説明

電動式直動アクチュエータおよび電動式ブレーキ装置

【課題】回転軸の外径面と外輪部材の内径面との間で各遊星ローラを負隙間によって予圧することなく、回転軸の回転トルクを各遊星ローラに安定して伝達できるようにすることである。
【解決手段】キャリヤ6の各支持ピン6bに内径面で回転自在に支持された各遊星ローラ7を、各支持ピン6bを包絡するように巻回された縮径リングばね18によって半径方向内方へ付勢し、各遊星ローラ7を回転軸4の外径面に押圧付勢することにより、回転軸4の外径面と外輪部材5の内径面との間で各遊星ローラ7を負隙間によって予圧することなく、回転軸4の回転トルクを各遊星ローラ7に安定して伝達できるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動モータの回転運動を直線運動に変換して被駆動物を直線駆動する電動式直動アクチュエータと、電動式直動アクチュエータを用いてブレーキ部材を被制動部材に押圧する電動式ブレーキ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電動モータの回転運動を直線運動に変換して被駆動物を直線駆動する電動式直動アクチュエータには、運動変換機構としてボールねじ機構やボールランプ機構を採用したものが多く、小容量の電動モータで大きな直線駆動力が得られるように、遊星歯車減速機構等の歯車減速機構を組み込んだものが多い(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上述した電動式直動アクチュエータに採用されているボールねじ機構やボールランプ機構は、リードを有するねじ筋や傾斜カム面に沿わせる運動変換機構によって、ある程度の増力機能を有するが、電動式ブレーキ装置等で必要とされるような大きな増力機能は確保できない。このため、これらの運動変換機構を採用した電動式直動アクチュエータでは、遊星歯車減速機構等の別途の減速機構を組み込んで駆動力を増力しているが、このように別途の減速機構を組み込むことは、電動式直動アクチュエータのコンパクトな設計を阻害する。
【0004】
このような問題に対して、本発明者らは、別途の減速機構を組み込むことなく大きな増力機能を確保でき、直動ストロークが小さい電動式ブレーキ装置にも好適な電動式直動アクチュエータとして、電動モータのロータ軸から回転を伝達される回転軸と、この回転軸の外径側でケーシングの内径面に固定された外輪部材との間に、キャリヤに回転自在に支持された複数の遊星ローラを介在させて、これらの各遊星ローラが回転軸の回転に伴って回転軸の周りを自転しながら公転するようにし、回転軸の外径面または外輪部材の内径面に螺旋凸条を設け、各遊星ローラの外径面に、螺旋凸条と同一ピッチで螺旋凸条が嵌まり込む周方向溝、または螺旋凸条と同一ピッチでリード角が異なり螺旋凸条が嵌まり込む螺旋溝を設けて、回転軸の周りを自転しながら公転する各遊星ローラを支持するキャリヤを軸方向へ相対移動させ、回転軸の回転運動をキャリヤの直線運動に変換する機構を先に提案している(特許文献2、3参照)。
【0005】
一方、車両用ブレーキ装置としては油圧式のものが多く採用されてきたが、近年、ABS(Antilock Brake System)等の高度なブレーキ制御の導入に伴い、これらの制御を複雑な油圧回路なしに行うことができる電動式ブレーキ装置が注目されている。電動式ブレーキ装置は、ブレーキペダルの踏み込み信号等で電動モータを作動させ、上述したような電動式直動アクチュエータをキャリパボディに組み込んでブレーキ部材を被制動部材に押圧するものである(例えば、特許文献4参照)。通常、電動式ブレーキ装置は車両のばね下に取り付けられるので、路面からの振動を受けても安定して作動し、かつ、コンパクトに設計できるものが望まれる。
【0006】
【特許文献1】特開平6−327190号公報
【特許文献2】特開2007−32717号公報
【特許文献3】特開2007−37305号公報
