説明

電気自動車の駆動システム

【課題】航続可能距離を伸ばすと共に車体における前面衝突時のための補強の増加を抑制する。
【解決手段】駆動システム10では、発電機22の回転子36が走行中常時回転されるプロペラシャフト16に一体回転可能に固定されている。従って、電気自動車の走行時には、発電機22にて電力が発生されてバッテリユニット24が充電されるので航続可能距離を伸ばすことができる。また、プロペラシャフト16は、バッテリユニット24を貫通している。従って、電気自動車に前面衝突が生じ、プロペラシャフト16が車両上下方向下側へ折れたときには、このプロペラシャフト16がバッテリユニット24と干渉されることで、バッテリユニット24を車体から落下させることができる。これにより、車室に作用する慣性マスとしてのバッテリユニット24を車体から切り離すことができるので、車体における前面衝突時のための補強の増加を抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車の駆動システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電気自動車用発電方法が開示されている。この電気自動車用発電方法は、電気自動車において、アクセルを離すかブレーキを踏むかしたときにプロペラシャフトに発電機を接続して惰力を利用した発電を行い、これにより得られた電力によってバッテリを充電させて走行に利用するものである。
【特許文献1】特開平11−55808号公報
【特許文献2】特開平4−27624号公報
【特許文献3】特開平6−169505号公報
【特許文献4】特表2001−519139号公報
【特許文献5】特開平5−280527号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、制動時のみ発電を行うため、発電量を増加して航続可能距離を伸ばすためには改善の余地がある。
【0004】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、発電量を増加して航続可能距離を伸ばすことができる電気自動車の駆動システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために、請求項1に記載の電気自動車の駆動システムは、車体前部に配置され、前輪と駆動力を伝達可能に接続された駆動モータと、車両前後方向に延在され、その車両前後方向前側が前記駆動モータとトランスファを介して駆動力を伝達可能に接続されたプロペラシャフトと、車体後部に配置されて前記プロペラシャフトの車両前後方向後側と駆動力を伝達可能に接続されると共に、前記プロペラシャフトから伝達された駆動力を後輪に伝達するディファレンシャル機構と、前記プロペラシャフトに一体回転可能に固定された回転子と、前記回転子と対向して配置された固定子とを有して構成され、前記回転子の回転に伴い電力を発生する発電機と、車体に固定されると共に前記プロペラシャフトの車両上下方向下側への変形に伴い前記プロペラシャフトと干渉するように設けられ、前記発電機にて発生した電力により充電されると共に充電した電力を前記駆動モータに供給するバッテリユニットと、を備えている。
【0006】
請求項1に記載の電気自動車の駆動システムでは、駆動モータが駆動されると、駆動モータから前輪に駆動力が伝達され、これにより、電気自動車が走行する。また、駆動モータにはトランスファを介してプロペラシャフトが駆動力を伝達可能に接続されており、このプロペラシャフトは、電気自動車の走行中は常時回転される。
【0007】
さらに、このプロペラシャフトには、発電機の回転子が一体回転可能に固定されており、この発電機は、プロペラシャフトが回転されているとき、すなわち、電気自動車が走行しているときには、電力を発生する。そして、この発電機にて発生された電力によりバッテリユニットが充電され、このバッテリユニットに充電された電力は駆動モータに供給される。
【0008】
このように、請求項1に記載の電気自動車の駆動システムによれば、制動時だけでなく、電気自動車が走行しているときには、発電機にて電力が発生されてバッテリユニットが充電されるので、発電量を増加して航続可能距離を伸ばすことができる。
【0009】
