説明

酸化物半導体用電極、その形成方法、及びその電極を備えた酸化物半導体装置

【課題】薄膜トランジスタなどの素子動作層をなす導電性インジウム含有酸化物半導体層に電気的接触抵抗が小さい金属電極を形成できるようにする。
【解決手段】インジウム含有酸化物半導体層とその層の上方に設けた素子動作電流を流通させる金属電極層との間に、酸化物半導体層をなすインジウム酸化物などを化学的に還元でき、且つ易酸化性の金属からなる金属膜を素材とした金属酸化物層と金属層とを設け、更に、金属酸化物層と金属層との境界には還元されたインジウムを蓄積したインジウム濃化層を設ける構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜トランジスタなどの酸化物半導体装置を作製するためのインジウムなどを含む導電性酸化物半導体用の電極、及びその形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、導電性の酸化物半導体は、光学的に透明な透明電極や薄膜トランジスタ(英略称:TFT)などの酸化物半導体装置の動作(チャネル:channel)層を構成する材料として注目されている(特許文献1〜7参照)。酸化物半導体を動作層として用いた薄膜トランジスタは、表示装置の一種である液晶表示装置(英略称:LCD)や有機エレクトロルミネッセンス(英略称:EL)装置へ盛んに応用されている。また、酸化物半導体を構成要素として含む透明電極は、ディスプレイ(display)パネル(panel)などの2次元或いは3次元表示装置や携帯通信機器用のタッチ(touch)パネルなどに応用されている。
【0003】
酸化物半導体のための配線及び電極は信号伝達のRC遅延を小さくするなどの目的で、導電性が高く、電気的に低抵抗な金属材料から構成されている。従来では、例えばアルミニウム(元素記号:Al)やチタン(元素記号:Ti)(非特許文献1参照)、或いはモリブデン(元素記号:Mo)(非特許文献2参照)から構成されている。また、チタンやアルミニウムと珪素(元素記号:Si)の合金の異種金属層を積層させた電極や配線が用いられている(特許文献1参照)。最近では、より低い電気抵抗の銅(元素記号:Cu)から酸化物半導体用の電極を形成する技術が知られている(特許文献8参照)。
【0004】
例えば、液晶ディスプレイ装置(英略称:LCD)などに用いられる薄膜トランジスタには、銅合金を用いたソース電極及びドレイン電極のオーミック(Ohmic)電極や銅配線が用いられている(特許文献8及び9参照)。特許文献10には、銅に適切な添加元素を添加した銅合金を用いて、その添加元素の形成する金属酸化膜が銅の酸化を抑止して電気的接触抵抗の小さな銅オーミック電極やRC遅延の小さな銅配線をもたらす技術が開示されている。上記の適切な添加元素は、銅より酸化物の形成エネルギーを小とする金属であり、例として、マンガン(元素記号:Mn)が挙げられている(特許文献10参照)。
【0005】
非特許文献3には、導電性の酸化物半導体を動作(チャネル)層として用いた薄膜トランジスタに銅からなる電極(銅電極)を形成する技術を開示されている。具体的には、非晶質のガリウム・インジウム・亜鉛複合酸化物(英略称:IGZO)半導体層を動作層とする薄膜トランジスタに銅・マンガン(CuMn)合金を用いて銅電極を形成する技術である(非特許文献3参照)。銅・マンガン合金を用いてIGZOなどのインジウム含有酸化物半導体に銅電極を形成する場合、酸化物半導体と銅電極の接合領域には、酸化マンガン層が形成されることが知られている(非特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】 特開2010−140919号公報
【特許文献2】 特開2010−093240号公報
【特許文献3】 特開2010−080952号公報
【特許文献4】 米国特許出願公開第2008/0258143号公報
【特許文献5】 米国特許出願公開第2010/0090217号公報
【特許文献6】 米国特許出願公開第2010/0117073号公報
【特許文献7】 米国特許出願公開第2010/0117074号公報
【特許文献8】 特開2010−050112号公報
【特許文献9】 特開2004−163901号公報
【特許文献10】 国際公開第2006/025347号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】 Pilsang Yun,Junichi Koike,“Microstructure Analysis and Electrical Properties of Cu−Mn Electrode for Back−Channel Etching a−IGZOTFT”,第17回ディスプレイ国際ワークショップ(IDW’10)(2010.12.1.〜12.3.、福岡市、日本)、論文番号FMC2−3,プロシーディング1873〜1876頁。
【非特許文献2】 A.Sato他、アプライド フィジクス レターズ(Appl.Phys.Lett.)、133502(2009,USA).
【非特許文献3】 P.S.Yun,J.Koike,2010年春季第37回応用物理学会関係連合講演会(2010年3月17日〜3月20日)、講演番号17a−TL−4、「Cu−Mn/In−Ga−Zn−O薄膜の反応界面における組織学的分析」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
酸化物半導体に被着させた銅・マンガン合金を熱処理して銅電極を形成する上記の従来技術に依れば、銅・マンガン合金に含まれるマンガンの合金の内部から酸化物半導体側へ熱拡散に因り、銅電極と酸化物半導体との間に酸化マンガン層が形成される。この酸化マンガン層の形成に伴い、酸化物半導体から遊離して来る酸素はマンガン酸化物として捕らえられる。このため、酸化マンガン層上には、酸素含有量が少ない、即ち、電極として好適に利用できる電気抵抗の小さな銅層を残置させられる。
【0009】
しかしながら、一方で、酸化マンガンの電気抵抗は金属マンガンよりも高い。金属マンガンの電気抵抗率(20℃で1.6×10−4オーム・センチメートル(Ω・cm))であるのに対し、酸化マンガンの電気抵抗率は総じて、それよりも大である。従って、酸化物半導体について電気的接触抵抗の更に小さい銅電極を得るには、電極を構成する上での更なる新規で進歩的な構成を創意するのが必要である。
【0010】
本発明は、IGZO等のインジウム含有酸化物半導体に係る新規で進歩的な電極の構成技術の必要性に鑑みてなされたもので、インジウム含有酸化物半導体について、電気的接触抵抗の小さな酸化物半導体用電極としての銅電極をもたらすための構成を提示するものである。併せて、その酸化物半導体用電極の形成方法を提示し、また、その酸化物半導体用電極を備えた酸化物半導体装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
即ち、[1]本発明の第1の発明は、インジウムを含む酸化物半導体材料からなる酸化物半導体層と、その酸化物半導体層上に設けられた金属の酸化物からなる金属酸化物層と、その金属酸化物層上に設けられた金属からなる電極層とを備えた酸化物半導体用の電極にあって、金属酸化物層と電極層の中間の位置に、その金属酸化物層をなす金属からなる層(金属層)が挿入されており、金属酸化物層と金属層との中間には、インジウムが濃化された層(インジウム濃化層)が設けられている、ことを特徴とする酸化物半導体用電極である。
【0012】
[2]本発明の第2の発明は、上記の[1]項に記載の発明の構成に加えて、金属層をなす金属がインジウムを含む酸化物半導体層を構成する酸化物を化学的に還元する金属から構成されている、ことを特徴とする酸化物半導体用電極である。
【0013】
[3]本発明の第3の発明は、上記の[2]項に記載の発明の構成に加えて、金属層の内部で金属層を構成する金属の濃度が金属酸化物層に向けて減少している、ことを特徴とする酸化物半導体用電極である。例えば、チタンからなる金属層の内部において、チタンの原子濃度がチタン金属層の表面から、チタン酸化物からなる金属酸化物層に向けて単調に減少している、ことを特徴とする酸化物半導体用電極である。
【0014】
[4]本発明の第4の発明は、上記の[3]項に記載の発明の構成に加えて、金属酸化物層の内部で金属酸化物を構成する金属の濃度が一定となっている、ことを特徴とする酸化物半導体用電極である。例えば、マグネシウム酸化物からなる金属酸化物層の内部において、マグネシウムの原子濃度が同層内の深さ方向で一定となっている、ことを特徴とする酸化物半導体用電極である。
【0015】
[5]本発明の第5の発明は、上記の[4]項に記載の発明の構成に加えて、金属酸化物層の内部で金属酸化物を構成する金属の濃度が酸化物半導体層との境界から酸化物半導体層の層厚の中央に向けて減少している、ことを特徴とする酸化物半導体用電極である。例えば、マンガン酸化物からなる金属酸化物層の内部において、マンガンの原子濃度が、例えばIGZO酸化物半導体層の層厚の中央に向けて単調に減少している、ことを特徴とする酸化物半導体用電極である。
【0016】
[6]本発明の第6の発明は、上記の[5]項に記載の発明の構成に加えて、 金属酸化物を構成する金属の濃度が酸化物半導体層との境界から酸化物半導体層の層厚の中央に向けて減少する厚さに対する度合いが、金属層の内部で金属層を構成する金属の濃度が金属酸化物層に向けて減少する厚さに対する度合いよりも小さい、ことを特徴とする酸化物半導体用電極である。
【0017】
