説明

電界効果型トランジスタ、表示素子、画像表示装置及びシステム

【課題】プロセスウィンドウが広く、特性安定性が高い電界効果型トランジスタを提供する。
【解決手段】ゲート電圧を印加するためのゲート電極と;電流を取り出すためのソース電極及びドレイン電極と;前記ソース電極及びドレイン電極に隣接して設けられ、n型酸化物半導体からなる活性層と;前記ゲート電極と前記活性層との間に設けられたゲート絶縁層と;を備える電界効果型トランジスタであって、前記酸化物半導体が、3価、4価、5価および6価の少なくとも1つのカチオンを導入することによりn型ドーピングされた結晶組成化合物であることを特徴とする電界効果型トランジスタを提供することにより上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電界効果型トランジスタ、表示素子、画像表示装置及びシステムに係り、更に詳しくは、酸化物半導体からなる活性層を有する電界効果型トランジスタ、該電界効果型トランジスタを有する表示素子及び画像表示装置、該画像表示装置を備えるシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
電界効果型トランジスタ(Field Effect Transistor:FET)は、ゲート電極に電圧をかけ、チャネルの電界により電子または正孔の流れに関門(ゲート)を設ける原理で、ソース電極とドレイン電極間の電流を制御するトランジスタである。
【0003】
FETはその特性から、スイッチング素子や増幅素子として利用されている。そして、FETは、ゲート電流が低いことに加え、構造が平面的であるため、バイポーラトランジスタと比較して作製や集積化が容易である。そのため、現在の電子機器で使用される集積回路では必要不可欠な素子となっている。
【0004】
FETは、薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor:TFT)として、アクティブマトリックス方式のディスプレイ等に応用されている。
【0005】
近年、平面薄型ディスプレイ(Flat Panel Display:FPD)として、液晶ディスプレイ(Liquid Crystal Display:LCD)、有機EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ(OLED)、電子ペーパー等が実用化されている。
【0006】
これらFPDは、非晶質シリコンや多結晶シリコンを活性層に用いたTFTを含む駆動回路により駆動されている。そして、FPDは、さらなる大型化、高精細化、高速駆動性が求められており、それに伴って、キャリア移動度が高く、特性の経時変化が小さく、素子間のばらつきが小さいTFTが求められている。
【0007】
しかしながら、非晶質シリコン(a−Si)や多結晶シリコン(特に低温ポリシリコン:LTPS)を活性層に用いたTFTは、それぞれに一長一短があり、同時に全ての要求を満たすことは困難であった。
【0008】
例えば、a−Si TFTは大画面のLCD(Liquid Crystal Display)を高速駆動するには移動度が不足しており、また連続駆動時の閾値電圧シフトが大きいという欠点を抱えている。LTPS−TFTは移動度は大きいが、エキシマレーザーアニーリングによって活性層を結晶化するプロセスのために閾値電圧のバラツキが大きく、量産ラインのマザーガラスサイズを大きくできないという問題が存在する。
【0009】
そこで、a−Si TFTの長所とLTPS TFTの長所を合わせ持つ新たなTFT技術が要求されている。この要求に応えるため、近年、a−Siを超えるキャリア移動度が期待できる酸化物半導体を用いたTFTの開発が活発に行われている。
【0010】
特に、室温成膜が可能でアモルファス状態でa−Si以上の移動度を示すInGaZnO(a−IGZO)が提案され(非特許文献1参照)、これをきっかけとして、移動度の高いアモルファス酸化物半導体が精力的に研究されるに至った。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、これら酸化物半導体においては、キャリア電子を酸素空孔によってつくりだしているため、成膜プロセスにおいて酸素濃度を厳密に制御する必要があった。高い移動度を実現しようとするとデプレッション状態になりやすく、ノーマリーオフを実現するプロセスウィンドウは非常に狭い。更に、成膜後のパターンニング工程やパッシベーション工程等で膜中の酸素濃度が変化し、特性が劣化しやすいという問題が存在した。
【0012】
このような問題を解決するために、従来は2つの観点から対策が検討された。その一つは、キャリア濃度を低く保つために、p型ドーパントを導入して、酸素空孔によって生成したキャリアを補償する方策であり(特許文献1及び2参照)、いま一つは、酸素との親和性の高い金属元素(Al、Zr、Hf等)を一定量導入して、キャリア生成を抑制する方法である。(非特許文献2参照) しかしいずれの方法とも、安定性が不十分であったり、移動度の低下を招いたりするなど、なお問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明はかかる問題を鑑みてなされたもので、電界効果型トランジスタの活性層の酸化物半導体にn型の置換ドーピングを行うことによってキャリアを生成し、成膜時に充分な酸素量を導入して酸素濃度の厳密な制御を不要にするとともに、酸素空孔を低減して格子の安定性を高め、後工程での特性安定性を実現するものである。
【0014】
即ち、本発明は、第1の観点からすると、
<1> ゲート電圧を印加するためのゲート電極と;
電流を取り出すためのソース電極及びドレイン電極と;
前記ソース電極及びドレイン電極に隣接して設けられ、n型酸化物半導体からなる活性層と;
前記ゲート電極と前記活性層との間に設けられたゲート絶縁層と;
を備える電界効果型トランジスタであって、前記酸化物半導体が3価、4価、5価および6価の少なくとも1つのカチオンを導入することによりn型ドーピングされた結晶組成化合物であることを特徴とする電界効果型トランジスタである。
【0015】
<2> 前記酸化物半導体が3価、4価、5価および6価の少なくとも1つのカチオンを導入することによりn型ドーピングされた立方晶組成化合物であることを特徴とする前記<1>に記載の電界効果型トランジスタである。
【0016】
<3> 前記酸化物半導体はAB(AはMg2+、Zn2+、Cd2+の1種または複数種の2価カチオン、BはAl3+、Ga3+、In3+の1種または複数種の3価カチオン)で表されるスピネル組成化合物であって、前記Aの2価カチオンへの前記n型ドーピングが、Al3+、Ga3+、In3+、Ge4+、Sn4+、Ti4+、Zr4+、Hf4+、V5+、Nb5+、Ta5+、Sb5+、Mo6+、W6+の1種または複数種のカチオンの導入によることを特徴とする、前記<2>に記載の電界効果型トランジスタである。
【0017】
<4> 前記酸化物半導体はAB(AはMg2+、Zn2+、Cd2+の1種または複数種の2価カチオン、BはAl3+、Ga3+、In3+の1種または複数種の3価カチオン)で表されるスピネル組成化合物であって、Bカチオンへの前記n型ドーピングが、Ge4+、Sn4+、Ti4+、Zr4+、Hf4+、V5+、Nb5+、Ta5+、Sb5+、Mo6+、W6+の1種または複数種のカチオンの導入によることを特徴とする、前記<2>に記載の電界効果型トランジスタである。
【0018】
<5> 前記酸化物半導体はADO(AはMg2+、Zn2+、Cd2+の1種または複数種の2価カチオン、DはTi4+、Sn4+の1種または複数種の4価カチオン)で表されるスピネル組成化合物であって、Aカチオンへの前記n型ドーピングが、Al3+、Ga3+、In3+、Ge4+、Sn4+、Ti4+、Zr4+、Hf4+、V5+、Nb5+、Ta5+、Sb5+、Mo6+、W6+の1種または複数種のカチオンの導入によることを特徴とする、前記<2>に記載の電界効果型トランジスタである。
【0019】
<6> 前記酸化物半導体はADO(AはMg2+、Zn2+、Cd2+の1種または複数種の2価カチオン、DはTi4+、Sn4+の1種または複数種の4価カチオン)で表されるスピネル組成化合物であって、Dカチオンへの前記n型ドーピングが、V5+、Nb5+、Ta5+、Sb5+、Mo6+、W6+の1種または複数種のカチオンの導入によることを特徴とする、前記<2>に記載の電界効果型トランジスタである。
【0020】
<7> 前記酸化物半導体はIn3+、Sc3+、Y3+、Ln3+(Lnは希土類元素)より選ばれた1種または複数種の3価カチオンを含むビクスバイト組成化合物であって、前記n型ドーピングが、Al3+、Ga3+、In3+、Ge4+、Sn4+、Ti4+、Zr4+、Hf4+、V5+、Nb5+、Ta5+、Sb5+、Mo6+、W6+の1種または複数種のカチオンの導入によることを特徴とする、前記<2>に記載の電界効果型トランジスタである。
【0021】
<8> また、前記酸化物半導体が3価、4価、5価および6価の少なくとも1つのカチオンを導入することによりn型ドーピングされた正方晶組成化合物であることを特徴とする前記<1>に記載の電界効果型トランジスタである。
【0022】
