説明

静電チャックシステムおよび基板表面に亘って温度プロファイルを半径方向に調整するための方法

基板表面に亘って所望の温度プロファイルを維持するための静電チャックシステムが開示されている。静電チャックシステムは、ペデスタル支持部の表面に亘って実質的に均一な温度プロファイルを画定するペデスタル支持部と、ペデスタル支持部によって支持されている静電チャックとを有する。静電チャックは、クランプ電極および独立に制御される複数の加熱電極を含む。独立に制御される加熱電極は、内部加熱領域を画定する内部加熱電極、および、ギャップ距離によって分離されている周辺部加熱領域を画定する周辺部加熱電極を含む。ペデスタル熱領域、内部加熱領域、周辺部加熱領域の熱特性を変化させる、または、内部加熱電極および周辺部加熱電極間のギャップ距離の大きさを変化させることにより、基板表面に亘る温度プロファイルを調整することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電チャックシステムおよび基板表面に亘って温度プロファイルを半径方向に調整するための方法に関する。
【0002】
優先権主張
本出願は、2009年2月4日に出願された米国仮特許出願第61/149,876の優先権の利益を主張するものであり、その内容は本出願に全て組み込まれる。
【0003】
背景技術
様々なタイプの加工対象物や基板を処理するための、多種多様な処理チェンバが利用可能である。基板は、例えば、ガラスプレート、フィルム、リボン、太陽電池パネル、ミラー、液晶ディスプレイ、半導体ウェーハなどを有することができる。例えば、集積回路チップの製造中に半導体ウェーハを処理するために、多種多様なタイプの処理チェンバが利用可能である。処理チェンバは、ウェーハのアニール、および、化学気相成長法の実行、プラズマ化学気相成長法、エッチング処理、および、他の蒸着処理を実施するために使用される。
【0004】
典型的には、チェンバは、処理中に基板を保持する静電チャックアセンブリなどの基板保持部を有する。典型的な静電チャックは、誘電体層によってカバーされる一つ以上のクランプ電極を有する。クランプ電極は、静電チャックの上面上に基板を保持する静電クランプ力を生じさせるために使用される。基板がチャック上にしっかりと保持された時点で、処理用のガスがチェンバに導入され、基板を処理するためにプラズマが形成される。基板は、CVD、PVD、エッチング、打ち込み、酸化処理、窒化物形成処理、または、他の処理によって処理される。
【0005】
多くの場合、処理中に基板の温度を制御することが望まれる。例えば、基板の温度が均一であり、その温度が所望のレートで増減し、かつ、所望の最大値および最小値まで増減するならば、処理を最適化することができる。いくつかの実施形態においては、基板を複数の加熱領域に分割し、加熱領域はそれぞれ異なる温度に維持され、基板の処理中に基板表面に亘って異なる加熱効果を補償することが望まれる。例えば、基板は、内部加熱領域および周辺部加熱領域を有し、基板の周辺部で生じる付加的な熱損失を補償するために、周辺部加熱領域は内部加熱領域よりも高温に維持されている。隣接する加熱領域が異なる温度に維持されている状況においては、処理中に加熱効果の変化をより適切に補償するために、隣接する加熱領域間で、急峻なもしくは傾きが非常に大きい温度勾配を有していることが好ましい。
【0006】
従って、基板表面に亘って温度プロファイルを半径方向に調整もしくは制御することを可能にし、かつ、隣接する加熱領域間の急峻な温度勾配を提供する、静電チャックアセンブリが必要とされている。
【0007】
要約
本発明の態様および利点は、以下の記載においてその一部分が説明されており、または、その記載から明らかとなり、または、本発明の実施を通して獲得されるであろう。
【0008】
本発明に開示の一実施例では、基板表面に亘って温度プロファイルを維持するためのシステムが提供される。システムは、ペデスタル支持部を有し、ペデスタル支持部は、ペデスタル熱制御システムの出力に基づく熱特性を有するペデスタル熱領域を提供するように形成されているペデスタル熱制御システムを有する。ペデスタル熱領域は、ペデスタル支持部の表面に亘って実質的に均一な温度プロファイルを画定する。静電チャックアセンブリは、ペデスタル支持部によって支持されている静電チャックをさらに含む。静電チャックは、クランプ電極および複数の加熱電極を含む。加熱電極は、内部加熱電極、および、ギャップ距離によって分離される周辺部加熱電極を含む。内部加熱電極は、内部加熱電極の出力に基づく熱特性を有する内部加熱領域を画定する。周辺部加熱電極は、周辺部加熱電極の出力に基づく熱特性を有する周辺部加熱領域を画定する。静電チャックアセンブリは、ペデスタル熱制御システム、内部加熱電極、または、周辺部加熱電極の少なくとも1つの出力を変化させることによって、基板表面に亘って温度プロファイルを調整するための制御システムを含む。
