説明

電磁的にシーリングされた電気的構成部分を備えたセンサモジュール

【課題】大きなアース面によるアースシーリングを備えたモジュールを提供すること。
【解決手段】内側ハウジンと外側ハウジングの間に設けられたバスタブ状の合成構成部分を有しており、当該合成構成部分内に、前記内側ハウジングが背面以って組み込まれており、前記合成構成部分は絶縁バスタブと、絶縁バスタブの内面に、少なくともバスタブ底面に形成されたアース面とを有しており、当該アース面は前記電気的構成部分の背面のシーリングを形成する、ことを特徴とするモジュール。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気的構成部分を備えたモジュールに関する。このモジュールは、電気的構成部分を取り囲んでおり、前面と背面とを有している内側ハウジングと、その内部空間に前記内側ハウジングが配置されている外側ハウジングと、電気的構成部分を電磁的にシーリングするために設けられた第1および第2の大面積のアース面とを有している。ここでこの第1のアース面と第2のアース面は相互に対向して配置されている。ここで電気的構成部分は、これら2つのアース面の間に配置されている。本発明はさらに、このようなモジュールを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気的構成部分を取り囲み、前面と背面を有している内側ハウジングと、その内部に当該内側ハウジングが配置されている外側ハウジングと、電気的構成部分を電磁的にシーリングする第1および第2のアース面とを有しており、第1および第2のアース面が向かい合って配置されており、当該2つのアース面の間に電気的構成部分が配置されている、電気的構成部分を有するモジュールが、例えばDE102007031562A1号に開示されている。このようなモジュールは殊に、センサモジュールとして、例えば自動車内の周辺加速度センサ用に使用される。
【0003】
従って、既知のセンサモジュールでは、電子回路の電磁環境両立性防御は、2つのアース面の間のシーリングを介して実現されている。下方のアース面は例えば、プリント回路基板上のグランド(GND)層によって形成され、プリント回路基板が無い場合には、モジュールの接続ピンの平らに成形された部分によって形成される。上方のアース面はセンサICの打ち抜き格子(リードフレーム)によって形成される。
【0004】
今後のエアバッグセンサでは、電子回路は、別個の製造ステーションにおいて、金属製挿入部分(リードフレーム)と接触接続されるべきである。この挿入部分は同時に、モジュールの差し込みコンタクトを形成する。電子回路と挿入部分とから成る結合体は、エラストマーカバーによって取り囲まれ、その後、熱可塑性樹脂が、射出成形を用いて被覆される。第1の成分および第2の成分を用いた射出成形被覆によるモジュールの外側ハウジングの製造は、特別な2成分射出成形工具において行われ、これによって、連続した製造プロセスが保証される。しかしこのような「2成分直接射出成形被覆」技術では、既知の様式のアースシーリング、すなわち大きなアース面を伴うアースシーリングは実現されない。なぜなら、幅の狭い金属製挿入部分のみが射出成形工具において処理され、電磁環境両立性によるノイズ脆弱性が相応に高くなるからである。ハウジングされたセンサチップを全面で金属化すること(EMCコーティング)も、自動車用途に対する今日の従来技術では、適していない。なぜなら、これによって差し込みピンの間で短絡が生じてしまうからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】独国特許出願公開第102007031562号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願発明の課題は、大きなアース面によるアースシーリングを備えたモジュールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題は、内側ハウジンと外側ハウジングの間にバスタブ状の合成構成部分が設けられており、当該合成構成部分内に、内側ハウジングが背面で以って組み込まれており、前記合成構成部分は絶縁バスタブと、絶縁バスタブの内面に、少なくともバスタブ底面に形成されたアース面とを有しており、当該アース面は前記電気的構成部分の背面のシーリングを形成する、ことを特徴とするモジュールによって解決される。さらに、上述の課題は、内側ハウジングを背面で以ってバスタブ形状の合成構成部分内に組み込み、内側ハウジングが組み込まれた前記合成構成部分を、前記電気的構成部分の接触接続のために、リードフレーム内に取り付け、次に、合成構成部分と、リードフレームと、電気的構成部分を具備している内側ハウジングとから成る結合体を、外側ハウジングを製造するために射出成形によって被覆する、モジュールの製造方法によって解決される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】MID合成構成部分を備えた本発明のモジュールの断面図
