説明

PLL回路及び信号送受信システム

【課題】出力クロック信号のジッタ値に対するプロセスばらつきによる影響を抑える。
【解決手段】PLL回路として、基準クロック信号と出力クロック信号に基づくフィードバッククロック信号との間の位相差を検出する位相周波数比較回路と、前記位相差に応じて電流を出力するチャージポンプ回路と、前記チャージポンプ回路の出力を平滑化し、制御電圧として出力するローパスフィルタと、前記制御電圧、ゲイン制御信号、及びオフセット制御信号に応じた周波数の信号を生成し、前記出力クロック信号として出力する電圧制御発振回路と、前記制御電圧の変化に対する前記出力クロック信号の周波数の変化の比が目標値になるように、前記ゲイン制御信号を求めるゲイン調整回路と、前記制御電圧が所定の値である時における前記出力クロック信号の周波数が目標値になるように、前記オフセット制御信号を求めるオフセット調整回路とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PLL(phase locked loop)回路、及びこれを用いた信号送受信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体集積回路の設計ルールが微細化するのに伴い、製造プロセスに起因するトランジスタのしきい値電圧等のばらつきが増大してきており、PLL回路の出力クロック信号のジッタ値のばらつきも増大してきている。データ送受信システムにおいて、PLL回路は基準クロック信号の生成やクロックリカバリを行うために必須の回路であり、PLL回路のジッタがデータ送受信システムの接続性に直接影響してくる。特にGbpsクラスの高速の通信規格においては、ジッタ値のばらつきのジッタスペックに対する割合が増大してきており、LSIによってジッタスペックを満足したり、しなかったりという問題が発生している。したがって、PLL回路のジッタ値のばらつきを抑制することは、安定した接続性を確保するために非常に重要になってきている。
【0003】
PLL回路のジッタ値がバンド幅に依存していることは一般的に知られている。バンド幅は、sqrt{(Kvco・Icp)/(2・π・C)}でおよそ表される。このように、バンド幅は、VCOゲインKvco(電圧制御発振回路(VCO)への入力電圧が1V変化したときのVCO出力信号の周波数の変化)、チャージポンプ回路電流Icp、ローパスフィルタ(LPF)の容量値C等から決まる値であり、中でも特にプロセスばらつきの影響を大きく受けるのがVCOゲインKvco(以下では、単にゲインとも称する)である。
【0004】
バンド幅のばらつきを抑えるためには、このVCOゲインのばらつきを抑えることが重要である。VCOゲインを一定化する技術として、VCOゲインを調整するようにした回路が知られている(例えば特許文献1及び非特許文献1参照)。
【0005】
図17は、VCOゲイン調整機能を有するPLL回路の構成例を示す回路図である。図17のPLL回路は、周波数位相比較回路12と、チャージポンプ回路14と、LPF16と、VCO920と、バッファ960と、分周回路18とを備えた通常のチャージポンプ型PLL回路に、VCOゲイン調整回路940を更に備えている。このPLL回路は、入力クロック信号REFCLKとフィードバッククロック信号FBCLKとの間で周波数及び位相が合うようにVCO制御電圧VCをフィードバック制御し、入力クロック信号REFCLKの周波数を分周回路18の分周比に応じて逓倍した周波数を有する出力クロック信号CKOUTを出力する。
【0006】
VCOゲイン調整回路940は、VCO制御電圧を高電圧(2V)にした場合と低電圧(1V)にした場合とのそれぞれについて、所定期間内におけるVCO920の出力クロック信号CKOUTのサイクル数を求め、2つの場合のサイクル数の差とあらかじめ定めてある目標値との比較を行う。この結果に応じて、VCOゲイン調整回路940は、VCOへのゲイン制御信号RGを変化させてVCOゲインを調整する。
【0007】
図18(a)は、VCOゲイン調整を行わない場合における図17のVCO920の制御電圧VCに対する出力クロック信号CKOUT周波数の関係(V−F特性)を示すグラフである。図18(b)は、VCOゲイン調整を行う場合における図17のVCO920のV−F特性を示すグラフである。
【0008】
通常のVCOでは、図18(a)に示すように、VCOゲインは、例えば、プロセスが標準的な場合(TYP)2GHz/V、プロセスが最良の場合(BEST)4GHz/V、プロセスが最悪の場合(WORST)1GHz/Vとなり、製造プロセスに依存して大きくばらついてしまう。
【0009】
図17のPLL回路では、VCOゲイン調整回路940によって制御を行うので、図18(b)に示すように、VCOゲインを一定(例えば2GHz/V)に保つことができる。すなわち、VCOゲインをプロセスによらず一定に保つことによって、プロセスばらつきに起因する出力クロック信号CKOUTのジッタ値のばらつきをある程度抑えることができる。
【特許文献1】特開2006−180428号公報
【非特許文献1】T.Morie, S.Dosho, K.Okamoto, Y.Yamada, K.Sogawa 著,「正確なループバンド幅制御回路を有する位相雑音-90dBc@10kHzの Fractional-N 周波数シンセサイザ(A -90dBc@10kHz Phase Noise Fractional-N Frequency Synthesizer with Accurate Loop Bandwidth Control Circuit)」,VLSI Circuits, 2005. Digest of Technical Papers,(米国),IEEE,2005年6月,pp.52−55
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら従来のPLL回路では、出力クロック信号CKOUTのジッタ値のばらつきに影響する以下のような要因(1),(2)に関しては考慮されていなかった。したがって、プロセスがばらついた場合に、VCOゲインはほぼ一定にすることができたが、これらの要因に起因するジッタ値のばらつきを抑制することはできず、ジッタ値のばらつきは依然大きかった。特に、要因(2)は電源電圧の低下とともに顕著になると考えられる。
【0011】
(1)ロック時における出力クロック信号CKOUTのエッジの傾きのばらつき
クロックエッジの傾きが急峻なほど、電源ノイズ等の外乱の影響を受けにくいので、ジッタ値は小さい。逆にクロックエッジの傾きが緩やかなほど、外乱の影響を受けやすいので、ジッタ値は大きい。これには、PLL回路によって異なっているバッファの動作限界周波数特性が影響している。
【0012】
(2)V−F特性の周波数オフセットのばらつき
VCOゲインを調整しても、VCOの入力トランジスタのしきい値電圧のばらつきに起因するVCOのV−F特性の周波数オフセット(制御電圧VCを固定したときの出力クロック信号CKOUTの周波数)のばらつきは残る。このため、発振周波数を所定値にしたときにおけるLPF出力電圧(制御電圧VC)がばらつく。例えば、出力クロック信号CKOUTの周波数が1.5GHzでロックした場合には、VCO制御電圧VCは、図18(b)においては1.45Vから1.85Vまでばらつく。
