説明

配線基板の実装方法およびポリイミドシロキサン溶液組成物

【課題】 ポリイミドシロキサン溶液組成物によって硬化絶縁膜を形成した配線基板へ電子部品を異方性導電材料によって実装する際の改良された実装方法、及び泡抜け性が改良されたポリイミドシロキサン溶液組成物を提供すること。
【解決手段】 配線基板の表面に電気回路配線部を部分的に被覆した硬化絶縁膜を形成する工程を含んでなる配線基板の実装方法において、前記硬化絶縁膜を、有機溶媒中に有機溶媒可溶性ポリイミドシロキサン、エポキシ化合物及び多価イソシアネート化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種の硬化性成分、およびシリコーン消泡剤を含んでなり、前記有機溶媒が(A)グライム類からなる溶媒と(B)アミド類、ピロリドン類、アノン類及びそれらのいずれかの混合物からなる群から選択された溶媒とを重量比((A)/(B))が85/15〜99/1の割合で混合した混合有機溶媒からなるポリイミドシロキサン溶液組成物を用いて形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリイミドシロキサン溶液組成物を用いて形成された硬化絶縁膜を有する配線基板の実装方法に関し、また前記実装方法に好適に用いることができる改良されたポリイミドシロキサン溶液組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
表面に電気回路回線部を有する配線基板に電子部品を実装する場合は、まず配線基板の表面に電気回路配線を形成し、その電気回路配線部のリード部を除く大部分を被覆するように硬化性樹脂溶液組成物を塗布して塗布膜を形成し、該塗布膜を加熱処理して硬化絶縁膜を形成する。次いで該硬化絶縁膜で被覆されていない電気回路配線のリード部に電気的接合部を形成して電子部品を実装する。
【0003】
ところで、ポリイミドシロキサン溶液組成物は配線基板の硬化絶縁膜として好適に用いられているが、塗膜を形成したときに発生する泡を短時間で破泡して効率よく均質な硬化絶縁膜を得るためにシリコーン消泡剤を配合することが知られている。該溶液組成物の泡抜け性を改良すれば、塗膜を形成し次いで加熱処理によって硬化絶縁膜を得る工程を容易にし、作業効率を向上させ、且つ得られる硬化絶縁膜の品質を向上させることができる。以上のように硬化絶縁膜を形成するために用いられるポリイミドシロキサン溶液組成物の泡抜け性は重要な特性であり、泡抜け性をさらに改良することが求められていた。
【0004】
配線基板への電子部品の電気的接合は、ハンダを用いる方法あるいは金などの導電性材料をバンプとして用いる方法の他に、例えば液晶表示素子などの電気部品の配線基板への実装に際して、異方性導電フィルム(Anisotropic Conductive Film、ACF)又は異方性導電ペースト(Anisotropic Conductive Paste、ACP)などの異方性導電材料によって形成される。このような実装方法において硬化絶縁膜をポリイミドシロキサン溶液組成物によって形成すると、硬化絶縁膜の周辺部にハジキが生じ、その結果電気的接合に十分な接着力が得られなくて、接着不良の原因になり易いという問題が生じた。
【0005】
特許文献1は、側鎖もしくは末端部に親水性基を有するポリシロキサン化合物からなるシリコーン消泡剤を含有したポリイミドシロキサン溶液組成物は、溶液組成物として泡抜け性が良好であり、且つ形成した硬化絶縁膜の周辺部のハジキが抑制されて異方性導電材料による電気的接合部の接合信頼性が改良されることを開示している。しかし、シリコーン消泡剤を含有したポリイミドシロキサン溶液組成物において、泡抜け性をさらに改良するために所定の混合溶媒が好適であることについては何ら記載されていない。
【0006】
【特許文献1】WO2005/080505公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、ポリイミドシロキサン溶液組成物によって硬化絶縁膜を形成した配線基板へ電子部品を異方性導電材料によって実装する際の改良された実装方法、及びそのような実装方法に好適な、泡抜け性が改良されたポリイミドシロキサン溶液組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、電気回路配線部が形成された配線基板の表面に前記電気回路配線部を部分的に被覆した硬化絶縁膜を形成する工程を含んでなる配線基板の実装方法において、前記硬化絶縁膜を、有機溶媒中に有機溶媒可溶性ポリイミドシロキサン、エポキシ化合物及び多価イソシアネート化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種の硬化性成分、およびシリコーン消泡剤を含んでなり、前記有機溶媒が(A)グライム類からなる溶媒と(B)アミド類、ピロリドン類、アノン類及びそれらのいずれかの混合物からなる群から選択された溶媒とを重量比((A)/(B))が85/15〜99/1の割合で混合した混合有機溶媒からなるポリイミドシロキサン溶液組成物を用いて形成することを特徴とする配線基板の実装方法に関する。
【0009】
特に、本発明は、電気回路配線部が形成された配線基板の表面に前記電気回路配線部を部分的に被覆した硬化絶縁膜を形成し、次いで前記硬化絶縁膜で覆われていない電気回路配線部に異方性導電材料によって電気的接合部を形成する工程を含んでなる配線基板の実装方法において、前記硬化絶縁膜を、有機溶媒中に有機溶媒可溶性ポリイミドシロキサン、エポキシ化合物及び多価イソシアネート化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種の硬化性成分、およびシリコーン消泡剤を含んでなり、前記有機溶媒が(A)グライム類からなる溶媒と(B)アミド類、ピロリドン類、アノン類及びそれらのいずれかの混合物からなる群から選択された溶媒とを重量比((A)/(B))が85/15〜99/1の割合で混合した混合有機溶媒からなるポリイミドシロキサン溶液組成物を用いて形成することを特徴とする配線基板の実装方法に関する。
【0010】
本発明の配線基板の実装方法においては、ポリイミドシロキサン溶液組成物の有機溶剤可溶性ポリイミドシロキサンが、(a)テトラカルボン酸化合物と、一般式(1)で示されるジアミノポリシロキサン30〜95モル%、極性基を有する芳香族ジアミン0.5〜40モル%及び前記ジアミン以外のジアミン化合物0〜69.5モル%からなるジアミン化合物とから得られる有機溶媒可溶性ポリイミドシロキサンであることが好ましい。
【0011】
【化1】

(式中、Rは2価の炭化水素基又は芳香族基を示し、Rは独立に1価の炭素水素基又は芳香族基を示し、n1は1〜50の整数を示す。)
【0012】
また、ポリイミドシロキサン溶液組成物が、有機溶剤可溶性ポリイミドシロキサン100質量部に対して、エポキシ化合物及び多価イソシアネート化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種の硬化性成分を1〜50質量部含有すること、ポリイミドシロキサン溶液組成物が、有機溶剤可溶性ポリイミドシロキサン100質量部に対して、シリコーン消泡剤を0.1〜10質量部含有することが好ましい。
【0013】
さらに本発明の配線基板の実装方法においては、ポリイミドシロキサン溶液組成物の混合溶媒の(A)グライム類からなる溶媒が、トリグライム、ジグライム又はそれらの混合物であること、ポリイミドシロキサン溶液組成物の混合溶媒の(B)アミド類、ピロリドン類、アノン類及びそれらのいずれかの混合物からなる群から選択された溶媒が、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン又はそれらのいずれかの混合物であることが好ましい。
【0014】
