説明

電圧変化検知装置

【課題】電界効果トランジスタの閾値電圧がばらついた場合にも、検知電圧のばらつきを低減でき、所望の電圧検知範囲で電圧変化を検知することができる電圧変化検知装置を提供する。
【解決手段】ドレインが電源電位に接続され且つソースが第1のノードにおいて第1の定電流源又は第1の抵抗に接続され且つゲートが固定電位に接続されている第1の電界効果トランジスタと、ドレイン及びゲートが電源電位に接続され且つソースが第2のノードにおいて第2の定電流源又は第2の抵抗に接続されている第2の電界効果トランジスタと、当該第1のノードの電位と当該第2のノードの電位との比較結果に応じて電源電位が所定の検知電位を跨いで変化したことを検知した旨の検知信号を生成する検知信号生成部と、を含む電圧変化検知装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源電圧が所定の検知電位を超えて変化したことを検知する電圧変化検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電源電圧が所定電位を超えて低下又は上昇したことによる回路の誤動作を防止するための装置が知られている(例えば特許文献1)。
【0003】
図7は、従来の電圧変化検知装置90の回路図である。デプレッション型のNMOS電界効果トランジスタであるDMOS91のドレインは電源電位VDDに接続され、そのゲートとソースとはノードS1において相互に接続されている。NMOS電界効果トランジスタであるNMOS92のソースは接地電位VSSに接続され、そのゲートとドレインとはノードS2において相互に接続されている。ノードS1とノードS2とは相互に接続され、ノードS2はコンパレータ95の一方の入力に接続されている。NMOS電界効果トランジスタであるNMOS93のドレイン及びゲートは電源電位VDDに接続され、そのソースはノードS3に接続されている。デプレッション型のNMOS電界効果トランジスタであるDMOS94のソース及びゲートは接地電位VSSに接続され、そのドレインはノードS3に接続されている。ノードS3はコンパレータ95の他方の入力に接続されている。コンパレータ95は、一方の入力への基準電位REF1と他方の入力への比較電位REF2とを比較し、比較電位REF2が基準電位REF1よりも高くなったときに、出力OUTの電圧値をVDD電位から0Vに変化させる。
【0004】
図8は、従来の電圧変化検知装置90における基準電位、比較電位及び検知電位の関係を表す図である。縦軸が電圧を表し、横軸が電源電位VDDを表す。基準電位REF1は、NMOS92の閾値電圧である。ここで、閾値電圧は、NMOS92のドレイン−ソース間が導通する、もしくは一定の電流を流せるソース−ゲート間の電圧である。以下、「閾値電圧」の用語をこれと同様の意味で用いる。製造ばらつき等によって、NMOS92の閾値電圧もばらつく場合がある。閾値電圧の高いNMOS92の基準電位REF1を基準電位R1H、閾値電圧の低いNMOS92の基準電位REF1を基準電位R1Lとして図中に表している。NMOS92の閾値電圧が高くなると基準電位REF1も上昇するので、基準電位R1Hは基準電位R1Lよりも高い。DMOS91は高抵抗として作用し、電源電位VDDが変化しても、基準電位R1H及びR1Lはほとんど変化しない。
【0005】
比較電位REF2は、電源電位VDDからNMOS93の閾値電圧分だけ低下した電圧である。製造ばらつき等によって、NMOS93の閾値電圧もばらつく。閾値電圧の高いNMOS93の比較電位REF2を比較電位R2H、閾値電圧の低いNMOS93の比較電位REF2を比較電位R2Lとして図中に表している。比較電位REF2はVDDからNMOS93の閾値電圧分だけ低下した電圧なので、NMOS93の閾値電圧が高くなると比較電位REF2は低下する。逆にNMOS93の閾値電圧が低くなると比較電位REF2は上昇する。それゆえ、比較電位R2Hは比較電位R2Lよりも低くなっている。DMOS94は高抵抗として作用し、電源電位VDDが上昇したときには、比較電位R2H及びR2Lも上昇し、電源電位VDDが低下したときには、比較電位R2H及びR2Lも低下する。
【0006】
製造ばらつき等によって、NMOS92の閾値電圧とNMOS93の閾値電圧とは同一方向にばらつく。閾値電圧が高い方にばらついた場合には、基準電位REF1は上昇するが、比較電位REF2は低下する。また、閾値電圧が低い方にばらついた場合には、基準電位REF1は低下するが、比較電位REF2は上昇する。このように、基準電位REF1と比較電位REF2とが反対方向に変化する。それゆえ、コンパレータ95における、閾値電圧が高いときの検知電位VH1と、閾値電圧が低いときの検知電位VL1との差が大きくなる。