【図2】図1に示されたモジュールの側面図
【図3】図1および2に示されたモジュールのMID構成部分の斜視図
【図4】図3に示されたMID構成部分の展開図
【図5】本発明によるモジュール(まだ外側ハウジングが設けられていない)の1つの実施形態の斜視図
【図6】本発明によるモジュールを製造する方法をあらわすフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0009】
請求項1に記載された、本願発明のモジュールでは、上位概念に記載された特徴に加えて、内側ハウジングと外側ハウジングとの間に、バスタブ状の合成構成部材が設けられている。この合成構成部材内には内側ハウジングが背面でもって組み込まれている。ここでこの合成構成部分は絶縁バスタブとアース面とを有している。このアース面は、絶縁バスタブの内面に、少なくともバスタブ底面に形成されており、電気的構成部分の背面のシーリングを形成する。
【0010】
このようにして本願発明に相応して、モジュール、殊にセンサモジュール用の効果的かつ頑強な電磁環境両立性シーリングが実現される。バスタブ形状の合成構成部分の内面に導電性の領域を設けることによって、電気的構成部分の周りに完全なアースゲージを形成することができる。しかも、リードフレーム上で短絡が生じることはない。
【0011】
本願発明の、特に有利な実施形態では、合成構成部分はMID(Molded Interconnect Device)構成部分として構成されている。従って、アース面はそれ自体公知の方法によって、絶縁バスタブの内面の金属によって実現される。
【0012】
別の有利な実施形態では、外側ハウジングは電気的なコンタクト手段を有している。これは、外側ハウジングの内側から少なくとも外面へ向かって延在している。ここで、コンタクト手段の少なくとも一部は、合成構成部分のバスタブ底面の外壁に接して配置されている。この実施形態は殊に、MID構成部分の内側金属化部とMID構成部分のバスタブ底面の外壁に接して配置された電気的なコンタクト手段との間の、電気的な接続のための容易な手段を提供する。これは例えば、合成構成部分のバスタブ底面内に設けられる貫通接触接続部によって行われる。択一的または付加的に、この電気的な接続は、バスタブ縁部上にガイドされる少なくとも1つの導体路によって、および/またははんだ箇所によって実現される。
【0013】
本願発明の別の構成要件は、上述した様式のモジュールを製造する方法である。ここでは、内側ハウジングを背面でもって、バスタブ形状の合成構成部分内に組み込む。その後、この組み込まれた内側ハウジングを備えた合成構成部分を、電気的構成部分の接触接続のためにリードフレーム内に取り付け、次に、合成構成部分とリードフレームと電気的構成部分を備えた内側ハウジングとからなる結合体を、外側ハウジングを形成するために射出成形によって被覆する。従って元来のセンサ素子(電気的構成部分を備えた内側ハウジング)に、その製造時に、有利には付加的な処理を行う必要がない。合成構成部分、例えばMID構成部分の製造を同じように、センサ素子製造に依存しないで、現行の製造方法において行うことができる。
【0014】
上述した製造方法の発展形態は特に有利であり、ここでは、合成構成部分と、リードフレームと、電気的構成部分を備えた内側ハウジングとから成る結合体は、外側ハウジングを形成するために、2成分射出成形方法において、はじめにエラストマーによって射出成形され、次に熱可塑性樹脂によって射出成形被覆される。これによって有利には、アースシーリング(内面金属化部8)の面積が大きいのにもかかわらず、外側ハウジング5の製造を、それ自体公知の2射出方法において行うことが可能になる。
【0015】
本発明を以下で、実施例に基づいてより詳細に説明する。
【実施例】
【0016】
