説明

電動車両

【課題】電動車両に搭載された電力変換器を構成するスイッチング素子の熱ストレスが過大となることを抑制して、スイッチング素子の長寿命化を図る。
【解決手段】コンバータ15およびインバータ20,30は、車両駆動力を発生するためのモータジェネレータMG1,MG2と、メインバッテリBとの間で電力変換を実行する。コンバータ15は、スイッチング素子Q1,Q2を含む。スイッチング素子の温度が上昇するようなメインバッテリの充放電を生じさせる負荷動作におけるスイッチング素子の温度変化量が過大にならないように、メインバッテリBの電流、電力の制限値が設定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電動車両に関し、より特定的には、電動車両に搭載された電力変換器を構成する電力用半導体スイッチング素子(以下、単に「スイッチング素子」とも称する)の熱ストレスを抑制するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ハイブリッド自動車、電気自動車、燃料電池自動車のような、車両駆動力を発生するための電動機を搭載した電動車両が、環境の点から注目を集めている。
【0003】
特開2009−219200号公報(特許文献1)には、このような電動車両の1つであるハイブリッド自動車に搭載されたチョッパ型のコンバータの構成部品であるリアクトルの温度上昇を抑制するための車両制御が記載されている。
【0004】
同様に、特開2009−12702号公報(特許文献2)には、ハイブリッド自動車に搭載されたインバータの出力性能の低下を抑制するために、コンデンサの過熱を防ぐことが記載されている。特に特許文献2では、コンデンサの温度を精度よく推定するとともに、推定したコンデンサの温度に基づいて平滑コンデンサの過熱を防止するように制御することが記載されている。
【0005】
また、特開2009−171766号公報(特許文献3)は、特許文献1と同様のコンバータにおいて、冷却装置の異常時にはリアクトルに流れる電流の直流成分およびリップル成分を抑制することによって、リアクトルの発熱を抑制する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−219200号公報
【特許文献2】特開2009−12702号公報
【特許文献3】特開2009−171766号公報
【特許文献4】特開2003−134606号公報
【特許文献5】特開2008−228429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1〜3には、ハイブリッド自動車に代表される電動車両の電源システムにおいて、その構成部品であるリアクトルやコンデンサの過度の温度上昇によって、機器故障が発生することを抑制することが記載される。すなわち、これらの構成部品の温度が高温となったときに、当該素子の通過電流を抑制するために各種の制御が実行される。
【0008】
一方、電源システムの主要な構成部品であるスイッチング素子は、小面積の電気的接合部分を有するので、温度そのものが高いことによるダメージのみならず、短時間での温度変化によって受ける熱ストレスが、素子寿命に大きく影響する。具体的には、このようなこのような温度変化に伴う膨張・収縮によって生じる応力が繰返し作用することによって、断線等を生じさせる虞がある。したがって、スイッチング素子の保護については、素子温度の単なる高低のみに止まらず、短時間での温度変化量についても考慮することが必要である。
【0009】
特に、電動車両に搭載された電源システムでは、ドライバがアクセルペダルを操作した加速時や、エンジン始動時等、短時間に大きな電流が発生する機会が多い。このため、ユーザの運転特性や日常的な走行路といった使用環境によっては、スイッチング素子での短時間での温度変化量が大きくなる傾向が生じ得る。このような傾向を放置すると、熱ストレスに起因してスイッチング素子の寿命が短くなる虞がある。これに対して、素子温度そのものに着目した制御を行なう特許文献1〜3の技術では、上述のようなスイッチング素子の熱ストレスに十分対応できない可能性がある。
【0010】
この発明は、このような問題点を解決するためになされたものであって、この発明の目的は、電動車両に搭載された電力変換器を構成するスイッチング素子の熱ストレスが過大となることを抑制して、スイッチング素子の長寿命化を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明によれば、車両駆動力を発生するための電動機を搭載した電動車両であって、電動機に対して入出力される電力を蓄積するための蓄電装置と、スイッチング素子のオンオフ制御によって電動機および蓄電装置の間で電力変換を実行するように構成された電力変換器と、電力変換を制御するための制御装置とを備える。制御装置は、検出部と、制限設定部とを含む。検出部は、スイッチング素子の温度が上昇するような蓄電装置の充放電を生じさせる負荷動作の発生を検出するように構成される。制限設定部は、各負荷動作におけるスイッチング素子の温度変化量に応じて、スイッチング素子の通過電流を抑制するための電力変換における制限値を設定するように構成される。
【0012】
好ましくは、制御装置は、記憶部と、実績管理部と、比較部とを含む。記憶部は、温度変化量についての予め定められた基準分布を記憶するように構成される。実績管理部は、と負荷動作が検出される毎に、当該負荷動作における温度変化量の実績を累積的に記憶するように構成される。比較部は、実績管理部に累積された温度変化量の実績分布と、記憶部に記憶された基準分布とを比較するように構成される。制限設定部は、比較部による比較結果に基づいて、制限値を設定する。
【0013】
さらに好ましくは、比較部は、基準分布および実績分布の比較に従って基準分布に対する実績分布の高温側の外れ度合いを定量的に示すパラメータ値を算出するように構成される。制限設定部は、パラメータ値の上昇に応じて制限値をデフォルト値から低下させるように制限値を設定する。
【0014】
さらに好ましくは、制限設定部は、制限値をデフォルト値から低下させているときに、パラメータ値が所定値まで低下すると、制限値をデフォルト値に復帰させる。
【0015】
特にこのような構成では、制限値は、蓄電装置の電流上限値と、蓄電装置の出力電力上限値の制限値との少なくとも一方を含む。
【0016】
また好ましくは、比較部は、電動車両が一定距離を走行する毎に、基準分布および実績分布を比較する。
【0017】
あるいは好ましくは、比較部は、所定の一定期間が経過する毎に、基準分布および実績分布を比較する。
【0018】
好ましくは、制限設定部は、負荷動作の発生時に、負荷動作の開始時からのスイッチング素子の温度上昇量に応じて制限値を設定する。
【0019】
さらに好ましくは、制限設定部は、温度上昇量が閾値よりも高いときに、制限値をデフォルト値から低下させるように制限値を設定する。閾値は、温度変化量についての予め定められた基準分布における平均温度よりも高い。
【0020】
特にこのような構成では、制限値は、蓄電装置の電流上限値と、蓄電装置の充放電制限時間との少なくとも一方を含む。
【0021】
また好ましくは、制限設定部は、負荷動作の発生時には、スイッチング素子の通過電流に対応する電流データに応じて制限値を設定する。
【0022】
さらに好ましくは、制限設定部は、電流データが閾値よりも高いときに、制限値をデフォルト値から低下させるように制限値を設定する。閾値は、温度変化量についての予め定められた基準分布に基づいて設定される。
【0023】
特にこのような構成では、制限値は、電力変換器におけるスイッチング素子のスイッチング周波数上限値を含む。
【0024】
好ましくは、制限設定部は、スイッチング素子の冷却能力を示す温度データをさらに反映して、冷却能力が高いときには冷却能力が低いときよりも制限が緩和されるように、制限値を設定する。
【発明の効果】
【0025】
この発明によれば、電動車両に搭載された電力変換器を構成するスイッチング素子の熱ストレスが過大となることを抑制して、スイッチング素子の長寿命化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施の形態による電動車両の一例として示されるハイブリッド自動車の構成例を説明するブロック図である。
