説明

III族窒化物系化合物半導体発光素子

【課題】外部に定電流回路を必要としないGaN系LED。
【解決手段】サファイア基板101上に、AlNバッファ層102が形成され、その上にGaN層111とAl0.2Ga0.8N層112とによるHEMT構造が形成されている。Al0.2Ga0.8N層112の上に、n−GaN層121、井戸層をInGaNとし、バリア層をAlGaNとしたMQW発光層122、p−GaN層123が形成されている。露出されたAl0.2Ga0.8N層112にソース電極115Sが形成され、対応するドレイン電極とn−GaN層121への電子注入電極を兼ね、HEMT/LED接続電極165Dnが形成されている。p−GaN層123表面にはITOから成る透光性電極128が形成され、その表面の一部に金から成るパッド電極129が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は定電流素子と一体化したIII族窒化物系化合物半導体発光素子に関する。本願においてIII族窒化物系化合物半導体とは、AlxGayIn1-x-yN(x、y、x+yはいずれも0以上1以下)で示される半導体、及び、n型化/p型化等のために任意の元素を添加したものを含む。更には、III族元素及びV族元素の組成の一部を、B、Tl;P、As、Sb、Biで置換したものをも含むものとする。
【背景技術】
【0002】
良く知られているように発光ダイオードの光出力は電流にほぼ比例する。また、発光ダイオードの電流は電圧に対し指数関数的に上昇する。そこで発光ダイオードを所望の輝度範囲で点灯させる際には、定電流を供給する駆動回路が必要であった。このような回路には、例えば定電流ダイオードが用いられていた。
【0003】
その他、光伝送路と光素子を一体化した技術、それを更に他の素子と組み合わせることについて特許文献1に記載がある。また、非特許文献1には、2つの端子間に複数個の発光ダイオードを接続して、当該2つの端子のいずれを高電位としても、当該複数個の発光ダイオードの過半数が点灯するように構成する回路が記載されている。
【特許文献1】特開2001−189488号公報
【非特許文献1】Hsi-Hsuan Yen et al., "GaN alternating current light-emitting device," Phys. Stat. Sol. (a) 204, No.6, 2077-2081 (2007)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは例えばGaN/AlGaN界面の二次元電子ガスを用いた高電子移動度トランジスタ(HEMT)を定電流素子として用いうることに着目し、外部に定電流回路を必要としないIII族窒化物系化合物半導体発光素子を提供すべく、本願発明を完成させた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係る発明は、III族窒化物系化合物半導体の積層構造から成る発光部を有するIII族窒化物系化合物半導体発光素子において、発光部と、III族窒化物系化合物半導体から成る定電流素子とが同一基板上に形成されたことを特徴とする。
請求項2に係る発明は、定電流素子が、高電子移動度トランジスタであることを特徴とする。
請求項3に係る発明は、定電流素子を構成するIII族窒化物系化合物半導体層が、発光部を構成するIII族窒化物系化合物半導体積層構造よりも基板に近いことを特徴とする。
【0006】
請求項4に係る発明は、ダイオードである発光部を5個以上有し、4つの端子点A、B、C、Dに対し、AB間、BD間、DC間、CB間、DA間に、各々1個の発光部が接続されるか、又は複数個の発光部が直列接続されており、A点が高電位でC点が低電位である場合にAB間、BD間、DC間の発光部が全て順方向の直列接続を形成し、C点が高電位でA点が低電位である場合にCB間、BD間、DA間の発光部が全て順方向の直列接続を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