また、請求項1に記載の電気自動車の駆動システムによれば、発電機の回転子がプロペラシャフトに一体に設けられ、発電機とプロペラシャフトとが一体化されている。従って、例えば、プロペラシャフトと発電機が別体に構成されて、プロペラシャフトの駆動力をベルト機構等を介して発電機に伝達する構造に比して、電気自動車の走行中に発電機からプロペラシャフトに作用する抵抗力を低減することができる。これにより、駆動モータにおける消費電力を抑制することができるので、航続可能距離をより一層伸ばすことができる。
【0010】
さらに、請求項1に記載の電気自動車の駆動システムによれば、バッテリユニットは、車体に固定されると共にプロペラシャフトの車両上下方向下側への変形に伴いプロペラシャフトと干渉するように設けられている。従って、電気自動車に前面衝突が生じ、プロペラシャフトが車両上下方向下側へ変形されたときには、このプロペラシャフトがバッテリユニットと干渉されることにより、バッテリユニットを車体から落下させることができる。
【0011】
これにより、車室に作用する慣性マスとしてのバッテリユニットを車体から切り離すことができるので、車体における前面衝突時のための補強の増加を抑制でき、車体の軽量化とコストダウンを図ることができる。
【0012】
請求項2に記載の電気自動車の駆動システムは、請求項1に記載の電気自動車の駆動システムにおいて、前記プロペラシャフトが車両前後方向における前記トランスファと前記ディファレンシャル機構との間に脆弱部を有する構成とされている。
【0013】
請求項2に記載の電気自動車の駆動システムによれば、プロペラシャフトは、その車両前後方向中間部に脆弱部を有している。従って、電気自動車に前面衝突が生じたときには、この脆弱部をきっかけとしてプロペラシャフトを車両上下方向下側に変形させる(折る)ことができる。
【0014】
請求項3に記載の電気自動車の駆動システムは、請求項2に記載の電気自動車の駆動システムにおいて、前記脆弱部が車体の重心に対する車両前後方向前側に位置された構成とされている。
【0015】
請求項3に記載の電気自動車の駆動システムによれば、脆弱部は、車体の重心に対する車両前後方向前側に位置されている。従って、電気自動車の前面衝突時に上述の重心回りに作用するモーメントを利用して、プロペラシャフトを脆弱部をきっかけとして下に折るモードを作り出すことができる。
【0016】
請求項4に記載の電気自動車の駆動システムは、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の電気自動車の駆動システムにおいて、前記プロペラシャフトが前記バッテリユニットを貫通した構成とされている。
【0017】
請求項4に記載の電気自動車の駆動システムによれば、プロペラシャフトがバッテリユニットを貫通している。従って、電気自動車に前面衝突が生じ、プロペラシャフトが車両上下方向下側へ変形されたときには、このプロペラシャフトをバッテリユニットと干渉させることができる。
【0018】
また、上述のように、プロペラシャフトがバッテリユニットを貫通していると、例えば、プロペラシャフト及びバッテリユニットが車両高さ方向に並んで配置される構成に比して、車両高さ方向に小型化することができる。
【0019】
請求項5に記載の電気自動車の駆動システムは、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の電気自動車の駆動システムにおいて、前記固定子が前記バッテリユニットに支持された構成とされている。
【0020】
請求項5に記載の電気自動車の駆動システムによれば、プロペラシャフトと一体化された発電機の固定子がバッテリユニットに支持されている。従って、電気自動車に前面衝突が生じ、プロペラシャフトが車両上下方向下側へ変形されたときには、このプロペラシャフトをバッテリユニットと干渉させることができる(つまり、プロペラシャフトをバッテリユニットに直接干渉させるか、又は、発電機を介してプロペラシャフトの変形力をバッテリユニットに伝達させることができる)。
【0021】
しかも、請求項5に記載の電気自動車の駆動システムによれば、固定子がバッテリユニットに支持されることにより、発電機とバッテリユニットとが一体化されている。従って、発電機とバッテリユニットとを接続するワイヤハーネスを短縮することができると共に、発電機にて発生した電力によってバッテリユニットが充電されるときの充電ロスを抑制することができる。
【0022】
また、発電機とバッテリユニットとが一体化されることにより、発電機と一体化されたプロペラシャフトとバッテリユニットも一体化されている。従って、このプロペラシャフト及びバッテリユニットを含む駆動システム全体が一体のユニットとされるので、例えば、この駆動システムをシャシー部品と一体に車体に搭載することが可能となる。
