説明

駆動素子アレイ及びその製造方法並びに表示装置

【課題】大電流を含む変調電流で発光素子を低電圧駆動させることができるとともに、製造コストの点でも有利な駆動素子アレイを提供する。
【解決手段】パッシブマトリクス方式で電流駆動する発光素子21と、その発光素子21への電流供給を制御するカラム選択用トランジスタ31A及びライン選択用トランジスタ31Bとを有する駆動素子アレイ10であって、そのカラム選択用トランジスタ31Aとライン選択用トランジスタ31Bを、発光素子21と同一の基板19上に形成された縦型有機トランジスタであるように構成して上記課題を解決した。この縦型有機トランジスタ31A,31Bは、電流変調を容易に行うことができ、特に大面積の表示装置に用いる場合には大電流を発光素子列に供給することができる。さらに、縦型有機トランジスタ31A,31Bには、光吸収層又は光反射層を施す等の遮光処理がなされていることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動素子アレイ及びその製造方法並びに表示装置に関し、更に詳しくは、大電流での駆動が必要な発光素子をパッシブマトリクス方式で電流駆動させる駆動素子アレイ及びその製造方法並びに表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置のように画像表示を電圧駆動で行う表示装置は、その仕様に応じ、各単画素をアクティブ駆動させるアクティブマトリクス方式の駆動素子、あるいはパッシブ駆動させるパッシブマトリクス方式の駆動素子を備えている。アクティブマトリクス方式の駆動素子は、それぞれの画素内にトランジスタやキャパシタ等を備えている。そのため、表示画像の高精細化の点で有利である反面、そうしたトランジスタやキャパシタ等を各画素内に作り込む必要があるために工程が増すなどしてコストが嵩むという難点がある。一方、パッシブマトリクス方式の駆動素子はトランジスタやキャパシタ等を各画素内に作り込まないため、構造が簡単で作製が容易であり、製造コストの点で有利である。
【0003】
こうしたパッシブマトリクス方式の駆動素子において、画素表示を電圧駆動で制御する液晶表示装置では、駆動素子(ドライバともいう。)から各画素に制御可能な任意の電流を流す必要はないが、画像表示を電流駆動で制御するエレクトロルミネッセンス表示装置(EL表示装置と略す。)では、EL素子に電荷(電子と正孔)を供給する必要があり、しかもその発光輝度が電荷量に対応していることから、駆動素子であるドライバから各EL素子に任意の電流を供給しなければならない。そのため、パッシブマトリクス方式においては、任意の電流を流すことが可能なEL表示装置用の駆動素子が必要とされている。特にパッシブマトリクス方式で駆動させる大画面のEL表示装置においては、多数のEL素子が並ぶEL素子列に大電流を供給しなければならないため、駆動素子には、電流制御が可能で大電流を供給でき、しかも安価であることが要求されている。
【0004】
特許文献1は、構造が簡素化されたEL素子用の駆動回路が提案されている。この駆動回路は、EL素子とカラム選択用トランジスタとライン選択用トランジスタとが任意の順番で直列接続された複数のモジュールを備えたものであり、EL素子の各々を駆動し発光させる、とされている。同文献1に記載のカラム選択用トランジスタとライン選択用トランジスタは、NPN型又はPNP型の電流制御可能なバイポーラトランジスタであると考えられ、有機EL素子が形成された発光パネルの外縁に装着されていると考えられる。しかしながら、そうしたバイポーラトランジスタは、成膜プロセスが複雑であるとともに高温プロセスが必須となるので、EL表示装置が目指すプラスチック基板上への成膜が困難であり、コストアップになるという難点がある。
【0005】
一方、トランジスタとしてポリシリコン薄膜トランジスタや電界効果型トランジスタを採用する場合も、上記バイポーラトランジスタの場合と同様、高温プロセスが必須となるのでプラスチック基板上への作製が困難であり、コストアップになるという難点がある。また、有機半導体を用いた有機電界効果型トランジスタは低温プロセスで作製可能なので低コスト化に有利であるが、用いられる有機半導体はキャリア移動度が低いため、電流変調量が小さい、応答速度が遅い等の問題がある。なお、電流変調量が小さいという問題に対としては、面積を大きくすることが挙げられるが、そのようにすると表示領域の外縁の面積が大きくなってしまうという問題がある。
【特許文献1】特開2005−222005号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の有機電界効果型トランジスタの問題を解決するものとして、例えば下記特許文献2〜5及び非特許文献1に示すような縦型有機トランジスタが提案されている。縦型有機トランジスタは、上下に配置したコレクタ電極とエミッタ電極との間に有機半導体を挟み、その有機半導体内に中間電極を形成した積層構造であるため、有機半導体が担うチャネル長を例えば1μm以下に短くできること、電極面全体を有効利用できるために高速応答や大電力化が可能となることがある。そのため、キャリア移動度の低い有機半導体を用いた場合であっても、低電圧での高速応答が可能になる。さらに、縦型有機トランジスタは、有機半導体を間に挟んで上下に対向するエミッタ電極とコレクタ電極とに一定電圧を印加した場合において、エミッタ電極と有機半導体内に設けられたベース電極との間に電圧を印加しないときはエミッタ電極とコレクタ電極との間にほとんど電流は流れないが、エミッタ電極とベース電極との間に電圧を印加するとエミッタ電極とコレクタ電極との間に流れる電流量が大幅に増加し、電流を変調することができるという利点が謳われている。こうした電流変調は以下のメカニズムによるものと考えられている。すなわち、有機半導体がエミッタ電極とコレクタ電極の両方に接するとともにストライプ状の中間電極間の開口部にも存在しているので、エミッタ電極と中間電極との間に電圧が印加されることによって、有機半導体からなる開口部を流れる電流が変調されることによると考えられている。
【特許文献2】特開2004−327615号公報
【特許文献3】特開2007−27566号公報
【特許文献4】特開2005−243871号公報
【特許文献5】特開2003−324203号公報(請求項1)
【非特許文献1】工藤一浩、「有機トランジスタの現状と将来展望」、応用物理、第72巻、第9号、第1151頁〜第1156頁(2003年)
【0007】
さらに、本件出願人は、この出願に先立って、前記各文献に記載の縦型有機トランジスタよりも電流変調を容易且つ効率的に変調でき、発光輝度等の制御性を高めた低コストの縦型有機トランジスタを提案した(特願2007−226664号)。
【0008】
本発明の目的は、パッシブマトリクス方式で電流駆動する発光素子と、その発光素子への電流供給を制御するカラム選択用トランジスタ及びライン選択用トランジスタとを有する駆動素子アレイにおいて、大電流を含む変調電流で発光素子を低電圧駆動させることができるとともに、製造コストの点でも有利な駆動素子アレイ及びその製造方法を提供することにある。
【0009】
また、本発明の他の目的は、上記駆動素子アレイを備えた低コストの表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための本発明の駆動素子アレイは、パッシブマトリクス方式で電流駆動する発光素子と、該発光素子への電流供給を制御するカラム選択用トランジスタ及びライン選択用トランジスタとを有する駆動素子アレイであって、前記カラム選択用トランジスタと前記ライン選択用トランジスタが、前記発光素子と同一の基板上に形成された縦型有機トランジスタであることを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、発光素子への電流供給を制御するカラム選択用トランジスタとライン選択用トランジスタを縦型有機トランジスタとしているが、その縦型有機トランジスタは電流変調を容易に行うことができ、特に大面積の表示装置に用いる場合には大電流を発光素子列に供給することができるので、大電流を含む変調電流で発光素子を駆動させることが可能となる。さらに本発明によれば、縦型有機トランジスタを発光素子と同一の基板上に形成しているが、縦型有機トランジスタは、上下に配置したコレクタとエミッタとの間に有機半導体を挟み、その有機半導体内に中間電極を形成した積層構造であるため、発光素子を形成する基板と同一基板上に容易に形成することができ、製造コストの点でも有利となる。また、縦型有機トランジスタは無機系のトランジスタに比べて低温での成膜が可能であるので、プラスチック基板上への形成も容易となる。
【0012】
加えて、本発明の駆動素子アレイの外側に、液晶表示装置等で汎用ドライバとして用いられる電圧駆動ドライバを装着して表示装置を構成すれば、表示装置全体として低電圧且つ高速応答で駆動させることができる。このとき、その汎用ドライバからカラム選択用トランジスタとライン選択用トランジスタに電圧制御信号が供給され、その電圧制御信号に応じ、カラム選択用トランジスタとライン選択用トランジスタで電流変調されて所定電流が発光素子に供給される。したがって、縦型有機トランジスタをカラム選択用トランジスタとライン選択用トランジスタとした本発明の駆動素子アレイは、汎用ドライバを併せて用いることで、低コストの表示装置を構成することができる。
【0013】
本発明の駆動素子アレイの好ましい態様として、前記縦型有機トランジスタが遮光処理されているように構成する。
【0014】
この発明によれば、縦型有機トランジスタを遮光処理するので、光の作用によるオフ電流の上昇を抑制することができ、オフ時での発光素子の色味を適切なものとすることができる。
【0015】
本発明の駆動素子アレイの好ましい態様として、前記基板上に形成された発光素子から発光する光が前記基板側から出射する場合において、前記基板の縦型有機トランジスタ側又は前記縦型有機トランジスタの基板側が、遮光処理されているように構成する。
【0016】
この発明によれば、基板内を伝わって縦型有機トランジスタに入射する可能性のある光や、室内蛍光灯等のような外部からの光を遮光することができる。
【0017】
本発明の駆動素子アレイの好ましい態様として、前記遮光処理は、光吸収層又は光反射層を施すことによってなされているように構成する。
【0018】
この発明によれば、遮光処理として光吸収層又は光反射層を設けるので、縦型有機トランジスタへの光の侵入を防ぐことができる。
【0019】
本発明の駆動素子アレイの好ましい態様として、前記縦型有機トランジスタが、上部電極と、下部電極と、両電極間に設けられた有機半導体と、該有機半導体内に設けられた中間電極と、を有し、前記中間電極が、連続する絶縁性金属化合物と、該絶縁性金属化合物内に分布する粒状金属とを有する層状連続体であるように構成する。
【0020】
この発明によれば、中間電極である層状連続体が、連続する絶縁性金属化合物とその絶縁性金属化合物内に分布する粒状金属とを有するように構成したので、粒状金属以外の絶縁性金属化合物の部分(「開口部」に相当する部分)が、上部電極と下部電極との間を流れる電流の透過部として作用し、粒状金属がベースとして作用する。こうした層状連続体は、薄膜状の金属を成膜した後の化学反応により絶縁性の金属化合物を生成することによって容易に形成される。したがって、この発明によれば、粒状金属の周りに絶縁性金属化合物が存在した態様で層状連続体が構成されているので、従来の開口部として作用する絶縁性金属化合物からなる透過部が従来のような幅の広い開口部とはならずに微細化される。その結果、エミッタとベース(粒状金属)との間に印加した電圧によって影響される領域がベース(粒状金属)のエッジ近傍に限定されても、上部電極と下部電極との間を流れる電流を効率的に変調することができる。
【0021】
本発明の縦型有機トランジスタの好ましい態様は、(1)前記中間電極にバスラインが設けられているように構成したり、(2)前記上部電極にバスラインが設けられているように構成したりすることができる。
【0022】
この発明によれば、非常に薄く、一般的な金属よりも抵抗の高い中間電極や上部電極に導電性のよいバスラインを設けたので、電圧降下を防ぎ、電流変調特性の低下を抑制することができる。また、バスラインを中間電極や上部電極に設けるが、そのバスラインとそれ以外の電極との間隔を例えば20μm程度離して形成することにより、バスラインを経由した電流が他の電極に漏洩するのを防ぐことができる。なお、前記(1)については、前記バスラインを、前記中間電極と前記下部電極乃至前記上部電極とが平面視でオーバーラップしない部位に形成されるように構成することができ、また、前記(2)においては、前記バスラインを、前記上部電極と前記下部電極乃至前記中間電極とが平面視でオーバーラップしない部位に形成されるように構成することができる。これらのバスラインは、金属、酸化物半導体及び導電性高分子から選ばれるいずれかで形成されていることが好ましい。
