説明

高さ計測装置及び方法

【課題】被計測物が様々な屈折率で、かつ様々な厚さの透明媒質の下に配置されていても、その被計測物の高さを容易に計測する。
【解決手段】高さ計測装置1は、照明光から分岐された第1照明光を被計測物6に導く対物レンズ24と、照明光から分岐された第2照明光を参照ミラー28に導く対物レンズ26と、第2照明光の光路長を調整する移動部36と、被計測物6及び参照ミラー28で反射される2つの照明光の干渉像を撮像する高速度カメラ12と、対物レンズ24と被計測物6とを光軸方向に相対移動するピエゾ駆動装置18と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被計測物の高さを計測する高さ計測装置及び高さ計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
被計測物の高さを計測するために、白色光で二光束干渉対物レンズ系を用いて被計測物及び参照ミラーを照明し、その対物レンズ系と被計測物とを光軸方向に相対移動しながら、被計測物からの反射光と参照ミラーからの反射光との干渉像を高速に撮像する光学顕微鏡型の高さ計測装置が使用されている(例えば、特許文献1参照)。この高さ計測装置では、得られた撮像信号から各画素の合焦度を表す情報を求め、画素毎に最も高い合焦度が検出された光軸方向の位置を、その画素に対応する点の相対高さと決定している。これにより、被計測面がフィルム面、ガラス表面、又は金属光沢面などの極めて表面粗さの小さい平滑な表面であっても、その表面の高さ分布を高精度に計測できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−300100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
最近、例えばCCD撮像素子の保護用ガラス板の下面から素子面までの高さ(距離)の分布、又は積層フィルムの界面の高さ分布(形状)など、屈折率が1より大きい透明媒質の下に配置された状態で被計測物の計測対象面の高さ分布を計測することが求められている。しかしながら、従来の二光束干渉対物レンズ系を用いる高さ計測装置では、被計測物側の光路に屈折率が1より大きい透明媒質が存在すると、その屈折率及び透明媒質の厚さに応じて光路長差が生じるため、その光路長差が対物レンズの焦点深度及び/又は可干渉距離を越えると、高いコントラストの干渉縞が生成されなくなり、その計測対象面の高さ分布が計測できなくなる。
【0005】
この対策として、参照ミラー側の光路に被計測物側の透明媒質(光が伝わる物質)と同じ透明媒質を挿入する機構を設けることも考えられる。しかしながら、この方法では、予め様々な被計測物で使用される透明媒質と同じ材質で同じ程度の厚さの透明媒質を準備する必要があり、汎用性に欠けるという問題がある。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、被計測物又は被計測面が様々な屈折率で、かつ様々な厚さの透明媒質の下に配置されていても、その被計測物又は被計測面の高さを容易に計測できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様によれば、被計測物の高さを計測する高さ計測装置が提供される。この高さ計測装置は、計測用の光を第1光束及び第2光束に分岐する分岐光学系と、その第1光束をその被計測物に導く第1対物光学系と、その第2光束を集光する第2対物光学系と、その第2対物光学系で集光されたその第2光束を反射する参照部材と、その分岐光学系とその第2対物光学系との間のその第2光束の光路長を調整する光路長調整装置と、その被計測物で反射されその第1対物光学系を介して戻されるその第1光束と、その参照部材で反射されその第2対物光学系を介して戻されるその第2光束との干渉像を受光する撮像装置と、その第1対物光学系とその被計測物とをその第1対物光学系の光軸方向に相対移動する移動装置と、その移動装置でその第1対物光学系とその被計測物とを相対移動させたときにその撮像装置の検出信号に基づいてその被計測物の高さ情報を求める演算装置と、を備えるものである。
【0007】
また、第2の態様によれば、被計測物の高さを計測する高さ計測方法が提供される。この計測方法は、計測用の光を第1光束及び第2光束に分岐することと、その第1光束をその被計測物に導くことと、その第2光束を集光して反射することと、その被計測物で反射されたその第1光束と、その反射されたその第2光束との干渉像を検出することと、その干渉像に基づいてその第2光束の光路長を調整することと、その第1光束とその被計測物とをその第1光束の光軸方向に相対移動しながらその干渉像の検出信号を得ることと、その干渉像の検出信号に基づいてその被計測物の高さ情報を求めることと、を含むものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の態様によれば、第2光束の光路長を調整することができるため、被計測物又は被計測面が透明媒質の下に配置されていても、その被計測物又は被計測面の高さを容易に計測できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施形態の一例に係る高さ計測装置を示す一部を断面で表した図である。
【図2】(a)は撮像信号を示す図、(b)は相関度計算用の関数の一例を示す図、(c)は相関度計算用の位置ずれした関数を示す図、(d)は計算された相関度を示す図である。
【図3】(a)は図1中の二光束干渉対物レンズ系及び被計測物を示す図、(b)は図3(a)の状態から参照面用の対物レンズ及び参照ミラーを移動させた状態を示す図である。