[7]本発明の第7の発明は、上記の[6]項に記載の発明の構成に加えて、 金属層がマンガン、チタン、アルミニウム、マグネシウムから構成されている、ことを特徴とする酸化物半導体用電極である。
【0018】
[8]本発明の第8の発明は、上記の[7]項に記載の発明の構成に加えて、 金属層がマンガンから構成されている、ことを特徴とする酸化物半導体用電極である。
【0019】
[9]本発明の第9の発明は、上記の[1]乃至[8]項の何れか1項に記載の発明の構成に加えて、酸化物半導体層の層厚についての中央を中心としてインジウムの濃度の分布が対称となっている、ことを特徴とする酸化物半導体用電極である。インジウムの原子濃度が酸化物半導体層の層厚についての中央を線対称の中心として正規分布曲線状に変化している、ことを特徴とする酸化物半導体用電極である。
【0020】
[10]本発明の第10の発明は、上記の[9]項に記載の発明の構成に加えて、 酸化物半導体層層の層厚についての中央でインジウムの濃度が極大となっている、ことを特徴とする酸化物半導体用電極である。
【0021】
[11]本発明の第11の発明は、上記の[10]項に記載の発明の構成に加えて、インジウム濃化層の内部におけるインジウムの濃度の分布が金属層と金属酸化物層との境界を中心として対称となっている、ことを特徴とする酸化物半導体用電極である。例えば、その境界を線対称の中心として、インジウムの原子濃度が正規分布曲線状の分布を呈している、ことを特徴とする酸化物半導体用電極である。
【0022】
[12]本発明の第12の発明は、上記の[11]項に記載の発明の構成に加えて、インジウム濃化層のインジウムの濃度が金属層と金属酸化物層との境界で極大となっている、ことを特徴とする酸化物半導体用電極である。
【0023】
[13]本発明の第13の発明は、上記の[12]項に記載の発明の構成に加えて、インジウム濃化層のインジウムの極大の濃度が金属層の内部のインジウムの濃度より大である、ことを特徴とする酸化物半導体用電極である。
【0024】
[14]本発明の第14の発明は、上記の[13]項に記載の発明の構成に加えて、インジウム濃化層のインジウムの極大の濃度が酸化物半導体層の内部でのインジウムの極大の濃度がより小である、ことを特徴とする酸化物半導体用電極である。
【0025】
[15]本発明の第15の発明は、上記の[14]項に記載の発明の構成に加えて、インジウム濃化層の内部には、原子状のインジウムが含まれている、ことを特徴とする酸化物半導体用電極である。
【0026】
[16]本発明の第16の発明は、上記の[15]項に記載の発明の構成に加えて、インジウム濃化層の内部には、金属層を構成する金属とインジウムとの化合物が含まれている、ことを特徴とする酸化物半導体用電極である。例えば、マンガンからなる金属層にあって、例えば組成をMnInとするマンガン・インジウム化合物を含むインジウム濃化層を備えている、ことを特徴とする酸化物半導体用電極である。
【0027】
[17]本発明の第17の発明は、インジウムを含む酸化物半導体材料からなる酸化物半導体層と、その酸化物半導体層上に設けられた金属の酸化物からなる金属酸化物層と、その金属酸化物層上に設けられた金属からなる金属層と、その金属層上に設けられた金属からなる電極層とを備えた酸化物半導体用の電極の形成方法であって、(1)インジウムを含む酸化物半導体層を形成する工程と、(2)酸化物半導体層上に金属膜を形成する工程と、(3)金属膜を加熱して、金属酸化物層の表面側に、金属膜の一部が酸化物半導体層の内部の酸素により酸化されてなる金属酸化物層を形成すると共に、金属膜の上部を酸化物半導体層の内部の酸素により酸化させずに金属層として残存させ、併せて同時に金属酸化物層と金属層との中間にインジウムが濃化されたインジウム濃化層を形成する工程と、(4)金属層上に電極層を形成する工程、を含む、ことを特徴とする酸化物半導体用電極の形成方法である。
【0028】
[18]本発明の第18の発明は、上記の(2)の工程において、金属層を、マンガン(元素記号:Mn)、チタン(元素記号:Ti)、アルミニウム(元素記号:Al)、マグネシウム(Mg)から形成する、ことを特徴とする酸化物半導体用電極の形成方法である。
【0029】
[19]本発明の第19の発明は、上記の[18]項に記載の発明の構成に加えて、金属層を、マンガンから形成する、ことを特徴とする酸化物半導体用電極の形成方法である。
【0030】
[20]本発明の第20の発明は、上記の[17]乃至[19]の何れか1項に記載の発明の構成に加えて、上記の(1)並び(2)の工程を経由して形成した金属膜上に、上記の(5)の工程により電極層を形成した後に、上記の(3)の工程の加熱処理をする、ことを特徴とする酸化物半導体用電極の形成方法である。
【0031】
[21]本発明の第21の発明は、上記の[17]又は[20]に記載の発明の構成に加えて、金属膜を、圧力を1×10−2パスカル(圧力の単位:Pa)以下とする真空中で200℃以上300℃以下の温度範囲で、15分間以上90分間以下の時間での加熱処理する、ことを特徴とする酸化物半導体用電極の形成方法である。
【0032】
[22]本発明の第22の発明は、上記の[21]項に記載の発明の構成に加えて、残留ガスを不活性ガスとする真空中で加熱処理をする、ことを特徴とする、酸化物半導体用電極の形成方法である。残留ガスの主成分がアルゴン(元素記号:Ar)である高真空中で加熱処理をする、ことを特徴とする、酸化物半導体用電極の形成方法である。
【0033】
[23]本発明の第23の発明は、上記の[1]乃至[16]の何れか1項に記載の発明に係る酸化物半導体用電極を備えている、ことを特徴とする酸化物半導体装置である。
【0034】
[24]本発明の第24の発明は、上記の[17]乃至[22]の何れか1項に記載の発明に係る酸化物半導体用電極を備えている、ことを特徴とする酸化物半導体装置である。例えば、タッチパネル用途の酸化物半導体薄膜トランジスタ(TFT)である。
【0035】
[25]本発明の第25の発明は、上記の[23]又は[24]項に記載の発明の構成に加えて、酸化物半導体用電極をオーミック(Ohmic)電極として備えている、ことを特徴とする酸化物半導体装置である。例えば、酸化物半導体用電極をソース(source)電極やドレイン(drain)電極として備えている薄膜トランジスタ(TFT)である。
【発明の効果】
【0036】
本発明の第1の発明に依れば、インジウムを含む酸化物半導体材料からなる酸化物半導体層と、その酸化物半導体層上に設けられた金属の酸化物からなる金属酸化物層と、その金属酸化物層上に設けられた金属からなる電極層とを備えた酸化物半導体用の電極にあって、金属酸化物層と電極層の中間の位置に、その金属酸化物層をなす金属からなる層(金属層)を設け、更に、金属酸化物層と金属層との中間には、インジウムが濃化された層(インジウム濃化層を設けることとしたので、酸化物半導体層について電気的接触抵抗の小さな電極をもたせる。
【0037】
本発明の第2の発明に依れば、金属層を、インジウムを含む酸化物半導体層を構成する酸化物、例えば酸化インジウム(組成式Inαβ:α、β>0)を化学的に還元でき、自己は容易に酸化される金属から構成することとしたので、還元作用に因り遊離した酸素を利用して金属酸化物層を簡便に形成するのに効果的となる。併せて同時に、その金属の化学的還元作用によりインジウム濃化層に蓄積させるインジウム原子を発生させられ、電気抵抗の小さなインジウム濃化層をもたらすのに効果的となる。従って、電気的接触抵抗の小さな酸化物半導体用電極を提供するのに貢献できる。
【0038】
本発明の第3の発明に依れば、金属層の内部で金属層を構成する金属の濃度が金属酸化物層に向けて減少している、換言すれば、その様な濃度減少を生じる拡散し易い金属から金属層を構成することとしたので、易拡散性の金属を酸化物半導体層の内部へと容易に拡散でき、従って、酸化物半導体層内部で化学的還元により生じた酸素を的確に捕獲して、酸素の電極層への侵入を防ぐ金属酸化物層からなる拡散バリア(barrier)を効率的に形成できる。
【0039】
本発明の第4の発明に依れば、内部で金属酸化物を構成する金属の濃度が一定となっている金属酸化物層を用いて酸化物半導体用電極を構成することとしたので、厚さ方向に一様な組成を有する金属酸化物層を得ることができ、安定して酸素の拡散に対して障壁となる拡散バリア層をもたらせる。
【0040】
本発明の第5の発明に依れば、内部で金属酸化物を構成する金属の濃度が酸化物半導体層との境界から酸化物半導体層の層厚の中央に向けて減少している酸化物半導体層を用いて酸化物半導体用電極を構成することとしたので、金属の侵入に因り酸化物半導体層の導電性が損なわれるのを抑制でき、良好な導電性を維持した酸化物半導体層を用いた電気抵抗の小さな酸化物半導体用電極をもたらせる。
【0041】
本発明の第6の発明では、金属酸化物を構成する金属の濃度が酸化物半導体層との境界から酸化物半導体層の層厚の中央に向けて減少する厚さに対する度合いが、金属層の内部で金属層を構成する金属の濃度が金属酸化物層に向けて減少する厚さに対する度合いよりも小さくしている。即ち、組成的に一様な金属酸化物層を確実に形成するために金属層から充分な量の金属を拡散させると共に、金属酸化物層から酸化物半導体層の内部へ拡散する金属の量を減少させたので、良導性が維持された酸化物半導体層を利用してした電気抵抗の小さな酸化物半導体用電極を構成できる。
【0042】
