システム及びプログラムを提供する。
【解決手段】地図サーバは、地図全体で更新されない地形データと、更新される地点データとを携帯端末へ送信する。携帯端末は、地図サーバから地形データ及び地点データを受信する移動通信手段と、更新された地点データの受信を制御する地図更新制御手段と、地形データ及び地点データを蓄積する地図データ蓄積手段と、当該携帯端末の現在位置情報を測位する測位手段と、現在位置情報に基づいて、地図データ蓄積手段から読み出した地形データ及び地点データを重畳させて、1つの地図データを生成する地図重畳手段と、重畳された地図データをディスプレイに表示する地図表示手段とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信サービス圏外で地図データを表示する携帯端末、地図配信システム及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯電話機のような携帯端末のディスプレイに、地図データを表示するサービスが提供されている。携帯端末は、GPS(Global Positioning System)等によって測位した位置情報を、携帯電話網を介して地図サーバへ送信し、その応答としてその位置周辺の地図データを受信する。受信した地図データは、携帯端末のディスプレイに表示される。このようなサービスは、携帯端末が、基地局と通信できる通信サービス圏内に位置しなければ、利用できない。
【0003】
これに対し、携帯端末が通信サービス圏外に位置する場合であっても、測位した位置情報に基づいて地図データを表示することができるようにするために、地図データを携帯端末内に予めダウンロードしておく技術がある(例えば特許文献1参照)。この技術によれば、携帯端末は、通信サービス圏外に位置していても、その位置情報に応じた地図データをディスプレイに表示することができる。
【0004】
【特許文献1】特開2006−010441号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術によれば、携帯端末は、常に最新の地図データをダウンロードしておく必要がある。地図データは、画像情報であるために、比較的、データ容量が大きい。また、地図データが、写真のような高精細な画像となるほど、データ容量も大きくなる。このような場合、地図サーバから地図データをダウンロードするには、広帯域の通信路を必要とする。従って、特許文献1によれば、地図データは、パーソナルコンピュータによって有線を介してダウンロードし、携帯端末は、パーソナルコンピュータから地図データを受信するという実施形態が記載されている。
【0006】
例えば、携帯端末を所持したユーザが、山登りをしようとし、通信サービス圏内から圏外へ移動しようとしているとする。このとき、携帯端末が、地図サーバから、最新の山の地図データをダウンロードしようとする。移動アクセスネットワークは、狭帯域の通信路であるために、最新且つ大容量の地図データのダウンロードには時間がかかる。特に、通信サービス圏の境界付近では、無線リンクの通信路は極めて狭帯域であるために、地図データのダウンロードに更に時間がかかることとなり、結局、ダウンロードを諦める場合もある。
【0007】
従って、本発明は、携帯端末が通信サービス圏外へ移動する際に、狭帯域の無線リンクしか確保できない通信サービス圏の境界付近であっても、地図データの更新を可能とする携帯端末、地図配信システム及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、移動ネットワークを介して地図サーバと通信する携帯端末において、
地図全体で更新されない地形データと、更新される地点データとを、地図サーバから受信する移動通信手段と、
更新された地点データの受信を制御する地図更新制御手段と、
地形データ及び地点データを蓄積する地図データ蓄積手段と、
当該携帯端末の現在位置情報を測位する測位手段と、
現在位置情報に基づいて、地図データ蓄積手段から読み出した地形データ及び地点データを重畳させて、1つの地図データを生成する地図重畳手段と、
重畳された地図データをディスプレイに表示する地図表示手段と
を有することを特徴とする。
【0009】
本発明の携帯端末における他の実施形態によれば、地図更新制御手段は、HTTPのリクエストヘッダにIf-Modified-Sinceを含むGETメッセージを地図サーバへ送信し、該地図サーバからのレスポンスを受信することによって、地点データの更新を確認することも好ましい。
【0010】
本発明の携帯端末における他の実施形態によれば、地図データ蓄積手段は、地形データに地点データをリンク付けて管理しており、少なくとも1つの地点データがリンク付けされた地形データは、削除されないように管理されていることも好ましい。
【0011】
本発明によれば、前述した携帯端末と、該携帯端末と移動ネットワークを介して通信する地図サーバとを有する地図配信システムであって、
地図サーバは、
地形データ及び地点データを蓄積管理する地図データ蓄積手段と、