【0023】
請求項6に記載の電気自動車の駆動システムは、請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の電気自動車の駆動システムにおいて、前記プロペラシャフトと前記ディファレンシャル機構との接続を遮断するためのクラッチと、電気自動車の走行状態に応じて前記クラッチの動作を制御する制御ユニットとをさらに備えている。
【0024】
請求項6に記載の電気自動車の駆動システムによれば、電気自動車の走行状態に応じてクラッチ機構の動作が遮断される。これにより、電気自動車の走行状態に応じて、駆動モータによって前輪のみが駆動される状態と、駆動モータの駆動力が前輪及び後輪に伝達されて前輪及び後輪が駆動される状態とに切り替えることができる。
【0025】
また、前記課題を解決するために、請求項7に記載の電気自動車の駆動システムは、車体前部に配置され、前輪と駆動力を伝達可能に接続された駆動モータと、車両前後方向に延在され、その車両前後方向前側が前記駆動モータとトランスファを介して駆動力を伝達可能に接続されたプロペラシャフトと、車体後部に配置されて前記プロペラシャフトの車両前後方向後側と駆動力を伝達可能に接続されると共に、前記プロペラシャフトから伝達された駆動力を後輪に伝達するディファレンシャル機構と、前記プロペラシャフトに一体回転可能に固定された回転子と、前記回転子と対向して配置された固定子とを有して構成され、前記回転子の回転に伴い電力を発生する発電機と、車体に固定されると共に前記固定子が支持され、前記発電機にて発生した電力により充電されると共に充電した電力を前記駆動モータに供給するバッテリユニットと、を備えている。
【0026】
請求項7に記載の電気自動車の駆動システムでは、駆動モータが駆動されると、駆動モータから前輪に駆動力が伝達され、これにより、電気自動車が走行する。また、駆動モータにはトランスファを介してプロペラシャフトが駆動力を伝達可能に接続されており、このプロペラシャフトは、電気自動車の走行中は常時回転される。
【0027】
さらに、このプロペラシャフトには、発電機の回転子が一体回転可能に固定されており、この発電機は、プロペラシャフトが回転されているとき、すなわち、電気自動車が走行しているときには、電力を発生する。そして、この発電機にて発生された電力によりバッテリユニットが充電され、このバッテリユニットに充電された電力は駆動モータに供給される。
【0028】
このように、請求項7に記載の電気自動車の駆動システムによれば、制動時だけでなく、電気自動車が走行しているときには、発電機にて電力が発生されてバッテリユニットが充電されるので、発電量を増加して航続可能距離を伸ばすことができる。
【0029】
また、請求項7に記載の電気自動車の駆動システムによれば、発電機の回転子がプロペラシャフトに一体に設けられ、発電機とプロペラシャフトとが一体化されている。従って、例えば、プロペラシャフトと発電機が別体に構成されて、プロペラシャフトの駆動力をベルト機構等を介して発電機に伝達する構造に比して、電気自動車の走行中に発電機からプロペラシャフトに作用する抵抗力を低減することができる。これにより、駆動モータにおける消費電力を抑制することができるので、航続可能距離をより一層伸ばすことができる。
【0030】
さらに、請求項7に記載の電気自動車の駆動システムによれば、プロペラシャフトと一体化された発電機の固定子がバッテリユニットに支持されている。従って、電気自動車に前面衝突が生じ、プロペラシャフトが車両上下方向下側へ変形されたときには、このプロペラシャフトがバッテリユニットと干渉される(つまり、プロペラシャフトがバッテリユニットに直接干渉されるか、又は、発電機を介してプロペラシャフトの変形力がバッテリユニットに伝達される)ことにより、バッテリユニットを車体から落下させることができる。
【0031】
これにより、車室に作用する慣性マスとしてのバッテリユニットを車体から切り離すことができるので、車体における前面衝突時のための補強の増加を抑制でき、車体の軽量化とコストダウンを図ることができる。
【0032】
しかも、請求項7に記載の電気自動車の駆動システムによれば、固定子がバッテリユニットに支持されることにより、発電機とバッテリユニットとが一体化されている。従って、発電機とバッテリユニットとを接続するワイヤハーネスを短縮することができると共に、発電機にて発生した電力によってバッテリユニットが充電されるときの充電ロスを抑制することができる。
【0033】