下記に示す通り、III族窒化物系化合物半導体発光素子の積層構造と定電流素子の積層構造を一体化することが可能であることが確認された。本発明によれば、外部に定電流回路を必要としない、III族窒化物系化合物半導体発光素子が供給できる。即ち、本発明によればIII族窒化物系化合物半導体発光素子を用いた発光装置全体としてのサイズを小型とすることができ、コスト低減に寄与する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の実施にあたり、定電流素子としては、III族窒化物系化合物半導体から成るHEMTが好適である。例えば、AlGaN/GaNヘテロ接合による自発分極と界面応力に起因するピエゾ分極により、高濃度で移動度の高い二次元電子ガスを発生させることが可能である。このHEMTは、いわゆるノーマリオン型である。
HEMT構造としては、その他任意の公知の構成をとることができる。また、他の定電流素子の構成(他の素子の、飽和電流特性)を用いても良い。
【0009】
本発明の実施にあたり、定電流素子と一体化させる発光素子の構成自体には一切限定が無い。
【0010】
発光素子と定電流素子は基板の同一面側に形成しても、基板の両面に各々設けても良い。或いは、発光素子と定電流素子の積層構造を形成する際のエピタキシャル成長基板を除去して、他の基板に接着した構成の発光素子としても良い。
【実施例1】
【0011】
図1は、本発明の具体的な一実施例に係るIII族窒化物系化合物半導体発光素子100の構成を示す断面図である。これは周知のMOCVD法により、以下の各層をエピタキシャル成長させたものである。
【0012】
サファイア基板101上に、厚さ200nmのAlNバッファ層102が形成されている。
【0013】
以下の構成のHEMT部(定電流素子)110が形成されている。
AlNバッファ層102の上に厚さ1μmのアンドープのGaN層111が形成され、その上に厚さ45nmのアンドープ又はシリコンがドープされたAl0.2Ga0.8N層112が形成されている。下記に示すLED部(発光部)120を構成する各層の形成後、リアクティブイオンエッチングによりAl0.2Ga0.8N層112が露出されて、いずれもバナジウム(V)とアルミニウム(Al)の二層構造の、ソース電極115Sとドレイン電極116Dが形成されている。ソース電極115Sとドレイン電極116Dの間隔(チャネル長)は8μmとし、向き合う長さ(チャネル幅)を600μmとした。GaN層111とAl0.2Ga0.8N層112の界面のGaN層111側に二次元電子ガスが発生し、チャネルが形成される。
尚、Al0.2Ga0.8N層112を露出させるには、ウェットエッチングによっても可能である。
【0014】
また、以下の構成のLED部(発光部)120が形成されている。
Al0.2Ga0.8N層112の上に、厚さ3.5μmのシリコンドープのn−GaN層121が形成されている。n−GaN層121の上には井戸層をInGaNとし、バリア層をAlGaNとした、井戸層が8層のMQW発光層122が形成されている。MQW発光層122の上には、厚さ100nmのマグネシウムドープのp−GaN層123が形成されている。
また、リアクティブイオンエッチングによりn−GaN層121表面が一部露出されて、バナジウム(V)とアルミニウム(Al)の二層構造のn電極125が形成されており、p−GaN層123表面には厚さ300nmのITOから成る透光性電極128が形成されている。MQW発光層122の水平面の面積は240μm×480μmとした。
【0015】
まず、図1のIII族窒化物系化合物半導体発光素子100の、LED部120のn電極125と透光性電極128とにプローブを当てて電圧電流特性を調べた。図2.AはIII族窒化物系化合物半導体発光素子100のLED部120の電圧電流特性を示すグラフ図である。LED部120は、図2.Aのように、ほぼ2.8V以上で電流が流れた。また、印加電圧3.8Vで10mAの電流が流れた。
【0016】
次に、図1のIII族窒化物系化合物半導体発光素子100の、HEMT部110のソース電極115Sとドレイン電極116Dとにプローブを当てて電圧電流特性を調べた。図2.BはIII族窒化物系化合物半導体発光素子100のHEMT部110の電圧電流特性を示すグラフ図である。HEMT部110は、印加電圧20Vで電流が8mAに達し、印加電圧30〜50Vの範囲で電流が9.2〜9.5mAとほぼ一定となった(飽和電流)。