【0009】
この特定の実施形態の変形例において、制御システムは、ペデスタル熱制御システム、内部加熱電極、または、周辺部加熱電極の少なくとも1つの出力を変化させることにより、内部加熱領域と周辺部加熱領域との間の温度勾配を調整するように形成されていてもよい。
【0010】
本実施形態の他の変形例において、クランプ電極は、単極電極または双極電極であればよい。静電チャックアセンブリは、低い熱伝導率を有する、酸化アルミニウムなどのセラミック材料を主として含んでいてもよい。静電チャックの上面は、隆起した周辺部シールリングと、隆起した周辺部シールリングの高さとほぼ等しい高さを有する複数のメサと、を有する。
【0011】
本実施形態のさらなる他の変形例において、ペデスタル熱制御システムは、熱交換流体を循環させるための流体チャネルを有してもよい。例えば、熱制御システムは、ペデスタル支持部の表面に亘って、実質的に均一な温度プロファイルを提供するように制御される、内部流体チャネルおよび周辺部流体チャネルを有してもよい。ペデスタル熱領域の熱特性は、ペデスタル熱制御システムの出力を調整する、例えば、流体チャネルを介して流れる流体の流れまたは温度を調整することによって変化する。
【0012】
本実施形態のさらなる他の変形例において、静電チャックは、内部加熱電極と周辺部加熱電極との間に、追加の加熱電極を有していてもよい。内部加熱電極と周辺部加熱電極との間のギャップ距離は、追加の加熱電極に電圧を印加することによって調整され得る。制御システムは、ギャップ距離の大きさを調整することによって、内部加熱領域と周辺部加熱領域との間の温度勾配を調整するように形成されていてもよい。
【0013】
本発明に開示の他の実施例では、処理中に基板表面に亘って温度プロファイルを維持するためのシステムが提供される。システムは、ペデスタルの表面に亘って実質的に均一な温度プロファイルを画定するペデスタルと、クランプ電極および複数の加熱電極を有する静電チャックとを含む。加熱電極は、内部加熱領域を画定する内部加熱電極と、周辺部加熱領域を画定する周辺部加熱電極とを含む。内部加熱電極および周辺部加熱電極は、周辺部加熱領域と内部加熱領域との間に温度勾配を生じさせるのに十分な大きさを有するギャップによって分離される。周辺部加熱領域の温度が、内部加熱領域の温度より約28.5℃高く維持されている場合に、温度勾配は少なくとも6℃/cmである。例えば、温度勾配は少なくとも10℃/cmであればよい。この実施例の変形として、ギャップ距離は、約15mmから約35mmであり、例えば、約18mmから約30mmであり、例えば、約20mmであり、または、これらの間の任意の他の距離もしくは他の範囲であればよい。
【0014】
本発明に開示のさらなる実施例では、基板表面に亘って温度プロファイルを調整する方法が提供される。方法は、ペデスタルによって支持される静電チャックを有する静電チャックアセンブリ上に、基板を配置するステップを含む。静電チャックは、クランプ電極、および、内部加熱領域を画定する内部加熱電極および周辺部加熱領域を画定する周辺部加熱電極を有する。内部加熱電極および周辺部加熱電極は、ギャップ距離によって分離されている。方法は、クランプ電極に電圧を印加することによって、静電チャックアセンブリ上に基板をクランプするステップと、内部加熱電極と周辺部加熱電極との間のギャップ距離の大きさを変化させることによって、内部加熱領域と周辺部加熱領域との間の温度勾配を調整するステップと、をさらに有する。
【0015】
この実施例の変形では、内部加熱電極と周辺部加熱電極との間のギャップ距離の大きさは、内部加熱電極と周辺部加熱電極との間に配置された追加の加熱電極に電圧を印加することにより変更され得る。この実施例の他の変形において、内部加熱電極または周辺部加熱電極に供給される電力を調整する、または、ペデスタルを介して流れる熱伝導流体の流れおよび温度を調整することによって、内部加熱領域と周辺部加熱領域との間の温度勾配が調整される。
【0016】