携帯端末からのリクエストを受信した際に、地図データ蓄積手段を用いて地点データの更新状態を判定する更新判定手段と、
地図データ蓄積手段を用いて、携帯端末からのリクエストに応じた地形データ及び/又は地点データを送信する地図データ送信手段と
を有することを特徴とする。
【0012】
本発明の地図配信システムにおける他の実施形態によれば、
地図サーバについて、
更新前地点データと更新後地点データとから差分情報を導出する差分情報導出手段と、
更新後地点データにおける原ハッシュ値を算出するハッシュ値算出手段と
を更に有し、
地図データ送信手段は、差分情報及び原ハッシュ値を送信するものであり、
携帯端末について、
地図更新制御手段は、差分情報及び原ハッシュ値を地図サーバから受信し、地図データ蓄積手段に蓄積された先の更新前地点データに差分情報を更新するものであり、
更新後地点データにおける算出ハッシュ値と、原ハッシュ値とを比較して検証するハッシュ検証手段を更に有することも好ましい。
【0013】
本発明によれば、移動ネットワークを介して地図サーバと通信する携帯端末に搭載されたコンピュータを機能させるプログラムにおいて、
地図全体で更新されない地形データと、更新される地点データとを、地図サーバから受信する移動通信手段と、
更新された地点データの受信を制御する地図更新制御手段と、
地形データ及び地点データを蓄積する地図データ蓄積手段と、
当該携帯端末の現在位置情報を測位する測位手段と、
現在位置情報に基づいて、地図データ蓄積手段から読み出した地形データ及び地点データを重畳させて、1つの地図データを生成する地図重畳手段と、
重畳された地図データをディスプレイに表示する地図表示手段と
してコンピュータを機能させることを特徴とする。
【0014】
本発明の携帯端末用プログラムにおける他の実施形態によれば、地図更新制御手段は、HTTPのリクエストヘッダにIf-Modified-Sinceを含むGETメッセージを地図サーバへ送信し、該地図サーバからのレスポンスを受信することによって、地点データの更新を確認するようにコンピュータを機能させることを特徴とする。
【0015】
本発明の携帯端末用プログラムにおける他の実施形態によれば、地図データ蓄積手段は、地形データに地点データをリンク付けて管理しており、地形データは、少なくとも1つの地点データがリンク付けされている場合には、削除されないように管理するべくコンピュータを機能させることを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、前述した携帯端末と、該携帯端末と移動ネットワークを介して通信する地図サーバに搭載されたコンピュータを機能させるプログラムであって、
地形データ及び地点データを蓄積管理する地図データ蓄積手段と、
携帯端末からのリクエストを受信した際に、地図データ蓄積手段を用いて地点データの更新状態を判定する更新判定手段と、
地図データ蓄積手段を用いて、携帯端末からのリクエストに応じた地形データ及び/又は地点データを送信する地図データ送信手段と
してコンピュータを機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の携帯端末、地図配信システム及びプログラムによれば、携帯端末が通信サービス圏外へ移動する際に、狭帯域の無線リンクしか確保できない通信サービス圏の境界付近であっても、地図データの更新のためにデータを、地点データ(差分情報+ハッシュ値)のみの小容量データとすることにより、できる限り受信を可能とする。ユーザにとっては、通信サービス圏外へ移動する際に、その直前まで、地図データの更新が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下では、図面を用いて、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
【0019】
図1は、本発明におけるシステム構成図である。
【0020】
図1によれば、携帯端末1は、無線リンクを介して基地局2と通信する。基地局2は、移動アクセスネットワークに接続されており、移動アクセスネットワークは、インターネットに相互接続されている。インターネットには、地図サーバ3が接続されている。これにより、携帯端末1は、地図サーバ3から所望の地図データを受信することができる。
【0021】
本発明によれば、地図サーバ3は、地図データを、地形データと地点データとに分けて蓄積管理している。地図サーバ3は、最初に地形データ及び地点データを携帯端末1へ送信し、その後、更新された地点データのみを携帯端末1へ送信する。携帯端末1は、地形データに、最新の地点データを重畳させた1枚の地図データを、ディスプレイに表示する。地図サーバ3から受信した地形データ及び地点データは、携帯端末1の地図データ蓄積部に蓄積される。
【0022】
図1によれば、携帯端末1を所持するユーザは、通信サービス圏外へ向けて移動している。携帯端末1は、通信サービス圏内に位置している場合には、定期的に又は不定期的に、地図サーバ3にアクセスし、更新された地点データを受信する。地形データは、写真データのような高精細且つ大容量の画像データであるのに対し、地点データは、小容量の画像データである。
