説明

HFET

【課題】耐圧が高いHFET(Heterojunction−FET)を提供する。
【解決手段】ヘテロ接合16aに生じる2次元電子ガスをチャネルとするHFET10であって、第1半導体領域16と、第1半導体領域16上で第1半導体領域16とヘテロ接合している第2半導体領域18と、第2半導体領域18上に形成されたソース電極20、ドレイン電極22及びゲート電極24と、第1半導体領域16と接しており、ソース電極20と導通しているp型の第3半導体領域14を有している。ゲート電極24とドレイン電極22の間の第2半導体領域18の上面のうちの、ゲート電極24に隣接する範囲の上面は、第1表面準位密度を有する第1領域40であり、第1領域40に隣接する範囲の上面は、第1表面準位密度より低い第2表面準位密度を有する第2領域42である。第3半導体領域14は、第2領域42の下側で第1半導体領域16に接している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘテロ接合に生じる2次元電子ガスをチャネルとするHFETに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、GaN領域と、GaN領域上に形成されたAlGaN領域を有するノーマリオン型のHFET(Heterojunction−FET)が開示されている。AlGaN領域は、GaN領域に対してヘテロ接合している。AlGaN領域上には、ソース電極とドレイン電極とゲート電極が形成されている。GaN領域とAlGaN領域のヘテロ接合には、2次元電子ガスが生じている。ドレイン電極とソース電極の間に電圧を印加すると、2次元電子ガスが存在するヘテロ接合部を通って、ドレイン電極からソース電極へ電流が流れる。すなわち、HFETがオンする。ゲート電極に負の電位を印加すると、ゲート電極近傍の2次元電子ガスが消失する。したがって、HFETがオフする。
【0003】
HFETがオフしているときに、ドレイン電極とゲート電極の間に高い電圧(例えば、サージ等)が印加されると、ドレイン電極とゲート電極の間の半導体領域中でアバランシェ降伏が起きる。アバランシェ降伏が起きると、半導体領域中でホールが生成される。半導体領域中にホールが溜まると、溜まったホールが基となり、HFETが永久破壊に至る場合がある。したがって、アバランシェ降伏が起きた場合には、ホールをアバランシェ降伏が起きた領域から急速に排出する必要がある。
【0004】
半導体領域中からホールを排出する技術として、ドレイン電極とゲート電極の間の半導体領域に隣接させてp型領域を設ける技術が知られている。p型領域は、ソース電極と導通させる。アバランシェ降伏が起きたときには、半導体領域中で生じたホールがp型領域を通ってソース電極へ排出される。これにより、HFETの永久破壊を回避することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−73802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ゲート電極の近傍でアバランシェ降伏が生じた場合には、高い電界がゲート電極と半導体領域の界面に加わる。このため、ゲート電極と半導体領域との界面で絶縁破壊が起こり、ゲート電極にホールが流入する。これによって、ゲート電極と半導体領域との絶縁性が失われ、HFETが破損する場合がある。ゲート電極の近傍にp型領域を設けたとしても、ゲート電極へのホールの流入を防止することは困難であり、HFETの耐圧を十分に向上させることはできない。
【0007】
以上に説明したように、従来の技術では、HFETの耐圧を十分に向上させることはできなかった。上述した事実を鑑み、本願明細書では、より高い耐圧を有するHFETを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願明細書は、ヘテロ接合に生じる2次元電子ガスをチャネルとするHFETを提供する。このHFETは、第1半導体領域と、第2半導体領域と、ソース電極と、ドレイン電極と、ゲート電極と、第3半導体領域を有する。第1半導体領域は、n型又はi型である。第2半導体領域は、第1半導体領域上に形成されており、第1半導体領域とヘテロ接合している。ソース電極は、第2半導体領域上に形成されており、第2半導体領域に対してオーミック接続されている。ドレイン電極は、第2半導体領域上に形成されており、第2半導体領域に対してオーミック接続されている。