説明

電動車両の制御装置及びその制御装置を備えた電動車両

【課題】この発明は、いずれか1つ又は複数の車輪に設けられたバッテリー或いは回路に異常が生じても、残りの車輪の回転により安定して走行移動させることができる電動車両の制御装置及びその制御装置を備えた電動車両の提供を目的とする。
【解決手段】3輪型又は4輪型の電動車両10において、車両本体11に取り付けられた車輪20,30に、電動モータ50と、バッテリー51と、制御部52と、電圧検知センサー53と、回路異常検知装置54と、回生回路55と、昇降圧回路56を備えた制御装置40が独立して設けられている。また、車輪20,30の制御装置40は、制御装置40を統括して制御する主制御装置41に接続されている。また、車輪20,30と電動モータ50の間に、該車輪20,30に対し電動モータ50の回転力が伝達される連結状態と、該連結が解除される解除状態とに動作する切替え装置57が独立して設けられたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、3輪型車両や4輪型車両等の複数の車輪が取り付けられた電動車両を走行移動させる際に用いられる電動車両の制御装置及びその制御装置を備えた電動車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、前記電動車両としては、例えば特許文献1の電気自動車と、特許文献2の電気自動車の駆動装置と、特許文献3の電動車両の駆動システムの制御装置および制御方法等が提案されている。特許文献1,2,3は、車両本体に取り付けられた複数の車輪を、該各車輪に独立して設けられたモータで回転させて走行移動するものである。
【0003】
しかし、通常は、車両本体に搭載された1つのバッテリーから供給される電力で各車輪のモータを駆動するため、バッテリーに充電された電力が放電或いは消耗する等して、モータを駆動するのに必要な電力が得られない場合、全モータの駆動が不可能となる。また、バッテリーに充電するか、充電済みバッテリーに交換するまで、走行移動させることができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平2−262806号公報
【特許文献2】特開平8−19110号公報
【特許文献3】特開2009−81919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明は、いずれか1つ又は複数の車輪に設けられたバッテリー或いは回路に異常が生じても、残りの車輪の回転により安定して走行移動させることができる電動車両の制御装置及びその制御装置を備えた電動車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、複数の車輪を備えた電動車両の制御装置であって、前記各車輪のそれぞれに、該車輪を回転するための電動モータと、該電動モータの駆動及び停止を制御するための制御手段と、該電動モータに対し電力を供給するバッテリーとを備え、前記各車輪の制御手段を統括して制御する主制御手段を有する電動車両の制御装置であることを特徴とする。
これにより、各車輪の制御手段を主制御手段で統括して制御し、各車輪の電動モータを独立して回転制御するので、電動車両を、所望する速度で所望する方向へ安定して走行移動させることができる。また、電動車両が右旋回又は左旋回する際に、内輪側車輪の電動モータを、外輪側車輪の電動モータよりも低速となるように独立して回転制御するので、安定したコーナーリングを実現することができる。
【0007】
この発明の態様として、前記バッテリーを、前記電動モータが駆動する駆動電圧より充電された電力の電圧が低く、並列接続された複数の低電圧バッテリーで構成するとともに、前記低電圧バッテリーから前記電動モータへ供給される電力を、前記電動モータが駆動する駆動電圧に昇圧する昇圧手段を備えることができる。
これにより、バッテリーに漏電が発生しても、印加された電圧が低いため、身体に与える衝撃が小さく、高電圧のバッテリーを搭載するよりも安全である。
【0008】
また、この発明の態様として、前記低電圧バッテリーを、12Vバッテリーで構成することができる。