【0013】
LPF出力電圧がばらつくと、LPFの前段のチャージポンプの電流特性が変わり、ジッタ特性も変わる。特に、電源電圧が低い場合には、LPF出力電圧が大きくなるとチャージポンプの電流供給用pチャネルトランジスタが非飽和領域に入り、LPF出力電圧が小さくなるとチャージポンプの電流引き抜き用nチャネルトランジスタが非飽和領域に入る。その結果、LPF出力電圧は電源電圧のノイズを直接受けてしまう。
【0014】
本発明は、VCOゲイン調整機能を有するPLL回路において、その出力クロック信号のジッタ値に対する、プロセスばらつきによる影響を抑えることを目的とする。
【0015】
また、回路面積をあまり増加させることなく、プロセスばらつきの許容範囲が広い信号送受信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記課題を解決するため、本発明は、PLL回路として、基準クロック信号と出力クロック信号に基づくフィードバッククロック信号との間の位相差を検出する位相周波数比較回路と、前記位相差に応じて電流を出力するチャージポンプ回路と、前記チャージポンプ回路の出力を平滑化し、制御電圧として出力するローパスフィルタと、前記制御電圧、ゲイン制御信号、及びオフセット制御信号に応じた周波数の信号を生成し、前記出力クロック信号として出力する電圧制御発振回路と、前記制御電圧の変化に対する前記出力クロック信号の周波数の変化の比が目標値になるように、前記ゲイン制御信号を求めるゲイン調整回路と、前記制御電圧が所定の値である時における前記出力クロック信号の周波数が目標値になるように、前記オフセット制御信号を求めるオフセット調整回路とを備えるものである。
【0017】
これによると、電圧制御発振回路のゲインを制御するゲイン調整回路だけではなく、周波数オフセットを制御するオフセット調整回路をも備えるようにしたので、電圧制御発振回路の制御電圧と出力クロック信号との関係を適切に調整することができる。このため、出力クロック信号のジッタ値に対するプロセスばらつきによる影響を抑えることができる。
【0018】
また、本発明に係るPLL回路は、基準クロック信号と出力クロック信号に基づくフィードバッククロック信号との間の位相差を検出する位相周波数比較回路と、前記位相差に応じて電流を出力するチャージポンプ回路と、前記チャージポンプ回路の出力を平滑化し、制御電圧として出力するローパスフィルタと、前記制御電圧及びゲイン制御信号に応じた周波数の信号を生成し、出力する電圧制御発振回路と、その駆動能力を、前記ゲイン制御信号に応じた大きさになるように制御して、前記電圧制御発振回路の出力信号を前記出力クロック信号として出力するバッファと、前記制御電圧の変化に対する前記出力クロック信号の周波数の変化の比が目標値になるように、前記ゲイン制御信号を求めるゲイン調整回路とを備えるものである。
【0019】
これによると、ゲイン制御信号に従ってバッファの駆動能力を制御するので、バッファから出力される出力クロック信号のエッジの傾きをプロセスによらず一定にすることができる。このため、出力クロック信号のジッタ値に対するプロセスばらつきによる影響を抑えることができる。また、電圧制御発振回路のために求められたゲイン制御信号を用いるので、バッファの制御のために制御信号を生成する回路を備える必要がなく、回路面積を抑えることができる。
【0020】
また、本発明に係る信号送受信システムは、信号を送信する送信部と、信号を受信する受信部とを備える信号送受信システムであって、バンド幅制御信号によってそのバンド幅を制御するように構成されており、前記バンド幅が所定値となるように、前記バンド幅制御信号を求めて出力するPLL回路と、前記バンド幅制御信号によって制御される他の回路とを備えるものである。
【0021】
これによると、信号送受信システムにおいて、プロセスばらつきによる影響を抑えることができる。また、PLL回路のために求められたバンド幅制御信号に従って他の回路を制御するので、他の回路のために制御信号を生成する回路を備える必要がなく、回路面積を抑えることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、電圧制御発振回路の制御電圧と出力クロック信号との関係を適切に調整することができる。このため、出力クロック信号のジッタ値に対するプロセスばらつきによる影響を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0024】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係るPLL回路の構成を示すブロック図である。図1のPLL回路100は、位相周波数比較回路(PFD)12と、チャージポンプ回路(CP)14と、ローパスフィルタ(LPF)16と、電圧制御発振回路(VCO)20と、バッファ(BFR)60と、分周回路(DIV)18と、VCOゲイン調整回路(GAINCAL)40と、VCOオフセット調整回路(OFFSETCAL)50とを備えている。
【0025】
位相周波数比較回路12は、基準クロック信号REFCLKとフィードバッククロック信号FBCLKとの間の位相差を検出し、チャージポンプ回路14に出力する。チャージポンプ回路14は、検出された位相差に応じて電流を出力する。LPF16は、チャージポンプ回路14の出力を平滑化し、制御電圧VCとしてVCO20に出力する。
【0026】
VCO20は、制御電圧VCに応じた周波数の信号を生成し、バッファ60に出力する。VCO20は、その出力信号の周波数を、ゲイン制御信号RG及びオフセット制御信号ROに従って変化させる。バッファ60は、VCO20の出力を出力クロック信号CKOUTとして出力する。バッファ60は、ゲイン制御信号RGに従って、その駆動能力を変化させる。
【0027】
VCOゲイン調整回路40は、制御電圧VCの変化に対する出力クロック信号CKOUTの周波数の変化の比が目標値になるように、ゲイン制御信号RGを求める。VCOオフセット調整回路50は、制御電圧VCが所定の値である時における出力クロック信号CKOUTの周波数が目標値になるように、オフセット制御信号ROを求める。ここでは、ゲイン制御信号RG及びオフセット制御信号ROは、いずれも5ビットの信号であるとし、それぞれRG[4:0],RO[4:0]とも表記する。
【0028】
なお、バッファ60を備えず、VCO20の出力信号を出力クロック信号CKOUTとしてもよい。
【0029】
図1のPLL回路100は、基本動作としては、基準クロック信号REFCLKとフィードバッククロック信号FBCLKとの周波数及び位相が合うようにVCO入力電圧VCをフィードバック制御し、基準クロック信号REFCLKの周波数を逓倍した周波数を有する出力クロック信号CKOUTを出力する。
【0030】
分周回路18の分周比がn(nは自然数)であるとき、出力クロック信号CKOUTの周波数は基準クロック信号REFCLKの周波数のn倍である。ここでは例として、基準クロック信号REFCLK及び出力クロック信号CKOUTの周波数は、それぞれ25MHz及び1.5GHz、分周回路18の分周比は60であるとする。
