説明

Cu−Al合金粉末、それを用いた合金ペーストおよび電子部品

【課題】本発明は、配線や電極をペーストから焼成して製造する電子部品や、ガラス又はガラスセラミックス部材と接する配線を有する電子部品において、酸化による電気抵抗増大を抑制でき、あるいは、ガラス又はガラスセラミックスの気泡の発生を抑制可能で、マイグレーション耐性に優れたCu系配線材料を用いた電子部品を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、ガラスまたはガラスセラミックス部材と接する配線・電極・コンタクト部材、あるいはガラスまたはガラスセラミックスと共にペーストを形成し焼成して成る配線・電極・コンタクト部材を有する電子部品であって、Cu及びAlを含む合金粉末粒子から構成され、かつ、Cu及びAlを含む合金粉末粒子の表面が80nm未満の酸化Al皮膜(Al23)で覆われていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化を抑制できる銅系の配線用材料、及びそれを配線に用いた電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
配線、電極などを有する電子部品は、その製造過程で酸化雰囲気に接しない製造プロセスを採用して製造できる場合、LSI配線に代表されるように、配線あるいは電極材料として純Cuが用いられている。一方、大型プラズマディスプレイなどの典型的な製造プロセスとして用いられている通り、金属配線はガラス誘電体に埋め込まれ、製造過程では、酸化雰囲気で例えば400℃以上の高温領域で熱処理を施されることになる。また、太陽電池用電極では800℃以上の大気中高温領域での熱処理(焼成)が施される。このため、高温の熱処理でも酸化に耐えるAg配線などが実用化されているが、コスト低減と耐マイグレーション性向上の観点から信頼性の高いCu系の材料の配線化が強く望まれる。しかし、Cuは200℃を超える温度で酸化が生じ、ガラス誘電体中に泡の発生などを顕著に生じさせるたり、電気抵抗の著しい増大や絶縁化が認められ、純Cu金属単独での電極化・配線化は酸化雰囲気を伴う高温製造プロセスを伴う電子部品製品では実用化に至っていないのが現状である。
【0003】
従来技術では、Cuを主成分として、Moを0.1〜3.0wt%含有し、Cuの粒界にMoを均質に混入させることにより、Cu全体の耐候性を向上させる電子部品材料が知られている(例えば、特許文献1)。この従来技術では、Moの添加を必須とし、Moと共に、Al、Au、Ag、Ti、Ni、Co、Siからなる群から1または複数の元素を合計で0.1〜3.0wt%添加して、Mo単独添加時よりさらに耐候性を改善させる試みがなされている。しかし、この合金ではAl、Au、Ag、Ti、Ni、Co、Siからなる群から1または複数の元素を合計で3.0wt%以上添加すると逆に耐候性が劣化することが指摘されている。またMoの添加を必須とするため、材料コストも高く、市場コストの低い電子部品製品の実用に適さないという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−91907号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電子部品に用いられる配線、電極、あるいはコンタクト材料として、コスト低減と耐マイグレーション性向上の観点から信頼性の高いCu系の材料の配線化が強く望まれている。しかし、上述したように、配線や電極がペーストから焼成して製造される電子部品や、ガラスやガラスセラミックスと共存した構成の電子部品において、配線あるいは電極材料にCu系の材料を用いた場合、材料が酸化して電気抵抗が急激に増大したり、ガラスやガラスセラミックス中に泡の発生を生じてしまうという問題がある。これは、酸化雰囲気中で200℃以上の高温熱処理プロセスを含む方法で製造される過程で、純Cuが急速に酸化され絶縁化してゆく問題に起因する。また、純Cuからなる配線、電極、あるいはコンタクト部品などの表面に生成される酸化物層とこれに接するガラス又はガラスセラミックスが高温で反応することにより気泡が生成されるためである。このように電気抵抗が著しく増大するなどの問題や、前記の気泡の発生により耐電圧低下などの問題が生ずるため、これらの電子部品の製造が困難であった。
【0006】
本発明は、上述の問題を踏まえ、配線や電極をペーストから焼成して製造する電子部品や、ガラス又はガラスセラミックス部材と接する配線を有する電子部品において、酸化による電気抵抗増大を抑制でき、かつ、ガラス又はガラスセラミックスの気泡の発生を抑制可能で、マイグレーション耐性に優れたCu系配線材料を用いた電子部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ガラスまたはガラスセラミックス部材と接する配線・電極、あるいはガラスまたはガラスセラミックスと共にペーストを形成し、焼成して成る配線・電極・コンタクト部材を有する電子部品であって、前記配線・電極・コンタクト部材が、Cu及びAlを含む合金粉末粒子から構成され、かつ、Cu及びAlを含む合金粉末粒子の表面が80nm未満の酸化Al皮膜(Al23)で覆われていることを特徴とする。ここで、ガラスあるいはガラスセラミックス部材と接する配線の形態としては、例えば、ガラスあるいはガラスセラミックス部材の表面に配線が形成された構造や、配線の表面をガラスあるいはガラスセラミックス部材で被覆した構造や、ガラス或いはガラスセラミックス部材に設けられた孔に配線が設けられた構造等である。
