説明

電子部品実装部品

【課題】樹脂封止された電子部品の生産性を高めるために熱可塑性樹脂を使用しつつ、且つ熱可塑性樹脂を使用することにより生じる、封止樹脂の固化収縮による問題を抑制する。
【解決手段】樹脂封止の材料として、発泡熱可塑性樹脂を使用し、且つ封止樹脂部の基板に垂直な断面の外周形状が円弧状になるように設計する。上記円弧状は、略真円の円弧状であることが好ましい。また、封止樹脂部の表面は、略真球面であることが好ましい。そして、発泡熱可塑性樹脂は、低融点且つ高流動のポリブチレンテレフタレート樹脂を主成分とすることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品実装部品に関する。
【背景技術】
【0002】
IC、コンデンサやダイオード等の電子部品を、機械的・電気的な外部環境から保護するための封止技術として、安価で量産性に優れた樹脂封止が知られている。
【0003】
この樹脂封止の方法としては、先ず、基材上に搭載された半導体素子等を金型中にセットしておき、次いで、当該金型中に封止のための樹脂を溶融、射出して、最後に、樹脂を硬化させた後、脱型する方法が知られている。
【0004】
IC等の電子部品を封止するための樹脂としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂等の熱硬化性樹脂が使用されている(例えば、特許文献1参照)。これらの熱硬化性樹脂は、セラミックや金属との密着性に優れ、耐熱性、耐薬品性にも優れる。したがって、熱硬化性樹脂は、IC等の電子部品を封止する材料として好適である。
【0005】
しかしながら、熱硬化性樹脂を硬化させるための時間が非常に長いため、熱硬化性樹脂をIC等の電子部品を封止する材料として使用すると、樹脂封止された電子部品の生産性が低くなる。
【0006】
樹脂封止された電子部品の生産性を高めるために、熱硬化性樹脂に代えて熱可塑性樹脂を使用ことが考えられる。しかし、熱可塑性樹脂で封止樹脂を成形すると、封止樹脂の固化収縮により、電子部品に収縮応力が集中しやすい。電子部品に収縮応力が集中すると、電子部品が破損する等の悪影響を及ぼす可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平05−3218号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、樹脂封止された電子部品の生産性を高めるために熱可塑性樹脂を使用しつつ、且つ熱可塑性樹脂を使用することにより生じる、封止樹脂の固化収縮による問題を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた。その結果、樹脂封止の材料として、発泡熱可塑性樹脂を使用し、且つ封止樹脂部の基材に垂直な断面の外周形状が、円弧状であれば以上の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には、本発明は以下のものを提供する。
【0010】
(1) 基材と、前記基材の表面に搭載された電子部品と、前記電子部品を封止する封止樹脂部と、を備え、前記封止樹脂部は、発泡熱可塑性樹脂から構成され、前記封止樹脂部の基材に垂直な断面における、前記封止樹脂部の表面の外周形状は、円弧状である電子部品実装部品。
【0011】
(2) 前記外周形状は、略真円の円弧である(1)に記載の電子部品実装部品。
【0012】
(3) 前記封止樹脂部の表面が略真球面状である(1)又は(2)に記載の電子部品実装部品。
【0013】
(4) (1)から(3)のいずれかに記載の電子部品実装部品を製造する方法であって、基材の表面に搭載された電子部品を射出成形用金型内に固定し、熱可塑性樹脂と発泡剤及び/又は発泡核剤とを含む樹脂組成物を前記射出成形用金型内に射出する電子部品実装部品の製造方法。
【0014】
(5) 射出成形時の保圧が多段階に行われ、充填時には保圧が50MPa以上であり、その後ゲートシールまで50MPa未満であることを特徴とする(4)記載の電子部品実装部品の製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、IC等の電子部品を封止する材料として熱可塑性樹脂を使用する。このため、本発明の電子部品実装部品は、熱硬化性樹脂を使用する場合と比較して、生産性が高い。