【0017】
図2.CはIII族窒化物系化合物半導体発光素子100全体の電圧電流特性を示すグラフ図である。この際、HEMT部110とLED部120を直列接続するため、ドレイン電極116Dとn電極125を接続した。
図2.Aによれば、図1のIII族窒化物系化合物半導体発光素子100のLED部120は、印加電圧3.6Vで電流が7mAであり、印加電圧3.8Vで電流が10mAであり、印加電圧4.0Vで電流が13mAである。即ち、LED部120は、印加電圧3.8Vを中心とした場合、±5%の電圧変位で±30%の電流変動が生ずる。
一方、図2.Cによれば、HEMT部110を追加したIII族窒化物系化合物半導体発光素子100全体としては印加電圧50Vで電流が9.5mAであり、±5%の電圧変位で±0.1%以下の電流変動が生ずるのみである。
即ち、電圧の変化に対して電流の変化が小さい、定電流素子を一体化したIII族窒化物系化合物半導体発光素子が得られた。
【0018】
HEMT部110については、GaN層111の厚さを1〜4μmとしても良い。Al0.2Ga0.8N層112の厚さは15〜45nmとしても良い。ソース電極115Sとドレイン電極116D、及びn電極125をチタン(Ti)とアルミニウム(Al)の二重層としても良く、また、チタン(Ti)とニッケル(Ni)の二重層としても良い。
【0019】
〔変形例〕
図3は、変形例に係るIII族窒化物系化合物半導体発光素子150の構成を示す断面図である。図3のIII族窒化物系化合物半導体発光素子150は、図1のIII族窒化物系化合物半導体発光素子100のドレイン電極116Dとn電極125を一体化した、HEMT/LED接続電極165Dnに置き換えたものである。また、ITOから成る透光性電極表面の一部に、ニッケル(Ni)と金(Au)から成るパッド電極129を設けた。
【実施例2】
【0020】
図4は本発明の具体的な第2の実施例に係るIII族窒化物系化合物半導体発光素子200の構成を示す断面図である。図4のIII族窒化物系化合物半導体発光素子200は、図3のIII族窒化物系化合物半導体発光素子150のソース電極115SとHEMT/LED接続電極165Dnとの間に、ニッケル(Ni)と金(Au)から成るショットキー電極であるゲート電極117Gを追加したものである。
図1のIII族窒化物系化合物半導体発光素子100や図3のIII族窒化物系化合物半導体発光素子150は、AlGaN/GaNヘテロ接合により高濃度で移動度の高い二次元電子ガスが発生しているノーマリオン型であった。そこで図4のIII族窒化物系化合物半導体発光素子200のように、ゲート電極117Gを追加し、負電位を印加することで、ソース電極115SとHEMT/LED接続電極165Dn間の飽和電流の値を制御することが可能となる。即ち、LED部120に供給する電流をゲート電極117Gに印加する電位で制御して、LED部120の発光層122の発光強度を変化させることができる。
【実施例3】
【0021】
図5は本発明の具体的な第3の実施例に係るIII族窒化物系化合物半導体発光素子300の構成を示す断面図である。図5のIII族窒化物系化合物半導体発光素子300は、図3のIII族窒化物系化合物半導体発光素子150のLED部120と同様の構成のLED部130を設け、LED間接続電極195pnにより、LED部120のp−GaN層123に設けた透光性電極128と、LED部130のn−GaN層131とを接続するものである。実際、LED部130は、各々LED部120の対応する各層とは絶縁された、シリコンドープのn−GaN層131、MQW発光層132、p−GaN層133、ITOから成る透光性電極138が形成されており、透光性電極138の上にはパッド電極139が形成されている。尚、短絡を防ぐために、LED部120とLED部130とは半導体層では接合されないよう、間にサファイア基板101面を露出させて間隙を形成し、LED部120には絶縁膜140を形成して、LED間接続電極195pnが透光性電極128以外の各III族窒化物系化合物半導体層の露出部(p−GaN層123の上面及び側面、並びに、MQW発光層122、n−GaN層121、Al0.2Ga0.8N層112、GaN層111及びAlNバッファ層102の側面)と接触しないようにしている。