【0023】
携帯端末1は、通信サービス圏外に移動した場合、地図サーバ3から更新された地点データを受信することはできない。ユーザが、携帯端末1のディスプレイに、現在位置を表示させたい場合、携帯端末1は、GPS衛星4の電波を受信して、現在位置を測位する。そして、携帯端末1は、地図データ蓄積部から、現在位置に基づく地形データ及び地点データを検索し、地形データに地点データを重畳させてディスプレイに表示する。
【0024】
図2は、地形データ及び地点データを重畳した地図データである。
【0025】
携帯端末1は、地形データに地点データを重畳させて、1つの地図データを表示する。地形データは、例えば山の地形図のように、ほとんど更新されることがない地図データを意味する。一方で、地点データは、季節によって更新される山の撮影スポット情報又は一過性のイベント情報のように、地形データ上で更新される地点情報を意味する。
【0026】
図2によれば、地形データとして山の地形データが表されており、これは、ほとんど更新されることがない。一方で、地点データとして、夏の撮影スポットの地点データと、冬の撮影スポットの地点データとは異なっている。地形データに夏の地点データを重畳させることによって、夏の地図データが表示される。また、地形データに冬の地点データを重畳させることによって、冬の地図データが表示される。
【0027】
図3は、本発明における携帯端末及び地図サーバの機能構成図である。
【0028】
図3によれば、地図サーバ3は、地図データ送信部301と、地図データ蓄積部302と、更新判定部303と、差分情報導出部304と、ハッシュ値算出部305とを有する。これら機能部は、地図サーバに搭載されたコンピュータを機能させるプログラムを実行することによっても実現できる。
【0029】
地図データ送信部301は、地図データ蓄積部302を用いて、携帯端末1からのリクエストに応じた地形データ及び/又は地点データを送信する。ここで、地点データが更新されていない場合、304レスポンスを携帯端末1へ送信する。また、地図データ送信部301は、地点データとして、差分情報導出部304から出力される差分情報と、ハッシュ値算出部305から出力される原ハッシュ値とを送信する。
【0030】
地図データ蓄積部302は、地形データ及び地点データを蓄積管理する。
【0031】
更新判定部303は、携帯端末1からのリクエストを受信した際に、地図データ蓄積部302を用いて地点データの更新状態を判定する。具体的には、HTTPのリクエストヘッダにIf-Modified-Sinceを含むGETメッセージを携帯端末1から受信した際に、If-Modified-Sinceの時刻と、地点データの更新時刻とを比較する。
【0032】
差分情報導出部304は、更新前地点データと更新後地点データとから差分情報を導出する。
【0033】
ハッシュ値算出部305は、更新後地点データを引数として、そのハッシュ関数からの出力となる原ハッシュ値を算出する。ハッシュ関数としては、例えばMD5がある。
【0034】
図3によれば、携帯端末1は、移動通信部101と、測位部102と、地図更新制御部103と、地図データ蓄積部104と、地図重畳部105と、地図表示部106と、ハッシュ値検証部107とを有する。これら機能部は、携帯端末に搭載されたコンピュータを機能させるプログラムを実行することによっても実現できる。
【0035】
移動通信部101は、地図サーバ3から、地図全体で更新されない地形データと、更新される地点データとを受信する。
【0036】
測位部102は、GPS衛星4からの電波を用いて、当該携帯端末の現在位置情報を測位する。
【0037】
地図更新制御部103は、地図サーバ3によって更新された地点データの受信を制御する。具体的には、地図更新制御部103は、以下のようなHTTPのリクエストヘッダにIf-Modified-Since(最終更新時刻)を含むGETメッセージを、地図サーバ3へ送信する。
GET photo.tar HTTP/1.1
Host: foo.bar
If-Modified-Since: Mon, 21 Aug 2006 18:13:40 JST
【0038】
このHTTPリクエストを受信した地図サーバ3は、地点データphoto.tarが、If-Modified-Sinceの時刻以後に更新されているならば、HTTPレスポンスのエンティティボディに、地点データ(更新の場合は差分情報)が含まれる。逆に、If-Modified-Sinceの時刻以後に更新されていないならば、304レスポンスが返信される。これにより、携帯端末1の地図更新制御部103は、地点データの更新を確認することができる。尚、tarは、地図データのアーカイブ方式を表す。
【0039】
HTTPレスポンスに、更新された地点データ(x-tar形式)が含まれている場合、以下のようなレスポンスヘッダが付加される。
svg-name: 撮影ポイント