【0023】
本発明の駆動素子アレイの好ましい態様として、前記発光素子が、少なくとも陽極と、陰極と、両極間に設けられた発光層とを有し、前記発光素子の陽極側にはp型特性を示す縦型有機トランジスタが配置され、前記発光素子の陰極側にはn型特性を示す縦型有機トランジスタが配置されているように構成する。
【0024】
この発明によれば、発光素子の陽極にはp型特性を示す縦型有機トランジスタから所定の電荷量の正電荷(正孔)が供給され、発光素子の陰極にはn型特性を示す縦型有機トランジスタから所定の電荷量の負電荷(電子)が供給されるので、制御された輝度で発光素子を発光させることができる。
【0025】
本発明の駆動素子アレイの好ましい態様として、前記縦型有機トランジスタが保護層で覆われているように構成する。
【0026】
上記課題を解決するための本発明の表示装置は、上記した本発明に係る駆動素子アレイと、該駆動素子アレイの外側に配置され、該駆動素子アレイに電圧制御信号を供給するドライバとを備えることを特徴とする。
【0027】
この発明によれば、上記本発明に係る駆動素子アレイとその駆動素子アレイに電圧制御信号を供給するドライバとを備えるが、そのドライバとして液晶表示装置等で用いられる汎用ドライバを採用できるので、表示装置を低コストとすることができる。また、そうした汎用ドライバは、縦型有機トランジスタを低電圧且つ高速応答で駆動させるので、発光素子に所定の電流量を応答性よく制御することができ、その結果、発光輝度等の制御性を高めることができる。
【0028】
上記課題を解決するための本発明の駆動素子アレイの製造方法は、パッシブマトリクス方式で電流駆動する発光素子と、該発光素子への電流供給を制御するカラム選択用トランジスタ及びライン選択用トランジスタとを有する駆動素子アレイの製造方法であって、基板上に前記カラム選択用の縦型有機トランジスタと前記ライン選択用の縦型有機トランジスタを形成するトランジスタ形成工程と、前記トランジスタ形成工程後、前記縦型有機トランジスタを形成する基板と同じ基板上に発光素子を形成する発光素子形成工程と、を少なくとも有することを特徴とする。
【0029】
この発明によれば、基板上にカラム選択用とライン選択用の縦型有機トランジスタを形成する工程と、その後、同じ基板上に発光素子を形成する工程とを少なくとも有するので、同一基板上への連続した成膜プロセスによって駆動素子アレイを製造することができる。その結果、駆動素子アレイの効率的な製造と低コスト化を図ることができる。また、縦型有機トランジスタは無機系のトランジスタに比べて低温での成膜が可能であるので、プラスチック基板上への形成も容易となる。
【0030】
本発明の駆動素子アレイの製造方法の好ましい態様として、前記基板上に形成された発光素子から発光する光が前記基板側から出射する場合において、前記基板の縦型有機トランジスタ側又は前記縦型有機トランジスタの基板側を遮光処理する遮光処理工程をさらに有するように構成する。
【0031】
この発明によれば、前記の場合において、基板の縦型有機トランジスタ側又は縦型有機トランジスタの基板側を遮光処理する遮光処理工程を有するので、基板内を伝わって縦型有機トランジスタに入射する可能性のある光を遮光することができる。その結果、光の作用によって縦型有機トランジスタのオフ電流が上昇するのを抑制することができ、オフ時での発光素子の色味を適切なものとした駆動素子アレイを製造できる。
【0032】
本発明の駆動素子アレイの製造方法の好ましい態様として、前記遮光処理工程が、光吸収層形成工程又は光反射層形成工程であるように構成する。
【0033】
この発明によれば、遮光処理として光吸収層又は光反射層を設ける工程を有するので、縦型有機トランジスタへの光の侵入を防ぐことができる駆動素子アレイを製造できる。
【0034】
本発明の駆動素子アレイの製造方法の好ましい態様として、前記縦型有機トランジスタが、上部電極と、下部電極と、両電極間に設けられた有機半導体と、該有機半導体内に設けられた中間電極とを有し、前記有機半導体が、前記上部電極側の上側有機半導体層と前記下部電極側の下側有機半導体層とからなるものであって、前記トランジスタ形成工程が、前記下部電極が形成された基板上に前記下側有機半導体層を形成する工程と、前記下側有機半導体層上に、連続する絶縁性金属化合物と該絶縁性金属化合物内に分布する粒状金属とを有する中間電極を形成する工程と、前記中間電極上に前記上側有機半導体層を形成する工程と、前記上側有機半導体層上に前記上部電極を形成する工程と、を有するように構成する。
【0035】
この発明によれば、下側有機半導体層上に、連続する絶縁性金属化合物と該絶縁性金属化合物内に分布する粒状金属とを有する中間電極を形成する工程を備えるが、この工程で形成された中間電極は、粒状金属からなる部分がベースとして作用し、粒状金属が形成されていない絶縁性金属化合物からなる部分が電流透過部である開口部として作用する。こうした層状連続体は、例えば薄膜状の金属を形成した後の化学反応等により絶縁性の金属化合物を生成することによって容易に形成されるので、製造される縦型有機トランジスタの製造コストを低減することができる。その結果、その縦型有機トランジスタを含む駆動素子アレイの製造コストの低減化を図ることができる。
【0036】
本発明の駆動素子アレイの製造方法の好ましい態様として、前記中間電極を形成する工程が、前記下側有機半導体層上に金属膜を形成する金属膜形成工程と、前記金属膜を部分的に絶縁化させて、連続する絶縁性金属化合物と、該縁性金属化合物内に分布する粒状金属とを生じさせる部分絶縁化工程と、を有するように構成する。
【0037】
この発明によれば、層状連続体態様からなる中間電極を形成する工程が、金属膜形成工程と部分絶縁化工程とを有するので、この工程後の中間電極は、連続する絶縁性金属化合物と、その絶縁性金属化合物内に分布する粒状金属とを有している。こうした形態からなる中間電極は、上記同様、例えば金属膜を形成した後の化学反応等により絶縁性の金属化合物を生じさせることによって容易に形成されるので、縦型有機トランジスタを含む駆動素子アレイの製造コストを低減することができる。
【0038】
本発明の駆動素子アレイの製造方法の好ましい態様として、(1)前記中間電極と前記下部電極乃至前記上部電極とが平面視でオーバーラップしない部位の前記基板上に、該中間電極に接続するバスラインを形成するバスライン形成工程を有するように構成したり、(2)前記上部電極と前記下部電極乃至前記中間電極とが平面視でオーバーラップしない部位の前記基板上に、該上部電極に接続するバスラインを形成するバスライン形成工程を有するように構成したりすることができる。これらのバスライン形成工程において、前記バスラインを、金属、酸化物半導体及び導電性高分子から選ばれるいずれかで形成することが好ましい。
【発明の効果】
【0039】
本発明の駆動素子アレイによれば、電流変調を容易に行うことができる縦型有機トランジスを備えるので、特に大面積の表示装置に用いる場合であっても、大電流を含む変調電流で発光素子を駆動させることが可能となる。さらに、発光素子を形成する基板と同一基板上に縦型有機トランジスタが形成されているので、製造コストの点でも有利な構造形態であるとともに、低温での成膜が可能でプラスチック基板上への形成も可能な構造形態であるという特徴がある。さらに、本発明の駆動素子アレイの外側に、液晶表示装置等で汎用ドライバとして用いられる電圧駆動ドライバを装着して表示装置を構成すれば、表示装置全体として低電圧且つ高速応答で駆動させることが可能となる。
【0040】
本発明の駆動素子アレイの製造方法によれば、同一基板上への連続した成膜プロセスによって製造できるので、効率的な製造と低コスト化を図ることができる。また、低温での成膜が可能となり、プラスチック基板上への形成も容易となる。また、基板の縦型有機トランジスタ側又は縦型有機トランジスタの基板側を遮光処理することにより、基板内を伝わって縦型有機トランジスタに入射する可能性のある光や、室内蛍光灯等のような外部からの光を遮光することができる。その結果、光の作用によって縦型有機トランジスタのオフ電流が上昇するのを抑制することができ、オフ時での発光素子の色味を適切なものとした駆動素子アレイを製造できる。
【0041】
本発明の表示装置によれば、低コスト化を図ることができるとともに、発光素子に所定の電流量を応答性よく制御することができ、その結果、発光輝度等の制御性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
以下に、本発明の駆動素子アレイ、その製造方法及び表示装置について、図面を参照して詳しく説明する。なお、本発明は、その技術的特徴を有すれば種々の変形が可能であり、以下に具体的に示す実施形態に限定されるものではない。
【0043】
[表示装置]
図1は、本発明の表示装置の一例を示す模式構成図である。本発明の表示装置10は、図1に示すように、駆動素子アレイ10と、その駆動素子アレイ10の外側に配置され、その駆動素子アレイ10に電圧制御信号を供給するドライバ40(40A,40B)とを備えている。この表示装置1を構成する駆動素子アレイ10は、本発明に係る後述の駆動素子アレイであり、ドライバ40としては、液晶表示装置等で一般に用いられている汎用ドライバを採用できる。本発明において、駆動素子アレイ10を構成する各構成要素は同一基板上に形成されている。一方、ドライバ40は、駆動素子アレイ40に電圧制御信号を供給できるように配線されていれば、駆動素子アレイ40と同一基板に装着されていてもよいし、別体として装着されていてもよい。以下では、最初に駆動素子アレイについて説明し、その後に汎用ドライバについて説明する。
【0044】
(駆動素子アレイ)
本発明の駆動素子アレイ10は、パッシブマトリクス方式で電流駆動する発光素子21と、その発光素子21への電流供給を制御するカラム選択用トランジスタ31A及びライン選択用トランジスタ31Bとを有するアレイである。全体構成としては、図1に示すように、発光素子部20と、発光素子部20の左部に配置されたカラム選択用トランジスタ部30Aと、発光素子部20の上部に配置されたライン選択用トランジスタ部30Bとで少なくとも構成されている。
【0045】
発光素子部20には、多数の発光素子21がマトリックス状に並んでおり、カラム選択用トランジスタ部30Aには、各列に並ぶ複数の発光素子21への電流供給を制御するn型トランジスタであるカラム選択用トランジスタ31Aが縦方向に並んでおり、ライン選択用トランジスタ部30Bには、各列に並ぶ複数の発光素子21への電流供給を制御するp型トランジスタであるライン選択用トランジスタ31Bが横方向に並んでいる。発光素子部20に形成された個々の発光素子21は、それぞれの行のカラム選択用トランジスタ31Aとそれぞれの列のライン選択用トランジスタ31Bとに接続し、それらのトランジスタ31A,31Bを制御することにより、発光素子21を発光させることができる。
【0046】
図1を平面視した場合において、カラム選択用トランジスタ部30Aは発光素子部20の左部に配置されているが、右部に配置されていてもよい。また、ライン選択用トランジスタ部30Bは発光素子部20の上部に配置されているが、下部に配置されていてもよい。さらに、カラム選択用トランジスタ部30Aとライン選択用トランジスタ部30Bの配置が逆になっていてもよい。なお、電源線34Bは電源(図示しない)に接続され、グラウンド線34Aは接地されている。
【0047】
図2は、画素を構成する発光素子21への接続形態を示す模式的な配線図である。本発明の駆動素子アレイ10は、図2に示すように、カラム選択線32A、カラム選択用トランジスタ31A、グラウンド線34A及びカラム配線33Aからなるカラム配線ルートと、ライン選択線32B、ライン選択用トランジスタ31B、電源線34B及びライン配線33Bからなるライン配線ルートと、それぞれの配線ルートが発光層を挟む陰極と陽極に接続する発光素子21とで、構成されている。
【0048】