これにより、バッテリーに充電された電力が放電或いは消耗する等して、即交換しなければならない場合、例えばガソリンスタンドや自動車修理工場等のバッテリー取扱店で即購入することができる。また、一般的に市販されている12Vバッテリーを使用しているので、安価で経済的である。
【0009】
また、この発明の態様として、前記車輪の回転力によって前記電動モータが起電する電力を前記バッテリーに供給し、該バッテリーに充電される電力の電圧を前記電動モータの駆動が許容される電圧に回生する回生手段を備えるとともに、前記昇圧手段を、前記電動モータが起電する高電圧の電力を、前記バッテリーへの充電が許容される低電圧に降圧する昇降圧回路で構成することができる。
これにより、バッテリーに充電される電力の電圧を、電動モータの駆動が許容される電圧に回生しながら、電動モータが起電する電力を、バッテリーへの充電が許容される電圧に降圧調整することができる。
【0010】
また、この発明の態様として、前記バッテリーに充電された電圧を検知する電圧検知手段と、前記電圧検知手段から出力される検知信号に基づいて、前記バッテリーの電圧が前記電動モータの駆動が許容される電圧であるか否かを判定する電圧判定手段と、前記電圧判定手段によって前記電動モータの駆動が許容される電圧であると判定された際に、その判定と対応する車輪に対し該電動モータの動力が伝達される連結状態に動作され、前記電圧判定手段によって前記電動モータの駆動が不可能な電圧であると判定された際に、その判定と対応する車輪に対し該電動モータの動力伝達が解除される解除状態とに動作される切替え手段とを備えることができる。
これにより、複数の車輪に設けられたバッテリーの電圧が、電動モータの駆動が許容される電圧であると判定された際には、そのバッテリーと対応する車輪と電動モータを連結して、車輪を電動モータで回転させることができる。また、いずれか1つ又は複数の車輪に設けられたバッテリーの電圧が、電動モータの駆動が不可能な電圧であると判定された際には、そのバッテリーと対応する車輪と電動モータの連結を解除して、車輪を自由回転させることができる。
【0011】
また、この発明の態様として、前記制御装置の回路異常を検知するための回路異常検知手段と、前記回路異常検知手段から出力される検知信号に基づいて、前記制御装置の回路に回路異常が発生したか否かを判定する回路異常判定手段を備えることができる。
これにより、回路が断線するか故障する等した回路異常ありと判定された制御装置を特定することができる。
【0012】
また、この発明の態様として、前記構成のうちいずれか一つに記載の制御装置を備えた電動車両を構成することができる。
これにより、電動車両を、所望する速度で所望する方向へ安定して走行移動させることができる。
【0013】
なお、昇圧手段及び昇降圧手段は、例えば昇圧チョッパー回路、降圧チョッパー回路、昇降圧チュッパー回路等を含むものである。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、複数の車輪の制御手段を主制御手段で統括して制御し、各車輪の電動モータを独立して回転制御するので、電動車両を、所望する速度で所望する方向へ安定して走行移動させることができる。また、いずれか1つ又は複数の車輪に設けられたバッテリー或いは回路に異常が生じても、残りの車輪を、該車輪の正常なバッテリーから供給される電力で回転させるので、修理工場或いは充電装置が設置された場所まで走行移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】前側1輪、後側2輪の3輪型電動車両及び制御装置を示す模式図。
【図2】車輪に設けられた制御装置及び主制御装置を示すブロック図。
【図3】制御装置及び主制御装置による制御動作を示すフローチャート。
【図4】前側2輪、後側1輪の3輪型電動車両及び制御装置を示す模式図。
【図5】前後2輪の4輪型電動車両及び制御装置を示す模式図。
【図6】走行開始時における電動モータの出力曲線を示す説明図。
【図7】1つの制御装置に主制御装置の制御機能を持たせた例を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0016】
