説明

非接触ICカードとその製造方法

【課題】生産性及び耐久性が改善され、かつカード品質や印画品質が改良された非接触ICカードとその製造方法を提供する。
【解決手段】2種以上の硬化性樹脂B1およびB2により少なくとも二重に封止されたICチップB3を含む非接触ICカードにおいて、ICチップB3の回路面に隣接する第一の硬化性樹脂B1と、第一の硬化性樹脂B1に隣接する第二の硬化性樹脂B2を含有し、第二の硬化性樹脂B2は、第一の硬化性樹脂B1により硬化が促進された樹脂であることを特徴とする非接触ICカード。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生産性及び耐久性が改善されかつカード品質や印画品質が改良された非接触ICカードとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
身分証明書カード(IDカード)やクレジットカードなどには、従来磁気記録方式によりデータを記録する磁気カードが広く利用されてきた。しかしながら、磁気カードはデータの書き換えが比較的容易にできるため、データの改ざん防止が十分でないこと、磁気のため外的な影響を受けやすく、データの保護が十分でないこと、さらに記録できる容量が少ないなどの問題点があった。
【0003】
そこで、近年ICチップを内蔵したICカードの普及が進展している。ICカードは、表面に設けられた電気接点やカード内部のループアンテナを介して外部の機器とデータの読み書きをする。ICカードは磁気カードに比べて記憶容量が大きく、セキュリティ性も大きく向上している。特に、カード内部にICチップと外部との情報のやりとりをするためのアンテナを内臓し、カード外部に電気接点を持たない非接触式ICカードは、電気接点をカード表面に持つ接触式ICカードに比べてセキュリティ性が優れ、IDカードのようにデータの機密性と偽変造防止性を高く要求する用途に使用されつつある。
【0004】
このようなICカードの作製方法として、生産性の向上等の観点から、ICチップやアンテナをホットメルト樹脂により2枚の基材間に封止してカード化する検討がされている(例えば特許文献1参照。)。
【0005】
しかしチップ回路面が露出したベアチップを用いる場合、チップの回路面の保護の為に樹脂封止によるモジュール化が必要で、一般的にエポキシ樹脂が使われている。ところが、従来の樹脂封止モジュールの周囲にホットメルト樹脂を配してカードを作製した場合、両樹脂間の界面の密着性が悪く、例えばカード曲げが繰り返された場合に容易に界面剥離が発生し、耐久性が劣化するという問題があった。
【0006】
又、カード化においては、支持体の搬送性、支持体の熱による収縮、反りなどによるカード基材搬送性の観点から硬化性樹脂(接着剤)を介して貼り合わせる場合に80℃前後の比較的低温で貼り合わせることが求められるため、低温硬化性樹脂の中でも湿気硬化型硬化性樹脂が好ましく用いられている。
【0007】
この硬化性樹脂は加熱により溶融させてから接着加工され、その後、湿気を吸収して硬化性樹脂自身が硬化する性質を有している。その特徴として、通常のホットメルト硬化性樹脂と比較して接着可能時間が長く、かつ接着加工後に軟化温度が高くなるため耐久性に富み、低温での接着加工に適していることが挙げられる。反応型ホットメルト硬化性樹脂の一例としては、分子末端にイソシアネート基を有するウレタンポリマーを主成分とし、このイソシアネート基が水分と反応して活性化し、さらにプレポリマーと反応して架橋構造を形成するものがある。このようなイソシアネート基の反応性をICカードの作製において利用する技術が特許文献に開示されている(例えば特許文献2〜4参照。)。
【0008】
又、上記のような湿気硬化型硬化性樹脂には、一般にジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)が3〜10%含有されており、有害であり、好ましくない。この含有量を低下させると硬化性樹脂の接着力が低下したり保存性が劣化するという問題を生ずる。このように硬化性樹脂の反応性が低いと、ICチップの回路面を保護する第一の硬化性樹脂と第二の硬化性樹脂との密着性が悪い。一方で硬化性樹脂の反応性が高すぎても、生産適性が低下したり、硬化反応により発生するCO2が局所的に溜まり、カードの膨れや変形などの形状異常をもたらす。これは、特に顔画像や文字を印画印字する必要のあるIDカードでは致命的である。
【特許文献1】特開平8−118862号公報
【特許文献2】特開2001−22912号公報
【特許文献3】特開2004−21814号公報
【特許文献4】特開2003−317065号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、生産性及び耐久性が改善され、かつカード品質や印画品質が改良された非接触ICカードとその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明者らは、上記課題解決のために、硬化性樹脂の反応性を適切に制御して、第一の樹脂との密着性を向上させること等について鋭意検討を行い本発明に至った。すなわち、本発明に係る上記課題は下記の手段により解決される。
【0011】
1.2種以上の硬化性樹脂により少なくとも二重に封止されたICチップを含む非接触ICカードにおいて、該ICチップの回路面に隣接する第一の硬化性樹脂と、該第一の硬化性樹脂に隣接する第二の硬化性樹脂を含有し、該第二の硬化性樹脂は、該第一の硬化性樹脂により硬化が促進された樹脂であることを特徴とする非接触ICカード。
【0012】
2.前記第一の硬化性樹脂の酸価が110mgKOH/g以下であり、第二の硬化性樹脂がイソシアネート基を含有することを特徴とする前記1に記載の非接触ICカード。
【0013】
3.前記第一の硬化性樹脂の酸価が4〜75mgKOH/gであることを特徴とする前記1又は2に記載の非接触ICカード。
【0014】
4.前記第二の硬化性樹脂が、ジフェニルメタンジイソシアネートを含有し、その含有量が0.5〜1.5質量%であることを特徴とする前記1〜3のいずれか一項に記載の非接触ICカード。
【0015】
5.前記第二の硬化性樹脂が、前記第一の硬化性樹脂に隣接して配置されていることを特徴とする前記1〜4のいずれか一項に記載の非接触ICカード。
【0016】
6.前記第二の硬化性樹脂が湿気硬化性ホットメルト樹脂であることを特徴とする前記1〜5のいずれか一項に記載の非接触ICカード。
【0017】
7.前記第一の硬化性樹脂が紫外線硬化性樹脂又は熱硬化性樹脂であることを特徴とする前記1〜6のいずれか一項に記載の非接触ICカード。
【0018】
8.前記第一の硬化性樹脂が紫外線硬化性樹脂であることを特徴とする前記1〜7のいずれか一項に記載の非接触ICカード。
【0019】
9.前記第二の硬化性樹脂が、80〜120℃の温度範囲で、塗布及び貼り合わされたことを特徴とする前記1〜8のいずれか一項に記載の非接触ICカード。
【0020】
10.前記ICチップの非回路面側に補強部材を有することを特徴とする前記1〜9のいずれか一項に記載の非接触ICカード。
【0021】
11.前記ICチップを挟んで対向する2つの支持体の一方の支持体表面上に氏名及び顔画像を含む個人識別情報が記録される受像層を有し、かつ他方の支持体表面上に筆記可能な筆記層を有することを特徴とする前記1〜10のいずれか一項に記載の非接触ICカード。
【0022】
12.前記1〜11のいずれか一項に記載の非接触ICカードの製造方法であって、ICチップの回路面に隣接して第一の硬化性樹脂を設置する工程と該第一の硬化性樹脂により硬化反応を促進される第二の硬化性樹脂を設置する工程とを有することを特徴とする非接触ICカードの製造方法。
【0023】
13.前記1〜11のいずれか一項に記載の非接触ICカードの製造方法であって、ICチップを挟んで対向する2つの支持体の間に硬化性樹脂を設置する工程と硬化性樹脂を80〜120℃の温度範囲で塗布し貼り合わせる工程とを有することを特徴とする前記12に記載の非接触ICカードの製造方法。
【発明の効果】
【0024】
本発明の上記手段により、生産性及び耐久性が改善され、かつカード品質や印画品質が改良された非接触ICカードとその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の非接触ICカードは、2種以上の硬化性樹脂により少なくとも二重に封止されたICチップを含む非接触ICカードにおいて、該ICチップの回路面に隣接する第一の硬化性樹脂と、該第一の硬化性樹脂に隣接する第二の硬化性樹脂を含有し、該第二の硬化性樹脂は、該第一の硬化性樹脂により硬化が促進された樹脂であることを特徴とする。この特徴は、請求項1〜13に係る発明に共通する技術的特徴である。
【0026】
なお、本発明の非接触ICカードの製造方法の観点から特徴を言うならば、当該製造方法については、ICチップの回路面に隣接して第一の硬化性樹脂を設置する工程と該第一の硬化性樹脂により硬化反応を促進される第二の硬化性樹脂を設置する工程とを有することを特徴とする。
【0027】
以下、本発明とその構成要素等について詳細な説明をする。
【0028】
(硬化性樹脂)