【図2】スイッチング素子の温度変化の態様を説明するための概念図である。
【図3】熱ストレスに対応する寿命設計を説明するための概念図である。
【図4】図1に示したハイブリッド自動車の走行制御を説明する機能ブロック図である。
【図5】実施の形態1による温度変化制限部の構成を説明する機能ブロック図である。
【図6】実施の形態1による制限設定部による制限値の設定を概略的に説明する概念図である。
【図7】本発明の実施の形態1による電動車両におけるスイッチング素子の温度変化量の抑制制御を説明するためのフローチャートである。
【図8】実施の形態2による温度変化制限部の構成を説明する機能ブロック図である。
【図9】実施の形態2による制限設定部による制限値の設定を概略的に説明する概念図である。
【図10】本発明の実施の形態2による電動車両におけるスイッチング素子の温度変化量の抑制制御を説明するためのフローチャートである。
【図11】実施の形態2の変形例による制限設定部による制限値の設定を概略的に説明する第1の概念図である。
【図12】実施の形態2の変形例による制限設定部による制限値の設定を概略的に説明する第2の概念図である。
【図13】本発明の実施の形態2の変形例による電動車両におけるスイッチング素子の温度変化量の抑制制御を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、以下図中の同一または相当部分には同一符号を付してその説明は原則的に繰返さないものとする。
【0028】
[実施の形態1]
図1は、本発明の実施の形態による電動車両の一例として示されるハイブリッド自動車100の構成例を説明するブロック図である。
【0029】
図1を参照して、ハイブリッド自動車100は、エンジン110と、動力分割機構120と、モータジェネレータMG1,MG2と、減速機130と、駆動軸140および車輪(駆動輪)150を備える。
【0030】
ハイブリッド自動車100は、さらに、モータジェネレータMG1,MG2を駆動制御するための、「蓄電装置」の代表例として示されるメインバッテリBと、コンバータ15と、平滑コンデンサC0,C1と、インバータ20,30と、制御装置50とを備える。
【0031】
エンジン110は、たとえば、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関により構成される。エンジン110には、冷却水の温度を検知する冷却水温センサ112が設けられる。冷却水温センサ112の出力は、制御装置50へ送出される。
【0032】
動力分割機構120は、エンジン110の発生する動力を、駆動軸140への経路とモータジェネレータMG1への経路とに分割可能に構成される。動力分割機構120としては、サンギヤ、プラネタリギヤおよびリングギヤの3つの回転軸を有する遊星歯車機構を用いることができる。
【0033】
たとえば、モータジェネレータMG1のロータを中空としてその中心にエンジン110のクランク軸を通すことで、動力分割機構120にエンジン110とモータジェネレータMG1,MG2とを機械的に接続することができる。具体的には、モータジェネレータMG1のロータをサンギヤに接続し、エンジン110の出力軸をプラネタリギヤに接続し、かつ、出力軸125をリングギヤに接続する。モータジェネレータMG2の回転軸とも接続された出力軸125は、減速機130を介して車輪150を回転駆動するための駆動軸140に接続される。なお、モータジェネレータMG2の回転軸に対する減速機をさらに組込んでもよい。
【0034】
モータジェネレータMG1は、エンジン110によって駆動される発電機として動作し、かつ、エンジン110の始動を行なう電動機として動作するものとして、電動機および発電機の機能を併せ持つように構成される。同様に、モータジェネレータMG2は、出力軸125および減速機130を介して、駆動軸140へ出力が伝達されるようにハイブリッド自動車100に組込まれる。さらに、モータジェネレータMG2は、車輪150の回転方向と反対方向の出力トルクを発生することによって回生発電を行なうように電動機および発電機への機能を併せ持つように構成される。すなわち、上記モータジェネレータMG1,MG2は、車両駆動用を発生するための「電動機」に対応する。
【0035】
このように、モータジェネレータMG1,MG2およびエンジン110の出力軸が動力分割機構120を介して連結される。これによりハイブリッド自動車100では、たとえば、エンジン110の回転数を燃費上好ましい領域に固定した上で、運転者のアクセルペダル70の操作による加速要求に対しては、モータジェネレータMG2のトルク増加(回転数増加)によって対応できる。あるいは、エンジン走行が低燃費領域となる低速走行時には、エンジン110を停止してモータジェネレータMG2の出力のみで走行する走行モードを選択することができる。
【0036】
次に、モータジェネレータMG1,MG2を駆動制御するための構成について説明する。
【0037】
メインバッテリBとしては、ニッケル水素またはリチウムイオン等の二次電池を適用可能である。なお、本実施の形態では、二次電池で構成されたメインバッテリBを「蓄電装置」とする構成について説明するが、メインバッテリBに代えて、電気二重層キャパシタ等の蓄電装置を適用することも可能である。
【0038】
メインバッテリBが出力するバッテリ電圧Vbは電圧センサ10によって検知され、メインバッテリBに入出力されるバッテリ電流Ibは電流センサ11によって検知される。さらに、メインバッテリBには、温度センサ12が設けられる。電圧センサ10、電流センサ11および温度センサ12によって検出された、バッテリ電圧Vb、バッテリ電流Ibおよびバッテリ温度Tbは、制御装置50へ出力される。
【0039】
メインバッテリBおよびコンバータ15は、接地ライン5および電源ライン6により接続される。平滑コンデンサC1は、接地ライン5および電源ライン6の間に接続される。なお、メインバッテリBの正極端子および電源ライン6の間、ならびに、メインバッテリBの負極端子および接地ライン5の間には、電源システムのオン時(車両運転時)にオンされ、電源システムのオフ時(車両運転停止時)にオフされるシステムメインリレー(図示せず)が設けられる。
【0040】
コンバータ15は、リアクトルLと、スイッチング制御される電力用半導体素子(以下、「スイッチング素子」と称する)Q1,Q2とを含む。リアクトルLは、スイッチング素子Q1およびQ2の接続ノードと電源ライン6の間に接続される。
【0041】
また、平滑コンデンサC0は、電源ライン7および接地ライン5の間に接続される。電圧センサ13は、電源ライン7および接地ライン5間の直流電圧VHを検出する。
【0042】
電力用半導体スイッチング素子Q1およびQ2は、電源ライン7および接地ライン5の間に直列に接続される。スイッチング素子Q1およびQ2のオンオフは、制御装置50からのスイッチング制御信号SCNVによって制御される。本実施の形態において、スイッチング素子としては、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、電力用MOS(Metal Oxide Semiconductor)トランジスタあるいは、電力用バイポーラトランジスタ等を用いることができる。スイッチング素子Q1,Q2に対しては、逆並列ダイオードD1,D2が配置されている。
【0043】
インバータ20および30の直流電圧側は、共通の接地ライン5および電源ライン7を介して、コンバータ15と接続される。インバータ20および30の各々は、図示しない複数のスイッチング素子により構成される一般的な3相インバータであるため、詳細な構成については説明を省略する。
【0044】
モータジェネレータMG1は、固定子に設けられたU相コイル巻線U1、V相コイル巻線V1およびW相コイル巻線W1と、図示しない回転子とを含む。U相コイル巻線U1、V相コイル巻線V1およびW相コイル巻線W1の一端は、中性点N1で互いに接続され、その他端は、インバータ20の各相アーム(図示せず)とそれぞれ接続される。インバータ20は、制御装置50からのスイッチング制御信号SINV1に応答したスイッチング素子(図示せず)のオンオフ制御(スイッチング制御)により、双方向の直流/交流電力変換を行なう。