【0008】
また、本発明は、少なくとも導電性金属材料粉末とガラス粉末を混合し、焼成してなる配線用材料であって、導電性金属成分がCu及びAlを含む合金から構成されたCu−Al合金粉末粒子であり、Cu−Al合金粉末粒子の表面が80nm未満の酸化Al皮膜(Al23)で覆われていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ガラス又はガラスセラミックス部材と接する配線を有する電子部品において、ガラス又はガラスセラミックスの気泡の発生を抑制可能でマイグレーション耐性に優れたCu系配線材料を用いた電子部品を提供することができる。
【0010】
また、酸化雰囲気中での熱処理でも酸化を抑制可能であり、電気抵抗の増加を抑制可能なCu系配線、電極、コンタクト部材用の材料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】Cu−Al合金ペーストで製造した塗膜の断面TEM像と皮膜の電子線回折像。
【図2】本発明の材料を用いた両面電極結晶Si型太陽電池素子の断面の構成図。
【図3】本発明の材料を用いた両面電極結晶Si型太陽電池素子の受光面の構成図。
【図4】本発明の材料を用いた両面電極結晶Si型太陽電池素子の裏面の構成図。
【図5】本発明の材料を用いたセルバックコンタクト型(裏面電極型)結晶Si太陽電池セルの構成図。
【図6】本発明の材料を用いたプラズマディスプレイの断面図。
【図7】電子部品配線の比抵抗に及ぼす導電性金属粒子粉末及びガラス粉末混合体中のCu−Al合金粉末含有量の影響。
【図8】純Cuを用いた比較電子部品配線から誘電体ガラス中に発生した気泡の光顕観察結果。
【図9】本発明の配線材料を用いた低温焼成ガラスセラミック多層配線基板の断面図。
【図10】多層配線基板を焼成する熱処理条件の説明図。
【図11】本発明に係る平均粒径5μm以下のCu−Al合金粉末の粒径分布。
【図12】本発明の球状とフレーク状粉末をブレンドしたCu−Al合金粉末のSEM写真。
【図13】本発明に係る最大粒径8μm以下のCu−Al合金粉末の粒径分布。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に至った本発明者らの研究結果と、本発明の実施形態ついて詳細を述べる。
【0013】
図1は、CuとAlを含む合金粉末を水アトマイズ法で作製した後、ガラス、溶剤及び樹脂と混合してCu−Al合金ペーストとし、印刷法により塗膜形成後、大気中で800℃x1分間の焼成により形成したSi基板上の薄膜電極を、FIB(Focused Ion Beam)加工によりTEM(透過電子顕微鏡)試料としたものを、TEM観察した本発明の典型的な結果の一例である。Cu−Al合金粒子の表面には40nm厚さの酸化Al皮膜(Al23)が存在しているのが、塗膜断面TEM観察及び左上に示す酸化Al皮膜から得られたナノ電子線回折図形から明らかである。この塗膜の電気抵抗は5×10-6Ωcm以下であ
り、Cu−Al合金粒子同士はネッキングしていることが判る。Cu中のAl濃度を種々変えて、同様の多数の条件下で形成した電極形成実験結果から、このレベルの電気抵抗値が得られるCu−Al粒子は、表面に80nm未満の酸化Al皮膜(Al23)を備えていることが明らかとなった。
【0014】
ここで、アトマイズ法は、Cu−Al合金の溶解、ノズル噴霧による粉末化、粉末の乾燥、粉末の分級、分級粉末のブレンド、脱酸素・脱水分の工程を有している。また、前記粉末の分級が乾式気体分級あるいは湿式液中分級であっても同様の結果が得られた。また、前記アトマイズ粉末を、塗膜焼成と同じ大気中雰囲気で熱分析した結果、酸化による重量増加は約1重量%であることが判明した。Cu中のAl濃度の大小や、600〜900℃の多数の大気中熱処理条件をパラメータとしてCu−Al合金粉末の重量増加を測定すると共に、それを用いたペーストから作製した焼成塗膜の電気抵抗値の関係を検討した結果、5×10-6Ωcm以下の電気抵抗値を達成できるCu−Alの酸化重量増加は、5重量
%以下であることが判った。
【0015】
一方、電子部品の電極、配線、コンタクト部材を形成させる製造工程で、コスト低減を図るためには、使用するCu−Al合金粉末の結晶粒径分布を容易にコントロールできることが重要である。本発明では、前記のCu−Al合金の溶解、ノズル噴霧による粉末化、粉末の乾燥、粉末の分級、分級粉末のブレンド、脱酸素・脱水分のCu−Al合金粉末製造工程において、Cu−Al合金粉末(球状)の粒径分布の最大値を直径30μm以下、合金粉末の平均粒径を5μm以下とすることにより、合金溶解に投入した原料に対し収率90%以上を達成できた。さらにフレーク状のCu−Al合金粉末を前記粉末からボールミル等により製造し、該フレーク状粉末を含むCu−Al合金粉末から作製した電極の電気抵抗は、球状粉末のみの抵抗値の約9割〜約3割まで引き下げることができた。さらに、前記コストの検討に立ち戻ると、粉末粒径分布の最大値を直径5μm以下としたことにより、Cu−Al合金粉末から作製した電極の電気抵抗は、5×10-6Ωcmを十分下回
ることができ、かつ、合金溶解に投入した原料に対し収率70%以上を達成できた。
【0016】