本発明に係る「硬化性樹脂」とは、光、熱、湿気等のトリガーにより架橋反応し、硬化する樹脂であって、接着機能を有する樹脂をいう。当該樹脂は、一般的には、反応開始のトリガーによって、光硬化性(型)樹脂、熱硬化性(型)樹脂、湿気硬化性(型)樹脂などに大別される。
【0029】
本発明においては、2種以上の硬化性樹脂により、少なくとも二重にICチップが封止された非接触ICカードにおいて、該ICチップの回路面側に隣接する第一の硬化性樹脂により、第二の硬化性樹脂の硬化反応が促進されることを特徴とする。
【0030】
本発明においては、前記第一の硬化性樹脂の酸価が110mgKOH/g以下であり、第二の硬化性樹脂がイソシアネート基を有することが好ましい。更には、前記第一の硬化性樹脂の酸価が4〜75mgKOH/gであることが好ましい。
【0031】
前記第一の硬化性樹脂が上記の酸価を有する場合には、第二の硬化性樹脂の架橋・硬化反応が促進して、密着性が向上する。ただし、酸価が110mgKOH/gを超えると、反応進行が急すぎ、例えば、第二の硬化性樹脂がイソシアネート基を有する場合、副生するCO2の逃げ場がなくなりカード膨れ等の悪影響を及ぼすと考えられる。
【0032】
なお、ここでいう「酸価」とは、樹脂(又は化合物)1gを中和するのに必要なKOHのmg数を意味するが、JIS K0070−1992に記載の方法(中和滴定法)に従って測定して得られた測定値である。
【0033】
また、第一の硬化性樹脂により、第二の硬化性樹脂の硬化反応が促進されたか否かは、第二の硬化性樹脂において架橋反応に寄与する官能基(例えば、イソシアネート基、ヒドロキシル基、カルボン酸基、アミノ基等)の反応数若しくは未反応数、又は副生成物の生成量の測定等によって直接的又は間接的に確認することができる。例えば、官能基がイソシアネート基の場合、後述するようにイソシアネート基数をフーリエ変換赤外分光光度計等を用いて測定し、定量することにより確認することができる。また、副生成物であるCO2ガスの生成量の直接的・間接的測定によっても確認することができる。
【0034】
〈光硬化性樹脂〉
光硬化性樹脂としては、ラジカル重合性成分及び光ラジカル重合開始剤、又はイオン重合性成分及び光イオン重合開始剤等を含む組成物から形成される樹脂を用いることができる。光としては、種々の波長の光を用いることができるが、紫外光域の光により、重合反応を誘起し、硬化させることが好ましい。
【0035】
本発明で用いることのできる紫外線硬化性樹脂は、一般には分子中に一つ以上の反応性基を持つ重合性化合物のモノマー又はオリゴマー、あるいはこれらの混合物及び必要により反応触媒からなり、従来から紫外線硬化性樹脂として知られているものから選択して使用することができる。但し、反応性基として、少なくともアミノ基を有することを要する。
【0036】
一般に紫外線硬化性樹脂は、ラジカル重合反応による樹脂とイオン重合反応による樹脂とがあるが、一般にイオン反応タイプの樹脂は反応速度が遅いため、ラジカル反応タイプの樹脂が好適に使用される。
【0037】
ラジカル反応タイプの紫外線硬化性樹脂は、通常、少なくとも、樹脂モノマー成分および光重合開始剤を使用し、更に、必要に応じて樹脂オリゴマー成分を使用して調製される。樹脂モノマー成分や樹脂オリゴマー成分を種々選択することにより、様々な特性のインク受容層を得ることが出来る。すなわち、樹脂モノマー成分の種類と量により、粘度、硬度などが変化し、樹脂オリゴマー成分の種類と量により、硬度、密着性、耐水性、耐湿性などが変化する。
【0038】
樹脂モノマー成分としては、単官能または多官能モノマーの何れであってもよいが、樹脂層における架橋密度を上げて基材との密着性を保持するため、多官能モノマー成分を一定量含むのが好ましい。
【0039】
単官能モノマーとしては、例えば、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ノニルフェノキシエチルアクリレート、N−ビニルピロリドン、2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルオキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルオキシヘキサノリドアクリレート、1,3−ジオキサンアルコールのε−カプロラクトン付加物のアクリレート、1,3−ジオキソランアクリレート等が挙げられる。
【0040】
多官能モノマー成分としては、シクロペンテニールアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール(400)ジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールアジペートのジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールのε−カプロラクトン付加物のジアクリレート、2−(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−5−ヒドロキシメチル−5−エチル−1,3−ジオキサンジアクリレート、トリシクロデカンジメチロールジアクリレート、トリシクロデカンジメチロールジアクリレートのε−カプロラクトン付加物、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、プロピオン酸・ジペンタエリスリトールトリアクリト、ヒドロキシピバルアルデヒド変性ジメチロールプロパントリアクリレート、プロピオン酸・ジペンタエリスリトールのテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート等が挙げられる。
【0041】
樹脂オリゴマー成分としては、アクリル系オリゴマー、エステル系オリゴマー、ウレタン系オリゴマー、エーテル系オリゴマー等が挙げられる。これらは単独で使用してもよいが、複数種を組み合わせて使用すると、各々異なった特性を持つ樹脂が得られる。
【0042】
上記のアクリル系オリゴマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸や、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル等のアルキル(メタ)アクリレートの重合体、または、上記モノマーと、スチレン、α−メチルスチレン、(o,m,p)ビニルフェノール等の芳香族ビニル化合物、マレイン酸、イタコン酸、クロトン酸、フマル酸などのビニルカルボン酸化合物、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、エチルアクリル酸グリシジル、クロトニルグリシジルエーテル、クロトン酸グリシジル等のグリシジル基含有ビニル化合物、ベンジル(メタ)アクリレート等の芳香族アクリレート化合物、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の置換アルキルアクリレート化合物、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド等のアクリルアミド系化合物、酢酸ビニル、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸クロライド、N−(メタ)アクリロイルモルホリン等から選ばれた化合物との共重合体が挙げられる。
【0043】
上記のエステル系オリゴマーとしは、例えば、無水フタル酸とプロピレンオキサイドの開環重合物から成るポリエステルジオールとアクリル酸とのエステル、アジピン酸1,6−ヘキサンジオールから成るポリエステルジオールとアクリル酸とのエステル、トリメリット酸ジエチレングリコールとの反応物から成るトリオールとアクリル酸とのエステル、δ−バレロラクトンの開環重合物とアクリル酸とのエステル等が挙げられる。
【0044】
上記のウレタン系オリゴマーとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートと1,6−ヘキサンジオールから成るポリウレタンと2−ヒドロキシエチルアクリレートとの反応物、アジピン酸と1,6−ヘキサンジオールから成るポリエステルジオールとトリレンジイソシアネートとを反応させたジイソシアネートオリゴマーに2−ヒドロキシエチルアクリレートを反応させたもの等が挙げられる。
【0045】
上記のエーテル系オリゴマーとしては、例えば、ポリプロピレングリコールとアクリル酸とのエステル等が挙げられる。その他、エポキシ樹脂にアクリレートを反応させたエポキシ系オリゴマー、ポリアリレート等も樹脂オリゴマー成分として使用することが出来る。
【0046】
また、その他の紫外線硬化性樹脂としては、山下晋三編、「架橋剤ハンドブック」、(1981年大成社);加藤清視編、「UV・EB硬化ハンドブック(原料編)」(1985年、高分子刊行会);ラドテック研究会編、「UV・EB硬化技術の応用と市場」、79頁、(1989年、シーエムシー);滝山栄一郎著、「ポリエステル樹脂ハンドブック」、(1988年、日刊工業新聞社)等に記載の市販品もしくは業界で公知のラジカル重合性ないし架橋性のモノマー、オリゴマー及びポリマーを用いることができる。