図1は、前側1輪、後側2輪の3輪型電動車両10及び制御装置40を示す模式図、図2は、車輪20,30に設けられた制御装置40及び主制御装置41を示すブロック図、図3は、制御装置40及び主制御装置41による制御動作を示すフローチャートである。
【0017】
本実施例の電動車両10は、車両本体11の前側左右に2つの車輪20が操舵自在に取り付けられ、該車両本体11の後側中央に1つの車輪30が取り付けられた3輪型車両である。
【0018】
車輪20,30には、該車輪20,30を回転するための電動モータ50と、該電動モータ50に対し電力を供給するためのバッテリー51と、該電動モータ50の回転及び停止を制御するための制御部52と、バッテリー51の電圧(電圧や電力)を検知するための電圧検知センサー53と、後述する制御装置40の回路異常(断線等)を検知するための回路異常検知装置54と、電動モータ50が起電する電力でバッテリー51を回生するための回生回路55と、バッテリー51からの電力を電動モータ50が駆動する駆動電圧に昇圧及び/又は電動モータ50からの電力をバッテリー51への充電が許容される電圧に降圧するための昇降圧回路56を備えた制御装置40がそれぞれ独立して設けられている(図1参照)。
また、車輪20,30に設けられた制御装置40は、車輪20,30の制御装置40を統括して制御する主制御装置41に接続されている。
【0019】
さらにまた、車輪20,30と電動モータ50の間には、該車輪20,30に対し電動モータ50の回転力が伝達される連結状態と、該連結が解除される解除状態とに切替え動作する切替え装置57がそれぞれ独立して設けられている。
なお、電動モータ50は、36VDCモータで構成されている。また、バッテリー51は、電動モータ50が駆動する駆動電圧より充電された電力の電圧が低く、並列接続された複数の低電圧である12Vバッテリーで構成されている。
【0020】
主制御装置41は、車輪20,30の制御装置40を統括して制御する機能を備えている。
つまり、車輪20,30に設けられたいずれか一つ又は複数の制御装置40に故障が発生した場合、その故障した箇所の制御部52に代わり、電動モータ50の駆動及び停止と、電圧検知センサー53の検知動作と、回路異常検知装置54の検知動作と、回生回路55の回生動作と、昇降圧回路56の昇圧動作及び降圧動作と、切替え装置57の切替え動作とを制御する。
【0021】
前側車輪20の車軸21には、該車輪20の操舵角を可変するための操舵装置58が連結されている。また、操舵装置58には、電動モータ50の回転数を可変調節するためのアクセル59が設けられている。なお、車両本体11の足載せ部11aに、図示しない足踏み式のアクセルを設けてもよい。
【0022】
前記電動車両10には、前記制御装置40及び主制御装置41が備えられ、制御装置40の制御部52には、CPU60と、ROM61と、RAM62が内蔵されている(図2参照)。また、CPU60は、ROM61に格納されたプログラムに沿って、電動モータ50の駆動及び停止と、電圧検知センサー53の検知動作と、回路異常検知装置54の検知動作と、回生回路55の回生動作と、昇降圧回路56の昇圧動作及び降圧動作と、切替え装置57の切替え動作とを制御する。
【0023】
CPU60は、電圧検知センサー53から出力される検知信号に基づいて電圧を算出するとともに、電圧検知センサー53で検知された検知電圧と、RAM62に記憶された標準電圧とを比較して、バッテリー51に充電された電力の電圧が、電動モータ50の駆動が許容される電圧であるか否かを判定する。
【0024】
つまり、電動モータ50の駆動が許容される電圧であると判定された場合、その判定と対応するバッテリー51から電動モータ50へ電力を供給する回路を開成し、電動モータ50からバッテリー51へ電力を供給する回生回路55を閉成する。
【0025】
また、バッテリー51から電動モータ50へ供給される12Vの電力を、昇降圧回路56により電動モータ50の駆動が許容される36Vの電圧に昇圧して供給する。
【0026】
これにより、電動モータ50が、バッテリー51から供給される電力によって駆動され、その電動モータ50に直結された車輪20,30が回転される。
また、CPU60は、判定と対応する切替え装置57に連結信号を出力して、切替え装置57を連結状態に動作するか、連結状態を維持させる。
【0027】