前述のCu−Al合金粉末及び、ガラス、溶剤及び樹脂から選ばれる少なくとも1種を含むCu−Al合金ペーストの応用例として、さらにAg粉末、Al粉末、Si粉末、及びAu粉末から選ばれた少なくとも1種の粉末を加えたCu−Al合金ペーストにおいても、耐酸化性、電気抵抗値において、遜色のない電極・配線・コンタクト部材を形成させることができた。この合金ペーストは、電極・配線・コンタクト部材内でネッキングした原料粉末の緻密性を向上させる必要のある電子部品製造に好適であった。さらに、上記Cu−Al合金ペーストにNa、Li、Kなどのアルカリ金属の酸化物粉末あるいは炭酸塩(例えば、Na2CO3など)から選ばれた少なくとも1種を含むことにより、太陽電池用の反射防止膜(窒化珪素膜)を表面に形成させた結晶Si基板上に電極形成した場合、ファイヤースルー性(反射防止膜を電極部下で除去し、Si基板とオーミックコンタクトを保つ性能)を、より向上させることができた。
【0017】
上述のごとく、本発明によるCu−Al合金粉末、Cu−Al合金ペーストから製造される電子部品用電極、配線、コンタクト部材は、品質の良いものでは、2〜5×10-6Ωcmの電気抵抗を達成できるが、種々の条件化でのワースト電気抵抗値でも、電子部品導電
体として、電気抵抗50μΩcm以下を達成することができた。これらのことから、上述し
た本発明のCu−Al合金ペーストを用いて、システムオンフィルム(SOF:System O
n Film)、テープキャリアパッケージ(TCP:Tape Carrier Package)、低温焼成セラミックス多層配線基板(LTCC:Low Temperature Co-fired Ceramics)、プラズマディスプレイ(PDP)、液晶ディスプレイ(LCD)、有機EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、あるいは太陽電池等を製造した結果、各々の機能を満足させることが可能であった。従って、これらの電子部品は本発明に係るものであり、本発明の電子部品用Cu−Al合金粉末・ペーストから形成される配線、電極、コンタクト部品は、システムオンフィルム、テープキャリアパッケージ、低温焼成セラミックス、プラズマディスプレイ、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、ないし太陽電池を構成する電子部品の一部または全部であってもよく、本発明の耐酸化特性が有効に発揮される。
【0018】
さらに、前記の本発明の太陽電池が、結晶Si太陽電池である場合、本発明の太陽電池電極は、電気抵抗値10μΩcm以下を達成することができた。また、結晶Si太陽電池が
両面電極型太陽電池であっても、バックコンタクト型太陽電池であっても、本発明のCu−Al合金ペーストで作製した電極を組み込んだものは、従来のAg電極太陽電池と同等以上の効率:多結晶Si型で15%程度、単結晶Si型で18%程度を達成できた。
【0019】
一方、前述の電子部品のうち、Cu−Al合金導電体に誘電体ガラスが接する構造を有する電子部品では、Cu−Al合金導電体と誘電体ガラスの界面近傍の誘電体ガラス側にボイドの発生しないことも確認できた。
【0020】
以下に、本発明の最良の実施形態を示す実施例を挙げる。
【0021】
(実施例1)
本発明の電極を、本発明の両面電極結晶シリコン(Si)型太陽電池素子に適用した例を説明する。代表的な太陽電池素子の断面図、受光面及び裏面の概要を図2、図3及び図4に示す。
【0022】
通常、太陽電池素子の半導体基板130には、単結晶または多結晶Siなどが使用される。この半導体基板130は、ホウ素などを含有し、p形半導体とする。受光面側は、太陽光の反射を抑制するために、エッチングにより凹凸を形成する。その受光面にリンなどをドーピングし、n型半導体の拡散層131をサブミクロンオーダーの厚みで生成させるとともに、p形バルク部分との境界にpn接合部を形成する。さらに受光面に窒化シリコンなどの反射防止層132を蒸着法などによって膜厚100nm前後で形成する。
【0023】
次に受光面に形成される受光面電極133と、裏面に形成される集電電極134及び出力取出し電極135の形成について説明する。通常、受光面電極133と出力取出し電極135にはガラス粉末を含む銀電極ペースト、集電電極134にはガラス粉末を含むアルミニウム電極ペーストが使われ、スクリーン印刷にて塗布される。乾燥後、大気中500〜800℃程度で焼成され、電極形成される。その際に、受光面では、受光面電極133に含まれるガラス組成物と反射防止層132とが反応して、受光面電極133と拡散層131が電気的に接続される。また、裏面では、集電電極134中のアルミニウムが半導体基板130の裏面に拡散して、電極成分拡散層136を形成することによって、半導体基板130と集電電極134、出力取出し電極135との間にオーミックコンタクトを得ることができる。
【0024】
次に、Cu−Al合金粉末粒子とリン酸溶液を用い、受光面電極133と出力取出し電極135へ適用することによって、図2〜図4で示した太陽電池素子を試作した。用いたCu−Al合金粉末粒子は、Cu−Al合金の溶解、ノズル噴霧による粉末化、粉末の乾燥、粉末の分級、分級粉末のブレンド、脱酸素・脱水分のCu−Al合金粉末製造工程で作製した、Cu−Al合金粉末(球状)の合金粉末の平均粒径を5μm以下としたものであり、表面には80nm未満の酸化Al皮膜(Al23)が形成した粉末である。このCu−Al合金粉末粒子を100重量部に対して、リン酸溶液を30重量部添加し、超音波を30分かけてリン酸溶液中に金属粒子を分散させた。これを受光面電極133用と出力取出し電極135用のペーストとして用いた。