また、発電機とバッテリユニットとが一体化されることにより、発電機と一体化されたプロペラシャフトとバッテリユニットも一体化されている。従って、このプロペラシャフト及びバッテリユニットを含む駆動システム全体が一体のユニットとされるので、例えば、この駆動システムをシャシー部品と一体に車体に搭載することが可能となる。
【発明の効果】
【0034】
以上詳述したように、本発明によれば、制動時だけでなく、電気自動車が走行しているときには、発電機にて電力が発生されてバッテリユニットが充電されるので、発電量を増加して航続可能距離を伸ばすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態について説明する。
【0036】
なお、各図において示される矢印UP、矢印FR、矢印OUTは、本発明の一実施形態に係る電気自動車EVの車両上下方向上側、車両前後方向前側、車両幅方向外側をそれぞれ示している。
【0037】
図1に示される電気自動車EVは、駆動システム10を備えている。駆動システム10は、駆動モータ12と、トランスファ14と、プロペラシャフト16と、クラッチ18と、ディファレンシャル機構20と、発電機22と、バッテリユニット24と、制御ユニット26とを備えている。
【0038】
駆動モータ12は、車体前部に配置され、車軸等を介して前輪28と駆動力を伝達可能に接続されている。
【0039】
プロペラシャフト16は、車両前後方向に延在されており、その車両前後方向前側は、トランスファ14を介して駆動モータ12と駆動力を伝達可能に接続されている。
【0040】
このプロペラシャフト16には、図1,図4に示されるように、車両前後方向におけるトランスファ14とディファレンシャル機構20との間(より具体的には、車両前後方向におけるトランスファ14とバッテリユニット24との間)にくびれ状の脆弱部30が形成されている。この脆弱部30は、車体の重心32に対する車両前後方向前側に位置されている。
【0041】
クラッチ18は、プロペラシャフト16とディファレンシャル機構20との接続を遮断する遮断状態と、プロペラシャフト16とディファレンシャル機構20とを接続する接続状態とに切替可能な電磁クラッチ等により構成されている。
【0042】
ディファレンシャル機構20は、車体後部に配置されている。このディファレンシャル機構20は、プロペラシャフト16の車両前後方向後側とクラッチ18を介して駆動力を伝達可能に接続されると共に、プロペラシャフト16から伝達された駆動力を後輪34に伝達する構成とされている。
【0043】
発電機22は、例えば、図2,図3に示されるように、回転子36と、固定子38と、整流装置40とを有するブラシ付きモータにより構成されている。
【0044】
回転子36は、コア及びコイルを有して構成されており、プロペラシャフト16に一体回転可能に固定されている。固定子38は、モータハウジング42と、このモータハウジング42の内周面に固定されたマグネット43とにより構成されており、回転子36の径方向外側に回転子36と径方向に対向して配置されている。整流装置40は、整流子44と、ブラシ46と、ブラシホルダ48等により構成されている。そして、この発電機22は、回転子36の回転に伴い電力を発生する構成とされている。
【0045】
また、この発電機22は、後述するバッテリケース54の内部に収容されると共に、ブラケット50を介してバッテリケース54に支持されている。
【0046】
バッテリユニット24は、バッテリ52及びバッテリケース54を有して構成されている。バッテリ52は、バッテリケース54の内部に収容され、発電機22にて発生した電力により充電されると共に充電した電力を駆動モータ12に供給する構成とされている。また、このバッテリ52は、制動時には駆動モータ12にて発生した電力によっても充電される構成とされている。
【0047】
バッテリケース54は、図示しない固定具や溶接等により車体(例えば、フロアパネルやクロスメンバなど)に固定されている。また、このバッテリケース54には、プロペラシャフト16が貫通している。
【0048】
そして、この駆動システム10では、後述するように電気自動車EVに前面衝突が生じてプロペラシャフト16が車両上下方向下側へ変形されたときには、このプロペラシャフト16とバッテリケース54とが干渉するように(つまり、プロペラシャフト16がバッテリケース54に直接干渉されるか、又は、発電機22を介してプロペラシャフト16の変形力がバッテリケース54に伝達されるように)、プロペラシャフト16とバッテリケース54との相対位置や隙間等が設定されている。