【0016】
そして、本発明の電子部品実装部品は、電子部品等を封止する封止樹脂部が発泡熱可塑性樹脂から構成される。発泡することで、射出/保圧力による電子部品へ加わる力を低減でき、なおかつ気泡を形成することにより、固化の際の収縮で電子部品に収縮応力が集中することを抑えられる。
【0017】
さらに、封止樹脂部の基材に垂直な断面の外周形状の少なくとも一部が、円弧状である結果、円弧状の部分については封止樹脂部の表面が、固化収縮による変形をしにくく、発泡による電子部品の保護効果を妨げることがない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施形態の電子部品実装部品を模式的に示す図であり、(a)は斜視図であり、(b)は断面図である。
【図2】実施形態の電子部品実装部品における、封止樹脂部を模式的に示す図であり、(a)は斜視図であり、(b)は断面図である。
【図3】変形例を説明するための模式図であり、(a)は第一の変形例を説明するための断面図であり、(b)は第二の変形例を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されない。
【0020】
<電子部品実装部品>
図1(a)は、本実施形態の電子部品実装部品1を模式的に示す斜視図であり、図1(b)は、図1(a)のAA断面を模式的に示す断面図である。本実施形態の電子部品実装部品1は、基板10と、電子部品11と、封止樹脂部12とを備える。
【0021】
図1(a)に示すように、本実施形態の電子部品実装部品1においては、基板10に実装された電子部品11を保護するために、封止樹脂部12が、電子部品11を封止してなる。
【0022】
基板10は、図1に示すように、一の面上に電子部品11が実装される部材である。基板10には、必要に応じて、電子部品11と他の電子部品等とを電気的に接続するための配線回路を有していてもよい。基板10が本発明における基材にあたる。
【0023】
基板10の材質は特に限定されず従来公知のものを使用することができる。例えば、シリコンウェハ、エポキシ樹脂等から構成される樹脂基板等を例示することができる。また、複数の材料からなる多層基板等であってもよい。
【0024】
基板10の形状も特に限定されず、図1(a)に示すような板状以外のものも含まれる。また、フレキシブル基板のように柔軟な基板、リジット基板のように硬い基板のいずれも使用することができる。
【0025】
電子部品11は、基板10の一の面上に実装される部材である。電子部品11の具体例としては、シリコーン、ゲルマニウム等の元素半導体を有する半導体チップ、ガリウム−ヒ素、インジウム−リン等の化合物半導体を有する半導体チップ、抵抗器、サーミスタ、コンデンサ等が挙げられる。
【0026】
なお、後述する通り、特定の熱可塑性樹脂を使用すれば、電子部品12への機械的ダメージを充分に抑えることができる。したがって、本発明は、機械的ダメージに特に弱いフェライト等の電子部品を使用する場合にも、好適に適用することができる。
【0027】
電子部品11は、基板上の配線回路等と電気的に接続するための電極を有していてもよい。電極としては、スズ、銅、銀、金等の金属及びこれらの金属を含む合金や、はんだ等の材料からなるものを例示することができる。
【0028】
封止樹脂部12は、基板10上に実装された電子部品11を保護するために、電子部品11の周囲を覆う部材である。本発明は封止樹脂部12に特徴を有する。その特徴とは、封止樹脂部12が発泡熱可塑性樹脂から構成されることと、封止樹脂部12の基板に垂直な断面の外周形状が円弧状であることである。
【0029】
先ず、発泡熱可塑性樹脂について説明する。発泡熱可塑性樹脂とは、内部に気泡構造を有する熱可塑性樹脂であり、熱可塑性樹脂と発泡剤や発泡核剤とを混練して成形することで製造することができる。
【0030】