【0025】
先ず、上記集電電極134用アルミニウム電極ペーストを図2及び図4に示すように半導体基板130の裏面にスクリーン印刷で塗布し、乾燥後、赤外線急速加熱炉にて大気中で600℃まで加熱した。600℃での保持時間は3分とした。これにより、先ず半導体基板130の裏面に集電電極134を形成した。
【0026】
次に、拡散層131と反射防止層132を形成してある半導体基板130の受光面と、既に集電電極134が形成してある半導体基板130の裏面に、スクリーン印刷で、図2〜図4に示すように塗布し、乾燥した後に赤外線急速加熱炉にて大気中で750℃まで加熱した。保持時間は1分とした。
【0027】
作製した太陽電池素子は、受光面では受光面電極133と拡散層131が形成された半導体基板130が電気的に接続されていた。また、裏面では電極成分拡散層136が形成され、半導体基板130と集電電極134、出力取出し電極135との間にオーミックコンタクを得ることができた。さらに、85℃、85%の高温高湿試験を100時間実施したが、電極の配線抵抗や接触抵抗が大きくなるようなことは殆どなかった。
【0028】
用いるCu−Al合金粉末粒子の化学組成を、Al含有量を8wt%〜50wt%まで変化させても、太陽電池素子は同様に作動し、Cu−Al合金粒子組成として種々の選択が可能であることを確認した。また、受光面と裏面を800℃で3秒間熱処理して各電極を形成することもでき、1050℃以下であれば、種々の太陽電池素子構造に見合った熱処理条件を選ぶことも可能であることが判った。
【0029】
以上より、本発明の電極は、太陽電池素子の電極として展開できることが分かった。また、高価なAg電極の代替となり得るので、コスト低減にも貢献することができる。
【0030】
(実施例2)
図5は、結晶シリコン(Si)型太陽電池セルにおいて、裏面側に電極を集約したバックコンタクト型(裏面電極型)太陽電池セルに対して、本発明によるCu−Al合金ペーストを適用した場合の実施例を示す。図中には、裏面側電極構造の平面図と、AA断面構造での斜視図を示す。また、用いたCu−Al合金粉末粒子は、Cu−Al合金の溶解、ノズル噴霧による粉末化、粉末の乾燥、粉末の分級、分級粉末のブレンド、脱酸素・脱水分のCu−Al合金粉末製造工程で作製した、Cu−Al合金粉末(球状)の合金粉末の平均粒径を1μm以下としたものであり、表面には40nm未満の酸化Al皮膜(Al23)が形成した粉末である。
【0031】
本実施例では、例えば、p型のSi基板からなるセルウェハ1において、レーザドリルまたはエッチング等によって、上下両面を貫通したスルーホールが形成される。その後、光入射効率を向上させるテクスチャ形成(図中省略)、受光面側のn型化拡散処理によるn型層3の形成、さらに反射防止膜(図中省略)の形成と、実施例1で述べたと同様の従来の結晶Si型太陽電池セルと同一工程により製造される。次に、先に形成されたスルーホール内部に、本発明のCu−Al合金ペーストを印刷法やインクジェット法により充填させ、さらに、受光面側には、同じく本発明のCu−Al合金ペーストをグリッド状に印刷することで、スルーホール電極4、並びに集電用グリッド電極2が形成される。ここで、充填用と印刷用に用いるペーストでは、粘度を始めとして、それぞれのプロセスに最適な組成のペーストを使用するのが望ましいが、同じ組成のペーストで充填、印刷を一括で行ってもよい。また、受光面に集電用グリッド電極2を設けることは必須ではなく、スルーホール電極4をSiの厚さの途中までとしても、セルとして機能させることができ、この場合、受光面の面積増大と効率アップを図ることができる。さらに、この場合には、スルーホール電極5及び背面電極6はCu−Al合金から作製してもよく、または、スルーホール電極5は例えばAgとし、背面電極6のみをCu−Al合金とする構造をとっても機能性は失われないことを確認した。一方、受光面の反対側には、キャリア再結合を防止するための高濃度ドープ層5が形成される。ここで高濃度ドープ層を形成する不純物元素として、ボロン(B)やアルミニウム(Al)が用いられ、p+層が形成される。本実施例では、例えばBを拡散源として熱拡散処理を、前記反射防止膜形成前のセル製造工程において実施するか、あるいは、Alを用いる場合には、前記印刷工程において、反対面側にAlペーストを印刷することでもよい。その後、600〜1000℃において焼成され、前記、スルーホール内部と受光面側に形成された反射防止膜上に充填、印刷された前記合金ペーストは、ファイヤースルー効果により、下部n型層とのオーミックコンタクトが達成される。最後に、反対面側には、図中の平面図で示すように、本発明による合金ペーストをそれぞれn側、p側共にストライプ上に印刷、焼成することによって、裏面電極6、7が形成される。以上に説明したプロセスは、バックコンタクト型太陽電池セル製造工程の代表的な一例を示したものであり、本発明は、スルーホールを介してn型電極を裏面側に形成した太陽電池セル構造全般に対応できるものである。
【0032】
本実施例では、Cu系のCu−Al合金ペーストを用いることによって、従来のAgを主体とするペースト材に比べ、非常に安価で、抵抗損失も小さい(発電効率の高い)バックコンタクト側の太陽電池セルを実現することが可能となった。さらに、導体抵抗が小さいことから、より微細で薄膜なグリッド、及びスルーホール電極を形成することが可能となり、これにより、受光面における光入射損失がより軽減され、材料使用量の軽減と併せた相乗効果も得ることができた。さらに、85℃、85%の高温高湿試験を100時間実施したが、電極の配線抵抗や接触抵抗が大きくなるようなことは殆どなかった。