尚、図5のIII族窒化物系化合物半導体発光素子300は、2つの発光部であるLED部120及び130を形成したものであるが、全く同様の手法で、LED部130の透光性電極138とn−GaN層を電極で接続した第3のLED部を、更にその透光性電極とn−GaN層を電極で接続した第4のLED部を、と、所望の個数のLED部を直列接続した発光素子を形成できる。尚、LED部を複数個設ける場合は、次の実施例のように、全てのLED部を直列接続しない場合も考えられる。
【実施例4】
【0022】
図6.Aは第4の実施例に係る複数個のLED部を有するIII族窒化物系化合物半導体発光素子400の構成を示す回路図である。図6.Aでは全てのLED部を記載せず4個のLEDの直列接続とその横の数字で、当該直列接続が何個のLEDの直列接続であるのか示している。これは以下に示す図6.Bでも同様である。
【0023】
図6.Aに示す通り、III族窒化物系化合物半導体発光素子400は、4点A、B、C、Dを接続点として、45個のLED部とHEMT部110が次のように接続されている。
AB間には10個のLED部をAを高電位とした場合に順方向接続となるように直列接続した。
BD間には5個のLED部をBを高電位とした場合に順方向接続となるように直列接続した。
DC間には10個のLED部をDを高電位とした場合に順方向接続となるように直列接続した。
CB間には10個のLED部をCを高電位とした場合に順方向接続となるように直列接続した。
DA間には10個のLED部をDを高電位とした場合に順方向接続となるように直列接続した。
点AにはHEMT部110のドレイン電極が接続され、HEMT部110のソース電極は交流電源の一方の端子に接続され、交流電源の他方の端子は点Cに接続されている。
【0024】
図6.AのIII族窒化物系化合物半導体発光素子400は、点Aが高電位で点Cが低電位の場合は、A−B−D−Cの順に直列接続された合計25個のLED部が通電され、発光する。この際、CB間とDA間の合計20個のLED部は通電されず、発光しない。
逆に点Cが高電位で点Aが低電位の場合は、C−B−D−Aの順に直列接続された合計25個のLED部が通電され、発光する。この際、AB間とDC間の合計20個のLED部は通電されず、発光しない。
【0025】
このように、図6.Aに示すIII族窒化物系化合物半導体発光素子400は、合計45個のLED部が直並列接続されており、点Aと点Cのいずれが高電位の場合でも、合計45個のLED部の過半数である25個のLED部が点灯する。また、HEMT部110が一体化した発光素子である。
【0026】
〔比較例〕
図6.Bは比較例に係る複数個の発光素子を有するIII族窒化物系化合物半導体発光素子900の構成を示す回路図である。
図6.BのIII族窒化物系化合物半導体発光素子900は、図6.AのIII族窒化物系化合物半導体発光素子400の構成からHEMT部110を外し、交流電源が点Aと点Cとに直接接続され、BD間には15個のLED部をBを高電位とした場合に順方向接続となるように直列接続したものである。その他は図6.AのIII族窒化物系化合物半導体発光素子400と同様の構成である。
【0027】
図6.BのIII族窒化物系化合物半導体発光素子900は、点Aが高電位で点Cが低電位の場合は、A−B−D−Cの順に直列接続された合計35個のLED部が通電され、発光する。この際、CB間とDA間の合計20個のLED部は通電されず、発光しない。
逆に点Cが高電位で点Aが低電位の場合は、C−B−D−Aの順に直列接続された合計35個のLED部が通電され、発光する。この際、AB間とDC間の合計20個のLED部は通電されず、発光しない。
このように、図6.Bに示すIII族窒化物系化合物半導体発光素子900は、合計55個のLED部が直並列接続されており、点Aと点Cのいずれが高電位の場合でも、合計55個のLED部の過半数である35個のLED部が点灯する。