【特許文献4】特開2003−343620号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2、3に記載された電動式直動アクチュエータは、別途の減速機構を組み込むことなく、コンパクトな設計で大きな増力機能を確保できるが、入力軸となる回転軸の回転トルクを各遊星ローラに安定して伝達するために、各遊星ローラを回転軸と外輪部材との間に負隙間をもたせて介在させ、回転軸の外径面と外輪部材の内径面との間で各遊星ローラを予圧するようにしているので、各遊星ローラを焼ばめ等によって外輪部材と回転軸の間に組み込む必要があった。また、予圧のための負隙間を管理するために、遊星ローラが転接する回転軸の外径面と外輪部材の内径面を、研磨加工等によって高い寸法精度で仕上げる必要もあった。このため、回転軸と外輪部材を仕上げ加工する加工工程と、遊星ローラを組み込む組み立て工程に手間がかかる問題があり、製造コスト増加の原因となっていた。
【0008】
そこで、本発明の課題は、回転軸の外径面と外輪部材の内径面との間で各遊星ローラを負隙間によって予圧することなく、回転軸の回転トルクを各遊星ローラに安定して伝達できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の電動式直動アクチュエータは、電動モータのロータ軸から回転を伝達される回転軸と、この回転軸の外径側でケーシングの内径面に固定された外輪部材との間に、キャリヤに回転自在に支持された複数の遊星ローラを介在させて、これらの各遊星ローラが前記回転軸の回転に伴って回転軸の周りを自転しながら公転するようにし、前記回転軸の外径面または前記外輪部材の内径面に螺旋凸条を設け、前記各遊星ローラの外径面に、前記螺旋凸条と同一ピッチで螺旋凸条が嵌まり込む周方向溝、または螺旋凸条と同一ピッチでリード角が異なり螺旋凸条が嵌まり込む螺旋溝を設けて、前記回転軸の周りを自転しながら公転する各遊星ローラを支持するキャリヤを軸方向へ相対移動させ、前記回転軸の回転運動を前記キャリヤの直線運動に変換して、被駆動物を直線駆動する電動式直動アクチュエータにおいて、前記各遊星ローラを前記回転軸の外径面に押圧付勢する弾性部材を設けた構成を採用した。
【0010】
すなわち、各遊星ローラを回転軸の外径面に押圧付勢する弾性部材を設けることにより、回転軸の外径面と外輪部材の内径面との間で各遊星ローラを負隙間によって予圧することなく、回転軸の回転トルクを各遊星ローラに安定して伝達できるようにした。
【0011】
前記各遊星ローラを押圧付勢する手段は、前記キャリヤに前記各遊星ローラを内径面で回転自在に支持する支持ピンを設け、これらの各支持ピンを、前記キャリヤに円周方向への移動を規制し、半径方向への移動を許容して取り付けて、前記弾性部材によって半径方向内方の前記回転軸側へ付勢するものとすることができる。
【0012】
前記各遊星ローラの内径面に軸受部材を装着することにより、遊星ローラの回転に対する摩擦ロスを低減することができる。
【0013】
前記各遊星ローラを押圧付勢する手段は、前記キャリヤに前記各遊星ローラを外径面で回転自在に支持する支持ピンを設け、これらの各支持ピンを、前記キャリヤに円周方向への移動を規制し、半径方向への移動を許容して取り付けて、前記弾性部材によって半径方向内方の前記回転軸側へ付勢するものとすることもできる。
【0014】
前記各遊星ローラを外径面で回転自在に支持する各支持ピンの外周に、前記各遊星ローラの外径面に当接されて回転する軸受部材を装着することにより、遊星ローラの回転に対する摩擦ロスを低減することができる。
【0015】
前記軸受部材を、前記支持ピンの回りにすべり回転するすべり軸受とすることにより、軸受部材をコンパクトなものとすることができる。
【0016】
前記すべり軸受は、樹脂材料または含油材料で形成するとよい。
【0017】
前記各支持ピンの両端部を、前記弾性部材によって半径方向内方へ付勢することにより、各遊星ローラを軸方向で均等に回転軸の外径面に押圧し、回転軸の回転トルクをより安定して各遊星ローラに伝達することができる。
【0018】
前記各支持ピンを半径方向内方へ付勢する弾性部材は、各支持ピンを包絡するように巻回され、縮径するように弾性変形するリング状の弾性部材とすることができる。
【0019】
前記各支持ピンに、前記巻回されるリング状の弾性部材が嵌まり込む溝を設けることにより、リング状の弾性部材の脱落を防止することができる。