ゲート電極は、第2半導体領域上に形成されており、第1半導体領域と第2半導体領域とがヘテロ接合している範囲の第2半導体領域の上面をソース電極側とドレイン電極側に区画しており、第2半導体領域に対して絶縁されている。第3半導体領域は、p型であり、第1半導体領域に接しており、ソース電極と導通している。ゲート電極とドレイン電極の間の第2半導体領域の上面のうちの、ゲート電極に隣接する範囲の上面は、第1表面準位密度を有する第1領域である。ゲート電極とドレイン電極の間の第2半導体領域の上面のうちの、第1領域に隣接する範囲の上面は、第1表面準位密度より低い第2表面準位密度を有する第2領域である。第3半導体領域は、第2領域の下側で第1半導体領域に接している。
なお、ゲート電極は、第2半導体領域に対してショットキー接合されていることにより第2半導体領域に対して絶縁されていてもよいし、ゲート電極と第2半導体領域の間に絶縁膜が形成されていることによって第2半導体領域に対して絶縁されていてもよい。また、上記の「ゲート電極とドレイン電極の間の第2半導体領域の上面」は、第2半導体領域の上面を平面視したときにおけるゲート電極とドレイン電極の間の第2半導体領域の上面を意味する。また、上記の「ゲート電極に隣接する範囲の上面」は、第2半導体領域の上面を平面視したときにゲート電極に隣接する範囲の第2半導体領域の上面を意味する。
【0009】
このHFETでは、ゲート電極とドレイン電極の間の第2半導体領域の上面のうち、ゲート電極に隣接する第1領域が高い表面準位密度を有しており、第1領域に隣接する第2領域(反ゲート電極側の領域)が低い表面順位密度を有している。表面準位密度が高い第1領域には、多くの電子がトラップされる。このため、HFETをオフさせている状態において、第1領域(ゲート電極に近い第2半導体領域表面)では、第1領域にトラップされた電子の影響によって電位分布が略均一となる。一方、表面準位密度が低い第2領域にトラップされる電子は少ない。したがって、HFETをオフさせている状態において、第2領域(ゲート電極から離れている第2半導体領域表面)では、電位がゲート電極側からドレイン電極側に向かうに従って上昇するように分布する。すなわち、第2領域では、第1領域よりも高い電界が生じる。したがって、ゲート電極とドレイン電極との間にサージ等の高い電圧が印加された場合には、第2領域の下方の半導体領域中でアバランシェ降伏が生じる。すなわち、このHFETでは、ゲート電極の近傍でアバランシェ降伏が生じることが防止される。また、第2領域の下方では、p型の第3半導体領域が第1半導体領域に接している。したがって、アバランシェ降伏で生じたホールは、第3半導体領域を通じてソース電極に排出される。したがって、このHFETでは、高いアバランシェ電流が生じることが抑制される。したがって、このHFETは耐圧が高い。
【0010】
なお、上述したように、p型の第3半導体領域は、ソース電極と導通している。このため、第3半導体領域をドレイン電極の近傍に形成すると、第3半導体領域とドレイン電極との間に高い電界が生じる。
したがって、上述したHFETにおいては、ゲート電極とドレイン電極の間の第2半導体領域の上面のうちの、ドレイン電極に隣接する範囲の上面は、第2表面準位密度より高い第3表面準位密度を有する第3領域であることが好ましい。第3半導体領域は、ドレイン電極の下側に形成されていないことが好ましい。
このような構成によれば、ドレイン電極の下側に第3半導体領域が形成されておらず、ドレイン電極と第3半導体領域の間の距離が長いので、第3半導体領域とドレイン電極との間に高い電界が生じることが防止される。また、第3領域の表面準位密度が高いので、第3領域に多くの電子がトラップされる。これにより、第3領域(ドレイン電極に近い第2半導体領域表面)で電位分布が略均一となる。したがって、ドレイン電極近傍でアバランシェ降伏が生じることが抑制される。すなわち、ドレイン電極の下側に第3半導体領域が形成されていなくても、ドレイン電極近傍でのアバランシェ降伏を防止することができる。これにより、HFETの耐圧をより向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例1のHFET10の断面図。
【図2】ゲート電極24とドレイン電極22の間のヘテロ接合16a近傍の半導体層中における電位分布を示すグラフ。
【図3】実施例2のHFET110の断面図。
【図4】実施例3のHFET210の断面図。
【図5】実施例4のHFET310の平面図。
【図6】図5のA−A線におけるHFET310の断面図。