【図4】高さ計測方法の一例を示すフローチャートである。
【図5】ミロー型の二干渉対物レンズを示す断面図である。
【図6】(a)は第1実施例に係る二光束干渉対物レンズ系及び被計測物を示す一部を断面で表した図、(b)は図6(a)とは異なる面を計測対象にした状態を示す図である。
【図7】第1実施例の高さ計測方法を示すフローチャートである。
【図8】第2実施例に係る高さ計測装置を示す図である。
【図9】(a)は第3実施例に係る二光束干渉対物レンズ系及び被計測物を示す図、(b)は図9(a)とは異なる面を計測対象にした状態を示す図である。
【図10】(a)は第4実施例に係る二光束干渉対物レンズ系及び被計測物を示す図、(b)は被計測物を押しつぶした状態の要部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態の一例につき図1〜図5を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る顕微鏡よりなる高さ計測装置1を示す。図1において、高さ計測装置1は、撮像部10、顕微鏡本体40、コンピュータを含む制御用プロセッサ46、及び液晶ディスプレイ等のモニタ装置48を備えている。顕微鏡本体40は、L字型の顕微鏡べ一ス42及びこれに支持された試料台44を備え、試料台44の上面に角度調整機構(不図示)を介して例えば平板状の被計測物6が載置されている。
【0011】
撮像部10は、高速度カメラ12、顕微鏡鏡筒装置14、ピエゾ駆動装置18、二光束干渉対物レンズ系20、及び顕微鏡用の照明装置16を備えている。撮像部10は、顕微鏡べ一ス42に支持されている。照明装置16は、広帯域の実質的に白色光とみなすことができる照明光を出射する例えば水銀ランプ等と光ファイバとを組み合わせた光源16a、波長選択フィルタ(不図示)、及びその照明光を二光束干渉対物レンズ系20側に導くビームスプリッタ16b等を有する。
その照明光の波長帯の幅は、一例として200nm以上である。この場合、中心波長をλ、波長帯の幅をΔλとすると、可干渉距離は、ほぼλ2/Δλとなる。そこで、例えば中心波長λを500nm、波長帯の幅Δλを少なくとも200nmとすると、可干渉距離は1.25μm以下になる。なお、波長帯の幅を200nmより狭くして、可干渉距離を1.25μmより大きい値、例えば数μm〜数10μmにすることも可能である。撮像カメラは、本実施形態では高速度カメラを用いているが、通常のCCDカメラまたはCMOSカメラを用いることもできる。
【0012】
二光束干渉対物レンズ系20は、その照明光を第1照明光及び第2照明光に分割するビームスプリッタ22、その第1照明光を被計測物6の計測対象面6a(例えば表面)に導く対象物用の明視野対物レンズ24、高平面度の参照面28aを有する参照ミラー28、及びその第2照明光を参照面28aに導く参照面用の明視野対物レンズ26を有する。本実施形態の二光束干渉対物レンズ系20は、リニーク型の干渉光学系を例示している。以下、対象物用の対物レンズ24の光軸に平行にZ軸を取り、Z軸に垂直な平面内で図1の紙面に垂直な方向にX軸を、図1の紙面に平行な方向にY軸を取って説明する。本実施形態では、参照面用の対物レンズ26の光軸はY軸に平行である。
【0013】
また、二光束干渉対物レンズ系20は、ビームスプリッタ22及び対象物用の対物レンズ24を支持するフレーム21、フレーム21に固定された固定円筒部材33、固定円筒部材33内にY方向に移動可能に収容された可動円筒部材30、及び可動円筒部材30内に止めネジ32を介して固定された連動円筒部材27を有する。さらに、二光束干渉対物レンズ系20は、固定円筒部材33に設けられたスリット部を介して可動円筒部材30に連結されたレバー部材35、及び固定円筒部材33に支持部34を介して固定されてレバー部材35をY方向に移動させる電動マイクロメータよりなる移動部36を有する。連動円筒部材27内に止めネジ31を介して参照面用の対物レンズ26が固定され、連動円筒部材27の端部に角度調整機構(不図示)を含む取り付け部材29を介して参照ミラー28が固定されている。移動部36によってレバー部材35を介して可動円筒部材30をY方向に移動することによって、参照面用の対物レンズ26及び参照ミラー28を一体的にY方向に移動して、その第2照明光の光路長を調整できる。
【0014】
移動部36は、例えば計測精度が1μm程度のエンコーダを内蔵しており、所定の基準位置から距離D(例えばD=3.5mm程度)の範囲内で、制御用プロセッサ46内の移動制御部46eに設定された距離だけ対物レンズ26及び参照ミラー28をY方向に移動する。移動部36としては、リニアエンコーダ及びリニアモータの組み合わせ等も使用可能である。
【0015】
また、顕微鏡鏡筒装置14は、その内部に結像レンズ(図示せず)を備え、計測対象面6aで反射される第1照明光及び参照面28aで反射される第2照明光を高速度カメラ12の撮像面に結像させる。その結果として高速度カメラ12の撮像面上に干渉縞が形成される。顕微鏡鏡筒装置14内の結像レンズと対物レンズ24とを含んで撮像光学系が構成されている。高速度カメラ12は、例えば1/2000秒間に1枚の割合で撮像可能であり、その撮像した画像をデジタル信号(撮像信号)に変換して、制御用プロセッサ46の画像メモリ46cに出力する。
【0016】