使用可能な熱可塑性樹脂としては、特に限定されず、従来公知のものを使用することができる。例えば、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、液晶性樹脂等を例示することができる。
【0031】
上記の通り、本発明においては、いずれの熱可塑性樹脂も好ましく使用することができるが、特に、ポリブチレンテレフタレート樹脂の使用が好ましい。ポリブチレンテレフタレート樹脂としては、例えば、特開2010−150484に記載される樹脂と同様のものを使用することができる。
【0032】
ポリブチレンテレフタレート樹脂を用いると、電子部品11や基板10への機械的ダメージを抑えられることに加え、低融点のものを使用することで電子部品11や基板10への熱的ダメージも抑えることができる。また、高流動のものを使用することで電子部品11が小さい場合であっても、容易に電子部品11を封止することができる。
【0033】
ポリブチレンテレフタレート樹脂を使用すれば、必要とされる耐久性を備え、電子部品11や基板10への熱的、機械的ダメージを充分に抑えることができる封止樹脂部12になるため好ましい。
【0034】
発泡熱可塑性樹脂は、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、その他の熱可塑性樹脂、各種配合剤等を添加することができる。他の樹脂としては、例えば、他のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、フッ素樹脂等が例示される。これらの他の樹脂は単独で又は2種以上組み合わせてもよい。また、配合剤としては、ガラス繊維等の強化剤、安定剤(酸化防止剤又は抗酸化剤、紫外線吸収剤、熱安定剤等)、帯電防止剤、難燃剤、難燃助剤、着色剤(染料や顔料等)、潤滑剤、可塑剤、滑剤、離型剤、結晶核剤、ドリッピング防止剤、架橋剤等が例示される。
【0035】
上記の通り、発泡熱可塑性樹脂の製造には、発泡剤は発泡核剤等が使用される。
【0036】
発泡剤としては、物理発泡に用いられる揮発性発泡剤や、化学発泡に用いられる分解性発泡剤等が挙げられる。揮発性発泡剤としては、例えば、不活性又は不燃性ガス(窒素、炭酸ガス、フロン、代替フロン等)、水、有機系物理発泡剤[例えば、脂肪族炭化水素(プロパン、n−ブタン、イソブタン、ペンタン(n−ペンタン、イソペンタン等)、ヘキサン(n−ヘキサン等)等)、芳香族炭化水素(トルエン等)、ハロゲン化炭化水素(三塩化フッ化メタン等)、エーテル類(ジメチルエーテル、石油エーテル等)、ケトン類(アセトン等)等]が挙げられる。また、分解性発泡剤としては、例えば、重炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム等の無機炭酸塩又はその塩;クエン酸等の有機酸又はその塩(クエン酸ナトリウム等);2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、アゾジカルボン酸アミド等のアゾ化合物;ベンゼンスルホニルヒドラジド等のスルホニルヒドラジド化合物;N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DNPT)等のニトロソ化合物;テレフタルアジド等のアジド化合物等が挙げられる。これらの発泡剤のうち、ブタン、ペンタン等の脂肪族炭化水素、クエン酸等の有機酸又はその塩(クエン酸ナトリウム等)等を用いる場合が多い。これらの発泡剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用してもよい。
【0037】
発泡剤の使用量は特に限定されない。使用する発泡剤に適した割合で熱可塑性樹脂に配合する。
【0038】
発泡核剤としては、上記発泡剤の説明で例示の重炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム等の無機炭酸塩又はその塩;クエン酸等の有機酸又はその塩(クエン酸ナトリウム等)等の他、ケイ酸化合物(タルク、シリカ、ゼオライト等)、金属水酸化物(水酸化アルミニウム等)、金属酸化物(酸化亜鉛、酸化チタン、アルミナ等)等が挙げられる。これらの発泡核剤は、単独で又は二種以上組み合わせ使用してもよい。発泡核剤のうち、特に、タルク等のケイ酸化合物等を使用すると、気泡構造を均一化できる。