【0031】
図2は、図1のVCO20の構成例を示す回路図である。VCO20は、スイッチ22A,22B,22C,22Dと、電圧電流変換部24と、リングオシレータ28とを有している。電圧電流変換部24は、ゲイン切替部25と、オフセット切替部26と、カレントミラー部27とを有している。
【0032】
スイッチ22B,22C,22Dは、制御信号VL,VH,VOが高電位(“H”)であるときにのみ、それぞれ導通する。スイッチ22Aは、制御信号VL,VH,VOの全てが低電位(“L”)であるとき、すなわち、/(VL+VH+VO)=1であるときにのみ導通する(/は信号の論理レベルの反転を示す)。スイッチ22A〜22Dのいずれかで選択された電圧が、制御電圧VFとしてゲイン切替部25に与えられる。通常動作時には、スイッチ22Aが導通する。
【0033】
ここで、図1のPLL回路100に与えられる電源電圧は、例えば3.3Vであるとする。スイッチ22B,22C,22Dが導通したとき、電圧2V,1V,1.65V(電源電圧の1/2)がそれぞれ制御電圧VFとしてゲイン切替部25に与えられる。これらの電圧は、バンドギャップを基準として用いるバイアス生成回路、又は、電源とグラウンドとの間の電圧を抵抗で分割することによって生成される。
【0034】
カレントミラー部27は、pチャネルトランジスタ38A,38Bを有し、これらのトランジスタは、カレントミラー回路を構成している。ゲイン切替部25及びオフセット切替部26で決定されてトランジスタ38Aを流れる電流に比例した大きさの電流が、トランジスタ38Bを流れ、リングオシレータ28に出力される。
【0035】
リングオシレータ28は、リング状に接続された奇数個のインバータを有している。これらのインバータには、カレントミラー部27から出力された電流が供給されている。リングオシレータ28は、供給される電流に応じた周波数で発振し、生成された信号を出力信号CKとして出力する。
【0036】
ゲイン切替部25は、スイッチ31A,31B,31C,31D,31Eと、nチャネルトランジスタ32A,32B,32C,32D,32Eとを有している。スイッチ31A〜31Eは、ゲイン制御信号RGの各ビットRG[4]〜RG[0]に従ってそれぞれ動作する。
【0037】
トランジスタ32A〜32Eは、それぞれサイズが異なっている。トランジスタ32Eのゲート幅Wを1とすると、トランジスタ32D,32C,32B,32Aのゲート幅Wは、それぞれ2,4,8,16である。トランジスタ32A〜32Eの各ゲートには制御電圧VFが入力されており、これらのトランジスタのうちの1つ以上がゲイン制御信号RGの値に応じて選択される。
【0038】
このため、ゲイン切替部25は、制御電圧VFの変化に対するトランジスタ38Aを流れる電流の変化の比、すなわち、制御電圧VFの変化に対するカレントミラー部27からの出力電流の変化の比を、ゲイン制御信号RGに応じた値にする。その結果、VCOゲイン(制御電圧VFに対する出力信号CKの周波数の変化率)がゲイン制御信号RGに応じて変化する。
【0039】
オフセット切替部26は、スイッチ33A,33B,33C,33D,33Eと、nチャネルトランジスタ34A,34B,34C,34D,34E,34Fと、電流源35とを有している。スイッチ33A〜33Eは、オフセット制御信号ROの各ビットRO[4]〜RO[0]に従ってそれぞれ動作する。
【0040】
トランジスタ34A〜34Eは、それぞれサイズが異なっている。トランジスタ34Eのゲート幅Wを1とすると、トランジスタ34D,34C,34B,34Aのゲート幅Wは、それぞれ2,4,8,16である。電流源35の電流は、トランジスタ34Fに流れる。トランジスタ34A〜34Fのゲートは電流源35に接続されており、トランジスタ34A〜34Fは、それぞれ、トランジスタ34Fに対するゲート幅の比(ミラー比)に比例した電流を流すことができる。
【0041】
オフセット切替部26は、オフセット制御信号ROに従ってカレントミラー部27に接続されるトランジスタを選択し、オフセット制御信号ROに応じた電流を、トランジスタ38Aに流し、カレントミラー部27から出力させる。トランジスタ34A〜34Eのゲートには制御電圧VFが入力されていないので、VCOゲインを変えずに、出力信号CKの周波数を変化させることができる。つまり、ゲインを一定に保ったまま、周波数オフセット(VCO20へ入力される制御電圧VCを固定したときの発振周波数)をオフセット制御信号ROに従って変化させることができる。
【0042】
図3(a)は、VCO20のV−F特性のグラフであって、ゲイン制御信号RGを変えた場合について示している。図3(b)は、VCO20のV−F特性のグラフであって、オフセット制御信号ROを変えた場合について示している。図3(a),(b)において、末尾にbが付された数は2進数である。
【0043】
図3(a)のように、ゲイン制御信号RGを大きくすると、VCOゲインが大きくなり、ゲイン制御信号RGを小さくすると、VCOゲインが小さくなる。また、図3(b)のように、オフセット制御信号ROを大きくすると、VCOゲインはそのままで、周波数が上にシフトし、オフセット制御信号ROを小さくすると、VCOゲインはそのままで、周波数が下にシフトする。
【0044】
なお、リングオシレータ28のインバータは、差動タイプのインバータであってもよい。また、ゲイン切替部及びオフセット切替部をpチャネルトランジスタで構成するようにしてもよい。但し、図2のように、ゲイン切替部及びオフセット切替部をnチャネルトランジスタで構成する場合の方が、pチャネルトランジスタで構成する場合よりも回路面積を小さくすることができる。
【0045】
図4は、図1のVCOゲイン調整回路40の構成例を示すブロック図である。VCOゲイン調整回路40は、カウント部41と、メモリ44A,44Bと、ゲイン比較部45と、ゲイン制御部としてのVCO制御回路48とを備えている。カウント部41は、カウンタ42と、タイマ43とを有している。ゲイン比較部45は、減算回路46と、比較回路47とを有している。図5は、図4のVCO制御回路48がゲイン制御信号RGを求める際に用いる二分探索法についての説明図である。
【0046】
VCOゲイン調整回路40によるゲイン調整(ゲインキャリブレーション)について説明する。まず、VCO制御回路48は、ゲイン制御信号RGの初期値16を出力する。また、VCO制御回路48は、制御信号VHを“H”にし、VCO20において制御電圧VFとして2Vが与えられるようにする。カウンタ42は、タイマ43によって指定された期間内において、フィードバッククロック信号FBCLKのパルス数(サイクル数)をカウントし、得られたカウント値(すなわち、周波数)をメモリ44Aに格納させる。タイマ43は、基準クロック信号REFCLKに従って動作している。
【0047】
次に、VCO制御回路48は、制御信号VLを“H”にし、VCO20において制御電圧VFとして1Vが与えられるようにする。カウンタ42は、タイマ43によって指定された期間内において、フィードバッククロック信号FBCLKのパルス数をカウントし、得られたカウント値をメモリ44Bに格納させる。