【0007】
検知電位のばらつきが大きくなると、以下のような問題が生じる。例えば検知電位が高い方向にばらついた場合には、所望の電圧検知範囲よりも高い電圧で出力OUTの電圧値を変化させてしまうので、電池が消耗せずいまだ充分な電源電圧を供給できるにもかかわらず、電圧検知対象の回路(図示せず)の動作を停止させてしまうといった問題が生じる。また、検知電位が低い方向にばらついた場合には、所望の電圧検知範囲よりも低い電圧で出力OUTの電圧値を変化させてしまうので、当該回路にその動作補償電圧を下回る電圧が供給され、正常に動作しないといった問題が生じる。
【0008】
図9は、従来の電圧変化検知装置90における温度と検知電位との関係を表す図である。縦軸が検知電位を表し、横軸が温度を表す。閾値電圧が標準の場合を記号TT、高い場合を記号SS、低い場合を記号FF、DMOSの閾値電圧が高い場合を記号DS、低い場合を記号DFとして表している。また、所望の電圧検知範囲の上限値を「上限」、下限値を「下限」として表している。上限値は、例えば電圧検知対象のIC回路の動作電圧の上限値であり、下限値はその下限である。上限値は1.3V、下限値は1.0Vである。
【0009】
コンパレータ95は、比較電位REF2が基準電位REF1よりも高くなったときに、出力OUTの電圧値を変化させることから、検知電位は以下のようになる。NMOS92のドレイン−ソース間の電圧をVt1、NMOS93のドレイン−ソース間の電圧をVt2とすると、比較電位REF2>基準電位REF1の関係から、VDD−Vt2>Vt1となり、更に変形するとVDD>Vt1+Vt2となる。すなわち、コンパレータ95は、VDDがVt1+Vt2を上回ったときに出力OUTの電圧を変化させる。このVt1+Vt2が検知電位であり、コンパレータ95は、電源電位VDDがこの検知電位を跨いで変化したことを検知する。このように、検知電位がNMOS92のドレイン−ソース間の電圧と、NMOS93のドレイン−ソース間の電圧との和であることから、製造条件や温度条件によってNMOS92及びNMOS93閾値電圧がばらついたときには、検知電位のばらつきも大きくなる。図9に示されるように、温度によっては、閾値電圧が高い場合(記号SS)には上限値を上回り、閾値電圧が低い場合(記号FF)には下限値を下回ってしまう。このように、閾値のばらつきによって、所望の電圧検知範囲で電圧を検知できない場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平6−109781号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記したように、従来の電圧変化検知回路を用いた場合、製造ばらつき等によって電界効果トランジスタの閾値電圧がばらついたときに、検知電位のばらつきが大きくなり、また、所望の電圧検知範囲で電圧を検知できず、電圧検知対象のIC回路の誤動作等を生じさせてしまうという問題があった。
【0012】
本発明は上記した如き問題点に鑑みてなされたものであって、電界効果トランジスタの閾値電圧がばらついた場合にも、検知電位のばらつきを低減でき、所望の電圧検知範囲で電圧変化を検知することができる電圧変化検知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明による電圧変化検知装置は、電源電位に基づいて基準電位を生成する基準電位生成部と、前記電源電位に基づいて比較電位を生成する比較電位生成部と、前記基準電位と前記比較電位との比較結果に応じて前記電源電位が所定の検知電位を跨いで変化したことを検知した旨の検知信号を生成する検知信号生成部と、を含む電圧変化検知装置であって、前記基準電位生成部は、前記接地電位に接続された第1の定電流源又は第1の抵抗と、そのドレインが前記電源電位に接続され且つそのソースが第1のノードにおいて前記第1の定電流源又は第1の抵抗に接続され且つそのゲートが固定電位に接続されている第1の電界効果トランジスタと、を含み、前記比較電位生成部は、接地電位に接続された第2の定電流源又は第2の抵抗と、そのドレイン及びゲートが前記電源電位に接続され且つそのソースが第2のノードにおいて前記第2の定電流源又は第2の抵抗に接続されている第2の電界効果トランジスタと、を含み、前記検知信号生成部は、前記第1のノードにおける電位を前記基準電位とし且つ前記第2のノードにおける電位を前記比較電位として前記検知信号を生成することを特徴とする。
【0014】