【0045】
モータジェネレータMG2は、モータジェネレータMG1と同様に構成されて、固定子に設けられたU相コイル巻線U2、V相コイル巻線V2およびW相コイル巻線W2と、図示しない回転子とを含む。モータジェネレータMG1と同様に、U相コイル巻線U2、V相コイル巻線V2およびW相コイル巻線W2の一端は、中性点N2で互いに接続され、その他端は、インバータ30の図示しない各相アームとそれぞれ接続される。
【0046】
インバータ30は、制御装置50からのスイッチング制御信号SINV2に応答したスイッチング素子(図示せず)のオンオフ制御(スイッチング制御)により、インバータ20と同様に、双方向の直流/交流電力変換を行なう。
【0047】
モータジェネレータMG1,MG2の各々には電流センサ27および回転角センサ(レゾルバ)28が設けられる。三相電流iu,iv,iwの瞬時値の和は零であるので、図1に示すように電流センサ27は2相分のモータ電流(たとえば、V相電流ivおよびW相電流iw)を検出するように配置すれば足りる。回転角センサ28は、モータジェネレータMG1,MG2の図示しない回転子の回転角θを検出し、その検出した回転角θを制御装置50へ送出する。制御装置50では、回転角θに基づきモータジェネレータMG1,MG2の回転数Nmt(回転角速度ω)を算出することができる。
【0048】
これらのセンサによって検出された、モータジェネレータMG1のモータ電流MCRT(1)およびロータ回転角θ(1)ならびに、モータジェネレータMG2のモータ電流MCRT(2)およびロータ回転角θ(2)は、制御装置50へ入力される。
【0049】
このように、図1の構成例では、コンバータ15およびインバータ20が、スイッチング素子のオンオフ制御によって、モータジェネレータMG1,MG2およびメインバッテリBの間で電力変換を実行するように構成された「電力変換器」に対応する。
【0050】
電子制御ユニット(ECU)で構成される制御装置50は、マイクロコンピュータ(図示せず)、RAM(Random Access Memory)51およびROM(Read Only Memory)52を含んで構成される。制御装置50は、ROM52に予め格納された所定プログラム処理に従って、モータ指令に従ってモータジェネレータMG1,MG2が動作するように、コンバータ15およびインバータ20,30のスイッチング制御のためのスイッチング制御信号SCNV,SINV1,SINV2を生成する。あるいは、ECU50の少なくとも一部は、電子回路等のハードウェアにより所定の数値・論理演算処理を実行するように構成されてもよい。
【0051】
さらに、制御装置50には、メインバッテリBに関する、充電率(SOC:State of Charge)や充放電制限を示す入力電力上限値Win,出力電力上限値Wout等の情報が入力される。これにより、制御装置50は、メインバッテリBの過充電あるいは過放電が発生しないように、モータジェネレータMG1,MG2での消費電力および発電電力(回生電力)を必要に応じて制限するパワー管理機能を有する。パワー管理の詳細については、後ほど図4を用いて詳細に説明する。
【0052】
また、本実施の形態では、単一の制御装置(ECU)50によってインバータ制御におけるスイッチング周波数を切換える機構について説明したが、複数の制御装置(ECU)の協調動作によって同様の制御構成を実現することも可能である。
【0053】
周知のように、運転者によるハイブリッド自動車100の加速および減速・停止指令は、アクセルペダル70およびブレーキペダル71の操作により入力される。運転者によるアクセルペダル70およびブレーキペダル71の操作(踏込量)は、アクセル開度センサ73およびブレーキペダル踏込量センサ74によって検知される。
【0054】
アクセル開度センサ73およびブレーキペダル踏込量センサ74は、運転者によるアクセルペダル70およびブレーキペダル71の踏込量に応じた電圧をそれぞれ出力する。アクセル開度センサ73およびブレーキペダル踏込量センサ74の出力信号ACCおよびBRKは、制御装置50へ入力される。
【0055】
次に、モータジェネレータMG1,MG2の駆動制御におけるコンバータ15およびインバータ20,30の動作について説明する。
【0056】
コンバータ15は、電源ライン6の直流電圧と、電源ライン7の直流電圧VHとの間で、双方向の直流電圧変換を実行する。より具体的には、コンバータ15は、制御装置50からのスイッチング制御信号SCNVに基づいてスイッチング素子Q1,Q2をオンオフ制御することによって、電圧指令値VHrefに従って直流電圧VHを制御する。基本的には、各スイッチング周期内でスイッチング素子Q1およびQ2が相補的かつ交互にオンオフするように、コンバータ15は制御される。
【0057】
周知のように、コンバータ15における電圧変換比(すなわち、VH/Vb)上記スイッチング周期に対するIGBT素子Q1,Q2のデューティ比(オン期間比率)によって定まる。なお、スイッチング素子Q1およびQ2をオンおよびオフにそれぞれ固定すれば、VH=Vb(電圧変換比=1.0)とすることもできる。
【0058】
制御装置50は、バッテリ電圧Vbと電圧指令値VHrefとの電圧比および/または電圧指令値VHrefに対する検出された直流電圧VHの電圧差に応じて、スイッチング素子Q1,Q2のデューティ比が適切に設定されるように、スイッチング制御信号SCNVを生成する。
【0059】
制御装置50は、モータジェネレータMG1,MG2の運転状態に応じて、直流電圧VHの指令値VHref(以下、単に電圧指令値VHrefとも称する)を設定する。さらに、制御装置50は、バッテリ電圧Vbと電圧指令値VHrefとの電圧比および/または電圧指令値VHrefに対する検出された直流電圧VHの電圧差に応じて、コンバータ15の出力電圧が電圧指令値VHrefと等しくなるようにスイッチング制御信号SCNVを生成する。
【0060】
平滑コンデンサC0は、電源ライン6の直流電圧VHを平滑化する。平滑コンデンサC0によって平滑化された直流電圧は、インバータ20,30の直流側電圧となる。
【0061】
インバータ30は、対応のモータジェネレータMG2のトルク指令値が正の場合(Tqcom(2)>0)には、制御装置50からのスイッチング制御信号SINV2に応答したスイッチング素子(図示せず)のオンオフ動作(スイッチング動作)により、平滑コンデンサC0からの直流電圧VHを3相交流電圧に変換して正のトルクを出力するようにモータジェネレータMG2を駆動する。また、インバータ30は、モータジェネレータMG2のトルク指令値が零の場合(Tqcom(2)=0)には、スイッチング制御信号SINV2に応答したスイッチング動作により、直流電圧VHを、モータジェネレータMG2の出力トルクが零になるような3相交流電圧に変換してモータジェネレータMG2へ供給する。
【0062】
さらに、ハイブリッド自動車100の回生制動時には、車輪150からの回転力を受けてモータジェネレータMG2が発電を行なう。回生制動時には、モータジェネレータMG2のトルク指令値は負に設定される(Tqcom(2)<0)。この場合には、インバータ30は、スイッチング制御信号SINV2に応答したスイッチング動作により、モータジェネレータMG2が発電した3相交流電圧を直流電圧に変換し、その変換した直流電圧を平滑コンデンサC0を介してコンバータ15へ供給する。そして、コンバータ15は、デューティ比制御に従ったスイッチング素子Q1のオン期間に、電源ライン7から電源ライン6へメインバッテリBの充電電流を供給する。
【0063】
なお、ここで言う回生制動とは、ハイブリッド自動車100を運転するドライバによるフットブレーキ操作があった場合の回生発電を伴う制動や、フットブレーキを操作しないものの、走行中にアクセルペダルをオフすることで回生発電をさせながら車両を減速(または加速の中止)させることを含む。
【0064】
このように、インバータ30は、制御装置50からのスイッチング制御信号SINV2に従ったスイッチング制御により、モータジェネレータMG2が動作指令(トルク指令値Tqcom(2))に従って動作するように電力変換を行なう。
【0065】