【0048】
減算回路46は、メモリ44Aに格納された値とメモリ44Bに格納された値との差を求め、比較回路47に出力する。比較回路47は、求められた差と目標値TGとの比較を行い、その結果をVCO制御回路48に出力する。求められた差の方が目標値TGよりも大きい場合には、VCO制御回路48は、ゲイン制御信号RGを8にし、その他の場合は24にする(図5参照)。
【0049】
VCOゲイン調整回路40は、求められたゲイン制御信号RGを用いて同様の処理を行うことを、図5のように更に4回行う。その結果、目標とする値にVCOゲインが最も近くなるように、最適なゲイン制御信号RGを求めることができる。ゲイン制御信号RGは5ビットの信号であるので、上述のような処理を二分探索法により5回繰り返し、各ビット値が決められる。
【0050】
なお、目標値TG、探索の回数、ゲイン制御信号RGのビット数等は、適宜変えてもよい。
【0051】
図6は、図1のVCOオフセット調整回路50の構成例を示すブロック図である。VCOオフセット調整回路50は、カウント部51と、メモリ54と、オフセット比較部としての比較回路55と、オフセット制御部としてのVCO制御回路58とを備えている。VCOオフセット調整回路50も、図5のような二分探索法を用いる。
【0052】
VCOオフセット調整回路50によるオフセット調整について説明する。まず、VCO制御回路58は、オフセット制御信号ROの初期値16を出力する。また、VCO制御回路58は、制御信号VOを“H”にし、VCO20において制御電圧VFとして1.65Vが与えられるようにする。カウンタ52は、タイマ53によって指定された期間内において、フィードバッククロック信号FBCLKのパルス数(サイクル数)をカウントし、得られたカウント値(すなわち、周波数)をメモリ54に格納させる。タイマ53は、基準クロック信号REFCLKに従って動作している。
【0053】
比較回路55は、メモリ54に格納された値と目標値TOとの比較を行い、その結果をVCO制御回路58に出力する。メモリ54に格納された値の方が目標値TOよりも大きい場合には、VCO制御回路58は、オフセット制御信号ROを8にし、その他の場合は24にする(図5参照)。
【0054】
オフセット調整回路50は、求められたオフセット制御信号ROを用いて同様の処理を行うことを、図5のように更に4回行う。その結果、目標とする値に周波数オフセットが最も近くなるように、最適なオフセット制御信号ROを求めることができる。オフセット制御信号ROは5ビットの信号であるので、上述のような処理を二分探索法により5回繰り返し、各ビット値が決められる。
【0055】
このように、オフセット調整時に、電源電圧の半分である1.65VをVCO20の制御電圧VFとして与えるので、チャージポンプ回路14を最適なDCポイントで動作させることができる。
【0056】
なお、目標値TO、探索の回数、オフセット制御信号ROのビット数等は、適宜変えてもよい。
【0057】
図7は、最適なゲイン制御信号RG及びオフセット制御信号ROが与えられた場合における図1のVCO20のV−F特性を示すグラフである。プロセスが最良の場合(BEST)、プロセスが標準的な場合(TYP)、プロセスが最悪の場合(WORST)のいずれにおいても、V−F特性がほぼ同じである。このように、図1のPLL回路100は、VCO20のゲインだけではなく、周波数オフセットも調整することができるので、製造プロセスの影響によってトランジスタ等の特性が異なっていても、VCO20のV−F特性をほぼ完全に一定にすることができる。したがって、出力クロック信号CKOUTのジッタ値のばらつきを極小化することができる。
【0058】
図8は、図1のバッファ60の構成例を示すブロック図である。バッファ60は、インバータ62A,62Bを備えている。インバータ62A,62Bは、いずれも、出力電流をコントロール可能なように構成されている。このため、バッファ60は、負荷容量を駆動するための充電電流、及び放電電流の量を制御することができ、製造プロセスがばらついても、駆動能力を一定に保ち、出力クロック信号CKOUTの波形の傾きを一定に保つことが可能である。このとき、負荷容量がプロセスによらず一定であり、VCO20の出力波形もプロセスによらず一定であることが望ましい。
【0059】
図9は、図8のインバータ62Bの構成例を示す回路図である。インバータ62Aも、インバータ62Bと同様に構成されている。インバータ62Bは、pチャネルトランジスタ64,66A,66B,66C,66D,66Eと、nチャネルトランジスタ65,67A,67B,67C,67D,67Eとを有している。
【0060】
トランジスタ64,65が論理部を構成している。並列に接続されたトランジスタ66A〜66Eが1つの電流制御回路を構成し、並列に接続されたトランジスタ67A〜67Eがもう1つの電流制御回路を構成している。トランジスタ66A〜66Eのゲートには、ゲイン制御信号/RG[4]〜/RG[0]がそれぞれ与えられ、トランジスタ67A〜67Eのゲートには、ゲイン制御信号RG[4]〜RG[0]がそれぞれ与えられている。
【0061】
トランジスタ66Eのゲート幅を1とすると、トランジスタ66D,66C,66B,66Aのゲート幅は、それぞれ2,4,8,16である。また、トランジスタ67Eのゲート幅を1とすると、トランジスタ67D,67C,67B,67Aのゲート幅は、それぞれ2,4,8,16である。
【0062】
したがって、ゲイン制御信号RGによって、トランジスタ66A〜66Eが構成する電流制御回路、及びトランジスタ67A〜67Eが構成する電流制御回路のオン抵抗を制御し、トランジスタ64,65に流れる電流を制御することができる。ゲイン制御信号RGの値が大きいほど、トランジスタ64,65に流れる電流は大きくなる。
【0063】
このように、インバータ62A,62Bは、その駆動能力をゲイン制御信号RGに応じた大きさになるように制御し、出力電流の制御を行うことができる。
【0064】
また、ゲイン制御信号RGは、VCOゲイン調整回路40によってゲインキャリブレーションを行って得られた信号であるので、バッファ60は、プロセスによる影響を反映して出力電流制御を行うことが可能であり、出力クロック信号CKOUTの波形の傾きをほぼ一定にすることが可能となる。したがって、VCO20のゲインのみを調整する場合に比べて、ジッタ値のばらつきを更に小さくすることができる。
【0065】
また、バッファ60は、VCOゲイン調整回路40によって得られた信号を用いて出力電流制御を行うので、出力電流制御のための信号を生成する回路を独立して備える必要がなく、回路面積を抑えることができる。
【0066】
また、バッファ60においては、pチャネルトランジスタ66A〜66Eで構成された電流制御回路と、nチャネルトランジスタ67A〜67Eで構成された電流制御回路との双方が制御される。このため、出力クロック信号CKOUTの立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジの双方の傾きを制御することができる。