【0033】
上記に用いたCu−Al合金粉末粒子の化学組成として、Al含有量を8wt%〜50wt%まで変化させても、太陽電池素子は正常に作動し、Cu−Al合金粒子組成として種々の選択が可能であることを確認した。また、受光面と裏面を800℃で3秒間熱処理して各電極を形成することもでき、1050℃以下であれば、種々のバックコンタクト型太陽電池素子構造に見合った熱処理条件を選ぶことも可能であることが判った。
【0034】
(実施例3)
本発明をプラズマディスプレイパネルに適用した例を説明する。プラズマディスプレイパネルの断面図の概要を図6に示す。
【0035】
プラズマディスプレイパネルでは、前面板10、背面板11が100〜150μmの間隙をもって対向させて配置され、各基板の間隙は隔壁12で維持されている。前面板10と背面板11の周縁部は封着材料13で気密に封止され、パネル内部に希ガスが充填されている。隔壁12により区切られた微小空間(セル14)には蛍光体が充填される。赤色、緑色、青色の蛍光体15、16、17がそれぞれ充填された3色のセルで1画素を構成する。各画素は信号に応じ各色の光を発光する。
【0036】
前面板10、背面板11には、ガラス基板上に規則的に配列した電極が設けられている。前面板10の表示電極18と背面板11のアドレス電極19が対となり、この間に表示信号に応じて選択的に100〜200Vの電圧が印加され、電極間の放電により紫外線20を発生させて蛍光体15、16、17を発光させ、画像情報を表示する。表示電極18、アドレス電極19は、これら電極の保護と、放電時の壁電荷の制御等のために、誘電体層21、22で被覆される。誘電体層21、22には、ガラスの厚膜が使用される。
【0037】
背面板11には、セル14を形成するために、アドレス電極19の誘電体層22の上に隔壁12が設けられる。この隔壁12はストライプ状あるいはボックス状の構造体である。
【0038】
表示電極18、アドレス電極19としては、現在一般的にはAg厚膜配線が使用されている。前述したごとく、コスト低減とAgのマイグレーション対策のためには、Ag厚膜配線からCu厚膜配線への変更が好ましいが、そのためには、酸化雰囲気においてCu厚膜配線の形成、焼成時にCuが酸化され電気抵抗が低下しないこと、酸化雰囲気において誘電体層の形成、焼成時にCuと誘電体層とが反応してCuが酸化され電気抵抗が低下しないこと、さらにCu厚膜配線近傍に空隙(気泡)が発生し耐圧が低下しないこと等の条件が挙げられる。表示電極18及びアドレス電極19の形成は、スパッタリング法によっても可能であるが、価格低減のためには印刷法が有利である。また、誘電体層21、22は、一般的には印刷法で形成される。印刷法で形成される表示電極18、アドレス電極19、誘電体層21、22は、酸化雰囲気中で450〜620℃の温度範囲で焼成されることが一般的である。
【0039】
背面板11のアドレス電極19に直交するように、前面板10の表面に表示電極18を形成した後に、誘電体層21を全面に形成する。その誘電体層21の上には、放電から表示電極18等を保護するために、保護層23が形成される。一般的には、その保護層23には、MgOの蒸着膜が使用される。一方、背面板11には、アドレス電極19を形成した後、セル形成領域に誘電体層22を形成し、その上に隔壁12が設けられる。ガラス構造体よりなる隔壁は、少なくともガラス組成物とフィラーを含む構造材料よりなり、その構造材料を焼結した焼成体から構成される。隔壁12は、隔壁部に溝が切られた揮発性シートを貼り付け、その溝に隔壁用のペーストを流し込み、500〜600℃で焼成することによって、シートを揮発させるとともに隔壁12を形成することができる。また、印刷法にて隔壁用ペーストを全面に塗布し、乾燥後にマスクして、サンドブラストや化学エッチングによって、不要な部分を除去し、500〜600℃で焼成することにより隔壁12を形成することもできる。隔壁12で区切られたセル14内には、各色の蛍光体15、16、17のペーストをそれぞれ充填し、450〜500℃で焼成することによって、蛍光体15、16、17をそれぞれ形成する。
【0040】
通常、別々に作製した前面板10と背面板11を対向させ、正確に位置合わせし、周縁部を420〜500℃でガラス封着する。封着材料13は、ディスペンサー法あるいは印刷法により事前に前面板10あるいは背面板11のどちらか一方の周縁部に形成される。
一般的には、封着材料13は背面板11の方に形成される。また、封着材料13は蛍光体15、16、17の焼成と同時に事前に仮焼成されることもある。この方法を取ることによって、ガラス封着部の気泡を著しく低減でき、気密性の高い、すなわち信頼性の高いガラス封着部が得られる。ガラス封着は、加熱しながらセル14内部のガスを排気し、希ガスを封入し、パネルが完成する。封着材料13の仮焼成時やガラス封着時に、封着材料13が表示電極18やアドレス電極19と直接的に接触することがあり、電極を形成する配線材料と封着材料13が反応して、配線材料の電気抵抗を増加させることは好ましくなく、この反応を防止する必要がある。
【0041】