カラム選択線32Aは、ドライバ40Aとカラム選択用トランジスタ31Aとの間の配線であり、ドライバ40Aから供給された電圧信号でカラム選択用トランジスタ31AをON/OFF制御して特定の発光素子21を選択する。同様に、ライン選択線32Bは、ドライバ40Bとライン選択用トランジスタ31Bとの間の配線であり、ドライバ40Bから供給された電圧信号でライン選択用トランジスタ31BをON/OFF制御して特定の発光素子21を選択する。こうしてカラム配線33Aとライン選択線33Bが選択され、マトリクス状に配置された発光素子21の行と列が選択され、発光させるべき発光素子21が特定される。
【0049】
図3は、画素を駆動する回路の模式的な構造図である。画素を駆動する回路は、図3に示すように、グラウンド側から電源側に向かって、カラム選択用トランジスタ31A、発光素子21、ライン選択用トランジスタ31Bの順で直列接続されている。本発明では、カラム選択用トランジスタ31Aとライン選択用トランジスタ31Bは、FET(電界効果型トランジスタ)やTFT(薄膜トランジスタ)ではなく、いずれも縦型有機トランジスタで構成している。この縦型有機トランジスタは、後述の図5等で詳しく説明するように、コレクタ12と第1有機半導体13bとベース14と第2有機半導体13aとエミッタ11との順で、それらを少なくとも有する積層体で構成されている。
【0050】
図3に示す回路図において、カラム選択用トランジスタ31Aはn型トランジスタであり、ベース14がカラム選択線32Aを介してドライバ40Aに接続され、エミッタ11がグラウンド線34Aを介してグラウンドに接続され、コレクタ12がカラム配線33Aを介して発光素子21の陰極27(図5を参照)に接続され、その陰極27に電子を供給する。一方、ライン選択用トランジスタ31Bはp型トランジスタであり、ベース14がライン選択線32Bを介してドライバ40Bに接続され、コレクタ12がライン配線33Bを介して発光素子21の陽極22(図5を参照)に接続され、その陰極27に正孔(ホール)を供給する。なお、エミッタ11は電源線34Bを介して電源に接続されている。
【0051】
図1〜図3に示すように、このように構成された駆動素子アレイ10では、カラム選択用トランジスタ31A及びライン選択用トランジスタ31Bのスイッチング動作によって発光素子21がON(発光)/OFF(非発光)する。カラム選択用トランジスタ31Aはn型トランジスタであり、カラム選択線32Aを通じてゲート14にカラム選択信号(パルス信号)が供給されたときにON状態となってコレクタ12−エミッタ11間を導通させ、カラム選択信号が供給されないときはOFF状態となってコレクタ12−エミッタ11間は非導通となる。一方、ライン選択用トランジスタ31Bはp型トランジスタであり、ライン選択線32Bを通じてゲート14にライン選択信号(パルス信号)が供給されたときにON状態となってコレクタ12−エミッタ11間を導通させ、ライン選択信号が供給されないときはOFF状態となってコレクタ12−エミッタ11間は非導通となる。
【0052】
図4は、回路を駆動したときの発光素子のON/OFF挙動を示す具体例である。本発明においては、n型トランジスタであるカラム選択用トランジスタ31Aとp型トランジスタであるライン選択用トランジスタ31Bの両方にそれぞれカラム選択信号とライン選択信号が供給されて両トランジスタ31A,31BがON状態となったときに、発光素子21に電流Icが流れ、発光素子21が発光する。なお、図4に示す例は実際の具体例であるが、信号供給がOFF状態からON状態になった時の発光素子21に流れる電流Icの立ち上がり応答時間と、信号供給がON状態からOFF状態になったときの発光素子21に流れる電流Icの立ち下がり応答時間のいずれも極めて短い結果を示している。
【0053】
本発明では、上述した回路で構成されているので、カラム選択信号やライン選択信号のパルス幅や振幅を変化させることによって、発光素子21を電流Icが流れる時間や電流Icの値を変調することができ、そうした電流Icに基づく各発光素子21の輝度を制御することができる。そして、カラム選択線32Aで列を選択し、ライン選択線32Bで行を選択することによって、特定の発光素子21を選択することができるので、各トランジスタ31A,31Bに供給すべきカラム選択信号とライン選択信号を制御することによって、各発光素子21の発光制御を行い、所望の画像をディスプレイ上に表示することができる。
【0054】
本発明において、発光素子21、カラム選択用トランジスタ31A、及びライン選択用トランジスタ31Bの連結順は特に限定されず、グラウンド側から電源側に向かって、発光素子21、カラム選択用トランジスタ31A及びライン選択用トランジスタ31Bの順で直列接続されていてもよいし、グラウンド側から電源側に向かって、カラム択用トランジスタ31A、ライン選択用トランジスタ31B及び発光素子21の順で直列接続されていてもよい。こうした変形態様においても、図3の例と同様、カラム選択用トランジスタ31A及びライン選択用トランジスタ31Bの両方にそれぞれカラム選択信号とライン選択信号が供給されたときに、発光素子21がON状態となって発光する。この変形例では、カラム選択用トランジスタ31Aの下流側にライン選択用トランジスタ31Bを配置させているが、これらの順番を逆にしてもよい。また、図3に示す回路内には、必要に応じて容量成分(キャパシタ)が設けられる。
【0055】
なお、発光素子21としては、有機EL素子(有機エレクトロルミネッセンス素子)を用いてもよいし、無機EL素子等を用いてもよい。また、画素を構成する個々の発光素子21は、単色構成の回路でもよいし、カラー表示のために少なくともR・G・B(赤・緑・青)の3色から選ばれる2色又は3色に対応する回路であってもよい。
【0056】
このように、本発明の表示装置1は、駆動素子アレイ10とその駆動素子アレイ10に電圧制御信号を供給するドライバ40A,40Bとを備えるが、そのドライバ40A,40Bとして液晶表示装置等で用いられる汎用ドライバを採用できるので、表示装置1を低コストとすることができる。また、そうした汎用ドライバは縦型有機トランジスタからなるカラム選択用トランジスタ31A及びライン選択用トランジスタ31Bを低電圧且つ高速応答で駆動させることができ、さらにその縦型有機トランジスタ(31A,31B)は容易に電流変調できるので、発光素子21に所定の電流量を応答性よく供給することができる。その結果、発光素子21の発光輝度等の制御性を高めることができる。
【0057】
(縦型有機トランジスタ)
次に、カラム選択用トランジスタ31A及びライン選択用トランジスタ31Bを構成する縦型有機トランジスタについて詳しく説明する。図5は、本発明の駆動素子アレイ10の模式的な断面形態図である。本発明の駆動素子アレイ10において、カラム選択用トランジスタ31Aを構成する縦型有機トランジスタはn型トランジスタであり、ライン選択用トランジスタ31Bを構成する縦型有機トランジスタはp型トランジスタであり、これらは発光素子21と同一の基板19上に形成されている。n型トランジスタとp型トランジスタとは、有機半導体13の形成材料によって構成することができる。こうした縦型有機トランジスタ31は、上部電極11と、下部電極12と、両電極11,12間に設けられた有機半導体13と、有機半導体13内に設けられた中間電極14とを有している。中間電極14については後の図6で詳しく説明するが、連続する絶縁性金属化合物14bと、絶縁性金属化合物14b内に分布する粒状金属14aとを有する層状連続体である。また、有機半導体13は、上部電極11と中間電極14との間に設けられた電荷輸送性の上側有機半導体層13aと、下部電極12と中間電極14との間に設けられた電荷輸送性の下側有機半導体層13bとで構成されている。
【0058】
なお、本発明において、上部電極11はエミッタ又はコレクタとして作用し、その上部電極11に対向する下部電極12はコレクタ又はエミッタとして作用し、中間電極14内に有する粒状金属14aはベースとして作用する。本願の説明においては、基板19上に形成された下部電極をコレクタ12として説明し、上部電極をエミッタ11として説明し、中間電極をベース14として説明する。したがって、図5に示す縦型有機トランジスタ31(31A,31B)は、基板側からコレクタ12(下部電極)、下側有機半導体層13b、ベース14(中間電極)、上側有機半導体層13a及びエミッタ11(上部電極)の順で形成された積層体である。
【0059】
図5において、n型トランジスタでのIbは、カラム選択用トランジスタ31Aを構成するエミッタ11−ベース14間にベース電圧Vbを印加したときの電流(ベース電流)であり、n型トランジスタでのIcは、カラム選択用トランジスタ31Aを構成するエミッタ11とコレクタ12との間にコレクタ電圧Vcを印加したときの電流(コレクタ電流)である。一方、p型トランジスタでのIbは、ライン選択用トランジスタ31Bを構成するエミッタ11−ベース14間にベース電圧Vbを印加したときの電流(ベース電流)である。
【0060】
この縦型有機トランジスタ31において、カラム選択用トランジスタ31Aを構成するエミッタ11とコレクタ12との間にコレクタ電圧Vcを印加し、さらにカラム選択用トランジスタ31Aを構成するエミッタ11−ベース14間にベース電圧Vbを印加すると、そのベース電圧Vbの作用により、エミッタ11から注入された電子が著しく加速されてベース14を構成する絶縁性金属化合物14bを透過し、カラム選択用トランジスタ31Aを構成するコレクタ12に到達し、さらにその電子が発光素子21内を通過して発光層24に到達する。一方、ライン選択用トランジスタ31Bから発光素子21には正孔が供給され、発光層24に到達する。すなわち、ベース電圧Vbの印加によって、カラム選択用トランジスタ31Aを構成するエミッタ11とコレクタ12との間に流れる電流Icを変調させることができ、その結果、変調電流に基づく電子を発光素子21内に注入でき、発光素子21はその注入電子量に基づいた発光輝度を任意に制御することができる。
【0061】
以下、縦型有機トランジスタの構成要素について詳しく説明する。
【0062】
(エミッタとコレクタ)
エミッタ(上部電極)11とコレクタ(下部電極)12とは、図5に示すように、有機半導体13を挟むように配置されている。図5に示す例では、コレクタ12は基板19上に設けられ、エミッタ11はコレクタ12と対向する上部に設けられている。エミッタ11とコレクタ12の構成材料としては、金属、導電性酸化物、導電性高分子等の薄膜が用いられる。なお、エミッタ11又はコレクタ12を基板19上に設ける場合には、その間にバリア層や平滑層等が設けられていてもよい(図示しない)し、基板19上に光遮蔽層(光吸収層又は光反射層など)が設けられていてもよい。
【0063】
コレクタ12の形成材料としては、例えば、ITO(インジウム錫オキサイド)、酸化インジウム、IZO(インジウム亜鉛オキサイド)、SnO、ZnO等の透明導電膜や、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリアルキルチオフェン誘導体、ポリシラン誘導体のような導電性高分子等を挙げることができる。一方、有機半導体13が後述する電子輸送性の有機化合物からなる場合、エミッタ11の形成材料としては、アルミ、銀等の単体金属、MgAg等のマグネシウム合金、AlLi、AlCa、AlMg等のアルミニウム合金、Li、Caをはじめとするアルカリ金属類、それらアルカリ金属類の合金のような仕事関数の小さな金属等を挙げることができる。なお、有機半導体13が後述する正孔輸送性の有機化合物からなる場合には、エミッタ材料として、金、クロムのような仕事関数の大きな金属を用いる。
【0064】
(有機半導体)
有機半導体13は、エミッタ11とコレクタ12との間に挟まれた態様で、層状に設けられている。この有機半導体13は、コレクタ12とベース14との間にある下側有機半導体層13bと、ベース14とエミッタ11との間にある上側有機半導体層13aとで構成されている。
【0065】
上側有機半導体層13aと下側有機半導体層13bとは、種々の電荷輸送性の有機半導体材料によって形成することができる。例えば、(i)上側有機半導体層13aと下側有機半導体層13bとを1種又は2種以上の同じ材料で形成しても、1種又は2種以上の異なる材料で形成してもよいし、(ii)その材料が正孔輸送材料であっても電子輸送材料であってもよいし、(iii)上側有機半導体層13aの厚さと下側有機半導体層13bの厚さとが同じでも異なっていてもよいし、(iv)電荷注入層(図示しない)を有機半導体13とエミッタ11ないしコレクタ12との間に有するものであってもよい。
【0066】