【0067】
なお、電流制御を、nチャネルトランジスタ67A〜67Eのみによって行うようにしてもよいし、pチャネルトランジスタ66A〜66Eのみによって行うようにしてもよい。nチャネルトランジスタ67A〜67Eのみによって行う場合には、出力クロック信号CKOUTの立ち下りエッジの傾きのみを調整可能である。pチャネルトランジスタ66A〜66Eのみによって行う場合には、出力クロック信号CKOUTの立ち上がりエッジの傾きのみを調整可能である。
【0068】
また、バッファは、差動タイプのバッファであってもよい。この場合には、VCOも差動タイプのVCOである必要がある。
【0069】
図10は、本実施形態に係るPLL回路の構成の他の例を示すブロック図である。図10のPLL回路は、図1のPLL回路において、VCOゲイン調整回路40及びVCOオフセット調整回路50に代えて、VCOゲイン調整回路240及びVCOオフセット調整回路250をそれぞれ備えるようにしたものである。
【0070】
VCOゲイン調整回路240は、選択信号GCAL_OFFが“H”である場合には、ゲイン調整を行わない。選択信号GCAL_OFFが“L”である場合には、VCOゲイン調整回路240は、図4のVCOゲイン調整回路40と同様の動作を行う。VCOオフセット調整回路250は、選択信号OCAL_OFFが“H”である場合には、オフセット調整を行わない。選択信号OCAL_OFFが“L”である場合には、VCOオフセット調整回路250は、図6のVCOオフセット調整回路50と同様の動作を行う。
【0071】
図10のPLL回路によると、ゲイン調整及びオフセット調整を行うか否かを選択することができ、この回路を用いたシステムの柔軟性が増す。
【0072】
図11は、本実施形態に係るPLL回路の構成の更に他の例を示すブロック図である。図11のPLL回路は、図10のPLL回路において、レジスタ参照部272と、レジスタ274とを更に備えたものである。
【0073】
レジスタ274は、外部から読み書きが可能であって、ここでは、CPU(図示せず)から書き込みが行われるようになっているとする。レジスタ参照部272は、レジスタ274の所定の2ビットからそれぞれの値を読み出し、読み出された2つの値をそれぞれ選択信号GCAL_OFF,OCAL_OFFとして出力する。
【0074】
図11のPLL回路によると、CPUで実行されるソフトウェアにおいてレジスタ274の内容を書き換えることによって、ゲイン調整及びオフセット調整を行うか否かを選択することができる。
【0075】
図12は、図10のPLL回路の構成の他の例を示すブロック図である。図12のPLL回路は、図10のPLL回路において、選択信号GCAL_OFFの電位を接地電位(“L”)に、選択信号OCAL_OFFの電位を電源電位(“H”)に固定したものである。選択信号GCAL_OFF及びOCAL_OFFとしてに与える電位は、PLL回路に必要とされる調整機能に応じて、“H”,“L”のいずれかに固定する。
【0076】
図12のPLL回路によると、同一の回路を、調整機能に関しては、ゲイン調整機能のみあり、オフセット調整機能のみあり、ゲイン及びオフセット調整機能あり、ゲイン及びオフセット調整機能なしのいずれの回路としても提供することができる。
【0077】
(第2の実施形態)
図13は、第2の実施形態に係る信号送受信システムの構成を示すブロック図である。図13の信号送受信システムは、送信部600と、受信部700とを備えている。
【0078】
送信部600は、PLL回路100と、バッファ602と、パラレルシリアル変換回路604と、ドライバ回路606とを備えている。PLL回路100は、図1を参照して説明した回路である。PLL回路100は、基準クロック信号REFCLKを受けて、パラレルシリアル変換用の出力クロック信号CKOUTを生成し、バッファ602に出力する。また、PLL回路100は、VCO20のゲイン調整の結果として得られたゲイン制御信号RGを、バンド幅制御信号として出力している。
【0079】
バッファ602は、図1のバッファ60と同様のものであり、PLL回路100とパラレルシリアル変換回路604との間の配線を駆動するために挿入されている。バッファ602は、出力クロック信号CKOUTをそのままパラレルシリアル変換回路604に出力する。パラレルシリアル変換回路604は、デジタルブロックからの10ビット150MHzのパラレル信号DINを受けて、1.5Gbpsの差動シリアル信号INP,INMに変換し、出力する。ドライバ回路606は、パラレルシリアル変換回路604から出力された差動シリアル信号INP,INMを他のチップへ送信するために、差動信号TD,NTDでケーブルを駆動する。
【0080】
受信部700は、PLL回路150と、レシーバ回路702と、クロックデータリカバリ回路(CDR)704と、シリアルパラレル変換回路706とを備えている。PLL回路150は、PLL回路100とほぼ同様のものである。但し、PLL回路150のVCOは、そのゲインをPLL回路100から出力されたゲイン制御信号RGによって制御されるようになっており、PLL回路150は、VCOゲイン調整回路40及びVCOオフセット調整回路50を備えていない。PLL回路150は、基準クロック信号REFCLKから出力クロック信号CKOUT2を生成し、出力する。
【0081】
レシーバ回路702は、ケーブルを介して他のチップから送られてくる1.5Gbpsの差動シリアル信号RD,NRDを受けて増幅し、出力する。CDR704は、PLL回路150から出力されたクロック信号CKOUT2を用いて、レシーバ回路702から出力された差動シリアル信号OUTP,OUTMからクロック信号とデータとを再生し、出力する。シリアルパラレル変換回路706は、CDR704から出力された1.5Gbpsのシリアル信号を10ビット150MHzのパラレル信号DOUTに変換し、デジタルブロックに出力する。
【0082】
図13の信号送受信システムは、PLL回路100でVCOゲインを調整して得られたゲイン制御信号RGによって、バッファ602、ドライバ回路606、PLL回路150、及びレシーバ回路702の駆動能力を制御する。このため、バッファ602、ドライバ回路606、及びレシーバ回路702の出力信号の波形の傾き、並びにPLL回路150のVCOゲインを、プロセスによらずほぼ一定に保つことが可能となる。
【0083】
なお、PLL回路150に代えてDLL(Delay Locked Loop)回路を用いるようにしてもよい。この場合には、VCOではなく、DLLが有するVCDL(Voltage Controlled Delay Line)の遅延特性を、ゲイン制御信号RGによって制御すればよい。
【0084】
図14は、図13のドライバ回路606の構成例を示す回路図である。ドライバ回路606は、nチャネルトランジスタを用いた差動入出力オープンドレイン型回路であって、nチャネルトランジスタ631,632,634A,634B,634C,634D,634E,634Fと、スイッチ633A,633B,633C,633D,633Eと、電流源635と、抵抗636,637とを有している。