【図7】図5のB−B線におけるHFET310の断面図。
【図8】図5のC−C線におけるHFET310の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に説明する実施例1〜3のHFETの特徴を列記する。
(特徴1)実施例1のHFETでは、ゲート電極とドレイン電極の間の第2半導体領域の上面のうちの、絶縁膜が形成されている領域が低い表面準位密度を有しており、絶縁膜が形成されていない領域が高い表面準位密度を有している。
(特徴2)実施例2のHFETでは、ゲート電極とドレイン電極の間の第2半導体領域の上面のうちの、第2半導体領域の上面をアンモニアクリーニングした直後に形成された絶縁膜が形成されている領域が低い表面準位密度を有しており、第2半導体領域上の絶縁膜をエッチングにより除去した後に形成された絶縁膜が形成されている領域が高い表面準位密度を有している。
(特徴3)実施例3のHFETでは、ゲート電極とドレイン電極の間の第2半導体領域の上面のうちの、イオン照射を受けていない領域が低い表面準位密度を有しており、イオン照射を受けた領域が高い表面準位密度を有している。
(特徴4)実施例1〜3のHFETでは、ドレイン電極の下方に第3半導体領域が形成されていない。
【実施例1】
【0013】
図1は、実施例1に係るHFET10の断面図を示している。HFET10は、ノーマリオン型のHFETである。HFET10は、サファイア基板12と、サファイア基板12上に形成された半導体層、電極、絶縁膜等によって構成されている。
【0014】
サファイア基板12上には、p型のGaNからなるp−GaN層14が形成されている。p−GaN層14は、サファイア基板12の上面のうちの一部の領域(図1の右側の領域)を除く領域上に形成されている。
【0015】
サファイア基板12上及びp−GaN層14上には、i型のGaNからなるi−GaN層16が形成されている。i−GaN層16は、p−GaN層14が形成されていない範囲のサファイア基板12の上面に接している。また、i−GaN層16は、p−GaN層14の上面のうちの一部の領域(図1の左側の領域)を除いて、p−GaN層14に接している。i−GaN層16の上面は、平面に形成されている。
【0016】
i−GaN層16上には、i型のAlGaNからなるi−AlGaN層18が形成されている。i−AlGaN層18は、i−GaN層16の上面全域を覆っている。i−AlGaN層18は、i−GaN層16に対してヘテロ接合している。ヘテロ接合16a近傍のi−GaN層16は、HFET10がオンしているときに2次元電子ガスが生じるチャネル領域である。
【0017】
i−AlGaN層18上には、ソース電極20、ドレイン電極22、及び、ゲート電極24が形成されている。
ソース電極20は、p−GaN層14の上方に位置するi−AlGaN層18の上面に形成されている。ソース電極20は、i−AlGaN層18の端面(図1の左側の端面)近傍に形成されている。ソース電極20は、i−AlGaN層18に対してオーミック接続されている。また、ソース電極20は、i−AlGaN層18及びi−GaN層16の端面に沿って下方に延設されており、p−GaN層14の上面に接している。ソース電極20は、p−GaN層14に対してオーミック接続されている。
ドレイン電極22は、i−GaN層16がサファイア基板12に接している範囲(すなわち、p−GaN層14が形成されていない範囲)の上方に位置するi−AlGaN層18の上面に形成されている。ドレイン電極22は、i−AlGaN層18の端面(図1の右側の端面)近傍に形成されている。ドレイン電極22は、i−AlGaN層18に対してオーミック接続されている。
ゲート電極24は、p−GaN層14の上方に位置するi−AlGaN層18の上面に形成されている。ゲート電極24は、図1の紙面に対して垂直な方向に延設されている。i−AlGaN層18の上面を平面視すると、ゲート電極24によって、i−AlGaN層18の上面が、ソース電極20側の領域とドレイン電極22側の領域に区画されている。ゲート電極24は、i−AlGaN層18に対してショットキー接続されている。すなわち、ゲート電極24は、i−AlGaN層18に対して絶縁されている。
【0018】