なお、有機半導体13上に電極(エミッタ11又はコレクタ12)を形成する場合は、電極形成時に有機半導体13に加わるダメージを軽減するための保護層(図示しない)を有機半導体13上に設けてもよい。保護層としては、例えばAu、Ag、Al等の金属膜やZnS、ZnSe等の無機半導体膜等の蒸着膜又はスパッタ膜のように、成膜時にダメージを与え難いものが1nm〜500nm程度の厚さで予め成膜されることが好ましい。
【0067】
有機半導体13の形成材料としては、例えば、Alq(トリス8−キノリノラトアルミニウム錯体)、n型有機半導体であるペリレン顔料(Me−PTC)、フラーレンC60、NTCDA(ナフタレンテトラカルボン酸二無水物)、銅フタロシアニンPTCDA(3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物)若しくはPh−Et−PTC等を好ましく挙げることができ、また、アントラキノジメタン、フルオレニリデンメタン、テトラシアノエチレン、フルオレノン、ジフェノキノンオキサジアゾール、アントロン、チオピランジオキシド、ジフェノキノン、ベンゾキノン、マロノニトリル、ニジトロベンゼン、ニトロアントラキノン、無水マレイン酸若しくはペリレンテトラカルボン酸、又はこれらの誘導体等、電荷輸送材料として通常使用されるものを用いることができる。
【0068】
縦型有機トランジスタをn型トランジスタとする場合とp型トランジスタとする場合には、有機半導体の形成材料を任意に選択する必要がある。例えば後述の実施例で示すように、n型トランジスタとする場合には、上側有機半導体層13aをフラーレンC60で形成し、下側有機半導体層13bをペリレン顔料(Me−PTC)で形成することができ、p型トランジスタとする場合には、上側有機半導体層13aと下側有機半導体層13bの両方をCuPc(銅フタロシアニン)で形成することができる。
【0069】
有機半導体13の電荷移動度は、なるべく高いことが望ましく、少なくとも、0.001cm/Vs以上であることが望ましい。また、下側有機半導体層13bの厚さは、通常、10nm〜3μm程度を挙げることができるが、好ましくは50nm〜700nm程度である。一方、上側有機半導体層13aの厚さは、下側有機半導体層13bに比べて基本的に薄いことが望ましく、通常、500nm程度以下を挙げることができるが、好ましくは10nm〜150nm程度である。
【0070】
なお、有機半導体層13bとベース14との間、又はベース14の両面には、漏れ電流を抑制するため、例えば酸化ケイ素膜等を設けてもよい。
【0071】
(ベース)
図6は、ベース(中間電極)の模式的な詳細断面図である。ベース14は、図6に示すように、粒状金属14aと、その粒状金属14aを内部に有する態様で設けられた絶縁性金属化合物14bとで構成された層状連続体である。言い換えると、ベース14は、連続する絶縁性金属化合物14bと、絶縁性金属化合物14b内に分布する粒状金属14aとを有する態様で構成された層状連続体である。
【0072】
粒状金属14aは、ベース14の横方向に粒状に分布する金属であり、エミッタ11から供給された電荷をコレクタ12側の下側有機半導体層13b内に強制的に供給するように作用する。粒状金属14aの形態は特に限定されないが、通常は円形又は略円形(楕円形等を含む)又はそれらに類似の形態である。円形又は略円形からなる粒状金属14aの平均直径は、5nm以上200nm以下であることが好ましく、10nm以上100nm以下がより好ましく、30nm以上50nm以下が特に好ましい。こうした範囲の粒状金属14aは、ベースとして作用する従来の金属層の幅よりも著しく微細なので、その粒状金属14aの周りに形成されて電流の透過部として作用する絶縁性金属化合物14bを、層状連続体であるベース14内に多く(高い密度で)形成することができる。その結果、エミッタ11とベース(粒状金属14a)との間に印加した電圧Vbによって影響される領域がベース(粒状金属14a)のエッジ近傍に限定されても、エミッタ11(上部電極)とコレクタ12(下部電極)との間を流れる電流Icを効率的に変調することができる。
【0073】
粒状金属14aの平均直径が5nm未満では、小さすぎて面抵抗が大きくなり、電極として機能しないことがある。一方、粒状金属14aの平均直径が500nmを超えると、開口部が相対的に小さくなって従来の金属層に近づくので、電流透過が起こらないという問題が生じることがある。
【0074】
粒状金属14aの厚さは特に限定されず、例えば5nm〜100nm程度、好ましくは10nm〜40nm程度を挙げることができる。なお、後述の製造方法の欄で説明するように、所定粒径の金属粒4”からなる金属膜4’(図12(A)参照)を酸化等の化学反応により粒状金属14aとする場合には、粒状金属14aの厚さは2nm〜50nm程度であることが好ましく、5nm〜20nm程度であることがより好ましい。こうした厚さからなる粒状金属14aは、ベース14の横方向に粒状に分布することができる。
【0075】
層状連続体であるベース14内に分布する粒状金属14aは、後述の製造方法に由来するように、通常は、横方向に並んでいるが上下方向に積層していない形態で分布している。なお、必ずしもそうした形態で分布していなくてもよく、上下方向にも積層していてもよい。
【0076】
粒状金属14aの材質は導電性の金属であれば特に限定されないが、好ましくは導電性のよいアルミニウム又は銅等が採用される。特にアルミニウムは、酸化反応によって容易に酸化アルミニウムとすることができ、その酸化アルミニウムが絶縁性金属化合物14bとなるので便利である。しかも、その酸化アルミニウムは、酸化の進行がある程度進むと停止するという性質を有するので、粒状金属14aの大きさと絶縁性金属化合物14bの厚さをおよそ10nm以下の範囲内にコントロールすることができるという利点がある。
【0077】
絶縁性金属化合物14bは、図6に示すように、粒状金属14aを内部に有した形態で横方向に層状に設けられている。詳しくは、絶縁性金属化合物14bは、粒状金属14aの全体を取り巻くように設けられているとともに、横方向には層状に一様に形成されている。
【0078】
絶縁性金属化合物14bとしては、例えば酸化アルミニウム、酸窒化アルミニウム、酸化銅等を挙げることができる。絶縁性金属化合物14bを構成する金属は特に限定されないが、通常は、粒状金属14aを構成する金属と同じである。したがって、例えば粒状金属14aがアルミニウムである場合には、絶縁性金属化合物14bはアルミニウム化合物(例えば酸化アルミニウム等)である。特に、絶縁性金属化合物14bが、粒状金属14aを構成する金属の酸化物又は酸窒化物又はそれらの複合化合物であることが好ましい。こうすることにより、絶縁性金属化合物14bを構成する金属成分と、粒状金属14aを構成する金属成分とが同じであるので、例えば、薄膜状の金属膜を成膜した後に酸素や窒素等の反応ガスを導入して化学反応させることによって、ベース14を構成する絶縁性金属化合物14bを容易に形成することができる。
【0079】
絶縁性金属化合物14bの厚さは特に限定されないが、金属粒4”からなる金属膜4’を酸化等して絶縁性金属化合物14bを形成する場合には、少なくとも粒状金属14aが所定の大きさで必ず残存する程度の厚さであることが必要であり、例えばその厚さとしては0.1nm〜100nm程度、好ましくは1nm〜10nmを例示できる。この場合における厚さは、少なくとも、粒状金属14aの周りに形成された厚さを指している。絶縁性金属化合物14bの厚さが0.1nm未満では、例えば隣接する粒状金属14a,14a間に形成された絶縁性金属化合物14bからなる透過部が小さく、エミッタ11とコレクタ12との間を流れる電流が効率的に透過しないことがある。一方、絶縁性金属化合物14bの厚さが100nmを超えると、例えば隣接する粒状金属14a,14a間に形成された絶縁性金属化合物14bからなる透過部が広くなりすぎ、エミッタと粒状金属14a(ベース)との間に印加する電圧によって影響される領域が粒状金属14aのエッジ部近傍に限られるという従来同様の問題が解決されないとともに、粒状金属14a,14a間の間隔が大きくなりすぎ、ベース14の電気導電性が劣り、粒状金属14a自体がベースとして作用しないことがある。
【0080】
なお、絶縁性金属化合物14b内に分布している粒状金属14aは、前記のようにそれぞれの金属部分が接触せずに繋がっていない態様で分布していてもいなくてもよいが、それぞれの金属部分が接触して繋がっている態様で分布していてもよい。それぞれの金属部分が接触している場合は、粒状金属14a,14a間で電流が流れて電気導電性を確保できる。また、それぞれの金属部分が接触していない場合は、粒状金属14aの周囲に粒状金属14a,14a間に存在する電流の透過部としての絶縁性金属化合物14bの幅(隣り合う粒状金属14a,14aの間隔)が上記の厚さ寸法の範囲で存在すれば、粒状金属14a,14a間ではトンネル電流が流れる等して電極としての電気導電性を確保できる。
【0081】
このように構成された縦型有機トランジスタ31では、ベース14を、連続する絶縁性金属化合物14bとその絶縁性金属化合物内4bに分布する粒状金属14aとを有するように構成したので、従来の「開口部」は有機半導体の代わりに絶縁性金属化合物14bで構成され、従来の「中間電極(ベース)」はパターンエッチングされた金属層の代わりに粒状金属14aで構成されている。こうした形態からなるベース14は、粒状金属14a以外の絶縁性金属化合物14bの部分(「開口部」に相当する部分)が、エミッタ11(上部電極)とコレクタ12(下部電極)との間を流れる電流の透過部として作用し、粒状金属14aがベースとして作用する。なお、そうしたベース14は、後述の製造方法の欄で説明するように、薄膜状の金属を成膜した後の化学反応によって絶縁性の金属化合物を容易に形成することができる。したがって、この縦型有機トランジスタ31によれば、粒状金属14aの周りに絶縁性金属化合物14bが存在した態様でベース14が構成されているので、従来の開口部として作用する絶縁性金属化合物14bからなる透過部が従来のような幅の広い開口部とはならず、微細化される。その結果、エミッタ11とベース(粒状金属14a)との間に印加した電圧Vbによって影響される領域がベース(粒状金属14a)のエッジ近傍に限定されても、エミッタ11(上部電極)とコレクタ12(下部電極)との間を流れる電流Icを効率的に変調することができる。さらに、ベース14は容易に形成できる形態であるので、製造コストを削減することもできる。
【0082】
(バスライン)
図7は、図6に示す駆動素子アレイ10の平面形態図である。同一基板19上に形成されたカラム選択用トランジスタ31A、ライン選択用トランジスタ31B及び発光素子21の平面形態は、図7に示すように、各層が積層された特有の形態を呈している。発光素子21は、縦方向に延びる電極(図7では陰極)と、横方向に延びる電極(図7では陽極)とで構成され、その両電極の間に後述する正孔輸送層、発光層、電子輸送層及び電子注入層がその順で挟まれている。一方、カラム選択用トランジスタ31Aとライン選択用トランジスタ31Bを構成する縦型有機トランジスタ31は、図7に示すように、基板19上に、コレクタ12、下側有機半導体層13b、ベース14、上側有機半導体層13a、エミッタ11の順で積層され、その際に、各電極(コレクタ12、ベース14、エミッタ11)が直接接触しないようにその大きさが調整されている。すなわち、下側有機半導体層13bの平面積を大きくしてコレクタ12とベース14との接触を防ぎ、上側有機半導体層13aの平面積を大きくしてベース14とエミッタ11との接触を防いでいる。なお、必要に応じて、導電性配線材料からなるバスライン15a,15b(図8〜図10を参照)を設け、各電極(コレクタ12、エミッタ11、ベース14)成膜時の段差を緩衝したり、カラム配線33Aやライン配線33Bとの接続を中継してもよい。
【0083】
図8は、縦型有機トランジスタにバスラインを形成した態様の一例を示す断面図である。また、図9及び図10は、バスラインを形成した縦型有機トランジスタの2つの例を示す平面図である。本発明において、縦型有機トランジスタ31は、基板19側からコレクタ12、下側有機半導体層13b、ベース14、上側有機半導体層13a、エミッタ11の順で積層されるが、ベース14(中間電極)を構成する粒状金属14aは上記のように薄いため、特に薄い厚さで粒状金属14aが形成される場合には、ベース14は一般的な金属膜に比べて抵抗が大きい。そのため、ベース14に取り出し部を設けた場合においては電圧降下が生じて、動作領域A(ここでは、3つの電極が平面視でオーバーラップする領域をいう。)に印加されるベース電圧Vbが減少し、電流変調特性を低下させるおそれがある。そのような場合には、図8〜図10に示すようなバスライン15a,15bを設けることが好ましい。