【0047】
本発明に係る紫外線硬化性樹脂には、必要に応じ、重合停止剤、保存安定剤、分散剤、消泡剤、紫外線硬化性樹脂以外のバインダー樹脂などを含有していてもよい。
【0048】
イオン重合性成分としては、光カチオン重合性成分が好ましい。例えば、ビスフェノール−エポキシ樹脂、フェノリックエポキシ樹脂、ハロゲン化フェノールエポキシ樹脂、ポリアルキレングリコールエポキシ樹脂、ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル等のエポキシ化合物が好適に用いられる。さらに、イソプロピルビニルエーテル、セチルビニルエーテル等のビニルエーテル化合物、オキセタンなどを用いることも可能である。具体的には、山下晋三編、「架橋剤ハンドブック」、(1981年大成社);加藤清視編、「UV・EB硬化ハンドブック(原料編)」(1985年、高分子刊行会);ラドテック研究会編、「UV・EB硬化技術の応用と市場」、79頁、(1989年、シーエムシー);滝山栄一郎著、「ポリエステル樹脂ハンドブック」、(1988年、日刊工業新聞社)等に記載の市販品もしくは業界で公知のイオン重合成ないし架橋性のモノマー、オリゴマー及びポリマーを用いることができる。
【0049】
上記光カチオン重合開始剤とは、光によってカチオン種を発生させる重合開始剤のことであり、一般的にはオニウム塩がよく知られている。オニウム塩としては、ルイス酸のジアゾニウム塩、ルイス酸のヨードニウム塩、ルイス酸のスルホニウム塩などが用いられる。これらの化合物の具体例としては、例えば、四フッ化ホウ素のフェニルジアゾニウム塩、六フッ化リンのジフェニルヨードニウム塩、六フッ化アンチモンのジフェニルヨードニウム塩、六フッ化ヒ素のトリ−4−メチルフェニルスルホニウム塩、四フッ化アンチモンのトリ−4−メチルフェニルスルホニウム塩等が挙げられる。これらに限定されるものではなく、光照射によってカチオン種を発生させる化合物であれば使用可能である。
【0050】
本発明においては、上述のように、第一の硬化性樹脂がラジカル重合紫外線硬化性樹脂であることが好ましい。
【0051】
〈熱硬化性樹脂〉
熱硬化性樹脂としては、常温で流動性を示し、加熱により硬化性を示す樹脂であれば特に限定されない。例えば、ポリウレタン、不飽和ポリエステル、フェノール樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリブタジエン、シリコーン樹脂等を挙げることができる。特に、発泡が容易で耐衝撃性の高いポリウレタン、エポキシ樹脂が好ましい。
【0052】
〈湿気硬化性樹脂〉
湿気硬化性樹脂としては、特開平2−16180号、特開2000−036026、特開2000−219855号、特開2000−211278号、特開2000−219855号公報、特願2000−369855号で開示されている。具体的には、ウレタン系樹脂、アルコキシド基含有シリコーン系樹脂などが挙げられる。
【0053】
湿気硬化性樹脂の一例として、分子末端にイソシアネート基(「イソシアナート基」ともいう:−N=C=O)含有ウレタンポリマーを主成分とし、このイソシアネート基が水分と反応して架橋構造を形成するものがある。湿気硬化型硬化性樹脂としては、例えば積水化学工業社製9613N、住友スリーエム社製TE030、TE100、日立化成ポリマー社製ハイボン4820、カネボウエヌエスシー社製ボンドマスター170シリーズ、Henkel社製Macroplast QR3460等があげられる。積水化学工業社製9613N、2013MK等があげられる。
【0054】
本発明においては、特に、第二の反応性硬化樹脂として、湿気硬化型ホットメルト樹脂を用いることが好ましい。このホットメルト型樹脂は、一度シート状に形成した後でも、ある温度まで加熱すれば再度硬化性樹脂としての機能を復活する。
【0055】
ホットメルト性樹脂としては、湿気硬化性や、光硬化性の反応性ホットメルト樹脂が挙げられるが、湿気硬化性ホットメルト樹脂がより好ましい。湿気硬化性ホットメルト樹脂としては、特開2000−036026号、特開2000−219855号、特開2000−211278号、特開2000−219855号、特開2002−175510号公報に開示されている。
【0056】
なお、湿気硬化性ホットメルト樹脂は、当該樹脂を溶融させて接着した後に、湿気を吸って当該樹脂が硬化するタイプである。その特徴としては、通常のホットメルト樹脂と比較して、当該ホットメルト樹脂では、接着可能時間が長く、かつ、接着後の軟化温度が高くなるために、耐久性に富み、低温での塗布加工及び接着加工に適していることが挙げられる。すなわち、通常のホットメルト樹脂では塗布加工時の樹脂の温度(以下「塗工温度」という。)が、当該樹脂が軟化する温度(以下「軟化温度」という。)と同じであるために、軟化温度が塗工温度以上にならないという耐熱性に留まる。従って、高耐熱性が要求される場合には、高い塗工温度が必要になる。
【0057】
この発明で使用できる反応性ホットメルト樹脂としては、住友スリーエム社製のTE030及びTE100や、日立化成ポリマー社製のハイボン4820、カネボウエヌエスシー社製のボンドマスター170シリーズ、Henkel社製のMacroplast QR3460などが挙げられる。
【0058】
本発明においては、2種以上の硬化性樹脂のうち第二の硬化性樹脂が、分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを含有する硬化性樹脂であり、かつ前記アミノ化合物を含有する硬化性樹脂の硬化物に隣接していることが好ましい。
【0059】
また、上記第二の硬化性樹脂が湿気硬化性ホットメルト樹脂であるこが、本発明の効果の観点から、好ましい。
【0060】
なお、本発明の非接触ICカードにおいては、上記第二の硬化性樹脂が、80〜120℃の温度範囲で、塗布及び貼り合わ(ラミネートカード化)されることが、支持体の熱による収縮、反りなどによるカード品質への影響、基材搬送性への影響、表面の画像受像層の熱劣化の影響の観点から好ましい。
【0061】
なお、製造方法の観点から換言するならば、ICチップを挟んで対向する2つの支持体の間に硬化性樹脂を設置する工程と硬化性樹脂を80〜120℃の温度範囲で塗布し貼り合わせる工程とを有する製造方法の態様が好ましい。
【0062】
上記のホットメルト性樹脂は、一度シート状に形成した後でも、ある温度まで加熱すれば再度接着剤としての機能を復活する。ホットメルト型樹脂としては、湿気硬化性や、光硬化性の反応性ホットメルト樹脂が挙げられるが、湿気硬化性ホットメルト樹脂がより好ましい。湿気硬化性の反応性ホットメルト樹脂としては、特開2000−036026号、特開2000−219855号、特開2000−211278号、特開2000−219855号、特願2000−369855号公報に開示されている。例えば住友スリーエム社製のTE030、TE100、日立化成ポリマー社製のハイボン4820、カネボウエヌエスシー社製のボンドマスター170シリーズ、Henkel社製のMacroplast QR 3460、積水化学工業(株)製のエスダイン2013MK等が使用される。
【0063】
この反応型ホットメルト樹脂は(1)式に示すように分子端末にイソシアネート基(NCO)を有するウレタンポリマーを主成分としている。(1)式において、NHCOOはウレタン結合を示す。
【0064】
【化1】

【0065】
反応性ホットメルト樹脂は水分(H2O)を受けて(2)式に示すような鎖延長反応を起こす。
【0066】
【化2】

【0067】
この鎖延長応によって反応性ホットメルト樹脂のウレタン結合分子(NHCOO)は尿素結合分子(NHCONH)に変化する。この際の水分に関しては従来方式では空気中から自然に取り込むが、本方式によれば、熱貼合前に吸水状態にされた接着部材に残留した水分によって鎖延長反応を促進させることができる。なお、鎖延長反応では二酸化炭素(CO2)が発生するが、このCO2は空気中へ発散される。
【0068】
そして、(3)式に示すように反応性ホットメルト樹脂のウレタン結合分子とイソシアネート基は分岐・架橋反応を起こしてNCOO−CO−NH−のアロファネート結合分子に変化する。
【0069】
【化3】

【0070】
また、(4)式に示すように反応性ホットメルト樹脂の尿素結合分子とOCN基も分岐・架橋反応を起こしてNCONH−CO−NH−のビウレット結合分子に変化する。
【0071】
【化4】

【0072】
このイソシアネート基が接着部分にほとんど残留していない状態に至ったときに、ICカードのシート材、ICモジュール及びシート材が完全硬化に至ったものとなされる。
【0073】
この樹脂中のイソシアネート基の量は、ICカードの上下シートをカッターのようなもので、はがしてICカードから樹脂を抜き取り、赤外吸収スペクトルを測定し、スペクトル強度よりイソシアネート基の量を定量することで調べることができる。本発明では、日本分光・フーリエ変換赤外分光光度計(FT/IR−400type)を用いて測定した。
【0074】
反応型ホットメルト樹脂が硬化反応することにより消失するイソシアネート基は、2270〜2250cm-1に吸収ピークが観察される。