本発明の、上記および他の特徴、態様、および利点は、以下の記載および添付の請求項を参照することにより、さらによく理解されよう。本明細書に組み込まれかつ本明細書の一部を構成する添付の図面は、本発明の実施形態を図示し、発明の詳細な説明と共に本発明の原則を説明する一助となるものである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施例による、静電チャックアセンブリの側面図。
【図2】本発明の実施例による、ペデスタル支持部の例を示す平面図。
【図3】本発明の実施例による、静電チャックアセンブリの側面図。
【図4】本発明の実施例による、静電チャッククランプ表面を示す図。
【図5】本発明の実施例による、層状静電チャックを示す図。
【図6】本発明の実施例による、クランプ電極のパターン例の平面図。
【図7】本発明の実施例による、加熱電極のパターン例の平面図。
【図8】本発明の実施例による、基板表面に亘る温度プロファイルのグラフ表示を示す図。
【図9】本発明の実施例による、内部加熱電極と周辺部加熱電極との間の可動体を設けた加熱電極の構成を示す図。
【図10】様々なギャップ距離に対する、基板の中心からの距離の関数としてプロットされた、基板の温度差を表す図。
【図11】様々なギャップ距離に対する、基板の中心からの距離の関数としてプロットされた、基板の温度差を表す他の図。
【図12】内部電極に加えられる電力量の変化に対する、基板の中心からの距離の関数としてプロットされた、基板の温度差を表す他の図。
【0018】
発明の詳細な説明
当業者に向けた、最良の形態を含む本発明の完全かつ実現可能な開示内容が、明細書において添付の図面を参照しつつ説明される。
【0019】
次に、本発明の実施形態が詳細に記載され、1つ以上の実施例が図面に示されている。各実施例は本発明を説明する目的のものであり、本発明を制限するものではない。実際、本発明の範囲または精神から離脱することなく、本発明の様々な変形または変更を行うことが可能であることは、当業者には明らかであろう。例えば、一実施形態の一部分として図示または記載されている特徴は、さらなる実施形態を生み出すために他の実施形態に使用してもよい。従って、本発明では、添付の請求項の範囲およびそれらに相当する範囲に入るものとして、上記のような変形および変更も含むことが意図される。
【0020】
本発明の開示において、通常は、静電チャックシステム、および、基板を支持し、かつ、処理中に基板表面に亘って所望の温度プロファイルを維持するための方法を対象にしている。図8に、温度プロファイルの例が、基板の周辺端部からの距離の関数として示されている。温度プロファイルはまた、基板の中心からの距離の関数として示されてもよい。
【0021】
本実施例の静電チャックアセンブリは、ペデスタル熱領域を提供するように形成されたペデスタル熱制御システムを有するペデスタル支持部を含むことが可能である。ペデスタル熱領域は、ペデスタル支持部の表面に亘って実質的に均一な温度プロファイルを画定する。ペデスタル熱領域は、ペデスタル熱制御システムの出力に基づいた熱特性を有する。
【0022】
静電チャックアセンブリは、ペデスタル支持部によって支持されている静電チャックをさらに含んでいてもよい。静電チャックは、クランプ電極および独立に制御される複数の加熱電極を含んでもよい。独立に制御される加熱電極は、内部加熱電極および周辺部加熱電極を有する。内部加熱電極は、内部加熱電極の出力に基づく熱特性を有する内部加熱領域を画定する。周辺部加熱電極は、周辺部加熱電極の出力に基づく熱特性を有する周辺部加熱領域を画定する。
【0023】
内部加熱電極と周辺部加熱電極とは、ギャップによって分離されていてもよい。ここで使用されている距離との用語は、電圧が印加された加熱電極間の、距離を有する空間またはギャップを表す。ギャップ距離には、酸化アルミニウムなどの、熱伝導率の低い誘電体材料が存在していることが好ましい。また、ギャップ距離は、加熱電極間に可動体を有する静電チャックアセンブリの実施形態で記載されているように、電圧が印加されない追加の加熱電極を有していてもよい。ギャップ距離の大きさとは、電圧が印加された加熱電極間を分離する距離を表す。
【0024】
特定の実施形態において、静電チャックアセンブリは、ペデスタル熱制御システム、内部加熱電極、または、周辺部加熱電極の出力を変化させることによって、基板表面に亘って温度プロファイルを半径方向に調整もしくは適合するように形成された、制御システムを含む。また、制御システムは、加熱電極間のギャップ距離の大きさを変化させることによって、基板表面に亘って温度プロファイルを半径方向に調整もしくは適合するように形成されていてもよい。制御システムは、ペデスタル熱制御システム、内部加熱電極、または、周辺部加熱電極の出力を変化させるための、単一の制御器または複数の制御器を含み得る。