【0020】
前記縮径するように弾性変形するリング状の弾性部材は、円周方向の一部を切り欠いたばね鋼で形成された縮径リングばねとすることができる。
【0021】
前記各支持ピンを半径方向内方へ付勢する弾性部材は、前記キャリヤに保持され、前記各支持ピンを個別に半径方向内方へ付勢する柱状の弾性部材とすることもできる。
【0022】
前記各支持ピンに、前記柱状の弾性部材またはこの弾性部材の付勢力を仲介する仲介部材が嵌まり込む溝を設けることにより、各支持ピンのキャリヤからの軸方向への抜け出しを防止することができる。
【0023】
前記柱状の弾性部材は圧縮コイルばねとすることができる。
【0024】
また、本発明の電動式ブレーキ装置は、電動モータの回転運動を直線運動に変換してブレーキ部材を直線駆動する電動式直動アクチュエータを備え、前記直線駆動されるブレーキ部材を被制動部材に押圧する電動式ブレーキ装置において、前記電動式直動アクチュエータに上述したいずれかの電動式直動アクチュエータを用いた構成を採用した。
【発明の効果】
【0025】
本発明の電動式直動アクチュエータは、各遊星ローラを回転軸の外径面に押圧付勢する弾性部材を設けたので、回転軸の外径面と外輪部材の内径面との間で各遊星ローラを負隙間によって予圧することなく、回転軸の回転トルクを各遊星ローラに安定して伝達することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、図面に基づき、本発明の実施形態を説明する。図1乃至図6は、第1の実施形態を示す。この電動式直動アクチュエータは、図1乃至図3に示すように、ケーシング1の円筒部1aの一端側で瓢箪形を形成するように張り出すフランジ1bが設けられて、このフランジ1bに電動モータ2が円筒部1aと平行に取り付けられ、電動モータ2のロータ軸2aの回転が歯車3a、3b、3cによって円筒部1aの中心に配設された回転軸4に伝達されるようになっており、回転軸4と円筒部1aの内径面に固定された外輪部材5との間に、キャリヤ6に回転自在に支持された4個の遊星ローラ7が介在し、各遊星ローラ7が回転軸4の回転に伴って、その周りを自転しながら公転するようになっている。
【0027】
前記ケーシング1のフランジ1bを設けた側には、円筒部1aとフランジ1bを含めた外周に連なる周壁1cが設けられ、この周壁1cに蓋1dが取り付けられており、歯車3a、3b、3cは、周壁1cと蓋1dで覆われた空間の軸方向同一断面内で噛み合うように配設されている。歯車3cを取り付けられた回転軸4は、蓋1dに設けられた孔に玉軸受8で支持され、ロータ軸2aに取り付けられた歯車3aと歯車3cに噛み合う中間歯車3bは、フランジ1bと蓋1dに差し渡された軸ピン9に玉軸受10で支持されている。
【0028】
前記ケーシング1の円筒部1aの内径面には環状溝11が設けられ、この環状溝11に、外輪部材5に発生する直動アクチュエータの軸方向反力を受けるストッパ12が嵌入され、その内径面を保持する円環状の保持部材13が円筒部1aの内径面に内嵌固定されている。ストッパ12は、円周方向で複数に分割されて環状溝11に容易に嵌入可能とされ、保持部材13は、中間歯車3bと干渉しないように、円周方向の一部が切り欠かれている。
【0029】
前記キャリヤ6は、回転軸4にすべり軸受14aで支持されたキャリヤ本体6aと、各遊星ローラ7を内径面で回転自在に支持する支持ピン6bと、回転軸4にすべり軸受14bで支持された支持板6cと、隣接する各遊星ローラ7間に通されて支持板6cをキャリヤ本体6aに連結する複数の連結ボルト6dとからなり、各連結ボルト6dの外径面には、支持板6cの回転位置をキャリヤ本体6aに位相合わせするためのカラー15が装着されている。各支持ピン6bは、その基端側と先端側を、それぞれキャリヤ本体6aと支持板6cとに設けられた半径方向の長孔16に、円周方向への移動を規制され、半径方向への移動を許容されて取り付けられている。
【0030】