【0075】
硬化性樹脂によりシートを貼り合わせた直後は、硬化反応が進行していないため、2270〜2250cm-1のピーク強度は大きく、反応が進行するとイソシアネート基の量が減るため、2270〜2250cm-1のピーク強度は小さくなる。
【0076】
本発明に係るウレタン系の湿気硬化性樹脂の硬化率は、ICカード製造直後のイソシアネート基(2270〜2250cm-1)の吸収強度を(I)として、反応した硬化性樹脂のイソシアネート基(2270〜2250cm-1)の量を(II)とした場合に以下をとることで、硬化性樹脂の硬化反応の進行具合を求めることが好ましい。
【0077】
(式) 硬化率(%)=(I−II)/I×100
ここで、ICカード製造直後のイソシアネート基の吸収強度(I)は、製造から24時間以内測定したもののことをいう。
【0078】
<完全硬化の判断>
完全硬化の判断については、この発明に係る湿気硬化型樹脂を用いたシートの硬化後とは、湿気硬化型樹脂に含まれるイソシアネート基が95%以上反応した時のことで、硬化の確認には作製したシートをカード状に断裁し、90℃以上の熱処理を行った際に炭酸ガスの発生による膨れが生じるか否かで反応が終了しているかどうかを判断することができる。
【0079】
反応の途中経過を知るには、赤外吸収スペクトルを測定し、スペクトル強度よりイソシアネート基(NCO基)の量を定量することで調べることができる。
【0080】
<ジフェニルメタンジイソシアネート>
本発明に係る前記第二の硬化性樹脂は、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を含有し、その含有量が0.5〜1.5質量%であることが好ましい。更には、MDI量が1%未満であることが好ましい。
【0081】
〈硬化性樹脂の膜厚等〉
本発明に係る硬化性樹脂の膜厚は、電子部品と含めた厚さで100〜600μmが好ましく、より好ましくは150〜500μm、更に好ましくは150〜450μmである。
【0082】
また、湿気硬化型硬化性樹脂として、イソシアネート基を有する湿気硬化型硬化性樹脂を用いた場合、硬化の確認には作製したシートをカード状に断裁し、90℃以上の熱処理を行った際に炭酸ガスの発生による膨れが生じるか否かで反応が終了しているかどうかを判断することができる。
【0083】
〈硬化後の引張弾性率等〉
本発明に係る第1の硬化性樹脂は、「JIS K7127」あるいは「ASTM D638」の規定に準じて測定した、硬化後の引張弾性率が3MPa以上、引張破断点伸度が600%以下であることが好ましい。硬化後の引張弾性率としては、10〜25MPaが好ましく、あるいは伸度2%における引張弾性率が、10MPa以上であることがより好ましい。
【0084】
引張破断点伸度としては50〜600%が好ましく、150〜500%がより好ましい。硬化後の引張弾性率が、10MPaよりも小さい場合には、圧力による耐性が劣化する。
【0085】
本発明に係る第2の硬化性樹脂は、前記同様の規定に準じて測定した、硬化後の引張弾性率が200MPa以上で、引張破断点伸度が600%以下である。硬化後の引張弾性率としては200〜600MPa以上が好ましく、300〜600MPaがより好ましい。引張破断点伸度としては50〜600%が好ましく、150〜500%がより好ましい。硬化後の引張弾性率が200MPaよりも小さい場合には、製造時におけるカード形状への断裁特性が劣化する。
【0086】
なお、硬化性樹脂に外力を加えて変形させるとき、外力によって生ずる応力と、変形によって生ずるひずみとは、変形があまり大きくない範囲では比例する(フックの法則)。硬化性樹脂の弾性率は、このときの比例定数を弾性率として求める。すなわち、弾性率CはC=(応力)/(ひずみ)で表される。弾性率が高いとハサミなどの刃物で断裁加工する場合には断裁しやすくなるが、反面、硬化性樹脂が固くなってしまうためカード耐久性は低下する。一方、弾性率が低いと断裁加工時に断面から硬化性樹脂がはみだし、カード化した場合に断面形状が劣化し外観は悪くなる。
【0087】
<破断伸度、2%弾性率の測定方法>
本発明に係る樹脂の破断伸度(%)、2%弾性率は、23℃55%RHの条件下で本発明に係る硬化性樹脂を塗工後を300時間以上放置した後、株式会社オリエンテックテンシロン万能試験機RTA−100を用いデーター処理は、テンシロン多機能型データー処理TYPE MP−100/200S Ver.44を用い測定を行った。樹脂の固定手段はエアーチャック方式で固定した。クロスヘッドスピードは、5〜100mm/min、RANGEは5〜100%、荷重は0.1〜500kgを選択することができるが、本発明の評価では、クロスヘッドスピードは、30mm/min、RANGEは20%、荷重は100kgの条件で評価を行った。
【0088】
硬化性樹脂の破断伸度、2%弾性率を測定するに当たり、特に単独膜を作製するのは難しいため、PP離型シートに500μmの樹脂層を形成し所望のサンプルを作製し測定を行った。測定は、1cm巾のサンプルをエアーチャックに固定し引っ張り試験を行った。
【0089】
破断伸度は、引っ張り時の活性光線硬化樹脂の破断又は亀裂が入ったときの破断点伸びから破断点伸度を求めた。
【0090】
(支持体:基材)
本発明に係るICカード用の支持体(以下において「基材」ともいう。)は、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート共重合体等のポリエステル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン樹脂、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリ4フッ化エチレン、エチレン−4フッ化エチレン共重合体、等のポリフッ化エチレン系樹脂、ナイロン6、ナイロン6.6等のポリアミド、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、エチレン/ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール、ビニロン等のビニル重合体、生分解性脂肪族ポリエステル、生分解性ポリカーボネート、生分解性ポリ乳酸、生分解性ポリビニルアルコール、生分解性セルロースアセテート、生分解性ポリカプロラクトン等の生分解性樹脂、三酢酸セルロース、セロファン等のセルロース系樹脂、ポリメタアクリル酸メチル、ポリメタアクリル酸エチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチル、等のアクリル系樹脂、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリイミド等の合成樹脂シート、又は上質紙、薄葉紙、グラシン紙、硫酸紙等の紙、金属箔等の単層体或いはこれら2層以上の積層体が挙げられる。本発明に係る支持体の厚みは30〜300μm望ましくは50〜200μmである。
【0091】
ICカードを作製する際、同一又は配向角を合わしても良く、場合によっては異なる基材又は厚さの異なる支持体を複数積層し、貼り合わせ等により構成されたカードを作製しても良い。
【0092】
又支持体上に、易接化処理を施してもよく、カップリング剤、ラテックス、親水性樹脂、帯電防止樹脂などの樹脂層より形成される。場合により支持体をコロナ処理、プラズマ処理等の易接処理を施しても良い。また、熱収縮を低減するためにアニール処理などを行っても良い。
【0093】
前記支持体には必要に応じてエンボス、サイン、ICメモリー、光メモリー、磁気記録層、偽変造防止用印刷層(パール顔料層、透かし印刷層、マイクロ文字等)、エンボス印刷層、ICチップ隠蔽層等を設けることができる。
【0094】
(ICカード用材料への付加可能な材料)
前記記載のICカード用の支持体(基材)には必要に応じて、ICカードの材料構成に合わし、受像層、クッション層、筆記層、フォーマット印刷層などを設けることが出来る。尚筆記層を設ける場合、受像層とは反対側のカード面に設けることが好ましい。
【0095】
なお、本発明においては、ICチップを挟んで対向する2つの支持体の一方の支持体表面上に氏名及び顔画像を含む個人識別情報が記録される受像層を有し、かつ他方の支持体表面上に筆記可能な筆記層を有する態様とすることが好ましい。
【0096】
(第1シート部材)
この発明における第1シート部材とはカード表面側に位置する部材をいうが、カード表面に位置するた受像層、クッション層などを必要に応じて設けることができる。受像層とは、書誌情報及び識別情報を熱転写方式、インクジェット方式、電子写真方式等により記録することができる層のことをいう。
【0097】
熱転写により情報を記録する方式としては一般的に知られている昇華型熱転写方式、溶融型熱転写方式等が挙げられる。インクジェット方式で記録する方法としては、一般的に知られている方法を用いることができ具体的には特開2000−44857号、特開平9−71743号公報で記載されているような情報記録することができる。本発明では特に画像形成材料として制限はなく用いることができる。
【0098】
<受像層>
