電磁弁及び冷却システム
【課題】異なる制御温度で運転する冷凍・冷蔵システムにおいて、蒸発器の出口側の蒸発圧力を異なる制御温度に対応して調整し、配置スペースの低減と設置工数の削減を図れる電磁弁を提供する。
【解決手段】電磁弁1において、導入ポート11と導出ポート12との間に弁室13を設け、弁室13内に主弁14を配設する。主弁14を主弁座16に着座状態として、冷蔵モードの運転を行う。このとき導入ポート11からの冷媒を隔壁15の差圧ポート15aのみを介して導出ポート12に流し、導入ポート11内の蒸発圧力を保持する。主弁14を主弁座16から離間した状態で冷凍モードの運転を行う。差圧ポート15aに差圧弁を設けてもよいし、この差圧弁を導入ポート11側に設けた形状記憶合金でできたバネで付勢し、温度に対しても差圧弁が作用するようにしてもよい。
【解決手段】電磁弁1において、導入ポート11と導出ポート12との間に弁室13を設け、弁室13内に主弁14を配設する。主弁14を主弁座16に着座状態として、冷蔵モードの運転を行う。このとき導入ポート11からの冷媒を隔壁15の差圧ポート15aのみを介して導出ポート12に流し、導入ポート11内の蒸発圧力を保持する。主弁14を主弁座16から離間した状態で冷凍モードの運転を行う。差圧ポート15aに差圧弁を設けてもよいし、この差圧弁を導入ポート11側に設けた形状記憶合金でできたバネで付勢し、温度に対しても差圧弁が作用するようにしてもよい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮機と蒸発器を一対一で接続し、あるいは1つの圧縮機に対して複数の蒸発器を並列に接続して、異なる制御温度で運転される冷凍・冷蔵システムに適用して蒸発器の出口側の蒸発圧力を制御する電磁弁、及び該電磁弁を用いた冷却システムに関する。
【背景技術】
【0002】
(従来技術−1)従来、例えば図13に示すように、圧縮機10と蒸発器20を一対一で接続し、蒸発器20における蒸発温度を切り換えて運転する冷凍・冷蔵システムがある。この冷凍・冷蔵システムは、蒸発器20と圧縮機10の間に電磁弁30を設けるとともに、この電磁弁30をバイパスする管路40に蒸発圧力調整弁50を備えており、冷却する品物により、運転モードを切り換えることができる。
【0003】
圧縮機10で圧縮された冷媒は、凝縮器60及び膨張弁70を介して蒸発器20に供給されるが、例えば、蒸発温度約−30℃の冷凍モードの運転では、蒸発圧力調整弁50を閉、電磁弁30を開として蒸発器20からの冷媒を電磁弁30を介して圧縮機10に戻す。一方、蒸発温度約−10℃の冷蔵モードの運転では蒸発圧力調整弁50を開、電磁弁30を閉として蒸発器20からの冷媒を蒸発圧力調整弁50を介して圧縮機10に戻すようにしている。そして、蒸発圧力調整弁50は冷蔵モード時の蒸発圧力を冷凍モード時の蒸発圧力より高くなるように調整する。これにより、冷凍、冷蔵の各能力を好適に得ることができる。
【0004】
(従来技術−2)また、例えば図14に示すように、1つの圧縮機10に対して複数の蒸発器20を並列に接続したマルチ冷凍・冷蔵システムがある。このシステムは、1つの圧縮機10による凝縮器60の凝縮圧力と各蒸発器20からの吸入圧力が、各蒸発器20に対して共通(同一)であり、各蒸発器20における蒸発温度も共通となる。このため、最も低温である冷凍ケース(蒸発温度約−30℃)に合わせたユニット設計となっている。しかし、各蒸発器20(各ケース)は、用途や食材等の冷凍・冷蔵保存に適した温度帯とする必要があり、冷却温度をサーモスイッチで給液電磁弁80を開閉して制御している。
【0005】
(従来技術−3)また、冷凍装置において蒸発器(エバポレータ)から圧縮機に流れる冷媒の流量を制御して負荷変動に対して圧縮機を保護するとともに、冷凍能力を向上させるものとして、例えば特開平11−182946号公報に開示されたものがある。この従来技術では、吸入圧力制御弁とバイパスして電磁弁(流量制御弁)を設け、この電磁弁の開度を凝縮圧力に応じて制御し、圧縮機の保護と冷媒循環量を増加させることで冷却能力の向上を図るものである。
【特許文献1】特開平11−182946号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記従来技術−1のものでは、電磁弁30と蒸発圧力調整弁50とを配管・設置するための工数、設置スペースが必要であり、コストアップとなるという問題がある。また、本来、蒸発圧力制御弁を使用する目的は、蒸発温度を設定された温度(圧力)以下に低下させないためのものである。例えば、野菜ケースを冷却する場合、野菜の保存温度をキープする事も大切であるが、野菜を凍結させない事の方がより重要である。すなわち、蒸発圧力制御弁は、冷却する物品に適した設定が要求され、冷却物品に応じて蒸発圧力制御弁の設定値を変更する必要がある。しかし、現状の蒸発圧力制御弁は機械式が主流であり、非常に煩雑で手間の掛かる作業を必要とする。
【0007】
前記従来技術−2のものでは、各ケースの蒸発圧力が共通(同一)である事から、冷蔵ケースにおいても冷凍ケースと同じ蒸発温度で運転される。冷蔵ケースでは、必要とされる冷却温度と蒸発温度との温度差が著しく大きな状態で運転されている事から、以下のような問題がある。温度制御が難しく、品温管理が不正確となるために、例えば食品の賞味期間が短縮してしまう。また、蒸発器がケース内の湿気により着霜・結氷し易いために、被冷却物の湿度が低下し、野菜等が乾燥過多となり易く、商品価値が低下し易い運転状態である。さらに、湿気が着霜・結氷し易い運転条件である事から、デフロスト回数が多くなるとともに、デフロスト時間も長くなるため、省エネ上問題がある。なお、この問題を解決するために冷凍/冷蔵の用途により、ケース設計を変えると、設置後の冷蔵または冷凍の用途変更が困難であるとともに、ケース価格が高価となる。
【0008】