前記各支持ピン6bの基端側と先端側の両端部の外径面には溝17が設けられており、図4に示すように、円周方向の一部を切り欠いたばね鋼で形成された縮径リングばね18が、これらの溝17に嵌め込まれ、各支持ピン6bを包絡するように巻回されて装着されている。したがって、各支持ピン6bに回転自在に支持された各遊星ローラ7が回転軸4の外径面に押圧付勢され、回転軸4の回転トルクが安定して各遊星ローラ7に伝達される。なお、縮径リングばね18は、縮径するように弾性変形するリング状のコイルばねで置換することもできる。
【0031】
前記各遊星ローラ7は、内径面に装着された針状ころ軸受19で各支持ピン6bに回転自在に支持され、その自転がスラストころ軸受20でキャリヤ本体6aに支持されている。各遊星ローラ7と一緒に公転するキャリヤ6には直線駆動部材21が連結され、各遊星ローラ7の直線運動がキャリヤ6を介して直線駆動部材21に伝達されるようになっている。直線駆動部材21は、キャリヤ本体6aの筒部に外嵌されて止め輪22で抜け止めされ、スラストころ受23でキャリヤ本体6aと相対回転自在に支持されており、被駆動物に連結されて回り止めするキー24が外側端面に設けられている。
【0032】
また、隣接する前記各遊星ローラ7間には、両側の遊星ローラ7の外径面に摺接してグリースを塗布する扇形状の潤滑剤塗布部材25が、キャリヤ6の連結ボルト6dと外輪部材5の内径面との間に保持されている。
【0033】
図5(a)に示すように、前記各遊星ローラ7が転接する外輪部材5の内径面には2条の螺旋溝5aが設けられ、各螺旋溝5aに周着された条部材5bで、外輪部材5の内径面に2条の螺旋凸条が形成されている。また、図5(b)に示すように、各遊星ローラ7の外径面には、条部材5bで形成された螺旋凸条が嵌まり込み、螺旋凸条と同一ピッチでリード角の異なる1条の螺旋溝7aが設けられている。なお、外輪部材5の螺旋凸条を2条の多条螺旋としたのは、遊星ローラ7の螺旋溝7aとのリード角の差の設定自由度を大きくするためであり、螺旋凸条は1条のものとしてもよく、遊星ローラ7の螺旋溝7aはリード角のない周方向溝とすることもできる。
【0034】
また、前記遊星ローラ7の外径面の螺旋溝7aは、溝幅が溝底側から溝縁側へ広がるように両側の側壁が傾斜し、条部材5bで形成された外輪部材5の内径面の螺旋凸条は、基部側から頂部側へ条幅が狭まるように、両側の側面が螺旋溝7aの側壁の傾斜角と等しい角度で傾斜している。したがって、遊星ローラ7が外輪部材5の内径面に転接しながら、外輪部材5の螺旋凸条が遊星ローラ7のリード角が異なる螺旋溝7aに嵌まり込むときに、螺旋凸条の肩部が螺旋溝7aの溝縁部に接触することはなく、かつ、螺旋溝7aに嵌まり込んだ螺旋凸条は、その側面を傾斜させた螺旋溝7aの側壁に均等に当接させて、螺旋溝7aと良好に係合する。
【0035】
図6は、上述した電動式直動アクチュエータを採用した電動式ブレーキ装置を示す。この電動式ブレーキ装置は、キャリパボディ31の内部で被制動部材としてのディスクロータ32の両側に、ブレーキ部材としてのブレーキパッド33を対向配置したディスクブレーキであり、キャリパボディ31に電動式直動アクチュエータのケーシング1が固定され、直線駆動部材21がキー24でブレーキパッド33に回り止めされ、ブレーキパッド33をディスクロータ32に押圧するようになっている。なお、この図では、電動式直動アクチュエータが図1で示した断面と直交する断面で示されている。
【0036】
図7は、第2の実施形態を示す。この電動式直動アクチュエータは、基本的な構成は第1の実施形態のものと同じであり、前記各遊星ローラ7を内径面で回転自在に支持する各支持ピン6bが、キャリヤ本体6aと支持板6cに設けられた半径方向の孔26に保持された圧縮コイルばね27によって、仲介部材28を介して基端側と先端側の両端部を半径方向内方へ個別に付勢され、各遊星ローラ7が回転軸4の外径面に押圧付勢されている点が異なる。その他の部分は第1の実施形態のものと同じであり、各支持ピン6bの両端部の外径面には仲介部材28が嵌まり込む溝17が設けられ、各支持ピン6bの基端側と先端側は、キャリヤ本体6aと支持板6cに設けられた半径方向の長孔16に、円周方向への移動を規制され、半径方向への移動を許容されて取り付けられている。
【0037】