【0039】
発泡核剤の使用量は、特に限定されない。必要に応じて適宜配合することができる。
【0040】
封止樹脂部12の発泡倍率は特に限定されない。製品の品質を著しく低下させない範囲で適宜発泡倍率を調整すればよい。また、発泡倍率の調整は、熱可塑性樹脂等の成分、発泡剤や発泡核剤の種類、発泡剤や発泡核剤の添加量、封止樹脂部の形成方法等により調整することができる。
【0041】
封止樹脂部12内部の気泡構造は特に限定されず、独立気泡構造であっても連続気泡構造であってもよく、双方の気泡構造が混在していてもよい。用途に応じて適宜変更することができる。独立気泡構造、連続気泡構造の制御は従来公知の方法で行うことができる。
【0042】
本発明においては、発泡剤が外殻に内包された熱膨張性マイクロカプセルを使用することが、独立気泡の形成という理由で好ましい。発泡体積が増え、気泡が連続すると、連続した空隙を形成しやすくなり、成形体表面から成形体内部へ連なる空隙を伝わって、水分等が浸入することにより絶縁障害等を発生することがある。独立気泡を形成する熱膨張性マイクロカプセルを使用することにより、連続した空隙の形成が避けられることから、このような障害が発生しにくくなる。
【0043】
熱膨張性マイクロカプセルの外殻は、加熱により軟化し、且つ、ガス透過性の低い樹脂からなる。樹脂としては、例えば、塩化ビニリデン系重合体、アクリロニトリル系重合体、アクリル系重合体等を挙げることができる。これらは1種単独で、又は2種以上組み合わせて用いることができる。これらの中でも、環境負荷が少ないという理由から、アクリル系重合体が好ましい。アクリル系重合体としては、例えば、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル等の単独重合体や共重合体、又は酢酸ビニル等、他の化合物との共重合体等を挙げることができる。
【0044】
発泡剤は、外殻を構成する樹脂の軟化点(一般的には90〜150℃)以下の沸点を有する物質であればよい。
【0045】
熱膨張性マイクロカプセルは、上記発泡剤を、常法にて、例えば、特公昭42−26524号公報に記載の方法(重合性単量体を発泡剤及び重合開始剤と混合し、この混合物を、必要により乳化分散助剤を含む水性媒体中で懸濁重合させる)にて、製造することができる。
【0046】
このような熱膨張性マイクロカプセルは、例えば、松本油脂製薬株式会社より「マツモトマイクロスフェア」として、積水化学工業株式会社より「アドバンセル」として、株式会社クレハより「クレハマイクロスフェアー」として、あるいはアクゾノーベル株式会社より「エクスパンセルマイクロスフェア」として入手可能である。
【0047】
次いで、封止樹脂部12の形状について説明する。封止樹脂部12は、図2(a)に示すように、基板10に接する底面120と、電子部品と接する凹部121と、外気等の電子部品実装部品1に含まれる部品以外のものと接する表面122と、を有する。
【0048】
底面120は基板10と接する面であり、より具体的には、底面120は、基板10の電子部品11が実装される面接する。
【0049】
底面120に垂直な平面で封止樹脂部12を切ったときの、封止樹脂部12の断面が、封止樹脂部12の基板10に垂直な断面にあたる。例えば、図2(a)のBB断面を模式的に表す断面図(図2(b))が、封止樹脂部12の基板10に垂直な断面の一例である。
【0050】
封止樹脂部12の基板10に垂直な断面の、表面122の外周形状とは、図2(b)のX1とX2とを結ぶ線である。本発明においては、このX1とX2とを結ぶ線が円弧状である。X1とX2を結ぶ線の全体が円弧状である必要は無いが、本発明においては90%以上が円弧状であることが好ましい。
【0051】
本実施形態では、表面122の外周形状の全部が、X1とX2との中点Xcを中心とする略真円の円弧状である。略真円とは、実質的に真円であれば楕円であってもよいことを指す。実質的に真円とは、長径の長さが短径の長さの0.8倍以上1.2倍以下程度の楕円を指す。この程度の、楕円形であれば、真円の場合と同様の効果を奏すると考えられる。なお、許容される長径の長さと短径の長さとの関係は、材料の種類や用途等に応じて異なる。