ゲート電極24とドレイン電極22の間のi−AlGaN層18の上面の一部には、SiNからなる絶縁膜30が形成されている。絶縁膜30は、i−AlGaN層18の上面のうち、ゲート電極24及びドレイン電極22から離れた領域42内に形成されている。i−AlGaN層18の上面のうち、ゲート電極24に隣接する領域40内と、ドレイン電極22に隣接する領域44内には、絶縁膜30は形成されていない。上述したp−GaN層14は、ソース電極20の下方から絶縁膜30の下方まで形成されている。すなわち、領域42の下方にはp−GaN層14が形成されており、領域44の下方にはp−GaN層14は形成されていない。
絶縁膜30は、以下のようにして形成される。最初に、絶縁膜30と電極20〜24が形成される前のi−AlGaN層18の上面全域に、PCVD法等によってSiN膜を形成する。次に、領域42上のSiN膜をマスクした状態でSiN膜をエッチングして、領域42の外側のSiN膜を除去する。領域42内に残存したSiN膜が絶縁膜30となる。SiN膜をエッチングする時には、領域40、44内のi−AlGaN層18の表面準位密度が増加する。したがって、領域40、44の表面準位密度は、領域42の表面準位密度(すなわち、絶縁膜30と接合している範囲のi−AlGaN層18の上面の表面準位密度)よりも高い。絶縁膜30が形成された後に、電極20〜24が形成される。
【0019】
HFET10の使用時には、ソース電極20とドレイン電極22の間に、ドレイン電極22をプラスとする電圧を印加する。また、ゲート電極24には、ソース電極20の電位以上の電位(以下、ゲートオン電位という)とソース電極20の電位より低い電位(以下、ゲートオフ電位という)の何れかを印加する。
ゲート電極24にゲートオン電位を印加すると、チャネル領域(ヘテロ接合16a近傍のi−GaN層16)に2次元電子ガスが生じる。したがって、ドレイン電極22からソース電極20に向かって2次元電子ガスを通って電流が流れる。すなわち、HFET10がオンする。
ゲート電極24にゲートオフ電位を印加すると、ゲート電極24の下方の2次元電子ガスが消失する。したがって、ドレイン電極22からソース電極20に向かって電流が流れない。すなわち、HFET10がオフする。
【0020】
図2は、HFET10がオフしているときの領域40、42、44内のi−AlGaN層18の表面における電位分布を示している。図2の縦軸は、ソース電極20の電位を基準(0V)とした電位Vを示している。図2の横軸は、ゲート電極24からドレイン電極22に向かう方向における位置を示している。図2の参照番号40〜44は、領域40〜44の範囲をそれぞれ示している。上述したように、領域40、44は表面準位密度が高い。したがって、領域40、44には、多くの電子がトラップされる。領域40、44にトラップされた電子の影響によって、領域40、44では、電位が略均一に分布する。領域40の電位は、ゲート電極24と略等しい電位となる。領域44の電位は、ドレイン電極22と略等しい電位となる。一方、領域42は表面準位密度が低いので、領域42にトラップされる電子は領域40、44よりも少ない。このため、領域42中では、位置によって電位が大きく変化する。領域42では、ゲート電極24側からドレイン電極22側に向かうに従って電位が上昇する。すなわち、領域42の下方の半導体層中では、領域40、44の下方の半導体層中よりも高い電界が発生する。
【0021】
HFET10がオフしているときに、サージ等の過大な電圧がゲート電極24とドレイン電極22の間に印加されると、ゲート電極24とドレイン電極22の間の半導体層中でアバランシェ降伏が生じる。上述したように、領域42の下方の半導体層中には、領域40、44の下方の半導体層中よりも高い電界が生じる。したがって、アバランシェ降伏は、領域42の下方の半導体層中で生じる。領域42の下方の半導体層中でアバランシェ降伏が生じると、領域42の下方の半導体層中にホールが生成される。上述したように、領域42の下方では、p−GaN層14がiーGaN層16と接している。p−GaN層14は、ソース電極20と導通しているため、電位が低い。したがって、生成されたホールは、短時間のうちにp−GaN層14内へ流れ、p−GaN層14からソース電極20へ排出される。このように、アバランシェ降伏によりホールが生成されても、生成されたホールがソース電極20へ排出されるので、半導体層中にホールが留まらない。したがって、アバランシェ降伏によるHFETの永久破壊を防止することができる。
【0022】