<9> 前記酸化物半導体はAE(AはMg2+、Zn2+、Cd2+の1種または複数種の2価カチオン、EはSb5+、Nb5+、Ta5+の1種または複数種の5価カチオン)で表されるトリルチル組成化合物であって、前記n型ドーピングが、Al3+、Ga3+、In3+、Y3+、Ge4+、Sn4+、Ti4+、Zr4+、Hf4+、V5+、Nb5+、Ta5+、Sb5+、Mo6+、W6+の1種または複数種のカチオンの導入によることを特徴とする、前記<8>に記載の電界効果型トランジスタである。
【0023】
<10> 前記酸化物半導体が3価、4価、5価および6価の少なくとも1つのカチオンを導入することによりn型ドーピングされた斜方晶組成化合物であることを特徴とする前記<1>に記載の電界効果型トランジスタである。
【0024】
<11> 前記酸化物半導体はAGO(AはMg2+、Zn2+、Cd2+の1種または複数種の2価カチオン、GはSi4+、Ge4+、Sn4+の1種または複数種の4価カチオン)で表されるオリビン組成化合物であって、前記n型ドーピングが、Al3+、Ga3+、In3+、Y3+、Ge4+、Sn4+、Ti4+、Zr4+、Hf4+、V5+、Nb5+、Ta5+、Sb5+、Mo6+、W6+の1種または複数種のカチオンの導入によることを特徴とする、前記<10>に記載の電界効果型トランジスタである。
【0025】
<12> また、前記酸化物半導体が3価、4価、5価および6価の少なくとも1つのカチオンを導入することによりn型ドーピングされた六方晶組成化合物であることを特徴とする前記<1>に記載の電界効果型トランジスタである。
【0026】
<13> 前記酸化物半導体はRE(RはCa2+、Sr2+、Ba2+、Cd2+、Pb2+の1種または複数種の2価カチオン、EはSb5+、Nb5+、Ta5+の1種または複数種の5価カチオン)で表されるPbSb型結晶組成化合物であって、前記n型ドーピングが、Al3+、Ga3+、In3+、Y3+、Ge4+、Sn4+、Ti4+、Zr4+、Hf4+、V5+、Nb5+、Ta5+、Sb5+、Mo6+、W6+の1種または複数種のカチオンの導入によることを特徴とする、前記<12>に記載の電界効果型トランジスタである。
【0027】
<14> 前記酸化物半導体はIn(ZnO) (m=2以上6未満の整数)で表されるホモロガス組成化合物であって、前記n型ドーピングが、V5+、Nb5+、Ta5+、Sb5+、Mo6+、W6+の1種または複数種のカチオンの導入によることを特徴とする、前記<12>に記載の電界効果型トランジスタである。
【0028】
ここで結晶組成化合物とは、相図において結晶が熱力学的安定状態として存在する組成の化合物を意味する。このような組成であれば熱力学的準安定状態にあっても良い。
【0029】
また、立方晶組成化合物とは、相図において立方晶結晶が熱力学的安定状態として存在する組成の化合物を意味する。このような組成であれば熱力学的準安定状態にあっても良い。
【0030】
同様にまた、正方晶組成化合物、斜方晶組成化合物、及び六方晶組成化合物とは、相図において、各々、正方晶結晶、斜方晶結晶、六方晶結晶が熱力学的安定状態として存在する組成の化合物を意味する。このような組成であれば熱力学的準安定状態にあっても良い。
【0031】
更にまた、スピネル組成化合物とは、相図においてスピネル結晶が熱力学的安定状態として存在する組成の化合物を意味する。このような組成であれば熱力学的準安定状態にあっても良い。
【0032】
同様に、ビクスバイト組成化合物、パイロクロア組成化合物、フローライト組成化合物、トリルチル組成化合物、オリビン組成化合物、PbSb型結晶組成化合物、及びホモロガス組成化合物とは、相図において各々、ビクスバイト結晶、パイロクロア結晶、フローライト結晶、トリルチル結晶、オリビン結晶、PbSb結晶、及びホモロガス結晶が熱力学的安定状態として存在する組成の化合物を意味する。このような組成であれば熱力学的準安定状態にあっても良い。
【0033】
n型の置換ドーピングが成立するためには、被置換カチオンサイトに価数がより大きい置換カチオンが導入され、尚且つ局所構造が維持されることが必要である。この観点からスピネルやビクスバイト組成化合物は特に好適である。パイロクロアやフローライト組成化合物等も好ましい。アモルファス性が高い化合物の場合、ドーピングすると局所構造変化が起きドーパントは安定な局所構造に落ち着くためキャリアを生成しない。スピネルやビクスバイト酸化物のように堅牢な構造の場合、仮にX線回折でアモルファスに見える(長距離構造に周期性がない)ような場合であっても、短距離及び中距離構造は保持されているため、適切なエネルギーレベルのドーパントを被置換カチオンサイトに導入できればキャリアが生成する。キャリア生成という観点からは、勿論、結晶化していても良く、ZnOやIGZOが六方晶であるのと異なり、立方晶化合物では移動度に異方性はないため、大面積のアプリケーションに対しても問題が起こらない。
【0034】
スピネル組成化合物はABで表され、酸素が面心立方格子を取るリジッドな構造を有する。スピネル組成化合物の中で特に好ましいのは、2価と3価のカチオンから構成されるAB(AはMg2+、Zn2+、Cd2+の1種または複数種の2価カチオン、BはAl3+、Ga3+、In3+の1種または複数種の3価カチオン)で表される化合物である。例えば、MgGa、MgIn、ZnAl、ZnGa、CdGa等である。或いはこれらの化合物の固溶体であっても良い。これらのスピネル組成化合物においては、Aの2価カチオンに対しAl3+、Ga3+、In3+、Ge4+、Sn4+、Ti4+、Zr4+、Hf4+、V5+、Nb5+、Ta5+、Sb5+、Mo6+、W6+の1種または複数種のカチオンを導入することによって、n型ドーピングを行うことができる。また、Bの3価カチオンに対しGe4+、Sn4+、Ti4+、Zr4+、Hf4+、V5+、Nb5+、Ta5+、Sb5+、Mo6+、W6+の1種または複数種のカチオンを導入することによっても電子キャリアを生成することができる。
【0035】
更に、スピネル組成化合物には2価と4価のカチオンで構成される化合物も存在する。この中で特に好ましいのは、ADO(AはMg2+、Zn2+、Cd2+の1種または複数種の2価カチオン、DはSn4+、Ti4+の1種または複数種の4価カチオン)で表される化合物である。例えば、MgTiO、MgSnO、ZnTiO、ZnSnO、CdSnO等である。或いはこれらの化合物の固溶体であっても良い。これらのスピネル組成化合物においては、Aの2価カチオンに対しAl3+、Ga3+、In3+、Ge4+、Sn4+、Ti4+、Zr4+、Hf4+、V5+、Nb5+、Ta5+、Sb5+、Mo6+、W6+の1種または複数種のカチオンを導入することによって、n型ドーピングを行うことができる。また、Dの4価カチオンに対しV5+、Nb5+、Ta5+、Sb5+、Mo6+、W6+の1種または複数種のカチオンを導入することによっても電子キャリアを生成することができる。
【0036】
他のn型ドーピングが可能な立方晶組成化合物の例は、In3+、Sc3+、Y3+、Ln3+(Lnは希土類元素)より選ばれた1種または複数種の3価カチオンを含むビクスバイト組成化合物である。例えばIn、Y、La等で、或いはこれらの化合物の固溶体であっても良い。また、一例としてIn1.4Zn0.3Zr0.3のように3価カチオンの一部を2価と4価のカチオンで置換した固溶体も有用である。ビクスバイトは体心立方構造で、これらカチオンサイトに対しAl3+、Ga3+、In3+、Ge4+、Sn4+、Ti4+、Zr4+、Hf4+、V5+、Nb5+、Ta5+、Sb5+、Mo6+、W6+の1種または複数種のカチオンを導入することによってn型ドーピングを行い、電子キャリアを生成することができる。
【0037】
n型ドーピングが可能な正方晶組成化合物の例として、AE(AはMg2+、Zn2+、Cd2+の1種または複数種の2価カチオン、EはSb5+、Nb5+、Ta5+の1種または複数種の5価カチオン)で表されるトリルチル組成化合物がある。例えばZnSbのカチオンサイトに対しAl3+、Ga3+、In3+、Y3+、Ge4+、Sn4+、Ti4+、Zr4+、Hf4+、V5+、Nb5+、Ta5+、Sb5+、Mo6+、W6+の1種または複数種のカチオンを導入することによってn型ドーピングを行い、電子キャリアを生成することができる。
【0038】
n型ドーピングが可能な斜方晶組成化合物の例として、AGO(AはMg2+、Zn2+、Cd2+の1種または複数種の2価カチオン、EはSi4+、Ge4+、Sn4+の1種または複数種の4価カチオン)で表されるオリビン組成化合物がある。例えばCdGeO4のカチオンサイトに対しAl3+、Ga3+、In3+、Y3+、Ge4+、Sn4+、Ti4+、Zr4+、Hf4+、V5+、Nb5+、Ta5+、Sb5+、Mo6+、W6+の1種または複数種のカチオンを導入することによってn型ドーピングを行い、電子キャリアを生成することができる。
【0039】
n型ドーピングが可能な六方晶組成化合物の例として、RE(AはCa2+、Sr2+、Ba2+、Cd2+、Pb2+の1種または複数種の2価カチオン、EはSb5+、Ta5+の1種または複数種の5価カチオン)で表されるPbSb型結晶組成化合物がある。例えばCdSbOのカチオンサイトに対しAl3+、Ga3+、In3+、Y3+、Ge4+、Sn4+、Ti4+、Zr4+、Hf4+、V5+、Nb5+、Ta5+、Sb5+、Mo6+、W6+の1種または複数種のカチオンを導入することによってn型ドーピングを行い、電子キャリアを生成することができる。
【0040】