完成したパネルを点灯するには、表示電極18とアドレス電極19の交差する部位で電圧を印加して、セル14内の希ガスを放電させ、プラズマ状態とする。そして、セル14内の希ガスがプラズマ状態から元の状態に戻る際に発生する紫外線20を利用して、蛍光体15、16、17を発光させて、パネルを点灯させ、画像情報を表示する。各色を点灯させるときには、点灯させたいセル14の表示電極18とアドレス電極19との間でアドレス放電を行い、セル内に壁電荷を蓄積する。次に表示電極対に一定の電圧を印加することで、アドレス放電で壁電荷が蓄積されたセルのみ表示放電が起こり、紫外線20を発生させることによって、蛍光体を発光させる仕組みで画像情報の表示が行われる。
【0042】
先ず、本発明のCu−Al合金粉末とガラス粉末からなる配線材料が前面板10の表示電極18と背面板11のアドレス電極19へ適用できるかどうかの事前検討を行った。用いたCu−Al合金粉末粒子は、Cu−Al合金の溶解、ノズル噴霧による粉末化、粉末の乾燥、粉末の分級、分級粉末のブレンド、脱酸素・脱水分のCu−Al合金粉末製造工程で作製した、Cu−Al合金粉末(球状)の合金粉末の平均粒径を1〜2μmとしたものであり、表面には40nm未満の酸化Al皮膜(Al23)が形成した粉末である。平均粒径が1〜2μmの前記Cu−Al合金粉末と平均粒径が1μmのガラス粉末を種々の割合で配合し、さらにバインダーと溶剤を加えて配線用ペーストを作製した。ガラス粉末としては軟化点が450℃前後の無鉛低温軟化ガラス、バインダーとしてエチルセルロース、溶剤としてブチルカルビトールアセテートを用いた。作製した配線用ペーストをプラズマディスプレイパネルに使用されるガラス基板上に印刷法を用いて塗布し、大気中530℃で30分加熱して配線を形成した。作製した配線の電気抵抗値を測定し、比抵抗を求めた。図7に本発明のCu−Al合金粉末の含有量と配線の比抵抗の関係を示す。Cu−Al合金粉末の含有量が75vol.%以上(ガラス粉末の含有量が25vol.%以下)の配線では、ほとんど酸化されることなく、配線の比抵抗が充分に低くなっていることが確認できた。従って、ガラス粉末の含有量を25vol.%以下とすることにより、本発明のCu−Al合金の粉末は配線材料として使用できる。また、Cu−Al合金粉末の含有量を85vol.%以上(ガラス粉末の含有量が15vol.%以下)とすることにより、さらに良好な耐酸化性を付与できるため、Cu−Al合金粉末の含有量を85vol.%以上とすることが、より好ましい。これらの場合において、Cu−Al合金粉末の化学組成は、Cuに5wt%〜50wt%のAlを添加することで耐酸化性付与を可能とできる。
【0043】
配線中のガラス粉末の含有量を少なくすると、前面板、背面板であるガラス基板から配線が剥離しやすくなった。ガラス粉末の含有量が3vol.(体積)%以上であれば、配線をガラス基板へ強固に形成できた。すなわち、Cu−Al合金粉末の含有量を65〜97vol.%、ガラス粉末の含有量を3〜35vol.%とすることにより、配線材料として有効に使用できる。低抵抗化の観点からはガラス粉末の含有量の上限値は25vol.%以下、より好ましくは15vol.%以下とすることが望ましい。また、配線材料にさらに低熱膨張フィラー粉末を混合すると、配線はより剥離しにくくなる。しかし、フィラー粉末を混合すると比抵抗が増加するため、通常ではその混合量は20vol.%以下とする必要がある。
【0044】
比較例として、確認のため、純Cuの粉末を配線材料として用い、同様に試験したが、大気中530℃での加熱では著しく酸化され、配線材料として使うことができなかった。
【0045】
上記の検討結果から、平均粒径が1〜2μmのCu−Al合金粉末を85vol.%、平均粒径が1μmのガラス粉末を15vol.%からなる配線材料を選定し、前面板10の表示電極18と背面板11のアドレス電極19へ適用することによって、図6で示したプラズマディスプレイパネルを試作した。この配線材料は、上記と同様にバインダーとしてエチルセルロース、溶剤としてブチルカルビトールアセテートを混合し、配線用ペーストとした。これを印刷法にて前面板10及び背面板11へ塗布し、大気中530℃で30分焼成することによって表示電極18とアドレス電極19を形成した。さらにその上に誘電体層21、22のガラスを被覆した。誘電体層21、22のガラスも同様に平均粒径が1μmのガラス粉末に、パンダーと溶剤を加え、ペーストとし、それを印刷法によりほぼ全面に塗布し、大気中610℃で30分焼成した。ガラス粉末としては軟化点が560℃前後の無鉛ガラス、バインダーとしてエチルセルロース、溶剤としてブチルカルビトールアセテートを用いた。そして、前面板10と背面板11を別々に作製し、外周部をガラス封着することによって、プラズマディスプレイパネルを作製した。本発明の配線材料を用いた表示電極18、アドレス電極19は酸化による変色もなく、また表示電極18と誘電体層21、アドレス電極19と誘電体層22の界面部に空隙の発生もなく、パネルに搭載できることが分かった。
【0046】
続いて、作製したプラズマディスプレイパネルの点灯試験を行った。表示電極18、アドレス電極19の電気抵抗が大きくなることもなく、また耐圧が低下することもなく、さらにAgのようにマイグレーションすることなく、パネル点灯できた。その他においても支障がある点は認められなかった。
【0047】
尚、図8に、表示電極18を純Cuで作製した場合を示す。誘電体層21との間に、表示電極18の酸化により、表示電極18に沿って気泡が生成しているのが判る。この場合には、耐電圧の低下が問題となった。これに対し、本発明のCu−Al合金を用いた表示電極では、一切の気泡の発生が認められず、良好な機能を発揮した。
【0048】
(実施例4)