【0052】
なお、略真円の円弧状であることが好ましいが、略真円の円弧状でなくてもよい。しかし、略真円に近いほど好ましく、長径の長さが短径の長さの0.5倍以上2倍以下であることが好ましい。また、中心の位置や半径の大きさ等が異なる円弧を繋げたものも本発明に含まれる。
【0053】
また、「円弧状」とは、球殻の断面のような曲線のもの以外に、正多面体(例えば、正五角形と正六角形からなるサッカーボール)の断面のように、曲線でなくても円弧状になるようなものを含む。
【0054】
また、図2(a)に示す通り、本実施形態の表面122の形状は、略真球面状である。この略真球面の中心は、封止樹脂部12と基板10との接触面である円の中心Oである。「略真球面」とは、真球面以外に実質的に真球面と同程度の効果を奏する楕円球面も含むことを意味する。「実質的に真球面と同程度の効果を奏する楕円球面」とは、最も長い半径の長さが、最も短い半径の長さの0.8倍以上2倍以下程度である。なお、許容される長径の長さと短径の長さとの上記関係は、材料の種類や用途等に応じて異なる。
【0055】
なお、表面122の90%以上が略真球面であることが、本発明の効果を充分に得る観点から好ましい。また、表面122は略真球面に近いほど好ましいが、楕円球面等の略真球面以外の形状であってもよく、最も長い径の長さが、最も短い径の長さの0.5倍以上2倍以下であることが好ましい。また、表面122の形状は、中心や半径の異なる球面を繋ぎ合わせた形状であってもよい。
【0056】
<電子部品実装部品の製造方法>
本実施形態の電子部品実装部品1の製造方法について説明する。本発明の電子部品実装部品の製造方法は特に限定されないが、例えば、以下の方法を例示することができる。
【0057】
先ず、基板10上に電子部品11を実装する。電子部品11を基板10上に実装する方法は特に限定されず、電子部品11の種類等に応じて、一般的な方法の中から適宜好ましい方法を採用することができる。
【0058】
次いで、電子部品11を保護するための封止樹脂部12を形成する。封止樹脂部12の形成方法は特に限定されない。例えば、射出成形用の金型内に、電子部品11が実装された基板10を取り付け、その金型内に、熱可塑性樹脂と発泡剤等とを含む樹脂組成物を射出することで、封止樹脂部12を形成することができる。この成形法が射出封止成形法にあたる。
【0059】
発泡剤、発泡核剤と熱可塑性樹脂とを混合するタイミングは特に限定されず、熱可塑性樹脂と発泡剤等とを混ぜた原料を成形機に投入してもよく、可塑化又は混練中の樹脂に発泡剤等を添加又は圧入してもよい。なお、例示の添加剤やその他の樹脂等も、必要により、適当な段階で添加してもよい。
【0060】
通常、上記熱可塑性樹脂と発泡剤等とを溶融混練し、発泡成形することにより、内部に気泡構造を有する発泡熱可塑性樹脂から構成される封止樹脂部を形成することができる。
【0061】
成形温度は、熱可塑性樹脂ならびに発泡剤に適した温度範囲で適宜最適な条件が設定される。
【0062】
成形時の保圧として、多段階保圧を行うことが望ましい。一般的には、一定の保圧を保つことにより、発泡圧力により気泡がほぼ均一になるように形成されるが、本発明では、電子部品に収縮応力が集中しないように発泡形態を制御する際に、保圧力をあまり低く制御できない。保圧力をあまり低くすると、特に多数個を一度に成形する場合に、製品品質のばらつきが懸念される。多段階保圧を行うことにより、金型キャビティ内に完全充填させる際には、発泡が抑えられるような高い圧力で行うことができ、外皮が形成された後、低い圧力で電子部品に収縮応力が集中しないような高発泡領域を形成させることができる。
【0063】
射出成形時に多段階保圧を行なう場合、充填時には50MPa以上の保圧に設定し、その後ゲートシールまでの保圧を50MPa未満に設定することが好ましい。保圧時間は、成形する封止樹脂部の大きさ、形状、原料として使用する熱可塑性樹脂の種類等に応じて適宜調整する。保圧が50MPa以上の条件から、保圧が50MPa未満の条件への切り替えのタイミングは、それぞれの保圧時間を決定すれば一義的に決定される。