svg-about: http://foo.bar/photo.tar
Last-Modified: Mon, 21 Aug 2006 18:13:40 JST
Content-Length: 4096
Content-Type: application/x-tar
requires: http://foo.bar/map.tar
【0040】
また、更新された地点データとして、差分情報(gdiff形式)及び原ハッシュ値(F7D2F84588A88304CE352E2B2A1FFB76)が含まれる場合、以下のようなレスポンスヘッダが付加される。
svg-about: http://foo.bar/photo.tar
Last-Modified: Tue, 23 Aug 2006 15:00:00 JST
Content-Length: 1024
Content-Type: application/gdiff
requires: http://foo.bar/map.tar
svg-check: F7D2F84588A88304CE352E2B2A1FFB76
【0041】
地図更新制御部103は、差分情報及び原ハッシュ値を地図サーバから受信し、地図データ蓄積部104に蓄積された先の更新前地点データに差分情報を適用し、更新後地点データを導出する。更新後地点データと原ハッシュ値とは、ハッシュ値検証部107へ通知される。地図更新制御部103は、ハッシュ値検証部107から、「正当」との通知を受けると、更新後地点データを地図データ蓄積部104へ蓄積する。逆に、ハッシュ値検証部107から、「不当」との通知を受けると、更新後地点データを地図データ蓄積部104へ蓄積しない。
【0042】
地図データ蓄積部104は、地図サーバ3から受信した地形データ及び地点データを蓄積する。ここで、地図データ蓄積部104は、地形データに地点データをリンク付けて管理しており、少なくとも1つの地点データがリンク付けされた地形データは、削除されないように管理されている。
【0043】
地図重畳部105は、現在位置情報に基づいて、地図データ蓄積部104を用いて地形データに地点データを重畳させて、1つの地図データを生成する。
【0044】
地図表示部106は、重畳された地図データをディスプレイに表示する。
【0045】
ハッシュ検証部107は、地図更新制御部103から、更新後地点データと、原ハッシュ値とを受け取る。そして、ハッシュ検証部107は、更新後地点データを引数として、そのハッシュ関数から算出ハッシュ値を算出する。算出ハッシュ値は、原ハッシュ値と比較して検証される。検証の結果「正当」「不当」は、地図更新制御部103へ通知される。
【0046】
ここで、地形データと地点データとの位置の対応付けについて説明する。地図重畳部105は、例えばCRSを用いて位置を対応付ける。
【0047】
SVG1.1 Specificationによれば、座標系参照情報は、CRS(Coordinate Reference System)として定義されている。座標系参照情報とは、SVG画像座標と、現実の緯度経度座標とを対応付けた情報をいう。SVG画像座標は、x軸(右向きが正)及びy軸(下向きが正)で表され、緯度経度座標は、東経及び北緯で表される。
【0048】
CRSは、地図データを記述する最上位の'svg'要素の'metadata'の中に付加される。具体的には、'crs:CoordinateReferenceSystem'を定義するRDFによって記述される。
【0049】
CRSの定義は、OpenGIS勧告(the OpenGIS Recommendation on the Definition of Coordinate Reference System)[OpenGIS Coordinate Systems] に述べられているXML文法に従う。2次元データの変換には、アフィン変換パラメータを用いており、そのパラメータは、'svg:transform'属性として記述される。'svg:transform'属性は、'crs:CoordinateReferenceSystem'要素の中に付加される。
【0050】
SVG画像座標の(0、0)を左上の頂点、(100,100)を右下の頂点とする矩形内に表された地図と、そのメタデータは以下のように表される。
<svg viewBox=“0 0 100 100”>
<svg>
<metadata>
<rdf:RDF xmlns:rdf="http://www.w3.og/1999/02/22-rdf-syntax-ns#"
xmlns:crs="http://www.ogc.org/crs" xmlns:svg="http://www.w3.org/svg">
<rdf:Description>
<crs:CoordinateReferenceSystem rdf:resource="http://www.svg.ne.jp/wgs84"
svg:transform="matrix(800.00,0,0,-1200.00,-111200.00,43200.00)" />