【0084】
具体的には、図8に示すように、ベース14(中間電極)にバスライン15aが設けられている。このバスライン15aが他の電極(エミッタ11及びコレクタ12)に接触すると導通(ショート)が生じたり不要な漏れ電流が生じたりするので、バスライン15aはベース14のみに接触しているように形成されている。すなわち、バスライン15aは、ベース14とコレクタ12(下部電極)とが平面視でオーバーラップしない部位、及び、ベース14(中間電極)とエミッタ11(上部電極)とが平面視でオーバーラップしない部位に形成されていることが好ましい。図8においては、バスライン15aは、ベース14に接触するように、基板19とベース14との間に設けられている。そして、そのバスライン15aの端部を取り出し部16aとすることにより、ベース14(中間電極)の端部を取り出し部とした場合のような電圧降下を防ぐことができるので、動作領域Aに印加されるベース電圧Vbの減少を防ぎ、電流変調特性の低下を防ぐことができる。
【0085】
なお、バスライン15aと他の電極(エミッタ11及びコレクタ12)とが接触しないが近づきすぎる場合には、下側有機半導体層13bを介して膜面方向に電流が流れるおそれがあるので、バスライン15aと他の電極(エミッタ11及びコレクタ12)との間隔を例えば20μm程度離して形成することにより、バスラインを経由した電流が他の電極に漏洩することがない。
【0086】
また、例えばこの縦型有機トランジスタをトップエミッション型の発光有機トランジスタとして用いた場合のように、エミッタ11の面抵抗が高い場合がある。この場合には、面抵抗の高いエミッタ11にも、図8に示すようなバスライン15bを設けることが好ましい。この場合のバスライン15bは、上記のベース14に設けたバスライン15aと同様の理由により、エミッタ11のみに接触しているように形成されている。すなわち、バスライン15bは、エミッタ11とコレクタ12とが平面視でオーバーラップしない部位、及び、エミッタ11とベース14とが平面視でオーバーラップしない部位に形成されていることが好ましい。図8においては、バスライン15bは、エミッタ11に接触するように、基板19とエミッタ11との間に設けられている。そして、そのバスライン15bの端部を取り出し部16bとすることにより、エミッタ11の端部を取り出し部とした場合のような電圧降下を防ぐことができるので、動作領域Aに印加される電圧の減少を防ぐことができる。なお、バスライン15bと他の電極との間隔は上記バスライン15aの場合と同様である。
【0087】
バスライン15aは、電気伝導性のよい金属、酸化物半導体及び導電性高分子から選ばれる材料で形成されていることが好ましい。具体的には、Al等の金属膜、ITO等の酸化物半導体、PEDOT(スタルク社製)等の導電性高分子、等の高電導性の材料を用い、その厚さ等を調整して設けることが好ましい。
【0088】
図9及び図10は、バスラインを形成した縦型有機トランジスタの2つの例を示す平面図であるが、バスライン15a,15bの形成態様は、図示の例に限定されない。例えば図8〜図10の例では、バスライン15aを基板19とベース14との間に設けたり、バスライン15bを基板19とエミッタ11との間に設けたりしているが、バスライン15aをベース14上に設けたり、バスライン15bをエミッタ11上に設けたりしてもよい。なお、バスライン15a,15bを基板19上に設ける場合は、例えばITO等の電極材料をコレクタ12と同時にパターン形成することができるので、作業工程の削減を図ることができるという利点がある。
【0089】
このように、非常に薄く、各電極が一般的な金属よりも抵抗が高い場合に、その電極に積層させるように導電性のよいバスライン15a,15bを設けることにより、電圧降下を防ぎ、電流変調特性の低下を抑制することができる。
【0090】
(発光素子)
次に、発光素子について説明する。上記縦型有機トランジスタ31と同一基板19上に形成する発光素子21は、図5に示すように、少なくとも陽極22と陰極27との間に発光層25が設けられている。発光素子21の構成は、両電極間に発光層24を必須の構成として有すれば、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、及び電子注入層から選ばれる1又は2以上の層は必要に応じて任意に設けられていればよい。図5に示す例では、基板19側から、陽極22、正孔輸送層23、発光層24、電子輸送層25、電子注入層26及び陰極27の順で積層されている。また、その他の層として、正孔ブロック層、電子ブロック層等のように、キャリア(正孔、電子)のつきぬけを防止し、効率よくキャリアの再結合させるための電荷ブロック層を設けてもよい。この発光素子21に電荷を与える電極は、図5の例では、基板19側に設けられた電極が陽極22として作用して正孔輸送層23に正孔を注入し、上方に設けられた電極が陰極27として作用して電子注入層26に電子を注入する。
【0091】
基材19上には陽極22が設けられても陰極27が設けられてもよいが、図5に示すように、通常、基板19には陽極22が設けられる。陽極22の形成材料としては、金、銀、クロム等の金属、ITO(インジウム錫オキサイド)、酸化インジウム、IZO(インジウム亜鉛オキサイド)、SnO、ZnO等の透明導電膜、ポリアニリン、ポリアセチレン等の導電性酸化物等を挙げることができる。また、ITOと銀とITOとの積層構造からなる反射型電極とすることもできる。
【0092】
正孔注入層(図示しない)の形成材料としては、例えば、発光層24の発光材料に例示した化合物の他、フェニルアミン系、スターバースト型アミン系、フタロシアニン系、酸化バナジウム、酸化モリブデン、酸化ルテニウム、酸化アルミニウムなどの酸化物、アモルファスカーボン、ポリアニリン、ポリチオフェンなどの誘導体等を挙げることができる。
【0093】
正孔輸送層23の形成材料としては、フタロシアニン、ナフタロシアニン、ポリフィリン、オキサジアゾール、トリフェニルアミン、トリアゾール、イミダゾール、イミダゾロン、ピラゾリン、テトラヒドロイミダゾール、ヒドラゾン、スチルベン、ペンタセン、ポリチオフェン若しくはブタジエン、又はこれらの誘導体等、正孔輸送材料として通常使用されるものを用いることができる。また、正孔輸送層23の形成材料として市販されている、例えばポリ(3、4)エチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホネート(略称PEDOT/PSS、バイエル社製、商品名;Baytron P AI4083、水溶液として市販。)等も使用することができる。正孔輸送層23は、こうした化合物を含有した正孔輸送層形成用塗液を用いて形成される。なお、これらの正孔輸送材料は、上記の発光層24内に混ぜてもよいし、正孔注入層内に混ぜてもよい。
【0094】
発光層24の形成材料としては、有機EL素子の発光層として一般的に用いられている材料であれば特に限定されず、例えば色素系発光材料、金属錯体系発光材料、高分子系発光材料等を挙げることができる。
【0095】
色素系発光材料としては、例えば、シクロペンタジエン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、トリフェニルアミン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ピラゾロキノリン誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、ジスチリルアリーレン誘導体、シロール誘導体、チオフェン環化合物、ピリジン環化合物、ペリノン誘導体、ペリレン誘導体、オリゴチオフェン誘導体、トリフマニルアミン誘導体、オキサジアゾールダイマー、ピラゾリンダイマー等を挙げることができる。
【0096】
金属錯体系発光材料としては、例えば、アルミキノリノール錯体、ベンゾキノリノールベリリウム錯体、ベンゾオキサゾール亜鉛錯体、ベンゾチアゾール亜鉛錯体、アゾメチル亜鉛錯体、ポルフィリン亜鉛錯体、ユーロピウム錯体等、中心金属に、Al、Zn、Be等、又はTb、Eu、Dy等の希土類金属を有し、配位子にオキサジアゾール、チアジアゾール、フェニルピリジン、フェニルベンゾイミダゾール、キノリン構造等を有する金属錯体等を挙げることができる。
【0097】
高分子系発光材料としては、例えば、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリシラン誘導体、ポリアセチレン誘導体、ポリビニルカルバゾール、ポリフルオレノン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリキノキサリン誘導体、及びそれらの共重合体等を挙げることができる。
【0098】
発光層24中には、発光効率の向上や発光波長を変化させる等の目的でドーピング剤等の添加剤を添加するようにしてもよい。ドーピング剤としては、例えば、ペリレン誘導体、クマリン誘導体、ルブレン誘導体、キナクリドン誘導体、スクアリウム誘導体、ポルフィリン誘導体、スチリル色素、テトラセン誘導体、ピラゾリン誘導体、デカシクレン、フェノキサゾン、キノキサリン誘導体、カルバゾール誘導体、フルオレン誘導体等を挙げることができる。
【0099】
なお、発光層24として、無機系の発光層としてもよい。無機系の発光層としては、CdSe等を挙げることができる。
【0100】
電子輸送層25の形成材料としては、例えば、Alq(トリス8−キノリノラトアルミニウム錯体)、ペリレン顔料(Me−PTC)、フラーレンC60、NTCDA(ナフタレンテトラカルボン酸二無水物)、銅フタロシアニンPTCDA(3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物)若しくはPh−Et−PTC等を好ましく挙げることができ、また、アントラキノジメタン、フルオレニリデンメタン、テトラシアノエチレン、フルオレノン、ジフェノキノンオキサジアゾール、アントロン、チオピランジオキシド、ジフェノキノン、ベンゾキノン、マロノニトリル、ニジトロベンゼン、ニトロアントラキノン、無水マレイン酸若しくはペリレンテトラカルボン酸、又はこれらの誘導体等、電荷輸送材料として通常使用されるものを用いることができる。なお、この電子輸送層の形成材料は、発光層24内に混ぜてもよい。
【0101】
電子注入層26の形成材料としては、例えば、アルミニウム、フッ化リチウム、ストロンチウム、酸化マグネシウム、フッ化マグネシウム、フッ化ストロンチウム、フッ化カルシウム、フッ化バリウム、酸化アルミニウム、酸化ストロンチウム、カルシウム、ポリメチルメタクリレートポリスチレンスルホン酸ナトリウム、リチウム、セシウム、フッ化セシウム等のようにアルカリ金属類、及びアルカリ金属類のハロゲン化物、アルカリ金属の有機錯体等を挙げることができる。
【0102】
上述した各層は、真空蒸着法によって成膜するか、あるいは、それぞれの形成材料をトルエン、クロロホルム、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の溶媒に溶解又は分散させて塗布液を調整し、その塗布液を塗布装置等を用いて塗布又は印刷等することで形成される。
【0103】
また、必要に応じて、正孔ブロック層、電子ブロック層等として機能する励起ブロック層を設けてもよいが、その励起ブロック層は、キャリア(正孔、電子)が発光層24を突き抜けるのを防止し、効率よくキャリアを再結合させるための層であり、例えば、発光層24のコレクタ12側の隣接面に正孔ブロック層を設けたり、発光層24のエミッタ11側の隣接面に電子ブロック層を設けることにより、各電極から注入された正孔や電子が発光層24を突き抜けるのを防ぐことができる。その形成材料としては、BCP(1−ブロモ−3−クロロプロパン)を例示できる。
【0104】
陰極27の形成材料としては、金、銀、クロム等の金属、ITO(インジウム錫オキサイド)、酸化インジウム、IZO(インジウム亜鉛オキサイド)、SnO、ZnO等の透明導電膜、ポリアニリン、ポリアセチレン等の導電性酸化物等を挙げることができる。また、ITOと銀とITOとの積層構造からなる反射型電極とすることもできる。
【0105】
陰極27を形成した後においては、全体を覆うようにガスバリア性を有するSiON等の無機系の保護膜やパラキシリレン樹脂等の有機系の保護膜(いずれも図示しない)を形成してもよい。なお、この保護層を図11で後述する遮光層18と兼ねてもよい。
【0106】