また、n型ドーピングが可能な六方晶組成化合物の例として、In(ZnO) (m=2以上6未満の整数)で表されるホモロガス組成化合物がある。この化合物は君塚等によって系統的に結晶構造が研究された一群の六方晶層状化合物の内の一つであり、m値が異なる多数のバリエーションが存在する柔軟な系である。Zn2+サイトをAl3+やGa3+等の3価カチオンMで置換しようとしてもInMO(ZnO)m'と表される同型化合物になりキャリアは生成しない。IGZOはまさにこの同型化合物である。4価のSn4+をドーピングしてもアモルファス性が増すばかりで、有効なn型ドーパントにならない。しかし、発明者等は、V5+、Nb5+、Ta5+、Sb5+、Mo6+、W6+の1種または複数種のカチオンを注意深く導入するとキャリア生成が可能になることを見出した。
【0041】
本発明は、第2の観点からすると、駆動信号に応じて光出力が制御される光制御素子と;本発明の電界効果型トランジスタを含み、前記光制御素子を駆動する駆動回路と;を備える表示素子である。
【0042】
これによれば、本発明の電界効果型トランジスタを備えているため、高速駆動が可能で素子間のばらつきを小さくすることが可能となる。
【0043】
本発明は、第3の観点からすると、画像データに応じた画像を表示する画像表示装置であって、マトリックス状に配置された複数の本発明の表示素子と;前記複数の表示素子における各電界効果型トランジスタにゲート電圧を個別に印加するための複数の配線と;前記画像データに応じて、前記各電界効果型トランジスタのゲート電圧を前記複数の配線を介して個別に制御する表示制御装置と;を備える画像表示装置である。
【0044】
これによれば、本発明の表示素子を有しているため、結果として、大画面で高品質の画像を表示することが可能となる。
【0045】
本発明は、第4の観点からすると、本発明の画像表示装置と;表示する画像情報に基づいて画像データを作成し、該画像データを前記画像表示装置に出力する画像データ作成装置と;を備えるシステムである。
【0046】
これによれば、本発明の画像表示装置を備えているため、その結果、画像情報を高精細に表示することが可能となる。
【発明の効果】
【0047】
本発明によれば、電界効果型トランジスタの活性層であるn型酸化物半導体にn型の置換ドーピングを行うことによって電子キャリアを生成し、成膜時に充分な酸素量を膜中に導入することで、酸素濃度の厳密な制御を不要にし、プロセスマージンを拡大するとともに、酸素空孔を低減して格子の安定性を高め、後工程での特性安定化を実現するものである。従って、素子間のばらつきも小さくすることが可能になり、大面積で高精細、高品質の電界効果型トランジスタ、該電界効果型トランジスタを有する表示素子、及び該表示素子を用いた画像表示装置、並びに該画像表示装置を備えるシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の一実施形態に係るテレビジョン装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図1における画像表示装置を説明するための図(その1)である。
【図3】図1における画像表示装置を説明するための図(その2)である。
【図4】図1における画像表示装置を説明するための図(その3)である。
【図5】表示素子を説明するための図である。
【図6】有機EL素子を説明するための図である。
【図7】電界効果型トランジスタを説明するための図である。
【図8】有機EL素子と電界効果型トランジスタの配置を説明するための図である。
【図9】表示制御装置を説明するための図である。
【図10】有機EL素子と電界効果型トランジスタの配置の変形例を説明するための図である。
【図11】「ボトムコンタクト・ボトムゲート型」の電界効果型トランジスタを説明するための図である。
【図12】「トップコンタクト・トップゲート型」の電界効果型トランジスタを説明するための図である。
【図13】「ボトムコンタクト・トップゲート型」の電界効果型トランジスタを説明するための図である。
【図14】液晶ディスプレイを説明するための図である。
【図15】図14における表示素子を説明するための図である。
【図16】実施例1と比較例1の電界効果型トランジスタの特性を説明するための図である。
【図17】実施例1と比較例1の電界効果型トランジスタの特性の成膜中の酸素濃度と電界効果移動度の関係を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下、本発明の一実施形態を図1〜図12に基づいて説明する。図1には、本発明の一実施形態に係るシステムとしてのテレビジョン装置100の概略構成が示されている。なお、図1における接続線は、代表的な信号や情報の流れを示すものであり、各ブロックの接続関係の全てを表すものではない。
【0050】
このテレビジョン装置100は、主制御装置101、チューナ103、ADコンバータ(ADC)104、復調回路105、TS(Transport Stream)デコーダ106、音声デコーダ111、DAコンバータ(DAC)112、音声出力回路113、スピーカ114、映像デコーダ121、映像・OSD合成回路122、映像出力回路123、画像表示装置124、OSD描画回路125、メモリ131、操作装置132、ドライブインターフェース(ドライブIF)141、ハードディスク装置142、光ディスク装置143、IR受光器151、及び通信制御装置152などを備えている。
【0051】
主制御装置101は、テレビジョン装置100の全体を制御し、CPU、フラッシュROM、及びRAMなどから構成されている。フラッシュROMには、CPUにて解読可能なコードで記述されたプログラム、及びCPUでの処理に用いられる各種データなどが格納されている。また、RAMは、作業用のメモリである。
【0052】
チューナ103は、アンテナ210で受信された放送波の中から、予め設定されているチャンネルの放送を選局する。
【0053】
ADC104は、チューナ103の出力信号(アナログ情報)をデジタル情報に変換する。
【0054】
復調回路105は、ADC104からのデジタル情報を復調する。
【0055】
TSデコーダ106は、復調回路105の出力信号をTSデコードし、音声情報及び映像情報を分離する。
【0056】
音声デコーダ111は、TSデコーダ106からの音声情報をデコードする。
【0057】
DAコンバータ(DAC)112は、音声デコーダ111の出力信号をアナログ信号に変換する。
【0058】
音声出力回路113は、DAコンバータ(DAC)112の出力信号をスピーカ114に出力する。
【0059】
映像デコーダ121は、TSデコーダ106からの映像情報をデコードする。
【0060】
映像・OSD合成回路122は、映像デコーダ121の出力信号とOSD描画回路125の出力信号を合成する。
【0061】
映像出力回路123は、映像・OSD合成回路122の出力信号を画像表示装置124に出力する。
【0062】
OSD描画回路125は、画像表示装置124の画面に文字や図形を表示するためのキャラクタ・ジェネレータを備えており、操作装置132やIR受光器151からの指示に応じて表示情報が含まれる信号を生成する。
【0063】
メモリ131には、AV(Audio−Visual)データ等が一時的に蓄積される。
【0064】
操作装置132は、例えばコントロールパネルなどの入力媒体(図示省略)を備え、ユーザから入力された各種情報を主制御装置101に通知する。
【0065】
ドライブIF141は、双方向の通信インターフェースであり、一例としてATAPI(AT Attachment Packet Interface)に準拠している。
【0066】
ハードディスク装置142は、ハードディスクと、該ハードディスクを駆動するための駆動装置などから構成されている。駆動装置は、ハードディスクにデータを記録するとともに、ハードディスクに記録されているデータを再生する。
【0067】
光ディスク装置143は、光ディスク(例えば、DVD)にデータを記録するとともに、光ディスクに記録されているデータを再生する。
【0068】
IR受光器151は、リモコン送信機220からの光信号を受信し、主制御装置101に通知する。
【0069】
通信制御装置152は、インターネットとの通信を制御する。インターネットを介して各種情報を取得することができる。
【0070】
画像表示装置124は、一例として図2に示されるように、表示器300、及び表示制御装置400を有している。
【0071】
表示器300は、一例として図3に示されるように、複数(ここでは、n×m個)の表示素子302がマトリックス状に配置されたディスプレイ310を有している。
【0072】
また、ディスプレイ310は、一例として図4に示されるように、X軸方向に沿って等間隔に配置されているn本の走査線(X0、X1、X2、X3、・・・・・、Xn−2、Xn−1)、Y軸方向に沿って等間隔に配置されているm本のデータ線(Y0、Y1、Y2、Y3、・・・・・、Ym−1)、Y軸方向に沿って等間隔に配置されているm本の電流供給線(Y0i、Y1i、Y2i、Y3i、・・・・・、Ym−1i)を有している。そして、走査線とデータ線とによって、表示素子を特定することができる。
【0073】