また、インバータ20は、上記のインバータ30の動作と同様に、制御装置50からのスイッチング制御信号SINV1に従ったスイッチング制御により、モータジェネレータMG1が動作指令(トルク指令値Tqcom(1))に従って動作するように電力変換を行なう。
【0066】
このように、制御装置50がトルク指令値Tqcom(1),(2)に従ってモータジェネレータMG1,MG2を駆動制御することにより、ハイブリッド自動車100では、モータジェネレータMG2での電力消費による車両駆動力の発生、モータジェネレータMG1での発電によるメインバッテリBの充電電力またはモータジェネレータMG2の消費電力の発生、およびモータジェネレータMG2での回生制動動作(発電)によるメインバッテリBの充電電力の発生を、車両の運転状態に応じて適宜に実行できる。
【0067】
図1から理解されるように、ハイブリッド自動車100では、コンバータ15によって、バッテリ電圧Vbを昇圧してモータジェネレータMG1,MG2に印加することができる。この結果、同一パワー出力に対するモータジェネレータMG1,MG2の電流を低減できるので、電力損失を低減させて駆動効率を高めることが可能となる。一方で、モータジェネレータMG1,MG2の出力を確保するためにメインバッテリBから電力が出力される場合には、スイッチング素子Q1,Q2の温度は、スイッチング動作に伴う発熱によって上昇する。回生制動時等に、メインバッテリBの充電電流が急激に生じた場合も同様である。この際のスイッチング素子の温度変化について、図2を用いて説明する。
【0068】
図2を参照して、ドライバのアクセル操作によってアクセル開度ACCが増加すると、加速要求に応答してモータジェネレータMG2の出力が増加するため、メインバッテリBから電力が出力される。これに伴って、スイッチング素子Q1,Q2では電力変換のためのスイッチング動作によって素子温度Tswが上昇する。なお、素子温度Tswは、スイッチング素子Q1,Q2の各々の温度を包括的に標記するものである。
【0069】
一方、スイッチング素子には、図示しない冷却機構が設けられる。このため、アクセル開度ACCが復帰することによって、メインバッテリBからの電力出力が停止されると、スイッチング素子Q1,Q2での発熱が収まると、素子温度Tswは低下する。この結果、アクセルペダル70が操作された比較的短期間において、温度変化が発生する。このような温度変化によって、スイッチング素子Q1,Q2を構成する導体部分に膨張・収縮に伴う応力が、熱ストレスとして作用する。この熱ストレスの大きさは、温度変化量ΔTに依存する。
【0070】
温度変化量ΔTは、上記のような温度上昇局面での発熱量によって決まる。このため、温度変化量ΔTは、スイッチング素子Q1,Q2がスイッチングする電流、すなわち、スイッチング素子Q1,Q2の通過電流(以下、「素子電流」とも称する)に主に依存する。
【0071】
このような短時間での温度変化量ΔTによる熱ストレスは、一回のストレスで素子破壊を起こすことはないものの、ハイブリッド自動車100の実使用時に繰返し発生される。このため、繰返し作用する熱ストレスが大きいと、素子寿命に影響を及ぼす虞がある。
【0072】
図3を参照して、熱ストレスに対応してスイッチング素子Q1,Q2の寿命を設計する際には、温度変化量ΔTの基準分布500が予め定められる。そして、スイッチング素子Q1,Q2の構成要素のサイズ(厚み・幅)や材質等は、基準分布500に応じた熱ストレスを想定して決められる。このため、実使用における温度変化量ΔTの実際の分布510(以下、実績分布510と称する)が、基準分布500に対して高温側にずれた場合には、素子寿命が想定値よりも短くなることが懸念される。
【0073】
このため、スイッチング素子の温度変化によってもたらされる熱ストレスを考慮すれば、スイッチング素子の寿命を維持するために、温度変化量ΔTを管理する必要があることが理解される。
【0074】
熱ストレスにつながる温度変化量ΔTが生じる温度上昇局面は、上述のように、ドライバによるアクセル操作等、メインバッテリBの充放電を伴って発生する。以下では、温度変化量ΔTが発生するようなメインバッテリBの充放電を生じさせる動作を「負荷動作」と呼ぶこととする。
【0075】
エンジン110の始動時にも、モータジェネレータMG1によるモータリングトルクを発生させるために、メインバッテリBから電力が出力される。また、車両減速度が大きいときにも、メインバッテリBの充電電流が大きくなる。すなわち、アクセル操作による加速走行に加えて、エンジン始動、および、所定レベルを超えた回生ブレーキ力の発生も、上述の負荷動作に含まれ得る。
【0076】
負荷動作は、たとえば、ドライバによるペダル操作(アクセル操作/ブレーキ操作)やエンジン110の始動指令に基づいて、検知することができる。あるいは、実際にバッテリ電流Ibに基づいて、負荷動作を検出することも可能である。図3に示すように、本実施の形態では、このような負荷動作の検出時には、負荷フラグFPがオンされるものとする。
【0077】
本実施の形態によるハイブリッド自動車100では、以下に説明するような温度変化量ΔTの管理制御を加味した走行制御が実行される。
【0078】
図4は、ハイブリッド自動車100の走行制御を説明する機能ブロック図である。図4に示す制御構成は、制御装置50の機能の一部として設けられる。なお、図4を始めとするブロック図に示される各機能ブロックは、当該ブロックに相当する機能を有する回路(ハードウェア)で構成してもよいし、予め設定されたプログラムに従ってECUがソフトウェア処理を実行することにより実現してもよい。
【0079】
図4を参照して、制御装置50は、要求パワー算出部210と、トータルパワー制御部220と、ブレーキ協調制御部250と、温度変化制限部400を含む。車速センサ75は、ハイブリッド自動車100の車速Vsを検出する。
【0080】
要求パワー算出部210は、アクセル開度ACCおよび車速Vsに基づいて、運転者が要求する車両運転に必要な駆動力を得るのに必要な車両要求パワーPrq(以下、単に要求パワーPrqとも称する)を算出する。要求パワー算出部210によって算出された要求パワーPrqは、トータルパワー制御部220へ入力される。
【0081】
トータルパワー制御部220には、さらに、メインバッテリBのSOCが入力される。トータルパワー制御部220は、SOCに基づいて算出されるメインバッテリBの充電に必要な充電パワーPchと、要求パワーPrqとの和に従って、下記式(1)に従って、車両全体での出力パワーであるトータルパワーPttlを算出する。
【0082】
Pttl=Prq+Pch+Ploss …(1)
(1)式中において、Plossは、ハイブリッド自動車100の走行における損失パワーに相当する。損失パワーPlossについては、車両走行状態(車速等)に応じて適正値を設定するマップを予め作成することが好ましい。また、SOCが十分高くメインバッテリBの充電が不要である場合には、Pch=0に設定される。
【0083】
トータルパワー制御部220は、式(1)に従って算出されたトータルパワーPttlを、エンジンパワーPegおよびモータパワーPmg1,Pmg2に配分する。モータパワーPmg1は、モータジェネレータMG1の出力パワーであり、モータパワーPmg2は、モータジェネレータMG2の出力パワーである。モータジェネレータMG1,MG2の発電時には、Pmg2,Pmg1はそれぞれ負値に設定される。
【0084】
具体的には、トータルパワー制御部220は、エンジン110の作動要否を判定した上で、上記のパワー配分を決定する。基本的には、要求パワーPrqが、モータジェネレータMG2の出力パワーのみによって確保できないときに、エンジン110の作動が指示される。また、エンジン停止時に、メインバッテリBを充電するためにPch>0に設定されると、エンジン110が始動される。モータジェネレータMG2の出力パワーは、メインバッテリBの出力電力が出力電力上限値Woutを超えない範囲内で設定される。
【0085】
トータルパワー制御部220は、エンジン作動時には、トータルパワーPttlとエンジン回転数Negに基づき、必要なエンジントルクを得るための、エンジンパワーPegおよびエンジン目標回転数Negrを設定する。すなわち、メインバッテリBの充電時に上乗せされる充電パワーPchは、エンジンパワーPegへ反映される。