【0085】
トランジスタ631,632は、差動シリアル信号INP,INMに従って交互にオン、オフを繰り返す。トランジスタ631がオンのときは抵抗636に、トランジスタ632がオンのときは抵抗637に電流が流れ、抵抗636,637に生じる電圧に従って、差動信号TD,NTDが出力される。
【0086】
スイッチ633A〜633E、トランジスタ634A〜634F、及び電流源635は、定電流回路を構成している。スイッチ633A〜633Eは、ゲイン制御信号RGの各ビットRG[4]〜RG[0]に従ってそれぞれ動作する。
【0087】
トランジスタ634A〜634Eは、それぞれサイズが異なっている。トランジスタ634Eのゲート幅Wを1とすると、トランジスタ634D,634C,634B,634Aのゲート幅Wは、それぞれ2,4,8,16である。トランジスタ634A〜634Fのゲートは電流源635に接続されており、トランジスタ634A〜634Eは、それぞれ、トランジスタ634Fに対するゲート幅の比に比例した電流を流すことができる。
【0088】
このため、ゲイン制御信号RGの値を設定することにより、トランジスタ631,632に接続されるトランジスタを選択し、トランジスタ631,632を流れる電流量を変えることができる。したがって、差動信号TD,NTDの波形の傾きを制御することができる。
【0089】
通常のドライバ回路においては、差動信号TD,NTDの波形の傾きは、プロセスが最良のときは急峻であるが、プロセスが最悪のときは緩やかである。ドライバ回路606は、PLL回路100でVCOゲインを調整して得られたゲイン制御信号RGによって、差動信号TD,NTDの波形の傾きを制御する。このため、プロセスの影響を反映することができ、差動信号TD,NTDの波形の傾きをプロセスによらずほぼ一定に保つことが可能となる。
【0090】
なお、ドライバ回路606を、pチャネルトランジスタを用いて構成してもよい。この場合には、定電流回路もpチャネルトランジスタで構成し、電流制御を行う。
【0091】
図15は、図13のレシーバ回路702の構成例を示す回路図である。レシーバ回路702は、nチャネルトランジスタを用いた差動入出力オープンドレイン型回路であって、nチャネルトランジスタ731,732,734A,734B,734C,734D,734E,734Fと、スイッチ733A,733B,733C,733D,733Eと、電流源735と、抵抗736,737とを有している。
【0092】
トランジスタ731,732は、差動信号RD,NRDに従って交互にオン、オフを繰り返す。トランジスタ731がオンのときは抵抗736に、トランジスタ732がオンのときは抵抗737に電流が流れ、抵抗736,737に生じる電圧に従って、差動信号OUTP,OUTMが出力される。
【0093】
スイッチ733A〜733E、トランジスタ734A〜734F、及び電流源735は、定電流回路を構成している。スイッチ733A〜733Eは、ゲイン制御信号RGの各ビットRG[4]〜RG[0]に従ってそれぞれ動作する。
【0094】
トランジスタ734A〜734Eは、それぞれサイズが異なっている。トランジスタ734Eのゲート幅Wを1とすると、トランジスタ734D,734C,734B,734Aのゲート幅Wは、それぞれ2,4,8,16である。トランジスタ734A〜734Fのゲートは電流源735に接続されており、トランジスタ734A〜734Eは、それぞれ、トランジスタ734Fに対するゲート幅の比に比例した電流を流すことができる。
【0095】
このため、ゲイン制御信号RGの値を設定することにより、トランジスタ731,732に接続されるトランジスタを選択し、トランジスタ731,732を流れる電流量を変えることができる。したがって、差動信号OUTP,OUTMの波形の傾きを制御することができる。
【0096】
レシーバ回路702は、PLL回路100で得られたゲイン制御信号RGによって、差動信号OUTP,OUTMの波形の傾きを制御する。このため、プロセスの影響を反映することができ、差動信号OUTP,OUTMの波形の傾きをプロセスによらずほぼ一定に保つことが可能となる。
【0097】
なお、レシーバ回路702を、pチャネルトランジスタを用いて構成してもよい。この場合には、定電流回路もpチャネルトランジスタで構成し、電流制御を行う。
【0098】
図16は、図13の信号送受信システムにおけるドライバ回路の変形例の構成を示す回路図である。図16のドライバ回路は、LVDS(low voltage differential signaling)用の回路であって、nチャネルトランジスタ831,832,834A,834B,834C,834D,834E,834F,834Gと、pチャネルトランジスタ836,837,839A,839B,839C,839D,839E,839Fと、スイッチ833A,833B,833C,833D,833E,838A,838B,838C,838D,838Eと、電流源835とを有している。
【0099】
トランジスタ831,832,834A〜834Fは、図14のトランジスタ631,632,634A〜634Eとそれぞれ同じものであり、スイッチ833A〜833E及び電流源835は、図14のスイッチ633A〜633E及び電流源635とそれぞれ同じものであり、これらは図14と同様の回路を構成している。このため、これらのnチャネルトランジスタで構成された回路についての説明は省略する。
【0100】
また、トランジスタ836,837,839A〜839F、及びスイッチ838A〜838Eは、このnチャネルトランジスタで構成された回路とほぼ対称の回路を構成している。トランジスタ839Fには、電流源835及びトランジスタ834Gと同じ大きさの電流が流れるようになっている。
【0101】
トランジスタ839A〜839F、及びスイッチ838A〜838Eは、定電流回路を構成している。スイッチ838A〜838Eは、ゲイン制御信号RGの各ビットRG[4]〜RG[0]の反転信号に従ってそれぞれ動作する。トランジスタ839A〜839Eは、それぞれサイズが異なっている。トランジスタ839Eのゲート幅Wを1とすると、トランジスタ839D,839C,839B,839Aのゲート幅Wは、それぞれ2,4,8,16である。
【0102】
このように、図16のドライバ回路によっても、差動信号TD,NTDの波形の傾きをプロセスによらずほぼ一定に保つことが可能となる。図16のドライバ回路は、pチャネルトランジスタとnチャネルトランジスタとで電流制御を行っているので、特に小振幅の信号を出力する場合に適している。
【0103】
以上では、バンド幅制御信号としてゲイン制御信号RGを用いる場合について説明したが、送信部のPLL回路がバンド幅制御信号としてチャージポンプ電流制御信号を求めるようにしてもよい。この場合には、求められたチャージポンプ電流制御信号に従って、送信部のバッファ602及びドライバ回路606、並びに受信部のPLL回路150及びレシーバ回路702の駆動能力を制御する。
【0104】