各表示素子は、一例として図5に示されるように、有機EL(エレクトロルミネッセンス)素子350と、該有機EL素子350を発光させるためのドライブ回路320とを有している。すなわち、ディスプレイ310は、いわゆるアクティブマトリックス方式の有機ELディスプレイである。また、ディスプレイ310は、カラー対応の32インチ型のディスプレイである。なお、大きさは、これに限定されるものではない。
【0074】
有機EL素子350は、一例として図6に示されるように、有機EL薄膜層340と、陰極312と、陽極314とを有している。
【0075】
陰極312には、アルミニウム(Al)が用いられている。なお、マグネシウム(Mg)−銀(Ag)合金、アルミニウム(Al)−リチウム(Li)合金、ITO(Indium Tin Oxide)などを用いても良い。
【0076】
陽極314には、ITO(Indium Tin Oxide)が用いられている。なお、IZO(Indium Zinc Oxide)等の導電性酸化物、銀(Ag)−ネオジウム(Nd)合金などを用いても良い。
【0077】
有機EL薄膜層340は、電子輸送層342と発光層344と正孔輸送層346とを有している。そして、電子輸送層342に陰極312が接続され、正孔輸送層346に陽極314が接続されている。陽極314と陰極312との間に所定の電圧を印加すると発光層344が発光する。
【0078】
図5に戻り、ドライブ回路320は、2つの電界効果型トランジスタ(10、20)、及びコンデンサ30を有している。
【0079】
電界効果型トランジスタ10は、スイッチ素子として動作する。ゲート電極Gは、所定の走査線に接続され、ソース電極Sは、所定のデータ線に接続されている。また、ドレイン電極Dは、コンデンサ30の一方の端子に接続されている。
【0080】
コンデンサ30は、電界効果型トランジスタ10の状態、すなわちデータを記憶しておくためのものである。コンデンサ30の他方の端子は、所定の電流供給線に接続されている。
【0081】
電界効果型トランジスタ20は、有機EL素子350に大きな電流を供給するためのものである。ゲート電極Gは、電界効果型トランジスタ10のドレイン電極Dと接続されている。そして、ドレイン電極Dは、有機EL素子350の陽極314に接続され、ソース電極Sは、所定の電流供給線に接続されている。
【0082】
そこで、電界効果型トランジスタ10が「オン」状態になると、電界効果型トランジスタ20によって、有機EL素子350は駆動される。
【0083】
各電界効果型トランジスタは、一例として図7に示されるように、基板21、活性層22、ソース電極23、ドレイン電極24、ゲート絶縁層25、及びゲート電極26を有している。
【0084】
ここでは、各電界効果型トランジスタは、いわゆる「トップコンタクト・ボトムゲート型」であるが、その他の構造(トップゲート型、コプラナー型等)であってもよい。
【0085】
各電界効果型トランジスタの作製方法の一例について簡単に説明する。
【0086】
まず、基板21を準備する。材料としては、既にフラットパネルディスプレイに広く利用されている無アルカリガラスやシリカガラスの他にも、ポリカーボネート(PC)、ポリイミド(PI)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のプラスチック基板も適宜利用できる。なお、表面の清浄化や密着性向上のために酸素プラズマ、UVオゾン、UV照射洗浄等の前処理を行うことが好ましい。
【0087】
次に、基板21上にゲート電極26を形成する。様々な材料、プロセス、パターニング方法が利用可能である。材料としては、Mo、Al、Cu等の金属や合金、ITO、ATO等の透明導電性酸化物、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)、ポリアニリン(PANI)等の有機導電体などが利用できる。プロセスとしては、スパッタ法やディップコーティング法等による成膜後、フォトリソグラフィーによってパターニングしたり、インクジェット、ナノインプリント、グラビア等の印刷プロセスによって、所望の形状を直接成膜することも可能である。
【0088】
次に、ゲート絶縁膜を形成する。様々な材料、プロセス、パターニング方法が利用可能である。材料としては、SiO、SiN等の既に広く量産に利用されている材料や、La、HfO等の高誘電率材料、ポリイミド(PI)やフッ素系樹脂などの有機材料等が利用できる。プロセスとしてはスパッタ、化学気相蒸着(CVD)、原子層蒸着(ALD)等の真空成膜法やスピンコート、ダイコート、インクジェット等の溶液プロセスも適宜利用できる。
【0089】
次に活性層22を形成する。作製方法には特に限定されず、スパッタ法、パルスレーザーデポジッション(PLD)法、CVD法、ALD法等の真空プロセス、或いはディップコーティング、インクジェット、ナノインプリントなどの印刷法等を適宜利用できる。
【0090】
活性層の材料は、本発明によれば、3価、4価、5価および6価の少なくとも1つのカチオンを導入することによりn型ドーピングされた結晶組成化合物であることを特徴とする酸化物半導体である。
【0091】
立方晶組成化合物としては、スピネル組成化合物、ビクスバイト組成化合物、パイロクロア組成化合物、フローライト組成化合物、等が挙げられるがこの限りではない。
【0092】
第一の候補は、AB(AはMg2+、Zn2+、Cd2+の1種または複数種の2価カチオン、BはAl3+、Ga3+、In3+の1種または複数種の3価カチオン)で表されるスピネル組成化合物であって、Aの2価カチオンに対しAl3+、Ga3+、In3+、Ge4+、Sn4+、Ti4+、Zr4+、Hf4+、V5+、Nb5+、Ta5+、Sb5+、Mo6+、W6+の1種または複数種のカチオンの導入によってn型ドーピングが為されていることを特徴とする。母相のスピネル組成化合物としてはMgGa、MgIn、ZnAl、ZnGa、CdGa等が利用できる。或いはこれらの固溶体であっても良い。ここでは組成を整数で示しているが、予期しないノンストイキオメトリーや微量の不純物は、以下に記述するドーピングを妨げない限り許容される。特に酸素空孔は生じ易く、通常、酸素の組成は4より小さくなっている。2価カチオンであるMg2+、Zn2+、Cd2+に対するn型ドーピングとしては3価のAl3+、Ga3+、In3+、4価のGe4+、Sn4+、Ti4+、Zr4+、Hf4+、5価のV5+、Nb5+、Ta5+、Sb5+及び6価のMo6+、W6+が利用できる。或いはこれらの複数種をドーピングしても良い。イオン半径、配位数、軌道エネルギー等を考慮してドーパントを選択することが好ましい。ドーピング濃度は、母相の材料、ドーパントの種類や置換するサイト、成膜プロセス、所望のTFT特性等に応じて、適切に選択することができる。例えばスパッタ法により、AlをドープしたMgIn膜を作製する場合、1%程度Alをドープしたターゲットを用意すればよい。このターゲットは導電性があるのでDCスパッタが可能である。Mgサイトを置換したAlがドナーをつくるので、ノンドープのMgInを作製する時よりもスパッタガスの酸素濃度を高濃度にして、酸素空孔を減少させることができる。更に、その場合にもキャリア濃度を維持しソース・ドレイン電極との接触抵抗を低く保つことができるので、移動度の低下を抑制することができる。また、スパッタプロセスでは高励起状態を経由しているため、基板加熱をせずともキャリアを生成できる。X線回折(XRD)等で回折線が観測されず長距離秩序が存在しない場合(一般にはこれをアモルファス状態と呼んでいる。)であっても、スピネルのようなリジッドな構造を有する酸化物の場合、酸素配位多面体(例えばZnO四面体やInO八面体)やその連結様式(例えばルチル鎖と呼ばれるInO稜共有鎖)は維持されているので、置換ドーピングが有効に作用する。このような構造においてはアモルファス状態特有の裾状態(Tail States)の状態密度は小さいため、サブギャップ吸収は少なく光劣化特性はアモルファス性の高い材料よりも優れる。一方、結晶状態であれば勿論ドーピングは有効であって、重金属イオンの4s、5sバンドから構成される伝導帯に対しては粒界の影響も少ない。但し、ドープ量が過多でドーパントが粒界に偏析するような場合には、ドーパント濃度を下げることが好ましい。更に、スピネルは立方晶で伝導帯の底部は等方性であるから、多結晶状態でもばらつきの少ない大面積アクティブマトリックスパネルを作製することができる。即ち、スピネル組成化合物においては、アモルファスか多結晶かということに本質的な違いはない。また、ソース・ドレイン電極と活性層との界面の密着性や電気的な接触を良好にするために、200〜300℃でポストアニールすることも好ましい。また、より高温でアニールして結晶性を高めても良い。
【0093】
第二の候補は、AB(AはMg2+、Zn2+、Cd2+の1種または複数種の2価カチオン、BはAl3+、Ga3+、In3+の1種または複数種の3価カチオン)で表されるスピネル組成化合物であって、Bの3価カチオンに対しGe4+、Sn4+、Ti4+、Zr4+、Hf4+、V5+、Nb5+、Ta5+、Sb5+、Mo6+、W6+の1種または複数種のカチオンの導入によってn型ドーピングが為されていることを特徴とする。母相のスピネル組成化合物は第一の発明と同様である。3価カチオンであるAl3+、Ga3+、In3+に対するn型ドーピングとしては4価のGe4+、Sn4+、Ti4+、Zr4+、Hf4+、5価のV5+、Nb5+、Ta5+、Sb5+及び6価のMo6+、W6+が利用できる。或いはこれらの複数種をドーピングしても良い。イオン半径、配位数、軌道エネルギー等を考慮してドーパントを選択することが好ましい。ドーピング濃度やポストアニール等については第一の候補の場合と同様である。例えばスパッタ法により、SnをドープしたMgIn膜を作製する場合、1%程度Snをドープしたターゲットを用意すればよい。このターゲットは導電性があるのでDCスパッタが可能である。Inサイトを置換したSnがドナーをつくるので、ノンドープのMgInを作製する時よりもスパッタガスの酸素濃度を高濃度にして、酸素空孔を減少させることができる。