ピエゾ駆動装置18は、印加電圧を変えることにより体積が変化するピエゾ素子を備えており、本実施形態においては、例えば1秒間に15回程度の割合で、例えば10nm程度のステップ移動幅でほぼ連続的にZ方向に所定幅の可動範囲内を往復移動可能となっている。このピエゾ駆動装置18が、二光束干渉対物レンズ系20のフレーム21を−Z方向に保持しているため、ピエゾ駆動装置18が駆動されることにより、二光束干渉対物レンズ系20は、撮像部10内の撮像光学系の光軸(対物レンズ24の光軸)に沿ったZ方向に往復移動される。この結果、二光束干渉対物レンズ系20(対物レンズ24)と被計測物6とが対物レンズ24の光軸方向に相対移動する。ピエゾ駆動装置18の動作は、制御用プロセッサ46内のピエゾ駆動制御部46dによって制御される。さらに、高さ計測装置1は、試料台44(被計測物6)をZ方向に20mm程度の範囲内で移動する例えばステッピングモータ及び移動量を高精度に計測する装置を含むZステージ45、及び試料台44をX方向、Y方向に移動するXYステージ(不図示)を備えている。なお、Zステージ45の代わりに、又はZステージ45とともに、撮像部10を全体としてZ方向に移動する駆動装置を設けてもよい。
【0017】
制御用プロセッサ46内の演算制御部46aは、ピエゾ駆動制御部46d及びピエゾ駆動装置18を介して二光束干渉対物レンズ系20をZ方向に移動させるのに同期して、高速度カメラ12から画像メモリ46cに一連の干渉像の画像の撮像信号を取り込む。さらに、演算制御部46aは、その各画像の撮像信号を処理して、後述のように干渉像に基づいて各画素に対応する計測対象面6aのX方向、Y方向の位置毎のZ方向の位置(高さ又は相対高さ)を求める。さらに、演算制御部46aは、計測対象面6aの干渉像又は高さ分布を表す画像を並行して、又は切り替えてモニタ装置48に表示する。また、制御用プロセッサ46内の干渉縞制御部46bは、画像メモリ46cから読み出した各画像の撮像信号より干渉像(干渉縞)のコントラストを計算し、一例としてそのコントラストが最大になるように移動制御部46e及び移動部36を介して参照面用の対物レンズ26及び参照ミラー28をY方向に移動し、その位置で対物レンズ26及び参照ミラー28を静止させる。また、ピエゾ駆動制御部46dはZステージ45の動作も制御している。
【0018】
次に、高さ計測装置1を用いて被計測物6の計測対象面6aの高さ分布(表面形状)を計測するときの基本的な動作につき説明する。まず、対象物用の対物レンズ24と被計測物6との間に、屈折率が1より大きい透明物体8が存在しないものとする。この場合、計測対象面6aが平均的に撮像光学系(対象物用の対物レンズ24)の焦点位置(ベストフォーカス位置)にあるときに、計測対象面6aで反射される第1照明光と参照ミラー28の参照面28aで反射される第2照明光とのビームスプリッタ22で合成される位置における光路長が互いに等しくなり、干渉像のコントラストが最大になるように、可動円筒部材30内の参照面用の対物レンズ26及び参照ミラー28のY方向の位置が上記の所定の基準位置に設定されている。なお、参照ミラー28の傾斜角の調整方法については後述する。
【0019】
この状態で、光源16aから出射されてビームスプリッタ16bにおいて反射された照明光は、二光束干渉対物レンズ系20の中のビームスプリッタ22に到達する。そして、照明光はビームスプリッタ22において2分割され、一方の第1照明光は対象物用の対物レンズ24を通過して計測対象面6aに照射され、他方の第2照明光は参照面用対物レンズ26を通過して参照面28aに照射される。そして、計測対象面6a及び参照面28aにおいて反射された照明光は、ビームスプリッタ22で再び重ね合わされ、共に高速度カメラの撮像面上に結像される。その結果、高速度カメラ12の撮像面上に干渉縞が形成される。
【0020】
上記計測時において、ピエゾ駆動装置18の下端は、ピエゾ駆動制御部46dに制御されZ軸方向に走査されているため、二光束干渉対物系レンズ20(対象物用の対物レンズ24)がそれぞれのZ方向の位置(Z位置)に移動された状態における干渉像が、高速度カメラ12の撮像面上に結像される。その干渉像は白色干渉縞であり、計測対象面6aからの反射光と参照面28aからの反射光との光路長の差が0になる位置(計測対象面6a内の各位置が参照面28aと共役な面を横切る位置)でその干渉像の光強度が最も高くなる。そこで、二光束干渉対物レンズ系20のZ位置毎に、例えば以下に説明する方法で、干渉像の撮像信号より、干渉像の光強度が最も高くなる画素(合焦度が最も高い画素)を求めることで、計測対象面6a内のZ方向の位置の分布(高さ分布又は表面形状)を求めることができる。
【0021】
制御用プロセッサ46において、計測対象面6aの高さ分布を求める方法の一例につき説明する。ピエゾ駆動装置18で二光束干渉対物レンズ系20のZ位置をある位置に移動したときの、対象物用の対物レンズ24に対する計測対象面6aのZ方向の相対的な位置をXi(i=1〜n)とする。その位置Xiで画像メモリ46cに取り込まれた干渉像の撮像信号から得られるある画素の光強度Qの値(濃度値又は輝度)をYiとする。また、図2(a)に示すように、位置Xiの光強度値Yiを表すデータ点列をM(Xi,Yi)とする。添字iは上述のようにほぼ連続的に取得される画像データの番号であり、ここではn枚分の画像の撮像信号が取得される。
【0022】
次に、その取得したデータ点列Mに最もフィットする関数を第1関数F1(Z)とする。なお、図2(a)において、位置Zの原点は、例えば計測対象面6a上で対物レンズ24の光軸が通る位置(X方向、Y方向の基準位置)に対応する画素の光強度値が最大値を取るときの位置Xi(この値をPsとする)である。その光強度値Yiは、一例としてそのまま最大値になるときが計測対象面6a上の点が合焦している状態(ここでは干渉縞の光強度が最大の状態でもある)を表す信号として使用可能である。従って、単にその光強度値Yiが最大になるときの位置Xiを干渉縞の強度が最も高くなる位置とすることも可能である。
【0023】