【0025】
静電チャックの様々な加熱領域は、異なる温度で維持されていてもよい。例えば、周辺部加熱領域の温度は、内部加熱領域の温度よりも高く維持されていてもよい。これらの環境では、内部加熱領域と周辺部加熱領域との間に温度勾配が存在する。温度勾配とは、基板の単位長さに亘って変化する、基板の温度量を意味する。例えば、6℃/cmの温度勾配とは、1cmの長さに亘って温度が6℃だけ変化することを意味する。
【0026】
本発明に開示の実施形態による静電チャックアセンブリにより、ペデスタル熱領域、内部加熱領域、および/または、周辺部加熱領域の少なくとも1つの熱特性を変化させる、または、内部加熱電極と周辺部加熱電極と間のギャップ距離の大きさを調整することによって、ユーザは、2つの加熱領域間の温度勾配を調整できる。このようにして、本発明の開示範囲の実施形態による静電チャックアセンブリにより、処理中に基板上で所望の温度勾配を得ることができる。
【0027】
図1を参照すると、一例として静電チャックアセンブリ100は、金属のペデスタル支持部200および静電チャック300を有する。ペデスタル支持部200は、静電チャック300を支持するための上面を有する。静電チャック300の上面またはクランプ表面310は、処理の間、基板400を支持する。基板400は、プラズマエッチング処理、熱処理、または他の処理が施された半導体ウェーハであってもよい。
【0028】
静電チャック300は、エラストマ接着剤を用いてペデスタル支持部200に取り付け可能である。この接着剤は、ペデスタル支持部200と静電チャック300との間の熱膨脹差から生じる応力を最小にするために、薄くなければならない。また、接着剤は、静電チャック300とペデスタル支持部200との間の十分な熱コンタクトを確保しなければならない。例えば、接着層は、約1.1W/mKの熱伝導率、および、約0.28mmの厚さを有していればよい。
【0029】
ペデスタル支持部200は、金属(例えば、アルミニウム)からなり、ペデスタル支持部200の上面全体に亘って実質的に均一な温度プロファイルを維持するための熱制御システムを有する。熱制御システムは、熱制御システムの出力に基づく熱特性を有するペデスタル熱領域を提供する。例えば、ペデスタル熱領域の熱特性は、ペデスタルを介して流れる熱交換流体の流れを調整する、または、ペデスタルを介して流れる熱交換流体の温度を調整することによって変化し得る。
【0030】
図1および2において、熱制御システムは、ペデスタルを介して熱交換流体を循環させるための2つの別個のチャネル220,240を含む。2つの別個のチャネル220,240は、均一なペデスタル熱領域を提供するために同じ温度で動作する。チャネル220,240の温度を同じ温度に維持するために、様々な温度制御デバイスを使用できる。例えば、2つのチャネル220,240は、これら両方のチャネルが同じ温度になるように制御する、単一のまたは2つのいずれかの再循環システムに接続されていてもよい。
【0031】
特定の実施形態においては、単一のチャネルでは十分な熱を取り出すことができないため、2つのチャネル220,240を使用することが好ましい。例えば、単一のチャネルでは長すぎて、単一のチャネルを介して移動する流体がチャネルに存在する前に、流体の熱特性に実質的な変化を生じさせることもある。さらに、流量が例えば3GPMに維持されている2つのチャネルは、流量が例えば6GPMに維持されている1つのチャネル(すなわち、ラインおよび接続部がより小さい)よりも容易に実装できる。ペデスタル支持部200は、ペデスタル本体内部に含まれる2つの別個のチャネル220,240を介して熱制御流体の2つの流れを循環させるための、2つの入力222,242、および、2つの出力224,244を有する。熱制御流体は、水グリコール系混合物または他の適切な熱交換流体であればよい。
【0032】
図3に示されているように、静電チャック300は、クランプ電極320および独立に制御される複数の加熱電極330を含む。クランプ電極320は、静電チャック300のクランプ表面310に基板400をクランプするための静電クランプ力を生じさせるために使用される。加熱電極330は、複数の加熱領域を画定するために使用される。複数の加熱電極330が独立に制御される場合に、出力を制御することによって、加熱領域の熱特性が調整される。
【0033】