こうして構成される発光素子21の陽極22側にはp型特性を示す縦型有機トランジスタ31Bが配置される。また、発光素子21の陰極27側にはn型特性を示す縦型有機トランジスタ31Aが配置される。こうした構成により、発光素子21の陽極22にはp型特性を示す縦型有機トランジスタ31Bから所定の電荷量の正電荷(正孔)が供給され、発光素子21の陰極27にはn型特性を示す縦型有機トランジスタから所定の電荷量の負電荷(電子)が供給されるので、制御された輝度で発光素子を発光させることができる。
【0107】
(基板)
基板19の種類や構造は特に限定されるものではなく、例えば、Al等の金属、ガラス、石英又は樹脂等の各種の材料から任意に選択して用いることができる。
【0108】
なお、発光素子21で発光した光を基板19側から出射させるボトムエミッション構造とする場合には、透明又は半透明になる材料で基板19が形成されることが好ましいが、有機発光層で発光した光を基板19の反対側から出射させるトップエミッション構造の発光素子とする場合には、必ずしも透明又は半透明になる材料からなる基板19とする必要はなく、不透明材料で基板19を形成してもよい。この場合においては、特に、有機EL素子の基板として一般的に用いられているもの、すなわち、有機EL素子を強度的に支持しているものを好ましく用いることができる。基板19の材質は、用途に応じてフレキシブルな材質や硬質な材質等が選択される。具体的に用いることができる材料としては、例えば、ガラス、石英、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメタクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリエステル、ポリカーボネート等を挙げることができる。また、基板19の形状としては、枚葉状でも連続状でもよく、具体的な形状としては、例えばカード状、フィルム状、ディスク状、チップ状等を挙げることができる。
【0109】
(遮光処理)
上記した縦型有機トランジスタ31は有機半導体13を有するが、そうした有機半導体13は光を受けるとphoto-current(光電流)が流れてOFF電流が増加するという難点がある。特に本発明の駆動素子アレイ10では、同一基板19上に発光素子21と縦型有機トランジスタ31が形成されているので、発光素子21から発光する光が基板19側から出射する場合においては、光が透明な基板19内を伝わって隣接する縦型有機トランジスタ31に到達し、上記OFF電流が増加するという問題が生じ易い。こうした問題を解決するため、縦型有機トランジスタ31に対して遮光処理を施すことが好ましい。
【0110】
遮光処理としては、有機半導体13に光が到達しないように、光吸収層又は光反射層を形成することが好ましい。特に基板19の縦型有機トランジスタ側又は縦型有機トランジスタ31の基板19側に、光吸収層又は光反射層を形成することが望ましく、基板19内を伝わって縦型有機トランジスタ31に入射する可能性のある光や、室内蛍光灯等のような外部からの光を遮光することができる。図11は、縦型有機トランジスタの遮光処理の例を示す断面図である。図11(A)は、基板19側に設けられる下部電極12を遮光性の電極とし、さらに縦型有機トランジスタ31を覆うように遮光層18を形成した例であり、図11(B)は、基板19と下部電極12との間に遮光層17を形成し、さらに縦型有機トランジスタ31を覆うように遮光層18を形成した例である。なお、縦型有機トランジスタ31を覆う光遮光層18は、基板19内を伝わる光以外の光(例えば、室内蛍光灯等のような外部からの光)から縦型有機トランジスタ31を遮光するために好ましく設けられる。
【0111】
図11(A)に示す遮光性の下部電極12は特に限定されず、各種の遮光性電極を採用可能であるが、金属電極を好ましく挙げることができる。具体的には、クロム電極、アルミニウム電極、銀電極等を挙げることができる。なお、そうした金属電極が遮光性を有する厚さは50nm以上であることが好ましい。一方、縦型有機トランジスタ31を覆うように設けられた遮光層18としては、例えばカラーフィルタ等に用いられているブラックマトリクス層と同等の層を挙げることができる。こうした遮光層18は縦型有機トランジスタ31を形成した後にスピンコートによって形成することができる。
【0112】
図11(B)に示す遮光層17も特に限定されず、遮光性を有する各種の絶縁層を挙げることができる。そうした遮光層17としては、例えば、上記同様、例えばカラーフィルタ等に用いられているブラックマトリクス層と同等の層を挙げることができる。なお、その遮光層17の厚さはその遮光層の材質によって異なるので一概には言えないが、例えば100nm〜10μmの範囲であることが好ましい。こうした遮光処理を縦型有機トランジスタ31に対して施すことにより、光の作用によるオフ電流の上昇を抑制することができ、オフ時での発光素子の色味を適切なものとすることができる。
【0113】
こうした遮光処理のうち、遮光層17は、図11(B)に示す例では基板19の縦型有機トランジスタ側の面や縦型有機トランジスタ31の基板19側の面に直接設けられているが、必ずしも直接設けられている必要はなく、基板19の縦型有機トランジスタ側又は縦型有機トランジスタ31の基板19側に設けられてさえいれば例えば他の層を介して設けられていてもよい。
【0114】
なお、ここでは詳しくは説明しないが、本発明に係る表示装置は、必要に応じて、カラーフィルタ等の表示装置用部材を備えていてもよい。上記において、カラーフィルタ等に用いられているブラックマトリクス層とは、通常、黒色顔料とバインダー樹脂と溶剤とを含有したフォトレジストや印刷用インキ、あるいはクロムなどの金属を用いて構成されるものであり、黒色顔料としては、カーボンブラック、チタンブラック等を挙げることができ、バインダー樹脂としては、ベンジルメタクリレート:スチレン:アクリル酸:2−ヒドロキシエチルメタクリレートの共重合体等を挙げることができ、溶剤としては、後述の着色層のものと同様のものを用いることができる。ブラックマトリクス層の形成方法としては、フォトリソグラフィ、各種のパターン印刷方法、各種のめっき方法等で形成することができる。
【0115】
以上、本発明の発光素子21によれば、エミッタ11とコレクタ12との間に流れる電流量を大幅に変調することができる縦型有機トランジスタ31をカラム選択用トランジスタ31A及びライン選択用トランジスタ31Bとして備えるので、その変調電流を発光層24に発光電流として印加することができる。その結果、発光層24の発光輝度等の制御性を高めることができるとともに、コスト低減を図ることができる。特に大面積の表示装置に用いる場合には、大電流を発光素子列に供給することができるので、大電流を含む変調電流で発光素子を駆動させることが可能となる。
【0116】
さらに本発明によれば、縦型有機トランジスタ31を発光素子21と同一の基板19上に形成しているが、その縦型有機トランジスタ31は、上下に配置したコレクタ12とエミッタ11との間に有機半導体13を挟み、その有機半導体13内にベース14を形成した積層構造であるため、発光素子21を形成する基板19と同一基板上に容易に形成することができ、製造コストの点でも有利となる。また、縦型有機トランジスタ31は無機系のトランジスタに比べて低温での成膜が可能であるので、プラスチック基板上への形成も容易となる。
【0117】
加えて、本発明の駆動素子アレイ10の外側に、液晶表示装置等で汎用ドライバとして用いられる電圧駆動ドライバ40A,40Bを装着して表示装置1を構成すれば、表示装置全体として低電圧且つ高速応答で駆動させることができる。このとき、その汎用ドライバからカラム選択用トランジスタ31Aとライン選択用トランジスタ31Bに電圧制御信号が供給され、その電圧制御信号に応じ、カラム選択用トランジスタ31Aとライン選択用トランジスタ31Bで電流変調されて所定電流が発光素子21に供給される。したがって、縦型有機トランジスタをカラム選択用トランジスタ31Aとライン選択用トランジスタ31Bとした本発明の駆動素子アレイ10は、汎用ドライバを併せて用いることで、低コストの表示装置を構成することができる。
【0118】
[駆動素子アレイの製造方法]
次に、駆動素子アレイ10を製造する方法について説明する。本発明の駆動素子アレイ10の製造方法は、パッシブマトリクス方式で電流駆動する発光素子21と、その発光素子21への電流供給を制御するカラム選択用トランジスタ31A及びライン選択用トランジスタ31Bとを有する駆動素子アレイを製造する方法である。具体的には、基板19上にカラム選択用の縦型有機トランジスタ31Aとライン選択用の縦型有機トランジスタ31Bを形成するトランジスタ形成工程と、そのトランジスタ形成工程後に、縦型有機トランジスタ31(31A,31B)を形成する基板19と同じ基板上に発光素子21を形成する発光素子形成工程と、を少なくとも有する。
【0119】
(トランジスタ形成工程)
トランジスタ形成工程は、基板19上にカラム選択用の縦型有機トランジスタ31Aとライン選択用の縦型有機トランジスタ31Bを形成する工程である。トランジスタ形成工程は、下部電極(コレクタ12)が形成された基板19上に下側有機半導体層13bを形成する工程と、下側有機半導体層13b上に、連続する絶縁性金属化合物14bとその絶縁性金属化合物14b内に分布する粒状金属14aとを有する中間電極(ベース14)を形成する工程と、ベース14上に上側有機半導体層13aを形成する工程と、上側有機半導体層13a上に上部電極(エミッタ11)を形成する工程と、を有している。以下、各工程について説明する。なお、上記「縦型有機トランジスタ」で説明した内容と重複する場合は随時その説明を省略する。
【0120】
下側有機半導体層形成工程;
この工程は、下部電極(コレクタ12)が形成された基板19上に下側有機半導体層13bを形成する工程である。コレクタ12上への下側有機半導体層13bの形成は、既に例示した有機半導体材料の材質や特性等を考慮し、塗布法や蒸着法等から任意に選択される。このときの厚さ等についても既述した通りである。なお、基板19上へのコレクタ12の形成方法は、既に例示したコレクタ12の材質と基板19の種類や耐熱性等とを考慮し、真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法等や、塗布法等から任意に選択される。なお、通常は、ITO付きガラス基板やITO付きプラスチック基板等を好ましく用いることができる。
【0121】
中間電極(ベース)形成工程;
この工程は、下側有機半導体層13b上に中間電極(ベース14)を形成する工程である。ベース14は、連続する絶縁性金属化合物14bと、その絶縁性金属化合物14b内に分布する粒状金属14aとを有している。具体的には、ベース14を形成する工程は、図12に示すように、下側有機半導体層13b上の全面に金属膜4’を形成する金属膜形成工程(図12(A)参照)と、その金属膜4’を部分的に絶縁化させて、連続する絶縁性金属化合物14bと、その絶縁性金属化合物14b内に分布する粒状金属14aとを生じさせる部分絶縁化工程(図12(B)参照)と、を有している。この工程によれば、金属膜形成工程と部分絶縁化工程とによって得られたベース14は、既述したのと同様、例えば金属膜4’を形成した後の化学反応等により絶縁性の金属化合物14bが生じることによって容易に形成される。その結果、製造された縦型有機トランジスタ31の製造コストを低減することができる。
【0122】
金属膜形成工程は、図12(A)に示すように、下側有機半導体層13b上の全面に金属膜4’を形成する工程であるが、この工程で形成される金属膜4’は、上記した粒状金属14aの構成材料を真空蒸着、スパッタリング等の成膜手段によって形成することができる。形成される金属膜4’の形態は特に限定されず、その後の部分絶縁化工程において、絶縁性金属化合物14b内に粒状金属14aが分布する形態となるものであればよいが、特には、その金属膜4’が5nm以上200nm以下、好ましくは10nm以上40nm以下の粒径を持つ金属粒4”の集合体であることが好ましい。こうした範囲の金属粒4”からなる金属膜4’は、その金属粒4”の周縁の膜厚が薄いので、例えば化学反応等によって容易に絶縁性の金属化合物3bにすることができるとともに、粒状金属14aの平均直径を5nm以上200nm以下とすることができる。その結果、エミッタ11とコレクタ12との間を流れる電流の透過部を容易に形成できるので、縦型有機トランジスタ31の製造コストを低減することができる。
【0123】