前記従来技術−3のものでは、吸入圧力制御弁は、圧縮機の負荷を低減させる目的で使用されるが、この従来技術−3によると、凝縮圧力が低下して膨張弁を通過する流量(冷凍能力)が低下した場合に流量制御弁(電磁弁)を調整して循環量を増大させるとしているが、冷媒循環量は膨張弁の弁開度、すなわち過熱度で決まってしまうため、期待される効果は吸入圧力制御弁の圧力損失が過熱度として反映されるのみで効果は僅かである。さらに、吸入圧力制御弁の本来の目的である吸入圧力制御による圧縮機保護に対しては、蒸発圧力や圧縮機の過負荷(過電流)状態を感知して流量制御弁を制御する必要があり、制御系のコスト負担に対してその効果が少ない。また、吸入圧力制御弁と並列に流量制御弁を設けると配管・設置するための工数、設置スペースが必要であり、コストアップとなるという問題がある。
【0009】
本発明は、異なる制御温度で運転される冷凍・冷蔵システムなどにおいて、蒸発器の出口側の蒸発圧力を異なる制御温度に対応して調整できるとともに、配置スペースの低減と設置工数の削減を図れる電磁弁、及び該電磁弁を用いた冷却システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の電磁弁は、冷媒を導入する導入ポートと冷媒を導出する導出ポートとの間で主弁を開閉する主弁部を備え、該主弁部の開状態で導入ポートと導出ポートとを略同圧に連通する電磁弁において、前記主弁部の近傍に、該主弁部が閉状態の時に前記導入ポートと導出ポートとの間に差圧を発生させて該導入ポートと導出ポートとを導通する差圧発生部を設けたことを特徴とする。
【0011】
請求項2の電磁弁は、請求項1に記載の電磁弁であって、前記差圧発生部が、前記導入ポートの冷媒が通過する断面積より面積を小さく開口され前記導入ポートと前記導出ポートとの間に形成された差圧ポートであることを特徴とする。
【0012】
請求項3の電磁弁は、請求項1に記載の電磁弁であって、前記差圧発生部が、前記導入ポートと前記導出ポートとの間で該導入ポートと導出ポートとの差圧に応じて開閉動作する差圧弁機構であることを特徴とする。
【0013】
請求項4の電磁弁は、請求項1に記載の電磁弁であって、前記差圧発生部が、前記導入ポートと前記導出ポートとの間で該導入ポートの冷媒温度に応じた前記差圧を発生させる感温差圧弁機構であることを特徴とする。
【0014】
請求項5の電磁弁は、請求項4に記載の電磁弁であって、前記感温差圧弁機構が形状記憶合金で形成された感温バネにより差圧弁を付勢するように構成されていることを特徴とする。
【0015】
請求項6の冷却システムは、請求項1〜5のいずれか一項に記載の電磁弁を用いた冷却システムであって、該冷却システムにおける冷凍サイクルの蒸発器と圧縮機との間で、前記電磁弁の前記導入ポートが前記蒸発器の出口側に接続されるとともに、該電磁弁の前記導出ポートが前記圧縮機の吸入口側に接続され、該電磁弁の前記差圧は前記蒸発器の適正蒸発温度を確保するように設定され、前記蒸発器の冷却能力に応じて前記電磁弁の前記主弁部を開閉制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の電磁弁によれば、主弁部の近傍に差圧発生部が設けられ、この差圧発生部により、主弁部が閉状態の時に導入ポートと導出ポートとの間に差圧が発生されるので、異なる制御温度での冷凍・冷蔵システムなどにおいて、主弁部が開状態で冷凍モード、主弁部を閉状態で冷蔵モードとして、蒸発器の出口側の蒸発圧力を異なる制御温度に対応して調整できるとともに、この差圧発生部と主弁部とを一つの電磁弁により構成しているので、配置スペースの低減と設置工数の削減を図れる。
【0017】
請求項2の電磁弁によれば、請求項1の効果に加えて、差圧発生部を、導入ポートの冷媒が通過する断面積より面積を小さく開口され導入ポートと導出ポートとの間に形成された差圧ポートとしたので、簡単な構成とすることができる。
【0018】
請求項3の電磁弁によれば、請求項1の効果に加えて、差圧発生部を、導入ポートと導出ポートとの間で該導入ポートと導出ポートとの差圧に応じて開閉動作する差圧弁機構としたので、導入ポートと導出ポートとの差圧を確実に保持することができ、安定した運転を行うことができる。
【0019】
請求項4の電磁弁によれば、請求項1の効果に加えて、差圧発生部を、導入ポートと導出ポートとの間で該導入ポートの冷媒温度に応じた差圧を発生させる感温差圧弁機構としたので、蒸発器出口温度に応じて差圧を確実に保持することができ、さらに安定した運転を行うことができる。
【0020】
請求項5の電磁弁によれば、請求項1及び4の効果に加えて、感温差圧弁機構を形状記憶合金で形成された感温バネにより差圧弁を付勢するように構成したので、感温差圧弁機構の構造を簡単にすることができる。
【0021】
請求項6の冷却システムによれば、請求項1〜5のいずれか一項と同様な効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
次に、本発明の電磁弁及び冷却システムの実施形態を図面を参照して説明する。なお、以下の説明における「上下」の概念は図面における上下に対応する。図12は、実施形態の冷却システムである冷凍・冷蔵システムの要部を示す図であり、図中1は実施形態に係る後述の電磁弁である。圧縮機10で圧縮された冷媒は凝縮器60、膨張弁70、蒸発器20、電磁弁1、圧縮機10と流れ、電磁弁1の開閉制御により、蒸発器20における蒸発温度すなわち蒸発器20の出口側の蒸発圧力を切り換え、冷凍モードと冷蔵モードで切替運転が可能となっている。
【0023】
図1は第1実施形態の電磁弁1の冷蔵モード時の断面図、図2は同電磁弁の冷凍モード時の断面図である。この電磁弁1は、弁本体Aと電磁駆動部Bとを備えており、弁本体Aは弁ケース体A1と蓋体A2とを有している。弁ケース体A1には、直線上同軸に形成された導入ポート11と導出ポート12とが形成されるとともに、該導入ポート11と導出ポート12との間に弁室13が形成されている。弁室13はその一部において導入ポート11と連通されるとともに、蓋体A2で弁ケース体A1を封止することにより、この弁室13は弁ケース体A1内で密閉空間を構成している。そして、弁室13内には主弁14が配設されている。
【0024】