</rdf:Description>
</rdf:RDF>
・・・・・
</metadata>
・・・・・
</svg>
【0051】
以下の座標系参照情報の記述について説明する。
<crs:CoordinateReferenceSystem
rdf:resource="http://www.svg.ne.jp/wgs84"
svg:transform="matrix(800.00,0,0,-1200.00,-111200.00,43200.00)" />
【0052】
'rdf:resource='は、参照される座標系を表している。'svg:tranform='は、SVGに符号化される際に、参照される座標系からどのような変換が適用されたかを表す。matrix()内の6個の数値は、3×3の変換行列a、b、c、d、e、fに対応する。SVG画像座標は、行列によってSVG画像座標を算出した元の緯度経度座標に対応する。
【数1】

【0053】
図4は、本発明における差分情報及びハッシュ値の説明図である。
【0054】
図4によれば、地形データAに対して、複数の地点データa、b及びcがリンク付けされている。従って、携帯端末1の地図データ蓄積部104と、地図サーバ3の地図データ蓄積部302とは、地形データに、地点データをリンク付けて管理する。このとき、少なくとも1つの地点データがリンク付けされた地形データは、削除されないように管理されている。そうしなければ、地点データに重畳する地形データが無くなっているという状態になるからである。
【0055】
また、図4によれば、地点データaに対して差分情報a1、a2及びa3が段階的に作成されている。地点データと差分情報とは、以下のような関係にある。
地点データa
地点データa1(=地点データa+差分情報a1)
地点データa2(=地点データa1+差分情報a2)
地点データa3(=地点データa2+差分情報a3)
この場合、更新された地点データa1を携帯端末1へ送信するよりも、差分情報a1のみを携帯端末1へ送信する方が、転送すべきデータ容量を少なくすることができる。
【0056】
更に、図4によれば、地点データa1、a2及びa3毎に、ハッシュ値を算出する。地点データとハッシュ値とは、以下のような関係にある。
地点データa
地点データa1(地点データa+差分情報a1)−>ハッシュ値a1
地点データa2(地点データa1+差分情報a2)−>ハッシュ値a2
地点データa3(地点データa2+差分情報a3)−>ハッシュ値a3
【0057】
地図サーバ3は、更新された地点データとして、差分情報と原ハッシュ値とを携帯端末1へ送信する。携帯端末1は、先の地点データ(更新前地点データ)に、受信した差分情報を更新して、更新後地点データを導出する。この更新後地点データを引数とする所定のハッシュ関数から、算出ハッシュ値を算出する。そして、算出ハッシュ値と原ハッシュ値とを比較し、一致すれば正常に更新されたこととなり、不一致となれば誤って更新されたこととなる。
【0058】
以上、詳細に説明したように、本発明の携帯端末、地図配信システム及びプログラムによれば、携帯端末が通信サービス圏外へ移動する際に、狭帯域の無線リンクしか確保できない通信サービス圏の境界付近であっても、地図データの更新のためにデータを、地点データ(差分情報+ハッシュ値)のみの小容量データとすることにより、できる限り受信を可能とする。ユーザにとっては、通信サービス圏外へ移動する際に、その直前まで、地図データの更新が可能となる。
【0059】
前述した本発明における種々の実施形態によれば、当業者は、本発明の技術思想及び見地の範囲における種々の変更、修正及び省略を容易に行うことができる。前述の説明はあくまで例であって、何ら制約しようとするものではない。本発明は、特許請求の範囲及びその均等物として限定するものにのみ制約される。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明におけるシステム構成図である。
【図2】地形データ及び地点データを重畳した地図データである。
【図3】本発明における携帯端末及び地図サーバの機能構成図である。
【図4】本発明における差分情報及びハッシュ値の説明図である。
【符号の説明】
【0061】
1 携帯端末
101 移動通信部
102 測位部
103 地図更新制御部
104 地図データ蓄積部
105 地図重畳部
106 地図表示部
2 基地局
3 地図サーバ
301 地図データ送信部
302 地図データ蓄積部
303 更新判定部
304 差分情報導出部
305 ハッシュ値算出部
4 GPS衛星

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動ネットワークを介して地図サーバと通信する携帯端末において、
地図全体で更新されない地形データと、更新される地点データとを、前記地図サーバから受信する移動通信手段と、
更新された前記地点データの受信を制御する地図更新制御手段と、
前記地形データ及び前記地点データを蓄積する地図データ蓄積手段と、