前記の基材上に下記の受像層などを設け第1シート部材などを設けることができる。
【0099】
以下、本発明に用いることができる受像層を形成する成分について詳述する。
【0100】
この発明における受像層用のバインダーは、通常に知られているバインダーを適宜に用いることができる。例えばポリ塩化ビニル樹脂、塩化ビニルと他のモノマー(例えばイソブチルエーテル、プロピオン酸ビニル等)との共重合体樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリビニルブチラール系樹脂、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、三酢酸セルロース、ポリスチレン、スチレンと他のモノマー(例えばアクリル酸エステル、アクリロニトリル、塩化エチレン等)との共重合体、ビニルトルエンアクリレート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカプロラクトン樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、およびそれらの変性物などを挙げることができるが、好ましいのは、ポリ塩化ビニル樹脂、塩化ビニルと他のモノマーとの共重合体、ポリエステル樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリビニルブチラール系樹脂、スチレンと他のモノマーとの共重合体、エポキシ樹脂、光硬化性樹脂、熱硬化性樹脂などさまざまのバインダーを使用することができる。具体的な1例として受像層を特開平6−286350号、特開平5−64989号公報に記載のような金属イオン化合物やキレート化合物、離型材料等の材料を用い重層により受像層する方法が挙げられる。また、必要に応じて基材色調剤として染料や顔料、膜強度を向上させるために硬膜剤、カチオン媒染剤、退色防止剤、アニオン、カチオンまたは非イオンの各種界面活性剤、潤滑剤、防腐剤、増粘剤、帯電防止剤、マット剤等の公知の各種添加剤を含有させることもできる。
【0101】
この発明に受像層として形成される材料を溶媒又は水に分散あるいは溶解してなる受像層用塗工液を調製し、その受像層用塗工液を前記基材上に塗工し、乾燥する塗工法によって製造することができる。
【0102】
支持体に形成される受像層の厚みは、一般に0.01〜30μm、好ましくは0.01〜20μm、より好ましくは0.03〜20μm程度である。
【0103】
<クッション層>
本発明には必要に応じて、印字性を良化させるためにクッション層を設けることが出来る。クッション層を構成する材質としては例えばウレタン樹脂、アクリル樹脂、エチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ブタジエンラバー、エポキシ樹脂、ポリオレフィン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−水素添加イソプレン−スチレンブロック共重合体、ポリブタジエン、特開2002−222403号公報記載の光硬化型樹脂等を用いることができる。クッション層の厚さは通常、1〜50μm、好ましくは3〜30μmである。
【0104】
本発明でいうクッション層とは、IDカード用に作製した受像層と基材の間、筆記層と支持体の間のいずれの形態であればよく特に制限はなく、複数層合ってもかまわない。
【0105】
(第2シート部材)
この発明における第2シート部材とはカード裏面側に位置する部材をいうが、カード裏面に位置するた筆記層、クッション層などを必要に応じて設けることができる。
【0106】
<筆記層>
前記の基材上に下記記載の受像層などを設け第2シート部材などを設けることができる。
【0107】
本発明には必要に応じて、カードに追加情報を記録するために筆記層を設けてもよい。
【0108】
筆記層は、バインダーと各種の添加剤で形成することができる。筆記層は、IDカードの裏面に筆記をすることができるようにした層である。この層は少なくとも1層以上からなることが好ましく、好ましくは1〜5層より形成されていることが好ましい。このような筆記層としては、例えば無機微細粉末、多孔質物質等を用いることができる。多孔質物質としては、例えば、シリカ(沈降性、またはゲルタイプ)、タルク、カオリン、クレー、アルミナホワイト、ケイソウ土、酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等を使用することができる。なお、上記多孔質物質としては、上記化合物等の中から1種、または2種以上を混合して使用されるようにしてもよい。多孔質物質を含むことができ特に限定はない。
【0109】
また他にバインダーを用いることができ、例えばセラック、ロジンおよびその誘導体、硝化綿および繊維素誘導体、ポリアミド樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、石油樹脂、環化ゴム、塩化ゴム、塩素化ポリプロピレン、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ブチラール樹脂、塩化ビニリデン樹脂、水溶性樹脂等を用いることができる。また、紫外線により共重合し硬化するプレポリマーを含有するUV硬化型樹脂を用いてもよい。それに用いる共重合性化合物としてはポリオールアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアックリレート、ウレタンアクリレート、アルキドアクリレートがあげられる。中でも、ポリエステル樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリスチレン樹脂、が好ましく用いられる。なお、上記樹脂としては、上記化合物等の中から1種、または2種以上を混合して使用されるようにしてもよい。多孔質物質の粒径としては、1〜10μmのものを用いることができ、好ましくは平均粒径が1〜8μmであることが好ましい。樹脂に対する多孔質物質の質量比は、固形分比で樹脂100質量部に対し、20質量部〜100質量部であることが好ましい。その他の添加剤としてワックス、界面活性剤、溶剤、水を含んでいてもよく特にに制限はない。
【0110】
この筆記層の厚さは、好ましくは、5〜40μm、更に好ましくは5〜30μmである。前記筆記層を形成する場合、場合により支持体との密着性を良好にするために接着層、又は筆記性を良好にするためにクッション層などを設けてもよい。本発明の場合、仕上がった筆記層の表面Raが2.0μm以下であることが好ましく、より好ましくは0.2〜2.0μm、更に好ましくは0.3〜1.8μmである。表面粗さが0.2μm以下であると筆記性が劣化し問題となる。2.0μm以上であると本発明の筆記可能層への表面保護材料との密着性劣化と、表面の粗さが粗いために筆記可能層に手作業又は昇華熱転写方式、溶融熱転写方式、インクジェット方式に昇華熱転写、溶融熱転写、インクジェット、油性ペン、水性ペン、印鑑等により個人識別情報を記載した場合が滲んだりし判別がしずらく問題となる。
【0111】
(印刷層)
本発明においては、第1シート部材、第2シート部材上に印刷層を設けることができる。具体的には受像層上又は筆記層上にフォーマット印刷からなる情報坦持体を設けることができる。情報坦持体は、第1シート部材と第2シート部材は張り合わせる前後いずれかにフォーマット印刷又は、情報記録を行ってもよく、オフセット印刷、グラビア印刷、シルク印刷、スクリーン印刷、凹版印刷、凸版印刷、インクジェット方式、昇華転写方式、電子写真方式、熱溶融方式等のいずれの方式によって形成することができる。特に限定はないが、本発明においては、オフセット印刷などで設けることが好ましい。
【0112】
また、ICカードには、フォーマット印刷からなる情報坦持体が具備されており、識別情報及び書籍情報を記録した複数の選ばれる少なくとも一つが設けられた情報坦持体層からなる。具体的には、罫線、社名、カード名称、注意事項、発行元電話番号等が表記されている。
【0113】
本発明に係るフォーマット印刷層は目視による偽造防止の為に透かし印刷、細紋等が採用されてもよく、偽造変造防止層としては印刷物、ホログラム、バーコード、マット調柄、細紋、地紋、凹凸パターンなどで適時選択さ、可視光吸収色材、紫外線吸収材、赤外線吸収材、蛍光増白材、ガラス蒸着層、ビーズ層、光学変化素子層、パールインキ層、燐片顔料層、IC隠蔽層、透かし印刷層などから表シートに印刷等で設けることも可能である。
【0114】
フォーマット印刷からなる情報坦持体の形成には、日本印刷技術協会出版の「平版印刷技術」、「新・印刷技術概論」、「オフセット印刷技術」、「製版・印刷はやわかり図鑑」等に記載されている一般的なインキを用いて形成することができ、光硬化型インキ、油溶性インキ、溶剤型インキなどにカーボンなどのインキにより形成される。
【0115】