一方、バッテリー51に充電された電力が放電或いは消耗する等して、バッテリー51に充電された電力の電圧が、電動モータ50の駆動が不可能な電圧であると判定された場合、その判定と対応するバッテリー51から電動モータ50へ電力を供給する回路を閉成し、電動モータ50からバッテリー51へ電力を供給する回路を開成する。
また、CPU60は、判定と対応する車輪20又は30の切替え装置57に解除信号を出力して、切替え装置57を解除状態に切替え動作する。これにより、車輪20又は30と電動モータ50の連結が解除される。
【0028】
さらにまた、CPU60は、回路異常検知装置54から出力される検知信号に基づいて、制御装置40や電動モータ50の回路に異常が発生したか否かを判定する。
つまり、制御装置40や電動モータ50に回路異常ありと判定された場合、その判定と対応する切替え装置57に解除信号を出力して、切替え装置57を、車輪20又は30と電動モータ50の連結が解除される解除状態に動作する。
【0029】
一方、回路異常なしと判定された場合、その判定と対応する切替え装置57に連結信号を出力して、切替え装置57を、車輪20又は30と電動モータ50が連結される連結状態に動作するか、連結状態を維持させる。
【0030】
回生回路55は、電動モータ50からバッテリー51へ電力を供給する回路上に設けられている。
つまり、CPU60によって、バッテリー51に充電された電力の電圧が、電動モータ50の駆動が不可能な電圧であると判定された際に開成され、該電動モータ50の駆動が許容される電圧であると判定された際に閉成される。
【0031】
なお、回生回路55の開成時は、バッテリー51から電動モータ50へ電力を供給する回路が閉成され、該回生回路55の閉成時は、バッテリー51から電動モータ50へ電力を供給する回路が開成される。
【0032】
昇降圧回路56は、電動モータ50とバッテリー51を接続する回路上に設けられている。
つまり、CPU60による判定に基づいて、バッテリー51から電動モータ50へ供給される低電圧(12V)の電力を、電動モータ50の駆動が許容される高電圧(36V)の電圧に昇圧する昇圧動作と、電動モータ50からバッテリー51へ供給される該電動モータ50が起電する高電圧の電力を、バッテリー51への充電が許容される低電圧(12V)に降圧する降圧動作とに動作される。
【0033】
切替え装置57は、車輪20,30と電動モータ50との間にそれぞれ独立して設けられている。
つまり、CPU60から連結信号が出力された際に、車輪20,30と電動モータ50とを回転力が伝達される連結状態に動作される。
また、CPU60から解除信号が出力された際に、車輪20,30と電動モータ50との連結が解除される解除状態に動作される。これにより、車輪20,30の自由回転が許容される。
【0034】
次に、電動車両10の制御装置40及び制御装置40を備えた電動車両10の制御法を、図3に示すフローチャートに基づいて説明する。
【0035】
先ず、車両本体11の操舵装置58或いは足載せ部11aに設けられた図示しない電源スイッチをON操作すると(ステップ1)、車輪20,30のバッテリー51に充電された電力の電圧が電圧検知センサー53で検知され、その検知した電圧が制御部52のCPU60に出力される(ステップ2)。
【0036】
CPU60は、電圧検知センサー53で検知された検知電圧と、RAM62に記憶された標準電圧とを比較して、バッテリー51に充電された電力の電圧が、電動モータ50の駆動が許容される電圧であるか否かを判定する(ステップ3)。
また、制御装置40や電動モータ50の回路が回路異常検知装置54で検知され、その検知した検知信号がCPU60に出力される(ステップ4)。
【0037】
CPU60は、回路異常検知装置54から出力される検知信号に基づいて、制御装置40や電動モータ50の回路に異常が発生したか否かを判定する(ステップ5)。
【0038】
つまり、制御装置40や電動モータ50に回路異常なしと判定された場合、バッテリー51から電動モータ50へ電力を供給する回路を開成し、電動モータ50からバッテリー51へ電力を供給する回路を閉成する。かつ、回生回路55を開成する(ステップ6)。
【0039】