本発明の第7の発明に依れば、金属層を、インジウムを含む酸化物半導体層をなす、例えば酸化インジウムを化学的に還元できるマンガン、チタン、アルミニウム、マグネシウムから構成することとしたので、酸素の拡散バリア層としての金属酸化物層と、併せて導電性に優れるインジウム濃化層と効率的にもたらすことができる。例えば、金属層をイオン(ion)化傾向の大きなマグネシウムから構成することとしたので、その還元作用により遊離した酸素を捕らえて酸化マグネシウムからなる金属酸化物層と、併せて還元されたインジウムを含むインジウム濃化層とを効率的にもたらせる。従って、電気的接触抵抗の小さな酸化物半導体用電極を提供できる。
【0043】
本発明の第8の発明に依れば、特に、マンガンから金属層を構成することとしたので、酸素の電極層への拡散を有効に防止できる酸化マンガンからなる金属酸化物層をもたらせる。還元に因り生じたインジウムは、酸化マンガンからなる金属酸化物層の内部を容易に通過できる。このため、インジウム濃化層へ向けてインジウムを効率的に通過させられ、インジウムが高濃度に蓄積されたインジウム濃化層をもたらせる。従って、電気的接触抵抗の小さな酸化物半導体用電極を提供できる。
【0044】
本発明の第9の発明に依れば、層厚についての中央を中心としてインジウムの濃度の分布を対称とする酸化物半導体層を用いて酸化物半導体用電極を構成することとしたので、導電性を良好に維持した酸化物半導体層を用いて酸化物半導体用電極を構成することができ、電気抵抗の小さな酸化物半導体用電極を得るに優位となる。
【0045】
本発明の第10の発明に依れば、特に、層厚についての中央でインジウムの濃度が極大となっている酸化物半導体層を用いて酸化物半導体用電極を構成することとしたので、導電性が特に良好に維持した酸化物半導体層を用いて酸化物半導体用電極を構成することができ、電気抵抗の小さな酸化物半導体用電極を得るに更に優位となる。
【0046】
本発明の第11の発明に依れば、内部におけるインジウムの濃度の分布が金属層と金属酸化物層との境界を中心として対称となっているインジウム濃化層を金属層と金属酸化物層との境界領域に配置する構成としたので、金属層と金属酸化物層との電気的接触抵抗を減少させるのに効果を上げられ、しいては、電気抵抗の小さな酸化物半導体用電極を得ることができる。
【0047】
本発明の第12の発明に依れば、インジウムの濃度が金属酸化物層と金属層の境界で極大となっているインジウム濃化層を用いて酸化物半導体用電極を構成することとしたので、金属層と金属酸化物層との電気的接触抵抗を減少させるのに特に、効果を上げられ、しいては、電気抵抗の小さな酸化物半導体用電極を得るのに貢献できる。
【0048】
本発明の第13の発明に依れば、インジウムの極大の濃度が金属層の内部のインジウムの濃度より大であるインジウム濃化層を用いて酸化物半導体用電極を構成することとしたので、金属層と金属酸化物層との電気的接触抵抗を減少させるのに殊更、効果を上げられ、しいては、電気抵抗の小さな酸化物半導体用電極を得るのに貢献できる。
【0049】
本発明の第14の発明では、インジウムの極大の濃度が酸化物半導体層の内部でのインジウムの極大の濃度がより小であるインジウム濃化層を用いて酸化物半導体用電極を構成することとした。即ち、酸化物半導体層のインジウムの濃度を、導電性を確保するために充分に維持しつつ、金属層と金属酸化物層との電気的接触抵抗を低減できるインジウム濃化層を設ける構成としたので、電気抵抗の小さな酸化物半導体用電極を得るのに得策となる。
【0050】
本発明の第15の発明では、原子状のインジウムが含まれているインジウム濃化層、例えば金属インジウムからなる濃化層を用いて酸化物半導体用電極を構成することとした。このため、インジウム濃化層を導電性の高い層とすることができ、電気的接触抵抗の特に小さな酸化物半導体用電極を提供できる。
【0051】
本発明の第16の発明では、内部に、金属層を構成する金属とインジウムとの化合物を含むインジウム濃化層を用いて酸化物半導体用電極を構成することとした。例えば、マンガンからなる金属層にあって、例えば原子状のインジウムに加えて、組成をMnInとするマンガン・インジウム化合物を含むインジウム濃化層を用いて酸化物半導体用電極を構成することとした。即ち、インジウム濃化層に導電性に優れる金属間化合物を含ませたため、電気的接触抵抗の小さな酸化物半導体用電極を提供するのに貢献できる。
【0052】
本発明の第17の発明に依れば、インジウムを含む酸化物半導体材料からなる酸化物半導体層と、その酸化物半導体層上に設けられた金属の酸化物からなる金属酸化物層と、その金属酸化物層上に設けられた金属からなる金属層と、その金属層上に設けられた金属からなる電極層とを備えた酸化物半導体用の電極の形成方法であって、金属層を加熱処理して、金属層をなす金属を酸化物半導体層の内部へと拡散させ、酸化物半導体層をなす酸化物半導体を還元させて、金属酸化物層を形成させると共に、併せて同時に、還元されたインジウムを逆に金属層側へ移動させてインジウム濃化層を形成することとしたので、金属酸化物層とインジウム濃化層とを含んでなる酸化物半導体用電極を簡便に形成できる。
【0053】
本発明の第18の発明では、上記の(2)の工程において、金属層を、マンガン、チタン、アルミニウム、又はマグネシウム(Mg)から形成することとした。このため、酸化物半導体層をなす酸化物の還元で発生する酸素を確実に捉えて金属酸化物層を形成できると共に、その還元で生じたインジウムを利用してインジウム濃化層を安定して形成できる。従って、電気的接触抵抗の小さな酸化物半導体用電極を安定して形成できる。
【0054】
本発明の第19の発明では、特にマンガンから金属層を形成することとした。このため、酸化物半導体層を構成する酸化物の還元に因り生じた酸素を確実に捕捉して電極層への酸素の侵入を防ぐための金属酸化物半導体層を形成できる。また、マンガンからなる金属酸化物層は、還元により生じたインジウムを容易に通過させることができるため、インジウムを高濃度に含むインジウム濃化層を金属酸化物層と金属層との接合領域に形成するのに寄与できる。従って、電気的接触抵抗の小さな酸化物半導体用電極を安定して形成できる。
【0055】
本発明の第20の発明では、上記の(1)並び(2)の工程を経て形成した金属膜上に、更に、上記の(5)の工程により電極層を形成した後に、上記の(3)の工程の加熱処理をすることとした。即ち、金属膜上に電極層を形成した後に加熱処理をして金属酸化物層と併せて同時にインジウム濃化層とを形成することとしたのでより簡便に金属酸化物層とインジウム濃化層とを含んでなる酸化物半導体用電極を形成できる。
【0056】
本発明の第21の発明では、金属膜を、圧力を1×10−2Pa以下とする真空中で200℃以上300℃以下の温度範囲で、15分間以上90分間以下の時間での加熱処理することとした。このため、金属膜を構成する金属の酸化物からなる金属酸化物層と、併せてインジウム濃化層とを含んでなる酸化物半導体用電極を安定して形成できる利点がある。更には、インジウムの原子の濃度を厚さ方向の中央で極大とし、且つ、その中央を中心として濃度的に対称にインジウム原子を分布させた良導性の酸化物半導体層をもたらすにも貢献できる。
【0057】
本発明の第22の発明では、不活性ガスを残留ガスの主成分とする真空中で加熱処理をする、例えば、ヘリウム、ネオン、アルゴンその他の不活性ガスを残留ガスの主成分とする高真空中で加熱処理をすることとした。このため、加熱処理時に金属膜の表面が粗雑に荒れるのを防ぐことができ、金属膜から表面の平坦性に優れる金属層が形成できるため、その上には密着性に優れる電極層を好都合に被着させられる利点がある。
【0058】
本発明の第23の発明では、本発明の物の発明に係る電気的接触抵抗の小さな酸化物半導体用電極を利用して酸化物半導体装置を構成することとしたので、酸化物半導体用電極を用いて酸化物半導体装置を構成することとしたので、例えば、消費電力の損失が少なく、長期間に亘り信頼性の高い動作を呈する酸化物半導体薄膜トランジスタなどを提供できる。
【0059】
本発明の第24の発明は、本発明により形成された酸化物半導体用電極を利用して酸化物半導体装置を構成することとしたので、電気的接触抵抗の小さな酸化物半導体用電極を有し、RC遅延が小さく、高速動作が可能な例えばタッチパネル用途の酸化物半導体薄膜トランジスタ(TFT)を提供できる。
【0060】
本発明の第25の発明では、本発明に係る電気的接触抵抗の小さな酸化物半導体用電極をオーミック電極、例えばソース電極やドレイン電極として利用して酸化物半導体装置を構成することとしたので、投入する素子動作電力に対して損失(loss)の少ない例えば、薄膜トランジスタを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】 本発明に係る電極を構成するための原型の積層構造体の断面構造を示す模式図である。
【図2】 電極となすための加熱処理を施した後の積層構造体の断面構造を示す模式図である。
【図3】 原型の積層構造体の内部の元素の分布状況を示す分析図である。
【図4】 電極となすための加熱処理を施した後の積層構造体の内部の元素の分布状況を示す分析図である。
【図5】 実施例に記載の積層構造体の一部の断面透過電子顕微鏡像である。
【図6】 実施例に記載の加熱処理後の積層構造体の一部の断面透過電子顕微鏡像である。
【図7】 積層構造体をなす金属酸化物層(マンガン酸化物層)の透過電子線回折像である。
【図8】 インジウム濃化層及びその周辺の層の内部でのインジウムの結合状態を示す分析図である。
【図9】 実施例に記載の電極の電流−電圧特性を示す図である。