本発明においては、フォーマット印刷層に使用することができる印刷層は、バインダー樹脂の代表例としては、例えば活性光線硬化性樹脂、ポリメタクリル酸メチル系のアクリル系樹脂、ポリスチレン等のスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル等の塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン等の塩化ビニリデン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、酢酸セルロース等のセルロース系樹脂、ポリビニルブチラール等のポリビニルアセタール系樹脂、エポキシ系樹脂、アミド系樹脂、ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、アルキッド系樹脂、フェノール系樹脂、弗素系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、カゼイン、ゼラチン等を挙げることができる。本発明においては光硬化型樹脂層であることが好ましく、更に好ましくは(a)一個以上の不飽和結合を有するモノマーもしくはオリゴマーの一種類以上からなるバインダー成分25〜95質量部、(b)開始剤1〜20質量部とを含む組成物からなる光硬化型樹脂組成物からなる印刷インキ層を用いることがカード表面強度の点から特に好ましいものである。
【0116】
活性光線硬化樹脂を用いる場合、水銀灯、UVランプ、キセノン等の光源により、100mj〜500mjの露光で硬化し用いることができる。
【0117】
(ICモジュール材料)
<電子部品>
ICカードは、電子部品を設けることが出来る。電子部品とは、情報記録部材のことを指し、具体的には当該電子カードの利用者の情報を電気的に記憶するICチップ及び該ICチップに接続されたコイル状のアンテナ体である。ICチップはメモリのみやそれに加えてマイクロコンピューターなどである。場合により電子部品にコンデンサーを含んでもよい。本発明はこれに限定はされず情報記録部材に必要な電子部品であれば特に限定はない。本発明では、ICチップをフェースダウンでアンテナに接続させるフリップチップ実装方式の電子部品において特に効果がある。
【0118】
<ICチップ>
本発明で用いられることのできるICチップの大きさに制限はないが、機械的強度の点からICチップの厚さは、5〜120μmであることが好ましい。好ましくは、10〜120μm、より好ましくは20〜120μmである。120μm以上であるとICチップ自身の強度が低下し、点圧強度、衝撃性、曲げ性が劣化する。5μm以下であると現状の加工技術では、均一に薄膜化できず表面性が劣化するため、点圧強度、衝撃性、曲げ性が劣化する。
【0119】
<補強部材>
本発明においては、前記ICチップの非回路面側に補強部材を有することがICチップの耐久性向上のため好ましい。
【0120】
本発明に係る補強部材は、機械的強度に優れることが好ましい。強度確保のため補強部材を厚くするとカード厚みが厚くなり、表面印画性などが低下するため補強部材は高強度の素材が好ましい。金属、セラミック、カーボンファイバー、ガラス繊維、アラミド繊維、高弾性樹脂などが上げられる。これらより選択される。1種または複数からなる複合材料でもよい。特にヤング率100GPa以上の素材が主構造に使用されているのが好ましい。厚みとしては、10〜300μm、好ましくは、20〜200μm、さらに好ましくは、30〜150μmがよい。補強部材の形状としては、本発明の趣旨に反しない限り、適宜用いることができる。本発明では、補強部材形状は、1つ以上あれば特に制限はない。
【0121】
<アンテナ>
ICモジュールはアンテナコイルを有するものであるが、アンテナパターンを有する場合、導電性ペースト印刷加工、或いは銅箔エッチング加工、巻線溶着加工等のいずれかの方法を用いてもよい。プリント基板としては、ポリエステル等の熱可塑性のフィルムが用いられ、更に耐熱性が要求される場合はポリイミドが有利である。通信性から場合により樹脂、絶縁層などで被覆していても良い。
【0122】
アンテナコイルを含む回路パターンは巻き線タイプであることが好ましく、場合により途中のコイルパターンと短絡することないよう別工程で電気的に接続することも可能である。アンテナコイルのターン回数は2〜10ターンであることが好ましいが、本発明では特に制限はない。
【0123】
本発明では、ICチップの回路面に形成されるバンプが、アンテナ形成されているフィルム支持体と対向してアンテナとバンプが電気的に接続される。
【0124】
(第1シート部材と、第2シート部材との間に所定の厚みの電子部品とを備える方法)
本発明において、第1シート部材と第2シート部材との間に所定の電子部品とを備えるために製造方式としては、熱貼合法、硬化性樹脂(接着剤)貼合法及び射出成形法が知られているが、いずれの方法で張り合わしてもよい。又、第1シート部材と第2シート部材は張り合わせる前後いずれかにフォーマット印刷又は、情報記録を行ってもよく、オフセット印刷、グラビア印刷、シルク印刷、スクリーン印刷、凹版印刷、凸版印刷、インクジェット方式、昇華転写方式、電子写真方式、熱溶融方式等のいずれの方式によって形成することができる。
【0125】
本発明のICカードの製造方法は、少なくとも、常温状態では固形物又は粘調体であり、加熱状態では軟化する接着部材をカード用の支持体に設ける工程と、電子部品をこの支持体上に配置する工程と、この支持体上の電子部品を覆うように接着部材を設けた表面用の支持体を配置する工程と、所定の加圧加温条件の下で支持体、電子部品及び表面用の支持体とを貼り合わせる工程とを有し張り合わせることが好ましい。
【0126】
該固形物又は粘調体の加熱状態で軟化する接着部材とは、硬化性樹脂自身をシート状に形成し具備する方法と硬化性樹脂自身を加熱又は常温で溶融し射出成型によって張り合わせることが好ましい。
【0127】
前記硬化性樹脂貼合法や樹脂射出法で連続シートとして形成された張り合わせた枚葉シート又は連続塗工ラミロールは、硬化性樹脂の所定硬化時間に合わした時間内放置後、認証識別画像や書誌事項を記録をしても良く、その後所定のカードサイズに成形しても良い。所定のカードサイズに形成する方法としては打ち抜く方法、断裁する方法等が主に選択される。
【0128】
(画像記録体の画像形成方法)
作製されたICカードに画像要素すなわち顔画像等の認証識別画像、属性情報画像、フォーマット印刷から選ばれる少なくとも1つを設けた発行済みICカードを、画像記録体と称する。顔画像等の認証識別画像、属性情報画像、フォーマット印刷から選ばれる少なくとも1つは、第1シート部材又は第2シート部材のいずれに設けてもよく、好ましくは第1シート部材側に設けることが好ましい。本発明では、画像記録を行なう際にカード表面の平滑性を向上させ、記録する画像記録体のカスレなどの品質低下を抑止させる。
【0129】
顔画像は通常の場合、階調を有するフルカラー画像で、例えば昇華型感熱転写記録方式、溶融型感熱転写記録方式、電子写真方式、インクジェット方式等により作製されている。本発明においては、昇華型感熱転写記録方式により顔画像等の認証識別画像、属性情報画像を記録することが好ましい。
【0130】
属性情報は氏名、住所、生年月日、資格等であり、属性情報は通常文字情報として記録され溶融型感熱転写記録方法が一般的である。フォーマット印刷又は、情報記録を行ってもよく、オフセット印刷、グラビア印刷、シルク印刷、スクリーン印刷、凹版印刷、凸版印刷、インクジェット方式、昇華転写方式、電子写真方式、熱溶融方式等のいずれの方式によって形成することができる。
【実施例】
【0131】
本発明に係るICカード及びその製造方法について以下に実施例を挙げて説明をする。本発明に係る実施例はこれらに限定されることはない。以下において「部」は「質量部」を示す。
【0132】
<実施例1>
<ICモジュールの作製>
ICモジュール1;
SUS301からなる厚み120μmの4×4mm角板状の平板補強板上に回路面と反対側に粘着材により厚み50μm、3×3mm角のICチップの回路面と反対面を密着させたのち、銅巻き線タイプのアンテナを形成しICチップに接合した。続いて、ICチップの回路面の上を覆うように樹脂1を塗布し、硬化させることでICモジュール1を作製した(図1参照。)。
【0133】
ICモジュール1における樹脂1の種類を以下のごとく変更して、それぞれのICモジュール1A〜1Gを作製した。
樹脂1A:2液硬化型弾性エポキシ接着剤:東邦化成工業株式会社製 ウルタイト1540セットを用いた主剤と硬化剤
樹脂1B:UV硬化アクリル共重合樹脂:ダイセルサイテック株式会社製 ACA320(酸価130mgKOH/g)
樹脂1C:UV硬化アクリル共重合樹脂:ダイセルサイテック株式会社製 ACA200(酸価110mgKOH/g)
樹脂1D:UV硬化アクリル共重合樹脂:ダイセルサイテック株式会社製 ACA250(酸価75mgKOH/g)
樹脂1E:UV硬化アクリレート樹脂:ダイセルサイテック株式会社製 Ebecryl 11(酸価20mgKOH/g)
樹脂1F:UV硬化アクリレート樹脂:ダイセルサイテック株式会社製 Ebecryl 112(酸価4mgKOH/g)
樹脂1G:UV硬化アクリレート樹脂:ダイセルサイテック株式会社製 Ebecryl 110(酸価0.3mgKOH/g)
樹脂1B〜1Gの樹脂は、UV硬化開始剤として日本チバガイギー社製イルガキュア184を5部添加して、500mjの露光を与えることにより樹脂硬化を実施した。