【0094】
第三の候補は、ADO(AはMg2+、Zn2+、Cd2+の1種または複数種の2価カチオン、DはTi4+、Sn4+の1種または複数種の4価カチオン)で表されるスピネル組成化合物であって、Aの2価カチオンに対しAl3+、Ga3+、In3+、Ge4+、Sn4+、Ti4+、Zr4+、Hf4+、V5+、Nb5+、Ta5+、Sb5+、Mo6+、W6+の1種または複数種のカチオンの導入によってn型ドーピングが為されていることを特徴とする。母相のスピネル組成化合物としてはMgSnO、ZnTiO、ZnSnO、CdSnO等が利用できる。或いはこれらの固溶体であっても良い。ここでは組成を整数で示しているが、予期しないノンストイキオメトリーや微量の不純物は以下に記述するドーピングを妨げない限り許容される。特に酸素空孔は生じ易く、通常酸素の組成は4より小さくなっている。2価カチオンであるMg2+、Zn2+、Cd2+に対するn型ドーピングとしては3価のAl3+、Ga3+、In3+、4価のGe4+、Sn4+、Ti4+、Zr4+、Hf4+、5価のV5+、Nb5+、Ta5+、Sb5+及び6価のMo6+、W6+が利用できる。或いはこれらの複数種をドーピングしても良い。イオン半径、配位数、軌道エネルギー等を考慮してドーパントを選択することが好ましい。ドーピング濃度やポストアニール等については第一の候補の場合と同様である。例えばスパッタ法により、AlをドープしたZnSnO膜を作製する場合、1%程度Alをドープしたターゲットを用意すればよい。このターゲットは導電性があるのでDCスパッタが可能である。濃度が高すぎると局所構造変化が起きてアモルファス性が高まり、置換ドーピングでは無くなるので注意が必要である。このような場合、Alの酸素に対する親和性が高いので安定性は増すが、Alはドナーを生成せず、キャリアは酸素空孔からのみつくられているので、キャリア濃度は成膜時の酸素濃度に対し敏感である。
【0095】
第四の候補は、ADO(AはMg2+、Zn2+、Cd2+の1種または複数種の2価カチオン、DはTi4+、Sn4+の1種または複数種の4価カチオン)で表されるスピネル組成化合物であって、Dの4価カチオンに対しV5+、Nb5+、Ta5+、Sb5+、Mo6+、W6+の1種または複数種のカチオンの導入によってn型ドーピングが為されていることを特徴とする。母相のスピネル組成化合物は第三の発明と同様である。4価カチオンであるTi4+、Sn4+に対するn型ドーピングとしてはV5+、Nb5+、Ta5+、Sb5+の5価カチオン及びMo6+、W6+の6価カチオンが利用できる。或いはこれらの複数種をドーピングしても良い。イオン半径、配位数、軌道エネルギー等を考慮してドーパントを選択することが好ましい。ドーピング濃度やポストアニール等については第一の候補の場合と同様である。例えばスパッタ法により、NbをドープしたZnTiO膜を作製する場合、1%程度Nbをドープしたターゲットを用意すればよい。このターゲットは導電性があるのでDCスパッタが可能である。Tiサイトを置換したNbがドナーをつくるので、ノンドープのZnTiOを作製する時よりもスパッタガスの酸素濃度を高濃度にして、酸素空孔を減少させることができる。
【0096】
第五の候補は、In3+、Sc3+、Y3+、Ln3+(Lnは希土類元素)より選ばれた少なくとも1種または複数種の元素を含むビクスバイト組成化合物であり、Al3+、Ga3+、In3+、Ge4+、Sn4+、Ti4+、Zr4+、Hf4+、V5+、Nb5+、Ta5+、Sb5+、Mo6+、W6+の中の1種または複数種の元素の導入によるn型ドーピングをしていることを特徴とする。母相のビクスバイト組成化合物としてはIn、Y、Laやそれらの固溶体を使用することができる。また、In1.4Zn0.3Zr0.3のように3価カチオンの一部を2価と4価のカチオンで置換した固溶体も有用である。予期しないノンストイキオメトリーや微量の不純物は以下に記述するドーピングを妨げない限り許容される。前記固溶した2価カチオンに対しては3価のAl3+、Ga3+、In3+、4価のSn4+、Ti4+、Zr4+、Hf4+、5価のV5+、Nb5+、Ta5+、Sb5+、6価のMo6+、W6+の1種または複数種のカチオンで、3価カチオンに対しては4価のGe4+、Sn4+、Ti4+、Zr4+、Hf4+、5価のV5+、Nb5+、Ta5+、Sb5+、6価のMo6+、W6+の1種または複数種のカチオンで、前記固溶した4価カチオンに対しては5価のV5+、Nb5+、Ta5+、Sb5+、6価のMo6+、W6+の1種または複数種のカチオンで置換することによってn型ドーピングを行うことができる。イオン半径、配位数、軌道エネルギー等を考慮してドーパントを選択することが好ましい。ドーピング濃度やポストアニール等については第一の候補の場合と同様であり、ビクスバイト組成化合物においても、アモルファスか多結晶かということに本質的な違いはない。例えばスパッタ法により、WをドープしたIn1.60.4膜を作製する場合、0.5%程度Wをドープしたターゲットを用意すればよい。このターゲットも導電性があるのでDCスパッタが可能である。
【0097】
正方晶組成化合物としては、トリルチル組成化合物、ミニウム組成化合物、等が挙げられるがこの限りではない。
【0098】
第六の候補は、AE(AはMg2+、Zn2+、Cd2+の1種または複数種の2価カチオン、EはSb5+、Nb5+、Ta5+の1種または複数種の5価カチオン)で表されるトリルチル組成化合物であり、Al3+、Ga3+、In3+、Y3+、Ge4+、Sn4+、Ti4+、Zr4+、Hf4+、V5+、Nb5+、Ta5+、Sb5+、Mo6+、W6+の中の1種または複数種の元素の導入によるn型ドーピングをしていることを特徴とする。母相のトリルチル組成化合物としてはZnSb、MgSb、MgTaやそれらの固溶体を使用することができる。予期しないノンストイキオメトリーや微量の不純物は以下に記述するドーピングを妨げない限り許容される。2価カチオンに対しては3価のAl3+、Ga3+、In3+、Y3+、4価のGe4+、Sn4+、Ti4+、Zr4+、Hf4+、5価のV5+、Nb5+、Ta5+、Sb5+及び6価のMo6+、W6+の1種または複数種のカチオンで、5価カチオンに対しては6価のMo6+、W6+の1種または複数種のカチオンで置換することによってn型ドーピングを行うことができる。イオン半径、配位数、軌道エネルギー等を考慮してドーパントを選択することが好ましい。ソース・ドレイン電極との界面の密着性や電気的な接触を良好にするためのポストアニールは有効である。高温アニールは結晶性を上げキャリア生成効率を高めるが、この結晶はc軸方向に対して異方性があるため、特性ばらつきが懸念されることから、アプリケーションの要求仕様との兼ね合いを考慮する必要がある。例えばスパッタ法により、WをドープしたZnSb膜を作製する場合、1%程度Wをドープしたターゲットを用意すればよい。このターゲットも導電性があるのでDCスパッタが可能である。
【0099】
斜方晶組成化合物としては、オリビン組成化合物、カルシウムフェライト組成化合物、等が挙げられるがこの限りではない。
【0100】
第七の候補は、AGO(AはMg2+、Zn2+、Cd2+の1種または複数種の2価カチオン、GはSi4+、Ge4+、Sn4+の1種または複数種の4価カチオン)で表されるオリビン組成化合物であり、Al3+、Ga3+、In3+、Y3+、Ge4+、Sn4+、Ti4+、Zr4+、Hf4+、V5+、Nb5+、Ta5+、Sb5+、Mo6+、W6+の中の1種または複数種の元素の導入によるn型ドーピングをしていることを特徴とする。母相のオリビン組成化合物としてはCdGeO、MgGeOやそれらの固溶体を使用することができる。予期しないノンストイキオメトリーや微量の不純物は以下に記述するドーピングを妨げない限り許容される。2価カチオンに対しては3価のAl3+、Ga3+、In3+、Y3+、4価のGe4+、Sn4+、Ti4+、Zr4+、Hf4+、5価のV5+、Nb5+、Ta5+、Sb5+及び6価のMo6+、W6+の1種または複数種のカチオンで、4価カチオンに対しては5価のV5+、Nb5+、Ta5+、Sb5+及び6価のMo6+、W6+の1種または複数種のカチオンで置換することによってn型ドーピングを行うことができる。イオン半径、配位数、軌道エネルギー等を考慮してドーパントを選択することが好ましい。ソース・ドレイン電極との界面の密着性や電気的な接触を良好にするためのポストアニールは有効である。高温アニールは結晶性を上げキャリア生成効率を高めるが、この結晶は異方性があるため、特性ばらつきが懸念されることから、アプリケーションの要求仕様との兼ね合いを考慮する必要がある。例えばスパッタ法により、NbをドープしたCdGeO膜を作製する場合、1%程度Nbをドープしたターゲットを用意すればよい。このターゲットも導電性があるのでDCスパッタが可能である。
【0101】