本実施例では、図9に示すLTCC(Low Temperature Co-fired Ceramics)の多層配線基板(5層)を製作した。配線30は三次元的に形成されている。この製作方法では、先ずガラス粉末とセラミックス粉末からなるグリーンシート31を作製し、所望の位置に貫通孔32を開ける。そして、配線30用ペーストを印刷法で塗布するとともに、貫通孔32にも充填する。必要に応じて、グリーンシート31の裏面にも配線30用ペーストを印刷法にて塗布する。その際には、表面に塗布した配線30用ペーストを乾燥してから行う。配線30用ペーストをそれぞれ形成したグリーンシート31を積層して、通常では大気中900℃前後で焼成し、LTCCの多層配線基板が製作される。配線30用のペーストと
しては、通常は高価なAgペーストが使用される。マイグレーション対策に有利で、しかも安価なCuペーストを使用する際には窒素雰囲気で焼成されるが、脱バインダーがうまくいかず、緻密な多層配線基板を得ることが難しかった。また、グリーンシート31中のガラスとCuの配線30が接する部分でガラスの軟化、流動によってCuが酸化され、配線30の電気抵抗が大きくなってしまう問題があった。さらに、ガラスとの反応による空隙が界面部に発生することがあった。これは配線30を断線することがあり、好ましくはない現象である。
【0049】
本実施例では、配線30用ペーストとして本発明のCu−Al合金粉末を用いた。このCu−Al合金粉末粒子は、Cu−Al合金の溶解、ノズル噴霧による粉末化、粉末の乾燥、粉末の分級、分級粉末のブレンド、脱酸素・脱水分のCu−Al合金粉末製造工程で作製した、Cu−Al合金粉末(球状)の合金粉末の平均粒径を1μmとしたものであり、表面には40nm未満の酸化Al皮膜(Al23)が形成した粉末である。また、バインダーとしてカーボンの残渣が少ないニトロセルロース、溶剤としては酢酸ブチルを用いた。これらの材料から構成される配線30用ペーストを用いて図15の多層配線基板(5層)を製作した。この多層配線基板を焼成する熱処理条件は、本発明のCu−Al合金(本例ではCu−8wt%Alを使用)が酸化雰囲気中で800℃までは完全に酸化されないことから、図10に示す温度プロファイルのように700℃まで大気中、700〜900℃まで窒素雰囲気とした。また、窒素雰囲気で900℃、60分保持し、700℃まで冷却されたところで、大気中に戻した。製作した多層配線基板は、700℃までにほぼ完全に脱バインダーが完了していたため、緻密に焼成されていた。また、Cu−Al合金の配線30は、ほとんど酸化されることはなく、電気抵抗が大きくなることはなかった。さらにガラスとの反応による配線近傍部の空隙も発生することがなく、高性能化と低コスト化を両立した多層配線基板を提供できるようになった。熱処理に用いられる温度プロファイルと雰囲気はこの限りではなく、Al含有量を15wt%以上とすることにより900℃大気中での熱処理でも同様の効果を得ることができた。
【0050】
(実施例5)
本実施例では、電子部品の電極、配線、コンタクト部材を形成させる製造工程で、コスト低減を図るために重要な、Cu−Al合金粉末の結晶粒径分布制御の例を示す。本発明では、前記のCu−Al合金の溶解、ノズル噴霧による粉末化、粉末の乾燥、粉末の分級、分級粉末のブレンド、脱酸素・脱水分のCu−Al合金粉末製造工程において、Cu−Al合金粉末(球状)の粒径分布の最大値を直径30μm以下、合金粉末の平均粒径を5μm以下とすることにより、合金溶解に投入した原料に対し収率90%以上を達成できた。この場合のCu−Al合金粉末の粒径分布例を図11に示す。さらにフレーク状のCu−Al合金粉末を前記粉末からボールミル等により製造し、前記フレーク状粉末を含むCu−Al合金粉末から作製した電極の電気抵抗は、球状粉末のみの抵抗値の約9割〜約3割まで引き下げることができた。図12には、前記フレーク状粉末を含むCu−Al合金粉末のSEM写真を示す。フレーク状粉末と球状粉末がブレンドされ、かつ、粉末粒径の最大値が5μm以下に製造できていることが判る。さらに、コストと電子部品電極厚さのベストミックスを達成する観点から、Cu−Al合金粉末の粒径分布の最大値を直径8μm以下とした例を図13に示す。平均直径は1μmであり、このCu−Al合金粉末から作製した電極の電気抵抗は、5×10-6Ωcmを十分下回ることができ、かつ、合金溶解に
投入した原料に対し収率85%以上を達成できた。
【0051】
(実施例6)
本発明のCu−Al合金の溶解、ノズル噴霧による粉末化、粉末の乾燥、粉末の分級、分級粉末のブレンド、脱酸素・脱水分のCu−Al合金粉末製造工程において、Cu−Al合金粉末の粒径分布制御を実施する分級方法の例を本実施例で示す。はじめに湿式分級の例として、低コストな自然沈降法による分級を用いた本実施例を以下に記載する。本発明に係るCu−Al合金の溶解、ノズル噴霧による粉末化、粉末の乾燥、粉末の分級、分級粉末のブレンド、脱酸素・脱水分の工程を具備した水アトマイズ法で作製した本発明のCu−Al合金粉末粒子(Al:8wt%、密度8.4g/cm3)を200gと、界面活性剤ポリアクリル酸を粒子に対して0.8wt%と純水を加えて1000gとし、ポリ容器に入れた。ポリ容器ごと超音波洗浄器に入れ、懸濁液を撹拌しながら30分間処理した。
ストークスの式からこの場合の攪拌速度Vは、V={(粒子径)2×(合金密度−溶液密度)×重力}/{18×(流体粘度)}で表される。ポリ容器に分散処理後の懸濁液を投入し、高さ10cmになるようにした。懸濁液の粘度をウベローデ粘度計で測定したところ