【0064】
<効果>
続いて、本実施形態の電子部品実装部品の効果について説明する。本実施形態の電子部品実装部品において、封止樹脂部の基板に垂直な断面の、封止樹脂部の表面の外周形状は、一部が円弧状である。先ず、この表面の外周形状が円弧状であることの効果について説明する。
発泡剤は、発泡剤と熱可塑性樹脂とをキャビティに充填した段階から発泡している。この発泡により、充填時の原料を射出する段階で電子部品に加わる力を低減することができる。また、射出成形の保圧時に保圧力が電子部品に与える力を低減することができる。
上記の通り、封止樹脂部12は、溶融状態の樹脂組成物を金型内に射出することにより形成するが、形成された封止樹脂部12は表面122から徐々に固化していき最後には内部まで固化する。この固化の過程で封止樹脂部12は収縮するが、上記円弧形状を有すれば、初期に固化する表面の表面剛性が高くなり、冷却過程の収縮力による封止樹脂部12の変形を抑えることができる。変形を抑えることができる結果、固化の際の収縮により、発泡成形による気泡構造を破壊し、電子部品11に収縮応力が集中することを抑えることができる。
【0065】
本実施形態において、上記断面における表面122の外周形状は略真円の円弧状である。略真円の円弧状であれば、初期に固化する表面の剛性が非常に高くなる。その結果、電子部品11に収縮応力が集中する可能性がさらに低くなる。
【0066】
本実施形態において、表面122は略真球面状である。先ず、表面122が略真球面であれば、表面の剛性が全体として高くなり、電子部品11への収縮応力の集中をより抑えることができる。
【0067】
さらに、表面122が略真球面の場合、表面122のいずれの位置からでも、略真球面の中心Oまでの距離が等しい。したがって、表面122の外周から封止樹脂部12の中心Oに向かう収縮力は、外周のいずれの位置からもほぼ同じになる。このため、収縮力が局所的に大きく働く位置が存在しにくく、この点からも変形が生じ難い。
【0068】
発泡性熱可塑性樹脂がポリブチレンテレフタレート樹脂であれば、成形時における電子部品11への熱的ダメージも低減することができる。
【0069】
射出封止成形で、電子部品実装部品を製造すると、球面や円弧状の封止樹脂部を容易且つ正確に形成することができる。これらの表面の形状を正確に製造できるため、射出封止成形によれば、安定して、所望の電子部品実装部品を製造することができる。
【0070】
<変形例>
以上、本発明の流路形成構造体及びその製造方法の好ましい各実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に制限されることなく、種々の形態で実施することができる。
【0071】
例えば、以上の実施形態では、略真球面の中心Oや、円弧形状の円弧の中心Xcは基板10の一の面上に存在しているが、図3(a)に示すように、略真球面の中心Oは基板10の一の面の上方に存在する場合であってもよい。
【0072】
また、図3(b)に示すように、2つの真球が融合した形状であってもよい。この場合、いずれか一方のみが略真球面を有していてもよいが、図3(b)に示すように全てが略真球面を有することが好ましい。
【実施例】
【0073】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0074】
<材料>
熱可塑性樹脂:ポリブチレンテレフタレート樹脂(以下「低融点PBT」という場合がある)(ウィンテックポリマー社製、ジュラネックス 303RA、融点:182℃、MFR:13g/10min)
発泡剤:熱膨張性マイクロカプセル(積水化学社製、アドバンセルEMP501M1)
【0075】
<実施例1>
裏面に円筒形状の突き出しピンが設けられた、直径7mmの上面がほぼ球形のキャビティにフープ端子をセットし、低融点PBTに発泡剤を3質量%加えた材料を、以下の条件で射出成形した。このようにして実施例1の電子部品実装部品が得られた。
(成形条件)
金型温度:60℃
成形機シリンダ温度:260℃
保圧:50MPaで10秒
【0076】