また、本発明による電圧変化検知装置は、電源電位に基づいて基準電位を生成する基準電位生成部と、前記電源電位に基づいて比較電位を生成する比較電位生成部と、前記基準電位と前記比較電位との比較結果に応じて前記電源電位が所定の検知電位を跨いで変化したことを検知した旨の検知信号を生成する検知信号生成部と、を含む電圧変化検知装置であって、前記基準電位生成部は、前記接地電位に接続された第1の定電流源又は第1の抵抗と、そのドレインが前記電源電位に接続され且つそのソースが第1のノードにおいて前記第1の定電流源又は第1の抵抗に接続され且つそのゲートが固定電位に接続されている第1の電界効果トランジスタと、を含み、前記比較電位生成部は、接地電位に接続された第2の定電流源又は第2の抵抗と、そのソースが第2のノードにおいて前記第2の定電流源又は第2の抵抗に接続されている少なくとも2つの第2の電界効果トランジスタと、前記第2の電界効果トランジスタの各々のドレイン及びゲートと前記電源電位との間に接続された少なくとも2つのスイッチ素子と、を含み、前記検知信号生成部は、前記第1のノードにおける電位を前記基準電位とし且つ前記第2のノードにおける電位を前記比較電位として前記検知信号を生成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明による電圧変化検知装置によれば、電界効果トランジスタの閾値電圧がばらついた場合にも、検知電位のばらつきを低減でき、所望の電圧検知範囲で電圧変化を検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1の実施例である電圧変化検知装置の回路図である。
【図2】図1の電圧変化検知装置における基準電位、比較電位及び検知電位の関係を表す図である。
【図3】図1の電圧変化検知装置における温度と検知電位との関係を表す図である。
【図4】第2の実施例である電圧変化検知装置の回路図である。
【図5】図2の電圧変化検知装置におけるトリミングコードと検知電位との関係を表す図である。
【図6】図2の電圧変化検知装置における温度と検知電位との関係を表す図である。
【図7】従来の電圧変化検知装置の回路図である。
【図8】図7の電圧変化検知装置における基準電位、比較電位及び検知電位の関係を表す図である。
【図9】図7の電圧変化検知装置における温度と検知電位との関係を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る実施例について添付の図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0018】
<第1の実施例>
図1は第1の実施例である電圧変化検知装置10の回路図である。電圧変化検知装置10は、例えば携帯型電話端末などの装置を動作させるためのIC回路(図示せず)に供給される電源電位VDDの変動を検知する用途に用いられる。電圧変化検知装置10は、例えば電源電位VDDが所定の電圧上限値を上回った場合に出力OUTの電圧を変化させる。当該電圧の変化に基づいて当該IC回路や電源の動作を停止させれば、当該IC回路の素子破壊や誤動作を防止することができる。
【0019】
デプレッション型のNMOS電界効果トランジスタ(第1の電界効果トランジスタ)であるDMOS11のドレインは電源電位VDDに接続され、そのゲートは接地電圧に接続され、そのソースはノードT1を介して定電流源12(第1の定電流源)に接続されている。ノードT1(第1のノード)はコンパレータ15の一方の入力に接続されている。以下、DMOS11及び定電流源12からなる構成を基準電位生成部と称する。エンハンス型のNMOS電界効果トランジスタ(第2の電界効果トランジスタ)であるNMOS13のドレイン及びゲートは電源電位VDDに接続され、そのソースはノードT2(第2のノード)を介して定電流源14(第2の定電流源)に接続されている。ノードT2はコンパレータ15の他方の入力に接続されている。以下、NMOS13及び定電流源14からなる構成を比較電位生成部と称する。コンパレータ15は、一方の入力への基準電位REFと他方の入力への比較電位CMPINとを比較し、比較電位CMPINが基準電位REFよりも高くなったときに、出力OUTの電圧値を例えば0VからVDD電位に電圧変化させる。
【0020】