ただし、撮像光学系(対物レンズ24)の焦点深度等から、対物レンズ24の焦点面近傍に計測対象面6aがあるときは、光強度値Yiの変化は小さくなり、光強度値Yiが最大値を取る位置Xiを高精度に求めることが困難な場合がある。そこで、他の例として、その第1関数F1(Z)から、その第1関数F1(Z)がピークとなる部分の前後における変化が大きくなるような相関値を求めることができる第2関数F2(Z)を選択する。ただし、第2関数F2(Z)は例えばZ位置の原点に関して対称になるようにシフトしている。この際に、光学系と被計測物とを光軸に沿って相対移動させたときの光強度値の変化(変化特性)は光学系によって決まるため、その第1関数F1(Z)の形(係数等)は光学系によって定めることができる。
【0024】
その第2関数F2としては、例えば第1関数F1の一次微分の二乗、第1関数F1の一次微分の絶対値、第1関数F1においてYiの値が増加する部分及び減少する部分のそれぞれに対応して極大又は極小となる部分ができる関数、又は第1関数F1の定数倍(例えば数倍)等が使用できる。ここでは、一例として、図2(b)に示すように、第1関数F1(Z)の定数倍に相当する関数を第2関数F2(Z)として説明する。
【0025】
演算制御部46aでは、図2(c)に示すように、第2関数F2(Z)を光軸方向(Z軸方向)に所定範囲でシフトし、Z方向の各位置Xiにおける光強度値Yiと、位置Xiにおけるシフト後の第2関数F2(Z)の値との相関値Eを次式(添字iに関する積和)から計算する。ここで、aはZ方向の第2関数F2(Z)のシフト量を示している。
E=Σ{Yi・F2(Xi−a)} …(1)
図2(c)に示すように、シフト量aをマイナスからプラスに変化させて光強度値Yiと第2関数F2(Xi−a)との相関値Eを求めると、図2(d)に示すように、シフト量aがある値のときに相関値Eが大きくなり、シフト量aがその値のときに相関値Eが極大(又は極小)となる。式(1)で表される相関値Eのピーク値(極大値又は極小値)を求めるために、次式に示すように、式(1)をシフト量aにより偏微分し、この偏微分した値が0になるときのシフト量aを求める。このシフト量aに上記の原点のZ方向の位置の値Psを加算して得られる値(Ps+a)が、当該画素において干渉像の強度が最大になるときの計測対象面6a上の対応する位置のZ位置、すなわちこの位置の高さ(原点からの相対高さ)となる。
【0026】
∂E/∂a=0 …(2)
この式(2)を満足するシフト量aを求める方法としては、解析的に求める方法、又はニュートン法若しくは逐次代入法などの数値演算法がある。ピエゾ駆動装置18によるステップ移動幅を例えば10nmとすると、そのように相関値Eに基づいてシフト量aを求める方法によって、そのステップ移動幅の例えば1/10000以下(0.001nm以下)の分解能で計測対象面6aの高さ分布を計測できる。なお、上記の各画素の光強度値Yi(合焦度信号)の代わりに、例えば連続する3つの画像に関して当該画素を含む例えば3×3個の画素群の光強度値をラプラシアンフィルタ等に通して得られる値(光強度値の二次微分値等)を使用してもよい。
【0027】
次に、本実施形態の高さ計測装置1において、図1に2点鎖線で示すように、対象物用の対物レンズ24と被計測物6との間に、屈折率が1より大きい例えば平板状の透明物体8が配置される場合の高さ計測方法の一例につき図4のフローチャートを参照して説明する。この際に、一例として、予め図4のステップ102において、参照ミラー28の角度調整が次の手順で行われている。まず、オペレータは、図1の対象物用の対物レンズ24の代わりに図5のミロー型の二光束干渉対物レンズ24Mを装着し、試料台44上に表面の平面度が良好な基準ミラー6Sを載置する。
【0028】
図5において、二光束干渉対物レンズ24Mは、レンズ枠50内に上方から順に対物レンズ51、小型の参照ミラー52、及び平板状のビームスプリッタ53を保持して構成されている。二光束干渉対物レンズ24Mにおいて、図1のビームスプリッタ22で分岐された第1照明光L1は、対物レンズ51を通過してビームスプリッタ53で基準ミラー6Sに向かう計測光L1Aと参照ミラー52に向かう参照光L1Bとに分かれる。そして、基準ミラー6Sで反射された計測光L1A及び参照ミラー52で反射された参照光L1Bは、ビームスプリッタ53で合成され、対物レンズ51及び図1のビームスプリッタ22を介して、高速度カメラ12の撮像面に計測光L1Aと参照光L1Bとで形成される干渉縞の像を結像する。
【0029】
この場合、オペレータは、高速度カメラ12で撮像される干渉像をモニタ装置48に表示させて、その干渉像の干渉縞が一色(全面でほぼ均一な光強度になる状態)になるように、試料台44の角度調整機構(不図示)を用いて基準ミラー6Sの角度を調整する。これによって、基準ミラー6Sの反射面は撮像光学系の光軸に垂直になる。その後、オペレータは、二光束干渉対物レンズ24Mを図1の対象物用の対物レンズ24に交換してから、基準ミラー6Sで反射された第1照明光及び図1の参照ミラー28で反射された第2照明光の干渉像をモニタ装置48に表示させる。そして、その干渉像の干渉縞が一色になるように、取り付け部材29の角度調整機構(不図示)を介して参照ミラー28の角度を調整する。これによって、参照面28aは参照面用の対物レンズ26の光軸に垂直になる。
【0030】