さらに本発明は、有機溶媒中に、有機溶媒可溶性ポリイミドシロキサン、エポキシ化合物及び多価イソシアネート化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種の硬化性成分、およびシリコーン消泡剤を含んでなり、前記有機溶媒が、(A)グライム類からなる溶媒と(B)アミド類、ピロリドン類、アノン類及びそれらのいずれかの混合物からなる群から選択された溶媒とを重量比((A)/(B))が85/15〜99/1の割合で混合した混合有機溶媒からなることを特徴とする泡抜け性が改良されたポリイミドシロキサン溶液組成物に関する。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、電気回路配線部が形成された配線基板の表面に前記電気回路配線部を部分的に被覆した硬化絶縁膜を形成する工程を含んでなる改良された配線基板の実装方法、特に、ポリイミドシロキサン溶液組成物によって硬化絶縁膜を形成した配線基板へ異方性導電材料によって電子部品を実装する際の改良された実装方法、及びそのような実装方法に好適なポリイミドシロキサン溶液組成物を提供することができる。この実装方法によれば、泡抜け性が改良されているので、スクリーン印刷等によって塗膜を形成し次いで加熱処理によって硬化絶縁膜を得る工程が極めて容易になり、作業効率を向上でき、且つ均質な硬化絶縁膜を容易に形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の実装方法の特徴は、電気回路配線部が形成された配線基板の表面に前記電気回路配線部を部分的に被覆した硬化絶縁膜を形成する工程を含んでなる改良された配線基板の実装方法、特に電気回路配線部が形成された配線基板の表面に前記電気回路配線部を部分的に被覆した硬化絶縁膜を形成し次いで該硬化絶縁膜で覆われていない電気回路配線部に異方性導電材料によって電気的接合部を形成する工程を含んでなる配線基板の実装方法において、前記硬化絶縁膜を、有機溶媒中に有機溶媒可溶性ポリイミドシロキサン、エポキシ化合物及び多価イソシアネート化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種の硬化性成分、およびシリコーン消泡剤を含んでなり、前記有機溶媒が(A)グライム類からなる溶媒と(B)アミド類、ピロリドン類、アノン類及びそれらのいずれかの混合物からなる群から選択された溶媒とを重量比((A)/(B))が85/15〜99/1の割合で混合した混合有機溶媒からなるポリイミドシロキサン溶液組成物を用いて形成することにある。
【0017】
前記有機溶剤可溶性ポリイミドシロキサンは、テトラカルボン酸化合物とジアミノポリシロキサンを含むジアミン化合物とを、略等モル好ましくはジアミン化合物1モルに対してテトラカルボン酸化合物を1.0〜1.2モルの割合で用いて有機溶媒中で反応させることによって得ることができる。
【0018】
テトラカルボン酸化合物の例としては、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ジフェニルエ−テルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,2−ビス(3,4−ベンゼンジカルボン酸)ヘキサフルオロプロパン、ピロメリット酸、1,4−ビス(3,4−ベンゼンジカルボン酸)ベンゼン、2,2−ビス〔4−(3,4−フェノキシジカルボン酸)フェニル〕プロパン、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸、1,2,4,5−ナフタレンテトラカルボン酸、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタンなどの芳香族テトラカルボン酸、又はそれらの酸二無水物や低級アルコ−ルのエステル化物を好適に挙げることができる。これらのなかでも2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ジフェニルエ−テルテトラカルボン酸、及び2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸、又はそれらの酸二無水物や低級アルコ−ルのエステル化物は、ポリイミドシロキサンとしたときの有機溶媒に対する溶解性が優れているので特に好適であり、芳香族テトラカルボン酸化合物中の80モル%以上特に85%以上更に100%の割合で用いることが好適である。
【0019】
テトラカルボン酸化合物は、ジアミン化合物と反応させることが容易なテトラカルボン酸二無水物を用いることが好ましい。また、テトラカルボン酸二無水物の使用量がジアミン化合物に対して1.05倍モル以上で未反応無水環が残存するような場合には、そのままでもよいが、エステル化剤で開環ハーフエステル化してもよい。
【0020】
ジアミン化合物は、ジアミノポリシロキサンを含み更に芳香族ジアミン特に極性基を有する芳香族ジアミン化合物を含むことが好ましい。通常は、ジアミノポリシロキサンが30〜95モル%好ましくは50〜95モル%より好ましくは60〜95モル%、極性基を有する芳香族ジアミン化合物が0.5〜40モル%、そして前記ジアミノポリシロキサン及び前記極性基を有する芳香族ジアミン化合物以外のジアミン化合物を0〜69.5モル%(通常、0〜30モル%)の割合で用いる。
【0021】
ジアミノポリシロキサンとしては、下記一般式(1)で示される化合物が好適である。
【0022】
【化2】

式中、Rは2価の炭化水素基又は芳香族基を示し、Rは独立に1価の炭素水素基又は芳香族基を示し、n1は1〜50の整数を示す。ただし、Rは独立に炭素数1〜6の2価の炭化水素基またはフェニレン基、特にプロピレン基であり、Rは独立に炭素数1〜5のアルキル基またはフェニル基であり、n1は3〜20であることが好ましい。なお、ジアミノポリシロキサンが二種以上の混合物からなる場合は、n1はアミノ当量から計算される。
【0023】
ジアミノポリシロキサンの例としては、α,ω−ビス(2−アミノエチル)ポリジメチルシロキサン、α,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン、α,ω−ビス(4−アミノフェニル)ポリジメチルシロキサン、α,ω−ビス(4−アミノ−3−メチルフェニル)ポリジメチルシロキサン、α,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリジフェニルシロキサン、α,ω−ビス(4−アミノブチル)ポリジメチルシロキサンなどが挙げられる。
【0024】
ジアミン化合物を構成する極性基を有する芳香族ジアミン化合物は、分子中にイソシアネート基又はエポキシ基との反応性を持った極性基を有する芳香族ジアミンであり、好ましくは下記一般式(2)で示されるジアミンである。
【0025】
【化3】

式中、X及びYは、それぞれ独立に直接結合、CH、C(CH、C(CF、O、ベンゼン環、SOを示し、r1は水酸基又はカルボキシル基を示し、n2は1又は2であり、n3、n4はそれぞれ独立に0、1又は2、好ましくは0又は1であり、n3及びn4の少なくとも一方は1又は2である。
【0026】
前記一般式(2)で示されるジアミン化合物としては、2,4−ジアミノフェノ−ルなどのジアミノフェノ−ル化合物類、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジハイドロキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジハイドロキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジハイドロキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’,5,5’−テトラハイドロキシビフェニルなどのヒドロキシビフェニル化合物類、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジハイドロキシジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジハイドロキシジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジハイドロキシジフェニルメタン、2,2−ビス〔3−アミノ−4−ハイドロキシフェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−アミノ−3−ハイドロキシフェニル〕プロパン、2,2−ビス〔3−アミノ−4−ハイドロキシフェニル〕ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ジアミノ−2,2’,5,5’−テトラハイドロキシジフェニルメタンなどのヒドロキシジフェニルアルカン化合物類、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジハイドロキシジフェニルエ−テル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジハイドロキシジフェニルエ−テル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジハイドロキシジフェニルエ−テル、4,4’−ジアミノ−2,2’,5,5’−テトラハイドロキシジフェニルエ−テルなどのヒドロキシジフェニルエ−テル化合物類、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジハイドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジハイドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジハイドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノ−2,2’,5,5’−テトラハイドロキシジフェニルスルホンなどのヒドロキシジフェニルスルホン化合物類、2,2−ビス〔4−(4−アミノ−3−ハイドロキシフェノキシ)フェニル〕プロパンなどのビス(ハイドロキシフェニキシフェニル)アルカン化合物類、4,4’−ビス(4−アミノ−3−ハイドロキシフェノキシ)ビフェニルなどのビス(ハイドロキシフェノキシ)ビフェニル化合物類、2,2−ビス〔4−(4−アミノ−3−ハイドロキシフェノキシ)フェニル〕スルホンなどのビス(ハイドロキシフェニキシフェニル)スルホン化合物類などの水酸基を有するジアミン化合物を挙げることができる。
【0027】
更に、前記の一般式(2)で示されるジアミン化合物としては、3,5−ジアミノ安息香酸、2,4−ジアミノ安息香酸などのベンゼンカルボン酸類、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジカルボキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジカルボキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジカルボキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’,5,5’−テトラカルボキシビフェニルなどのカルボキシビフェニル化合物類、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジカルボキシジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジカルボキシジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジカルボキシジフェニルメタン、2,2−ビス〔3−アミノ−4−カルボキシフェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−アミノ−3−カルボキシフェニル〕プロパン、2,2−ビス〔3−アミノ−4−カルボキシフェニル〕ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ジアミノ−2,2’,5,5’−テトラカルボキシビフェニルなどのカルボキシジフェニルアルカン化合物類、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジカルボキシジフェニルエ−テル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジカルボキシジフェニルエ−テル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジカルボキシジフェニルエ−テル、4,4’−ジアミノ−2,2’,5,5’−テトラカルボキシジフェニルエ−テルなどのカルボキシジフェニルエ−テル化合物類、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジカルボキシジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジカルボキシジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノ−2,2’,5,5’−テトラカルボキシジフェニルスルホンなどのカルボキシジフェニルスルホン化合物類、2,2−ビス〔4−(4−アミノ−3−カルボキシフェノキシ)フェニル〕プロパンなどのビス(カルボキシフェノキシフェニル)アルカン化合物類、4,4’−ビス(4−アミノ−3−カルボキシフェノキシ)ビフェニルなどのビス(カルボキシフェノキシ)ビフェニル化合物類、2,2−ビス〔4−(4−アミノ−3−カルボキシフェノキシ)フェニル〕スルホンなどのビス(カルボキシフェノキシフェニル)スルホン化合物類などのカルボキシル基を有するジアミン化合物を挙げることができる。
【0028】
ジアミン化合物を構成する前記ジアミノポリシロキサン及び前記極性基を有する芳香族ジアミン化合物以外のジアミン化合物は、特に限定されるものではないが、下記一般式(3)で示される芳香族ジアミンが好適である。
【0029】
【化4】

式中、X及びYは、それぞれ独立に直接結合、CH、C(CH、C(CF、O、ベンゼン環、SOを示し、n5は1又は2である。
【0030】
前記一般式(3)で示される芳香族ジアミンの例としては、1,4−ジアミノベンゼン、1,3−ジアミノベンゼン、2,4−ジアミノトルエン、1,4−ジアミノ−2,5−ジハロゲノベンゼンなどのベンゼン1個を含むジアミン類、ビス(4−アミノフェニル)エ−テル、ビス(3−アミノフェニル)エ−テル、ビス(4−アミノフェニル)スルホン、ビス(3−アミノフェニル)スルホン、ビス(4−アミノフェニル)メタン、ビス(3−アミノフェニル)メタン、ビス(4−アミノフェニル)スルフィド、ビス(3−アミノフェニル)スルフィド、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、o−ジアニシジン、o−トリジン、トリジンスルホン酸類などのベンゼン2個を含むジアミン類、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェニル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェニル)ベンゼン、α,α’−ビス(4−アミノフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(4−アミノフェニル)−1,3−ジイソプロピルベンゼンなどのベンゼン3個を含むジアミン類、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、4,4’−(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、5,10−ビス(4−アミノフェニル)アントラセンなどのベンゼン4個以上を含むジアミン類などのジアミン化合物が挙げられる。
また、ヘキサメチレンジアミン、ジアミノドデカンなど脂肪族ジアミン化合物を上記ジアミンと共に使用することができる。
【0031】
本発明におけるポリイミドシロキサンは、例えば次の方法で得ることができる。
a)テトラカルボン酸化合物とジアミン化合物とを略等モル使用し、有機極性溶媒中で連続的に15〜250℃で重合及びイミド化させてポリイミドシロキサンを得る方法。