、0.995Pa・sであった。また、密度は水とほぼ同じ1.00lg/ccであった。前記ストークスの式から、10時間静置することによって、8.3μmφ以上の径を有する粒子がポリ容器底の沈降することになる。実際に10時間放置し、上澄み液をチューブポンプでくみ出すことで採集し、レーザー散乱法による粒度分布測定装置で粒子径を図ったところ、中央径(D50%)は1.5μmで、D99%は7μmであった。この懸濁液を超遠心分離機で1500rpm、10分間処理することで合金粒子と界面活性剤水溶液を分離し、100℃で1時間乾燥することにより合金粒子を得た。また、もう一方の実施例として、乾式分級法も使うことができる。この場合には、乾式ジェットミル粉砕機に付属している分級機を使い、前記湿式分級粉末と同様の合金粉末を得ることができた。
【符号の説明】
【0052】
1 p型Si基板からなるセルウェハ
2 集電用グリッド電極
3 n型層
4 スルーホール電極
5 高濃度ドープ層
6、7 裏面電極
10 前面板
11 背面板
12 隔壁
13 封着材料
15、16、17 赤色、緑色、青色の蛍光体
18 表示電極
19 アドレス電極
20 紫外線
21、22、402 誘電体層
23 保護層
30 配線
31 グリーンシート
32 貫通孔
130 半導体基板
131 拡散層
132 反射防止層
133 受光面電極
134 集電電極
135 出力取出し電極
136 電極成分拡散層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
CuとAlを含む合金粉末であって、前記合金粉末の表面が、厚さ80nm未満のAlの酸化皮膜で覆われたことを特徴とするCu−Al合金粉末。
【請求項2】
請求項1において、球状のCu−Al合金粉末を含み、かつ、粉末粒径分布の最大値を直径30μm以下としたことを特徴とするCu−Al合金粉末。
【請求項3】
請求項2において、さらにフレーク状のCu−Al合金粉末を含むことを特徴とするCu−Al合金粉末。
【請求項4】
請求項2または3において、前記合金粉末の平均粒径を5μm以下としたことを特徴とするCu−Al合金粉末。
【請求項5】
請求項2または3において、粉末粒径分布の最大値を直径5μm以下としたことを特徴とするCu−Al合金粉末。
【請求項6】
Cu−Al合金の溶解、ノズル噴霧による粉末化、粉末の乾燥、粉末の分級、分級粉末のブレンド、脱酸素・脱水分の工程を有することを特徴とするCu−Al合金粉末の製造方法。
【請求項7】
請求項6において、さらに前記Cu−Al合金粉末が大気中または酸素存在雰囲気に曝される熱処理工程を含み、かつ、酸化による重量増加が5重量%以下であることを特徴とするCu−Al合金粉末の製造方法。
【請求項8】
請求項6または7において、前記粉末の分級が乾式気体分級あるいは湿式液中分級であることを特徴とするCu−Al合金粉末の製造方法。
【請求項9】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載のCu−Al合金粉末と、ガラス、溶剤及び樹脂から選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とするCu−Al合金ペースト。
【請求項10】
請求項9において、さらにAg粉末、Al粉末、Si粉末、及びAu粉末から選ばれた少なくとも1種の粉末と、ガラス、溶剤、及び樹脂から選ばれた少なくとも1種を含むことを特徴とするCu−Al合金ペースト。
【請求項11】
請求項10において、さらに、アルカリ金属の酸化物粉末と炭酸塩のうち少なくともいずれか一方を含むことを特徴とするCu−Al合金ペースト。
【請求項12】
請求項9乃至11のいずれか1項に記載のCu−Al合金ペーストを基板に塗布し、大気中または酸素含有雰囲気で焼成して形成したCu−Al合金塗膜が、配線、電極、コタンタクト材のうち1つ以上の導電体であることを特徴とする電子部品。
【請求項13】
請求項12において、前記導電体の電気抵抗が50μΩcm以下であることを特徴とする
電子部品。
【請求項14】
請求項12または13に記載の電子部品が、システムオンフィルム、テープキャリアパッケージ、低温焼成セラミックス多層配線基板、プラズマディスプレイ、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、あるいは太陽電池であること特徴とする電子部品。
【請求項15】
請求項14において、前記太陽電池が、結晶Si太陽電池であることを特徴とする電子部品。
【請求項16】
請求項15において、バックコンタクト型太陽電池であることを特徴とする太陽電池。
【請求項17】
請求項12乃至16のいずれか1項に記載の電子部品において、Cu−Al合金導電体に誘電体ガラスが接する構造を有し、かつ、Cu−Al合金導電体と誘電体ガラスの界面近傍の誘電体ガラス側にボイドの発生しないことを特徴とする電子部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−34894(P2011−34894A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−182007(P2009−182007)
【出願日】平成21年8月5日(2009.8.5)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】