【0049】
制御ユニット26は、運転者によるアクセル操作に応じて出力されるアクセル信号等に基づいて駆動モータ12の動作を制御したり、電気自動車EVの走行状態に応じてクラッチ18の動作を制御したりする構成とされている。
【0050】
なお、制御ユニット26は、通常走行時にはクラッチ18を遮断状態として駆動モータ12の駆動力を後輪34に伝達させないようにし、登坂路走行時や低摩擦路走行時にはクラッチ18を接続状態として駆動モータ12の駆動力を後輪34に伝達させる。
【0051】
次に、本発明の一実施形態の作用及び効果について説明する。
【0052】
本発明の一実施形態に係る駆動システム10では、駆動モータ12が駆動されると、駆動モータ12から前輪28に駆動力が伝達され、これにより、電気自動車EVが走行する。また、駆動モータ12にはトランスファ14を介してプロペラシャフト16が駆動力を伝達可能に接続されており、このプロペラシャフト16は、電気自動車EVの走行中は常時回転される。
【0053】
さらに、このプロペラシャフト16には、発電機22の回転子36が一体回転可能に固定されており、この発電機22は、プロペラシャフト16が回転されているとき、すなわち、電気自動車EVが走行しているときには、電力を発生する。そして、この発電機22にて発生された電力によりバッテリユニット24が充電され、このバッテリユニット24に充電された電力は駆動モータ12に供給される。
【0054】
このように、本発明の一実施形態に係る駆動システム10によれば、制動時だけでなく、電気自動車EVが走行しているときには、発電機22にて電力が発生されてバッテリユニット24が充電されるので、発電量を増加して航続可能距離を伸ばすことができる。
【0055】
また、本発明の一実施形態に係る駆動システム10によれば、発電機22の回転子36がプロペラシャフト16に一体に設けられ、発電機22とプロペラシャフト16とが一体化されている。従って、例えば、プロペラシャフト16と発電機22が別体に構成されて、プロペラシャフト16の駆動力をベルト機構等を介して発電機22に伝達する構造に比して、電気自動車EVの走行中に発電機22からプロペラシャフト16に作用する抵抗力を低減することができる。これにより、駆動モータ12における消費電力を抑制することができるので、航続可能距離をより一層伸ばすことができる。
【0056】
しかも、本発明の一実施形態に係る駆動システム10によれば、制動時に荷重がかかる車体前部に駆動モータ12が配置されている。このため、制動時には、より多くの回生エネルギを駆動モータ12によって回収することができる。
【0057】
また、本発明の一実施形態に係る駆動システム10では、図5の上図に示されるように、電気自動車EVに前面衝突が生じると、車体前部に配置された重量物である駆動モータ12の車両前後方向前側の移動が規制される。そして、駆動モータ12と同様に重量物であるバッテリユニット24は、慣性マスとなって車両前側に移動し続けようとするが、図5の中図に示されるように、このバッテリユニット24と一体となっているプロペラシャフト16が突っ張ってしまう。
【0058】
ところが、プロペラシャフト16は、車両前後方向におけるトランスファ14とバッテリユニット24との間に脆弱部30を有している。しかも、この脆弱部30は、車体の重心32に対する車両前後方向前側に位置されている。従って、電気自動車EVの前面衝突時には、上述の重心32回りに作用するモーメントMを利用して、図5の下図に示されるように、プロペラシャフト16を脆弱部30をきっかけとして下に折るモードを作り出すことができる。
【0059】
しかも、このプロペラシャフト16は、バッテリユニット24を貫通しており、また、このプロペラシャフト16と一体化された発電機22の固定子38はバッテリケース54に支持されている。このため、電気自動車EVに前面衝突が生じ、プロペラシャフト16が車両上下方向下側へ折れたときには、このプロペラシャフト16がバッテリケース54と干渉される(つまり、プロペラシャフト16がバッテリケース54に直接干渉されるか、又は、発電機22を介してプロペラシャフト16の変形力がバッテリケース54に伝達される)ことで、図5の下図に示されるように、バッテリユニット24を車体から落下させることができる。
【0060】
これにより、車室に作用する慣性マスとしてのバッテリユニット24を車体から切り離すことができるので、車体における前面衝突時のための補強の増加を抑制でき、車体の軽量化とコストダウンを図ることができる。