【0086】
基本的には、エンジントルクおよび回転数の組み合わせによって定義されるエンジン動作点が、高効率の運転領域内となるように、エンジンパワーPegおよびエンジン目標回転数Negrが設定される。したがって、基本的には、アクセル操作による加速要求には、メインバッテリBからのモータジェネレータMG2の出力によって対応する。このため、加速走行時には、メインバッテリBからの放電電流によって、スイッチング素子Q1,Q2に発熱が生じる。
【0087】
エンジンECU280は、制御装置50とは別個に設けられ、トータルパワー制御部220から送られたエンジンパワーPegおよびエンジン目標回転数Negrが実現されるように、エンジン110の燃料噴射、点火時期、バルブタイミング等を制御する。さらに、トータルパワーPttlが確保されるように、モータパワーPmg1,Pmg2が設定される。このようにして、トータルパワーPttlに対する、エンジンパワーPegおよびモータパワーPmg1,Pmg2の間のパワー配分が実行される。
【0088】
パワー配分では、メインバッテリBに対する入出力電力が、Win〜Woutの範囲内に収まるように、モータパワーPmg1,Pmg2が設定される。すなわち、出力電力上限値Woutが低いときには、相対的にエンジンパワーPegが上昇する。
【0089】
モータパワーPmg1,Pmg2は、MG1制御部301およびMG2制御部302へ送られる。MG1制御部301およびMG2制御部302は、モータパワーPmg1,Pmg2をモータジェネレータMG1,MG2がそれぞれ出力するように、モータジェネレータMG1,MG2のトルク指令値Tqcom(1),Tqcom(2)を設定する。そして、MG1制御部301は、モータジェネレータMG1の出力トルクをトルク指令値Tqcom(1)に従って制御するように、インバータ20のスイッチング制御信号SINV1を生成する。同様に、MG2制御部302は、モータジェネレータMG2の出力トルクをトルク指令値Tqcom(2)に従って制御するように、インバータ30のスイッチング制御信号SINV2を生成する。
【0090】
なお、モータパワーPmg2は、トータルパワー制御部220によるパワー配分によって、モータジェネレータMG2による走行や駆動力アシストに必要な出力パワーに基づいて設定されている。回生制動時には、モータパワーPmg2が負値に設定されることにより、モータジェネレータMG2が発電する。さらに、MG1制御部301が、モータパワーPmg1に従ってモータジェネレータMG1を制御することによって、モータジェネレータMG1の発電電力、すなわち、メインバッテリBの充電が制御される。
【0091】
ブレーキ協調制御部250は、ブレーキ操作量BRKおよび車速Vsに基づいて、ハイブリッド自動車100全体で必要なトータル制動力を算出するとともに、算出されたトータル制動力のうちの回生ブレーキによる分担量に相当する回生ブレーキ要求値Prbrを出力する。回生ブレーキ要求値Prbrは、メインバッテリBの入力上限電力値Winを超えない範囲で設定される。
【0092】
トータルパワー制御部220は、回生制動時には、回生ブレーキ要求値Prbrを反映してモータパワーPmg2を設定する。さらに、トータルパワー制御部220は、モータジェネレータMG2のトルク、回転数等に基づいて、実際の回生ブレーキ値Prbaを算出する。算出された回生ブレーキ値Prbaは、ブレーキ協調制御部250へ送出される。
【0093】
ブレーキ協調制御部250は、上記のトータル制動力に対する回生ブレーキ値Prbaの不足分に従って、ハイブリッド自動車100の各車輪に設けられた油圧ブレーキ(図示せず)の制動力を制御する。このように、モータジェネレータMG2による回生ブレーキと図示しない油圧ブレーキとを協調的に制御することによって、必要なトータル制御力が確保される。
【0094】
温度センサ78は、スイッチング素子Q1,Q2の素子温度を検出する。たとえば、温度センサ78は、インテリジェントパワーモジュール(IPM)として構成されたスイッチング素子Q1,Q2に内蔵された温度センサを使用することができる。
【0095】
温度変化制限部400は、代表的には温度センサ78によって検出された素子温度に基づいて、スイッチング素子の温度変化量ΔTを抑制するための制限値Plimを必要に応じて設定する。トータルパワー制御部220は、温度変化制限部400によって制限値が設定された場合には、この制限値Plimを守るように、上述のパワー配分を調整する。
【0096】
図5は、実施の形態1による温度変化制限部400の構成を説明する機能ブロック図である。
【0097】
図5を参照して、温度変化制限部400は、検出部405と、ΔT管理部410と、基準分布記憶部420と、比較部430と、制限設定部440とを含む。
【0098】
検出部405は、負荷動作の検出に応答して、負荷フラグFPをオンする。たとえば、
検出部405は、ドライバによるアクセル操作あるいはブレーキ操作や、パワー配分制御に基づくエンジン始動指令に応答して、負荷フラグFPのオンオフを制御する。あるいは、バッテリ電流Ibの検出値に基づいて、負荷動作を検出してもよい。
【0099】
ΔT管理部410は、検出部405によって負荷フラグFPがオンされたときに、温度センサ78からの素子温度Tswに基づいて、1回の負荷動作における温度変化量ΔTを求めるとともに、負荷動作毎に求められた温度変化量ΔTを記憶する。これにより、図4に示した、温度変化量ΔTの実績分布510がΔT管理部410に蓄積される。一方、基準分布記憶部420は、図4に示した基準分布500を記憶する。
【0100】
比較部430は、診断指示が入力されると、基準分布記憶部420に記憶された基準分布500と、ΔT管理部410にこれまで蓄積された温度変化量ΔTに基づく実績分布510とを比較する。なお、診断指示は、ハイブリッド自動車100のN回(N:自然数)のトリップ毎に発生されてもよく、所定走行距離毎に発生されてもよい。あるいは、一定期間(1ヶ月、半月、1年毎等)に診断指示が発生されてもよい。
【0101】
比較部430は、実績分布510および基準分布500を比較する。そして、図4に示されるように、実績分布510が基準分布500に対して高温側への外れ度合いを定量的に示す評価パラメータPRを出力する。評価パラメータPRは、たとえば図4における領域520の面積に対応させて算出することができる。あるいは、実績分布510の平均値、標準偏差、最大値等に基づく、定量化のための関係式を予め設定することによって、評価パラメータPRを算出してもよい。
【0102】
制限設定部440は、比較部430によって算出された評価パラメータPRに基づいて、トータルパワー制御部220へ送出する制限値Plimを設定する。たとえば、制限値Plimは、バッテリ電流Ibの上限電流Ib(lim)および/または出力電力上限値Woutの制限値Wout(lim)を含む。なお、上限電流Ib(lim)は、バッテリ電流Ibの絶対値を制限する。
【0103】
トータルパワー制御部220が制限値Plimの範囲内でパワー出力配分を決定することにより、メインバッテリBの電力入出力によるモータジェネレータMG1,MG2の駆動制御、すなわち、メインバッテリBおよびモータジェネレータMG1,MG2の間の電力変換が制限される。特に、電力変換に基づいて発生するスイッチング素子Q1,Q2の通過電流が制限されることになる。このような制限下では、スイッチング素子Q1,Q2でのスイッチング動作に伴って生じる温度変化量ΔTについても抑制されるので、高温側にずれた実績分布510を低温側にシフトさせて、基準分布500に近付けることができる。
【0104】
上限電流Ib(lim)を設定することによってバッテリ電流Ibを制限すると、スイッチング素子Q1,Q2の通過電流が直接的に抑制される。この結果、負荷動作の際の発熱量、すなわち温度変化量ΔTを抑制することが可能となる。
【0105】
また、制限値Wout(lim)によって出力電力上限値Woutを制限すると、出力電力の制限に付随して、バッテリ電流Ibが自然に抑制される。さらに、出力電力上限値Woutが低くなると、エンジン110を停止した走行が適用され難い方向に、パワー配分が制御される。この結果、一旦作動したエンジン110が停止され難くなるので、エンジン始動の頻度を減少させることができる。エンジン始動の際には、メインバッテリBからモータジェネレータMG1へ比較的大きな電流を供給する必要があるので、エンジン始動の頻度を低減することによって、大きな温度変化量ΔTが発生する頻度を抑制することが期待できる。