以上に説明したように、実施例1のHFET10では、ゲート電極24とドレイン電極22の間のi−AlGaN層18の上面のうち、ゲート電極24に隣接する領域40の表面準位密度が高く、ゲート電極24から離れた領域42の表面準位密度が低い。これによって、ゲート電極24近傍の半導体層中よりもゲート電極24から離れた半導体層中で高い電界が生じるようになっている。このため、過電圧が印加されたときには、ゲート電極24から離れた半導体層中でアバランシェ降伏が起き、ゲート電極24近傍でアバランシェ降伏が起きることが防止される。ゲート電極24近傍でアバランシェ降伏が起きないので、ゲート電極24とi−AlGaN層18の間で絶縁破壊が生じない。
また、実施例1のHFET10では、領域42の下方に、ソース電極20と導通するp−GaN層14が形成されている。したがって、アバランシェ降伏により領域42の下方の半導体層中で生じたホールは、p−GaN層14を通じてソース電極20に排出される。これによって、アバランシェ降伏によるHFETの永久破壊を防止することができる。
また、実施例1のHFET10では、ゲート電極24とドレイン電極22の間のi−AlGaN層18の上面のうち、ドレイン電極22に隣接する領域44の表面準位密度が高い。このため、ドレイン電極22の近傍でアバランシェ降伏が生じることが防止されている。また、ドレイン電極22の近傍でアバランシェ降伏が生じないので、ドレイン電極22の下方にp−GaN層14が形成されていない。すなわち、p−GaN層14とドレイン電極22が離れている。このため、p−GaN層14とドレイン電極22の間に高い電界が生じ難い。すなわち、このHFET10では、p−GaN層14とドレイン電極22の間の耐圧も向上されている。
このように、実施例1の構成によれば、耐圧が高いHFETを実現することができる。
【実施例2】
【0023】
図3は、実施例2に係るHFET110の断面図を示している。なお、図3においては、実施例2のHFET110の各部分のうち実施例1のHFET10と同様の機能を有する部分については同じ参照番号を付している。なお、以下の説明では、実施例2のHFET110の構造のうち、実施例1のHFET10の構造と同じ構造を有する部分については説明を省略する。
【0024】
HFET110の領域42上には、SiOからなる絶縁膜120が形成されている。また、i−AlGaN層18、ゲート電極24、及び、絶縁膜120は、SiOからなる絶縁膜130に覆われている。絶縁膜130は、領域40、44においてi−AlGaN層18と接している。
絶縁膜120、130は、以下のようにして形成される。最初に、絶縁膜120、130及び電極20〜24が形成される前のi−AlGaN層18の上面全域をアンモニアクリーニングする。アンモニアクリーニングによって、i−AlGaN層18の表面準位密度が低下する。次に、CVD法等によって、i−AlGaN層18の上面全域にSiO膜を形成する。次に、領域42上のSiO膜をマスクした状態でSiO膜をエッチングして、領域42の外側のSiO膜を除去する。領域42内に残存したSiO膜が絶縁膜120となる。絶縁膜120は、アンモニアクリーニング後のi−AlGaN層18上に形成されているので、領域42の表面準位密度は低い。また、SiO膜をエッチングする時には、領域40、44内のi−AlGaN層18の表面準位密度が増加する。領域42の外側のSiO膜を除去したら、電極20〜24を形成する。次に、CVD法等によって、素子の上面全域にSiO膜(すなわち、絶縁膜130)を形成する。絶縁膜130を形成する前にはアンモニアクリーニングは実施されない。したがって、絶縁膜130と接している領域40、44の表面準位密度は、領域42の表面準位密度より高い。
【0025】
実施例2のHFET110でも、ゲート電極24とドレイン電極22の間のi−AlGaN層18の上面のうち、ゲート電極24に隣接する領域40及びドレイン電極22に隣接する領域44は表面準位密度が高く、ゲート電極24及びドレイン電極22から離れた領域42は表面準位密度が低い。したがって、HFET110がオフしているときには、領域40〜44の下方の半導体層中に、実施例1のHFET10と同様に(すなわち、図2に示すように)電位が分布する。したがって、ゲート電極24とドレイン電極22の間に過大な電圧が印加されると、領域42の下方の半導体層中でアバランシェ降伏が起きる。すなわち、ゲート電極24の近傍、及び、ドレイン電極22の近傍でアバランシェ降伏が起きることが防止される。また、領域42の下方にはp−GaN層14が形成されているので、アバランシェ降伏により生じたホールはp−GaN層14を通じてソース電極20に排出される。これによって、アバランシェ降伏による永久破壊を防止することができる。
【実施例3】
【0026】