図2は、電圧変化検知装置10における基準電位、比較電位及び検知電位の関係を表す図である。縦軸が電圧を表し、横軸が電源電位VDDを表す。基準電位REFは、DMOS11のゲート電圧すなわちVSS(=0V)からDMOS11の閾値電圧分だけ低下した電圧である。DMOS11の閾値電圧が例えば−0.6Vの場合には、基準電位REFは、0V−(−0.6V)=0.6Vとなる。製造ばらつきや温度変化によって、DMOS11の閾値電圧もばらつく。閾値電圧の高いDMOS11の基準電位REFを基準電位RH、閾値電圧の低いDMOS11の基準電位REFを基準電位RLとして図中に表している。DMOS11の閾値電圧が高くなると基準電位REFは低下する。DMOS11の閾値電圧の標準値が例えば−0.6Vのときに、閾値電圧が高い方にばらついて例えば−0.4Vとなった場合、基準電位REFは、0V−(−0.4V)=0.4Vとなる。つまり、閾値電圧が高い方にばらついたときには、基準電位REFは低下する。逆にDMOS11の閾値電圧が低くなると基準電位REFは上昇する。DMOS11の閾値電圧の標準値が例えば−0.6Vのときに、閾値電圧が低い方にばらついて例えば−0.8Vとなった場合、基準電位REFは、0V−(−0.8V)=0.8Vとなる。つまり、閾値電圧が低い方にばらついたときには、基準電位REFは上昇する。それゆえ、基準電位RLは基準電位RHよりも高い。DMOS11のソースは定電流源12に接続されており、電源電位VDDが変化しても、基準電位RH及びRLはほとんど変化しない。
【0021】
比較電位CMPINは、電源電位VDDからNMOS13の閾値電圧分だけ低下した電圧である。電源電位VDDが例えば1.0Vであり、NMOS13の閾値電圧が例えば0.6Vの場合には、比較電位CMPINは、1.0V−(0.6V)=0.4Vとなる。製造ばらつき等によって、NMOS13の閾値電圧もばらつく。閾値電圧の高いNMOS13の比較電位CMPINを比較電位CH、閾値電圧の低いNMOS13の比較電位CMPINを比較電位CLとして図中に表している。比較電位CMPINはVDDからNMOS13の閾値電圧分だけ低下した電圧なので、NMOS13の閾値電圧が高くなると比較電位CMPINは低下する。逆にNMOS13の閾値電圧が低くなると比較電位CMPINは上昇する。それゆえ、比較電位CHは比較電位CLよりも低くなっている。NMOS13のドレインは定電流源14に接続されており、電源電位VDDが上昇したときには、比較電位CH及びCLも上昇し、電源電位VDDが低下したときには、比較電位CH及びCLも低下する。
【0022】
コンパレータ15は、基準電位REFと比較電位CMPINとを比較するものであり、基準電位RHと比較電位CHの交点が検知電位VH2となり、基準電位RLと比較電位CLの交点が検知電位VL2となる。
【0023】
製造工程において、DMOSはNMOSに対してデプレッション化するインプラを追加するので、DMOS11の閾値電圧とNMOS13の閾値電圧とは同方向にばらつく。閾値電圧が高い方にばらついた場合には、基準電位REFと比較電位CMPINとが共に低下する。また、閾値電圧が低い方にばらついた場合には、基準電位REFと比較電位CMPINとが共に上昇する。このように、閾値電圧が変動した場合には、基準電位REFと比較電位CMPINとが同方向に変化する。それゆえ、コンパレータ15における、閾値電圧が高いときの検知電位VH2と、閾値電圧が低いときの検知電位VL2との差が、従来技術に比較して小さくなる。
【0024】
図3は、電圧変化検知装置10における温度と検知電位との関係を表す図である。縦軸が検知電位を表し、横軸が温度を表す。閾値電圧が標準の場合を記号TT、高い場合を記号SS、低い場合を記号FF、DMOSの閾値電圧が高い場合を記号DS、低い場合を記号DFとして表している。また、所望の電圧検知範囲の上限値を「上限」、下限値を「下限」として表している。上限値は、例えば電圧検知対象のIC回路の動作電圧の上限値であり、下限値はその下限である。上限値は例えば1.3V、下限値は例えば1.0Vである。
【0025】
コンパレータ15は、比較電位CMPINが基準電位REFよりも高くなったときに出力OUTの電圧を変化させることから、検知電位は以下のようになる。NMOS13の閾値電圧をVtn、DMOS11の閾値電圧をVtdとすると、比較電位CMPIN>基準電位REFの関係から、VDD−Vtn>VSS(0V)−Vtdとなり、更に変形するとVDD>Vtn−Vtdとなる。すなわち、コンパレータ15は、VDDがVtn−Vtdを上回ったときに出力OUTの電圧を変化させる。このVtn−Vtdが検知電位である。このように、コンパレータ15は、電源電位VDDが所定の検知電位Vtn−Vtdを跨いで変化したこと(ここでは電源電圧が検知電位を上回ったこと)を検知した旨を出力OUTの電圧変化によって示す検知信号を生成する検知信号生成部である。例えば、Vtn=0.55V、Vtd=−0.6Vの場合、検知電位は1.15V(=0.55V−(−0.6V))となる。図3に示されるように、閾値電圧が高い方にばらついた場合(記号DS)においても低い方にばらついた場合(記号DF)においても、温度にかかわらず、検知電位は所望の電圧検知範囲内に収まっている。