導入ポート11と導出ポート12との間には隔壁15が形成されるとともに、該隔壁15には導入ポート11及び導出ポート12の内径よりも小さな径の差圧ポート15aが開口されている。また、隔壁15と導出ポート12の端部との間には弁室13側に開口構造を成す主弁座16が形成されており、主弁14が主弁バネ14aにより主弁座16に対して押圧するように付勢されている。そして、後述の電磁駆動部Bにより、この主弁座16に対して主弁14が着座状態または離座状態となる。
【0025】
電磁駆動部Bにおいて、駆動部上蓋31の上端にはプランジャチューブ32が固定され、その上端部に吸引子33が取り付けられるとともにその周囲には電磁コイル34が配設されている。プランジャチューブ32内にはプランジャ35が配設され、このプランジャ35はプランジャバネ35aによって、吸引子33から離間する方向に付勢されている。また、プランジャ35の下端には駆動部上蓋31内に収納されたピストン36が配設されており、このピストン36は、ピストンバネ36aによってプランジャ35側に付勢されている。
【0026】
ここで、プランジャバネ35aの付勢力の方がピストンバネ36aの付勢力より勝っており、電磁コイル34に通電がなされていないときには、プランジャ35及びピストン36は図1の状態となる。そして、電磁コイル34に通電がなされると、プランジャ35が吸引子33に吸引されて、プランジャ35及びピストン36は図2の状態となる。
【0027】
弁ケース体A1には導出ポート12から蓋体A2側に導通する導通路12aが形成されるとともに、蓋体A2には、導通路12aの端部のスリーブ12bを介して該導通路12aに連通する導通路21a及び21bが形成されている。また、蓋体A2の上部には、電磁駆動部Bの駆動部上蓋31で封止された圧力切換室Rが形成されており、導通路21bはこの圧力切換室Rに開口している。また、蓋体A2には、弁室13を圧力切換室R側に導通する導通路13aが形成されるとともに、主弁14には導入ポート11と弁室13の導通路13a側の空間とを導通する導通路14bが形成されている。そして、電磁コイル34への通電/非通電により、ピストン36が前記導通路21bの開口部を開閉し、圧力切換室Rを介して、導通路12a、21a、21bと、弁室13及び導通路13aとの導通または遮蔽の切換動作を行う。
【0028】
以上のように構成された電磁弁1は、導入ポート11が前記蒸発器20の出口側配管に接続され、導出ポート12が圧縮機10の吸入側配管に接続され、冷却システムの運転時に、冷媒は導入ポート11に導入されるとともに導出ポート12から圧縮機10に導出される。
【0029】
次に、電磁弁1の動作について説明する。図1の冷蔵モードでは、駆動部Bの電磁コイル34に通電がなされておらず、ピストン36が圧力切換室Rにおいて導通路21bを閉じている。これにより、圧力切換室R、導通路13a及び弁室13が密閉され、導入ポート11に導入された冷媒が主弁14の導通路14bを通って主弁14の上部に導かれ、弁室13、導通路13a及び圧力切換室R内が高圧になる。これにより主弁14が主弁座16に着座するとともに、この着座状態が維持される。したがって、導入ポート11に導入された冷媒は隔壁15の差圧ポート15aのみを通って導出ポート12に流れる。そして、この冷媒が差圧ポート15aを流れるれることにより、導出ポート12内は圧縮機の吸入側圧力Psとなるが、導入ポート11内はこの吸入側圧力Psより高い圧力の蒸発圧力PeH(PeH>Ps)となる。これにより、冷蔵モードでの蒸発器20における蒸発圧力が保持される。
【0030】
この冷蔵モードから冷凍モードに切り換えるときは、電磁コイル34に通電され、ピストン36が導通路21bを圧力切換室Rにおいて開放する。これにより、圧力切換室R、導通路13a及び弁室13が、導通路21b、21a、12aを介して導出ポート12に導通され、弁室13において主弁14の上部空間が低圧になり、主弁14は導入ポート11の高圧により主弁座16から離間する。(図2参照)したがって、導入ポート11に導入された冷媒は主弁座16と主弁14との開放部分、及び差圧ポート15aを介して導出ポート12に流れる。そして、この主弁14の離間により、導出ポート12内は圧縮機の吸入側圧力Psとなるが、導入ポート11内はこの吸入側圧力Psと略同圧の蒸発圧力PeL(PeL≒Ps)となる。これにより、冷凍モードでの蒸発器20における蒸発圧力が保持される。
【0031】
図3は実施形態の冷却システムにおけるモリエル線図であり、冷媒の吸熱工程は冷蔵モードを実線、冷凍モードを破線で示している。図示のように、吸熱工程における圧力すなわち蒸発器20における蒸発圧力が運転モードに応じて切り換えられる。この例では、冷蔵モードにおける蒸発圧力PeHと冷凍モードにおける蒸発圧力PeLの差ΔP=PeH−PeL=0.236(MPa)となっている。
【0032】
このように、主弁14及び主弁座16により「主弁部」が構成されており、冷媒を導入する導入ポート11と冷媒を導出する導出ポート12との間で主弁14を開閉する主弁部を備えている。また、該主弁部の開状態で導入ポート11と導出ポート12とが略同圧に連通される。そして、主弁部の近傍に、該主弁部が閉状態の時に導入ポート11と導出ポート12との間に差圧ΔPを発生させて該導入ポート11と導出ポート12とを導通する隔壁15及び差圧ポート15aからなる差圧発生部が設けられている。
【0033】
図4は第2実施形態の電磁弁1の冷蔵モード時の断面図、図5は同電磁弁の冷凍モード時の断面図である。なお、以下の実施形態において各実施形態と同様な要素には図面において同符号を付記して詳細な説明は省略する。この第2実施形態の電磁弁1は、隔壁15に第1実施形態の差圧ポート15aより僅かに径の大きな差圧ポート15a′を形成し、この差圧ポート15a′に差圧弁4を設けたものである。この差圧弁4は、導出ポート12の内周面に配設した止め輪41と差圧弁4との間に配設した差圧バネ42により、隔壁15側に付勢され、主弁座16、導入ポート11と対抗するようにしている。
【0034】
図6は差圧弁4の斜視図であり、この差圧弁4は、弁本体を成す皿状の弁シート部材4aと差圧ポート15a′内に配設される脚部材4bとを有している。弁シート部材4aによって差圧バネ42の一端を受け、弁シート部材4aのシート部4a1が差圧ポート15a′の周囲に当接/離間して、この差圧ポート15a′を開閉する。