また、バッテリー51から供給される12Vの電圧に印加された電力を、電動モータ50が駆動する36Vの電圧に昇降圧回路56で昇圧するとともに(ステップ7)、その昇圧された電力を電動モータ50へ供給して、電動モータ50を駆動する。
【0040】
さらに、車輪20,30の切替え装置57を、車輪20,30と電動モータ50が連結される連結状態に動作するか、連結状態を維持させる(ステップ8)。
【0041】
次に、操舵装置58のアクセル59を開操作すれば(ステップ9)、その開操作に応じてバッテリー51から電動モータ50へ供給される電力が徐々に増加するので、電動モータ50の回転数が上昇し、車輪20,30の回転速度が徐々に速くなる。
【0042】
つまり、前側車輪20,20と後側車輪30が、該車輪20,30のバッテリー51から供給される電力で独立して回転される(ステップ10)。
これにより、電動車両10を、操舵装置58の操舵に応じて所望する速度で所望する方向へ走行移動(前進又は後進)させることができる。
【0043】
走行開始時において、主制御装置41は、車輪20,30の制御装置40を統括して制御するとともに、バッテリー51から電動モータ50へ供給される電圧(及び電流)を調整して、図6に示すように、電動モータ50の出力が曲線Aを描くようにフィードバック制御する。しかし、フィードバック制御しなければ、同図に示すように、電動モータ50の出力が曲線Bを描くことになり、消費電力が大きくなる。
【0044】
これにより、走行開始時の突入電流が下がり、消費電力を可能な限り少なくすることができる。また、バッテリー51の過放電がなくなるため、バッテリー51の寿命を2倍以上に延ばすことができる。
【0045】
また、主制御装置41は、電動車両10が右旋回又は左旋回する際に、操舵装置58の操舵角度に応じて、内輪側車輪30の電動モータ50を、外輪側車輪30の電動モータ50よりも低速となるように、車輪20,30の制御装置40を統括して制御する。
つまり、車輪20,30の制御装置40は、主制御装置41から出力される指令信号に基づいて、左右の電動モータ50を独立して回転制御するので、安定したコーナーリングを実現することができる。
【0046】
また、例えば断線や故障等が原因で、いずれか1つ又は2つの電動モータ50が駆動不能になった場合、その駆動不能と判定された箇所の切替え装置57に解除信号を出力して解除状態に動作させる。
【0047】
これにより、車輪20又は30と電動モータ50の連結が解除され、車輪20又は30の自由回転が可能となる。
【0048】
残りの駆動可能な電動モータ50をバッテリー51から供給される電力で駆動して、該電動モータ50が連結された残りの車輪20又は30を回転させるので、電動車両10を、修理工場或いは充電装置が設置された場所まで走行移動させることができる。
【0049】
次に、アクセル59を閉操作すれば(ステップ11)、その閉操作に応じてバッテリー51から電動モータ50へ供給される電力が徐々に減少するので、電動モータ50の回転数が下降し、車輪20,30の回転速度が徐々に遅くなる。
【0050】
さらに、アクセル59を停止位置まで戻し操作すると、バッテリー51から電動モータ50へ電力を供給する回路が閉成され、最終的に回転が停止される(ステップ12)。
これにより、電動車両10を、所望する場所に停止させることができる。この後、電源スイッチをOFF操作すると(ステップ13)、車両全体への通電が解除される。
【0051】
一方、バッテリー51に充電された電力が放電或いは消耗する等して、右側車輪20の電圧検知センサー53で検知された検知電圧が、RAM62に記憶された標準電圧より低いと判定された場合、及び/又は、制御装置40や電動モータ50に回路異常ありと判定された場合、CPU60は、その判定と対応する切替え装置57に解除信号を出力して、右側車輪20と電動モータ50との連結が解除される解除状態に動作させる(ステップ14)。
【0052】
また、バッテリー51に充電された電力の電圧が、電動モータ50の駆動が許容される電圧であると判定された場合、その判定と対応する左側車輪20及び後側車輪30の切替え装置57に連結信号を出力して連結状態を維持させる。
【0053】
例えば右側車輪20の電動モータ50や制御装置40が故障するか、電動モータ50の駆動が不可能な電圧までバッテリー51の電圧が低下した場合、右側車輪20と電動モータ50の連結を解除する。