【0026】
このように、本実施例による電圧変化検知装置は、閾値がマイナスであるデプレッション型MOSを基準電位の生成に用いる。そして、そのゲートを接地電圧に接続することにより、製造条件等によって生じた閾値電圧のばらつきによる基準電位の変動方向と比較電位の変動方向とが同一方向になるように構成されている。それゆえ、コンパレータにおける、閾値電圧が高いときの検知電位と、閾値電圧が低いときの検知電位との差を、従来技術に比較して大幅に小さくすることができる。また、温度変化による閾値電圧の変動があった場合においても、所望の電圧検知範囲内で電圧を検知することができる。
【0027】
従来の電圧変化検知装置によれば、閾値電圧のばらつきによって所望の電圧検知範囲よりも高い電圧でなければ電圧検知できない場合もあり、この場合には、電池が消耗せずいまだ充分な電源電圧を供給できるにもかかわらず、電圧検知対象の回路(図示せず)の動作を停止させてしまうといった問題が生じる。また、従来の電圧変化検知装置によれば、閾値電圧のばらつきによって所望の電圧検知範囲よりも低い電圧でなければ電圧検知できない場合もあり、この場合には、当該回路にその動作補償電圧を下回る電圧が供給され、正常に動作しないといった問題が生じる。これに対して、本実施例の電圧変化検知装置によれば、閾値電圧のばらつきによる閾値電圧の差を縮小し、所望の電圧検知範囲内で電圧を検知することができるので、かかる問題を解消できる。
【0028】
従来の電圧変化検知装置のように、接地電圧側にMOSを用いた場合には、電源電圧側のMOSのゲート長が10μmのときに、そのMOSに流れる電流値は約1μAであった。これに対して、本実施例による電圧変化検知装置においては、接地電圧側にMOSではなく定電流源を用いることによって、電源電圧側のMOSのゲート長が10μmのときに、そのMOSに流れる電流値は約2nAにできる。このように、定電流源を用いることによって消費電流値を大幅に低減させる効果も奏する。従来の電圧変化検知装置において、その電流値を約2nAまで低減させるためには、MOSのゲート長を数1000μm程度に大きくする必要があり、回路規模が増大してしまう。これに対して、本実施例による電圧変化検知装置は、定電流源を用いることにより、回路規模を増大させずに電流値を低減させることができる。
【0029】
本実施例による電圧変化検知装置は、通常の半導体製造技術によって製造可能である。なお、本発明による電圧変化検知装置においては、デプレッション型MOSのゲートを必ずしも接地電位VSSに接続する必要はなく、電源電圧と閾値電圧との関係から他の固定電圧に適宜設定可能である。また、本発明による電圧変化検知装置においては、定電流源に代えて抵抗を用いても、検知電位の変動を低減できる。また、本発明による電圧変化検知装置においては、コンパレータは、上記した例とは逆に比較電位CMPINが基準電位REFよりも低くなったときに、出力OUTの電圧値を変化させるようにしても良い。この場合にも、当該電圧の変化に基づいてIC回路や電源の動作を停止させれば、当該IC回路の誤動作等を防止することができる。
【0030】
以上、説明したように、本実施例の電圧変化検知装置によれば、電界効果トランジスタの閾値電圧がばらついた場合にも、検知電位のばらつきを低減でき、所望の電圧検知範囲で電圧変化を検知することができる。
【0031】
<第2の実施例>
図4は、第2の実施例である電圧変化検知装置20の回路図である。電圧変化検知装置20は、DMOS21の閾値電圧の高低に応じて、検出電圧を個別に調整できるようにしたものである。
【0032】
デプレッション型のNMOS電界効果トランジスタ(第1の電界効果トランジスタ)であるDMOS21のドレインは電源電位VDDに接続され、そのゲートは接地電圧に接続され、そのソースはノードU1(第1のノード)を介して定電流源30(第1の定電流源)に接続されている。
【0033】
エンハンス型のNMOS電界効果トランジスタ(第2の電界効果トランジスタ。以下、単にNMOSという)であるNMOS23のドレインとゲートとはノードU3において相互に接続され、そのソースはノードU2(第2のノード)を介して定電流源31(第2の定電流源)に接続されている。ノードU3は、トリミング信号(以下、単に信号という)TRM3に応じてオンオフするスイッチとして動作するPMOS電界効果トランジスタ(以下、単にPMOSという)であるPMOS22を介して電源電位VDDに接続されている。PMOS22のソースは電源電位VDDに接続され、そのドレインはノードU3に接続され、そのゲートは信号TRM3を受け入れる。