静電チャック300は、セラミック材料を含む、様々な材料から形成され得る。静電チャック材料は、隣接する熱領域間の温度の急勾配を維持するために、低い熱伝導性を有することが好ましい。例えば、静電チャックは、組成がおよそAl94%かつSiO6%であるセラミック材料から形成されていればよい。
【0034】
静電チャック300は、セラミック層の間に配置された薄膜金属電極である3つまたは4つの層を有する、未焼成のセラミックまたは部分的に焼成されたセラミックの多層から形成されてもよい。例えば、図5には、多層のセラミック静電チャック300が示されている。静電チャック300は、2つのセラミック層の間に配置されているクランプ電極320、および、2つの異なるセラミック層の間に配置されている加熱電極330を有する。全てのセラミック層および電極には、完成した静電チャック300を形成するために、最後の焼成が施される。
【0035】
図4に示されているように、静電チャック300の最終の製造段階において、隆起したクランプ表面310を形成するステップを有していてもよい。静電チャック300の隆起したクランプ表面310は、隆起したクランプ表面310にクランプされた基板400の下面をほぼ封止する、隆起した周辺部リング312を含んでいてもよい。隆起した周辺部リング312は、例えば5μmの高さ313を有していてもよい。静電チャックの残りのクランプ表面310は、周辺部リング312の高さと等しい高さを有する多数のメサ315を含んでいてもよい。溝318によって、静電チャック300のクランプ表面310と、静電チャック300に取り付けられた基板400との間で、例えばヘリウムまたは他の熱伝導ガスなどの、熱伝導ガスが流れることが可能になる。
【0036】
静電チャック300は、ジョンソン−ラーベック型静電チャック、または、クーロン力型静電チャック300であればよい。ジョンソン−ラーベック型静電チャックでは、基板400と静電チャック300のクランプ表面310との間に、静電クランプ力が生じる。クーロン力型静電チャックでは、クランプ電極320と基板400との間に、静電クランプ力が生じる。
【0037】
クランプ電極320は、金属で作製できる。この金属は、例えば、タングステン、または、適切な熱膨張係数および電気抵抗特性の係数を有する他の金属である。さらに、クランプ電極320は、単一のセラミック層の表面上、または、隣接するセラミック層上に形成可能である。クランプ電極320は、スクリーン印刷、PVD、CVD、ALD、または、プラズマもしくはアーク溶射などの従来の層析出処理を用いて形成される。図5に示されるように、静電チャック300は、クランプ電極を電源に接続するための単一の柱状接続部325を有する。クランプ電極320のパターン例が、図6に示される。
【0038】
静電チャック300は、双極構成または単極構成のいずれかで動作可能である。例えば、単極構成の場合、単一の円盤形状のクランプ電極320は、2つのセラミック層の間に位置する。双極構成の場合、2つ以上のクランプ電極320は、2つのセラミック層の間に位置する。2つのクランプ電極が反対の極性を有する電源に接続されている場合、静電チャック300は双極静電チャックとして動作してもよい。2つの電極が共通の電源に接続されている場合、静電チャック300は、単極デバイスとして動作してもよい。
【0039】
図3に示されている静電チャック300は、静電チャック300に埋め込まれており、独立に制御される複数の薄膜状の抵抗加熱電極330を含む。加熱電極330は、タングステンまたは他の適切な金属などの金属で作製され、スクリーン印刷、PVD、CVD、ALD、または、プラズマもしくはアーク溶射などの従来の層析出処理を用いて形成される。各加熱電極330は、加熱電極330の出力に基づく熱特性を有する加熱領域を画定する。例えば、独立に制御される複数の加熱電極330は、内部加熱領域を画定する内部加熱電極334と、周辺部加熱領域を画定する周辺部加熱電極332とを含む。内部加熱電極334は、静電チャック300の中心に位置する円盤形状の加熱領域を画定する。周辺部加熱電極332は、内部加熱領域を囲むリング形状の加熱領域を画定する。内部加熱領域と周辺部加熱領域とは、ギャップ距離335で分離されている。図7には、本発明に開示の一実施形態に基づく加熱電極330のパターン例が示されている。
【0040】