【図10】 本発明に係る酸化物半導体用電極を利用して構成できる薄膜トランジスタの構造を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0062】
本発明の酸化物半導体用電極を得るための原型となる積層構造を図1に模式的に示す。図1に例示するのは、薄膜トランジスタのソース又はドレイン電極を構成する場合に原型となる積層構造体(10)である。原型の積層構造体(10)に含まれる構成物は、(1)基体(101)、(2)基体上に設けた絶縁膜(102)、(3)絶縁膜(102)上に設けたインジウムを含む酸化物半導体層(103)、(4)インジウム含有酸化物半導体層(103)上に設けた金属膜(104)と、(5)その金属膜(104)上に設けた電極層(105)である。
【0063】
基体(101)には、シリコン基板やガラス基板などを用いる。基体(101)上に設ける絶縁膜(102)は、二酸化珪素(SiO、X>0であって、X=2である。)、窒化珪素(Si、X,Y>0であって、例えばX=3、Y=4である。)、炭化酸化珪素(SiOC)その他の無機珪素化合物からなる膜である。或いは、メチル(methyl)基やエチル(ethyl)基が付加された有機珪素化合物からなる絶縁膜である。絶縁膜は、テトラエトキシシリコン(英略称:TEOS)を原料とする化学的気相堆積(英略称:CVD)法や、SiOをターゲット(target)材とする高周波スパッタ(sputter)法などの物理的気相堆積(英略称:PVD)法などで形成できる。
【0064】
酸化物半導体層(103)は、導電性の高い、インジウムを構成元素として含有する酸化物半導体から構成する。導電性があり更に、光学的に透明なインジウム含有酸化物半導体は、本発明には尚更、好適に利用できる。インジウム含有酸化物半導体とはいっても、高速のトランジスタ動作を達成するためには、より電気抵抗が小さく、移動度(mobility)の高い酸化物半導体から構成するのが望ましい。例えば、アルミニウムを含む電気抵抗の比較的に高いInAlO(0<X≦1、0<Y<1、X+Y=1)よりもInGaO(0<X≦1、0<Y<1、X+Y=1)やInZnO(0<X≦1、0<Z<1、X+Z=1)から好ましく構成できる。
【0065】
また、錫(元素記号:Sn)を一構成元素として含むインジウム・錫複合酸化物(英略称:ITO)よりも高い電子移動度を有するガリウム・インジウム・亜鉛複合酸化物(英略称:IGZO)(組成式InGaZnO:0<X≦1、0≦Y<1、0≦Z<1、X+Y+Z=1)から好ましく構成できる。IGZOとは、例えば酸化インジウム(組成式In)と酸化ガリウム(組成式Ga)と酸化亜鉛(組成式ZnO)との混合からなる3元複合酸化物((Inα(Gaβ(ZnO)γ:α、β及びγはモル(mol)分率を表し、α+β+γ=1である。)である(H.Hosono,J.Non−Cryt.Solids,352(2006),851−858.参照)。例えば、(In0.7(Ga0.1(ZnO)0.2複合酸化物である。
【0066】
酸化物半導体層(103)の厚さは、その層(103)を構成する酸化物半導体材料の電気的抵抗率を勘案して、所望の特性を得られる様に設定する必要がある。例えば、薄膜トランジスタのチャネル(channel)層として利用する場合には、所望のドレイン電流や予定するピンチオフ電圧を得るに充分な厚さとする。本発明では、後述する様に、酸化物半導体層(103)の内部に金属膜(104)を素材に加熱処理を施して金属酸化物層を形成する。従って、形成される金属酸化物層に相当する厚さ分、原型における酸化物半導体層の厚さは減る。従って、内部に金属酸化物層が形成された後においても尚、所望のドレイン電流や予定するピンチオフ電圧を得るに充分な厚さが確保される様に、予め酸化物半導体層は厚く形成しておくのが肝要である。
【0067】
予めの酸化物半導体層(103)の厚さは、加熱処理によってもたらされる金属酸化物層(201)の厚さの2倍以上とするのが適する。例えば、5ナノメートル(長さの単位:nm)の厚さの金属酸化物層(201)が形成される場合、酸化物半導体層(103)の厚さは予め、10nm以上とするのが適する。酸化物半導体層(103)の予めの厚さの1/2を超える同層(103)の表面側の領域に金属酸化物層(201)を形成するのは好ましくない。残存させる酸化物半導体層(103)の領域が狭められ、良導性のチャネル層を形成するのに不都合となるからである。
【0068】
形成する金属酸化物層の厚さは1nm以上とするのが望ましい。厚さが1nm以上であれば、酸素などの金属層或いは電極層への拡散、侵入を防止するのに充分な拡散バリア層として作用できる。一方、金属酸化物は単体金属よりも電気抵抗が総じて大きいため、金属酸化物層の厚さは20nm以下とするのが得策である。酸化物半導体を還元する働きをし、金属酸化物層を構成するのに適する後記の金属からなる金属酸化物層にあって、その層の厚さが20nmを越えると、帰結される電極の接触抵抗が急激に増加してしまう不具合を生ずる。
【0069】
酸化物半導体層(103)上に設ける金属膜(104)は、後述する金属酸化物層(201)及び金属層(202)を形成するための素材となる層である。金属膜(104)は、酸化物半導体層(103)に含まれる酸化インジウム(例えば組成式Inで表される酸化インジウム)を化学的に還元(reduction)し易い金属(記号Meで表す。)から構成する。金属Meによる反応とは例えば、次の化学反応(1)に例示する還元反応である。
Inαβ→In+Inα−1β−1+O(酸素)・・・(化学反応1)
【0070】
また、金膜(104)を構成する金属は、酸化物半導体層(103)に主体的に含まれる金属酸化物をなす金属よりも酸化され易い金属(Me)から構成する。例えば英略称IZOからなる酸化物半導体層について、同層の一構成元素であるインジウムより酸化され易い金属(Me)を用いて形成する。その金属は上記の還元化学反応(1)により生じた酸素により、次の化学反応(2)に従い容易に酸化される。
Me+O −(酸化反応)→ MeO(金属酸化物)・・・(化学反応2)
金属(Me)が酸化されることにより生成された金属酸化物(MeO)は、金属酸化物層(201)を構成するのに寄与する。
【0071】
略称IGZOなどのインジウム含有酸化物半導体からなる酸化物半導体層(103)上に設ける金属膜(104)は、その酸化物半導体層をなす酸化物半導体を化学的に還元(reduction)する金属から構成するのが望ましい。例えばIGZOを還元する作用を有する金属を用いて形成する。酸化物半導体への還元作用を発揮する金属を用いれば、併せて簡便に金属酸化物層を形成できる利点がある。酸化物半導体層上に、酸化物半導体に還元反応を起こす金属からなる層を形成した後、還元反応を促進するための加熱処理をする。加熱に因り還元反応はより進み、還元により遊離する酸素の量が増えるため、金属層は容易に酸化され、金属酸化物層が簡便に形成されることとなる。
【0072】
このことからして、金属膜は酸化され易いマンガン、チタン、アルミニウム、マグネシウムから構成するのが好ましい。これらは、何れも、インジウムより酸化物の形成エンタルピーを小とする金属である。即ち、換言すれば、インジウム含有酸化物半導体層を主体的になすインジウムを効率的に還元するのに適する金属であるからである。併せて、その易酸化性により、還元反応によってインジウム酸化物から離脱してくる酸素原子を優先的に捕獲して金属酸化物層を形成するのに適するからである。
【0073】
因みに、金属酸化物の標準生成エンタルピー(ΔH)は、酸化マグネシウム(組成式:MgO)にあっては、−(マイナス)601.8KJ/molである。酸化チタン(組成式:TiO)にあっては、−519.0KJ/molである。また、二酸化マンガン(組成式:MnO)にあっては、−519.7KJ/molである。これらの金属のΔHの値は、例えば英略称IGZOからなる酸化物半導体層をなす酸化物を構成する金属構成元素の中でインジウムと略同等の小さなΔHを有するガリウムよりも低い値である。
【0074】
金属酸化物の標準生成エンタルピー(ΔH)からして、上記の金属の中では、マグネシウムが最も酸化され易い。換言すれば、酸化物半導体層をなすインジウム酸化物を化学的に還元し、上記の化学反応(1)により原子状のインジウム(In)、酸素(O)や結合する酸素原子の数が減少した、言い換えれば、酸素の空孔(vacancy)との結合数を増したインジウム不飽和酸化物(Inα−1β−1)を発生させるに優位となる。一方で、マンガンのΔHは、マグネシウムのよりより大であるものの、上記の化学還元反応により生じた原子状のインジウムを通過させるに都合の良い金属酸化物層を形成できる。従って、金属膜(104)をマンガンから構成し、そのマンガン膜を素材として金属酸化物層(201)としてのマンガン酸化物層を形成することとすると、後に、インジウム濃化層(203)を好都合に形成できる。
【0075】
金属膜(104)上には、例えば薄膜トランジスタを動作させるための素子動作電流を流通させるために電極層(105)を設ける。電極層(105)は金属酸化物などの電気抵抗の比較的高い材料からではなく、電気抵抗の小さな合金や純粋な金属から構成するのが適する。特に、電気抵抗が小さく、且つ金属酸化物層(201)をなすこととなる金属膜(104)の金属より酸化されがたい金属から構成するのが好ましい。上記の還元化学反応(1)により発生した酸素が侵入して、金属が酸化され、結果として電気抵抗の高い金属酸化物から電極層が構成されることを回避するためである。例えば、金属膜(104)をマンガンから構成し、その上に銅・マンガン合金膜又は銅膜を被着させて、電極層(105)を純粋な銅から形成する(純粋な銅の電気抵抗率は1.6×10−6Ω・cmである)。