【0054】
残りの左側車輪20及び後側車輪30の電動モータ50をバッテリー51から供給される電力で駆動して、該電動モータ50が連結された左側車輪20及び後側車輪30を回転させて走行移動させる。
【0055】
CPU60は、電動モータ50の駆動が不可能な電圧であると判定されたバッテリー51から該電動モータ50へ電力を供給する回路を閉成し、電動モータ50からバッテリー51へ電力を供給する回路を開成する。かつ、回生回路55を開成する(ステップ15)。
左側車輪20及び後側車輪30の電動モータ50を、該車輪20,30のバッテリー51から供給される昇降圧回路56で昇圧された電力によって回転させるので、電動車両10を、修理工場或いは充電装置が設置された場所まで走行移動させることができる。
【0056】
また、右側車輪20と電動モータ50の連結が解除されているので、走行時において、右側車輪20に対し電動モータ50の回動抵抗が付加されることがなく、電動車両10の走行移動がスムースに行える。
【0057】
さらに、電動車両10の走行力を利用して、電動モータ50との連結が解除された右側車輪20を回転させることにより、電動モータ50の軸中心に挿入された右側車輪20の車軸21が、電動モータ50の回転方向(出力方向)とは逆の方向へ回転することになる。
これにより、電動モータ50の内部コイルに誘導電流が発生し、バッテリー51に充電される電力の電圧より高電圧の電力が起電される。
【0058】
電動モータ50によって起電された電力を、バッテリー51への充電が許容される電圧に昇降圧回路56で降圧するとともに(ステップ16)、その降圧された電力を回生回路55で回生しながら、右側車輪20のバッテリー51へ供給して、バッテリー51の回生を開始する(ステップ17)。
【0059】
また、右側車輪20の電動モータ50が起電する電力をバッテリー51に供給しながら、該バッテリー51の電圧を電圧検知センサー53で検知し、その検知した検知信号をCPU60に出力する(ステップ18)。
【0060】
CPU60は、電圧検知センサー53で検知された検知電圧と、RAM62に記憶された標準電圧とを比較して、電動モータ50の駆動が許容される電圧であるか否かを随時判定する。これにより、バッテリー51に充電された電力の電圧を、電動モータ50の駆動が許容される電圧に回生する(ステップ19)。
【0061】
電動モータ50の駆動が許容される電圧であると判定された場合、回生されたバッテリー51から電動モータ50へ電力を供給する回路を開成し、電動モータ50からバッテリー51へ電力を供給する回路を閉成する(ステップ20)。また、右側車輪20の切替え装置57に連結信号を出力して連結状態に動作させる。
【0062】
これにより、前側車輪20,20と後側車輪30が、該車輪20,30,30のバッテリー51から供給される電力で独立して回転されることになり、電動車両10を、操舵装置58の操舵に応じて所望する速度で所望する方向へ走行移動させることができる(ステップ8〜ステップ13)。
【0063】
さらに、前側車輪20,20のバッテリー51に充電された電力が放電或いは消耗する等して、前側車輪20,20の電動モータ50を駆動することが不可能な電圧であると判定された場合、前記と同様に、前側車輪20,20の切替え装置57を解除状態に動作させ、該前側車輪20,20と電動モータ50の連結を解除する。
【0064】
つまり、後側車輪30の電動モータ50を、該電動モータ50を駆動することが可能な電圧を有するバッテリー51から供給される電力で回転させて、電動車両10を走行移動させる。
【0065】
また、電動車両10の走行力を利用して、前側車輪20,20を走行方向に自由回転させながら、該車輪20,20に直結された電動モータ50が起電する電力を昇降圧回路56で降圧し、回生回路55を介して、前側車輪20,20のバッテリー51に供給する。これにより、電動車両10を、修理工場或いは充電装置が設置された場所まで走行移動させることができる。
【0066】