内部加熱領域および周辺部加熱領域の熱特性は、内部加熱電極および周辺部加熱電極それぞれの出力を変化させることによって調整できる。例えば、内部加熱領域の熱特性は、内部加熱電極334に供給される電力量を調整することによって変化する。同様に、周辺部加熱領域の熱特性は、周辺部加熱電極332に供給される電力量を調整することによって変化する。内部および周辺部加熱領域の熱特性の調整能によって、基板の表面に亘って温度プロファイルを半径方向に調整することが可能になる。図5に示されているように、加熱電極330は、バイアス337、加熱バス336、および、単一の柱状接続部338を介して電源に接続されていてもよい。
【0041】
基板の温度プロファイルは、様々な温度測定技術を用いて測定可能である。例えば、基板の温度プロファイルは、静電チャックの上面近傍に位置する静電チャックの温度プロファイルを測定することによって近似できる。本発明の開示範囲全体に亘って、加熱領域の温度と記載した場合は、静電チャックの上面近傍の加熱領域に位置する静電チャックの温度のことを示す。
【0042】
一実施形態において、温度をモニタリングするために、光ファイバ温度センサを使用することもできる。この実施形態では、蛍光物質を含む小さなディスクが、温度に比例する予測可能な減衰率を有する光を放出する。蛍光物質でコーティングされたディスクは、静電チャック300のクランプ表面310近傍に位置し、測定により、静電チャック300のクランプ表面310にクランプされた基板400の温度が十分に予測可能となるようにする。光ファイバは、蛍光物質によって放射された光を確実に捕捉するために、蛍光物質でコーティングされたディスクから一定の距離だけ離れて配置される。
【0043】
図8は、基板表面に亘る所望の温度プロファイルの例を示す図である。図示されているように、周辺部加熱領域に対応する基板の周辺部の端部は、内部加熱領域に対応する基板の中心部の温度(T)よりも高い温度(T)を達成するように、調整されている。内部加熱領域と周辺部加熱領域との間には、急峻な温度勾配が存在する。
【0044】
本発明に開示の静電チャックアセンブリは、温度勾配が、従来技術において公知の基板ホルダによって得られる勾配よりも急峻になるように、内部加熱領域と周辺部加熱領域との間の温度勾配を調整するために使用され得る。例えば、内部加熱領域と周辺部加熱領域との間の温度勾配は、ペデスタル熱制御システム、内部加熱電極、または、周辺部加熱電極の出力を変化させることにより、調整可能である。また、出願人は、内部加熱電極と周辺部加熱電極との間のギャップ距離の大きさを変化させることで、温度勾配を調整できることを見出した。
【0045】
内部加熱電極と周辺部加熱電極との間のギャップ距離の大きさを変化させるための可動体が、図9に開示されている。可動体は、内部加熱電極334と周辺部加熱電極332との間に配置される追加の加熱電極336を含む。追加の加熱電極336のいずれにも電圧が印加されていない場合、ギャップ距離335の大きさは、内部加熱電極334と周辺部加熱電極332との間の距離に等しい。しかし、追加の加熱電極336に電圧が印加された場合、ギャップ距離は、ギャップ距離335からギャップ距離335’に調整される。ギャップ距離335’の大きさは、追加の加熱電極と周辺部もしくは内部加熱電極との間の距離であり、元のギャップ距離335の大きさよりも小さい。この可動体を用いて、内部加熱電極と周辺部加熱電極との間のギャップ距離の大きさを調整することにより、内部加熱領域と周辺部加熱領域との間の温度勾配を調整できる。このようにして、内部加熱領域と周辺部加熱領域との間の急峻なもしくは傾きが非常に大きい温度勾配を維持することができる。
【0046】
例えば、図10および11には、内部加熱領域と周辺部加熱領域との間の温度勾配について、内部加熱領域と周辺部加熱領域との間のギャップ距離の大きさを変化させることによる効果を示すシミュレーション結果が示される。シミュレーションを実行するに際に、周辺部加熱領域の温度は、内部加熱領域の温度より約28.5℃高く維持されている。図10および11には、内部加熱電極と周辺部加熱電極との間のギャップ距離を変化させた、静電チャックアセンブリのための静電チャックの中心からの距離の関数としてプロットされた温度差が示されている。図に示されているように、温度勾配の急峻さもしくは勾配の傾きの大きさは、内部加熱電極と周辺部加熱電極との間のギャップ距離の大きさに依存する。より具体的には、温度勾配は、2mmのギャップで約6℃/cmから35mmのギャップで約10℃/cmまで変化する。
【0047】
これらの例において、温度勾配は、基板の中心からの距離の関数としてプロットされる温度差曲線の傾きを計算することにより測定される。この傾きは、以下の式で表される、温度差曲線の中心50%に対して、温度差の変化を距離の変化で割ったものである。