【0035】
図7は差圧弁4の特性図であり、縦軸は差圧弁4と差圧ポート15a′との開口部分の面積を示し、横軸は差圧弁4に対して導入ポート11側から加わる力を差圧ΔPの相当圧力として示している。この実施形態では、差圧ΔP=0.236(MPa)に相当する力が差圧弁4に加わったときに、開口部分の面積が略20mm2 となるように差圧弁4のサイズと差圧バネ42のバネ定数が設定されている。
【0036】
この差圧弁4は、図5のように主弁14が主弁座16から離座した状態では差圧弁4は差圧バネ42の付勢力により差圧ポート15a′を封止し、図4のように主弁4が主弁座16に着座した状態で差圧ポート15a′との開口部分の面積を調整するように作用する。すなわち、導入ポート11と導出ポート12との差圧がΔP=0.236(MPa)より大きくなると開口部分の面積が大きくなり、導入ポート11から導出ポート12に流れる冷媒流量が多くなり、差圧はΔP=0.236(MPa)に近づくように作用する。また、差圧がΔP=0.236(MPa)より小さくなると開口部分の面積が小さくなり、導入ポート11から導出ポート12に流れる冷媒流量が少なくなり、差圧はΔP=0.236(MPa)に近づくように作用する。このようにして、冷蔵モードにおける蒸発圧力PeHと、冷凍モードにおける蒸発圧力PeLが確保される。
【0037】
図8は第3実施形態の電磁弁1の冷蔵モード時の断面図、図9は同電磁弁の冷凍モード時の断面図である。この第3実施形態の電磁弁1は、第2実施形態における差圧弁4を感温差圧弁4として、該感温差圧弁4の脚部材4bの導入ポート11側にバネ受け51を設け、このバネ受け51おいて、導入ポート11の内周面に配設した止め輪52とバネ受け51との間に感温バネ5を配設したものである。この感温バネ5は形状記憶合金で形成されており、導入ポート11内の冷媒の温度に応じてバネ特性が変化するように構成されている。なお、感温差圧弁4には、図8、図9及び図6に示したように、常時開口する均圧ポート4cが設けられており、該感温差圧弁4が全閉状態でも感温可能(流れを得ている)としている。
【0038】
図10は感温差圧弁4の特性図である。破線で示したように第2実施形態と同様に差圧バネ42は、温度に対してその特性は変化しないが、実線で示したように、感温バネ5は温度に応じて特性が変化する。そして、この両方の合成により差圧相当荷重(蒸発飽和状態)が変化する。
【0039】
図11は感温差圧弁4の隔壁15(差圧ポート15a′)からのリフト特性を示す図であり、二点差線で示したグラフは第2実施形態の差圧弁4(差圧バネ42)のみの特性、実線で示したグラフは感温差圧弁4(差圧バネ42と感温バネ5)による特性を示している。図のように、感温差圧弁4は第2実施形態に加えて、蒸発器20の出口の温度(蒸発温度)による効果も呈していることが分かる。
【0040】
なお、各実施形態の電磁弁1は、図12に示した冷却システムのみならず、前掲の図14に破線で示した部分に設けるようにしてもよいことはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の第1実施形態の電磁弁の冷蔵モード時の断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態の電磁弁の冷凍モード時の断面図である。
【図3】本発明の実施形態の冷却システムにおけるモリエル線図である。
【図4】本発明の第2実施形態の電磁弁の冷蔵モード時の断面図である。
【図5】本発明の第2実施形態の電磁弁の冷凍モード時の断面図である。
【図6】本発明の第2実施形態における差圧弁の斜視図である。
【図7】本発明の第2実施形態における差圧弁の特性図である。
【図8】本発明の第3実施形態の電磁弁の冷蔵モード時の断面図である。
【図9】本発明の第3実施形態の電磁弁の冷凍モード時の断面図である。
【図10】本発明の第3実施形態における感温差圧弁の特性図である。
【図11】本発明の第3実施形態における感温差圧弁の隔壁からのリフト特性を示す図である。
【図12】本発明の各実施形態における冷却システムの要部を示す図である。
【図13】従来の冷却システムの一例を示す図である。
【図14】従来の冷却システムの他の例を示す図である。
【符号の説明】
【0042】
1 電磁弁
4 差圧弁(感温差圧弁)
5 感温バネ
10 圧縮機
11 導入ポート
12 導出ポート
13 弁室
14 主弁
15 隔壁
15a 差圧ポート
16 主弁座
20 蒸発器
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮機と蒸発器を一対一で接続し、あるいは1つの圧縮機に対して複数の蒸発器を並列に接続して、異なる制御温度で運転される冷凍・冷蔵システムに適用して蒸発器の出口側の蒸発圧力を制御する電磁弁、及び該電磁弁を用いた冷却システムに関する。
【背景技術】
【0002】
(従来技術−1)従来、例えば図13に示すように、圧縮機10と蒸発器20を一対一で接続し、蒸発器20における蒸発温度を切り換えて運転する冷凍・冷蔵システムがある。この冷凍・冷蔵システムは、蒸発器20と圧縮機10の間に電磁弁30を設けるとともに、この電磁弁30をバイパスする管路40に蒸発圧力調整弁50を備えており、冷却する品物により、運転モードを切り換えることができる。
【0003】
圧縮機10で圧縮された冷媒は、凝縮器60及び膨張弁70を介して蒸発器20に供給されるが、例えば、蒸発温度約−30℃の冷凍モードの運転では、蒸発圧力調整弁50を閉、電磁弁30を開として蒸発器20からの冷媒を電磁弁30を介して圧縮機10に戻す。一方、蒸発温度約−10℃の冷蔵モードの運転では蒸発圧力調整弁50を開、電磁弁30を閉として蒸発器20からの冷媒を蒸発圧力調整弁50を介して圧縮機10に戻すようにしている。そして、蒸発圧力調整弁50は冷蔵モード時の蒸発圧力を冷凍モード時の蒸発圧力より高くなるように調整する。これにより、冷凍、冷蔵の各能力を好適に得ることができる。
【0004】