【0034】
NMOS25のドレインとゲートとはノードU4において相互に接続され、そのソースはノードU2を介して定電流源31に接続されている。ノードU4は、信号TRM2に応じてオンオフするスイッチとして動作するPMOS24を介して電源電位VDDに接続されている。PMOS24のソースは電源電位VDDに接続され、そのドレインはノードU4に接続され、そのゲートは信号TRM2を受け入れる。
【0035】
NMOS27のドレインとゲートとはノードU5において相互に接続され、そのソースはノードU2を介して定電流源31に接続されている。ノードU5は、信号TRM1に応じてオンオフするスイッチとして動作するPMOS26を介して電源電位VDDに接続されている。PMOS26のソースは電源電位VDDに接続され、そのドレインはノードU5に接続され、そのゲートは信号TRM1を受け入れる。
【0036】
NMOS29のドレインとゲートとはノードU6において相互に接続され、そのソースはノードU2を介して定電流源31に接続されている。ノードU6は、信号TRM0に応じてオンオフするスイッチとして動作するPMOS28を介して電源電位VDDに接続されている。PMOS28のソースは電源電位VDDに接続され、そのドレインはノードU6に接続され、そのゲートは信号TRM0を受け入れる。
【0037】
ノードU1はコンパレータ32の一方の入力に接続されている。ノードU2はコンパレータ32の他方の入力に接続されている。コンパレータ32は、一方の入力への基準電位REFと他方の入力への比較電位CMPINとを比較し、比較電位CMPINが基準電位REFよりも高くなったときに、出力OUTの電圧値を例えば0VからVDD電位に変化させる。
【0038】
NMOS23、25、27及び29の各々の閾値電圧は互いに異なる。閾値電圧が低い方からNMOS23、NMOS25、NMOS27、NMOS29の順である。例えば、NMOS23、25、27及び29の各々のゲート幅を同一とし、これらのゲート長を小さい方からNMOS23、NMOS25、NMOS27、NMOS29の順とすることによって、上記のような閾値の関係とすることができる。
【0039】
あるいは、NMOS23、25、27及び29の各々のゲート長を同一とし、これらのゲート幅を大きい方からNMOS23、NMOS25、NMOS27、NMOS29の順とすることによって、上記のような閾値の関係とすることもできる。
【0040】
電圧変化検知装置20においては、信号TRM0〜TRM3のうちのいずれか1つのみをローレベル(0V)とすることにより、PMOS22、24、26及び28のうちの対応する1つのPMOSをオンして、当該1つのPMOSと直列に接続されたNMOSを選択することができる。当該選択によって検知電位を調整できる。
【0041】
図5は、電圧変化検知装置20におけるトリミングコードと検知電位との関係を表す図である。縦軸が検知電位を表し、横軸がトリミングコードを表す。検知電位は、第1の実施例で説明したのと同様に考えると、信号TRM0〜TRM3によって選択されたNMOSの閾値電圧Vtnと、DMOS21の閾値電圧Vtdとの差すなわちVtn−Vtdで表される。トリミングコードは、ローレベル(0V)となっているトリミング信号の番号を表す。例えば信号TRM0のみがローレベル(0V)となっている場合の検知電位は、横軸の「0」の位置に示される。閾値電圧が標準の場合を記号TT、高い場合を記号SS、低い場合を記号FF、DMOSの閾値電圧が高い場合を記号DS、低い場合を記号DFとして表している。また、所望の電圧検知範囲の上限値を「上限」、下限値を「下限」として表している。上限値は、例えば電圧検知対象のIC回路の動作電圧の上限値であり、下限値はその下限である。上限値は例えば1.3V、下限値は例えば1.0Vである。
【0042】
例えばDMOS21の閾値電圧が低い方にばらついた場合、基準電位REFが高くなる。それゆえ、標準のDMOSを用いた場合に比較して検知電位が高くなる。そこで、検知電位が所望の電圧検知範囲内に収まるように、NMOSのドレイン−ソース間の電圧を下げる。具体的には、信号TRM3をローレベル(0V)とし且つ信号TRM0〜2をハイレベル(VDD電位)とする。つまり、NMOS23のみを選択する。NMOS23の閾値電圧は、NMOS25、27及び29の閾値電圧に比較して低いのでNMOSのドレイン−ソース間電圧が下がる。このように、DMOS21の閾値電圧Vtdが低くなった場合にNMOSのドレイン−ソース間電圧を下げるので、検知電位(Vtn−Vtd)を所望の電圧検知範囲内に収めることができる。