図1は、本願発明のモジュールを示している。ここではまずは、前面3並びに背面4を備えている内側ハウジング2が見て取れる。内側ハウジング2は自身の背面4によって、バスタブ形状のMID構成部分6内に組み込まれている。ここには図示されていない電気的構成部分1(図2を参照)は内側ハウジング2内に次のように配置されている。すなわち、電気的構成部分1の前面が、内側ハウジング2の前面3に向けられるように配置されている。内側ハウジング2の前面3の領域内に、第1のアース面7(図2を参照)が配置されている。これは、電気的構成部分1の前面の電磁的なシーリングに用いられる。電気的構成部分1の別の面、殊に背面をシーリングするために、MID構成部分6の内面ないしは内壁に、連続した金属化部8が設けられる。この金属化部8はアース面として用いられる。貫通接触接続部9によって、内面金属化部8と、MID構成部分6のバスタブ底面の外壁上の局部的に制限された金属化部10との間に電気的な接続が形成される。このようにして、電気的な接続が内面金属化部8とモジュールのアース接続端子11との間に形成され、他方で、電気的な接触接続が、内面金属化部8と信号接続端子12との間に生じない。挿入部11、12、13から成るリードフレームと、電気的な構成部分1を備えた内側ハウジング2と、MID合成構成部分6とから成る結合体には、図1に示されているように、射出成形方法によって、外側ハウジング5が設けられる。元来のセンサ素子は、センサチップ1および内側ハウジング2の他に、金属製の導体路を備えた担体基板(LGA)として(元来の)積層部を有することができる。
【0017】
図3は、斜視図で、合成構成部分6を示している。この合成構成部分6は図4において、より分かりやすくするために、展開図において、2つのコンポーネントに分けて示されている。図4の上方では、内面金属化部8と、バスタブ底面の外面に対して設けられている部分的な金属化部10と、この2つの金属化部を電気的に接続する貫通接触接続部9とが示されている。これに対して図4の下方には、合成構成部分6の絶縁バスタブ17が示されている。付加的に、図4のこの部分において、絶縁バスタブ17の縁部上に被せられている幅の広い導体路14が示されている。この導体路14は、モジュールの内面金属化部8とアース接続端子11との間の別の電気的接続手段を実現する。
【0018】
図5は、バスタブ底面以外のMID合成構成部分6の外壁に、内面金属化部8と電気的に接続されている部分的金属化部16が構成されており、この部分的金属化部16がはんだ付け箇所15によってアースピン11と電気的に接続されていることを示している。このようにして、内面金属化部8に対するGNDピン11の接続の導電性および確実性が高まる。このステップを、センサ素子(LGA)2、1と挿入部分11、12および13とのはんだ接続と並行して行うことができる。付加的な製造コスト(コンタクト箇所15での調量はんだ付けペースト)はこの場合には無視できるほど少ない(調量ニードルの付加的な走行運動のみ)。
【0019】
二線インタフェースを備えたセンサでは、差し込みピン11は基本的にGND結合を形成する。従ってこれは上述したように、所期のようにタップされ、センサ素子2および1のシーリングのために使用される。
【0020】
図6はフローチャートにおいて、モジュールの製造方法を示している。ステップS0では、事前に製造されたセンサ素子1および2、ないしLGAが例えば射出成形方法によって、内側ハウジング2によって覆われる。これに依存せずに、ステップS1では、選択的に金属化された合成構成部分6(例えばMID構成部分)の製造が行われる。ここで、プラスチック構成部分6を選択的に金属化する既知の方法、たとえば2成分射出成形方法が使用される。次にステップS2では、背面4を備えた内側ハウジング2がバスタブ状の合成構成部分6内に挿入される。従って合成構成部分6の装着は、非常に容易に行われる。
【0021】
次のステップS3では、内側ハウジング2を備えた合成構成部分6が、電気的構成部分1の接触接続のために、リードフレーム11、12、13内に取り付けられる。
【0022】
モジュールの外側ハウジング5の製造時は、有利には次のように行われる。すなわち、合成構成部分6と、リードフレーム11、12、13と、電気的構成部分1を備えた内側ハウジング2とから成る、事前に取り付けられている結合体が、それ自体公知の2成分射出成形方法において、まずはステップS4においてエラストマーによって被覆され、次にステップS5において熱可塑性樹脂によって被覆される。
【符号の説明】
【0023】
1 電気的構成部分、 2 内側ハウジング、 3 前面、 4 背面、 5 外側ハウジング、 6 合成構成部分、 7 第1のアース面、 8 内面金属化部、 9 貫通接触接続部、 10 金属化部、 11、12、13 リードフレーム、 14 導体路、 15 はんだ付け箇所、 16 部分的金属化部、 17 絶縁バスタブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気的構成部分(1)を有するモジュールであって、
・前記電気的構成部分(1)を取り囲み、前面(3)と背面(4)を有している内側ハウジング(2)と、
・内部に当該内側ハウジング(2)が配置されている外側ハウジング(5)と、
・前記電気的構成部分(1)を電磁的にシーリングする第1および第2のアース面とを有しており、当該第1および第2のアース面は向かい合って配置されており、前記電気的構成部分(1)が当該2つのアース面の間に配置されている形式のものにおいて、