【0106】
図6は、制限設定部440による制限値Plimの設定を概略的に説明する概念図である。図6の横軸は、比較部430によって算出された評価パラメータPRであり、図6の縦軸は、制限値Plimを示す。
【0107】
図6を参照して、評価パラメータPRが、閾値P1よりも低いときには、制限値PlimはレベルL1に設定される。このL1は、温度変化量ΔTの管理面からは、バッテリ電流Ibおよび出力電力上限値Wout等に制限が与えられないことを示す。すなわち、レベルL1では、これら制限値はデフォルト値に設定される。
【0108】
評価パラメータPRが、閾値P1よりも高くなると、電力変換を制限するように、バッテリ電流Ibまたは出力電力上限値Wout等を制限するための制限値Plimが設定される。特に、評価パラメータPRが大きくなるに従って、制限の度合が大きくなるように、制限値Plimを設定することが好ましい。図6の例では、Ib(lim)および/またはWout(lim)は、レベルL3では、レベルL2よりも小さい値に設定される。なお、メインバッテリBの充電を制限する入力電力上限値Winについても、同様の制限値Win(lim)を設定することができる。
【0109】
図7は、本発明の実施の形態1による電動車両における温度変化量の抑制制御を説明するフローチャートである。制御装置50は、図7に示すフローチャートによる制御処理を、所定周期毎に繰返し実行する。
【0110】
図7を参照して、制御装置50は、ステップS100により、診断指示が発生されているかどうかを判定する。制御装置50は、診断指示が発生されていないとき(S100のNO判定時)には、ステップS105,S110により、負荷動作が検出される毎に、当該負荷動作における素子温度Tswの温度変化量ΔTを求めるとともに蓄積する。
【0111】
制御装置50は、診断指示が発生されたときには(S100のYES判定時)、ステップS110により、これまでに蓄積された温度変化量ΔTの分布を演算する。これにより、図4に示した実績分布510が求められる。
【0112】
制御装置50は、ステップS120により、基準分布500を読出すとともに、ステップS130により、温度変化量ΔTについて実績分布510と基準分布500とを比較する。ステップS130では、上述のように、分布の比較に基づいて評価パラメータPRが算出される。そして、制御装置50は、ステップS140により、図6に説明したように、ステップS130で算出された評価パラメータPRに基づいて電力変換における制限値Plimを設定する。
【0113】
ステップS140で設定された制限値Plimは、次回の診断指示が発せられるまで維持されて、以降の車両走行に反映される。これにより、スイッチング素子の通過電流を抑制して温度変化量ΔTを抑制する方向に、メインバッテリBの電力によるモータジェネレータMG1,MG2の駆動制御が制限される。
【0114】
図7のフローチャートから理解されるように、当該制限値Plimが設定された後の温度変化量ΔTの実績が、ステップS105,S110によって、さらに蓄積される。そして、次回の診断指示が発せられると、ステップS110〜S130によって、温度変化量ΔTの実績分布が改めて求められて、基準分布500と比較される。この新たな比較結果に従って、制限値Plimは更新される。すなわち、前回の実績分布からの改善度合に応じて、制限値Plimを緩和あるいは強化することができる。あるいは、制限値Plimを設けた後に、評価パラメータPRが閾値P1より小さい値に復帰した場合には、制限値Plimをデフォルト値に復帰させることができる。
【0115】
以上説明したように、本発明の実施の形態による電動車両の電源システムによれば、負荷動作に伴う比較的短時間でのスイッチング素子の温度変化量ΔTの実績分布を定期的に管理して、寿命設計で用いた基準分布と比較することができる。そして、実績分布が基準分布と比較して高温側にずれている場合には、スイッチング素子の通過電流を抑制する方向に電力変換の制限値Plimを設定することによって、実績分布を基準分布に近づけることができる。これにより、温度変化量ΔTの発生によりスイッチング素子に作用する熱ストレスが過大となることによって、スイッチング素子の寿命が短くなることを防止できる。
【0116】
[実施の形態2]
実施の形態1では、温度変化量ΔTの実績分布が基準分布よりも高温側に外れている傾向を検出することによって、熱ストレスを抑制するための制限値Plimを設定した。実施の形態2では、温度変化量ΔTの実績分布が高温側に外れないように未然に防止するための制限値Plimの設定について説明する。以下の説明で明らかになるように、実施の形態2およびその変形例による制御は、実施の形態1による制御と組み合わせて適用することが可能である。
【0117】
図8は、実施の形態2における温度変化制限部400の構成を説明する機能ブロック図である。実施の形態2では、制限値Plimを設定するための温度変化制限部400以外の部分の構成は、実施の形態1と同様であるので、その他の部分については説明を繰返さない。
【0118】
図8を参照して、実施の形態2による温度変化制限部400は、検出部405と、制限設定部450とを含む。
【0119】
検出部405は、図5に示したものと同様であり、負荷動作の検出時に負荷フラグFPをオンする。
【0120】
制限設定部450は、負荷フラグFPがオンされたときに、当該負荷動作であるスイッチング素子Q1,Q2の温度上昇量Tupに基づいて制限値Plimを設定する。たとえば、負荷フラグFPがオンされたときの素子温度Tswを初期値として、当該初期値からの温度上昇量Tupを求めることができる。
【0121】
さらに、制限設定部450には、スイッチング素子Q1,Q2の冷却能力に関連する状態量である、冷却水温度Twtおよび/または雰囲気温度Tarが入力される。冷却水温度Twtは、スイッチング素子Q1,Q2を冷却するための図示しない冷却機構における冷媒温度を示す。雰囲気温度Tarは、スイッチング素子Q1,Q2が配置される空間の雰囲気温度あるいはこれに関連した温度測定値である。したがって、冷却水温度Twtおよび/または雰囲気温度Tarが低い場合には、スイッチング素子の冷却能力が高くなるため、同一の通過電流に対して温度変化量ΔTが相対的に抑制されることが期待できる。
【0122】
図9は、実施の形態2による制限設定部450による制限値の設定を説明するための図である。図9の横軸Tupは、負荷動作の検出時における素子温度Tswの温度上昇量Tupを示す。縦軸は、制限値Plimを示す。制限値Plimは、実施の形態1と同様の上限電流Ib(lim)および、メインバッテリBの充放電可能時間T(lim)を含む。負荷動作の開始から充放電可能時間T(lim)が経過すると、メインバッテリBに対する電力の入出力が禁止される。なお、充放電可能時間T(lim)は、実施の形態1での制限値Plimに含めることも可能である。
【0123】
図9を参照して、温度上昇量Tupが閾値T1までの間は、制限値PlimはレベルL1に設定される。すなわち、制限値はデフォルト値に設定されて、温度上昇量Tupの面からは電力変換の制限が設定されない。
【0124】
一方で、温度上昇量Tupが閾値T1を超えると、制限値が設定されることによって、バッテリ電流Ibあるいは充放電可能時間が制限されることになる。閾値T1は、図4に示した基準分布500に対応して設定される。たとえば、閾値T1は、基準分布500における平均温度Taよりも高い温度に設定される。
【0125】
温度上昇量Tup>T1の領域では、温度上昇量Tupが大きくなるのに応じて、電力変換の制限が強化される。具体的には、上限電流Ib(lim)や充放電可能時間T(lim)が零に向かって徐々に小さく設定される。そして、温度上昇量Tupが上限温度Tmaxに達すると、Ib(lim)=0および/またはT(lim)=0となって、メインバッテリBの充放電が禁止される。上限温度Tmaxは、図4に示した基準分布500において想定された上限温度Tmaxに対応して設定することができる。