以上のように、複数の車輪20,30の制御装置40を1つの主制御装置41で統括して制御し、車輪20,30の電動モータ50を独立して回転するので、電動車両10を、所望する速度で所望する方向へ安定して走行移動させることができる。また、いずれか1つ又は複数の車輪20,30に設けられたバッテリー51或いは回路に異常が生じても、残りの車輪20,30を、該車輪20,30の正常なバッテリー51から供給される電力で回転させるので、修理工場或いは充電装置が設置された場所まで走行移動させることができる。
【0067】
また、一つの電動モータ50の出力及びバッテリー51の容量が小さくて済むとともに、バッテリー51から供給される電圧を昇圧して使用するので、バッテリー51の容量が小さくて済み、小さい電力で走行することができる。
【0068】
これにより、電動モータ50やバッテリー51の小型化、車両全体の軽量化が図れる。また、小型の電動モータ50や容量が小さいバッテリー51は安価であるため、車両全体の製造コストを低減することができる。
【0069】
さらに、バッテリー51の寿命が長くなり、走行距離の延長を図ることができるとともに、一つの電動モータ50やバッテリー51に付加される負担が軽減されるため、耐久性が向上する。
【0070】
さらにまた、バッテリー51から供給される12Vの電圧に印加された電力を、電動モータ50が駆動する36Vの電圧に昇降圧回路56で昇圧して使用することにより、バッテリー51に漏電が発生しても、印加された電圧が低いため、身体に与える衝撃が小さく、高電圧のバッテリーを搭載するよりも安全である。
【0071】
図4は、前側2輪、後側1輪の3輪型電動車両10及び制御装置40を示す模式図である。なお、本例に於いて、前記実施例と同一構成の部分は同一の符号を記してその詳細な説明を省略する。
【0072】
本例の電動車両10は、車両本体11の前側中央に1つの車輪20が操舵自在に取り付けられ、該車両本体11の後側左右に2つの車輪30が取り付けられた前側2輪の3輪型車両である。
【0073】
つまり、前記実施例と同様に、車輪20,30の制御装置40を主制御装置41で統括して制御し、車輪20,30を電動モータ50により独立して回転させる。
【0074】
これにより、電動車両10を、所望する速度で所望する方向へ走行移動させることができる。また、バッテリー51の電力が放電或いは消耗するか、回路が断線するか故障する等しても、修理工場或いは充電装置が設置された場所まで走行移動させることができ、前記実施例と略同等の作用及び効果を奏することができる。
【0075】
図5は、前後2輪の4輪型電動車両70及び制御装置40を示す模式図である。なお、本例に於いて、前記実施例と同一構成の部分は同一の符号を記してその詳細な説明を省略する。
【0076】
本例の電動車両70は、車両本体71の前側左右に車輪20が操舵自在に取り付けられ、該車両本体71の後側左右に車輪30が取り付けられた4輪型車両である。
【0077】
つまり、前記実施例と同様に、前側左右の車輪20及び後側左右の車輪30の制御装置40を主制御装置41で統括して制御し、前側左右の車輪20及び後側左右の車輪30を電動モータ50により独立して回転させる。
【0078】
これにより、電動車両10を、所望する速度で所望する方向へ走行移動させることができる。また、バッテリー51の電力が放電或いは消耗するか、回路が断線するか故障する等しても、修理工場或いは充電装置が設置された場所まで走行移動させることができ、前記実施例と略同等の作用及び効果を奏することができる。
【0079】
なお、前側車輪20の車軸21には、左右車輪20の操舵角を可変するための操舵装置58が連結されている。また、図示しない運転席の足元には、足踏み式のアクセルが設けられている。
【0080】
この発明の構成と、前記実施形態との対応において、
この発明の制御手段、電圧判定手段、回路異常判定手段は、制御部52に対応し、
以下同様に、
主制御手段は、主制御装置41に対応し、
低電圧バッテリーは、バッテリー51に対応し、
電圧検知手段は、電圧検知センサー53に対応し、
昇圧手段及び昇降圧手段は、昇降圧回路56に対応し、
回路異常検知手段は、回路異常検知装置54に対応し、
回生手段は、回生回路55に対応し、
切替え手段は、切替え装置57に対応するも、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、請求項に示される技術思想に基づいて応用することができ、多くの実施の形態を得ることができる。