図8乃至図10は、第3の実施形態を示す。この電動式直動アクチュエータは、図8および図9に示すように、前記各遊星ローラ7が外径面でキャリヤ6の各支持ピン6bに回転自在に支持され、キャリヤ本体6aと支持板6cが各遊星ローラ7の中心孔に挿通された連結ボルト6dで連結されている。その他の部分は、潤滑剤塗布部材25が省略されている点を除いて、第1の実施形態のものと同じである。
【0038】
前記各支持ピン6bの外周には、遊星ローラ7の外径面に当接されて回転する樹脂材料で形成されたすべり軸受29が装着されている。また、各連結ボルト6dの外径面には、支持板6cの回転位置をキャリヤ本体6aに位相合わせするためのカラー15が装着され、カラー15を装着した連結ボルト6dは、各遊星ローラ7の中心孔に隙間を空けて挿通されている。
【0039】
前記各支持ピン6bの基端側と先端側は、第1の実施形態のものと同様に、キャリヤ本体6aと支持板6cに設けられた半径方向の長孔16に、円周方向への移動を規制され、半径方向への移動を許容されて取り付けられ、両端部の外径面に設けられた溝17に嵌め込まれ、各支持ピン6bを包絡するように巻回された縮径リングばね18によって半径方向内方へ付勢されて、各遊星ローラ7を回転軸4の外径面に押圧付勢するようになっている。
【0040】
図10(a)、(b)に示すように、前記キャリヤ6の支持板6cは、外径面に縮径リングばね18が嵌まり込む環状溝30が設けられており、この環状溝30が各支持ピン6bの取り付けられる半径方向の長孔16の外径端位置よりも深く形成されて、環状溝30に嵌め込まれた縮径リングばね18が、各長孔16に取り付けられる支持ピン6bを包絡するように巻回されるようになっている。図示は省略するが、キャリヤ本体6aの外径面にも、同様に縮径リングばね18が嵌まり込む環状溝30が設けられている。
【0041】
上述した実施形態では、遊星ローラの外径面の螺旋溝や周方向溝に嵌まり込む螺旋凸条を外輪部材の内径面に設け、この螺旋凸条を別体の条部材で形成したが、この螺旋凸条は回転軸の外径面に設けることもでき、外輪部材や回転軸と一体に形成することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】第1の実施形態の電動式直動アクチュエータを示す縦断面図
【図2】図1のII−II線に沿った断面図
【図3】図1のIII−III線に沿った断面図
【図4】図1の縮径リングばねを示す側面図
【図5】a、bは、それぞれ図1の外輪部材の螺旋凸条と遊星ローラの螺旋溝を示す正面図
【図6】図1の電動式直動アクチュエータを採用した電動式ブレーキ装置を示す縦断面図
【図7】第2の実施形態の電動式直動アクチュエータを示す縦断面図
【図8】第3の実施形態の電動式直動アクチュエータを示す縦断面図
【図9】図8のIX−IX線に沿った断面図
【図10】aは図8の支持板を示す正面図、bはaのXb−Xb線に沿った断面図
【符号の説明】
【0043】
1 ケーシング
1a 円筒部
1b フランジ
1c 周壁
1d 蓋
2 電動モータ
2a ロータ軸
3a、3b、3c 歯車
4 回転軸
5 外輪部材
5a 螺旋溝
5b 条部材
6 キャリヤ
6a キャリヤ本体
6b 支持ピン
6c 支持板
6d 連結ボルト
7 遊星ローラ
7a 螺旋溝
8 玉軸受
9 軸ピン
10 玉軸受
11 環状溝
12 ストッパ
13 保持部材
14a、14b すべり軸受
15 カラー
16 長孔
17 溝
18 縮径リングばね
19 針状ころ軸受
20 スラストころ軸受
21 直線駆動部材
22 止め輪
23 スラストころ軸受
24 キー
25 潤滑剤塗布部材
26 孔
27 圧縮コイルばね
28 仲介部材
29 すべり軸受
30 環状溝
31 キャリパボディ
32 ディスクロータ