部分絶縁化工程は、上記のように、粒状金属14aの平均直径を5nm以上200nm以下とするまで行う。具体的には、図12(A)に示すような金属粒4”からなる金属膜4’を反応ガス中で化学反応させ、図12(B)に示すような粒状金属14aが前記の平均直径になるまで反応を行う。化学反応させるための反応ガス雰囲気としては、酸素雰囲気、酸素窒素混合雰囲気、高湿度雰囲気下等を挙げることができるが、好ましくは酸素雰囲気であり、容易に酸化処理することができる。金属粒4”の集合体からなる金属膜4’を酸化処理することにより、金属粒4”の周りに絶縁性金属酸化物4bを容易に形成することができ、その絶縁性金属化合物14bをエミッタ11とコレクタ12間に流れる電流の透過部として作用させることができる。
【0124】
このような部分絶縁化工程により、粒状金属14aの平均直径を所定の範囲内ものとすれば、粒状金属14aの平均直径を従来のベースである金属層の幅よりも著しく微細化することができるので、粒状金属14aの周りに形成されて電流の透過部として作用する絶縁性金属化合物14bを、ベース14内に多く(高い密度で)形成することが容易となる。
【0125】
上側有機半導体層形成工程;
この工程は、ベース14上に上側有機半導体層13aを形成する工程である。ベース14上への上側有機半導体層13aの形成は、既に例示した有機半導体材料の材質や特性等を考慮し、塗布法や蒸着法等から任意に選択される。このときの厚さ等についても既述した通りである。
【0126】
上部電極(エミッタ)形成工程;
この工程は、上側有機半導体層13a上に上部電極(エミッタ11)を形成する工程である。上側有機半導体層13a上へのエミッタ11の形成方法は、既に例示したエミッタ11の材質と上側有機半導体層13aの種類や耐熱性等とを考慮し、真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法等から任意に選択される。
【0127】
これらの各工程を経て縦型有機トランジスタ31が製造されるが、エミッタ11上には、必要に応じて、PVP (ポリビニルピロリドン) 等からなる保護層や、酸化ケイ素や酸窒化ケイ素等からなるガスバリア層や、上述した遮光層18を形成してもよい。
【0128】
遮光層形成工程;
この工程は、基板19上に形成された発光素子21から発光する光が基板19側から出射する場合において、基板10の縦型有機トランジスタ31側又は縦型有機トランジスタ31の基板19側を遮光処理する工程である。遮光処理としては、具体的には、下部電極12を遮光性電極としたり、基板19面上に絶縁性遮光層17を形成したり、また、縦型有機トランジスタを覆うように遮光層18を形成したりする例が挙げることができる。そうした遮光層は、塗布法、蒸着、スパッタリング法等のPVDプロセス、CVDプロセス等で形成することができる。なお、遮光処理として光吸収層又は光反射層を施す場合には、遮光処理工程を、光吸収層形成工程又は光反射層形成工程となる。
【0129】
バスライン形成工程;
この工程は、(1)中間電極14と下部電極12乃至上部電極11とが平面視でオーバーラップしない部位の基板19上に、中間電極14に接続するバスライン15a,15bを形成する工程、又は、(2)上部電極11と下部電極12乃至中間電極14とが平面視でオーバーラップしない部位の基板19上に、上部電極11に接続するバスライン15a,15bを形成する工程である。これらのバスライン形成工程において、バスライン15a,15bは、金属、酸化物半導体及び導電性高分子から選ばれるいずれかで形成されることが好ましいので、その形成工程も、その材質に応じた工程で形成することが望ましい。例えば、蒸着、スパッタリング法等のPVDプロセス、CVDプロセス、又は塗布法で形成することが好ましい。
【0130】
こうしたトランジスタ形成工程によれば、下側有機半導体層13b上にベース14を形成する工程を備えるが、この工程で形成されたベース14は、粒状金属14aからなる部分が従来のパターンエッチングされた中間電極(ベース)として作用し、粒状金属14aが形成されていない絶縁性金属化合物14bからなる部分が従来の開口部として作用する。こうした形態からなるベース14においては、開口部として作用する絶縁性金属化合物14bの部分が、エミッタ11(上部電極)とコレクタ12(下部電極)との間を流れる電流の透過部となる。こうした方法を採用すれば、例えば薄膜状の金属(金属膜4’)を形成した後の化学反応等によって絶縁性の金属化合物14bを容易に形成することができるので、製造された縦型有機トランジスタの製造コストを低減することができる。その結果、形成された縦型有機トランジスタ31は、低電圧で大電流変調が可能なトランジスタとして機能することから、例えば下記に示す発光素子21を構成するスイッチング素子である駆動トランジスタとして好ましく適用できる。
【0131】
(発光素子形成工程)
次に、発光素子形成工程について説明する。この発光素子形成工程は、トランジスタ形成工程後に、縦型有機トランジスタ31(31A,31B)を形成する基板19と同じ基板上に発光素子21を形成する工程である。
【0132】
発光素子21の構成と各構成の作製方法は上述したとおりであるのでここではその詳細は省略するが、陽極22、正孔輸送層23、発光層24、電子輸送層25、電子注入層26、陰極27の各層は、それぞれの材質に応じ、真空蒸着法、スパッタリング法等のPVD法、CVD法、あるいは、形成材料をトルエン、クロロホルム、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の溶媒に溶解又は分散させて塗布液を調整し、その塗布液を塗布装置等を用いて塗布又は印刷等する方法で形成される。
【0133】
なお、本発明の駆動素子アレイ10の製造方法では、縦型有機トランジスタ31形成工程の際の、中間電極形成工程で、図12(A)に示すような金属粒4”からなる金属膜4’を反応ガス中で化学反応させ、図12(B)に示すような粒状金属14aが前記の平均直径になるまで反応を行う。こうした反応は、発光素子21を構成する発光層25や正孔輸送層23、電子輸送層26等にダメージを与えるおそれがあるので、望ましくは、縦型有機トランジスタ31の形成工程を、発光素子21の形成工程の前に行う。
【0134】
以上、本発明の駆動素子アレイ10の製造方法によれば、基板19上にカラム選択用とライン選択用の縦型有機トランジスタ31(31A,31B)を形成する工程と、その後、同じ基板19上に発光素子21を形成する工程とを少なくとも有するので、同一基板19上への連続した成膜プロセスによって駆動素子アレイ10を製造することができる。その結果、駆動素子アレイ10の効率的な製造と低コスト化を図ることができる。また、縦型有機トランジスタ31は無機系のトランジスタに比べて低温での成膜が可能であるので、基板19としてプラスチック基板や非耐熱性のガラス基板を用いた場合でもその基板上への形成が容易となる。
【実施例】
【0135】
以下、種々の実験を行って本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は以下の例に限定解釈されることはない。
【0136】
(実験例1)
一辺にn型の縦型有機トランジスタ31Aを有し、他の一辺にp型の縦型有機トランジスタ31Bを有し、画素数が16×48となる多数の発光素子21を有する実験例1に係る試験試料を作製した(図1を参照)。
【0137】
先ず、縦型有機トランジスタ31を形成した。縦型有機トランジスタを構成する下部電極として予め所定のパターンで形成された厚さ150nmの透明ITO電極(コレクタ)付きガラス基板(厚さ0.7mm)を準備した。そのITO電極付きガラス基板を真空チャンバー内にセットし、n型の縦型有機トランジスタ31Aを形成するITO電極パターン上に、ペリレン系顔料(Me−PTC)を厚さ500nmとなるようにマスク蒸着法で形成して、n型の縦型有機トランジスタ31Aを構成する下側有機半導体層13bを形成した。次に、p型の縦型有機トランジスタ31Bを形成するITO電極パターン上に、Cuフタロシアニンを厚さ100nmとなるようにマスク蒸着法で形成して、p型の縦型有機トランジスタ31Bを構成する下側有機半導体層13bを形成した。
【0138】
次に、その下側有機半導体層パターン上に、アルミニウム金属膜を厚さ20nmとなるように真空蒸着法でパターン形成したが、その際、その金属膜が、平均粒径30nmの多数の金属粒(グレイン)によって形成されるように蒸着レートを0.1nm/秒〜1nm/秒の範囲で設定した(実際は、1nm/秒で成膜した。)。アルミニウム金属膜を形成した素子(図12(A)参照)を大気雰囲気下で120℃に加温した環境に保持し、そのアルミニウム金属膜を構成する金属粒の周縁を酸化させて、粒状のアルミニウム金属と酸化アルミニウムとからなる層状連続体(中間電極14)を形成した(図12(B)参照)。
【0139】
次いで、再び真空チャンバーに戻し、先ず、n型の縦型有機トランジスタ31Aを形成する中間電極パターン上には厚さ80nmのフラーレンC60をパターン蒸着して、n型の縦型有機トランジスタ31Aを構成する上側有機半導体層13aを形成した。次に、p型の縦型有機トランジスタ31Bを形成する中間電極パターン上には厚さ80nmのCuフタロシアニンをパターン蒸着して、p型の縦型有機トランジスタ31Bを構成する上側有機半導体層13aを形成した。次に、n型の縦型有機トランジスタ31Aを構成する上側有機半導体層パターン上に、Agを蒸着してエミッタをパターン形成し、次いで、p型の縦型有機トランジスタ31Bを構成する上側有機半導体層パターン上に、Auを蒸着してエミッタをパターン形成し、n型及びp型の縦型有機トランジスタ31を形成した。
【0140】
次に、同一の基板19上の所定の位置に、画素数が16×48となるように多数の発光素子21を形成した。先ず、基板19上の所定の領域に発光素子用パターンとして予め形成された厚さ150nmの透明ITO電極上に、抵抗加熱蒸着法で形成したCuフタロシアニンからなる厚さ50nmの正孔注入層と、抵抗加熱蒸着法で形成したNPDからなる厚さ80nmの正孔輸送層と、抵抗加熱蒸着法で形成したAlq3からなる厚さ50nmの発光層と、抵抗加熱蒸着法で形成したLiFからなる厚さ0.5nmの電子注入層と、抵抗加熱蒸着法で形成したAlからなる厚さ1000nmの陰極とをその順に積層して、発光素子を形成した。さらに、この発光素子と前記の縦型有機トランジスタの全面を覆うように、SiOからなる厚さ500nmの保護層を抵抗加熱蒸着法で形成した。
【0141】
(実験例2)
実験例1の試験試料において、縦型有機トランジスタ31を形成した後、その縦型有機トランジスタ31を覆うようにブラックマトリクス層からなる厚さ1000nmの遮光層18を形成した。それ以外は実験例1と同様にして、実験例2の試験試料を作製した。なお、ブラックマトリクス層は、カーボンブラックをバインダー樹脂に含有させた材料で形成した。
【0142】
(実験例3)
実験例1の試験試料で用いたITO電極(コレクタ)付きガラス基板に代えて、縦型有機トランジスタ31を構成する領域にはITO電極が形成されていないITO電極(コレクタ)付きガラス基板を用い、予めその基板の縦型有機トランジスタ31の形成領域に、縦型有機トランジスタ用の下部電極パターンからなる厚さ150nmのCr金属膜を形成した。こうした基板19を駆動素子アレイ10用の基板として用いた他は、実験例1と同様にして、実験例3の試験試料を作製した。
【0143】
(実験例4)
実験例3の試験試料において、縦型有機トランジスタ31を形成した後、その縦型有機トランジスタ31を覆うように実験例2と同じブラックマトリクス層からなる厚さ1000nmの遮光層18を形成した。それ以外は実験例3と同様にして、実験例4の試験試料を作製した。
【0144】
(電流変調測定)
実験例1で得られた駆動素子アレイを用い、コレクタ電圧Vcを7V,5V,3Vと変化させ、コレクタ電流の電流変調に及ぼす影響を検討した。図13は、実験例1の駆動素子アレイを構成するn型の縦型有機トランジスタ31Aにおいて、ベース電圧に対するコレクタ電流の変化(電流変調)を示すグラフである。また、図14は、実験例1の駆動素子アレイを構成するp型の縦型有機トランジスタ31Bにおいて、ベース電圧に対するコレクタ電流の変化(電流変調)を示すグラフである。測定は、暗室中で、2台のソースメジャーユニットを用いて行った。具体的には、一定のコレクタ電圧(−7V,−5V,−3V)を印加した状態でベース電圧を変化させたときの、コレクタ電流、ベース電流を測定することで行った。図13及び図14に示すように、n型及びp型のトランジスタに印加した各コレクタ電圧において、ベース電圧Vbの走査に対する大きな電流変調が確認された。