【0081】
前記実施例では、車輪20,30の制御装置40を、独立して設けられた1つの制御装置40で統括して制御するが、例えば図7に示すように、主制御装置41の制御機能を、いずれか1つの制御装置40に持たせてもよい。この場合、残りの制御装置40は、主制御装置41の制御機能を有する1つの制御装置40により統括して制御されるので、前記実施例と略同等の作用及び効果を奏することができる。
【0082】
また、実施例では、1つの昇降圧回路56にて電力を昇圧或いは降圧するが、例えば車輪20,30に、バッテリー51から供給される低電圧の電力を、電動モータ50が駆動する駆動電圧に昇圧する昇圧回路と、電動モータ50が起電する高電圧の電力を、バッテリー51への充電が許容される電圧に降圧する降圧回路とを設けてもよい。
【0083】
さらにまた、切替え装置57の切替え動作を制御装置40又は主制御装置41で自動制御する代わりに、例えばレバーやボタン等で構成される手動式の切替え機構を設けてもよい。
【符号の説明】
【0084】
10…電動車両
11…車両本体
20,30…車輪
40…制御装置
41…主制御装置
50…電動モータ
51…バッテリー
52…制御部
53…電圧検知センサー
54…回路異常検知装置
55…回生回路
56…昇降圧回路
57…切替え装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の車輪を備えた電動車両の制御装置であって、
前記各車輪のそれぞれに、該車輪を回転するための電動モータと、該電動モータの駆動及び停止を制御するための制御手段と、該電動モータに対し電力を供給するバッテリーとを備え、
前記各車輪の制御手段を統括して制御する主制御手段を有する
電動車両の制御装置。
【請求項2】
前記バッテリーを、
前記電動モータが駆動する駆動電圧より充電された電力の電圧が低く、並列接続された複数の低電圧バッテリーで構成するとともに、
前記低電圧バッテリーから前記電動モータへ供給される電力を、前記電動モータが駆動する駆動電圧に昇圧する昇圧手段を備えた
請求項1に記載の電動車両の制御装置。
【請求項3】
前記低電圧バッテリーを、12Vバッテリーで構成した
請求項2に記載の電動車両の制御装置。
【請求項4】
前記車輪の回転力によって前記電動モータが起電する電力を前記バッテリーに供給し、該バッテリーに充電される電力の電圧を前記電動モータの駆動が許容される電圧に回生する回生手段を備えるとともに、
前記昇圧手段を、
前記電動モータが起電する高電圧の電力を、前記バッテリーへの充電が許容される低電圧に降圧する昇降圧回路で構成した
請求項1に記載の電動車両の制御装置。
【請求項5】
前記バッテリーに充電された電圧を検知する電圧検知手段と、
前記電圧検知手段から出力される検知信号に基づいて、前記バッテリーの電圧が前記電動モータの駆動が許容される電圧であるか否かを判定する電圧判定手段と、
前記電圧判定手段によって前記電動モータの駆動が許容される電圧であると判定された際に、その判定と対応する車輪に対し該電動モータの動力が伝達される連結状態に動作され、
前記電圧判定手段によって前記電動モータの駆動が不可能な電圧であると判定された際に、その判定と対応する車輪に対し該電動モータの動力伝達が解除される解除状態とに動作される切替え手段とを備えた
請求項1に記載の電動車両の制御装置。
【請求項6】
前記制御装置の回路異常を検知するための回路異常検知手段と、
前記回路異常検知手段から出力される検知信号に基づいて、前記制御装置の回路に回路異常が発生したか否かを判定する回路異常判定手段を備えた
請求項1に記載の電動車両の制御装置。
【請求項7】
前記請求項1〜6のうちいずれか一つに記載の制御装置を備えた電動車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−120390(P2011−120390A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−275999(P2009−275999)
【出願日】平成21年12月4日(2009.12.4)
【出願人】(301048563)株式会社SAK (3)
【出願人】(506043295)
【Fターム(参考)】