【0134】
〈ICカードの作製〉
図2及び図3に、本発明のICカード、個人認証カードの積層構成の一例で示す。
【0135】
下記の表面支持体および裏面支持体を使用し、樹脂2を120℃で溶融し、ICモジュール1A〜1Gを挟み込み、ICカード11〜17を作製した。
【0136】
樹脂2には、Henkel社製Macroplast QR3460(湿気硬化型ホットメルト接着剤:MDI含有量1%)を使用した。
【0137】
支持体1;
表面支持体および裏面支持体は厚さ125μm、の白色ポリエステルシートを使用した。
【0138】
(表面支持体の作製)
前記支持体1(125μm)にコロナ放電処理した面に下記組成の第1受像層形成用塗工液、第2受像層形成用塗工液及び第3受像層形成用塗工液をこの順に塗布乾燥して、それぞれの厚みが0.2μm、2.5μm、0.5μmになる様に積層することにより受像層を形成した。
【0139】
〈第1受像層形成用塗工液〉
ポリビニルブチラール樹脂〔積水化学工業(株)製:エスレックBL−1〕 9部
イソシアネート〔日本ポリウレタン工業(株)製:コロネートHX〕 1部
メチルエチルケトン 80部
酢酸ブチル 10部
〈第2受像層形成用塗工液〉
ポリビニルブチラール樹脂〔積水化学工業(株)製:エスレックBX−1〕 6部
金属イオン含有化合物(化合物MS) 4部
メチルエチルケトン 80部
酢酸ブチル 10部
〈第3受像層形成用塗工液〉
ポリエチレンワックス〔東邦化学工業(株)製:ハイテックE1000〕 2部
ウレタン変性エチレンアクリル酸共重合体〔東邦化学工業(株)製:ハイテックS62 54〕 8部
メチルセルロース〔信越化学工業(株)製:SM15〕 0.1部
水 90部
【0140】
【化5】

【0141】
(フォーマット印刷)
樹脂凸版印刷法により、ロゴとOPニスを順次印刷した。
【0142】
(裏面支持体の作製)
(筆記層の作製)
前記支持体裏シート125μmにコロナ放電処理した面に下記組成の第1筆記層形成用塗工液、第2筆記層形成用塗工液及び第3筆記層形成用塗工液をこの順に塗布乾燥して、それぞれの厚みが5μm、15μm、0.2μmになる様に積層することにより筆記層を形成した。
【0143】
〈第1筆記層形成用塗工液〉
ポリエステル樹脂〔東洋紡績(株)製:バイロン200〕 8部
イソシアネート〔日本ポリウレタン工業(株)製:コロネートHX〕 1部
二酸化チタン粒子〔石原産業(株)製:CR80〕 1部
メチルエチルケトン 80部
酢酸ブチル 10部
〈第2筆記層形成用塗工液〉
ポリエステル樹脂〔東洋紡績(株)製:バイロナールMD1200〕 4部
シリカ 5部
二酸化チタン粒子〔石原産業(株)製:CR80〕 1部
水 90部
〈第3筆記層形成用塗工液〉
ポリアミド樹脂〔三和化学工業(株)製:サンマイド55〕 5部
メタノール 95部
得られた筆記層の中心線平均粗さは1.34μmであった。
【0144】
〈ICカード用のシートの作製〉
図4はICカードの製造方法の一例を示す図である。ICカードの製造装置9には、第1のシート材1を送り出す送出軸10が設けられ、この送出軸10から送り出される第1のシート材1はガイドローラ11、駆動ローラ12に掛け渡されて供給される。送出軸10とガイドローラ11間には、プリケーターコーター13が配置されている。アプリケーターコーター13は接着剤層2aを所定の厚さでシートに塗工する。
【0145】
又、ICカードの製造装置9には、第2のシート材4を送り出す送出軸14が設けられ、この送出軸14から送り出される第2のシート材4はガイドローラ15、駆動ローラ16に掛け渡されて供給される。送出軸14とガイドローラ15間には、アプリケーターコーター17が配置されている。アプリケーターコーター17は接着剤層2bを所定の厚さでシートに塗工する。
【0146】
接着剤が塗工された第1のシート材と、第2のシート材とは離間して対向する状態から接触して搬送路18に沿って搬送される。第1のシート材と、第2のシート材の離間して対向する位置には、ICモジュール3が挿入される。
【0147】
ICモジュール3は単体あるいはシートやロール状で複数で供給される。ICカードの製造装置9の搬送路18中には、第1のシート材と、第2のシート材の搬送方向に沿って、加熱ラミネート部19、切断部20が配置される。加熱ラミネートは真空加熱ラミネートであることが好ましい。又加熱ラミネート部19の前には保護フィルム供給部を設けても良く、搬送路18の上下に対向して配置されるのが好ましい。加熱ラミネート部19は、搬送路18の上下に対向して配置される平型の加熱ラミネート上型21と加熱ラミネート下型22とからなる。加熱ラミネート上型21と下型22は互いに接離する方向に移動可能に設けられている。加熱ラミネート部19を経た後は切断部にてシート材から所定の大きさにカットする。
【0148】
(ICカード用シート1の作製)
図4に示したカード製造装置を使用し、第1の支持体および第2の支持体として前記裏面支持体及び受像層を有する表面支持体を使用した。
【0149】
受像層を有する表面支持体に樹脂2をTダイを使用してカード厚みが加工後760μmになるよう塗工し、図1に示す構成のICモジュール1を回路面が裏面支持体側になるように載置し上下のシートで挟み込み80℃で1分間ラミネートして作製した。このように作製されたICカード用シートの厚みは760μmであった。
【0150】
〈打ち抜き〉
このように作製された、ICカード用のシートを、以下のICカードを打ち抜き金型装置によって、打ち抜き加工を施した。
【0151】
(個人認証用カードへの個人情報記載方法及び表面保護方法)
前記打ち抜き加工を施したICカードに下記により顔画像と属性情報とフォーマット印刷を設けた個人認証カードの作製を行った。
【0152】
(昇華型感熱転写記録用のインクシートの作製)
裏面に融着防止加工した厚さ6μmのポリエチレンテレフタレートシートに下記組成のイエローインク層形成用塗工液、マゼンタインク層形成用塗工液、シアンインク層形成用塗工液を各々の厚みが1μmになる様に設け、イエロー、マゼンタ、シアンの3色のインクシートを得た。
【0153】
〈イエローインク層形成用塗工液〉
イエロー染料(化合物Y−1) 3部
ポリビニルアセタール〔電気化学工業(株)製:デンカブチラールKY−24〕 5.5部
ポリメチルメタアクリレート変性ポリスチレン〔東亜合成化学工業(株)製:レデダG P−200〕 1部
ウレタン変性シリコンオイル〔大日精化工業(株)製:ダイアロマーSP−2105〕 0.5部
メチルエチルケトン 70部
トルエン 20部
〈マゼンタインク層形成用塗工液〉
マゼンタ染料(化合物M−1) 2部
ポリビニルアセタール〔電気化学工業(株)製:デンカブチラールKY−24〕 5.5部
ポリメチルメタアクリレート変性ポリスチレン〔東亜合成化学工業(株)製:レデダG P−200〕 2部
ウレタン変性シリコンオイル〔大日精化工業(株)製:ダイアロマーSP−2105〕 0.5部
メチルエチルケトン 70部
トルエン 20部
〈シアンインク層形成用塗工液〉
シアン染料(化合物C−1) 1.5部
シアン染料(化合物C−2) 1.5部
ポリビニルアセタール 5.6部
〔電気化学工業(株)製:デンカブチラールKY−24〕
ポリメチルメタアクリレート変性ポリスチレン〔東亜合成化学工業(株)製:レデダG P−200〕 1部
ウレタン変性シリコンオイル〔大日精化工業(株)製:ダイアロマーSP−2105〕 0.5部
メチルエチルケトン 70部
トルエン 20部
【0154】
【化6】

【0155】
(溶融型感熱転写記録用のインクシートの作製)
裏面に融着防止加工した厚さ6μmのポリエチレンテレフタレートシートに下記組成のインク層形成用塗工液を厚みが2μmになる様に塗布乾燥してインクシートを得た。
【0156】
〈インク層形成用塗工液〉
カルナバワックス 1部
エチレン酢酸ビニル共重合体〔三井デュポンケミカル社製:EV40Y〕 1部
カーボンブラック 3部
フェノール樹脂〔荒川化学工業(株)製:タマノル521〕 5部
メチルエチルケトン 90部
(顔画像の形成)
受像層と昇華型感熱転写記録用のインクシートのインク側を重ね合わせインクシート側からサーマルヘッドを用いて出力0.23W/ドット、パルス幅0.3〜4.5m秒、ドット密度16ドット/mmの条件で加熱することにより画像に階調性のある人物画像を受像層に形成した。この画像においては上記色素と受像層のニッケルが錯体を形成している。
【0157】
(文字情報の形成)
OPニス部と溶融型感熱転写記録用のインクシートのインク側を重ね合わせインクシート側からサーマルヘッドを用いて出力0.5W/ドット、パルス幅1.0m秒、ドット密度16ドット/mmの条件で加熱することにより文字情報をOPニス上に形成した。
【0158】
(表面保護方法)
(表面保護層形成方法)
(活性光線硬化型転写箔1の作製)
0.1μmのフッ素樹脂層の離型層を設けた厚み25μmのポリエチレンテレフタレートフィルム−2の離型層上に下記組成物を積層し活性光線硬化型転写箔1の作製を行った。
【0159】
(活性光線硬化性化合物)
新中村化学社製 A−9300/新中村化学社製 EA−1020=
35/11.75部