b)テトラカルボン酸化合物とジアミン化合物とをそれぞれ分けて、まず過剰量のテトラカルボン酸化合物とジアミン化合物(例えばジアミノポリシロキサン)とを有機極性溶媒中15〜250℃で重合及びイミド化させて平均重合度1〜10程度の末端に酸無水物基(又は、酸、そのエステル化物)を有するイミドシロキサンオリゴマーを調製し、別にテトラカルボン酸化合物と過剰量のジアミン化合物とを有機極性溶媒中15〜250℃で重合及びイミド化させて平均重合度1〜10程度の末端にアミノ基を有するイミドオリゴマーを調製し、次いでこの両者を酸成分とジアミン化合物とが略等モルになるように混合して15〜60℃で反応させて、さらに130〜250℃に昇温して反応させてポリイミドシロキサンを得る方法。
c)テトラカルボン酸化合物とジアミン化合物とを略等モル使用し、有機極性溶媒中でまず20〜80℃で重合させてポリアミック酸を得た後に、そのポリアミック酸をイミド化してポリイミドシロキサンを得る方法。
【0032】
これらの方法で使用される有機極性溶媒は、反応の各成分及び生成するポリイミドシロキサンを溶解する有機極性溶媒が好適に使用される。例えばN,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−メチルカプロラクタムなどの含窒素原子溶媒、例えばジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ヘキサメチルスルホルアミドなどの含硫黄原子溶媒、例えばクレゾール、フェノール、キシレノールなどのフェノール類溶媒、例えばジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグライム)、トリエチレングリコールジメチルエーテル(トリグライム)、テトラグライムなどのジグライム類溶媒、例えばアセトン、メタノール、エタノール、エチレングリコール、ジオキサン、テトラヒドロフランなどの含酸素原子溶媒、その他ピリジン、テトラメチル尿素などを挙げることができ、必要に応じてベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒やソルベントナフサ、ベンゾニトリルなど他の有機溶媒を併用してもよい。
なお、本発明のポリイミドシロキサン溶液組成物を構成する混合溶媒を、ポリイミドシロキサンの調製段階から用いると、本発明のポリイミドシロキサン溶液組成物を調製するうえで効率的である。
【0033】
ポリイミドシロキサンは、前記a)〜b)などいずれの方法で得られたものを使用してもよいが、有機溶媒に少なくとも3質量%以上、好ましくは5〜60質量%、特に5〜50質量の高濃度で溶解させることができるもので、25℃の溶液粘度(E型回転粘度計)が1〜10000ポイズ、特に1〜100ポイズであることが好ましい。
ポリイミドシロキサンは高分子量のものが好ましく更にイミド化率が高いものが好ましい。分子量の目安としての対数粘度(測定濃度:0.5g/100ミリリットル、溶媒:N−メチル−2−ピロリドン、測定温度:30℃)は、0.15以上、特に0.16〜2のものが硬化絶縁膜の強度、伸度などの機械的物性の点から好ましい。また、赤外吸収スペクトルから求められるイミド化率が、90%以上特に95%以上更に実質的に100%のものが好ましい。
【0034】
本発明のポリイミドシロキサン溶液組成物を構成する硬化性成分は、エポキシ化合物及び/又は多価イソシアネート化合物を含んで構成される。
エポキシ化合物としては、エポキシ当量が100〜4000程度であって、分子量が300〜10000程度である液状又は固体状のエポキシ樹脂が好ましい。例えば、ビスフェノールA型やビスフェノールF型のエポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製:エピコート806、エピコート825、エピコート828、エピコート1001、エピコート1002、エピコート1003、エピコート1004、エピコート1055、エピコート1004AF、エピコート1007、エピコート1009、エピコート1010など)、3官能以上のエポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製:エピコート152、エピコート154、エピコート180シリ−ズ、エピコート157シリ−ズ、エピコート1032シリ−ズ、チバガイギ−製:MT0163など)、宇部興産株式会社製のハイカーETBN1300×40、ナガセケムテックス株式会社製のデナレックスR−45EPT、エポキシ変性ポリシロキサン(信越化学工業社製:KF105など)などを挙げることができる。
【0035】
多価イソシアネートとしては、1分子中にイソシアネ−ト基を2個以上有するものであればよい。このような多価イソシアネ−ト化合物として、脂肪族、脂環族または芳香族のジイソシアネ−ト等があり、例えば1,4−テトラメチレンジイソシアネ−ト、1,5−ペンタメチレンジイソシアネ−ト、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネ−ト、2,2,4−トリメチル−1,6−へキサメチレンジイソシアネ−ト、リジンジイソシアネ−ト、3−イソシアネ−トメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネ−ト(イソホロンジイソシアネ−ト)、1,3−ビス(イソシアネ−トメチル)−シクロヘキサン、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネ−ト、トリレンジイソシアネ−ト、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネ−ト、1,5−ナフタレンジイソシアネ−ト、トリジンジイソシアネ−ト、キシリレンジイソシアネ−ト等を挙げることが出来る。本発明では、トリメチロールプロパンにウレタン結合で付加したようなアダクト型構造を有する多価イソシアネートは硬化絶縁膜の耐燃性を改良するうえで好適である。
更に、多価イソシアネ−ト化合物として、脂肪族、脂環族または芳香族の多価イソシアネ−トから誘導されるもの、例えばイソシアヌレ−ト変性多価イソシアネ−ト、ビュレット変性多価イソシアネ−ト、ウレタン変性多価イソシアネ−ト等であってもよい。
【0036】
また、多価イソシアネ−ト化合物は、そのイソシアネ−ト基をブロック化剤でブロックしたブロック多価イソシアネ−トが好適に使用される。
前記のブロック化剤としては例えば、アルコ−ル系、フェノ−ル系、活性メチレン系、メルカプタン系、酸アミド系、酸イミド系、イミダゾ−ル系、尿素系、オキシム系、アミン系、イミド系化合物、ピリジン系化合物等があり、これらを単独あるいは、混合して使用してもよい。具体的なブロック化剤としては、アルコ−ル系としてメタノ−ル、エタノ−ル、プロパノ−ル、ブタノ−ル、2−エチルヘキサノ−ル、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルカルピト−ル、ベンジルアルコ−ル、シクロヘキサノ−ル等、フェノ−ル系として、フェノ−ル、クレゾ−ル、エチルフェノ−ル、ブチルフェノ−ル、ノニルフェノ−ル、ジノニルフェノ−ル、スチレン化フェノ−ル、ヒドロキシ安息香酸エステル等、活性メチレン系として、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセチルアセトン等、メルカプタン系として、ブチルメルカプタン、 ドデシルメルカプタン等、酸アミド系として、アセトアニリド、酢酸アミド、ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム等、酸イミド系として、コハク酸イミド、マレイン酸イミド、イミダゾ−ル系として、イミダゾ−ル、2−メチルイミダゾ−ル、尿素系として、尿素、チオ尿素、エチレン尿素等、オキシム系として、ホルムアルドオキシム、アセトアルドオキシム、アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシム等、アミン系として、ジフェニルアミン、アニリン、カルバゾール等、イミン系として、エチレンイミン、ポリエチレンイミン等、重亜硫酸塩として、重亜硫酸ソ−ダ等、ピリジン系として、2−ヒドロキシピリジン、2−ヒドロキシキノリン等が挙げられる。
【0037】