その後、図4のステップ104において、オペレータは、図3(a)に示すように、試料台44に被計測物6を載置し、被計測物6と対象物用の対物レンズ24との間に1より大きい屈折率を持つ平板状の透明物体8を配置する。その後、照明装置16からビームスプリッタ22に照明光Laの照射が開始され(ステップ106)、ビームスプリッタ(BS)22によって照明光Laが第1照明光L1及び第2照明光L2に分割される(ステップ108)。なお、対物レンズ24,26は、一例として無限遠補正タイプであり、この場合、対物レンズ24,26の焦点面の一点からの光は対物レンズ24,26を通過して平行光束になってビームスプリッタ16bに向かう。言い替えると、図3(a)に点線で示すように、照明装置16の視野絞り16cの光軸上の点から出射される照明光は、視野レンズ16d及びビームスプリッタ16bを介して平行光束になってビームスプリッタ22に入射する。そこで、図3(a)等では、説明の便宜上、ビームスプリッタ22に光軸に平行に入射する照明光のみを点線で表している。
【0031】
そして、第1照明光L1は対象物用の対物レンズ24から透明物体8を介して計測対象面6aに照射され、第2照明光L2は参照面用の対物レンズ26から参照面28aに照射される(ステップ110)。計測対象面6aで反射されて透明物体8及び対物レンズ24を通過した第1照明光L1及び参照面28aで反射されて対物レンズ26を通過した第2照明光L2は、ビームスプリッタ22で合成されて反射光Lbとなり、反射光Lbは図1の結像レンズ(不図示)を介して、高速度カメラ12の撮像面上に結像し、その結果干渉像を形成する(ステップ112)。その干渉像は高速度カメラ12により撮像され、その画像がモニタ装置48に表示される(ステップ114)。
【0032】
このとき、透明物体8の屈折率をn(n>1)、厚さをdとすると、対象物用の対物レンズ24に対する光軸上の焦点位置は、透明物体8がない場合の焦点位置7Mから−Z方向に距離z1(=d(1−1/n))だけ降下する。そのため、次のステップ116において、一例としてオペレータは、不図示の入力装置から制御用プロセッサ46のピエゾ駆動制御部46dを介してZステージ45を駆動して、対物レンズ24の焦点位置が平均的にほぼ計測対象面6aに合致するように、試料台44(被計測物6)のZ位置を降下させる。
【0033】
さらに、透明物体8における第1照明光L1の光路長はd(n−1)だけ増加し、第1照明光L1の光路長は距離z1に関しても増加している。この結果、第1照明光L1の光路長は、第2照明光L2の光路長に比べて次のδ1だけ増加している。
δ1=d(n−1)+z1=d(n−1)+d(1−1/n)
=d(n−1/n) …(3)
一例として、屈折率nを1.5、透明物体8の厚さdを2mm程度とすると、光路長の増加分δ1は1.67mmとなり、増加分δ1は第1照明光と第2照明光との可干渉距離(例えば1.25μm程度、又は数μm〜数10μm等)を大幅に越えてしまう。このため、高速度カメラ12の撮像面にコントラストの高い干渉縞の像が形成されなくなり、計測対象面6aの高さの計測ができない。
【0034】
そこで、ステップ118において、制御用プロセッサ46内の干渉縞制御部46bは、画像メモリ46cから読み出される撮像信号から干渉像のコントラストを求め、このコントラストが最大になるように、図3(b)に示すように、移動制御部46e及び移動部36を介して参照面用の対物レンズ26及び参照ミラー28をY方向に移動し、その干渉像のコントラストが最大になる位置で対物レンズ26及び参照ミラー28の位置を固定する。参照ミラー28の参照面28aの基準位置7Rからの+Y方向への移動量y1は、ほぼ式(3)の光路長の変化量δ1と等しい。その後、ステップ120において、制御用プロセッサ46内の演算制御部46aは、ピエゾ駆動制御部46d及びピエゾ駆動装置18を介して二光束干渉対物レンズ系20を所定範囲内でZ方向に移動させながら、高速度カメラ12で撮像される一連の干渉像の撮像信号を画像メモリ46cに取り込む。
【0035】
次のステップ122において、演算制御部46aは、図2(a)〜(d)を参照して説明したように、二光束干渉対物レンズ系20のZ位置、すなわち対物レンズ24に対する計測対象面6aのZ方向の相対的な位置Xi(i=1〜n)における各画素の光強度値Yiから式(1)の相関値Eを求め、各画素に関してその相関値Eが極値を取るときの第2関数F2(Xi−a)のシフト量a(相対高さ)を求める。次のステップ124で、計測対象面6aの各位置の相対高さを示す情報がモニタ装置48に表示される。
【0036】
このように本実施形態の高さ計測装置1は、照明光Laを第1照明光L1及び第2照明光L1に分岐するビームスプリッタ22と、第1照明光L1を被計測物6に導く対象物用の対物レンズ24と、第2照明光L2を集光する参照面用の対物レンズ26と、対物レンズ26で集光された第2照明光L2を反射する参照ミラー28と、を備えている。さらに、高さ計測装置1は、ビームスプリッタ22と参照面用の対物レンズ26(ひいては参照ミラー28)との間の第2照明光L2の光路長を調整する移動部36と、被計測物6で反射された第1照明光L1と参照ミラー28で反射された第2照明光L2との干渉像を撮像する高速度カメラ12と、対象物用の対物レンズ24と被計測物6とを対物レンズ24の光軸方向(Z方向)に相対移動するピエゾ駆動装置18と、対物レンズ24と被計測物6とをZ方向に相対移動させたときに高速度カメラ12の撮像信号に基づいて被計測物6の高さ分布を求める制御用プロセッサ46(演算制御部46a)と、を備えている。また、高さ計測装置1は、第1照明光の光路に透明物体8が配置されているときに、図4に示す計測方法で被計測物6の高さ分布を求めている。
【0037】
本実施形態によれば、ステップ118で、移動部36によって参照ミラー28で反射される第2照明光の光路長を調整することができる。従って、被計測物6が、1と異なる様々な屈折率で、かつ様々な厚さの透明物体8(透明媒質)の下に配置されていても、移動部36によって、被計測物6から反射される第1照明光と参照ミラー28で反射される第2照明光との光路長の差を容易に可干渉距離の範囲内に収めることができ、白色干渉方式で被計測物6の高さを容易に計測できる。