六方晶組成化合物としては、PbSb型結晶組成化合物、ホモロガス組成化合物、等が挙げられるがこの限りではない。
【0102】
第八の候補は、RE(RはCa2+、Sr2+、Ba2+、Cd2+、Pb2+の1種または複数種の2価カチオン、EはSb5+、Nb5+、Ta5+の1種または複数種の5価カチオン)で表されるPbSb型結晶組成化合物であり、Al3+、Ga3+、In3+、Y3+、Ge4+、Sn4+、Ti4+、Zr4+、Hf4+、V5+、Nb5+、Ta5+、Sb5+、Mo6+、W6+の中の1種または複数種の元素の導入によるn型ドーピングをしていることを特徴とする。母相のPbSb型結晶組成化合物としてはCdSb、PbSbやそれらの固溶体を使用することができる。予期しないノンストイキオメトリーや微量の不純物は以下に記述するドーピングを妨げない限り許容される。2価カチオンに対しては3価のAl3+、Ga3+、In3+、Y3+、4価のGe4+、Sn4+、Ti4+、Zr4+、Hf4+、5価のV5+、Nb5+、Ta5+、Sb5+及び6価のMo6+、W6+の1種または複数種のカチオンで、5価カチオンに対しては6価のMo6+、W6+の1種または複数種のカチオンで置換することによってn型ドーピングを行うことができる。イオン半径、配位数、軌道エネルギー等を考慮してドーパントを選択することが好ましい。ソース・ドレイン電極との界面の密着性や電気的な接触を良好にするためのポストアニールは有効である。高温アニールは結晶性を上げキャリア生成効率を高めるが、この結晶は異方性があるため、特性ばらつきが懸念されることから、アプリケーションの要求仕様との兼ね合いを考慮する必要がある。例えばスパッタ法により、MoをドープしたCdSb膜を作製する場合、1%程度Moをドープしたターゲットを用意すればよい。このターゲットも導電性があるのでDCスパッタが可能である。
【0103】
第九の候補は、In(ZnO) (m=2以上6未満の整数)で表されるホモロガス組成化合物であり、V5+、Nb5+、Ta5+、Sb5+、Mo6+、W6+の1種または複数種のカチオンの導入によるn型ドーピングをしていることを特徴とする。イオン半径、配位数、軌道エネルギー等を考慮してドーパントを選択することが好ましい。ドーピング濃度等については第一の発明の場合と同様である。例えばスパッタ法により、SbをドープしたInZn膜を作製する場合、1%程度Sbをドープしたターゲットを用意すればよい。このターゲットは導電性があるのでDCスパッタが可能である。濃度が高すぎると局所構造変化が起きてアモルファス性が高まり、キャリアドーピングの効果が無くなるので注意が必要である。このような場合、アモルファス性は増すが、Sbはドナーを生成せず、キャリアは酸素空孔からのみつくられているので、キャリア濃度は成膜時の酸素濃度に対し敏感である。また、ソース・ドレイン電極との界面の密着性や電気的な接触を良好にするためのポストアニールは有効である。高温アニールは結晶性を上げキャリア生成効率を高めるが、この結晶はc軸方向に対して異方性が強いため、特性ばらつきが懸念されることから、アプリケーションの要求仕様との兼ね合いを考慮する必要がある。
【0104】
次にソース・ドレイン電極23、24を形成する。ここでも様々な材料、プロセス、パターニング方法が利用可能である。材料としては、Mo、Al、Ag等の金属や合金、ITO、ATO等の透明導電性酸化物、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)、ポリアニリン(PANI)等の有機導電体などが利用できる。n型酸化物半導体へキャリアを効率よく注入するという観点からは、Mo、TiN、ITO等の比較的仕事関数の低い材料を使用することが好ましい。プロセスとしては、スパッタ法やディップコーティング法等による成膜後フォトリソグラフィーによってパターニングしたり、インクジェット、ナノインプリント、グラビア等の印刷プロセスによって、所望の形状を直接成膜することも可能である。
【0105】
以上の工程により電界効果型トランジスタが得られた。
【0106】
図8には、表示素子302における有機EL素子350と電界効果型トランジスタ20との位置関係が示されている。ここでは、電界効果型トランジスタ20の横に有機EL素子350が配置されている。なお、電界効果型トランジスタ10及びコンデンサ30も同一基板上に形成されている。
【0107】
図8には図示されていないが、活性層22の上部に保護膜を設けることも好適である。材料としては、SiO、SiN、Al、フッ素系ポリマー等、適宜利用できる。CVDやスパッタプロセスを使用する場合、活性層がプラズマや高真空状態にさらされるため、活性層である酸化物半導体の酸素が抜けやすく、TFT特性が劣化しやすいが、本発明の酸化物半導体はこのような後工程における安定性が高く、特性劣化を抑制できる。
【0108】
表示素子302は、従来と同様の装置を用いて、従来と同様の工程(製造プロセス)によって製造することができる。
【0109】
表示制御装置400は、一例として図9に示されるように、画像データ処理回路402、走査線駆動回路404、及びデータ線駆動回路406を有している。
【0110】
画像データ処理回路402は、映像出力回路123の出力信号に基づいて、ディスプレイ310における複数の表示素子302の輝度を判断する。
【0111】
走査線駆動回路404は、画像データ処理回路402の指示に応じてn本の走査線に個別に電圧を印加する。
【0112】
データ線駆動回路406は、画像データ処理回路402の指示に応じてm本のデータ線に個別に電圧を印加する。
【0113】
以上の説明から明らかなように、本実施形態に係るテレビジョン装置100では、映像デコーダ121と映像・OSD合成回路122と映像出力回路123とOSD描画回路125とによって画像データ作成装置が構成されている。
【0114】
以上説明したように、本実施形態に係る電界効果型トランジスタによると、ゲート電圧を印加するためのゲート電極26と、電流を取り出すためのソース電極23及びドレイン電極24と、ソース電極23及びドレイン電極24に隣接して設けられ、n型ドーピングされた酸化物半導体からなる活性層22と、ゲート電極26と活性層22との間に設けられたゲート絶縁層25とを備えている。
【0115】
また、本実施形態に係る表示素子302によると、電界効果型トランジスタ10及び電界効果型トランジスタ20を備えているため、高速駆動が可能で素子間のばらつきを小さくすることが可能である。
【0116】
また、本実施形態に係る画像表示装置124によると、表示素子302を有しているため、結果として、大画面で高品質の画像を表示することが可能である。
【0117】
また、本実施形態に係るテレビジョン装置100によると、画像表示装置124を備えているため、その結果、画像情報を高精細に表示することが可能である。
【0118】
なお、上記実施形態では、有機EL薄膜層が、電子輸送層と発光層と正孔輸送層とからなる場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、電子輸送層と発光層が1つの層であっても良い。また、電子輸送層と陰極との間に電子注入層が設けられても良い。さらに、正孔輸送層と陽極との間に正孔注入層が設けられても良い。
【0119】
また、上記実施形態では、基板側から発光を取り出すいわゆる「ボトムエミッション」の場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、陽極314に銀(Ag)−ネオジウム(Nd)合金などの高反射率電極、陰極312にマグネシウム(Mg)−銀(Ag)合金などの半透明電極或いはITO等の透明電極を用いて基板と反対側から光を取り出しても良い。
【0120】
また、上記実施形態では、表示素子302において、電界効果型トランジスタ20の横に有機EL素子350が配置される場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、図10に示されるように、電界効果型トランジスタ20の上に有機EL素子350が配置されても良い。この場合には、ゲート電極26に透明性が要求されるので、ゲート電極26には、ITO、In、SnO、ZnO、Gaが添加されたZnO、Alが添加されたZnO、Sbが添加されたSnOなどの導電性を有する透明な酸化物が用いられる。本発明の酸化物半導体はバンドギャップが広く可視光に対して透明であり、アモルファス半導体特有の裾状態の状態密度が少ないため、この配置の場合、Si系半導体や有機半導体、アモルファス性の高い酸化物半導体に対して有利である。なお、符号360は層間絶縁膜(平坦化膜)である。この絶縁膜にはポリイミドやアクリル系の樹脂等を利用できる。本発明の酸化物半導体はプロセス安定性が高いため、このプロセスに対しても特性劣化が抑制される。
【0121】
また、上記実施形態では、電界効果型トランジスタがいわゆる「トップコンタクト・ボトムゲート型」の場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、図11に示されるように、いわゆる「ボトムコンタクト・ボトムゲート型」であっても良い。また、図12に示されるように、いわゆる「トップコンタクト・トップゲート型」であっても良い。さらに、図13に示されるように、いわゆる「ボトムコンタクト・トップゲート型」であっても良い。
【0122】