【0076】
本発明では、上記の原型をなす積層構造体に加熱処理を施して、小さな電気的接触抵抗を有する酸化物半導体用の電極を構成する。図2にその加熱処理を経た後の積層構造体(20)の断面構造を模式的に示す。図1に図示したのと同一の構成要素は、図2に於いても同一の図番で示してある。図2に示す加熱処理後に於ける積層構造体(20)に於ける特徴的な構成要素は、金属膜(104)を素材として形成した金属酸化物層(201)と、その金属酸化物層(201)と金属膜(104)を残存させてなる金属層(202)と接合領域に形成したインジウム濃化層(203)である。
【0077】
金属酸化物層(201)を形成するための加熱処理は、金属膜(図1の(104))をなす金属を、酸化物半導体層(103)の内部へと拡散させ、金属膜(104)と接合する側の酸化物半導体層(103)内の上部の領域に金属酸化物層(201)を形成するために行うものである。また、この加熱は、金属膜(104)を構成する金属元素の全てを酸化物半導体層(104)に拡散、移動させるのではなく、一部の金属元素を拡散せずに残留させられる条件下で行うのが望ましい。金属酸化物層(201)と併せて、金属膜(104)から金属層(202)を同時に形成でき得て利便となるからである。
【0078】
加熱処理により、酸化物半導体層(104)の内部に金属酸化物層(201)を形成した場合、金属酸化物層(201)の層厚に相当する分だけ酸化物半導体層(104)の厚さは減るが、金属酸化物層(201)と加熱処理後でも残存する酸化物半導体層(104)の合計の厚さは、原型における酸化物半導体(104)の厚さと然して変わらない。一金属膜を素材として、金属層(202)と金属酸化物層(201)とを形成する本発明に依ってもたらされる一つの特徴でもある。そうではなく、酸化物半導体層と金属酸化物層とを各別に形成する場合は、酸化物半導体層と金属酸化物層の合計の厚さは両層の厚さの合計となるのは至極、当然のことである。
【0079】
更には、残留した金属からなる金属層(201)が多結晶層となる条件下で加熱を施すのが望ましい。非晶質(amorphous)よりも多結晶からなる金属酸化物層(201)の電気抵抗は小さいため、電気的接触抵抗の小さな酸化物半導体用電極が得られ易いからである。単結晶からなる金属酸化物層は、多結晶酸化物半導体層よりも小さな電気抵抗を呈すると察せられる。しかし、一般には非晶質である酸化物半導体層に接して単結晶の金属酸化物層を形成するには、過酷な条件での加熱が必要となる。そのため、却って、酸化物半導体層に含まれるインジウムなどが抜けて酸化物半導体層(103)の電気抵抗が不必要に増加してしまう不具合を生ずる。
【0080】
金属膜(103)をなす一部の金属元素を拡散させて酸化物半導体層(103)の上部表面側の領域に多結晶からなる金属酸化物層(201)を形成し、(2)併せて同時に、拡散せずに残留した金属から金属層(202)形成するのに適するのは、真空雰囲気中で200℃以上300℃以下の温度範囲で、処理時間にして15分間以上90分間以下の加熱処理である。特に、圧力を圧力が1×10−2Pa以下である真空中での加熱が適する。
【0081】
金属膜(103)を形成した後、電極層(105)を形成する以前に、酸素(分子式:O)を含む不活性ガス、例えばアルゴン(元素記号:Ar)雰囲気内で加熱をすることもできる。しかし、金属膜を形成した後に、その雰囲気で加熱をすれば、残留した金属からなる金属層(202)が酸化され、電気抵抗の高い金属酸化物層へと変換されてしまい、小さな電気的接触抵抗をもたせる構成からなる酸化物半導体用電極の形成が阻害される。電極層(105)を形成した後に、その雰囲気で加熱処理した場合にあっても、雰囲気内に含まれる酸素により、電極層(105)をなす金属は酸化され、電気抵抗の大きな金属酸化物から電極層(105)が構成されることとなり、小さな電気的接触抵抗をもたせる酸化物半導体用電極を構成するに支障を来たす。
【0082】
本発明で提示する真空中での加熱処理に依れば、加熱処理を施す時期に拘わらず、金属層(202)及び電極層(105)が酸化されるのを抑制できる。このため、金属層(202)が、電極層(105)から素子動作電流を金属酸化物層(201)へより良く流通させる導電層として作用させるのに効果が奏される。逆に、酸素を含む雰囲気内で金属膜(104)を加熱して、金属膜(104)の全体を半ば強制的に酸化して金属酸化物層(201)を形成する手段も有り得る。しかし、この技術手段では、電極層(105)との電気抵抗を減少させる役目を果たす金属層(202)を金属酸化物層(201)上に、加熱処理後に改めて設ける必要が生じ、工程的に煩雑となる。
【0083】
本発明が提示する加熱処理によってもたらされる別の利点は、金属層(202)との接合する領域に、インジウムの濃度が周辺より高いインジウム濃化層(203)を形成できることにある。インジウム濃化層(203)は、上記の化学反応(1)により還元され、金属酸化物層(201)の内部を通過して来るインジウムが局所的に蓄積することにより形成される。
【0084】
加熱処理前後での積層構造体の内部の元素の深さ方向の分布の状況を対比させながら、インジウム濃化層(203)が形成される過程を説明する。図3は加熱処理前の原型の積層構造体の、また図4は加熱処理後の積層構造体(図2の図番20参照)の内部での元素の分布の状況を各々、示す。原型の積層構造体とは、元素分析を簡便に果たすために、図1の図番10に図示する積層構造体にあって電極層(105)を除去した構造体である。加熱処理後の積層構造体とは、同じく元素分析を簡便に果たすために、図2の図番20に示す積層構造体から電極層(105)を除去した構造体である。
【0085】
原型の積層構造体をなす絶縁層はTEOSを原料として形成した酸化珪素(層厚=45nm)から、酸化物半導体層はIGZO(層厚=100nm)から、また、加熱処理後に金属層と金属酸化物層とをなすこととなる金属からなる金属膜(層厚=100nm)はマンガンから構成されている。加熱処理は、圧力を6.0×10−4Paとする真空中で、温度250℃で、1時間に亘り実施している。
【0086】
先ず、加熱処理の前後でのマンガンの原子濃度の変化をみてみる。金属膜の内部のマンガンの原子濃度は、加熱処理前では略一定である(図3参照)。マンガンを酸化物半導体層の内部へと拡散させるための加熱処理後では、金属膜の内部のマンガンの原子濃度は、酸化物半導体層側に向けて単調に減少している。また、加熱処理後では、拡散金属膜と接する側の酸化物半導体層の表面の近傍に、拡散したマンガンを含む領域が形成されている。マンガンを含む領域が形成されるのは、上記の条件下での加熱では、酸化物半導体層(厚さ=100nm)の表面から同層の層厚の半分にあたる約50nmの深さの領域である。
【0087】
その領域の構成を、制限視野電子線回折(英略称:SED)法などで解析すると、マンガン酸化物からなる金属酸化物層が形成されているのが知れる。この金属酸化物層は、金属膜から拡散して来るマンガンが酸化物半導体層をなすインジウム酸化物などを上記の化学反応(1)に従い化学的に還元し、その反応により生じた酸素と結合して形成されると示唆される。また、この領域に存在するマンガンの原子濃度は深さ方向に略一定であり、またマンガンと酸素の原子濃度の比率も略一定であるのが特徴となっている。このことからして、この領域では、マンガン原子と酸素原子との構成比率が一定な、例えば酸化マンガン(組成式:MnO)などから主に構成されていると推定される。
【0088】
酸化物半導体層の内部でのマンガン酸化物層の形成に寄与せずに残留したマンガンからなる金属膜は、本発明の云う金属層として残置される。金属酸化物層を形成するための素材としても兼用した金属膜からなる金属層の特徴は、上記の如く内部の金属の原子濃度が酸化物半導体層に向けて単調に減少していることにある(図4参照)。
【0089】
マンガンなどの金属膜をなす金属が加熱処理により、酸化物半導体層の内部へと拡散、移動するのとは逆に、上記の還元化学反応(1)により生じた酸化物半導体層をなす金属酸化物の還元より生じた金属は金属層側へと移動する。還元反応により生じた酸素を的確に捕獲し、金属層への酸素の混入を防止する作用を担う金属酸化物層を、インジウムなどを通過させ易い金属から構成するとインジウム濃化層を形成するのに好都合となる。金属酸化物層をマンガン酸化物から構成すると、図4に示す如く、金属層と金属酸化物層との接合領域に局所的に蓄積したインジウムを含むインジウム濃化層の形成が促進される。
【0090】
主に還元反応が生ずる領域で発生したインジウムに移動すると推考される。加熱処理後でも酸化物半導体層の内部の、金属酸化物層が形成された領域の下方は、そのまま酸化物半導体層として残存している。その残存領域の中央で、インジウムの原子濃度は極大となっている。一方、インジウムの原子濃度が極大となる地点に向けてマンガンの原子濃度は単調に減少している。
【0091】
インジウム濃化層には、原子状のインジウムを存在させるのが好都合である。または、残存させた金属膜からなる金属層をなす金属とインジウムとの金属間化合物を存在させるのが好都合である。例えばマンガンからなる金属層にあって、例えばMnInなどの非化学量論的な金属間化合物が含まれているのが好適である。原子状のインジウムやそれから派生したインジウムイオンや非化学量論的組成のインジウム化合物は、電気伝導性に優れる。このため、これらを含むインジウム濃化層は、金属酸化物層と金属層との電気的接触抵抗の低減に寄与するからである。