【0038】
本実施形態の二光束干渉対物レンズ系20で使用される対物レンズ24,26の倍率は例えば10倍(開口数0.3)である。対物レンズ24,26としては、さらに高倍の対物レンズを用いることもできる。対物レンズ24,26として例えば100倍(開口数0.7)の対物レンズを用いる場合、透明物体8の影響で球面収差が発生する場合がある。このような場合、対物レンズ24,26として収差補正機能付き対物レンズを用いれば、球面収差を補正することができ、球面収差が補正されることで目視による合焦が容易になる。
また、移動部36を用いて対物レンズ26及び参照ミラー28を移動する代わりに、例えば対物レンズ26とビームスプリッタ22との間に電圧によって屈折率の変化する電気光学素子よりなる基板を配置し、この基板に例えば透明電極膜を介して印加する電圧を制御してもよい。
【実施例】
【0039】
[第1実施例]
この第1実施例では、図1の高さ計測装置1を用いて、図6(a)、(b)に示すように、デジタルカメラ等に使用されるCCD撮像素子55の保護用のガラス板56の下面56aから撮像素子部57の表面までの間隔hをX方向、Y方向の位置(x,y)の関数h(x,y)として計測する。光透過性で平板状のガラス板56の屈折率n1は1より大きく、その平均的な厚さをd1とする。このような計測は、CCD撮像素子55の製造工程の管理上で必要になることがある。なお、図6(a)、(b)において、図3(a)、(b)に対応する部分には同一符号を付してその詳細な説明を省略する。また、CCD撮像素子55は、撮像素子部57が固定される素子ベース58及び素子ベース58上にガラス板56を支持する矩形の枠状の支持部59を有する。
【0040】
高さ計測装置1を用いてCCD撮像素子55のガラス板56を通して、撮像素子部57までの間隔h(x,y)を計測する方法の一例につき図7のフローチャートを参照して説明する。まず、図7のステップ132において、図6(a)の試料台44上にCCD撮像素子55を載置し、照明光Laの照射を開始させて、CCD撮像素子55からの反射光及び参照ミラー28からの反射光によって形成される干渉像を図1のモニタ装置48に表示させる。そして、オペレータは、例えば目視によってモニタ装置48にガラス板56の下面56aの像が表示されるように、図1のZステージ45を駆動して試料台44を降下させる(試料台44に対して相対的に二光束干渉対物レンズ系20を含む撮像部10を上昇させる)。これによって、対象物用の対物レンズ24のガラス板56が存在する場合の焦点位置がガラス板56の下面56aに合わせ込まれる。ガラス板56の存在による第1照明光L1の光路長の変化量(式(3)でn,dにそれぞれn1,d1を代入して計算される値)は可干渉距離を大きく越えているため、この状態では干渉像は形成されていない。
【0041】
そこで、次のステップ134において、下面56aから反射される第1照明光L1と参照ミラー28から反射される第2照明光L2の反射光Lbによる干渉像のコントラストが最大になるように、移動部36を介して参照面用の対物レンズ26及び参照ミラー28をY方向に距離y2だけ移動する。次のステップ136において、図1の干渉縞制御部46bでは、その干渉像(干渉縞)のコントラストを例えば予め記憶されている目標値と比較し、そのコントラストが目標値よりも小さい場合には、ステップ132及び134を繰り返す。その後、ステップ136でその干渉像のコントラストが目標値以上になったときに、コントラストが十分に高いとみなして、ステップ138に移行する。そして、図4のステップ120,122と同様に、ピエゾ駆動装置18で二光束干渉対物レンズ系20をZ方向に走査させて図1の高速度カメラ12の撮像信号を取り込み、下面56aの位置(x,y)毎の高さ分布f(x,y)を取得する。
【0042】
次のステップ140において、オペレータは、例えば目視によってモニタ装置48に撮像素子部57の表面57aの像が表示されるように、図6(b)に示すように、図1のZステージ45を駆動して試料台44を上昇させる(試料台44に対して相対的に撮像部10を降下させる)。このように試料台44をZ方向に移動する際には、例えばZステージ45によるZ方向の移動量が不図示の計測装置で計測されてオフセットZofとして制御用プロセッサ46内に記憶される。そして、対象物用の対物レンズ24のガラス板56が存在する場合の焦点位置が撮像素子部57の表面57aに合わせ込まれる。なお、この状態では、ガラス板56による第1照明光L1の光路長の変化は図6(a)の状態と同じであるため、参照面用の対物レンズ26及び参照ミラー28の位置は調整する必要がない。そこで、ステップ138と同様に、二光束干渉対物レンズ系20をZ方向に走査させて高速度カメラ12の撮像信号を取り込み、表面57aの位置(x,y)毎の高さ分布g(x,y)を取得する。この高さ分布g(x,y)には上記のZ方向のオフセットZofが加算されている。
【0043】
次のステップ142において、図1の演算制御部46aは、次式からCCD撮像素子55のガラス板56の下面56aから撮像素子57の表面57aまでの間隔の分布h(x,y)を求めることができる。
h(x,y)=f(x,y)−g(x,y) …(4)
【0044】
[第2実施例]
この第2実施例では、図8に示すように、高さ計測装置1Aを用いて、恒温チャンバー60内の低温又は高温下での被計測物62の表面の高さ(表面形状)又はその変化を計測する。被計測物62は、例えば薄型ディスプレイなどに使用する偏光フィルムなどのプラスチックフィルムである。例えば温度を次第に高くした雰囲気下での被計測物62の表面の変形量を正確に計測するために高さ計測装置1Aが使用される。なお、図8において図1に対応する部分には同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0045】