以上のように、本実施形態では、信号送受信システム内の送信部のPLL回路について、ゲイン制御信号RG等のバンド幅制御信号を求め、この信号を信号送受信システム内のドライバ回路、レシーバ回路、バッファ、及び受信部のPLL回路の駆動能力制御に用いる。このため、ドライバ回路等のそれぞれのために制御信号を生成する回路が必要ではなく、回路面積を抑えることができ、かつ、ドライバ回路等の出力波形へのプロセスばらつきによる影響を抑えることができる。
【0105】
なお、バッファ602を、パラレルシリアル変換回路604とドライバ回路606との間、レシーバ回路702とCDR704との間、又はCDR704とシリアルパラレル変換回路706との間に備えるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0106】
以上説明したように、本発明は、PLL回路の出力クロック信号のジッタ値のプロセスによるばらつきを抑えることができるので、PLL回路及びこれを用いた信号送受信システム等について有用である。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】第1の実施形態に係るPLL回路の構成を示すブロック図である。
【図2】図1のVCOの構成例を示す回路図である。
【図3】(a)は、VCOのV−F特性のグラフであって、ゲイン制御信号RGを変えた場合について示している。(b)は、VCOのV−F特性のグラフであって、オフセット制御信号ROを変えた場合について示している。
【図4】図1のVCOゲイン調整回路の構成例を示すブロック図である。
【図5】図4のVCO制御回路がゲイン制御信号RGを求める際に用いる二分探索法についての説明図である。
【図6】図1のVCOオフセット調整回路の構成例を示すブロック図である。
【図7】最適なゲイン制御信号RG及びオフセット制御信号ROが与えられた場合における図1のVCOのV−F特性を示すグラフである。
【図8】図1のバッファの構成例を示すブロック図である。
【図9】図8のインバータの構成例を示す回路図である。
【図10】本実施形態に係るPLL回路の構成の他の例を示すブロック図である。
【図11】本実施形態に係るPLL回路の構成の更に他の例を示すブロック図である。
【図12】図10のPLL回路の構成の他の例を示すブロック図である。
【図13】第2の実施形態に係る信号送受信システムの構成を示すブロック図である。
【図14】図13のドライバ回路の構成例を示す回路図である。
【図15】図13のレシーバ回路の構成例を示す回路図である。
【図16】図13の信号送受信システムにおけるドライバ回路の変形例の構成を示す回路図である。
【図17】VCOゲイン調整機能を有するPLL回路の構成例を示す回路図である。
【図18】(a)は、VCOゲイン調整を行わない場合における図17のVCOのV−F特性を示すグラフである。(b)は、VCOゲイン調整を行う場合における図17のVCOのV−F特性を示すグラフである。
【符号の説明】
【0108】
12 位相周波数比較回路
14 チャージポンプ回路
16 ローパスフィルタ
18 分周回路
20 電圧制御発振回路
24 電圧電流変換部
25 ゲイン切替部
26 オフセット切替部
28 リングオシレータ
40,240 VCOゲイン調整回路
41,51 カウント部
45 ゲイン比較部
48 VCO制御回路(ゲイン制御部)
50,250 VCOオフセット調整回路
55 比較回路(オフセット比較部)
58 VCO制御回路(オフセット制御部)
60,602 バッファ
100,150 PLL回路
272 レジスタ参照部
274 レジスタ
600 送信部
606 ドライバ回路
700 受信部
702 レシーバ回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準クロック信号と出力クロック信号に基づくフィードバッククロック信号との間の位相差を検出する位相周波数比較回路と、
前記位相差に応じて電流を出力するチャージポンプ回路と、
前記チャージポンプ回路の出力を平滑化し、制御電圧として出力するローパスフィルタと、
前記制御電圧、ゲイン制御信号、及びオフセット制御信号に応じた周波数の信号を生成し、前記出力クロック信号として出力する電圧制御発振回路と、
前記制御電圧の変化に対する前記出力クロック信号の周波数の変化の比が目標値になるように、前記ゲイン制御信号を求めるゲイン調整回路と、
前記制御電圧が所定の値である時における前記出力クロック信号の周波数が目標値になるように、前記オフセット制御信号を求めるオフセット調整回路とを備える
ことを特徴とするPLL(phase locked loop)回路。
【請求項2】
請求項1に記載のPLL回路において、
前記ゲイン調整回路は、
所定の時間内における前記フィードバッククロック信号のパルス数を数える第1のカウント部と、
前記電圧制御発振回路に前記制御電圧として第1の電圧が与えられた場合に前記第1のカウント部で得られたカウント値と、前記電圧制御発振回路に前記制御電圧として第2の電圧が与えられた場合に前記第1のカウント部で得られたカウント値との差を求め、前記差と目標値とを比較し、その比較結果を出力するゲイン比較部と、
前記電圧制御発振回路に前記制御電圧として前記第1及び第2の電圧が順次与えられるように制御し、前記ゲイン比較部での比較結果に基づいて前記ゲイン制御信号を求めるゲイン制御部とを有するものであり、
前記オフセット調整回路は、
所定の時間内における前記フィードバッククロック信号のパルス数を数える第2のカウント部と、
前記電圧制御発振回路に前記制御電圧として第3の電圧が与えられた場合に前記第2のカウント部で得られたカウント値と目標値とを比較し、その比較結果を出力するオフセット比較部と、
前記電圧制御発振回路に前記制御電圧として前記第3の電圧が与えられるように制御し、前記オフセット比較部での比較結果に基づいて前記オフセット制御信号を求めるオフセット制御部とを有するものである
ことを特徴とするPLL回路。
【請求項3】
請求項2に記載のPLL回路において、
前記第3の電圧は、当該PLL回路に供給される電源電圧の2分の1である
ことを特徴とするPLL回路。
【請求項4】
請求項1に記載のPLL回路において、
前記電圧制御発振回路は、
前記制御電圧に応じた電流を出力する電圧電流変換部と、
前記電圧電流変換部の出力電流に応じた周波数で発振し、前記出力クロック信号を生成するリングオシレータとを有するものであり、
前記電圧電流変換部は、
前記制御電圧の変化に対する前記出力電流の変化の比を、前記ゲイン制御信号に応じた値にするゲイン切替部と、
前記出力電流の大きさを、前記オフセット制御信号に従って変化させるオフセット切替部とを有するものである
ことを特徴とするPLL回路。
【請求項5】
請求項4に記載のPLL回路において、
前記ゲイン切替部は、
前記ゲイン制御信号に従って制御されるスイッチとnチャネルトランジスタとが直列に接続された回路を並列に複数有するものであり、
前記オフセット切替部は、
前記オフセット制御信号に従って制御されるスイッチとnチャネルトランジスタとが直列に接続された回路を並列に複数有し、前記オフセット制御信号に応じた電流が流れるものである
ことを特徴とするPLL回路。
【請求項6】