(従来技術−2)また、例えば図14に示すように、1つの圧縮機10に対して複数の蒸発器20を並列に接続したマルチ冷凍・冷蔵システムがある。このシステムは、1つの圧縮機10による凝縮器60の凝縮圧力と各蒸発器20からの吸入圧力が、各蒸発器20に対して共通(同一)であり、各蒸発器20における蒸発温度も共通となる。このため、最も低温である冷凍ケース(蒸発温度約−30℃)に合わせたユニット設計となっている。しかし、各蒸発器20(各ケース)は、用途や食材等の冷凍・冷蔵保存に適した温度帯とする必要があり、冷却温度をサーモスイッチで給液電磁弁80を開閉して制御している。
【0005】
(従来技術−3)また、冷凍装置において蒸発器(エバポレータ)から圧縮機に流れる冷媒の流量を制御して負荷変動に対して圧縮機を保護するとともに、冷凍能力を向上させるものとして、例えば特開平11−182946号公報に開示されたものがある。この従来技術では、吸入圧力制御弁とバイパスして電磁弁(流量制御弁)を設け、この電磁弁の開度を凝縮圧力に応じて制御し、圧縮機の保護と冷媒循環量を増加させることで冷却能力の向上を図るものである。
【特許文献1】特開平11−182946号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記従来技術−1のものでは、電磁弁30と蒸発圧力調整弁50とを配管・設置するための工数、設置スペースが必要であり、コストアップとなるという問題がある。また、本来、蒸発圧力制御弁を使用する目的は、蒸発温度を設定された温度(圧力)以下に低下させないためのものである。例えば、野菜ケースを冷却する場合、野菜の保存温度をキープする事も大切であるが、野菜を凍結させない事の方がより重要である。すなわち、蒸発圧力制御弁は、冷却する物品に適した設定が要求され、冷却物品に応じて蒸発圧力制御弁の設定値を変更する必要がある。しかし、現状の蒸発圧力制御弁は機械式が主流であり、非常に煩雑で手間の掛かる作業を必要とする。
【0007】
前記従来技術−2のものでは、各ケースの蒸発圧力が共通(同一)である事から、冷蔵ケースにおいても冷凍ケースと同じ蒸発温度で運転される。冷蔵ケースでは、必要とされる冷却温度と蒸発温度との温度差が著しく大きな状態で運転されている事から、以下のような問題がある。温度制御が難しく、品温管理が不正確となるために、例えば食品の賞味期間が短縮してしまう。また、蒸発器がケース内の湿気により着霜・結氷し易いために、被冷却物の湿度が低下し、野菜等が乾燥過多となり易く、商品価値が低下し易い運転状態である。さらに、湿気が着霜・結氷し易い運転条件である事から、デフロスト回数が多くなるとともに、デフロスト時間も長くなるため、省エネ上問題がある。なお、この問題を解決するために冷凍/冷蔵の用途により、ケース設計を変えると、設置後の冷蔵または冷凍の用途変更が困難であるとともに、ケース価格が高価となる。
【0008】
前記従来技術−3のものでは、吸入圧力制御弁は、圧縮機の負荷を低減させる目的で使用されるが、この従来技術−3によると、凝縮圧力が低下して膨張弁を通過する流量(冷凍能力)が低下した場合に流量制御弁(電磁弁)を調整して循環量を増大させるとしているが、冷媒循環量は膨張弁の弁開度、すなわち過熱度で決まってしまうため、期待される効果は吸入圧力制御弁の圧力損失が過熱度として反映されるのみで効果は僅かである。さらに、吸入圧力制御弁の本来の目的である吸入圧力制御による圧縮機保護に対しては、蒸発圧力や圧縮機の過負荷(過電流)状態を感知して流量制御弁を制御する必要があり、制御系のコスト負担に対してその効果が少ない。また、吸入圧力制御弁と並列に流量制御弁を設けると配管・設置するための工数、設置スペースが必要であり、コストアップとなるという問題がある。
【0009】
本発明は、異なる制御温度で運転される冷凍・冷蔵システムなどにおいて、蒸発器の出口側の蒸発圧力を異なる制御温度に対応して調整できるとともに、配置スペースの低減と設置工数の削減を図れる電磁弁、及び該電磁弁を用いた冷却システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の電磁弁は、冷媒を導入する導入ポートと冷媒を導出する導出ポートとの間で主弁を開閉する主弁部を備え、該主弁部の開状態で導入ポートと導出ポートとを略同圧に連通する電磁弁において、前記主弁部の近傍に、該主弁部が閉状態の時に前記導入ポートと導出ポートとの間に差圧を発生させて該導入ポートと導出ポートとを導通する差圧発生部を設けたことを特徴とする。
【0011】
請求項2の電磁弁は、請求項1に記載の電磁弁であって、前記差圧発生部が、前記導入ポートの冷媒が通過する断面積より面積を小さく開口され前記導入ポートと前記導出ポートとの間に形成された差圧ポートであることを特徴とする。
【0012】
請求項3の電磁弁は、請求項1に記載の電磁弁であって、前記差圧発生部が、前記導入ポートと前記導出ポートとの間で該導入ポートと導出ポートとの差圧に応じて開閉動作する差圧弁機構であることを特徴とする。
【0013】
請求項4の電磁弁は、請求項1に記載の電磁弁であって、前記差圧発生部が、前記導入ポートと前記導出ポートとの間で該導入ポートの冷媒温度に応じた前記差圧を発生させる感温差圧弁機構であることを特徴とする。
【0014】
請求項5の電磁弁は、請求項4に記載の電磁弁であって、前記感温差圧弁機構が形状記憶合金で形成された感温バネにより差圧弁を付勢するように構成されていることを特徴とする。
【0015】
請求項6の冷却システムは、請求項1〜5のいずれか一項に記載の電磁弁を用いた冷却システムであって、該冷却システムにおける冷凍サイクルの蒸発器と圧縮機との間で、前記電磁弁の前記導入ポートが前記蒸発器の出口側に接続されるとともに、該電磁弁の前記導出ポートが前記圧縮機の吸入口側に接続され、該電磁弁の前記差圧は前記蒸発器の適正蒸発温度を確保するように設定され、前記蒸発器の冷却能力に応じて前記電磁弁の前記主弁部を開閉制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の電磁弁によれば、主弁部の近傍に差圧発生部が設けられ、この差圧発生部により、主弁部が閉状態の時に導入ポートと導出ポートとの間に差圧が発生されるので、異なる制御温度での冷凍・冷蔵システムなどにおいて、主弁部が開状態で冷凍モード、主弁部を閉状態で冷蔵モードとして、蒸発器の出口側の蒸発圧力を異なる制御温度に対応して調整できるとともに、この差圧発生部と主弁部とを一つの電磁弁により構成しているので、配置スペースの低減と設置工数の削減を図れる。