33 ブレーキパッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動モータのロータ軸から回転を伝達される回転軸と、この回転軸の外径側でケーシングの内径面に固定された外輪部材との間に、キャリヤに回転自在に支持された複数の遊星ローラを介在させて、これらの各遊星ローラが前記回転軸の回転に伴って回転軸の周りを自転しながら公転するようにし、前記回転軸の外径面または前記外輪部材の内径面に螺旋凸条を設け、前記各遊星ローラの外径面に、前記螺旋凸条と同一ピッチで螺旋凸条が嵌まり込む周方向溝、または螺旋凸条と同一ピッチでリード角が異なり螺旋凸条が嵌まり込む螺旋溝を設けて、前記回転軸の周りを自転しながら公転する各遊星ローラを支持するキャリヤを軸方向へ相対移動させ、前記回転軸の回転運動を前記キャリヤの直線運動に変換して、被駆動物を直線駆動する電動式直動アクチュエータにおいて、前記各遊星ローラを前記回転軸の外径面に押圧付勢する弾性部材を設けたことを特徴とする電動式直動アクチュエータ。
【請求項2】
前記各遊星ローラを押圧付勢する手段が、前記キャリヤに前記各遊星ローラを内径面で回転自在に支持する支持ピンを設け、これらの各支持ピンを、前記キャリヤに円周方向への移動を規制し、半径方向への移動を許容して取り付けて、前記弾性部材によって半径方向内方の前記回転軸側へ付勢するものである請求項1に記載の電動式直動アクチュエータ。
【請求項3】
前記各遊星ローラの内径面に軸受部材を装着した請求項2に記載の電動式直動アクチュエータ。
【請求項4】
前記各遊星ローラを押圧付勢する手段が、前記キャリヤに前記各遊星ローラを外径面で回転自在に支持する支持ピンを設け、これらの各支持ピンを、前記キャリヤに円周方向への移動を規制し、半径方向への移動を許容して取り付けて、前記弾性部材によって半径方向内方の前記回転軸側へ付勢するものである請求項1に記載の電動式直動アクチュエータ。
【請求項5】
前記各遊星ローラを外径面で回転自在に支持する各支持ピンの外周に、前記各遊星ローラの外径面に当接されて回転する軸受部材を装着した請求項4に記載の電動式直動アクチュエータ。
【請求項6】
前記軸受部材を、前記支持ピンの回りにすべり回転するすべり軸受とした請求項3または5に記載の電動式直動アクチュエータ。
【請求項7】
前記すべり軸受を、樹脂材料または含油材料で形成した請求項6に記載の電動式直動アクチュエータ。
【請求項8】
前記各支持ピンの両端部を、前記弾性部材によって半径方向内方へ付勢するようにした請求項2乃至7のいずれかに記載の電動式直動アクチュエータ。
【請求項9】
前記各支持ピンを半径方向内方へ付勢する弾性部材を、各支持ピンを包絡するように巻回され、縮径するように弾性変形するリング状の弾性部材とした請求項2乃至8のいずれかに記載の電動式直動アクチュエータ。
【請求項10】
前記各支持ピンに、前記巻回されるリング状の弾性部材が嵌まり込む溝を設けた請求項9に記載の電動式直動アクチュエータ。
【請求項11】
前記縮径するように弾性変形するリング状の弾性部材を、円周方向の一部を切り欠いたばね鋼で形成された縮径リングばねとした請求項9または10に記載の電動式直動アクチュエータ。
【請求項12】
前記各支持ピンを半径方向内方へ付勢する弾性部材を、前記キャリヤに保持され、前記各支持ピンを個別に半径方向内方へ付勢する柱状の弾性部材とした請求項2乃至8のいずれかに記載の電動式直動アクチュエータ。
【請求項13】
前記各支持ピンに、前記柱状の弾性部材またはこの弾性部材の付勢力を仲介する仲介部材が嵌まり込む溝を設けた請求項12に記載の電動式直動アクチュエータ。
【請求項14】
前記柱状の弾性部材を圧縮コイルばねとした請求項12または13に記載の電動式直動アクチュエータ。
【請求項15】
電動モータの回転運動を直線運動に変換してブレーキ部材を直線駆動する電動式直動アクチュエータを備え、前記直線駆動されるブレーキ部材を被制動部材に押圧する電動式ブレーキ装置において、前記電動式直動アクチュエータに請求項1乃至14のいずれかに記載の電動式直動アクチュエータを用いたことを特徴とする電動式ブレーキ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2009−197863(P2009−197863A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−38910(P2008−38910)
【出願日】平成20年2月20日(2008.2.20)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】