請求項1に記載のPLL回路において、
前記ゲイン調整回路は、
第1の選択信号に従って、前記ゲイン制御信号を求めるか否かを選択するものであり、
前記オフセット調整回路は、
第2の選択信号に従って、前記オフセット制御信号を求めるか否かを選択するものである
ことを特徴とするPLL回路。
【請求項7】
請求項6に記載のPLL回路において、
外部より読み書き可能なレジスタと、
前記レジスタの値に基づいて前記第2の選択信号を生成するレジスタ参照部とを更に備える
ことを特徴とするPLL回路。
【請求項8】
請求項7に記載のPLL回路において、
前記レジスタ参照部は、
前記レジスタの値に基づいて前記第1の選択信号を更に生成する
ことを特徴とするPLL回路。
【請求項9】
請求項6に記載のPLL回路において、
前記第2の選択信号は、所定の論理レベルに固定されている
ことを特徴とするPLL回路。
【請求項10】
請求項9に記載のPLL回路において、
前記第1の選択信号は、所定の論理レベルに固定されている
ことを特徴とするPLL回路。
【請求項11】
基準クロック信号と出力クロック信号に基づくフィードバッククロック信号との間の位相差を検出する位相周波数比較回路と、
前記位相差に応じて電流を出力するチャージポンプ回路と、
前記チャージポンプ回路の出力を平滑化し、制御電圧として出力するローパスフィルタと、
前記制御電圧及びゲイン制御信号に応じた周波数の信号を生成し、出力する電圧制御発振回路と、
その駆動能力を、前記ゲイン制御信号に応じた大きさになるように制御して、前記電圧制御発振回路の出力信号を前記出力クロック信号として出力するバッファと、
前記制御電圧の変化に対する前記出力クロック信号の周波数の変化の比が目標値になるように、前記ゲイン制御信号を求めるゲイン調整回路とを備える
ことを特徴とするPLL回路。
【請求項12】
請求項11に記載のPLL回路において、
前記ゲイン調整回路は、
所定の時間内における前記フィードバッククロック信号のパルス数を数えるカウント部と、
前記電圧制御発振回路に前記制御電圧として第1の電圧が与えられた場合に前記カウント部で得られたカウント値と、前記電圧制御発振回路に前記制御電圧として第2の電圧が与えられた場合に前記カウント部で得られたカウント値との差を求め、前記差と目標値とを比較し、その比較結果を出力するゲイン比較部と、
前記電圧制御発振回路に前記制御電圧として前記第1及び第2の電圧が順次与えられるように制御し、前記ゲイン比較部での比較結果に基づいて前記ゲイン制御信号を求めるゲイン制御部とを有するものである
ことを特徴とするPLL回路。
【請求項13】
請求項11に記載のPLL回路において、
前記バッファは、
それぞれが前記ゲイン制御信号に従って制御され、並列に接続された複数のnチャネルトランジスタを有する第1の電流制御回路と、
それぞれが前記ゲイン制御信号に従って制御され、並列に接続された複数のpチャネルトランジスタを有する第2の電流制御回路とを備える
ことを特徴とするPLL回路。
【請求項14】
信号を送信する送信部と、信号を受信する受信部とを備える信号送受信システムであって、
バンド幅制御信号によってそのバンド幅を制御するように構成されており、前記バンド幅が所定値となるように、前記バンド幅制御信号を求めて出力するPLL回路と、
前記バンド幅制御信号によって制御される他の回路とを備える
ことを特徴とする信号送受信システム。
【請求項15】
請求項14に記載の信号送受信システムにおいて、
前記PLL回路は、
制御電圧及びゲイン制御信号に応じた周波数の信号を生成し、出力クロック信号として出力する電圧制御発振回路と、
前記制御電圧の変化に対する前記出力クロック信号の周波数の変化の比が目標値になるように、前記バンド幅制御信号として前記ゲイン制御信号を求めるゲイン調整回路とを有するものである
ことを特徴とする信号送受信システム。
【請求項16】
請求項15に記載の信号送受信システムにおいて、
前記ゲイン調整回路は、
所定の時間内における前記出力クロック信号のパルス数を数える第1のカウント部と、
前記電圧制御発振回路に前記制御電圧として第1の電圧が与えられた場合に前記第1のカウント部で得られたカウント値と、前記電圧制御発振回路に前記制御電圧として第2の電圧が与えられた場合に前記第1のカウント部で得られたカウント値との差を求め、前記差と前記目標値とを比較し、その比較結果を出力するゲイン比較部と、
前記電圧制御発振回路に前記制御電圧として前記第1及び第2の電圧が順次与えられるように制御し、前記ゲイン比較部での比較結果に基づいて前記ゲイン制御信号を求めるゲイン制御部とを有するものである
ことを特徴とする信号送受信システム。
【請求項17】
請求項15に記載の信号送受信システムにおいて、
前記他の回路は、
PLL回路又はDLL(Delay Locked Loop)回路である
ことを特徴とする信号送受信システム。
【請求項18】
請求項15に記載の信号送受信システムにおいて、
前記他の回路は、
信号を送信するドライバ回路であり、
前記ドライバ回路は、
定電流源を有する第1の定電流回路を備え、
前記第1の定電流回路は、
前記ゲイン制御信号に応じた電流が流れるように構成されている
ことを特徴とする信号送受信システム。
【請求項19】
請求項18に記載の信号送受信システムにおいて、
前記ドライバ回路は、
前記ゲイン制御信号に従って制御されるスイッチとpチャネルトランジスタとが直列に接続された回路を並列に複数有し、前記ゲイン制御信号に応じた電流が流れる第2の定電流回路を更に備え、
前記第1の定電流回路は、
前記ゲイン制御信号に従って制御されるスイッチとnチャネルトランジスタとが直列に接続された回路を並列に複数有する
ことを特徴とする信号送受信システム。
【請求項20】
請求項15に記載の信号送受信システムにおいて、
前記他の回路は、
信号を受信するレシーバ回路であり、
前記レシーバ回路は、
定電流源を有する定電流回路を備え、
前記定電流回路は、
前記ゲイン制御信号に応じた電流が流れるように構成されている
ことを特徴とする信号送受信システム。
【請求項21】
請求項15に記載の信号送受信システムにおいて、
前記他の回路は、
その駆動能力を、前記ゲイン制御信号に応じた大きさになるように制御して、前記出力クロック信号を出力するバッファであり、
前記バッファは、
それぞれが前記ゲイン制御信号に従って制御され、並列に接続された複数のnチャネルトランジスタを有する第1の電流制御回路と、
それぞれが前記ゲイン制御信号に従って制御され、並列に接続された複数のpチャネルトランジスタを有する第2の電流制御回路とを備える
ことを特徴とする信号送受信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2008−124687(P2008−124687A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−304853(P2006−304853)
【出願日】平成18年11月10日(2006.11.10)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】