【0126】
なお、制限値Plimの設定については、スイッチング素子の冷却能力に応じて変化させてもよい。具体的には、冷却能力が高い場合には、閾値T1を高温側に推移させる一方で、冷却能力が低い場合には、閾値T1を低温側に推移させることが好ましい。
【0127】
図10は、本発明の実施の形態2による電動車両における温度変化量の抑制制御を説明するフローチャートである。制御装置50は、図10に示すフローチャートによる制御処理を、所定周期毎に繰返し実行する。
【0128】
図10を参照して、制御装置50は、ステップS200により、負荷動作が検出されているかどうかを判定する。ステップS200の判定は、負荷フラグFPに基づいて実行できる。
【0129】
制御装置50は、負荷動作の検出中(S200のNO判定時)は、ステップS210により、当該負荷動作での温度上昇量Tupを算出する。そして、制御装置50は、ステップS220により、冷却水温度Twtおよび/または雰囲気温度Tarに基づいて、スイッチング素子の冷却能力をチェックする。
【0130】
そして、制御装置50は、ステップS230により、図9で説明したように、ステップS210で算出された温度上昇量Tupに基づいて、電力変換における制限値Plimを設定する。この際に、ステップS220で求められたスイッチング素子の冷却能力をさらに加味して、制限値Plimを設定することが好ましい。
【0131】
これにより、負荷動作の検出時に温度上昇量Tupが大きくなると、バッテリ電流Ibを抑制することにより、あるいは、充放電の禁止によって、スイッチング素子Q1,Q2の通過電流を制限することができる。この結果、スイッチング素子Q1,Q2の発熱によって生じる温度変化量ΔTを抑制できる。
【0132】
このように、実施の形態2では、負荷動作の開始からの温度上昇量Tupに応じて、基準分布500と対応付けて電力変換の制限値を設定することができる。この結果、負荷動作における温度変化量ΔTについて、基準分布500から大きく外れることを未然に防止するように管理することができる。
【0133】
(変形例)
再び図8を参照して、実施の形態2の変形例によれば、制限設定部450は、負荷フラグFPがオンされたときに、当該負荷動作での温度上昇量を予測するための状態量に基づいて制限値Plimを設定する。たとえば、制限設定部450は、スイッチング素子の通過電流Isw(以下、素子電流)やバッテリ電流Ibに基づいて、制限値Plimを設定する。
【0134】
図11および図12は、実施の形態2の変形例による制限設定部450による制限値の設定を説明するための図である。図11の横軸は、通過電流Iswまたはバッテリ電流Ibである。
【0135】
図11の縦軸は、制限値Plimの1つとして示される、コンバータ15でのスイッチング周波数の上限値fsw(lim)であり、図11の縦軸は、実施の形態1と同様の出力電力上限値Woutの制限値Wout(lim)である。
【0136】
図11を参照して、一般的に、スイッチング素子での電力損失は、スイッチング周波数fswが大きくなるにつれて高くなり、その結果素子温度の上昇も激しくなる。一方で、スイッチング周波数fswを低下させると、コンバータ15におけるリップル電流が増大する。したがってスイッチング周波数fswのデフォルト値としては、リップル電流の限界およびスイッチング素子の損失がバランスする適正値に設定されている。
【0137】
これに対して、負荷動作の検出時には、素子電流Iswまたはバッテリ電流Ibが閾値I1よりも大きくなると、コンバータ15のスイッチング周波数を低下するように、fsw(lim)はデフォルト値(レベルL1)よりも低下される。そして、素子電流Iswまたはバッテリ電流Ibが大きくなるのに応じて、fsw(lim)はさらに低下される。
【0138】
一方で、素子電流Iswまたはバッテリ電流Ibが閾値I1よりも小さいときには、fsw(lim)はデフォルト値に設定される。この閾値I1は、図4に示した基準分布500に対応して設定される。たとえば、閾値I1は、実機実験結果等に基づいて、一定時間の通電によって図9の閾値T1に相当する温度上昇を発生させるような電流値に設定される。
【0139】
あるいは、図11に示すように、素子電流Iswまたはバッテリ電流Ibに応じて、出力電力上限値Woutの制限値Wout(lim)を設定するようにしてもよい。
【0140】
図11を参照して、負荷動作の検出時には、素子電流Iswまたはバッテリ電流Ibが閾値I1よりも大きくなると、制限値Wout(lim)がデフォルト値(レベルL1)よりも低下される。さらに、素子電流Iswまたはバッテリ電流Ibが大きくなるのに応じて、制限値Wout(lim)はさらに低下される。
【0141】
そして、素子電流Iswまたはバッテリ電流Ibが上限電流Imaxに達すると、制限値Wout(lim)=0となって、メインバッテリBの放電が禁止される。なお、入力電力上限値Winについても、同様の制限値Win(lim)によって制限することが可能である。
【0142】
図12において、閾値I1は図11と同様に設定できる。また、上限電流Imaxについては、基準分布500での上限温度Tmaxを考慮して設定することが好ましい。
【0143】
また、図11および図12における制限値の設定についても、図9と同様に、冷却水温度Twtおよび/または雰囲気温度Tarから把握されるスイッチング素子の冷却能力に応じて、調整することができる。
【0144】
図13は、本発明の実施の形態2による電動車両における温度変化量の抑制制御を説明するフローチャートである。制御装置50は、図13に示すフローチャートによる制御処理を、所定周期毎に繰返し実行する。
【0145】
図13を参照して、制御装置50は、図10と同様のステップS200により、負荷動作が検出されているかどうかを判定する。
【0146】
制御装置50は、負荷動作の検出中(S200のNO判定時)は、ステップS215により、当該負荷動作での温度上昇量を推定するための状態量(データ)を取得する。ステップS215では、たとえば、素子電流Iswおよび/またはバッテリ電流Ibが取得される。
【0147】
そして、制御装置50は、ステップS220により、冷却水温度Twtおよび/または雰囲気温度Tarに基づいて、スイッチング素子の冷却能力をチェックする。
【0148】
そして、制御装置50は、ステップS235により、図11および図12で説明したように、ステップS215で取得された状態量(データ)に基づいて、電力変換における制限値Plimを設定する。この際に、ステップS220で求められたスイッチング素子の冷却能力をさらに加味して、制限値Plimを設定することが好ましい。上述のように、ステップS235で設定される制限値Plimは、コンバータ15でのスイッチング周波数の上限値fsw(lim)および/または出力電力上限値Woutの制限値Wout(lim)を含む。
【0149】
これにより、負荷動作の検出時に温度上昇量Tupが大きくことが推定される状態であるときには、制限値の設定によって、スイッチング素子Q1,Q2の発熱によって生じる温度変化量ΔTを未然に抑制することが期待できる。
【0150】
このように、実施の形態2の変形例では、負荷動作時には、温度上昇に大きく影響する状態量(電流データ)に基づいて、電力変換の制限値Plimを設定することができる。この結果、負荷動作における温度変化量ΔTが基準分布500から大きく外れることを未然に防止するように管理することができる。
【0151】
上述の実施の形態1,2およびその変形例では、制限値Plimを適宜例示したが、この制限値については、スイッチング素子での発熱を抑制する方向に、メインバッテリBの電力によるモータジェネレータMG1,MG2の駆動制御が制限することができる制限値であれば、実施の形態1,2またはその変形例での制限値Plimの設定を適用することができる。
【0152】
また、実施の形態2で説明した、スイッチング素子の冷却能力に応じた制限値の調整については、実施の形態1に適用することも可能である。たとえば、実施の形態1において、診断指示に応答して設定された制限値Plimについて、冷却水温度Twtおよび/または雰囲気温度Tarから把握されるスイッチング素子の冷却能力に応じて、制限を緩和(冷却能力高のとき)あるいは制限を強化(冷却能力低のとき)するように、調整を加えた上で車両制御に用いることも可能である。