【0061】
また、仮に、駆動モータ12が車体後部に配置された場合には、車体後部に慣性マスが増加する。このため、電気自動車EVの前面衝突時におけるエネルギ吸収をするためには車体前部の補強をする必要がある。ところが、本発明の一実施形態に係る駆動システム10によれば、駆動モータ12が車体前部に配置されているため、車体前部の補強が少なくて済む。
【0062】
また、上述のように、プロペラシャフト16がバッテリユニット24を貫通していると、例えば、プロペラシャフト16及びバッテリユニット24が車両高さ方向に並んで配置される構成に比して、車両高さ方向に小型化することができる。
【0063】
また、本発明の一実施形態に係る駆動システム10によれば、発電機22がバッテリユニット24に一体に設けられている。従って、発電機22とバッテリユニット24とを接続するワイヤハーネスを短縮することができると共に、発電機22にて発生した電力によってバッテリユニット24が充電されるときの充電ロスを抑制することができる。
【0064】
また、発電機22とバッテリユニット24とが一体化されることにより、発電機22と一体化されたプロペラシャフト16とバッテリユニット24も一体化されている。従って、このプロペラシャフト16及びバッテリユニット24を含む駆動システム10全体が一体のユニットとされるので、例えば、この駆動システム10をシャシー部品と一体に車体に搭載することが可能となる。
【0065】
また、本発明の一実施形態に係る駆動システム10によれば、電気自動車EVの走行状態に応じてクラッチ18機構の動作が遮断される。これにより、電気自動車EVの走行状態に応じて、駆動モータ12によって前輪28のみが駆動される状態と、駆動モータ12の駆動力が前輪28及び後輪34に伝達されて前輪28及び後輪34が駆動される状態とに切り替えることができる。
【0066】
つまり、通常走行時にはクラッチ18を遮断状態として駆動モータ12の駆動力を後輪34に伝達させないようにして駆動モータ12に作用する負荷を低減させることができる。その一方で、登坂路走行時や低摩擦路走行時にはクラッチ18を接続状態として駆動モータ12の駆動力を後輪34に伝達させることができる。これにより、回生エネルギを多く回収できる前輪28駆動の電気自動車EVでありながらより高い駆動力を得ることができる。
【0067】
次に、本発明の一実施形態の変形例について説明する。
【0068】
上記実施形態において、発電機22は、ブラシ付きモータにより構成されていたが、図6に示されるように、回転子36と固定子38とを有するブラシレスモータにより構成されていても良い。なお、この場合、回転子36は、マグネットにより構成され、固定子38は、コア及びコイルにより構成される。
【0069】
また、上記実施形態において、発電機22は、バッテリケース54の内部に収容されると共に、ブラケット50を介してバッテリケース54に支持されていたが、次のように構成されていても良い。
【0070】
すなわち、図7,図8に示されるように、発電機22は、バッテリケース54の外部に配置されると共に、ブラケット50を介してバッテリケース54に支持されていても良い。
【0071】
また、上記実施形態において、プロペラシャフト16は、図9に示されるように、例えば、軸受56等によってバッテリケース54に回転可能に支持されていても良い。このように構成されていても、プロペラシャフト16が脆弱部30をきっかけとして車両上下方向下側に折れたときには、バッテリユニット24を車体から落下させることができる。
【0072】
また、上記実施形態において、脆弱部30は、くびれ状に形成されていたが、図10に示されるように、テーパ部58と細径部60とによって構成されていても良い。なお、この場合には、テーパ部58と細径部60との境界においてプロペラシャフト16が車両上下方向下側に折れるようになる。
【0073】
以上、本発明の一実施形態及びその変形例について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、その主旨を逸脱しない範囲内において上記以外にも種々変形して実施することが可能であることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の一実施形態に係る電気自動車の側面図である。
【図2】図1の2−2線断面図である。
【図3】図2の3−3線断面図である。
【図4】図1に示されるプロペラシャフトの側面図である。