当該携帯端末の現在位置情報を測位する測位手段と、
前記現在位置情報に基づいて、前記地図データ蓄積手段から読み出した前記地形データ及び前記地点データを重畳させて、1つの地図データを生成する地図重畳手段と、
重畳された前記地図データをディスプレイに表示する地図表示手段と
を有することを特徴とする携帯端末。
【請求項2】
前記地図更新制御手段は、HTTPのリクエストヘッダにIf-Modified-Sinceを含むGETメッセージを前記地図サーバへ送信し、該地図サーバからのレスポンスを受信することによって、前記地点データの更新を確認することを特徴とする請求項1に記載の携帯端末。
【請求項3】
前記地図データ蓄積手段は、前記地形データに前記地点データをリンク付けて管理しており、少なくとも1つの地点データがリンク付けされた前記地形データは、削除されないように管理されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の携帯端末。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の携帯端末と、該携帯端末と前記移動ネットワークを介して通信する地図サーバとを有する地図配信システムであって、
前記地図サーバは、
前記地形データ及び前記地点データを蓄積管理する地図データ蓄積手段と、
前記携帯端末からのリクエストを受信した際に、前記地図データ蓄積手段を用いて前記地点データの更新状態を判定する更新判定手段と、
前記地図データ蓄積手段を用いて、前記携帯端末からのリクエストに応じた前記地形データ及び/又は前記地点データを送信する地図データ送信手段と
を有することを特徴とする地図配信システム。
【請求項5】
前記地図サーバについて、
更新前地点データと更新後地点データとから差分情報を導出する差分情報導出手段と、
更新後地点データにおける原ハッシュ値を算出するハッシュ値算出手段と
を更に有し、
前記地図データ送信手段は、前記差分情報及び前記原ハッシュ値を送信するものであり、
前記携帯端末について、
前記地図更新制御手段は、前記差分情報及び前記原ハッシュ値を前記地図サーバから受信し、前記地図データ蓄積手段に蓄積された先の更新前地点データに前記差分情報を更新するものであり、
更新後地点データにおける算出ハッシュ値と、前記原ハッシュ値とを比較して検証するハッシュ検証手段を更に有する
ことを特徴とする請求項4に記載の地図配信システム。
【請求項6】
移動ネットワークを介して地図サーバと通信する携帯端末に搭載されたコンピュータを機能させるプログラムにおいて、
地図全体で更新されない地形データと、更新される地点データとを、前記地図サーバから受信する移動通信手段と、
更新された前記地点データの受信を制御する地図更新制御手段と、
前記地形データ及び前記地点データを蓄積する地図データ蓄積手段と、
当該携帯端末の現在位置情報を測位する測位手段と、
前記現在位置情報に基づいて、前記地図データ蓄積手段から読み出した前記地形データ及び前記地点データを重畳させて、1つの地図データを生成する地図重畳手段と、
重畳された前記地図データをディスプレイに表示する地図表示手段と
してコンピュータを機能させることを特徴とする携帯端末用プログラム。
【請求項7】
前記地図更新制御手段は、HTTPのリクエストヘッダにIf-Modified-Sinceを含むGETメッセージを前記地図サーバへ送信し、該地図サーバからのレスポンスを受信することによって、前記地点データの更新を確認するようにコンピュータを機能させることを特徴とする請求項6に記載の携帯端末用プログラム。
【請求項8】
前記地図データ蓄積手段は、前記地形データに前記地点データをリンク付けて管理しており、前記地形データは、少なくとも1つの地点データがリンク付けされている場合には、削除されないように管理するべくコンピュータを機能させることを特徴とする請求項6又は7に記載の携帯端末用プログラム。
【請求項9】
請求項1から3のいずれか1項に記載の携帯端末と、該携帯端末と前記移動ネットワークを介して通信する地図サーバに搭載されたコンピュータを機能させるプログラムであって、
前記地形データ及び前記地点データを蓄積管理する地図データ蓄積手段と、
前記携帯端末からのリクエストを受信した際に、前記地図データ蓄積手段を用いて前記地点データの更新状態を判定する更新判定手段と、
前記地図データ蓄積手段を用いて、前記携帯端末からのリクエストに応じた前記地形データ及び/又は前記地点データを送信する地図データ送信手段と
してコンピュータを機能させることを特徴とする地図サーバ用プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−76317(P2008−76317A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−258142(P2006−258142)
【出願日】平成18年9月23日(2006.9.23)
【出願人】(000208891)KDDI株式会社 (2,700)
【Fターム(参考)】