前記内側ハウジンと外側ハウジング(2、5)の間に設けられたバスタブ状の合成構成部分(6)を有しており、当該合成構成部分内に、前記内側ハウジング(2)が背面(4)でもって組み込まれており、
前記合成構成部分(6)は絶縁バスタブ(17)と、当該絶縁バスタブの内面に、少なくともバスタブ底面に形成されたアース面(8)とを有しており、当該アース面は前記電気的構成部分(1)の背面のシーリングを形成する、
ことを特徴とするモジュール。
【請求項2】
前記バスタブ状の合成構成部分(6)はMID構成部分として構成されており、前記アース面(8)は内面金属化部として構成されている、請求項1記載のモジュール。
【請求項3】
前記外側ハウジング(5)は電気的なコンタクト手段(11、12)を有しており、当該コンタクト手段は、内側から前記外側ハウジング(5)の少なくとも1つの外面へと延在しており、
当該コンタクト手段(11、12)の少なくとも一部は、前記合成構成部分(6)のバスタブ底面の外壁に接して配置されている、請求項1または2記載のモジュール。
【請求項4】
前記MID構成部分(6)のバスタブ底面に少なくとも1つの貫通接触接続部(9)が設けられており、当該貫通接触接続部(9)は、前記MID構成部分(6)の内面金属化部(8)と、前記MID構成部分(6)のバスタブ底面の外壁に配置されている電気的コンタクト手段(11、12)との間の電気的接続のために設けられている、請求項3記載のモジュール。
【請求項5】
前記MID構成部分(6)のバスタブ底面の外壁は部分的に、前記貫通接触接続部(9)の領域において金属化されている、請求項4記載のモジュール。
【請求項6】
バスタブ縁部上にガイドされている少なくとも1つの導体路(14)が設けられており、当該導体路は、前記MID構成部分(6)の内面金属化部(8)と前記MID構成部分(6)のバスタブ底面の外壁に接して配置されている電気的コンタクト手段(11)との間の電気的接続のために設けられている、請求項3から5までのいずれか1項記載のモジュール。
【請求項7】
前記バスタブ底面以外の前記MID構成部分(6)の外壁に、部分的金属化部(16)が構成されており、当該部分的金属化部(16)が前記内面金属化部(8)と電気的に接続されており、
当該部分的金属化部(16)ははんだ付け箇所(15)を用いて、前記電気的コンタクト手段(11)と電気的に接続されている、請求項3から6までのいずれか1項記載のモジュール。
【請求項8】
前記電気的コンタクト手段(11、12、13)はリードフレームとして構成されており、前記MID構成部分(6)は当該リードフレームと前記内側ハウジング(2)との間にクランプ結合されている、請求項3から7までのいずれか1項記載のモジュール。
【請求項9】
前記モジュールはセンサモジュールであって、
前記電気的構成部分(1)は、殊にマイクロメカニカル技術によって製造されたセンサである、請求項1から8までのいずれか1項記載のモジュール。
【請求項10】
請求項1から9までのいずれか1項に記載された、電気的構成部分(1)を備えたモジュールの製造方法であって、
内側ハウジング(2)を背面(4)でもってバスタブ形状の合成構成部分(6)内に組み込み、
内側ハウジング(2)が組み込まれた前記合成構成部分(6)を、前記電気的構成部分(1)の接触接続のために、リードフレーム(11、12、13)内に取り付け、
次に、合成構成部分(6)と、リードフレーム(11、12、13)と、電気的構成部分を具備している内側ハウジング(2)とから成る結合体を、外側ハウジング(5)を製造するために射出成形によって被覆する、
ことを特徴とする、モジュールの製造方法。
【請求項11】
合成構成部分(6)と、リードフレーム(11、12、13)と、電気的構成部分を具備している内側ハウジング(2)とから成る前記結合体を、外側ハウジング(5)を製造するために、2成分射出成形方法において、はじめにエラストマーによって射出成形被覆し、次に熱可塑性樹脂によって射出成形被覆する、請求項10記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−39119(P2012−39119A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−174024(P2011−174024)
【出願日】平成23年8月9日(2011.8.9)
【出願人】(390023711)ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング (2,908)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】