【0092】
インジウム濃化層の内部では、残置された酸化物半導体層の内部の場合と同様に、インジウムの濃度は、極大となる金属層と金属酸化物層との接合箇所を中心として正規分布状に対称的に分布させるのが好適である(図3及び図4参照)。金属層又は金属酸化物層の何れかの偏った側でインジウムの濃度が極大となる様に非対称的に分布している場合、金属酸化物層と金属層との電気的接触抵抗を良好に低減できない。上記の接合箇所よりも金属層側の内部で濃度が極大となる様にインジウムを分布させても金属層と金属酸化物層との電気的接触抵抗を減少させるのに然して寄与できない。金属層と金属酸化物層との接合箇所、即ち、両層が接触する箇所で濃度が極大となる様にインジウムを分布させてこそ、両層間の電気的接触抵抗を減ずるに効果が奏されるものである。
【0093】
また特に、金属層と金属酸化物層との接合箇所に近い金属酸化物層の内部で濃度が極大となる様にインジウムを分布させると金属酸化物層に良好に密着する金属膜を安定して得られ難くなる。これは、金属層との接合領域にインジウムの酸化物層が形成されることに因り、インジウムと金属層をなす金属との“濡れ”性の悪化にも一因があると推量される。酸素を含む雰囲気内で加熱処理をすると、雰囲気より侵入して来る酸素により、化学的還元反応に因り金属層側へ拡散、移動して来るインジウムの酸化が促進される。これより、インジウム酸化物が金属層と金属酸化物層との接合箇所、特に近隣の金属酸化物層の内部に形成され易くなる。
【0094】
従って、加熱処理は酸素を含まない雰囲気中、例えば圧力を×10−2Pa以下とする真空中で行うのが望ましい。更には、圧力を×10−2Pa以下の高真空中で行うのが好ましい。特に、残留ガスを酸素分子(分子式:O)や水の分子(分子式:HO)でなく窒素(分子式:N)や不活性ガスとし、圧力を×10−2Pa以下とする高真空中で行うのが好ましい。金属層をなす金属が窒化され電気抵抗の高い金属窒化物から構成されるのを充分に回避するは不活性ガスを残留ガスとする高真空中での加熱処理が好ましい。例えばチタンからなる金属層が窒化により窒化チタンから構成されるのを防ぐために、アルゴン(元素記号:Ar)を残留ガスの主成分とする高真空中で加熱処理をする。残留ガスをなす不活性ガスとしては、他にネオン(元素記号:Ne)やヘリウム(元素記号:He)を例示できる。
【0095】
残留ガスを不活性とする真空雰囲気は、加熱処理に供する真空容器等の内部に不活性ガス、例えばヘリウムを流通させて、酸素や水分子を随伴させて排気した後、今度は流通を絶ち、真空に掃引する操作をすれば創出され易い。この充満/真空排気の操作を繰り返し行えば、残留ガスの成分に占める不活性ガスの割合を増加させられ、残留ガスの主たる成分を不活性ガスとする真空雰囲気を創出するのに役立つ。
【0096】
また、この様な非対称的なインジウムの濃度分布の形成を回避するには、加熱処理の温度を300℃以下とするのが肝要である。上記の非対照的なインジウムの濃度分布は、酸化物半導体層をなすインジウム含有酸化物材料に殆ど依らず、300℃を超える加熱処理により急激に発生する。特に、インジウムの融点(157℃)の倍の約320℃を超える温度での加熱処理は、インジウムの濃度分布が顕著に非対称的となるため望ましくはない。
【0097】
金属層と金属酸化物層との接合箇所に相当するインジウム濃化層の深さ方向の中央でのインジウムの極大濃度は、隣接する金属酸化物層及び金属層の内部のインジウムの濃度より高いのが好ましい。インジウムの極大濃度が高い程、金属酸化物層と金属層との間の電気的接触抵抗を低減するのに効果的となるからである。
【0098】
一方で、インジウム濃化層の内部でのインジウム濃度の極大値は、加熱処理後に於ける酸化物半導体層の内部でのインジウムの濃度より低いのが望ましい(図4参照)。例えば、インジウム濃化層のインジウムの極大濃度は、酸化物半導体層の内部の2/3程度であるのが望ましい。酸化物半導体層よりもインジウム濃化層のインジウムの極大濃度が高いとは、酸化物半導体を構成するインジウムが加熱処理により、インジウムの濃化層へと大量に拡散、移動することを意味している。多量にインジウムが拡散することにより、残置される酸化物半導体層の電気伝導性は損なわれ、電気抵抗の高い酸化物層となる。この様な高抵抗となった酸化物半導体層は、そもそも電気抵抗の小さな酸化物半導体用電極を得るに不都合となる。
【0099】
金属層や金属酸化物層をなすこととなる金属による酸化物半導体の化学的還元反応を激しく起こす条件下で加熱処理を施しているのが主因である。酸化物半導体層の導電性を高く維持するために、同層の内部のインジウムの極大濃度をインジウム濃化層より高く維持するのには、やはり限定された条件下での加熱処理が必要である。具体的には上記の高真空中で、200℃以上300℃以下の温度で、15分間以上90分間以下の時間での加熱処理が好適である。
【0100】
200℃未満の低温では、金属層をなす金属の拡散が然して生ぜず、安定して金属酸化物層を形成するにも至らない。ましてや、酸化物半導体層をなすインジウム酸化物の化学的還元反応も然して促進されず、インジウム濃化層をなすインジウムをそもそも効率的に発生させられない。一方、300℃を超える高温では、酸化物半導体層をなすインジウム酸化物の化学的還元反応が顕著に進行し、還元された多量のインジウムがインジウム濃化層を形成のために移動する。このため、結局のところ、酸化物半導体層の内部のインジウムの濃度は低下し、逆にインジウム濃化層のインジウム濃度が高くなる好ましくない事態を招く。
【0101】
加熱処理時間は、加熱処理温度を高温とする程、短時間とする。また、低温とする程、長時間とすると好結果が得られる。200℃以上300℃以下の範囲の温度での加熱処理では、何れにしても15分間以上の処理時間が必要である。酸化物半導体層を構成するインジウム酸化物の化学的還元反応を促進させ、インジウム濃化層を形成するに足るインジウムを発生させるためである。90分間を超える長時間の加熱処理は、還元されたインジウムの拡散を徒に助長するため、インジウムの極大濃度につき上記の好ましい大小関係を有する酸化物半導体層とインジウム濃化層を安定して得るに至らない。
【0102】
また、200℃以上300℃以下の範囲の温度での加熱時間を90分間以下に制限すると、金属膜を素材として形成する金属層の表面が粗雑に荒れるのを防ぐことができる。このため、金属膜からなる金属層の上に密着性に優れる電極層を好都合に形成できる。
【0103】
好適な加熱処理条件が施された場合に得られる金属元素(此処ではマンガン)の深さ方向の分布は図4に例示する如くである。図4に明示される様に、マンガンの濃度原子は、マンガン酸化物層と酸化物半導体層との境界から酸化物半導体層の深さ中方向の中央に向けて単調に減少している。また、酸化物半導体層の中央のインジウムの原子濃度が極大となる所で体よく、最小となっている(分析の検出限界に近い低い濃度となっている)のが特徴である。このため、酸化物半導体層の導電性を中央部で極大となる様に好都合に分布しているインジウムによる酸化物半導体層の導電性が損なわれることなく維持されていると推考される。
【0104】
また、そのマンガンの原子濃度の減少の度合いは、金属膜(金属層)から金属酸化物膜の方向へ向けてのマンガンの原子濃度の減少の度合いよりも小さくなっている。膜厚の変化に対するマンガンの原子濃度の減少の度合いが小さいことから、酸化物半導体層の内部で穏やかにインジウム酸化物などの化学的還元反応が進行していることが教示される。加熱処理を過酷な条件下で行うと、化学的還元反応が激しく進み、酸化物半導体層の内部で略一様な濃度でマンガンが分布する様相となる。加えてインジウムは酸化物半導体層の内部で濃度的に極大値をもって分布することはなくなり、従って、電気抵抗の高い酸化物半導体層が帰結される結果を帰結する。
【実施例】
【実施例】
【0105】
本発明の内容を、略称IGZOからなるインジウム含有酸化物半導体層にオーミック性の電極を形成する場合を例にして説明する。
【0106】
図面図5は、本実施例に記載の電極を構成するための積層構造体の一部の断面透過電子顕微鏡(TEM)像である。図6は、図5に示す断面構造の積層構造体を加熱処理した後における断面TEM像である。尚、図6において、図5に掲示したのと同一の構成要素については、図5と同一の符号を付してある。図7は、加熱処理により形成した金属酸化物層(マンガン酸化物層)の電子線回折像である。図8は、加熱処理により形成したインジウム濃化層及びそれに近隣する層でのインジウムの存在状態を示す結合エネルギー分析図である。図9は、本実施例に記載の電極の電流−電圧特性を示す図である。
【0107】
図5に掲示する積層構造体は次の手順で形成した。先ず、p形伝導性のシリコン基板501上に、テトラエトキシシリコン(TEOS)を原料として厚さ50nmの二酸化珪素(SiO)絶縁膜502を形成した。
【0108】
SiO絶縁膜502上には、一般的な高周波スパッタリング法により厚さを100nmとするn形で非晶質の酸化ガリウム・インジウム・亜鉛(a−GaInZnO)からなる酸化物半導体層503を被着した。酸化物半導体層503は、GaInZnO酸化物からなるターゲットを、圧力を0.1Paに保持したアルゴンと酸素との混合雰囲気(99.5体積%Ar+0.5体積%O)内でスパッタリングして形成した。印加した高周波電力は50ワット(W)とし、酸化物半導体層503をなすGaInZnO膜の堆積速度は毎分18nmとした。そのGaInZnO膜の抵抗率は0.5Ω・cm未満であった。
【0109】