実施例1の電子部品実装部品の外観を目視で確認したところ、凹みを確認することはできなかった。このことから、成形における熱可塑性樹脂の固化収縮時に、発泡熱可塑性樹脂の気泡がほとんど破壊されていないことが確認できた。
【0077】
この電子部品実装部品を縦方向に切断し、断面を観察したところ、フープ端子の設けられる中央部に大きな気泡群がみられた。したがって、材料をキャビティに充填した際、保圧の際にワープ端子にかかる力が、発泡により小さく抑えられたといえる。
【0078】
フープ端子と射出成形樹脂の界面の機密性はインク侵入試験で判定した。インク侵入がほとんど無く問題が無いことが確認された。
【0079】
<実施例2>
保圧の条件を、50MPaで3秒間の保圧を行なった後、10MPaで7秒の保圧を行う条件に変更した以外は実施例1と同様の方法で、実施例2の電子部品実装部品を製造した。
【0080】
実施例2の電子部品実装部品の外観を目視で確認したところ、実施例1と同様に、凹みを確認することはできなかった。この電子部品実装部品を縦方向に切断し、断面を観察したところ、フープ端子の設けられる中央部に、極めて大きな気泡群がみられた。フープ端子と発泡熱可塑性樹脂の界面の機密性はインク侵入試験で判定した。インク侵入がほとんど無く問題が無いことが確認された。
【0081】
<実施例3>
キャビティを、長径が短径の2倍となる楕円形状のものに変更した以外は、実施例1と同様の成形を行い、実施例3の電子部品実装部品を製造した。この電子部品実装部品を縦方向に切断し、断面を観察したところ、発泡熱可塑性樹脂の固化時の収縮によりフープ端子にかかる収縮応力を充分に緩和できる程度の気泡が確認された。なお、「フープ端子にかかる収縮応力を充分に緩和できる程度の気泡」とは、楕円球形状の場合、球形状の場合と比較して、発泡熱可塑性樹脂の固化時の収縮により、発泡熱可塑性樹脂が変形しやすいが、この変形のしやすさを考慮しても、内部の電子部品にかかる収縮応力や力を充分に緩和できる程度の気泡であることを指す。
【0082】
<比較例1>
発泡剤を使用しない以外は、実施例1と同様の方法で、比較例1の電子部品実装部品を製造した。比較例1の電子部品実装部品を、縦方向に切断し、断面を観察したところ、ワープ端子の設けられる中央部には小さな空洞が認められた。しかし、この空洞は、ワープ端子等の電子部品の大きさに対し十分大きなものではなく、電子部品にかかる収縮応力や力を緩和する効果が充分に期待できないものである。
【符号の説明】
【0083】
1 電子部品実装部品
10 基板
11 電子部品
12 封止樹脂部
120 底面
121 凹部
122 表面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材に搭載された電子部品と、
前記電子部品を封止する封止樹脂部と、を備え、
前記封止樹脂部は、発泡熱可塑性樹脂から構成され、
前記封止樹脂部の基材に垂直な断面における、前記封止樹脂部の表面の外周形状は、円弧状である電子部品実装部品。
【請求項2】
前記外周形状は、略真円の円弧である請求項1に記載の電子部品実装部品。
【請求項3】
前記封止樹脂部の表面が略真球面状である請求項1又は2に記載の電子部品実装部品。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の電子部品実装部品を製造する方法であって、
基材に搭載された電子部品を射出成形用金型内に固定し、熱可塑性樹脂と発泡剤及び/又は発泡核剤とを含む樹脂組成物を前記射出成形用金型内に射出する電子部品実装部品の製造方法。
【請求項5】
射出成形時の保圧が多段階に行われ、充填時には50MPa以上であり、その後ゲートシールまで50MPa未満であることを特徴とする請求項4記載の電子部品実装部品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−151296(P2012−151296A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−9135(P2011−9135)
【出願日】平成23年1月19日(2011.1.19)
【出願人】(390006323)ポリプラスチックス株式会社 (302)
【Fターム(参考)】