【0028】
図6.AのIII族窒化物系化合物半導体発光素子400と図6.BのIII族窒化物系化合物半導体発光素子900のそれぞれに100V50Hzの商用電力を印加して電流特性を調べた。
図7.Aは図6.AのIII族窒化物系化合物半導体発光素子400の電流の時間変動を示すグラフ図、図7.Bは図6.BのIII族窒化物系化合物半導体発光素子900の電流の時間変動を示すグラフ図、図7.Cは印加した100V、50Hzの電圧の時間変動を示すグラフ図である。実効電圧が100Vの交流電源であるので、電圧の振幅は141Vである。また、50Hzであるので周期は0.02秒である(図7.C)。III族窒化物系化合物半導体発光素子400及び900のいずれも、0.01毎にA−B−D−C間のLED部とC−B−D−A間のLED部が交互に通電され、点灯することが分かる(図7.A及び図7.B)。
【0029】
今、電流の最大値の半分以上の電流が流れる時間割合を検討すると、図7.Aのように、HEMT部110を有する図6.AのIII族窒化物系化合物半導体発光素子400においては時間割合が約0.5であるが、図7.BのようにHEMT部を有しない図6.BのIII族窒化物系化合物半導体発光素子900においては時間割合が約0.3と小さい。即ち、HEMT部110を有する図6.AのIII族窒化物系化合物半導体発光素子400は、HEMT部を有しない図6.BのIII族窒化物系化合物半導体発光素子900に比べて、明るく光っている時間割合が大きく、チラつきが押さえられることが分かる。
また、最大電流を同一となるようにすると、交流の半周期の内の実効電流が、図7.Aの方が図7.Bより大きくなる。即ち、HEMT部110を有する図6.AのIII族窒化物系化合物半導体発光素子400は、HEMT部を有しない図6.BのIII族窒化物系化合物半導体発光素子900に比べて、実効電流が大きく、明るくなることが分かる。
即ち、HEMT部を一体化した本願発明により、明るく光っている時間割合を大きくし、チラつきを押さえたIII族窒化物系化合物半導体発光素子が提供できる。
【0030】
〔その他〕
上記実施例においては、本発明の主要部であるIII族窒化物系化合物半導体の積層構造による発光部と定電流素子の一体化を中心として説明した。このため、発光部としては極めて簡単な構成を示したに過ぎないが、例えば、次のような積層構造の発光部を形成しても良い。即ち、HEMT部(定電流素子)110を構成する最上層であるAlGaN層112の上に、順に次の積層構造を形成しても良い。
シリコンをドープしたn型のGaN層から成るnコンタクト層、
アンドープGaN層とn型GaN層とを順に積層した静電耐圧層、
シリコンをドープした層を少なくとも含む、例えばInGaNとGaNの多重層から成るnクラッド層、
例えばInGaNの井戸層と、GaNとAlGaNとの二重障壁層との多層構造から成る多重量子井戸構造の発光層、
マグネシウムをドープした、例えばInGaNとAlGaNの多重層から成るpクラッド層、
マグネシウムの濃度の異なる、二重層から成るpコンタクト層。
ここにおいて、各層の膜厚、ドーパント濃度、積層数、或いは各層の形成温度その他の成長条件は、公知の範囲で適宜選択されうる。或いは、積層構造を単純な繰り返しとせず、例えば他の機能層と接触する最初又は最後の層、及びその付近の層については、膜厚、ドーパント濃度或いは形成温度その他の成長条件を調整することも可能であり、また、全く異なる機能を有する他の公知の層や他の公知の技術を、本願発明の発光部に適用することも可能である。
この他、定電流素子も、GaN層とAlGaN層との積層構造でなく、他の公知のIII族窒化物系化合物半導体を用いた構成を採用しても良い。
【0031】
尚、上記の発光部の積層構造の1例を挙げれば、次の通りである。
静電耐圧層は、厚さ300nmのアンドープGaNと厚さ30nmのn−GaN。
nクラッド層はアンドープのIn0.1Ga0.9NとアンドープのGaNとシリコン(Si)ドープのGaNを1組として10組積層した多重層とし、総膜厚約74nmとする。