【0153】
さらに、実施の形態1,2およびその変形例では、コンバータ15を構成するスイッチング素子Q1,Q2での温度変化量ΔTを抑制するための制御について説明したが、インバータ20,30を構成する図示しないスイッチング素子の温度変化量を抑制するように、本実施の形態による制御を適用することも可能である。さらには、メインバッテリBに代表される蓄電装置と、モータジェネレータMG1,MG2に代表される走行用モータとの間で電力変換を実行する電力変換器を構成するスイッチング素子について、負荷動作におけるスイッチング素子の温度変化量を抑制するための本実施の形態による制御を適用することが可能である。
【0154】
なお、ハイブリッド自動車100の駆動系の構成は、図1の例示に限定されない点について確認的に記載する。さらに、本実施の形態では電動車両の代表例としてハイブリッド自動車を例示したが、エンジンを搭載しない電気自動車や、燃料電池を搭載する燃料電池自動車であっても、本発明の適用が可能である。
【0155】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0156】
本発明は電動車両の電源システムにおけるスイッチング素子の保護制御に適用することができる。
【符号の説明】
【0157】
5 接地ライン、6,7 電源ライン、10,13 電圧センサ、11,27 電流センサ、12,78 温度センサ、15 コンバータ、20,30 インバータ、28 回転角センサ、50 制御装置(ECU)、52 ROM、70 アクセルペダル、71 ブレーキペダル、73 アクセル開度センサ、74 ブレーキペダル踏込量センサ、75 車速センサ、100 ハイブリッド自動車、110 エンジン、112 冷却水温センサ、120 動力分割機構、125 出力軸、130 減速機、140 駆動軸、150 車輪、210 要求パワー算出部、220 トータルパワー制御部、250 ブレーキ協調制御部、280 エンジンECU、301 MG1制御部、302 MG2制御部、400 温度変化制限部、405 検出部、410 ΔT管理部、420 基準分布記憶部、430 比較部、440,450 制限設定部、500 基準分布(ΔT)、510 実績分布(ΔT)、ACC アクセル開度、B メインバッテリ、BRK ブレーキ操作量、C0,C1 平滑コンデンサ、D1,D2 逆並列ダイオード、FP 負荷フラグ、I1,P1,T1 閾値、Ib バッテリ電流、Ib(lim) 上限電流(バッテリ電流)、Imax 上限電流、Isw 素子電流、L リアクトル、MCRT(1),MCRT(2) モータ電流、MG1,MG2 モータジェネレータ、N1,N2 中性点、Neg エンジン回転数、Negr エンジン目標回転数、Nmt 回転数、PR 評価パラメータ、Peg エンジンパワー、Plim 制限値、Pmg1,Pmg1 モータパワー、Prba 回生ブレーキ値、Prbr 回生ブレーキ要求値、Prq 車両要求パワー、Q1,Q2 電力用半導体スイッチング素子、SCNV,SINV1,SINV2 スイッチング制御信号、T(lim) 充放電可能時間、Ta 平均温度(基準分布)、Tar 雰囲気温度(スイッチング素子)、Tb バッテリ温度、Tmax 上限温度、Tqcom トルク指令値、Tsw 素子温度、Tup 横軸、Tup 温度上昇量、Twt 冷却水温度、U1,U2,V1,V2,W1,W2 コイル巻線、VH 直流電圧、Vb バッテリ電圧、Vs 車速、Win 入力電力上限値、Win(lim) 制限値(入力電力上限値)、Wout 出力電力上限値、Wout(lim) 制限値(出力電力上限値)、fsw(lim) スイッチング周波数上限値。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両駆動力を発生するための電動機を搭載した電動車両であって、
前記電動機に対して入出力される電力を蓄積するための蓄電装置と、
スイッチング素子のオンオフ制御によって前記電動機および前記蓄電装置の間で電力変換を実行するように構成された電力変換器と、
前記電力変換を制御するための制御装置とを備え、
前記制御装置は、
前記スイッチング素子の温度が上昇するような前記蓄電装置の充放電を生じさせる負荷動作の発生を検出するための検出部と、
各前記負荷動作における前記スイッチング素子の温度変化量に応じて、前記スイッチング素子の通過電流を抑制するための前記電力変換における制限値を設定するための制限設定部とを含む、電動車両。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記温度変化量についての予め定められた基準分布を記憶するための記憶部と、
前記負荷動作が検出される毎に、当該負荷動作における前記温度変化量の実績を累積的に記憶するための実績管理部と、
前記実績管理部に累積された前記温度変化量の実績分布と、前記記憶部に記憶された前記基準分布とを比較するための比較部とをさらに含み、
前記制限設定部は、前記比較部による比較結果に基づいて、前記制限値を設定する、請求項1記載の電動車両。
【請求項3】
前記比較部は、前記基準分布および前記実績分布の比較に従って前記基準分布に対する前記実績分布の高温側の外れ度合いを定量的に示すパラメータ値を算出し、
前記制限設定部は、前記パラメータ値の上昇に応じて前記制限値をデフォルト値から低下させるように、前記制限値を設定する、請求項2記載の電動車両。
【請求項4】
前記制限設定部は、前記制限値をデフォルト値から低下させているときに、前記パラメータ値が所定値まで低下すると、前記制限値を前記デフォルト値に復帰させる、請求項3記載の電動車両。
【請求項5】
前記制限値は、前記蓄電装置の電流上限値と、前記蓄電装置の出力電力上限値の制限値との少なくとも一方を含む、請求項2〜4のいずれか1項に記載の電動車両。
【請求項6】
前記比較部は、前記電動車両が一定距離を走行する毎に、前記基準分布および前記実績分布を比較する、請求項2〜4のいずれか1項に記載の電動車両。
【請求項7】
前記比較部は、所定の一定期間が経過する毎に、前記基準分布および前記実績分布を比較する、請求項2〜4のいずれか1項に記載の電動車両。
【請求項8】
前記制限設定部は、前記負荷動作の発生時に、前記負荷動作の開始時からの前記スイッチング素子の温度上昇量に応じて前記制限値を設定する、請求項1記載の電動車両。
【請求項9】
前記制限設定部は、前記温度上昇量が閾値よりも高いときに、前記制限値をデフォルト値から低下させるように前記制限値を設定し、
前記閾値は、前記温度変化量についての予め定められた基準分布における平均温度よりも高い、請求項8記載の電動車両。
【請求項10】
前記制限値は、前記蓄電装置の電流上限値と、前記蓄電装置の充放電制限時間との少なくとも一方を含む、請求項8または9に記載の電動車両。
【請求項11】
前記制限設定部は、前記負荷動作の発生時には、前記スイッチング素子の通過電流に対応する電流データに応じて前記制限値を設定する、請求項1記載の電動車両。
【請求項12】
前記制限設定部は、前記電流データが閾値よりも高いときに、前記制限値をデフォルト値から低下させるように前記制限値を設定し、
前記閾値は、前記温度変化量についての予め定められた基準分布に基づいて設定される、請求項11記載の電動車両。
【請求項13】
前記制限値は、前記電力変換器における前記スイッチング素子のスイッチング周波数上限値を含む、請求項11または12に記載の電動車両。
【請求項14】
前記制限設定部は、前記スイッチング素子の冷却能力を示す温度データをさらに反映して、前記冷却能力が高いときには前記冷却能力が低いときよりも制限が緩和されるように、前記制限値を設定する、請求項1〜13のいずれか1項に記載の電動車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−19587(P2012−19587A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−154691(P2010−154691)
【出願日】平成22年7月7日(2010.7.7)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】