次に、その酸化物半導体層503の表面には、一般的な高周波スパッタリング法により、後に金属酸化物層及び金属層をなすための素材とする本発明の云う金属膜504としてのマンガン膜を被着させた。マンガン膜504の膜厚は、酸化物半導体層503の層厚と同じく100nmとした。
【0110】
マンガン膜504の表面には、マンガン膜504の酸化を防止するための表面保護膜として、SiO膜505(厚さ=70nm)を被着しておいた。
【0111】
被着後、一般的なオージェ電子分光法(英略称:AES)により、マンガンやインジウムの原子濃度の深さ方向の分布を分析した。分析結果からして、この時点では、(1)マンガン膜504の内部でのマンガンの原子濃度の酸化物半導体層503側に向けての減少は認められず、また、(2)酸化物半導体層503の内部でのインジウムの原子濃度は層厚方向に一様であり、また、(3)酸化物半導体層503の内部でマンガン酸化物層が形成されている形跡も認められず、また(4)マンガン膜504と酸化物半導体層503との境界領域でのインジウムが局所的に蓄積した領域の存在も認められなかった。総括すれば、加熱処理前のこの時点でのマンガンやインジウムなどの深さ方向の原子濃度の分布は図3に示したものと同様であった。
【0112】
次に、この積層構造体50を、残留ガスの主成分をアルゴンとする圧力6.0×10−4Paの真空中で加熱処理した。加熱温度は250℃とし、加熱時間は60分間とした。加熱処理後は、加熱処理に用いた真空容器内で、真空度をほぼ6.0×10−4Paに保ちつつ、積層構造体50の温度を室温(〜25℃)近傍の温度迄、冷却した。
【0113】
冷却後、加熱処理に用いた真空容器から積層構造体50を容器外に取り出し、構造的な変化などを透過電子顕微鏡(TEM)などを使用して調査した。この加熱処理後における積層構造体50の断面構造を示す断面TEM像を図6に示す。図3の断面TEM像から明らかな様に、酸化物半導体層503の表面側には、マンガンの酸化物層601が形成されていた。マンガン酸化物層601の厚さは、加熱処理前のIGZO酸化物半導体層503の層厚(=100nm)の1/2に達した。即ち、もともとの酸化物半導体層503の厚さの1/2に相当する領域に金属酸化物層としてのマンガン酸化物層601が形成され、その金属酸化物層601の下方は、酸化物半導体層が残置された構造に変化していた。
【0114】
酸化物半導体層503の表面側の領域に形成された金属酸化物層601の内部でのマンガンの原子濃度は、図4に示した様に、一定であった。また、一般的なTEMを利用して撮像した金属酸化物層601の電子線回折像を図7に示す。デバイ(Debye)回折環上に回折斑点(spot)が点在している像であることから、この金属酸化物層601は多結晶からなる層であるのが示された。入射電子線の入射中心位置と回折環との距離からして、この多結晶の金属酸化物層601は、一酸化マンガン(組成式:MnO)から構成されているものと同定された。尚、図7の電子線回折像の原画では、回折環が“薄く”、一見、不明瞭なため、回折環の円周をなぞる様に白色円形環を挿入してある。
【0115】
また、一般的なAES分析から、一酸化マンガンからなる金属酸化物層601と酸化物半導体層503との境界から、残存した酸化物半導体層503の層厚方向の中央部に向けて、マンガンの原子濃度が単調に減少しているのが認められた(図4参照)。オージェ電子の信号強度が原子濃度に直線的に比例して増減する分析条件下で、金属酸化物層601から酸化物半導体層503の中央に至る間のマンガンの原子濃度が単調に減少する領域で、層厚の変化に対するマンガンのオージェ電子の強度の低下の度合いを測定した。その強度の減少の度合いは、1nmの層厚の変化につき平均して160であった。
【0116】
残存した酸化物半導体層503の内部では、インジウムは加熱処理前とはうって変わって、同層503の層厚方向の中央で濃度を極大とする正規分布状の濃度分布をしていた(図4参照)。ガリウムも同様に残存するIGZO酸化物半導体層503の内部では、同層の膜厚方向の中央で原子濃度を極大とする、対称的な濃度分布を呈した。図4に示す様に、インジウムとガリウムの極大の濃度に対応するオージェ電子の強度はほぼ同一であった。実際に双方の原子濃度がほぼ同一であるのか、はたまた、単に元素に依り検出感度が異なるが故に、たまたま、信号強度がほぼ同一となっているのかは詳細に検討しなかった。亜鉛も同層の層厚方向の中央で濃度が極大となる様に分布を呈すると見受けられるものの、IGZO酸化物層503を構成する酸化亜鉛(ZnO)の比率が小さいことによるのか、インジウムやガリウムに比べればその分布様式は明瞭ではなかった。
【0117】
一方、金属酸化物層601をなすための素材とした金属膜504として用いたマンガン膜の厚さには然したる減少は認められず、元の厚さのままで金属層602として残留する結果となった。一般的なAES分析に依れば、マンガンの原子濃度は図4に示す様に、金属層602の表面から金属酸化物層601側へ向けて単調に減少していた。オージェ電子の信号強度が原子濃度に直線的に比例して増減する分析条件下で、金属層602の層厚の変化に対するマンガンのオージェ電子の強度の低下の度合いを測定した。その強度の減少の度合いは、1nmの層厚の変化につき平均して38であった。
【0118】
加熱処理後の積層構造体50のインジウムについてのAES分析の結果から、金属酸化物層601と金属層602の境界にインジウムが蓄積された領域が形成されているのが示された(図4参照)。このインジウムが蓄積された領域を便宜上、インジウム濃化層603と呼称すれば、そのインジウム濃化層603の厚さは約10nmであった。このインジウム濃化層603の内部においても、インジウムの原子濃度は膜厚方向の中央で極大となる様な分布を呈していた。
【0119】
インジウム濃化層603の内部に蓄積されたインジウムの存在形態を結合エネルギーの分析により調査した。図8にAES法を利用して計測したインジウム濃化層603や金属酸化物層601などについてのインジウムの結合エネルギーチャートを示す。因みに原子状のインジウムであれば、チャート上で、結合エネルギーにして405エレクトロンボルト(単位:eV)及び412eVで極小となるピーク(peak)が現われる。図8の記号“IN”で示す線プロファイルがインジウム濃化層603の内部のインジウムについて結合エネルギーを示している。そのインジウムについての極小ピークは結合エネルギーにして405eV及び413eVに現われている。即ち、インジウム濃化層603の内部に含まれるのは、原子状のインジウムであることが認証された。
【0120】
また、マンガン酸化物からなる金属酸化物層601の内部に含まれるインジウムの結合エネルギーの分析図を図8に記号“d”で示す。線プロファイル“d”に示す如く、金属酸化物層601の内部に含まれるインジウムの結合エネルギーを表す極小ピークは、406eVと412eVの位置に現われている。これ即ち、金属酸化物層601にも原子状のインジウムが含まれていることの証しである。この様に、金属酸化物層601の内部にも原子状のインジウムが含まれているのは、その金属酸化物層601が酸化物半導体層503の化学的還元により生じたインジウムを通過させるのに好都合な酸化マンガンから構成したことによってもたらされる利点であることに他ならない。
【0121】
一方、残存させたIGZO酸化物半導体層503の内部のインジウムの結合エネルギーの分析結果を図8に記号“e”で示す。線プロファイル“e”に示す如く、同層503の内部のインジウムの結合エネルギーは、上記のインジウム濃化層603(図8の線プロファイル“IN”参照)や金属酸化物層602(図8の線プロファイル“d”参照)の内部とは、明らかに異なっている。酸化物半導体層503の内のインジウムの結合エネルギーは401eV及び408eVである。即ち、原子状のインジウムが取り得る結合エネルギー(405eV及び412eVよりも小さい。インジウムが酸化物の状態で存在すると結合エネルギーは低値側にシフト(shift)することからして、酸化物半導体層503の内部では、インジウムは酸化物の形態を保って存在していると解釈される。従って、良導性の酸化物半導体層が残存されていることを表している。
【0122】
また、残存させた酸化物半導体層503の層厚方向の中央でのインジウムの極大の原子濃度は、オージェ電子の強度にして3×10であった。このオージェ信号強度を、金属酸化物層601から金属層602に向けて酸素の原子濃度が急激に減少し、且つ金属層602の内部のマンガンの原子濃度が単調減少より一定の濃度に転ずる深さの所で形成されている(図4参照)インジウム濃化層603の層厚方向の中央部でのインジウムの極大濃度に対応する信号強度と比較してみる。AES分析条件を酸化物半導体層503の場合と同一に設定して定量したインジウム濃化層603の極大の濃度に対応する信号強度は2×10であった。即ち、酸化物半導体層503に対するインジウム濃化層603のそれの相対的なインジウムについての信号強度は2/3であった。従って、酸化物半導体層503の内部には、インジウム濃化層603よりも多量にインジウムを残留させられた。
【0123】