【0043】
標準サンプルにおけるDMOSの閾値電圧が例えば−0.6Vであり、NMOSの閾値電圧が例えば0.55Vである場合には、標準の検知電位は1.15V(=0.55V−(−0.6V))である。ここで、DMOS21の閾値電圧Vtdが低い方にばらついてVtdが−0.8Vとなった場合には、上記したようにNMOS23のみを選択して電圧Vtnを例えば0.35Vに下げる。これにより、検知電位を1.15V(=0.35V−(−0.8V))に調整できる。
【0044】
反対にDMOS21の閾値電圧が高い方にばらついた場合、基準電位REFが低くなる。それゆえ、標準のDMOSを用いた場合に比較して検知電位が低くなる。そこで、検知電位が所望の電圧検知範囲内に収まるように、NMOSのドレイン−ソース間の電圧を上げる。具体的には、信号TRM0をローレベル(0V)とし且つ信号TRM1〜3をハイレベル(VDD電位)とする。つまり、NMOS29のみを選択する。NMOS29の閾値電圧は、NMOS23、25及び27の閾値電圧に比較して高いのでNMOSのドレイン−ソース間の電圧が上がる。このように、DMOS21の閾値電圧Vtdが高くなった場合にNMOSのドレイン−ソース間の電圧を上げるので、検知電位(Vtn−Vtd)を所望の電圧検知範囲内に収めることができる。
【0045】
標準サンプルにおけるDMOSの閾値電圧が例えば−0.6Vであり、NMOSの閾値電圧が例えば0.55Vである場合には、標準の検知電位は1.15V(=0.55V−(−0.6V))である。ここで、DMOS21の閾値電圧が高い方にばらついて電圧Vtdが−0.4Vとなった場合には、上記したようにNMOS21のみを選択して電圧Vtnを例えば0.75Vに上げる。これにより、検知電位を1.15V(=0.75V−(−0.4V))に調整できる。
【0046】
NMOS25又はNMOS27を選択して、同様に検知電位を調整することもできる。このように、DMOS21の閾値電圧のばらつきに応じて、閾値電圧の互いに異なるNMOS23、25、27及び29のうちの1つを選択することによって、検知電位を調整できる。図5に示されるように、DMOS21の閾値電圧が高い方にばらついた場合(記号DS)においても低い方にばらついた場合(記号DF)においても、検知電位は所望の電圧検知範囲内に収まっている。
【0047】
図6は、電圧変化検知装置20における温度と検知電位との関係を表す図である。縦軸が検知電位を表し、横軸が温度を表す。検知電位はVtn−Vtdである。閾値電圧が標準の場合を記号TT、高い場合を記号SS、低い場合を記号FF、DMOSの閾値電圧が高い場合を記号DS、低い場合を記号DFとして表している。また、所望の電圧検知範囲の上限値を「上限」、下限値を「下限」として表している。上限値は例えば1.3V、下限値は例えば1.0Vである。図6に示されるように、閾値電圧が高い方にばらついた場合(記号DS)においても低い方にばらついた場合(記号DF)においても、温度にかかわらず、検知電位は所望の電圧検知範囲内に収まっている。
【0048】
上記したように本実施例による電圧変化検知装置は、製造条件に起因して生じたDMOSの閾値電圧ばらつきに応じて、閾値電圧の互いに異なる複数のNMOSのうちの1つを選択することによって、検知電位が所望の電圧検知範囲内に収まるように調整できる。つまり、電圧変化検知装置毎に適切な設定とすることができるようにしたものである。
【0049】
このように、本実施例の電圧変化検知装置によれば、電界効果トランジスタの閾値電圧がばらついた場合にも、検知電位のばらつきを低減でき、所望の電圧検知範囲で電圧変化を検知することができる。
【0050】
なお、本実施例による電圧変化検知装置は、4組のNMOS、PMOS及びトリミング信号(以下、NMOS等という)を含む例であるが、これに限定されず、2組以上のNMOS等を含んでいれば良い。例えば2組のNMOS等を含み、2段階で調整できるようにしても良いし、10組のNMOS等を含み、より微調整できるようにしても良い。この場合にも、NMOSの閾値電圧は互いに異なる。また、本実施例による電圧変化検知装置は、4組のNMOS等の1つを選択する例であるが、これに限定されず、2組以上のNMOS等を選択するようにしても良い。この場合には、当該選択された複数のNMOSが互いに並列に接続されたこととなり、これら複数のNMOSの閾値電圧によって比較電位が定まる。
【符号の説明】
【0051】
10、20 電圧変化検知装置