ブロック多価イソシアネ−トの例としては、大日本インキ化学工業株式会社製のバーノックD−500(トリレンジイソシアネ−トブロック化体)、D−550(1,6−ヘキサメチレンジイソシアネ−トブロック化体)、三井武田ケミカル株式会社製のタケネートタケネートB−830(トリレンジイソシアネ−トブロック化体)、B−815N(4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)ブロック化体)、B−842N(1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサンブロック化体)、B−846N(1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサンブロック化体)、B−874N(イソホロンンジイソシアネ−トブロック化体)、B−882N(1,6−ヘキサメチレンジイソシアネ−トブロック化体)、旭化成株式会社製のデュラネートMF−B60X(1,6−ヘキサメチレンジイソシアネ−トブロック化体)、デュラネートMF−K60X(1,6−ヘキサメチレンジイソシアネ−トブロック化体)、第一工業製薬社製のエラストロンBN−P17(4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネ−ト ブッロク化体)、エラストロンBN−04、エラストロンBN−08、エラストロンBN−44、エラストロンBN−45(以上、ウレタン変性多価イソシアネートブッロク化体1分子当たり3〜5官能、いずれも水エマルジョン品で乾燥単離後使用可能)などを好適に挙げることができる。
【0038】
本発明のポリイミドシロキサン溶液組成物において、エポキシ化合物及び多価イソシアネート化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の硬化性成分は、ポリイミドシロキサン100質量部に対して1〜50質量部好ましくは1〜40質量部より好ましくは5〜40質量部である。使用量が前記範囲よりも多すぎると相分離を生じ易くなったり硬化後の絶縁膜の基材や封止材料に対する接着性が低下したり耐屈曲性や耐熱性が低くなったりし、少なすぎると硬化絶縁膜の耐熱性、耐薬品性が悪くなるので前記範囲が好ましい。
さらに詳しく述べると、本発明においては、エポキシ化合物単独か、又はエポキシ化合物とブロック多価イソシアネート化合物との組合せが好適に使用される。エポキシ化合物とブロック多価イソシアネート化合物との組合せでは、ポリイミドシロキサン100質量部に対してエポキシ化合物を0.5〜30質量部及びブロック多価イソシアネート化合物を2〜40質量部の組合せで使用するのが、130℃程度以下の低温で硬化することが容易で且つ硬化絶縁膜の封止材料に対する密着性が良好になるので好適である。
【0039】
本発明のポリイミドシロキサン組成物はシリコーン消泡剤を含有する。ポリイミドシロキサン溶液組成物では、泡抜け性を改善するにはシリコーン消泡剤が有効である。他の種類の消泡剤では必ずしも効果的な泡抜け性を得ることができない。ポリイミドシロキサンはそのシロキサン骨格のために少なからず表面エネルギーが低く凝集力が弱いものである。これに作用して破泡させるにはポリイミドシロキサンとの親和性があり且つ表面エネルギーや凝集力がポリイミドシロキサンに較べて更に低いものでなければ消泡効果を十分には発揮できない。シリコーン消泡剤の含有量は有機溶剤可溶性ポリイミドシロキサン100質量部に対して0.1〜10質量部が好適である。
【0040】
しかし、特許文献1に記載のとおり、通常のジメチルポリシロキサンからなるシリコーン消泡剤を用いると、ポリイミドシロキサン絶縁膜用組成物から得られる硬化絶縁膜は、その表面だけでなく、その周辺部にもハジキを生じ、例えば硬化絶縁膜の周辺部で異方性伝導フィルムによって電気的接合部を形成すると、十分な接着力が得られないで信頼性が確保できないという問題が生じた。
【0041】
これに対して、特許文献1では、側鎖もしくは末端部に親水性基を有するポリシロキサン化合物を含むシリコーン消泡剤を採用して前述のハジキを抑制した。本発明のポリイミドシロキサン溶液組成物においても、好ましくは特許文献1で記載された側鎖もしくは末端部に親水性基を有するポリシロキサン化合物を含むシリコーン消泡剤を用いることができる。側鎖もしくは末端部に親水性基を有するポリシロキサン化合物を含むシリコーン消泡剤については特許文献1に詳細に説明されているとおりである。
【0042】
本発明のシリコーン消泡剤の例としては、ダウ・コーニング製のDB−100、信越化学工業株式会社製のKS−69、東芝シリコーン株式会社製のTSA−750などの通常のシリコーン消泡剤を挙げることができる。さらに、信越化学工業株式会社製のKS531、KS538、ダウ・コーニング製のDC−75などの側鎖もしくは末端部にメチル基以外の親水性基を有するポリシロキサン化合物を含むシリコーン消泡剤を好適に挙げることができる。
【0043】
本発明のポリイミドシロキサン溶液組成物の特徴は、有機溶媒として(A)グライム類からなる溶媒と(B)アミド類、ピロリドン類、アノン類及びそれらの混合物からなる群から選択された溶媒とを重量比((A)/(B))が85/15〜99/1好ましくは87/13〜97/3の割合で混合した混合有機溶媒を用いることによって、この溶液組成物で塗膜を形成した際に生じる泡を容易に破泡させて、極めて短時間に均一な塗膜となるように改良した点にある。この混合有機溶媒において、溶媒(B)が90/1未満の割合では泡抜け時間が長くなり本発明の効果をえられない。溶媒(B)が85/15を越える割合では、硬化絶縁膜中に溶媒が残存し易くなり、例えばハンダ工程で硬化絶縁膜を高温に晒したときに残存溶媒の気化に起因すると思われる膨れ現象が生じるなどハンダ耐熱性が低下するために好ましくない。さらに、溶媒(B)が90/1未満の割合ではポリイミドシロキサン溶液組成物の溶液安定性が悪くなり比較的短時間に高粘度化したり、固液分離が生じたりすることがあるので好ましくないが、溶媒(B)が90/1を越える割合で混合した本発明のポリイミドシロキサン溶液組成物では、溶液安定性が改良されて長時間経っても粘度を安定化できる。
【0044】
溶媒(A)はポリイミドシロキサンに対する親和性が低い溶媒である。そのために、例えば80℃30分間加熱する程度で90%以上が気化して除去されるためにハジキの原因になるシロキサン成分の飛散が抑制される。一方、溶媒(B)はポリイミドシロキサンに対する親和性が高い溶媒であり、ポリイミドシロキサン分子の周りに多く存在してポリイミドシロキサンの分子間の相互作用を弱めるので、泡の抜け道が形成されて泡抜けが促進されると考えられる。しかし、溶媒(B)を一定量以上の割合で用いると、塗膜を硬化させる通常の熱処理温度では容易に除けなくて、その一定量が残存する。硬化絶縁膜内の残存量が1000ppmを越えるようになると、前記のとおりハンダ耐熱性(例えば260℃で10秒間)を満足できなくなる。硬化絶縁膜内の残存量が1000ppm以下では残存溶媒の影響はほとんどなくなり、好ましくは500ppm以下より好ましくは100ppm以下では実用上無視できる。
【0045】
前記混合有機溶媒に用いられるグライム類とは例えばエチレングリコールジメチルエーテル(モノグライム)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグライム)、トリエチレングリコールジメチルエーテル(トリグライム)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(テトラグライム)などのエーテル基含有化合物であり、アミド類とは例えばN,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミドなどのアミド基含有化合物であり、ピロリドン類とは例えばN−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドンなどのピロリドン骨格からなる化合物であり、アノン類とは例えばシクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロオクタノンなどのカルボニル基含有環状化合物である。
【0046】