次に、金属膜504の表面、加熱処理後においては金属層602の表面を被服していた表面保護膜としての酸化膜505を湿式エッチングにより除去した。その後、露出させた金属層602の表面の全面に、一旦、一般的な高周波スパッタリング法により、銅からなる電極層604を形成した。スパッタリングは、高純度(99.9999%)の無酸素銅をターゲットに用いて形成した。その後、公知のフォトリソグラフィー技術を利用し、電極層604をパターニング加工して、図8の右上方の挿入図に示す如くの間隔(L)を相違する平行平面電極を形成した。隣接する電極間の距離(L)は相違させたものの(L=15〜50ミクロンメートル(長さの単位:μm))、各平行平面電極の幅(電流の通流方向に垂直な方向の長さ)は120μmとし、長さ(電流の通流方向に平行な方向の長さ)は25μmに統一した。とする平面形状の電極に加工した後、対向する電極間に直流電流を通流した。
【0124】
異なる離間(L)の電極間で測定した電流(I)−電圧(V)特性を図8に示す。電極間間隔(L)の大小に拘わらず(L=25〜45μm)、同図に示す様に低い印加電圧からも直線的に電流が増加する良好なオーミック特性を呈する電極が得られた。TLM(Transmission Line Mode)法により電気的接触抵抗を測定した。室温(約25℃)の接触抵抗は、低値の0.29Ω・cmと計算された。
【産業上の利用可能性】
【0125】
本発明の銅からなるオーミック電極は例えば、インジウム含有酸化物半導体を動作層とする薄膜トランジスタのソースやドレイン電極として利用できる。
【0126】
図9の断面模式図に、本発明に係る低い電気的接触抵抗の電極を利用する薄膜トランジスタの構造を例示する。例えばp形シリコン基板の表面にTEOSを原料としてSiO絶縁膜を設ける。SiO絶縁膜の厚さは、例えば50nmとする。絶縁膜上には、動作(チャネル)層として非晶質のIGZO膜を設ける。IGZO膜の厚さは、例えば50nmとする。IGZOチャネル膜上には、インジウム濃化層を備えた本発明に係る構成のオーミック性の電極を設ける。ソース及びドレイン電極の幅(W:動作電流の通流方向に垂直な方向の長さ)は例えば120μmとする。それらのオーミック電極の長さ(L:動作電流の通流方向に平行な方向の長さ)は例えば25μmとする。シリコン基板の裏面には、アルミニウムからなるゲート(gate)電極を設けて薄膜トランジスタを構成する。
【0127】
また、本発明に係る酸化物半導体用電極は、発光を外部へ効率的に透過させるための光学的に透明な酸化物半導体からなる層を有する発光ダイオード(英略称:LED)にあって、その窓(window)層足る酸化物半導体層に設けるオーミック電極として利用できる。例えば、窒化ガリウム・インジウム(GaInN:0≦x,y≦1、x+y=1)を発光層とするpn接合型ダブルヘテロ(英略称:DH)構造のLED用途のIGZO膜からなる窓層に設けるオーミック電極として利用できる。
【符号の説明】
【0128】
10 原型の積層構造体
101 基体
102 絶縁膜
103 インジウム含有酸化物半導体層
104 金属膜
105 電極層
20 加熱処理後の積層構造体
201 金属酸化物層
202 金属層
203 インジウム濃化層
50 加熱処理後の積層構造体
501 シリコン基板
502 SiO絶縁膜
503 酸化物半導体層
504 金属膜
505 酸化保護膜
601 金属酸化物層
602 金属層
603 インジウム濃化層
604 電極層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インジウム(元素記号:In)を含む酸化物半導体材料からなる酸化物半導体層と、その酸化物半導体層上に設けられた金属の酸化物からなる金属酸化物層と、その金属酸化物層上に設けられた金属からなる電極層とを備えた酸化物半導体用の電極にあって、金属酸化物層と電極層の中間の位置に、その金属酸化物層をなす金属からなる層(金属層)が挿入されており、金属酸化物層と金属層との中間には、インジウムが濃化された層(インジウム濃化層)が設けられている、ことを特徴とする酸化物半導体用電極。
【請求項2】
金属層をなす金属がインジウムを含む酸化物半導体層を構成する酸化物を化学的に還元する金属から構成されている、ことを特徴とする請求項1に記載の酸化物半導体用電極。
【請求項3】
金属層の内部で金属層を構成する金属の濃度が金属酸化物層に向けて減少している、ことを特徴とする請求項2に記載の酸化物半導体用電極。
【請求項4】
金属酸化物層の内部で金属酸化物を構成する金属の濃度が一定となっている、ことを特徴とする請求項3に記載の酸化物半導体用電極。
【請求項5】
酸化物半導体層の内部で金属酸化物を構成する金属の濃度が酸化物半導体層との境界から酸化物半導体層の層厚の中央に向けて減少している、ことを特徴とする請求項4に記載の酸化物半導体用電極。
【請求項6】
金属酸化物を構成する金属の濃度が酸化物半導体層との境界から酸化物半導体層の層厚の中央に向けて減少する厚さに対する度合いが、金属層の内部で金属層を構成する金属の濃度が金属酸化物層に向けて減少する厚さに対する度合いよりも小さい、ことを特徴とする請求項5に記載の酸化物半導体用電極。
【請求項7】
金属層がマンガン(元素記号:Mn)、チタン(元素記号:Ti)、アルミニウム(元素記号:Al)、マグネシウム(元素記号:Mg)から構成されている、ことを特徴とする請求項6に記載の酸化物半導体用電極。
【請求項8】
金属層がマンガンから構成されている、ことを特徴とする請求項7に記載の酸化物半導体用電極。
【請求項9】
酸化物半導体層の層厚についての中央を中心としてインジウムの濃度の分布が対称となっている、ことを特徴とする請求項1乃至8の何れか1項に記載の酸化物半導体用電極。
【請求項10】
酸化物半導体層層の層厚についての中央でインジウムの濃度が極大となっている、ことを特徴とする請求項9に記載の酸化物半導体用電極。
【請求項11】
インジウム濃化層の内部におけるインジウムの濃度の分布が金属層と金属酸化物層との境界を中心として対称となっている、ことを特徴とする請求項10に記載の酸化物半導体用電極。
【請求項12】
インジウム濃化層のインジウムの濃度が金属層と金属酸化物層との境界で極大となっている、ことを特徴とする請求項11に記載の酸化物半導体用電極。
【請求項13】
インジウム濃化層のインジウムの極大の濃度が金属層の内部のインジウムの濃度より大である、ことを特徴とする請求項12に記載の酸化物半導体用電極。
【請求項14】
インジウム濃化層のインジウムの極大の濃度が酸化物半導体層の内部でのインジウムの極大の濃度がより小である、ことを特徴とする請求項13に記載の酸化物半導体用電極。
【請求項15】
インジウム濃化層の内部には、原子状のインジウムが含まれている、ことを特徴とする請求項14に記載の酸化物半導体用電極。
【請求項16】
インジウム濃化層の内部には、金属層を構成する金属とインジウムとの化合物が含まれている、ことを特徴とする請求項15に記載の酸化物半導体用電極。
【請求項17】
インジウム(元素記号:In)を含む酸化物半導体材料からなる酸化物半導体層と、その酸化物半導体層上に設けられた金属の酸化物からなる金属酸化物層と、その金属酸化物層上に設けられた金属からなる金属層と、その金属層上に設けられた金属からなる電極層とを備えた酸化物半導体用の電極の形成方法であって、(1)インジウムを含む酸化物半導体層を形成する工程と、(2)酸化物半導体層上に金属膜を形成する工程と、(3)金属膜を加熱して、金属酸化物層の表面側に、金属膜の一部が酸化物半導体層の内部の酸素により酸化されてなる金属酸化物層を形成すると共に、金属膜の上部を酸化物半導体層の内部の酸素により酸化させずに金属層として残存させ、併せて同時に金属酸化物層と金属層との中間にインジウムが濃化されたインジウム濃化層を形成する工程と、(4)金属層上に電極層を形成する工程、を含む、ことを特徴とする酸化物半導体用電極の形成方法。
【請求項18】
上記の(2)の工程で形成する金属層を、マンガン(元素記号:Mn)、チタン(元素記号:Ti)、アルミニウム(元素記号:Al)、マグネシウム(Mg)から形成する、ことを特徴とする請求項17に記載の酸化物半導体用電極の形成方法。
【請求項19】
金属層を、マンガンから形成する、ことを特徴とする請求項18に記載の酸化物半導体用電極の形成方法。
【請求項20】
上記の(1)並び(2)の工程を経由して形成した金属膜上に、上記の(5)の工程により電極層を形成した後に、上記の(3)の工程の加熱処理をする、ことを特徴とする請求項17乃至19の何れか1項に記載の酸化物半導体用電極の形成方法。
【請求項21】
金属膜を、圧力を1×10−2パスカル(圧力の単位:Pa)以下とする真空中で200℃以上300℃以下の温度範囲で、15分間以上90分間以下の時間での加熱処理する、ことを特徴とする請求項17又は20に記載の酸化物半導体用電極の形成方法。
【請求項22】
残留ガスを不活性ガスとする真空中で加熱処理をする、ことを特徴とする、請求項21に記載の酸化物半導体用電極の形成方法。
【請求項23】
請求項1乃至16の何れか1項に記載の酸化物半導体用電極を備えている、ことを特徴とする酸化物半導体装置。
【請求項24】
請求項17乃至22の何れか1項に記載の酸化物半導体用電極の形成方法により形成された酸化物半導体層電極を備えている、ことを特徴とする酸化物半導体装置。
【請求項25】
酸化物半導体用電極をオーミック(Ohmic)電極として備えている、ことを特徴とする請求項23又は24に記載の酸化物半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−191149(P2012−191149A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−66676(P2011−66676)
【出願日】平成23年3月8日(2011.3.8)
【出願人】(507012870)合同会社先端配線材料研究所 (11)
【Fターム(参考)】