また、上記実施形態では、光制御素子が有機EL素子の場合について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、光制御素子がエレクトロクロミック素子であっても良い。この場合は、上記ディスプレイ310は、エレクトロクロミックディスプレイとなる。
【0123】
また、光制御素子が液晶素子であっても良い。この場合は、上記ディスプレイ310は、液晶ディスプレイとなる。そして、一例として図14に示されるように、表示素子302´に対する電流供給線は不要である。
【0124】
この場合は、また、一例として図15に示されるように、ドライブ回路320´は、前述した電界効果型トランジスタ(10、20)と同様な1つの電界効果型トランジスタ40とキャパシタ360で構成することができる。電界効果型トランジスタ40では、ゲート電極Gが所定の走査線に接続され、ソース電極Sが所定のデータ線に接続されている。また、ドレイン電極Dが液晶素子370の画素電極、及びキャパシタ360に接続されている。なお、図15における符号362、372は、それぞれキャパシタ360、液晶素子370の対向電極(コモン電極)である。
【0125】
また、光制御素子が電気泳動素子であっても良い。
【0126】
また、光制御素子が無機EL素子であっても良い。
【0127】
また、上記実施形態では、ディスプレイがカラー対応の場合について説明したが、これに限定されるものではない。
【0128】
また、上記実施形態では、システムがテレビジョン装置の場合について説明したが、これに限定されるものではない。要するに画像や情報を表示する装置として上記画像表示装置124を備えていれば良い。例えば、コンピュータ(パソコンを含む)と画像表示装置124とが接続されたコンピュータシステムであっても良い。
【0129】
また、携帯電話、携帯型音楽再生装置、携帯型動画再生装置、電子BOOK、PDA(Personal Digital Assistant)などの携帯情報機器、スチルカメラやビデオカメラなどの撮像機器における表示手段に画像表示装置124を用いることができる。また、車、航空機、電車、船舶等の移動体システムにおける各種情報の表示手段に画像表示装置124を用いることができる。さらに、計測装置、分析装置、医療機器、広告媒体における各種情報の表示手段に画像表示装置124を用いることができる。
【0130】
なお、本実施形態に係る電界効果型トランジスタは、表示素子以外のもの(例えば、ICカード、IDタグ)にも用いることができる。
【実施例】
【0131】
以下、本発明の具体的な実施例1〜23、およびこれらの実施例に対する比較例1〜2、さらには各実施例および比較例で作製した電界効果型トランジスタの評価結果を説明する。
【0132】
<実施例1>
無アルカリガラス基板を、中性洗剤、純水、イソプロピルアルコールを用いて超音波洗浄した。この基板を乾燥後、さらにUV−オゾン処理を90℃10分間行った。
前記基材にDCマグネトロンスパッタリング法でMoを100nm成膜し、フォトリソグラフィー法によりパターニングし、ゲート電極を形成した。次に、RFマグネトロンスパッタリング法でSiOを200nm成膜してゲート絶縁膜とした。次に、Mg0.99Al0.01In焼結体ターゲットを用い、DCマグネトロンスパッタリング法でAlをドーピングしたMgInを100nm成膜した。スパッタガスとしてアルゴンガスと酸素ガスを導入した。全圧を1.1Paに固定し、酸素濃度をパラメータとして1.2%〜10%の範囲で変化させ、活性層を作製した。パターニングはメタルマスクを介して成膜することで行った。次にソース・ドレイン電極として、メタルマスクを介してAlを100nm蒸着した。チャネル長は50μm、チャネル幅は400μmとした。最後に、大気中で300℃1hのアニールを行い、電界効果型トランジスタを作製した。
【0133】
<実施例2〜9>
上述した実施例1の電界効果型トランジスタ作製手順において、活性層作製プロセスの焼結体ターゲットを下記表1に示すように変えて活性層を成膜したこと以外は、実施例1と同様にして、電界効果型トランジスタを作製した。
【0134】
<比較例1>
上述した実施例1の電界効果型トランジスタ作製手順において、活性層作製時の焼結体ターゲットを下記表1に示すように変えて活性層を成膜したこと以外は、実施例1と同様にして、電界効果型トランジスタを作製した。なお、表1には活性層成膜時の酸素濃度が2%と6%の時の電界効果型トランジスタの移動度の評価結果も示す。
【0135】
【表1】

【0136】
<実施例10>
無アルカリガラス基板を、中性洗剤、純水、イソプロピルアルコールを用いて超音波洗浄した。この基板を乾燥後、さらにUV−オゾン処理を90℃10分間行った。
前記基材にDCマグネトロンスパッタリング法でMoを100nm成膜し、フォトリソグラフィー法によりパターニングし、ゲート電極を形成した。次に、RFマグネトロンスパッタリング法でSiOを200nm成膜してゲート絶縁膜とした。次に、Cd0.99Nb0.01Al焼結体ターゲットを用い、DCマグネトロンスパッタリング法でNbをドーピングしたCdAlを50nm成膜した。スパッタガスとしてアルゴンガスと酸素ガスを導入した。全圧を1.1Paに固定し、酸素濃度をパラメータとして60%〜100%の範囲で変化させ、活性層を作製した。パターニングはメタルマスクを介して成膜することで行った。次にソース・ドレイン電極として、メタルマスクを介してAlを100nm蒸着した。チャネル長は50μm、チャネル幅は400μmとした。最後に、大気中で200℃1hのアニールを行い、電界効果型トランジスタを作製した。
【0137】
<実施例11〜23>
上述した実施例10の電界効果型トランジスタ作製手順において、活性層作製プロセスの焼結体ターゲットを下記表2に示すように変えて活性層を成膜したこと以外は、実施例10と同様にして、電界効果型トランジスタを作製した。
【0138】
<比較例2>
上述した実施例10の電界効果型トランジスタ作製手順において、活性層作製時の焼結体ターゲットを下記表2に示すように変えて活性層を成膜したこと以外は、実施例10と同様にして、電界効果型トランジスタを作製した。なお、表2には活性層成膜時の酸素濃度が60%と100%の時の電界効果型トランジスタの移動度の評価結果も示す。
【0139】
【表2】

【0140】
<評価結果>
図16に実施例1と比較例1における酸素濃度6%のサンプルの電界効果型トランジスタのトランスファー特性(Vds=20V)を示す。活性層にAlをドーピングした実施例1では立ち上がりのオン電圧(Von)0V、移動度6.4cm/Vs、オンオフ比8桁と、ノーマリーオフの良好な特性を示した。一方、活性層にドーピングをしていない比較例1では、オン電圧(Von)1V、移動度3.1cm/Vs、オンオフ比8桁と、実施例1と比較して、オン電圧がプラス側にシフトし移動度が低下した。この原因は、実施例1と比較して比較例1の方が、キャリア濃度が低い為と考察される。
【0141】
次に、図17に実施例1と比較例1の電界効果型トランジスタの成膜中の酸素濃度と電界効果移動度の関係を示す。実施例1では酸素濃度1.6%〜6.0%までは約6.4cm/Vsでほぼ一定で、酸素濃度8%以上で若干低下した。一方、比較例1では酸素濃度1.6%では実施例1と同等の移動度を示すが、酸素濃度の増大とともに移動度は単調に減少し、酸素濃度6%では約半分に低下した。この原因は、実施例1ではAlを導入してn型ドーピングしたことによって、キャリアがMgサイトを置換したAlから生成されるため、酸素濃度を増加させてもほぼ一定に保たれるのに対し、ドーピングをしていない比較例1では酸素濃度の増大とともに活性層中の酸素空孔が減少することによって、キャリア濃度が減少してソース・ドレイン電極との接触抵抗が増加したため、移動度の低下が観測されたと考えられる。
【0142】
また、表1に示すように、実施例2〜9でも同様に、酸素濃度2%と6%の時の移動度に変化がないことがわかった。即ち、置換したカチオンがn型ドーパントとして働き電子キャリアが生成して、酸素量に関わらず一定の特性を示した考察される。
【0143】
更にまた、表2に示すように、比較例2では酸素濃度を60%から100%に増加すると移動度は約4割低下するが、実施例10〜23では酸素濃度を60%から100%に増加しても移動度は低下しないことがわかった。即ち、置換したカチオンがn型ドーパントとして働き電子キャリアが生成して、酸素量に関わらず一定の特性を示した考察される。
【0144】
即ち、カチオンを置換ドープして電子キャリアを生成した酸化物半導体を活性層として備える電界効果型トランジスタは、酸素量のみを制御してキャリアを生成している酸化物半導体を活性層として備える電界効果型トランジスタと比較して、広いプロセス範囲で安定して高い移動度を示し、ノーマリーオフの良好な特性が得られることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0145】
以上説明したように、本発明の電界効果型トランジスタによれば、 プロセスマージンを拡大し、TFT特性を高いレベルで安定させるのに適している。また、本発明の表示素子によれば、高速駆動が可能で素子間のばらつきを小さくし信頼性を向上するのに適している。また、本発明の画像表示装置によれば、大画面で高品質の画像を表示するのに適している。また、本発明のシステムによれば、画像情報を高精細に表示するのに適している。
【符号の説明】
【0146】