これらの混合溶媒の各成分はいずれも、好ましくは沸点が140℃以上、より好ましくは沸点が160〜240℃のものである。沸点が低すぎると混合工程などで溶媒が蒸発し易くなって濃度と粘度の調整が難しく、沸点が高すぎると硬化絶縁膜内に残存して耐熱性や機械的性能などを低下させる。また、本発明において、溶媒(A)は好ましくはトリグライム、ジグライム又はそれらの混合物であり、溶媒(B)は好ましくはジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン又はそれらのいずれかの混合物である。
なお、これらの混合溶媒は、特に限定するものではないが、有機溶剤可溶性ポリイミドシロキサン100質量部に対して通常50質量部〜500質量部用いられる。
【0047】
さらに、本発明のポリイミドシロキサン溶液組成物は、微細な無機フィラーを含有することが好ましい。微細な無機フィラ−としては、平均粒子径が0.001〜15μm、特に0.005〜10μmのものが好ましい。この範囲外のものを使用すると得られる硬化絶縁膜が屈曲したときに亀裂が発生したり、折り曲げ部が白化したりするので好ましくない。微細なフィラ−としては、例えば微粉状シリカであるアエロジル、タルク、マイカ、硫酸バリウムなどの微細無機フィラ−を好適に挙げることができる。本発明においては、微細な無機フィラーとしてアエロジルとタルク、マイカ及び硫酸バリムのうちの少なくとも一つからなる組合せ、特にアエロジルとタルクと硫酸バリウムとからなる組合せが好適に用いられる。
これらの微細なフィラーはスクリーン印刷などによって塗膜を形成する時の粘度を良好に調整し、且つ硬化絶縁膜の特性を改良するために用いられる。しかし、このような微細なフィラーを加えると、溶液組成物は高粘度になり特にチクソトロピー性が高くなるから、必然的に泡抜け性が低下し、溶液組成物を製造する工程やスクリーン印刷などによって塗膜を形成する工程において著しく作業性が低下する。本発明のポリイミドシロキサン溶液組成物は、微細な無機フィラーを含有した場合にも泡抜け性が良好であるために溶液組成物を製造する工程やスクリーン印刷などにより塗膜を形成する工程における作業性が良好である。
【0048】
微細な無機フィラ−の使用量は、ポリイミドシロキサン100質量部に対して、合計で20〜150質量部、特に40〜125質量部が好適である。使用量が前記範囲より少ないと、印刷性やスズメッキ時のスズ潜りや銅箔変色性を改良できないし、使用量が前記範囲よりも多すぎると塗膜の折り曲げによりクラックが発生するなどの問題が生じ易くなるので前記範囲が好適である。
【0049】
さらに、本発明のポリイミドシロキサン溶液組成物には、ブロック多価イソシアネ−トのブロック化剤を一定の温度以上で解離する解離触媒や、エポキシ化合物及び多価イソシアネート化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種の硬化性成分とポリイミドシロキサンの極性基などとの硬化反応を促進する硬化促進触媒からなる硬化触媒を含有することが好ましい。
ブロック多価イソシアネート化合物の解離触媒としては、例えばジブチル錫ジラウレ−トなどや3級アミン類が例示できる。解離触媒の量はブロック多価イソシアネ−ト化合物100質量部に対して0.01〜25質量部特に0.1〜15質量部が好ましい。
また、硬化促進触媒としては、2−メチル−4−メチルイミダゾールなどのイミダゾール類や3級アミン類が例示できる。硬化促進触媒の量は、ブロック多価イソシアネ−ト100質量部に対して0.01〜25質量部程度特に0.1〜15質量部程度が好ましい。
【0050】
本発明のポリイミドシロキサン溶液組成物がエポキシ化合物とブロック多価イソシアネート化合物とを含有する場合には、解離触媒と硬化促進触媒との両方の作用を発揮することができる3級アミンを硬化触媒として含有させることが特に好ましい。
前記3級アミンとしては、例えば1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(DBUと略記することもある。以下同様)、N,N−ジメチルベンジルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサンジアミン、トリエチレンジアミン(TEDA)、2−ジメチルアミノメチルフェノール(DMP−10)、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール(DMP−30)、ジモルホリノジエチルエーテル(DMDEE)、1,4−ジメチルピペラジン、シクロヘキシルジメチルアミンなどを挙げることができる。特に、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(DBU)、ジメチルベンジルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサンジアミンは、ブロックイソシアネートからブロック化剤を適当な温度において解離し、且つ、ポリイミドシロキサンとエポキシ化合物及び多価イソシアネート化合物との架橋反応を適当な速度に促進することができる。
【0051】
3級アミンの使用量は、有機溶剤可溶性ポリイミドシロキサン100質量部に対して、0.5〜20質量部、好ましくは1〜10質量部である。使用量が前記範囲よりも多すぎると、耐溶剤性や電気的性質が悪くなり、少なすぎると低温での硬化に長時間を要するので前記範囲が好ましい。
【0052】
さらに、本発明のポリイミドシロキサン溶液組成物においては、有機着色顔料、無機着色顔料を所定量、例えば有機溶剤可溶性ポリイミドシロキサン100質量部に対して、0.1〜100質量部程度使用することができる。
【0053】
本発明のポリイミドシロキサン溶液組成物は、有機溶媒可溶性ポリイミドシロキサン、エポキシ化合物及び多価イソシアネート化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種の硬化性成分、およびシリコーン消泡剤、さらに必要に応じて微細なフィラーなどの所定量を、(A)グライム類からなる溶媒と(B)アミド類、ピロリドン類、アノン類及びそれらのいずれかの混合物からなる群から選択された溶媒とを重量比((A)/(B))が85/15〜99/1の割合で混合した混合有機溶媒に均一に溶解させることによって容易に得ることができる。有機混合溶媒に溶解させて溶液組成物にするにあたっては、予め所定の混合溶媒でポリイミドシロキサンを調製し、その溶液をそのまま又は希釈したものを使用してもよい。また、特に限定するものではないが、室温(25℃)での溶液粘度が50〜10000ポイズ特に100〜1000ポイズ更に100〜600ポイズであることがスクリーン印刷などの作業性や溶液物性や得られる硬化絶縁膜の特性上などから適当である。
【0054】
本発明のポリイミドシロキサン溶液組成物は、以上説明したとおりのものであり、フレキシブル配線基板などの基材上にスクリーン印刷などの方法で良好に塗布でき、比較的低温で加熱処理することによって硬化絶縁膜を形成することができ、且つ得られた硬化絶縁膜は基材との密着性が優れ、ソリが発生し難く、耐熱性、耐溶剤性、耐薬品性(スズ潜りが小さい)、耐屈曲性、電気特性が優れるのものであり、特に溶液組成物として泡抜け性が良好(本発明の測定方法で泡抜け時間が好ましくは100秒以下より好ましくは50秒以下)であるから硬化絶縁膜を形成する際の作業性を著しく改善することができる。更に好ましくは、溶液組成物を基材に塗布後加熱処理して得られた硬化絶縁膜の周辺部で接着不良の原因になるハジキが抑制されて(本発明の測定方法でハジキ距離が好ましくは30μm以下より好ましくは10μm以下)異方性導電フィルム又は異方性導電ペーストなどの異方性導電材料によっても信頼性が高い電気的接合部を得ることができる。また好ましくは本発明で得られる硬化絶縁膜はアンダーフィル材などの封止材料との密着性が良好である。
【0055】