【0048】
Slope=(T−T)/(d−d
ここで、T=0.75Tmax、T=0.25Tmax、dはTにおける中心からの距離、dはTにおける中心からの距離であり、Tmaxは最大温度差に等しい。図10および11に示された結果は、内部加熱領域と周辺部加熱領域との間の温度勾配が、内部加熱電極と周辺部加熱電極との間のギャップ距離の大きさに、少なくとも部分的に依存して調整可能であることを示している。
【0049】
温度勾配はまた、内部または周辺部加熱電極に供給される電力を変化させることで調整可能である。図12には、内部加熱電極に加えられるエネルギー量の変化に対する、20mmのギャップ距離を有する、静電チャックアセンブリのための基板の中心からの距離の関数としてプロットされた、基板表面の温度差が示されている。図12には、隣接する電極間でギャップを固定したままで、かつ、内部電極に供給されるエネルギーを変化させるのみで、温度勾配が1W/cmで約8℃/cmから3W/cmで約13.5℃/cmまで増加することが示されている。
【0050】
特定の実施形態およびその方法に関して、本発明の主題を詳細に記載してきたが、上述の記載を理解することで、これら実施形態の変更、変形、および、均等の実施形態を当業者が容易に生み出せることは理解されるであろう。従って、本開示範囲は、本発明を限定するものではなく、本発明の例示である。そして、本発明の開示範囲は、そのような変形、変更、および/または、追加が本発明の主題に含まれることを除外するものではなく、それは当業者には用意に理解されるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板表面に亘って温度プロファイルを調整するためのシステムにおいて、
ペデスタル熱領域を提供するように形成されているペデスタル熱制御システムを有するペデスタル支持部と、前記ペデスタル熱領域は、前記ペデスタル支持部の表面に亘って実質的に均一な温度プロファイルを画定し、前記ペデスタル熱領域は、前記ペデスタル熱制御システムの出力に基づく熱特性を有し、
前記ペデスタル支持部によって支持されている静電チャックと、前記静電チャックはクランプ電極および複数の加熱電極を有し、前記加熱電極はギャップ距離によって分離されている内部加熱電極および周辺部加熱電極を含み、前記内部加熱電極は前記内部加熱電極の出力に基づく熱特性を有する内部加熱領域を画定し、前記周辺部加熱電極は前記周辺部加熱電極の出力に基づく熱特性を有する周辺部加熱領域を画定し、
前記ペデスタル熱制御システム、前記内部加熱電極、または、前記周辺部加熱電極の出力の少なくとも1つを変化させることによって、前記基板表面に亘って前記温度プロファイルを調整するように形成されている制御システムと、
を備えることを特徴とする、システム。
【請求項2】
前記制御システムは、前記ペデスタル熱制御システム、前記内部加熱電極、または、前記周辺部加熱電極の少なくとも1つの出力を変化させることにより、前記内部加熱領域と前記周辺部加熱領域との間の前記温度勾配を調整するように形成されていることを特徴とする、請求項1記載のシステム。
【請求項3】
前記静電チャックは、酸化アルミニウムを有することを特徴とする、請求項1または2記載のシステム。
【請求項4】
前記ペデスタル熱制御システムは、熱交換流体を循環させるための流体チャネルを有することを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか1項記載のシステム。
【請求項5】
前記ペデスタル熱制御システムは、内部流体チャネルおよび周辺部流体チャネルを有し、前記内部流体チャネルおよび前記周辺部流体チャネルは、前記ペデスタル支持部の前記表面に亘って、実質的に均一な温度プロファイルを提供するように制御されることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか1項記載のシステム。
【請求項6】
前記静電チャックの前記上面は、隆起した周辺部シールリングと、前記隆起した周辺部シールリングの高さとほぼ等しい高さを有する複数のメサと、を有することを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか1項記載のシステム。
【請求項7】
前記静電チャックは、前記内部加熱電極と前記周辺部加熱電極との間に少なくとも1つの追加の加熱電極を有し、