図4は、実施例3に係るHFET210の断面図を示している。なお、図4においては、実施例3のHFET210の各部分のうち実施例1のHFET10と同様の機能を有する部分については同じ参照番号を付している。なお、以下の説明では、実施例3のHFET210の構造のうち、実施例1のHFET10の構造と同じ構造を有する部分については説明を省略する。
【0027】
HFET210では、ソース電極20とドレイン電極22の間のi−AlGaN層18の上面全域に、絶縁膜220が形成されている。ゲート電極24は、絶縁膜220上に形成されている。絶縁膜220によって、ゲート電極24はi−AlGaN層18から絶縁されている。
【0028】
HFET210では、ゲート電極24とドレイン電極22の間のi−AlGaN層18の上面のうち、ゲート電極24に隣接する領域40(i−AlGaN層18の上面を平面視したときにゲート電極24に隣接する領域)にダメージ層240が形成されており、ドレイン電極22に隣接する領域44にダメージ層250が形成されている。ダメージ層240、250内には、他の半導体層中よりも多数の結晶欠陥が形成されている。
ダメージ層240、250は、以下のようにして形成される。絶縁膜220及び電極20〜24が形成される前のi−AlGaN層18の上面のうち、領域40、44以外の領域をマスクした状態で、i−AlGaN層18に向けてフッ素又は塩素等のイオンを照射する。これによって、領域40、44にダメージ層240、250が形成される。ダメージ層240、250が形成されることで、領域40、44の表面準位密度が増加する。ダメージ層240、250を形成したら、i−AlGaN層18上に、絶縁層220及び電極20〜24を形成する。したがって、領域40、44の表面準位密度は、領域42の表面準位密度より高い。
【0029】
実施例3のHFET210でも、ゲート電極24とドレイン電極22の間のi−AlGaN層18の上面のうち、ゲート電極24に隣接する領域40及びドレイン電極22に隣接する領域44は表面準位密度が高く、ゲート電極24及びドレイン電極22から離れた領域42は表面準位密度が低い。したがって、HFET210がオフしているときには、領域40〜44の下方の半導体層中に、実施例1のHFET10と同様に(すなわち、図2に示すように)電位が分布する。したがって、ゲート電極24とドレイン電極22の間に過大な電圧が印加されると、領域42の下方の半導体層中でアバランシェ降伏が起きる。すなわち、ゲート電極24の近傍、及び、ドレイン電極22の近傍でアバランシェ降伏が起きることが防止される。また、領域42の下方にはp−GaN層14が形成されているので、アバランシェ降伏により生じたホールはp−GaN層14を通じてソース電極20に排出される。これによって、アバランシェ降伏によるHFETの永久破壊を防止することができる。
【実施例4】
【0030】
上述した実施例1〜3のHFETでは、ソース電極20の下から領域42の下までの略全域に亘ってp−GaN層14が形成されていた。しかしながら、p−GaN層14の形成範囲は種々に変更することができる。以下に、p−GaN層14の形成範囲を変更した第4実施例のHFETについて説明する。
【0031】
図5は、実施例4のHFET310の上面図を示している。また、図6〜8は、図5のA−A線、B−B線、C−C線におけるHFET310の縦断面図を示している。なお、図5〜8においては、実施例4のHFET310の各部分のうち実施例1のHFET10と同様の機能を有する部分については同じ参照番号を付している。また、図5では、i−AlGaN層18が形成されている範囲と、p−GaN層14が形成されている範囲を点線で示している。また、以下の説明では、実施例4のHFET310の構造のうち、実施例1のHFET10の構造と同じ構造を有する部分については説明を省略する。
【0032】
実施例4のHFET310では、図5に示すように、i−AlGaN層18が、i−GaN層16の中央部(外周側の領域の除く部分)の上に形成されている。i−AlGaN層18上には、ソース電極20、ゲート電極24、絶縁膜30、及び、ドレイン電極22が形成されている。ソース電極20、ゲート電極24、絶縁膜30、及び、ドレイン電極22は、図5に示すようにHFET310を平面視したときにi−AlGaN層18を縦方向に縦断するように形成されている。i−AlGaN層16の上面のうち、絶縁膜30が形成されている領域は表面準位密度が低い領域42であり、ゲート電極24と絶縁膜30の間の領域は表面準位密度が高い領域40であり、絶縁膜30とドレイン電極22の間の領域は表面準位密度が高い領域44である。