図8において、恒温チャンバー60の上部には、内部を観察可能とし、かつ気密化するために平板状のガラス板61が設置されており、恒温チャンバー60内のガラス板61の下方にフィルム状の被計測物62が載置されている。恒温チャンバー60内の雰囲気は、不図示の温度調整機構によって低温から高温までの任意の試験温度に設定し、かつその試験温度に保つことができる。また、高さ計測装置1Aは、撮像部10を備えているが、図1の顕微鏡本体40は備えていない。撮像部10は、二光束干渉対物レンズ系20の対象物用の対物レンズ24がガラス板61の上方に配置されるように、不図示のフレームに支持されている。これ以外の構成は図1の高さ計測装置1と同様である。
【0046】
この第2実施例の高さ計測装置1Aにより、被計測物62の表面62aの高さを計測する場合には、まず例えばZ方向の駆動部(不図示)によって撮像部10のZ方向の位置を調整して、対象物用の対物レンズ24の焦点を表面62aに合わせる。この状態では、ガラス板61の設置による第1照明光の光路長の変化によって、高速度カメラ12の撮像面に検出可能なコントラストを持つ干渉像は形成されない。そこで、第1実施例と同様に、表面62aで反射される第1照明光と、参照ミラー28で反射される第2照明光との光路長を合わせて、干渉像のコントラストを高くするために、移動部36を介して対物レンズ26及び参照ミラー28のY方向の位置を調整する。これによって、高速度カメラ12で高いコントラストの干渉像を撮像できるため、対物レンズ24と被計測物62との間に屈折率が1より大きく任意の厚さのガラス板61が配置されていても、第1実施例と同様に白色光を用いる二光束干渉方式で被計測物62の表面の高さを計測できる。
【0047】
[第3実施例]
この第3実施例では、図1の高さ計測装置1を用いて、図9(a)、(b)に示すように、屈折率n1の第1フィルム65、屈折率n2の第2フィルム66、及び第3フィルム67を貼り合わせてなる積層フィルム64の表面及び界面の形状を計測する。なお、図9(a)、(b)において、図3(a)、(b)に対応する部分には同一符号を付してその詳細な説明を省略する。また、屈折率n1及びn2は予め計測されており、その計測値は図1の制御用プロセッサ46の演算制御部46aの記憶部に記憶されている。
【0048】
この第3実施例では、まず積層フィルム64の表面65a(第1フィルム65の表面)の高さ分布f(x,y)を二光束干渉方式で計測する。次に、図9(a)に示すように、図1のZステージ45を用いて対象物用の対物レンズ24の焦点に第1フィルム65と第2フィルム66との間の界面(境界面)66aに合わせ込み、干渉像のコントラストが高くなるように移動部36を介して対物レンズ26及び参照ミラー28を移動する。この状態で、界面66aの高さ分布g(x,y)を二光束干渉方式で計測する。第1実施例と同様に、高さ分布g(x,y)はZ方向のオフセットが調整されている。
【0049】
このとき、第1フィルム65の屈折率はn1であり、高さ分布g(x,y)は光学距離(光路長)であるため、図1の演算制御部46aは次式から界面66aの実際の高さ分布g’(x,y)を求める。
g’(x,y)=f(x,y)−{f(x,y)−g(x,y)}/n1
=(1−1/n1)f(x,y)+g(x,y)/n1 …(5)
次に、図9(b)に示すように、図1のZステージ45を用いて対象物用の対物レンズ24の焦点に第2フィルム66と第3フィルム67との間の界面67aに合わせ込み、干渉像のコントラストが高くなるように移動部36を介して対物レンズ26及び参照ミラー28を移動する。この状態で、界面67aの高さ分布i(x,y)を二光束干渉方式で計測する。このときも、第2フィルム66の屈折率はn2であり、高さ分布i(x,y)は光学距離であるため、演算制御部46aは次式から界面67aの実際の高さ分布i’(x,y)を求めることができる。
i’(x,y)=g’(x,y)−{g’(x,y)−i(x,y)}/n2
=(1−1/n1)f(x,y)+(1/n1−1/n2)g(x,y)
+i(x,y)/n2 …(6)
【0050】
[第4実施例]
この第4実施例では、図8の高さ計測装置1Aと同様な構成の図10(a)の高さ計測装置1Bを用いて、静圧装置68によって可変の静圧が加えられた例えばシート状の被計測物73の表面の歪状態を計測する。被計測物73は、例えばプリンタ用の紙である。なお、被計測物73としては、プリンタのロール又は液晶ディスプレイの駆動用IC等も適用できる。被計測物73がプリンタ用の紙又はプリンタのロールである場合には、これらの搬送機構又は駆動機構等の設計において、これらの部材の表面の静圧下の歪状態の計測結果が利用される。また、被計測物73が液晶ディスプレイの駆動用ICである場合には、例えばこの駆動用ICとガラス基板上の電極とを圧着させるときに、圧着プロセスの工程管理上、圧着状態の計測結果が利用される。なお、図10(a)において図1に対応する部分には同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0051】
図10(a)において、静圧装置68は、大きい平板状のベース部70と、ベース部70の上面に配置され、被計測物73が載置される平板状のテーブル74と、被計測物73の表面を覆うように配置される大きい平板状の光透過性のガラス板72と、ガラス板72に被計測物73側への静圧を加える駆動部71とを有する。また、静圧装置68のガラス板72の上方に高さ計測装置1Bの二光束干渉対物レンズ系20の対象物用の対物レンズ24が配置されている。
【0052】