【0017】
請求項2の電磁弁によれば、請求項1の効果に加えて、差圧発生部を、導入ポートの冷媒が通過する断面積より面積を小さく開口され導入ポートと導出ポートとの間に形成された差圧ポートとしたので、簡単な構成とすることができる。
【0018】
請求項3の電磁弁によれば、請求項1の効果に加えて、差圧発生部を、導入ポートと導出ポートとの間で該導入ポートと導出ポートとの差圧に応じて開閉動作する差圧弁機構としたので、導入ポートと導出ポートとの差圧を確実に保持することができ、安定した運転を行うことができる。
【0019】
請求項4の電磁弁によれば、請求項1の効果に加えて、差圧発生部を、導入ポートと導出ポートとの間で該導入ポートの冷媒温度に応じた差圧を発生させる感温差圧弁機構としたので、蒸発器出口温度に応じて差圧を確実に保持することができ、さらに安定した運転を行うことができる。
【0020】
請求項5の電磁弁によれば、請求項1及び4の効果に加えて、感温差圧弁機構を形状記憶合金で形成された感温バネにより差圧弁を付勢するように構成したので、感温差圧弁機構の構造を簡単にすることができる。
【0021】
請求項6の冷却システムによれば、請求項1〜5のいずれか一項と同様な効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
次に、本発明の電磁弁及び冷却システムの実施形態を図面を参照して説明する。なお、以下の説明における「上下」の概念は図面における上下に対応する。図12は、実施形態の冷却システムである冷凍・冷蔵システムの要部を示す図であり、図中1は実施形態に係る後述の電磁弁である。圧縮機10で圧縮された冷媒は凝縮器60、膨張弁70、蒸発器20、電磁弁1、圧縮機10と流れ、電磁弁1の開閉制御により、蒸発器20における蒸発温度すなわち蒸発器20の出口側の蒸発圧力を切り換え、冷凍モードと冷蔵モードで切替運転が可能となっている。
【0023】
図1は第1実施形態の電磁弁1の冷蔵モード時の断面図、図2は同電磁弁の冷凍モード時の断面図である。この電磁弁1は、弁本体Aと電磁駆動部Bとを備えており、弁本体Aは弁ケース体A1と蓋体A2とを有している。弁ケース体A1には、直線上同軸に形成された導入ポート11と導出ポート12とが形成されるとともに、該導入ポート11と導出ポート12との間に弁室13が形成されている。弁室13はその一部において導入ポート11と連通されるとともに、蓋体A2で弁ケース体A1を封止することにより、この弁室13は弁ケース体A1内で密閉空間を構成している。そして、弁室13内には主弁14が配設されている。
【0024】
導入ポート11と導出ポート12との間には隔壁15が形成されるとともに、該隔壁15には導入ポート11及び導出ポート12の内径よりも小さな径の差圧ポート15aが開口されている。また、隔壁15と導出ポート12の端部との間には弁室13側に開口構造を成す主弁座16が形成されており、主弁14が主弁バネ14aにより主弁座16に対して押圧するように付勢されている。そして、後述の電磁駆動部Bにより、この主弁座16に対して主弁14が着座状態または離座状態となる。
【0025】
電磁駆動部Bにおいて、駆動部上蓋31の上端にはプランジャチューブ32が固定され、その上端部に吸引子33が取り付けられるとともにその周囲には電磁コイル34が配設されている。プランジャチューブ32内にはプランジャ35が配設され、このプランジャ35はプランジャバネ35aによって、吸引子33から離間する方向に付勢されている。また、プランジャ35の下端には駆動部上蓋31内に収納されたピストン36が配設されており、このピストン36は、ピストンバネ36aによってプランジャ35側に付勢されている。
【0026】
ここで、プランジャバネ35aの付勢力の方がピストンバネ36aの付勢力より勝っており、電磁コイル34に通電がなされていないときには、プランジャ35及びピストン36は図1の状態となる。そして、電磁コイル34に通電がなされると、プランジャ35が吸引子33に吸引されて、プランジャ35及びピストン36は図2の状態となる。
【0027】
弁ケース体A1には導出ポート12から蓋体A2側に導通する導通路12aが形成されるとともに、蓋体A2には、導通路12aの端部のスリーブ12bを介して該導通路12aに連通する導通路21a及び21bが形成されている。また、蓋体A2の上部には、電磁駆動部Bの駆動部上蓋31で封止された圧力切換室Rが形成されており、導通路21bはこの圧力切換室Rに開口している。また、蓋体A2には、弁室13を圧力切換室R側に導通する導通路13aが形成されるとともに、主弁14には導入ポート11と弁室13の導通路13a側の空間とを導通する導通路14bが形成されている。そして、電磁コイル34への通電/非通電により、ピストン36が前記導通路21bの開口部を開閉し、圧力切換室Rを介して、導通路12a、21a、21bと、弁室13及び導通路13aとの導通または遮蔽の切換動作を行う。
【0028】
以上のように構成された電磁弁1は、導入ポート11が前記蒸発器20の出口側配管に接続され、導出ポート12が圧縮機10の吸入側配管に接続され、冷却システムの運転時に、冷媒は導入ポート11に導入されるとともに導出ポート12から圧縮機10に導出される。
【0029】
次に、電磁弁1の動作について説明する。図1の冷蔵モードでは、駆動部Bの電磁コイル34に通電がなされておらず、ピストン36が圧力切換室Rにおいて導通路21bを閉じている。これにより、圧力切換室R、導通路13a及び弁室13が密閉され、導入ポート11に導入された冷媒が主弁14の導通路14bを通って主弁14の上部に導かれ、弁室13、導通路13a及び圧力切換室R内が高圧になる。これにより主弁14が主弁座16に着座するとともに、この着座状態が維持される。したがって、導入ポート11に導入された冷媒は隔壁15の差圧ポート15aのみを通って導出ポート12に流れる。そして、この冷媒が差圧ポート15aを流れるれることにより、導出ポート12内は圧縮機の吸入側圧力Psとなるが、導入ポート11内はこの吸入側圧力Psより高い圧力の蒸発圧力PeH(PeH>Ps)となる。これにより、冷蔵モードでの蒸発器20における蒸発圧力が保持される。