【0145】
(電流変調に及ぼす遮光処理の影響)
実験例1,2で得られた駆動素子アレイを用い、コレクタ電圧Vcを7Vとしたときの、コレクタ電流の電流変調に及ぼす遮光処理の影響を検討した。図15は、実験例1の駆動素子アレイを構成するn型の縦型有機トランジスタ(遮光層無し)の電流変調測定を明室中で行った結果と、実験例1の駆動素子アレイを構成するn型の縦型有機トランジスタ(遮光層無し)の電流変調測定を暗室中で行った結果と、実験例2の駆動素子アレイを構成するn型の縦型有機トランジスタ(遮光層あり)の電流変調測定を明室中で行った結果とを示すグラフである。上記同様、測定は2台のソースメジャーユニットを用い、一定のコレクタ電圧(7V)を印加した状態でベース電圧を変化させたときの、コレクタ電流、ベース電流を測定することで行った。図15に示すように、暗室内での測定結果に比べ、明室内での測定結果はOFF状態でコレクタ電流Icが高くなっているのが確認された。これは、明室中の光によってn型の縦型有機トランジスタを構成する有機半導体に作用し、光電流が流れ、OFF電流が増加したためと考えられる。同様の結果は、実験例2でも得られた。こうした結果は、縦型有機トランジスタの上部電極の上に、その縦型有機トランジスタを覆うように形成した遮光層18のみでは、明室中で駆動素子アレイを駆動させた場合、OFF電流が増加してしまうことが分かった。
【0146】
同様に、実験例3,4で得られた駆動素子アレイを用い、コレクタ電圧Vcを7Vとしたときの、コレクタ電流の電流変調に及ぼす遮光処理の影響を検討した。図16は、実験例3の駆動素子アレイを構成するn型の縦型有機トランジスタ(遮光層無し)の電流変調測定を明室中で行った結果と、実験例3の駆動素子アレイを構成するn型の縦型有機トランジスタ(遮光層無し)の電流変調測定を暗室中で行った結果と、実験例4の駆動素子アレイを構成するn型の縦型有機トランジスタ(遮光性のCr金属膜と遮光層あり)の電流変調測定を明室中で行った結果とを示すグラフである。上記同様、測定は2台のソースメジャーユニットを用い、一定のコレクタ電圧(7V)を印加した状態でベース電圧を変化させたときの、コレクタ電流、ベース電流を測定することで行った。図16に示すように、暗室内での測定結果に比べ、明室内での測定結果はOFF状態でコレクタ電流Icが高くなっているのが確認された。これは、明室中の光によってn型の縦型有機トランジスタを構成する有機半導体に作用し、光電流が流れ、OFF電流が増加したためと考えられる。しかしながら、実験例4のように、基板19側の下部電極が遮光性のCr金属膜で形成され、さらに縦型有機トランジスタの上部電極の上にもその縦型有機トランジスタを覆うように遮光層18を形成した試験試料では、明室中であるにもかかわらず、遮光層なしの縦型有機トランジスタを暗室中で測定した場合と同様の結果が得られた。図13〜図16の結果より、遮光処理を基板19側に行うことによって、明室中で駆動素子アレイを駆動させた場合であっても、OFF電流の増加を防ぐことができることが分かった。
【0147】
(増幅率の評価)
図13及び図14において測定した結果より、ベース電圧0Vにおける電流Icと電圧1Vにおける電流Icとを比較し、増幅率を算出した。その結果、増幅率は1000以上であり、極めて高い増幅率を実現できた。
【0148】
(応答性)
既述の図4は、実験例1の試験試料を用いて回路を駆動したときの発光素子のON/OFF挙動を示す具体例である。測定は、画素内の特定のカラムラインとデータラインに一定のコレクタ電圧を印加した状態で、p型縦型有機トランジスタ、n型縦型有機トランジスタをそれぞれON/OFFしたときに、特定のカラムラインとデータラインが交差する発光素子21を流れる電流の時間変化を観測することで行った。その結果、図4に示すように、p型、n型の縦型有機トランジスタがONの時のみ発光素子21に電流が流れており、発光が観測された。いずれかがOFFの時は全く電流が流れず、発光も観測されなかった。
【図面の簡単な説明】
【0149】
【図1】本発明の表示装置の一例を示す模式構成図である。
【図2】画素を構成する発光素子への接続形態を示す模式的な配線図である。
【図3】画素を駆動する回路の模式的な構造図である。
【図4】回路を駆動したときの発光素子のON/OFF挙動を示す具体例である。
【図5】本発明の駆動素子アレイの模式的な断面形態図である。
【図6】中間電極(ベース)の模式的な詳細断面図である。
【図7】図6に示す駆動素子アレイの平面形態図である。
【図8】縦型有機トランジスタにバスラインを形成した態様の一例を示す断面図である。
【図9】バスラインを形成した縦型有機トランジスタの一例を示す平面図である。
【図10】バスラインを形成した縦型有機トランジスタの他の一例を示す平面図である。
【図11】縦型有機トランジスタの遮光処理の例を示す断面図である。
【図12】中間電極の形成工程を示す説明図である。
【図13】実験例1の駆動素子アレイを構成するn型の縦型有機トランジスタにおいてベース電圧に対するコレクタ電流の変化(電流変調)を示すグラフである。
【図14】実験例1の駆動素子アレイを構成するp型の縦型有機トランジスタにおいてベース電圧に対するコレクタ電流の変化(電流変調)を示すグラフである。
【図15】実験例1の駆動素子アレイを構成するn型の縦型有機トランジスタ(遮光層無し)の電流変調測定を明室中で行った結果と、実験例1の駆動素子アレイを構成するn型の縦型有機トランジスタ(遮光層無し)の電流変調測定を暗室中で行った結果と、実験例2の駆動素子アレイを構成するn型の縦型有機トランジスタ(遮光層あり)の電流変調測定を明室中で行った結果とを示すグラフである
【図16】実験例3の駆動素子アレイを構成するn型の縦型有機トランジスタ(遮光層無し)の電流変調測定を明室中で行った結果と、実験例3の駆動素子アレイを構成するn型の縦型有機トランジスタ(遮光層無し)の電流変調測定を暗室中で行った結果と、実験例4の駆動素子アレイを構成するn型の縦型有機トランジスタ(遮光性のCr金属膜と遮光層あり)の電流変調測定を明室中で行った結果とを示すグラフである。
【符号の説明】
【0150】
1 表示装置
10 駆動素子アレイ
11 上部電極(エミッタ11)
12 下部電極(コレクタ12)
13 有機半導体
13a 上側有機半導体層
13b 下側有機半導体層
14 中間電極(ベース14)
14a 粒状金属
14b 絶縁性金属化合物
14’ 金属膜
14” 金属粒
15a,15b バスライン
16a,16b 取り出し部
17 遮光層
18 遮光層
19 基板
20 発光素子部
21 発光素子
22 陽極
23 正孔輸送層
24 発光層
25 電子輸送層
26 電子注入層
27 陰極
30A カラム選択用トランジスタ部
30B ライン選択用トランジスタ部
31 縦型有機トランジスタ(31A,31B)
31A カラム選択用トランジスタ
31B ライン選択用トランジスタ
32A カラム選択線
32B ライン選択線
33A カラム配線
33B ライン配線
34A グラウンド線
34B 電源線
40A,40B ドライバ
A 動作領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パッシブマトリクス方式で電流駆動する発光素子と、該発光素子への電流供給を制御するカラム選択用トランジスタ及びライン選択用トランジスタとを有する駆動素子アレイであって、
前記カラム選択用トランジスタと前記ライン選択用トランジスタが、前記発光素子と同一の基板上に形成された縦型有機トランジスタであることを特徴とする駆動素子アレイ。
【請求項2】
前記縦型有機トランジスタが遮光処理されている、請求項1に記載の駆動素子アレイ。
【請求項3】
前記基板上に形成された発光素子から発光する光が前記基板側から出射する場合において、前記基板の縦型有機トランジスタ側又は前記縦型有機トランジスタの基板側が、遮光処理されている、請求項1に記載の駆動素子アレイ。
【請求項4】
前記遮光処理は、光吸収層又は光反射層を施すことによってなされている、請求項2又は3に記載の駆動素子アレイ。
【請求項5】
前記縦型有機トランジスタが、上部電極と、下部電極と、両電極間に設けられた有機半導体と、該有機半導体内に設けられた中間電極と、を有し、
前記中間電極が、連続する絶縁性金属化合物と、該絶縁性金属化合物内に分布する粒状金属とを有する層状連続体である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の駆動素子アレイ。
【請求項6】
前記中間電極にバスラインが設けられている、請求項5に記載の駆動素子アレイ。
【請求項7】
前記上部電極にバスラインが設けられている、請求項5又は6に記載の駆動素子アレイ。
【請求項8】
前記発光素子が、少なくとも陽極と、陰極と、両極間に設けられた発光層とを有し、前記発光素子の陽極側にはp型特性を示す縦型有機トランジスタが配置され、前記発光素子の陰極側にはn型特性を示す縦型有機トランジスタが配置されている、請求項1〜7のいずれか1項に記載の駆動素子アレイ。
【請求項9】
前記縦型有機トランジスタが保護層で覆われている、請求項1〜8のいずれか1項に記載の駆動素子アレイ。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の駆動素子アレイと、該駆動素子アレイの外側に配置され、該駆動素子アレイに電圧制御信号を供給するドライバとを備えることを特徴とする表示装置。
【請求項11】
パッシブマトリクス方式で電流駆動する発光素子と、該発光素子への電流供給を制御するカラム選択用トランジスタ及びライン選択用トランジスタとを有する駆動素子アレイの製造方法であって、
基板上に前記カラム選択用の縦型有機トランジスタと前記ライン選択用の縦型有機トランジスタを形成するトランジスタ形成工程と、
前記トランジスタ形成工程後、前記縦型有機トランジスタを形成する基板と同じ基板上に発光素子を形成する発光素子形成工程と、を少なくとも有することを特徴とする駆動素子アレイの製造方法。
【請求項12】
前記基板上に形成された発光素子から発光する光が前記基板側から出射する場合において、前記基板の縦型有機トランジスタ側又は前記縦型有機トランジスタの基板側を遮光処理する遮光処理工程をさらに有する、請求項11に記載の駆動素子アレイの製造方法。
【請求項13】
前記遮光処理工程が、光吸収層形成工程又は光反射層形成工程である、請求項12に記載の駆動素子アレイの製造方法。
【請求項14】
前記縦型有機トランジスタが、上部電極と、下部電極と、両電極間に設けられた有機半導体と、該有機半導体内に設けられた中間電極とを有し、前記有機半導体が、前記上部電極側の上側有機半導体層と前記下部電極側の下側有機半導体層とからなるものであって、
前記トランジスタ形成工程が、
前記下部電極が形成された基板上に前記下側有機半導体層を形成する工程と、
前記下側有機半導体層上に、連続する絶縁性金属化合物と該絶縁性金属化合物内に分布する粒状金属とを有する中間電極を形成する工程と、
前記中間電極上に前記上側有機半導体層を形成する工程と、
前記上側有機半導体層上に前記上部電極を形成する工程と、
を有する、請求項11〜13のいずれか1項に記載の駆動素子アレイの製造方法。
【請求項15】
前記中間電極を形成する工程が、
前記下側有機半導体層上に金属膜を形成する金属膜形成工程と、
前記金属膜を部分的に絶縁化させて、連続する絶縁性金属化合物と、該縁性金属化合物内に分布する粒状金属とを生じさせる部分絶縁化工程と、を有する、請求項14に記載の駆動素子アレイの製造方法。
【請求項16】
前記中間電極と前記下部電極乃至前記上部電極とが平面視でオーバーラップしない部位の前記基板上に、該中間電極に接続するバスラインを形成するバスライン形成工程を有する、請求項14又は15に記載の駆動素子アレイの製造方法。
【請求項17】
前記上部電極と前記下部電極乃至前記中間電極とが平面視でオーバーラップしない部位の前記基板上に、該上部電極に接続するバスラインを形成するバスライン形成工程を有する、請求項14〜16のいずれか1項に記載の駆動素子アレイの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2009−223188(P2009−223188A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−69817(P2008−69817)
【出願日】平成20年3月18日(2008.3.18)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】