この第4実施例で被計測物73の表面の歪状態を計測するには、まず静圧装置68のガラス板72を自由な状態の被計測物73の表面に極めてわずかに接触する程度のZ位置に設定する。この状態では、被計測物73には実質的に静圧は加えられていない。このとき、図7のステップ132〜138と同様にして、二光束干渉方式で被計測物73の表面の高さ分布f(x,y)を計測する。
【0053】
次に、図10(b)に示すように、静圧装置68のガラス板72を被計測物73の表面側(−Z方向)に付勢して、被計測物73の表面に所定の静圧を加える。このとき、図7のステップ140と同様にして、二光束干渉方式で被計測物73の表面の高さ分布g(x,y)を計測する。この結果、第1照明光の光路に静圧付加用のガラス板72が配置されていても、静圧による被計測物73の表面の変形量の分布j(x,y)を、次式から求めることができる。
【0054】
j(x,y)=f(x,y)−g(x,y) …(7)
なお、上述の実施形態及び実施例において、干渉縞を生成する方法として二光束干渉光学系を用いた構成を例示したが、この構成に限定されず、例えば微分干渉光学系を用いて干渉縞を生成する構成でも良く、さらには、縞投影法を用いて干渉縞を生成する構成でも良い。
【0055】
なお、本発明は上述の実施形態及び実施例に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の構成を取り得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0056】
1,1A,1B…高さ計測装置、6…被計測物、8…透明物体、10…撮像部、12…高速度カメラ、18…ピエゾ駆動装置、20…二光束干渉対物レンズ系、24…対象物用明視野対物レンズ、26…参照面用明視野対物レンズ、28…参照ミラー、36…移動部、46…制御用プロセッサ、48…モニタ装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被計測物の高さを計測する装置であって、
計測用の光を第1光束及び第2光束に分岐する分岐光学系と、
前記第1光束を前記被計測物に導く第1対物光学系と、
前記第2光束を集光する第2対物光学系と、
前記第2対物光学系で集光された前記第2光束を反射する参照部材と、
前記分岐光学系と前記第2対物光学系との間の前記第2光束の光路長を調整する光路長調整装置と、
前記被計測物で反射され前記第1対物光学系を介して戻される前記第1光束と、前記参照部材で反射され前記第2対物光学系を介して戻される前記第2光束との干渉像を受光する撮像装置と、
前記第1対物光学系と前記被計測物とを前記第1対物光学系の光軸方向に相対移動する移動装置と、
前記移動装置で前記第1対物光学系と前記被計測物とを相対移動させたときに前記撮像装置の検出信号に基づいて前記被計測物の高さ情報を求める演算装置と、
を備えることを特徴とする高さ計測装置。
【請求項2】
前記光路長調整装置は、前記第2対物光学系と前記参照部材とを一体的に前記第2対物光学系の光軸方向に移動する駆動装置を有することを特徴とする請求項1に記載の高さ計測装置。
【請求項3】
前記光路長調整装置は、前記撮像装置の検出信号から得られる前記干渉像のコントラストに基づいて前記駆動装置を駆動する制御部を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の高さ計測装置。
【請求項4】
前記移動装置は、前記分岐光学系、前記第1対物光学系、前記第2対物光学系、及び前記参照部材を含む光学系を一体的に前記第1対物光学系の光軸方向に移動することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の高さ計測装置。
【請求項5】
前記計測用の光は、200nm以上の波長帯を含む光であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の高さ計測装置。
【請求項6】
被計測物の高さを計測する方法であって、
計測用の光を第1光束及び第2光束に分岐することと、
前記第1光束を前記被計測物に導くことと、
前記第2光束を集光して反射することと、
前記被計測物で反射された前記第1光束と、前記反射された前記第2光束との干渉像を検出することと、
前記干渉像に基づいて前記第2光束の光路長を調整することと、
前記第1光束と前記被計測物とを前記第1光束の光軸方向に相対移動しながら前記干渉像の検出信号を得ることと、
前記干渉像の検出信号から前記被計測物の高さ情報を求めることと、
を含む高さ計測方法。
【請求項7】
前記第2光束の光路長の調整は、前記第1光束の光路中に配置される媒質による光路長の変化に応じて行われる請求項6に記載の高さ計測方法。
【請求項8】
前記第2光束の光路長を調整することは、前記第1光束及び前記第2光束を分岐する分岐光学系に対して前記第2光束を集光する光学系及び前記第2光束を反射する参照部材を一体的に前記第2光束の光軸方向に移動することである請求項6又は7に記載の高さ計測方法。
【請求項9】
前記第2光束の光路長を調整することは、前記干渉像のコントラストに基づいて行われることを特徴とする請求項6〜8のいずれか一項に記載の高さ計測方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−36848(P2013−36848A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−172949(P2011−172949)
【出願日】平成23年8月8日(2011.8.8)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】