【0030】
この冷蔵モードから冷凍モードに切り換えるときは、電磁コイル34に通電され、ピストン36が導通路21bを圧力切換室Rにおいて開放する。これにより、圧力切換室R、導通路13a及び弁室13が、導通路21b、21a、12aを介して導出ポート12に導通され、弁室13において主弁14の上部空間が低圧になり、主弁14は導入ポート11の高圧により主弁座16から離間する。(図2参照)したがって、導入ポート11に導入された冷媒は主弁座16と主弁14との開放部分、及び差圧ポート15aを介して導出ポート12に流れる。そして、この主弁14の離間により、導出ポート12内は圧縮機の吸入側圧力Psとなるが、導入ポート11内はこの吸入側圧力Psと略同圧の蒸発圧力PeL(PeL≒Ps)となる。これにより、冷凍モードでの蒸発器20における蒸発圧力が保持される。
【0031】
図3は実施形態の冷却システムにおけるモリエル線図であり、冷媒の吸熱工程は冷蔵モードを実線、冷凍モードを破線で示している。図示のように、吸熱工程における圧力すなわち蒸発器20における蒸発圧力が運転モードに応じて切り換えられる。この例では、冷蔵モードにおける蒸発圧力PeHと冷凍モードにおける蒸発圧力PeLの差ΔP=PeH−PeL=0.236(MPa)となっている。
【0032】
このように、主弁14及び主弁座16により「主弁部」が構成されており、冷媒を導入する導入ポート11と冷媒を導出する導出ポート12との間で主弁14を開閉する主弁部を備えている。また、該主弁部の開状態で導入ポート11と導出ポート12とが略同圧に連通される。そして、主弁部の近傍に、該主弁部が閉状態の時に導入ポート11と導出ポート12との間に差圧ΔPを発生させて該導入ポート11と導出ポート12とを導通する隔壁15及び差圧ポート15aからなる差圧発生部が設けられている。
【0033】
図4は第2実施形態の電磁弁1の冷蔵モード時の断面図、図5は同電磁弁の冷凍モード時の断面図である。なお、以下の実施形態において各実施形態と同様な要素には図面において同符号を付記して詳細な説明は省略する。この第2実施形態の電磁弁1は、隔壁15に第1実施形態の差圧ポート15aより僅かに径の大きな差圧ポート15a′を形成し、この差圧ポート15a′に差圧弁4を設けたものである。この差圧弁4は、導出ポート12の内周面に配設した止め輪41と差圧弁4との間に配設した差圧バネ42により、隔壁15側に付勢され、主弁座16、導入ポート11と対抗するようにしている。
【0034】
図6は差圧弁4の斜視図であり、この差圧弁4は、弁本体を成す皿状の弁シート部材4aと差圧ポート15a′内に配設される脚部材4bとを有している。弁シート部材4aによって差圧バネ42の一端を受け、弁シート部材4aのシート部4a1が差圧ポート15a′の周囲に当接/離間して、この差圧ポート15a′を開閉する。
【0035】
図7は差圧弁4の特性図であり、縦軸は差圧弁4と差圧ポート15a′との開口部分の面積を示し、横軸は差圧弁4に対して導入ポート11側から加わる力を差圧ΔPの相当圧力として示している。この実施形態では、差圧ΔP=0.236(MPa)に相当する力が差圧弁4に加わったときに、開口部分の面積が略20mm2 となるように差圧弁4のサイズと差圧バネ42のバネ定数が設定されている。
【0036】
この差圧弁4は、図5のように主弁14が主弁座16から離座した状態では差圧弁4は差圧バネ42の付勢力により差圧ポート15a′を封止し、図4のように主弁4が主弁座16に着座した状態で差圧ポート15a′との開口部分の面積を調整するように作用する。すなわち、導入ポート11と導出ポート12との差圧がΔP=0.236(MPa)より大きくなると開口部分の面積が大きくなり、導入ポート11から導出ポート12に流れる冷媒流量が多くなり、差圧はΔP=0.236(MPa)に近づくように作用する。また、差圧がΔP=0.236(MPa)より小さくなると開口部分の面積が小さくなり、導入ポート11から導出ポート12に流れる冷媒流量が少なくなり、差圧はΔP=0.236(MPa)に近づくように作用する。このようにして、冷蔵モードにおける蒸発圧力PeHと、冷凍モードにおける蒸発圧力PeLが確保される。
【0037】
図8は第3実施形態の電磁弁1の冷蔵モード時の断面図、図9は同電磁弁の冷凍モード時の断面図である。この第3実施形態の電磁弁1は、第2実施形態における差圧弁4を感温差圧弁4として、該感温差圧弁4の脚部材4bの導入ポート11側にバネ受け51を設け、このバネ受け51おいて、導入ポート11の内周面に配設した止め輪52とバネ受け51との間に感温バネ5を配設したものである。この感温バネ5は形状記憶合金で形成されており、導入ポート11内の冷媒の温度に応じてバネ特性が変化するように構成されている。なお、感温差圧弁4には、図8、図9及び図6に示したように、常時開口する均圧ポート4cが設けられており、該感温差圧弁4が全閉状態でも感温可能(流れを得ている)としている。
【0038】
図10は感温差圧弁4の特性図である。破線で示したように第2実施形態と同様に差圧バネ42は、温度に対してその特性は変化しないが、実線で示したように、感温バネ5は温度に応じて特性が変化する。そして、この両方の合成により差圧相当荷重(蒸発飽和状態)が変化する。
【0039】
図11は感温差圧弁4の隔壁15(差圧ポート15a′)からのリフト特性を示す図であり、二点差線で示したグラフは第2実施形態の差圧弁4(差圧バネ42)のみの特性、実線で示したグラフは感温差圧弁4(差圧バネ42と感温バネ5)による特性を示している。図のように、感温差圧弁4は第2実施形態に加えて、蒸発器20の出口の温度(蒸発温度)による効果も呈していることが分かる。
【0040】