10…電界効果型トランジスタ、20…電界効果型トランジスタ、40…電界効果型トランジスタ、100…テレビジョン装置(システム)、121…映像デコーダ(画像データ作成装置の一部)、122…映像・OSD合成回路(画像データ作成装置の一部)、123…映像出力回路(画像データ作成装置の一部)、124…画像表示装置、125…OSD描画回路(画像データ作成装置の一部)、302…表示素子、302´…表示素子、350…有機EL素子(光制御素子)、370…液晶素子(光制御素子)、400…表示制御装置、X0〜Xn−1…走査線(配線の一部)、Y0〜Ym−1…データ線(配線の一部)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0147】
【特許文献1】特開2002−76356号公報
【特許文献2】特開2006−165529号公報
【非特許文献】
【0148】
【非特許文献1】K.Nomura,他5名、「Room−temperature fabrication of transparent flexible thin−film transistors using amorphous oxide semiconductors」、NATURE、VOL432、No.25、NOVEMBER、2004、p.488−492
【非特許文献2】J. S. Park,他5名、 「Novel ZrInZnO Thin−film Transistor with Excellent Stability」、 Advanced Materials、 VOL21、No.3、2009、p.329−333

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲート電圧を印加するためのゲート電極と;
電流を取り出すためのソース電極及びドレイン電極と;
前記ソース電極及びドレイン電極に隣接して設けられ、n型酸化物半導体からなる活性層と;
前記ゲート電極と前記活性層との間に設けられたゲート絶縁層と;
を備える電界効果型トランジスタであって、前記酸化物半導体が、3価、4価、5価および6価の1種または複数種のカチオンを導入することによりn型ドーピングされた結晶組成化合物であることを特徴とする電界効果型トランジスタ。
【請求項2】
前記酸化物半導体は、3価、4価、5価および6価の1種または複数種のカチオンを導入することによりn型ドーピングされた立方晶組成化合物であることを特徴とする、請求項1に記載の電界効果型トランジスタ。
【請求項3】
前記酸化物半導体はAB(AはMg2+、Zn2+、Cd2+の1種または複数種の2価カチオン、BはAl3+、Ga3+、In3+の1種または複数種の3価カチオン)で表されるスピネル組成化合物であって、前記Aの2価カチオンへの前記n型ドーピングが、Al3+、Ga3+、In3+、Ge4+、Sn4+、Ti4+、Zr4+、Hf4+、V5+、Nb5+、Ta5+、Sb5+、Mo6+、W6+の1種または複数種のカチオンの導入によることを特徴とする、請求項2に記載の電界効果型トランジスタ。
【請求項4】
前記酸化物半導体はAB(AはMg2+、Zn2+、Cd2+の1種または複数種の2価カチオン、BはAl3+、Ga3+、In3+の1種または複数種の3価カチオン)で表されるスピネル組成化合物であって、Bカチオンへの前記n型ドーピングが、Ge4+、Sn4+、Ti4+、Zr4+、Hf4+、V5+、Nb5+、Ta5+、Sb5+、Mo6+、W6+の1種または複数種のカチオンの導入によることを特徴とする、請求項2に記載の電界効果型トランジスタ。
【請求項5】
前記酸化物半導体はADO(AはMg2+、Zn2+、Cd2+の1種または複数種の2価カチオン、DはTi4+、Sn4+の1種または複数種の4価カチオン)で表されるスピネル組成化合物であって、Aカチオンへの前記n型ドーピングが、Al3+、Ga3+、In3+、Ge4+、Sn4+、Ti4+、Zr4+、Hf4+、V5+、Nb5+、Sb5+、Ta5+、Mo6+、W6+の1種または複数種のカチオンの導入によることを特徴とする、請求項2に記載の電界効果型トランジスタ。
【請求項6】
前記酸化物半導体はADO(AはMg2+、Zn2+、Cd2+の1種または複数種の2価カチオン、DはTi4+、Sn4+の1種または複数種の4価カチオン)で表されるスピネル組成化合物であって、Dカチオンへの前記n型ドーピングが、V5+、Nb5+、Ta5+、Sb5+、Mo6+、W6+の1種または複数種のカチオンの導入によることを特徴とする、請求項2に記載の電界効果型トランジスタ。
【請求項7】
前記酸化物半導体はIn3+、Sc3+、Y3+、Ln3+(Lnは希土類元素)より選ばれた1種または複数種の3価カチオンを含むビクスバイト組成化合物であって、前記n型ドーピングが、Al3+、Ga3+、In3+、Ge4+、Sn4+、Ti4+、Zr4+、Hf4+、V5+、Nb5+、Ta5+、Sb5+、Mo6+、W6+の1種または複数種のカチオンの導入によることを特徴とする、請求項2に記載の電界効果型トランジスタ。
【請求項8】
前記酸化物半導体は、3価、4価、5価および6価の少なくとも1つのカチオンを導入することによりn型ドーピングされた正方晶組成化合物であることを特徴とする、請求項1に記載の電界効果型トランジスタ。
【請求項9】
前記酸化物半導体はAE(AはMg2+、Zn2+、Cd2+の1種または複数種の2価カチオン、EはSb5+、Nb5+、Ta5+の1種または複数種の5価カチオン)で表されるトリルチル組成化合物であって、前記n型ドーピングが、Al3+、Ga3+、In3+、Y3+、Ge4+、Sn4+、Ti4+、Zr4+、Hf4+、V5+、Nb5+、Ta5+、Sb5+、Mo6+、W6+の1種または複数種のカチオンの導入によることを特徴とする、請求項8に記載の電界効果型トランジスタ。
【請求項10】
前記酸化物半導体は、3価、4価、5価および6価の1種または複数種のカチオンを導入することによりn型ドーピングされた斜方晶組成化合物であることを特徴とする、請求項1に記載の電界効果型トランジスタ。
【請求項11】
前記酸化物半導体はAG(AはMg2+、Zn2+、Cd2+の1種または複数種の2価カチオン、GはSi4+、Ge4+、Sn4+の1種または複数種の4価カチオン)で表されるオリビン組成化合物であって、前記n型ドーピングが、Al3+、Ga3+、In3+、Y3+、Ge4+、Sn4+、Ti4+、Zr4+、Hf4+、V5+、Nb5+、Ta5+、Sb5+、Mo6+、W6+の1種または複数種のカチオンの導入によることを特徴とする、請求項10に記載の電界効果型トランジスタ。
【請求項12】
前記酸化物半導体は、3価、4価、5価および6価の1種または複数種のカチオンを導入することによりn型ドーピングされた六方晶組成化合物であることを特徴とする、請求項1に記載の電界効果型トランジスタ。
【請求項13】
前記酸化物半導体はRE(RはCa2+、Sr2+、Ba2+、Cd2+、Pb2+の1種または複数種の2価カチオン、EはSb5+、Nb5+、Ta5+の1種または複数種の5価カチオン)で表されるPbSb構造組成化合物であって、前記n型ドーピングが、Al3+、Ga3+、In3+、Y3+、Ge4+、Sn4+、Ti4+、Zr4+、Hf4+、V5+、Nb5+、Ta5+、Sb5+、Mo6+、W6+の1種または複数種のカチオンの導入によることを特徴とする、請求項12に記載の電界効果型トランジスタ。
【請求項14】
前記酸化物半導体はIn(ZnO) (m=2以上6未満の整数)で表されるホモロガス組成化合物であって、前記n型ドーピングが、V5+、Nb5+、Ta5+、Sb5+、Mo6+、W6+の1種または複数種のカチオンの導入によることを特徴とする、請求項12に記載の電界効果型トランジスタ。
【請求項15】
駆動信号に応じて光出力が制御される光制御素子と;
請求項1〜14のいずれか一項に記載の電界効果型トランジスタを含み、前記光制御素子を駆動する駆動回路と;を備える表示素子。
【請求項16】
前記光制御素子は、有機エレクトロルミネッセンス素子、エレクトロクロミック素子、液晶素子または電気泳動素子を含むことを特徴とする請求項15に記載の表示素子。
【請求項17】
画像データに応じた画像を表示する画像表示装置であって、
マトリックス状に配置された複数の請求項15〜16のいずれか一項に記載の表示素子と;
前記複数の表示素子における各電界効果型トランジスタにゲート電圧を個別に印加するための複数の配線と;
前記画像データに応じて、前記各電界効果型トランジスタのゲート電圧を前記複数の配線を介して個別に制御する表示制御装置と;
を備える画像表示装置。
【請求項18】
請求項17に記載の画像表示装置と;
表示する画像情報に基づいて画像データを作成し、該画像データを前記画像表示装置に出力する画像データ作成装置と;を備えるシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図8】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−192971(P2011−192971A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−21155(P2011−21155)
【出願日】平成23年2月2日(2011.2.2)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】