11、21 DMOS
12、14、30、31 定電流源
13、23、25、27、29 NMOS
15、32 コンパレータ
22、24、26、28 PMOS

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源電位に基づいて基準電位を生成する基準電位生成部と、前記電源電位に基づいて比較電位を生成する比較電位生成部と、前記基準電位と前記比較電位との比較結果に応じて前記電源電位が所定の検知電位を跨いで変化したことを検知した旨の検知信号を生成する検知信号生成部と、を含む電圧変化検知装置であって、
前記基準電位生成部は、前記接地電位に接続された第1の定電流源又は第1の抵抗と、そのドレインが前記電源電位に接続され且つそのソースが第1のノードにおいて前記第1の定電流源又は第1の抵抗に接続され且つそのゲートが固定電位に接続されている第1の電界効果トランジスタと、を含み、
前記比較電位生成部は、接地電位に接続された第2の定電流源又は第2の抵抗と、そのドレイン及びゲートが前記電源電位に接続され且つそのソースが第2のノードにおいて前記第2の定電流源又は第2の抵抗に接続されている第2の電界効果トランジスタと、を含み、
前記検知信号生成部は、前記第1のノードにおける電位を前記基準電位とし且つ前記第2のノードにおける電位を前記比較電位として前記検知信号を生成することを特徴とする電圧変化検知装置。
【請求項2】
前記第1の電界効果トランジスタは、デプレッション型のNMOSトランジスタであり、
前記第2の電界効果トランジスタは、エンハンス型のNMOSトランジスタであることを特徴とする請求項1に記載の電圧変化検知装置。
【請求項3】
前記固定電位は、前記接地電位であることを特徴とする請求項1又は2に記載の電圧変化検知装置。
【請求項4】
前記検知信号生成部は、前記比較電位が前記基準電位よりも高くなったときに前記検知信号を生成することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1つに記載の電圧変化検知装置。
【請求項5】
電源電位に基づいて基準電位を生成する基準電位生成部と、前記電源電位に基づいて比較電位を生成する比較電位生成部と、前記基準電位と前記比較電位との比較結果に応じて前記電源電位が所定の検知電位を跨いで変化したことを検知した旨の検知信号を生成する検知信号生成部と、を含む電圧変化検知装置であって、
前記基準電位生成部は、前記接地電位に接続された第1の定電流源又は第1の抵抗と、そのドレインが前記電源電位に接続され且つそのソースが第1のノードにおいて前記第1の定電流源又は第1の抵抗に接続され且つそのゲートが固定電位に接続されている第1の電界効果トランジスタと、を含み、
前記比較電位生成部は、接地電位に接続された第2の定電流源又は第2の抵抗と、そのソースが第2のノードにおいて前記第2の定電流源又は第2の抵抗に接続されている少なくとも2つの第2の電界効果トランジスタと、前記第2の電界効果トランジスタの各々のドレイン及びゲートと前記電源電位との間に接続された少なくとも2つのスイッチ素子と、を含み、
前記検知信号生成部は、前記第1のノードにおける電位を前記基準電位とし且つ前記第2のノードにおける電位を前記比較電位として前記検知信号を生成することを特徴とする電圧変化検知装置。
【請求項6】
前記第1の電界効果トランジスタは、デプレッション型のNMOSトランジスタであり、
前記第2の電界効果トランジスタは、エンハンス型のNMOSトランジスタであることを特徴とする請求項5に記載の電圧変化検知装置。
【請求項7】
前記固定電位は、前記接地電位であることを特徴とする請求項5又は6に記載の電圧変化検知装置。
【請求項8】
前記検知信号生成部は、前記比較電位が前記基準電位よりも高くなったときに前記検知信号を生成することを特徴とする請求項5乃至7のいずれか1つに記載の電圧変化検知装置。
【請求項9】
前記第2の電界効果トランジスタの各々のゲート長もしくはゲート幅が互いに異なることを特徴とする請求項5乃至9のいずれか1つに記載の電圧変化検知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−130348(P2011−130348A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−289255(P2009−289255)
【出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【出願人】(308033711)OKIセミコンダクタ株式会社 (898)
【Fターム(参考)】