【図5】図1に示される駆動システムの前面衝突時の動作を説明する図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る駆動システムの変形例を示す図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る駆動システムの変形例を示す図である。
【図8】本発明の一実施形態に係る駆動システムの変形例を示す図である。
【図9】本発明の一実施形態に係る駆動システムの変形例を示す図である。
【図10】本発明の一実施形態に係るプロペラシャフトの変形例を示す図である。
【符号の説明】
【0075】
10 駆動システム
12 駆動モータ
14 トランスファ
16 プロペラシャフト
18 クラッチ
20 ディファレンシャル機構
22 発電機
24 バッテリユニット
26 制御ユニット
30 脆弱部
32 重心
EV 電気自動車

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体前部に配置され、前輪と駆動力を伝達可能に接続された駆動モータと、
車両前後方向に延在され、その車両前後方向前側が前記駆動モータとトランスファを介して駆動力を伝達可能に接続されたプロペラシャフトと、
車体後部に配置されて前記プロペラシャフトの車両前後方向後側と駆動力を伝達可能に接続されると共に、前記プロペラシャフトから伝達された駆動力を後輪に伝達するディファレンシャル機構と、
前記プロペラシャフトに一体回転可能に固定された回転子と、前記回転子と対向して配置された固定子とを有して構成され、前記回転子の回転に伴い電力を発生する発電機と、
車体に固定されると共に前記プロペラシャフトの車両上下方向下側への変形に伴い前記プロペラシャフトと干渉するように設けられ、前記発電機にて発生した電力により充電されると共に充電した電力を前記駆動モータに供給するバッテリユニットと、
を備えた電気自動車の駆動システム。
【請求項2】
前記プロペラシャフトは、車両前後方向における前記トランスファと前記ディファレンシャル機構との間に脆弱部を有する、
請求項1に記載の電気自動車の駆動システム。
【請求項3】
前記脆弱部は、車体の重心に対する車両前後方向前側に位置されている、
請求項2に記載の電気自動車の駆動システム。
【請求項4】
前記プロペラシャフトは、前記バッテリユニットを貫通している、
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の電気自動車の駆動システム。
【請求項5】
前記固定子は、前記バッテリユニットに支持されている、
請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の電気自動車の駆動システム。
【請求項6】
前記プロペラシャフトと前記ディファレンシャル機構との接続を遮断するためのクラッチと、
電気自動車の走行状態に応じて前記クラッチの動作を制御する制御ユニットと、
を備えた請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の電気自動車の駆動システム。
【請求項7】
車体前部に配置され、前輪と駆動力を伝達可能に接続された駆動モータと、
車両前後方向に延在され、その車両前後方向前側が前記駆動モータとトランスファを介して駆動力を伝達可能に接続されたプロペラシャフトと、
車体後部に配置されて前記プロペラシャフトの車両前後方向後側と駆動力を伝達可能に接続されると共に、前記プロペラシャフトから伝達された駆動力を後輪に伝達するディファレンシャル機構と、
前記プロペラシャフトに一体回転可能に固定された回転子と、前記回転子と対向して配置された固定子とを有して構成され、前記回転子の回転に伴い電力を発生する発電機と、
車体に固定されると共に前記固定子が支持され、前記発電機にて発生した電力により充電されると共に充電した電力を前記駆動モータに供給するバッテリユニットと、
を備えた電気自動車の駆動システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−155570(P2010−155570A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−335674(P2008−335674)
【出願日】平成20年12月29日(2008.12.29)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】