次に本発明の配線基板の実装方法について説明する。本発明の配線基板の実装方法は、電気回路配線部が形成された配線基板の表面に前記電気回路配線部を部分的に被覆した硬化絶縁膜を形成する工程を含んでなる配線基板の実装方法、特に電気回路配線部が形成された配線基板の表面に前記電気回路配線部を部分的に被覆した硬化絶縁膜を形成し次いで該硬化絶縁膜で覆われていない電気回路配線部に異方性導電材料によって電気的接合部を形成する工程を含んでなる配線基板の実装方法において、前記硬化絶縁膜を、有機溶媒中に有機溶媒可溶性ポリイミドシロキサン、エポキシ化合物および多価イソシアネート化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種の硬化性成分、およびシリコーン消泡剤を含んでなり、前記有機溶媒が(A)グライム類からなる溶媒と(B)アミド類、ピロリドン類、アノン類、及びそれらの混合物からなる群から選択された溶媒とを重量比((A)/(B))が85/15〜99/1の割合で混合した混合有機溶媒からなるポリイミドシロキサン溶液組成物を用いて形成することを特徴とする。本発明の実装方法においては、前記特徴以外は従来周知の配線基板の実装方法に基づくものである。
【0056】
図1は、インナーリード部がチップ部品に接合され、アウターリード部がACF又はACPによって液晶装置の電極と接合されるように実装された配線基板の実施態様の一例を示す概略の断面図である。
このような配線基板の実装は概略、次の手順によっておこなわれる。
1)表面に電気回路配線2が形成されたポリイミドフィルムの絶縁基板1からなる配線基板を準備する。必要に応じて電気回路配線2の表面はスズメッキされる。
2)配線基板の表面の所定部分に、ポリイミドシロキサン溶液組成物をスクリーン印刷によって塗布し、得られた塗膜を50℃〜210℃にて加熱処理して硬化絶縁膜3を形成する。この加熱処理は通常は160℃程度の温度であるが、既にスズメッキされた場合は120℃程度の比較的低い温度で加熱処理が行なわれる。
3)硬化絶縁膜で覆われていない配線の表面にスズメッキ層4を形成する。既にスズメッキされた場合はこの工程が省略される場合もある。
4)チップ部品5を、硬化絶縁膜で覆われていない配線部(インナーリード部)に金バンプ6などによって電気的に接合する。
5)ポリイミドフィルムの絶縁基板1とチップ部品5の隙間にエポキシ樹脂などの硬化性樹脂からなるアンダーフィル材7を注入し、通常150℃〜160℃程度の温度で加熱処理して硬化させる。
6)液晶パネルの基板10の電極9を、ACF又はACP8を用いて、配線基板の硬化絶縁膜で覆われていない配線部(アウターリード部)に熱圧着して接合する。
【0057】
本発明の配線基板の実装方法は、前記手順2)のポリイミドシロキサン溶液組成物が、本発明のポリイミドシロキサン溶液組成物であることを特徴としている。本発明においては、ポリイミドシロキサン溶液組成物の泡抜け性が良好(短時間で泡抜けする)であるから、スクリーン印刷した塗膜の泡抜けに長時間を必要としないので、前記手順2)の作業性が著しく良好になり、且つ均質な硬化絶縁膜を容易に得ることができる。そして好ましくは、硬化絶縁膜は、前記手順5)で用いられるアンダーフィル材との密着性が良好であり、前記手順6)で形成される液晶パネル基板10の電極9と配線基板の硬化絶縁膜で覆われていない配線部との接合は十分な接着力を有して信頼性が高い電気的接合となる。
【実施例】
【0058】
以下、実施例及び比較例を示して本発明についてさらに説明をする。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0059】
本発明において泡抜け性は、スクリーンマスク(SUS#180、乳剤厚20μm、メッシュ厚150μm)を用いて、5mm×15mmの大きさの透明PETフィルム(東レ株式会社製ルミラーS105)上に、スキージ(硬度:70、材質:シリコーンゴム)を用いネオロング社製の印刷機にてポリイミドシロキサン溶液組成物を印刷して塗膜を形成し、その塗膜を10倍光学顕微鏡にて透過光下に観察した。印刷機で塗膜を形成したことによって塗膜内には微細な泡が発生するが、透明フィルムによる透過光によって、細かな泡が完全になくなるまでの時間を測定した。測定は3回行いその平均値を泡抜け時間とした。
【0060】
本発明においてハジキ評価用サンプルはスクリーンマスク(SUS#180、乳剤厚20μm、メッシュ厚150μm)とスキージ(硬度:70、材質:シリコーンゴム)とを用いて、35μm厚電解銅箔(福田金属箔粉工業社製CF−T8)の鏡面上にポリイミドシロキサン溶液組成物を塗布し、次いで150℃の温度で1時間加熱処理して硬化後、スズメッキ処理してハジキ評価用サンプルを作製した。
ハジキ評価は和光純薬工業製のぬれ張力試験用混合液No.35.0を用い、スポイトにて硬化絶縁膜際から1cm付近に0.1mL垂らし、スポイトの先でぬれ張力試験用混合液を硬化絶縁膜際に近づけて、硬化絶縁膜の際を挟んで硬化絶縁膜表面から銅箔表面をぬらす。その後で、硬化絶縁膜の際からぬれ張力試験用混合液がはじかれた銅箔表面の距離を測定した。はじかれた距離が大きいほどハジキ度合が大きい。
【0061】
本発明において残存溶媒率は、150℃の温度で60分間加熱処理して得られた硬化絶縁膜の所定量を精秤してバイアル瓶に封入後、230℃の温度で2時間加熱処理後、瓶内の気体を0.5mLのシリンジで抜き出し、GC−MS分析法によって測定した。残存溶媒率は(残存溶媒の質量)/(硬化絶縁膜試料の質量)をppm単位で示した。
【0062】
本発明において硬化絶縁膜の封止材料との密着性は次のようにして評価した。35μm厚電解銅箔(福田金属箔粉工業社製CF−T8)の鏡面上にポリイミドシロキサン溶液組成物を塗布し、80℃で30分間次いで150℃で60分間加熱処理して、硬化絶縁膜を得た。この硬化絶縁膜上にICチップ封止材料CEL−C−5020(日立化成工業株式会社製)を厚さ1mm、直径6mm程度の円状になるように滴下して塗布し160℃で2時間加熱処理して硬化させサンプルとした。このサンプルを手で折り曲げ、封止材料のはがれ具合を観察した。評価は、観察の結果に基づいて、全面が硬化絶縁膜で凝集破壊を起こした場合及び硬化絶縁膜/銅箔界面剥離の場合を良好とし、全面が硬化絶縁膜/封止材料界面剥離の場合を不良とし、全面が良好を4/4、全面が不良を0/4とし、それ以外の場合は、良好な面積と不良な面積に応じて1/4〜3/4と定めた。
【0063】
以下の各例で用いた材料は次のとおりである。
〔エポキシ化合物〕
エピコート828:ジャパンエポキシレジン社製、エポキシ樹脂、エポキシ当量:190
エピコート157S70:ジャパンエポキシレジン社製、エポキシ樹脂、エポキシ当量:210
〔多価イソシアネート化合物〕
B−882N:タケネートB−882N、三井武田ケミカル社製、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートブロック化体、ブロック化剤:メチルエチルケトオキシム
〔消泡剤〕
KS538:信越化学工業社製、シリコーン消泡剤(置換基の90%程度がメチル基からなり10%程度が親水性のポリオキシアルキレン基であるポリシロキサン含有した自己乳化コンパウンド型シリコーン消泡剤)
TSA−750:東芝シリコーン社製、シリコーン消泡剤(ジメチルポリシロキサンからなるコンパウンド型シリコーン消泡剤)
〔硬化触媒〕
2E4MZ:四国化成工業社製、2−エチル−4−メチルイミダゾール
DBU:アルドリッチ社製、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン
〔無機フィラー〕
アエロジル#50:日本アエロジル社製、平均粒径30nm
アエロジル#130:日本アエロジル社製、平均粒径16nm
タルクP−3:日本タルク社製タルク、ミクロエースP−3、平均粒径5.1μm
硫酸バリウムB−30:堺化学工業社製硫酸バリウム、平均粒径0.3μm
【0064】
〔参考例1〕
ポリイミドシロキサン溶液の製造:
容量500mLのガラス製フラスコに、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物47.1g(0.16モル)、溶媒のトリグライム(以下、TGと略記することもある)90gを仕込み、窒素雰囲気下、180℃で加熱撹拌した。α,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン(アミノ当量460)125.1g(0.136モル)、TG40gを加え、180℃で60分加熱撹拌した。更にこの反応溶液に3,3’−カルボキシ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン(MBAA)6.9g(0.024モル)及びTG39gを加え、180℃で10時間加熱撹拌した後、濾過を行った。得られたポリイミドシロキサン反応溶液は、ポリマ−固形分濃度67重量%、ηinhが0.20の溶液であった。イミド化率は実質的に100%であった。