反応開始剤
イルガキュア184〔日本チバガイギー社製〕 5部
添加剤不飽和基含有樹脂 48部
その他の添加剤
大日本インキ界面活性剤F−179 0.25部
〈中間層形成塗工液〉 膜厚1.0μm
ポリビニルブチラール樹脂〔積水化学(株)製:エスレックBX−1〕 3.5部
タフテックスM−1913(旭化成) 5部
硬化剤 ポリイソシアネート[コロネートHX 日本ポリウレタン製] 1.5部
メチルエチルケトン 90部
塗布後硬化剤の硬化は、50℃、24時間で行った。
【0160】
〈接着層形成塗工液〉 膜厚0.5μm
ウレタン変性エチレンエチルアクリレート共重合体〔東邦化学工業(株)製:ハイテッ クS6254B〕 8部
ポリアクリル酸エステル共重合体〔日本純薬(株)製:ジュリマーAT510〕2部
水 45部
エタノール 45部
さらに画像、文字が記録された前記受像体上に前記構成からなる活性光線硬化型転写箔1を用いて表面温度200℃に加熱した、直径5cmゴム硬度85のヒートローラーを用いて圧力1.47×107Pa(150kg/cm2)で1.2秒間熱をかけて転写をおこなった。
【0161】
〈評価方法〉
こうして作製したICカード11〜17について、以下の評価を実施した。
【0162】
<樹脂2の硬化反応速度>
仕上がったICカードをナイフにより樹脂2のみを取りだし、樹脂2をFT−IRで測定し評価した。評価は、NCO基が95%消滅した日数を樹脂2の硬化終了日数算出することで樹脂2の反応速度を評価した。
【0163】
<樹脂2密着性と耐久性>
JIS K6404−6 の揉み試験装置を用い、チップ上をクランプし振幅50mm、間隙30mm、120回/分で繰り返し曲げを100回行った。試験後動作、カードを分解し、樹脂1と樹脂2界面の剥離や破損の有無、及びICチップの動作機能を確認した。
◎・・・剥離・破損なく、チップ動作も変化なし
○・・・剥離なくチップ動作も問題ないが、やや変形の痕跡が残っている
△・・・樹脂間の剥離が認められるが、チップ動作も問題ない
×・・・樹脂間の剥離・破損が認められ、チップ動作も不安定、あるいは動作不能
<ICカードの印画品質>
作製したカードに昇華画像を印画し、かすれ具合を評価した。
◎・・・問題なく印画できる
○・・・一部濃度が低下する部分があるが判別できるレベルである
△・・・一部濃度が低下し判別できないレベルである
×・・・完全に色抜けする部分がある
上記評価結果を表1に示す。
【0164】
【表1】

【0165】
表1に示した結果から明らかなように、本発明のICカードにおける樹脂2の硬化反応速度、密着性、及び耐久性は比較例より優れていて、かつICカードの印画品質も優れていることが分かる。
【0166】
実施例2
実施例1において、樹脂2のMDI含有量を表2に示すごとく変化させたこと以外同様にして、モジュール1C及びIEを用いたICカード21〜28を作製した。実施例1と同様に評価した結果を表2に示す。
【0167】
【表2】

【0168】
表2に示した結果から明らかなように、本発明のICカードにおける樹脂2の硬化反応速度、密着性、及び耐久性は比較例より優れていて、かつICカードの印画品質も優れていることが分かる。
【0169】
実施例3
以下のようなICモジュール2を作製した。
【0170】
ICモジュール2;
エッチングによりアンテナパターンの形成された厚み38μmの支持体に、厚み65μm、3×3mm角のICチップを導電性接着剤厚み20μmでバンプを接合し、ついでSUS301からなる厚み120μmの4×4mm角板状の平板補強板を回路面と反対側に樹脂1を塗布し、硬化させることで補強板を固定し、ICモジュール2を得た(図5参照。)。
【0171】
ICモジュール2の作製において、樹脂1を実施例1に示す樹脂1A〜1Gを同様に使用することで、ICモジュール2A〜2Gを作製した。
【0172】
実施例1において、ICモジュール1の代わりにICモジュール2A〜2Gを用いて、ラミネート条件を120℃で30秒間に変更したこと以外は同様にしてICカードを作製し、実施例1と同様に評価した。
【0173】
評価結果は実施例1と同様に、本発明の上記手段により本発明の効果が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0174】
【図1】ICモジュール
【図2】本発明のICカードの積層構成の一例
【図3】個人認証カードの積層構成の一例
【図4】カード製造装置
【図5】ICモジュール
【符号の説明】
【0175】
A1,A2 ICモジュール
A11,A21 樹脂1
A12 アンテナ
A13,A23 ICチップ
A14,A24 チップ回路
A15,A25 補強板
A16 粘着材
A22 エッチングアンテナパターン
A26 バンプ
A27 支持体
B1 樹脂1
B2 樹脂2
B3 ICチップ
B4 アンテナ
B5 補強板
B6 表面支持体
B7 裏面支持体
C ICカード
C1 ICチップ
C2 ICモジュール
C3 属性識別情報
C4 文字情報部
C5 画像情報部
1,4 シート材(支持体)
3 ICモジュール
9 ICカード製造装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2種以上の硬化性樹脂により少なくとも二重に封止されたICチップを含む非接触ICカードにおいて、該ICチップの回路面に隣接する第一の硬化性樹脂と、該第一の硬化性樹脂に隣接する第二の硬化性樹脂を含有し、該第二の硬化性樹脂は、該第一の硬化性樹脂により硬化が促進された樹脂であることを特徴とする非接触ICカード。
【請求項2】
前記第一の硬化性樹脂の酸価が110mgKOH/g以下であり、第二の硬化性樹脂がイソシアネート基を含有することを特徴とする請求項1に記載の非接触ICカード。
【請求項3】
前記第一の硬化性樹脂の酸価が4〜75mgKOH/gであることを特徴とする請求項1又は2に記載の非接触ICカード。
【請求項4】
前記第二の硬化性樹脂が、ジフェニルメタンジイソシアネートを含有し、その含有量が0.5〜1.5質量%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の非接触ICカード。
【請求項5】
前記第二の硬化性樹脂が、前記第一の硬化性樹脂に隣接して配置されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の非接触ICカード。
【請求項6】
前記第二の硬化性樹脂が湿気硬化性ホットメルト樹脂であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の非接触ICカード。
【請求項7】
前記第一の硬化性樹脂が紫外線硬化性樹脂又は熱硬化性樹脂であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の非接触ICカード。
【請求項8】
前記第一の硬化性樹脂が紫外線硬化性樹脂であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の非接触ICカード。
【請求項9】
前記第二の硬化性樹脂が、80〜120℃の温度範囲で、塗布及び貼り合わされたことを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の非接触ICカード。
【請求項10】
前記ICチップの非回路面側に補強部材を有することを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の非接触ICカード。
【請求項11】
前記ICチップを挟んで対向する2つの支持体の一方の支持体表面上に氏名及び顔画像を含む個人識別情報が記録される受像層を有し、かつ他方の支持体表面上に筆記可能な筆記層を有することを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の非接触ICカード。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の非接触ICカードの製造方法であって、ICチップの回路面に隣接して第一の硬化性樹脂を設置する工程と該第一の硬化性樹脂により硬化反応を促進される第二の硬化性樹脂を設置する工程とを有することを特徴とする非接触ICカードの製造方法。
【請求項13】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の非接触ICカードの製造方法であって、ICチップを挟んで対向する2つの支持体の間に硬化性樹脂を設置する工程と硬化性樹脂を80〜120℃の温度範囲で塗布し貼り合わせる工程とを有することを特徴とする請求項12に記載の非接触ICカードの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−118005(P2008−118005A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−301331(P2006−301331)
【出願日】平成18年11月7日(2006.11.7)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】