なお、各実施形態の電磁弁1は、図12に示した冷却システムのみならず、前掲の図14に破線で示した部分に設けるようにしてもよいことはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の第1実施形態の電磁弁の冷蔵モード時の断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態の電磁弁の冷凍モード時の断面図である。
【図3】本発明の実施形態の冷却システムにおけるモリエル線図である。
【図4】本発明の第2実施形態の電磁弁の冷蔵モード時の断面図である。
【図5】本発明の第2実施形態の電磁弁の冷凍モード時の断面図である。
【図6】本発明の第2実施形態における差圧弁の斜視図である。
【図7】本発明の第2実施形態における差圧弁の特性図である。
【図8】本発明の第3実施形態の電磁弁の冷蔵モード時の断面図である。
【図9】本発明の第3実施形態の電磁弁の冷凍モード時の断面図である。
【図10】本発明の第3実施形態における感温差圧弁の特性図である。
【図11】本発明の第3実施形態における感温差圧弁の隔壁からのリフト特性を示す図である。
【図12】本発明の各実施形態における冷却システムの要部を示す図である。
【図13】従来の冷却システムの一例を示す図である。
【図14】従来の冷却システムの他の例を示す図である。
【符号の説明】
【0042】
1 電磁弁
4 差圧弁(感温差圧弁)
5 感温バネ
10 圧縮機
11 導入ポート
12 導出ポート
13 弁室
14 主弁
15 隔壁
15a 差圧ポート
16 主弁座
20 蒸発器
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を導入する導入ポートと冷媒を導出する導出ポートとの間で主弁を開閉する主弁部を備え、該主弁部の開状態で導入ポートと導出ポートとを略同圧に連通する電磁弁において、
前記主弁部の近傍に、該主弁部が閉状態の時に前記導入ポートと導出ポートとの間に差圧を発生させて該導入ポートと導出ポートとを導通する差圧発生部を設けたことを特徴とする電磁弁。
【請求項2】
前記差圧発生部が、前記導入ポートの冷媒が通過する断面積より面積を小さく開口され前記導入ポートと前記導出ポートとの間に形成された差圧ポートであることを特徴とする請求項1に記載の電磁弁。
【請求項3】
前記差圧発生部が、前記導入ポートと前記導出ポートとの間で該導入ポートと導出ポートとの差圧に応じて開閉動作する差圧弁機構であることを特徴とする請求項1に記載の電磁弁。
【請求項4】
前記差圧発生部が、前記導入ポートと前記導出ポートとの間で該導入ポートの冷媒温度に応じた前記差圧を発生させる感温差圧弁機構であることを特徴とする請求項1に記載の電磁弁。
【請求項5】
前記感温差圧弁機構が形状記憶合金で形成された感温バネにより差圧弁を付勢するように構成されていることを特徴とする請求項4に記載の電磁弁。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の電磁弁を用いた冷却システムであって、
該冷却システムにおける冷凍サイクルの蒸発器と圧縮機との間で、前記電磁弁の前記導入ポートが前記蒸発器の出口側に接続されるとともに、該電磁弁の前記導出ポートが前記圧縮機の吸入口側に接続され、
該電磁弁の前記差圧は前記蒸発器の適正蒸発温度を確保するように設定され、
前記蒸発器の冷却能力に応じて前記電磁弁の前記主弁部を開閉制御することを特徴とする冷却システム。
【請求項1】
冷媒を導入する導入ポートと冷媒を導出する導出ポートとの間で主弁を開閉する主弁部を備え、該主弁部の開状態で導入ポートと導出ポートとを略同圧に連通する電磁弁において、
前記主弁部の近傍に、該主弁部が閉状態の時に前記導入ポートと導出ポートとの間に差圧を発生させて該導入ポートと導出ポートとを導通する差圧発生部を設けたことを特徴とする電磁弁。
【請求項2】
前記差圧発生部が、前記導入ポートの冷媒が通過する断面積より面積を小さく開口され前記導入ポートと前記導出ポートとの間に形成された差圧ポートであることを特徴とする請求項1に記載の電磁弁。
【請求項3】
前記差圧発生部が、前記導入ポートと前記導出ポートとの間で該導入ポートと導出ポートとの差圧に応じて開閉動作する差圧弁機構であることを特徴とする請求項1に記載の電磁弁。
【請求項4】
前記差圧発生部が、前記導入ポートと前記導出ポートとの間で該導入ポートの冷媒温度に応じた前記差圧を発生させる感温差圧弁機構であることを特徴とする請求項1に記載の電磁弁。
【請求項5】
前記感温差圧弁機構が形状記憶合金で形成された感温バネにより差圧弁を付勢するように構成されていることを特徴とする請求項4に記載の電磁弁。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の電磁弁を用いた冷却システムであって、
該冷却システムにおける冷凍サイクルの蒸発器と圧縮機との間で、前記電磁弁の前記導入ポートが前記蒸発器の出口側に接続されるとともに、該電磁弁の前記導出ポートが前記圧縮機の吸入口側に接続され、
該電磁弁の前記差圧は前記蒸発器の適正蒸発温度を確保するように設定され、
前記蒸発器の冷却能力に応じて前記電磁弁の前記主弁部を開閉制御することを特徴とする冷却システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2006−316913(P2006−316913A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−140813(P2005−140813)
【出願日】平成17年5月13日(2005.5.13)
【出願人】(000143949)株式会社鷺宮製作所 (253)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年5月13日(2005.5.13)
【出願人】(000143949)株式会社鷺宮製作所 (253)
【Fターム(参考)】
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