【0065】
〔実施例1〕
ガラス製容器に、参考例1で得たポリイミドシロキサン溶液30.0gにTG8gとシクロヘキサノン2g(その結果、ポリイミドシロキサン固形分100質量部に対してTG90質量部とシクロヘキサノン10質量部となる。以下同様。)、エポキシ樹脂のエピコート157S70を0.38g(2質量部)、硬化触媒の2E4MZを0.04g(0.2質量部)とDBUを0.16g(0.8質量部)と、シリコーン系消泡剤のKS531を0.9g(5質量部)、無機充填材のアエロジル50を0.8g(4質量部)とアエロジル130を3.3g(16.5質量部)と、タルクのミクロエースP−3を9.1g(45.5質量部)と、硫酸バリウムB−30を4.5g(22.5質量部)とを仕込み、25℃で2時間撹拌して均一に混合したポリイミドシロキサン溶液組成物を得た。
このポリイミドシロキサン溶液組成物の組成、泡抜け性、硬化絶縁膜の残存溶媒率、ハジキ距離の測定結果を表1に示す。
【0066】
〔実施例2〜7〕
実施例1と同様にして表1に示した組成からなるポリイミドシロキサン組成物を得た。これらのポリイミドシロキサン組成物の組成、泡抜け性、硬化絶縁膜の残存溶媒率、ハジキ距離の測定結果を表1に示す。
【0067】
〔比較例1〜4〕
実施例1と同様にして表1に示した組成からなるポリイミドシロキサン組成物を得た。これらのポリイミドシロキサン組成物の組成、泡抜け性、硬化絶縁膜の残存溶媒率、ハジキ距離の測定結果を表1に示す。比較例1〜3ではいずれも溶液組成物の泡抜け性に更に改良の余地があった。また比較例4では効果絶縁膜の残存溶媒率が極めて高いものであった。
【0068】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、電気回路配線部が形成された配線基板の表面に前記電気回路配線部を部分的に被覆した硬化絶縁膜を形成する工程を含んでなる改良された配線基板の実装方法、特に、ポリイミドシロキサン溶液組成物によって硬化絶縁膜を形成した配線基板へ異方性導電材料によって電子部品を実装する際の改良された実装方法、及びそのような実装方法に好適なポリイミドシロキサン溶液組成物を提供することができる。この実装方法によれば、泡抜け性が改良されているので、スクリーン印刷等によって塗膜を形成し次いで加熱処理によって硬化絶縁膜を得る工程が極めて容易になり、作業効率を向上でき、且つ均質な硬化絶縁膜を容易に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】:インナーリード部がチップ部品に接合され、アウターリード部がACFやACPによって液晶装置の電極と接合されて実装された配線基板の概要の断面図である。
【符号の説明】
【0071】
1:ポリイミドからなる絶縁基板
2:銅箔で形成された電気回路配線
3:硬化絶縁膜(保護膜)
4:スズメッキ
5:ICチップ部品
6:金バンプ
7:アンダーフィル
8:異方性導電フィルム又は異方性導電ペースト
9:液晶パネル基板の電極
10:液晶パネル基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気回路配線部が形成された配線基板の表面に前記電気回路配線部を部分的に被覆した硬化絶縁膜を形成する工程を含んでなる配線基板の実装方法において、
前記硬化絶縁膜を、有機溶媒中に有機溶媒可溶性ポリイミドシロキサン、エポキシ化合物及び多価イソシアネート化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種の硬化性成分、およびシリコーン消泡剤を含んでなり、前記有機溶媒が(A)グライム類からなる溶媒と(B)アミド類、ピロリドン類、アノン類及びそれらのいずれかの混合物からなる群から選択された溶媒とを重量比((A)/(B))が85/15〜99/1の割合で混合した混合有機溶媒からなるポリイミドシロキサン溶液組成物を用いて形成することを特徴とする配線基板の実装方法。
【請求項2】
電気回路配線部が形成された配線基板の表面に前記電気回路配線部を部分的に被覆した硬化絶縁膜を形成し、次いで前記硬化絶縁膜で覆われていない電気回路配線部に異方性導電材料によって電気的接合部を形成する工程を含んでなる配線基板の実装方法において、
前記硬化絶縁膜を、有機溶媒中に有機溶媒可溶性ポリイミドシロキサン、エポキシ化合物及び多価イソシアネート化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種の硬化性成分、およびシリコーン消泡剤を含んでなり、前記有機溶媒が(A)グライム類からなる溶媒と(B)アミド類、ピロリドン類、アノン類及びそれらのいずれかの混合物からなる群から選択された溶媒とを重量比((A)/(B))が85/15〜99/1の割合で混合した混合有機溶媒からなるポリイミドシロキサン溶液組成物を用いて形成することを特徴とする前記請求項1に記載の配線基板の実装方法。
【請求項3】
ポリイミドシロキサン溶液組成物の有機溶剤可溶性ポリイミドシロキサンが、(a)テトラカルボン酸化合物と、一般式(1)で示されるジアミノポリシロキサン30〜95モル%、極性基を有する芳香族ジアミン0.5〜40モル%及び前記ジアミン以外のジアミン化合物0〜69.5モル%からなるジアミン化合物とから得られる有機溶媒可溶性ポリイミドシロキサンであることを特徴とする前記請求項1〜2のいずれかに記載の配線基板の実装方法。
【化1】

(式中、Rは2価の炭化水素基又は芳香族基を示し、Rは独立に1価の炭素水素基又は芳香族基を示し、n1は1〜50の整数を示す。)
【請求項4】
ポリイミドシロキサン溶液組成物が、有機溶剤可溶性ポリイミドシロキサン100質量部に対して、エポキシ化合物及び多価イソシアネート化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種の硬化性成分を1〜50質量部含有することを特徴とする前記請求項1〜3のいずれかに記載の配線基板の実装方法。
【請求項5】
ポリイミドシロキサン溶液組成物が、有機溶剤可溶性ポリイミドシロキサン100質量部に対して、シリコーン消泡剤を0.1〜10質量部含有することを特徴とする前記請求項1〜4のいずれかに記載の配線基板の実装方法。
【請求項6】
ポリイミドシロキサン溶液組成物の混合溶媒の(A)グライム類からなる溶媒が、トリグライム、ジグライム又はそれらの混合物であることを特徴とする前記請求項1〜5のいずれかに記載の配線基板の実装方法。
【請求項7】
ポリイミドシロキサン溶液組成物の混合溶媒の(B)アミド類、ピロリドン類、アノン類及びそれらのいずれかの混合物からなる群から選択された溶媒が、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン又はそれらのいずれかの混合物であることを特徴とする前記請求項1〜6のいずれかに記載の配線基板の実装方法。
【請求項8】
有機溶媒中に、有機溶媒可溶性ポリイミドシロキサン、エポキシ化合物及び多価イソシアネート化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種の硬化性成分、およびシリコーン消泡剤を含んでなり、前記有機溶媒が(A)グライム類からなる溶媒と(B)アミド類、ピロリドン類、アノン類及びそれらのいずれかの混合物からなる群から選択された溶媒とを重量比((A)/(B))が85/15〜99/1の割合で混合した混合有機溶媒からなることを特徴とする泡抜け性が改良されたポリイミドシロキサン溶液組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2007−173266(P2007−173266A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−364298(P2005−364298)
【出願日】平成17年12月19日(2005.12.19)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】