前記制御器は、少なくとも1つの前記追加の加熱電極に電圧を印加することによって、前記内部加熱電極と前記周辺部加熱電極との間の前記ギャップ距離の大きさを調整するように形成されていることを特徴とする、請求項1乃至6のいずれか1項記載のシステム。
【請求項8】
前記制御器は、前記内部加熱電極と前記周辺部加熱電極との間の前記ギャップ距離の前記大きさを変更することによって、前記内部加熱領域と前記周辺部加熱領域との間の前記温度勾配を調整するように形成されていることを特徴とする、請求項1乃至7のいずれか1項記載のシステム。
【請求項9】
前記ギャップ距離は、前記周辺部加熱領域と前記内部加熱領域との間の温度勾配を生成するために十分な大きさを有し、
前記周辺部加熱領域の前記温度が、前記内部加熱領域の前記温度より約28.5℃高く維持されている場合に、前記温度勾配は少なくとも約6℃/cmの値を有する
ことを特徴とする、請求項1乃至8のいずれか1項記載のシステム。
【請求項10】
処理中に基板表面に亘って温度プロファイルを維持するためのシステムにおいて、
前記ペデスタルの表面に亘って実質的に均一な温度プロファイルを画定するペデスタルと、
クランプ電極および複数の加熱電極を有する静電チャックと、を備え、
前記加熱電極は、内部加熱領域を画定する内部加熱電極と、周辺部加熱領域を画定する周辺部加熱電極とを含み、
前記内部加熱電極および前記周辺部加熱電極は、前記周辺部加熱領域と前記内部加熱領域との間の温度勾配を生成するのに十分な大きさを有するギャップ距離によって分離され、
前記周辺部加熱領域の前記温度が、前記内部加熱領域の前記温度より約28.5℃高く維持されている場合に、前記温度勾配は少なくとも6℃/cmである
ことを特徴とする、システム。
【請求項11】
前記ギャップ距離は、約15mmから約35mmであることを特徴とする、請求項10記載のシステム。
【請求項12】
請求項1乃至11いずれか1項記載のシステムを用いて、基板表面に亘って温度プロファイルを半径方向に調整する方法において、
ペデスタルによって支持される静電チャックを備える静電チャックアセンブリ上に基板を配置するステップと、前記静電チャックは、クランプ電極、および、内部加熱領域を画定する内部加熱電極および周辺部加熱領域を画定する周辺部加熱電極を備え、前記内部加熱電極および前記周辺部加熱電極は、ギャップ距離によって分離されており、
前記クランプ電極に電圧を印加することによって、前記静電チャックアセンブリ上に前記基板をクランプするステップと、
前記内部加熱電極と前記周辺部加熱電極との間の前記ギャップ距離の前記大きさを調整することによって、前記内部加熱領域と前記周辺部加熱領域との間の前記温度勾配を調整するステップと、
を備えることを特徴とする、方法。
【請求項13】
前記内部加熱電極と前記周辺部加熱電極との間に配置された追加の加熱電極に電圧を印加することにより、前記ギャップ距離の大きさが調整されることを特徴とする、請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記内部加熱電極または前記周辺部加熱電極に供給される前記電力を変化させることにより、前記内部加熱領域と前記周辺部加熱領域との間の前記温度勾配を調整するステップをさらに備えることを特徴とする、請求項12または13記載の方法。
【請求項15】
前記ペデスタルを介して流れる前記熱伝導流体を調整することにより、前記内部加熱領域と前記周辺部加熱領域との間の前記温度勾配を調整するステップをさらに備えることを特徴とする、請求項12乃至14記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2012−517122(P2012−517122A)
【公表日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−549199(P2011−549199)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【国際出願番号】PCT/US2010/022465
【国際公開番号】WO2010/090948
【国際公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【出願人】(502278714)マットソン テクノロジー インコーポレイテッド (11)
【氏名又は名称原語表記】Mattson Technology, Inc.
【住所又は居所原語表記】47131 Bayside Parkway, Fremont, CA 94538, USA
【Fターム(参考)】