発光層は、膜厚約3nmのIn0.2Ga0.8Nから成る井戸層と、膜厚約2nmのGaNと膜厚3nmのAl0.06Ga0.94Nから成るバリア層とを交互に8組積層する。
pクラッド層はp型Al0.3Ga0.7Nとp型In0.08Ga0.92Nの多重層とし、総膜厚約33nmとする。
pコンタクト層はマグネシウム濃度の異なる2層のp型GaNの積層構造とし、総膜厚約80nmとする。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の具体的な一実施例に係るIII族窒化物系化合物半導体発光素子100の構成を示す断面図。
【図2】III族窒化物系化合物半導体発光素子100についての、図2.AはLED部の電圧電流特性を示すグラフ図、図2.BはHEMT部の電圧電流特性を示すグラフ図、図2.Cは全体の電圧電流特性を示すグラフ図。
【図3】変形例に係るIII族窒化物系化合物半導体発光素子150の構成を示す断面図。
【図4】本発明の具体的な他の実施例に係るIII族窒化物系化合物半導体発光素子200の構成を示す断面図。
【図5】本発明の具体的な他の実施例に係るIII族窒化物系化合物半導体発光素子300の構成を示す断面図。
【図6】図6.Aは実施例4に係る回路図、図6.Bは比較例に係る回路図。
【図7】図7.Aは実施例4に係る電流の時間変動を示すグラフ図、図7.Bは比較例に係る電流の時間変動を示すグラフ図、図7.Cは印加した100V、50Hzの電圧の時間変動を示すグラフ図。
【符号の説明】
【0033】
100:サファイア基板
101:AlNバッファ層
110:HEMT部(定電流素子)
111:GaN層
112:AlGaN層
115S:ソース電極
116D:ドレイン電極
117G:ゲート電極
120、130:LED部(発光部)
121、131:n−GaN層
122、132:InGaN/AlGaNのMQW発光層
123、133:p−GaN層
125:n電極
128、138:ITOから成る透明電極
129、139:p電極
140:絶縁膜
165Dn:HEMT/LED接続電極
195pn:LED間接続電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
III族窒化物系化合物半導体の積層構造から成る発光部を有するIII族窒化物系化合物半導体発光素子において、
前記発光部と、III族窒化物系化合物半導体から成る定電流素子とが同一基板上に形成されたことを特徴とするIII族窒化物系化合物半導体発光素子。
【請求項2】
前記定電流素子が、高電子移動度トランジスタであることを特徴とする請求項1に記載のIII族窒化物系化合物半導体発光素子。
【請求項3】
前記定電流素子を構成するIII族窒化物系化合物半導体層が、前記発光部を構成するIII族窒化物系化合物半導体積層構造よりも前記基板に近いことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のIII族窒化物系化合物半導体発光素子。
【請求項4】
ダイオードである前記発光部を5個以上有し、
4つの端子点A、B、C、Dに対し、AB間、BD間、DC間、CB間、DA間に、各々1個の前記発光部が接続されるか、又は複数個の前記発光部が直列接続されており、
A点が高電位でC点が低電位である場合にAB間、BD間、DC間の前記発光部が全て順方向の直列接続を形成し、
C点が高電位でA点が低電位である場合にCB間、BD間、DA間の前記発光部が全て順方向の直列接続を形成することを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載のIII族窒化物系化合物半導体発光素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−71220(P2009−71220A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−240639(P2007−240639)
【出願日】平成19年9月18日(2007.9.18)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】