p−GaN層14は、図5の左下の領域14aにおいて広く形成されており、図7に示すようにこの領域14aでソース電極20の下面と接している。これにより、p−GaN層14はソース電極20と導通している。図5、図8に示すように、p−GaN層14は、領域14aからHFET310の外周(i−AlGaN層18が形成されていない領域)を横方向(図1の左右方向)に伸び、絶縁膜30近傍で折れ曲がって絶縁膜30に沿って伸びている。したがって、図6、7に示すように、絶縁膜30の下側でp−GaN層14がi−GaN層16に接している。ソース電極20とドレイン電極22の間のi−AlGaN層18の下側には、絶縁膜30の下側を除いて、p−GaN層14が形成されていない。
【0033】
実施例4のHFET310でも、ゲート電極24とドレイン電極22の間のi−AlGaN層18の表面に、領域40、42、44が形成されており、領域42の下側にp−GaN層14が形成されており、p−GaN層14がソース電極20と導通している。したがって、領域42下方の半導体層中でアバランシェ降伏が起き、これにより生成されたホールがp−GaN層14を通じてソース電極20に排出される。したがって、アバランシェ降伏によりHFETが永久破壊に至ることを防止することができる。また、実施例4のHFET310では、ソース電極20とドレイン電極22の間のi−AlGaN層18の下側には、絶縁膜30の下側を除いて、p−GaN層14が形成されていない。したがって、p−GaN層14により生じる電界がHFET310のオンオフ動作に与える影響を最小化することができる。
【0034】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例をさまざまに変形、変更したものが含まれる。
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0035】
10:HFET
12:サファイア基板
14:p−GaN層
16:iーGaN層
16a:ヘテロ接合
18:iーAlGaN層
20:ソース電極
22:ドレイン電極
24:ゲート電極
30:絶縁膜
40:領域
42:領域
44:領域
120:絶縁膜
130:絶縁膜
220:絶縁膜
240:ダメージ層
250:ダメージ層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘテロ接合に生じる2次元電子ガスをチャネルとするHFETであって、
n型又はi型の第1半導体領域と、
第1半導体領域上に形成されており、第1半導体領域とヘテロ接合している第2半導体領域と、
第2半導体領域上に形成されており、第2半導体領域に対してオーミック接続されているソース電極と、
第2半導体領域上に形成されており、第2半導体領域に対してオーミック接続されているドレイン電極と、
第2半導体領域上に形成されており、第1半導体領域と第2半導体領域とがヘテロ接合している範囲の第2半導体領域の上面をソース電極側とドレイン電極側に区画しており、第2半導体領域に対して絶縁されているゲート電極と、
第1半導体領域と接しており、ソース電極と導通しているp型の第3半導体領域、
を有しており、
ゲート電極とドレイン電極の間の第2半導体領域の上面のうちの、ゲート電極に隣接する範囲の上面は、第1表面準位密度を有する第1領域であり、
ゲート電極とドレイン電極の間の第2半導体領域の上面のうちの、第1領域に隣接する範囲の上面は、第1表面準位密度より低い第2表面準位密度を有する第2領域であり、
第3半導体領域は、第2領域の下側で第1半導体領域に接していることを特徴とするHFET。
【請求項2】
ゲート電極とドレイン電極の間の第2半導体領域の上面のうちの、ドレイン電極に隣接する範囲の上面は、第2表面準位密度より高い第3表面準位密度を有する第3領域であり、
第3半導体領域は、ドレイン電極の下側に形成されていないことを特徴とする請求項1に記載のHFET。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−238701(P2011−238701A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−107657(P2010−107657)
【出願日】平成22年5月7日(2010.5.7)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】