説明

Si(1−v−w−x)CwAlxNv基材の製造方法、エピタキシャルウエハの製造方法、Si(1−v−w−x)CwAlxNv基材およびエピタキシャルウエハ

【課題】高い結晶性を維持し、かつ低いコストを維持するSi(1-v-w-x)wAlxv基材、エピタキシャルウエハ、およびそれらの製造方法を提供する。
【解決手段】本発明のSi(1-v-w-x)wAlxv基材の製造方法は、異種基板11を準備する工程と、異種基板11上に、主表面を有するSi(1-v-w-x)wAlxv層を成長させる工程とを備えている。Si(1-v-w-x)wAlxv層における主表面に位置する組成比x+vは、0<x+v<1である。Si(1-v-w-x)wAlxv層において、異種基板11との界面から主表面に向けて組成比x+vが単調増加または単調減少する。Si(1-v-w-x)wAlxv層において、異種基板11との界面の組成比x+vは、主表面の組成比x+vよりも異種基板11の材料に近い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Si(1-v-w-x)wAlxv基材の製造方法、エピタキシャルウエハの製造方法、Si(1-v-w-x)wAlxv基材およびエピタキシャルウエハに関するものである。
【背景技術】
【0002】
6.2eVのエネルギーバンドギャップ、約3.3WK-1cm-1の熱伝導率および高い電気抵抗を有するAlN(窒化アルミニウム)結晶などのAl(1-y-z)GayInzN(0≦y≦1、0≦z≦1、0≦y+z≦1)結晶は、短波長の光デバイス、パワー電子デバイスなどの半導体デバイス用の材料として用いられている。このような結晶は、従来から、気相成長法などで下地基板上に成長されることにより得ている。
【0003】
このような材料を成長させるために用いられる下地基板として、Si(1-v-w-x)wAlxv基材が注目されている。このようなSi(1-v-w-x)wAlxv基材の製造方法として、たとえば米国特許第4382837号明細書(特許文献1)、米国特許第6086672号明細書(特許文献2)および特表2005−506695号公報(特許文献3)が挙げられる。
【0004】
上記特許文献1には、1900℃〜2020℃で原料を加熱して昇華させることにより、Al23(サファイア)上に(SiC)(1-x)(AlN)x結晶を製造していることが開示されている。また上記特許文献2には、1810℃〜2492℃で原料を加熱して原料を加熱することにより、SiC(炭化珪素)上に1700℃〜2488℃で(SiC)(1-x)(AlN)x結晶を成長することが開示されている。また上記特許文献3には、原料ガスの温度を550℃〜750℃にして、MBE(Molecular Beam Epitaxy:分子線エピタキシ)法により、Si(シリコン)上に(SiC)(1-x)(AlN)x結晶を成長することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第4382837号明細書
【特許文献2】米国特許第6086672号明細書
【特許文献3】特表2005−506695号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記特許文献1〜3では、異種基板上に(SiC)(1-x)(AlN)x結晶を成長している。異種基板および(SiC)(1-x)(AlN)x結晶の組成が異なっているので、異種基板および(SiC)(1-x)(AlN)x結晶の格子定数および熱膨張率が異なっている。このため、(SiC)(1-x)(AlN)x結晶の結晶性が悪いという問題があった。
【0007】
また、上記特許文献1のSiC基板は、サファイア基板およびSi基板よりも(SiC)(1-x)(AlN)x結晶との格子定数および熱膨張率の差が小さい。しかし、SiC基板は、サファイア基板およびSi基板よりも高価である。このため、(SiC)(1-x)(AlN)x結晶を製造するためにコストを要するという問題がある。
【0008】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、高い結晶性を維持し、かつ低いコストを維持するSi(1-v-w-x)wAlxv基材の製造方法、エピタキシャルウエハの製造方法、Si(1-v-w-x)wAlxv基材およびエピタキシャルウエハを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のSi(1-v-w-x)wAlxv基材の製造方法は、以下の工程を備えている。まず、異種基板が準備される。そして、異種基板上に、主表面を有するSi(1-v-w-x)wAlxv層(0≦v≦1、0≦w≦1、0≦x≦1、0≦v+w+x≦1)が成長される。Si(1-v-w-x)wAlxv層における主表面に位置する組成比x+vは、0<x+v<1である。Si(1-v-w-x)wAlxv層において、異種基板との界面から主表面に向けて組成比x+vが単調増加または単調減少している。Si(1-v-w-x)wAlxv層において、異種基板との界面の組成比x+vは、主表面の組成比x+vよりも異種基板の材料に近い。
【0010】
本発明のSi(1-v-w-x)wAlxv基材の製造方法によれば、主表面に位置するSi(1-v-w-x)wAlxv層と、異種基板との間に、これらの間の組成比x+vのSi(1-v-w-x)wAlxv結晶を成長している。これらの間の組成比x+vのSi(1-v-w-x)wAlxv結晶と異種基板との格子定数の差および熱膨張率の差と、これらの間の組成比x+vのSi(1-v-w-x)wAlxv結晶と主表面に位置するSi(1-v-w-x)wAlxv結晶との格子定数の差および熱膨張率の差との両方が、主表面に位置するSi(1-v-w-x)wAlxv層と異種基板との格子定数の差および熱膨張率の差よりも小さい。このため、主表面に位置するSi(1-v-w-x)wAlxv層と異種基板との格子不整合性および熱膨張率の差を緩和できる。したがって、Si(1-v-w-x)wAlxv層のうち主表面に位置する組成比x+v、つまり製造することを目的とする組成比x+vのSi(1-v-w-x)wAlxv結晶の結晶性を向上することができる。
【0011】
また、これらの間の組成比x+vのSi(1-v-w-x)wAlxv結晶の厚みを大きくせずに、Si(1-v-w-x)wAlxv層のうち主表面に位置する組成比x+vのSi(1-v-w-x)wAlxv結晶の結晶性を向上できる。このため、これらの間の組成比x+vのSi(1-v-w-x)wAlxv結晶を下地基板として製造する必要がない。このため、製造することを目的とするSi(1-v-w-x)wAlxv結晶を製造するために要するコストを低減できる。
【0012】
以上より、同じ下地基板を用いた場合には、製造することを目的とする組成比x+vのSi(1-v-w-x)wAlxv結晶の結晶性を向上できる。また所望の結晶性のSi(1-v-w-x)wAlxv結晶を備えたSi(1-v-w-x)wAlxv基材を製造する場合には、コストを低減することができる。したがって、高い結晶性と、低いコストとを両立したSi(1-w-x)w(AlN)x基材を製造することができる。
【0013】
上記Si(1-v-w-x)wAlxv基材の製造方法において好ましくは、成長させる工程後に、異種基板を除去する工程をさらに備えている。
【0014】
これにより、異種基板を含まず、かつ高い結晶性と低いコストとを両立したSi(1-v-w-x)wAlxv層を製造することができる。
【0015】
上記Si(1-v-w-x)wAlxv基材の製造方法において好ましくは、複数の層を含むSi(1-v-w-x)wAlxv層を成長させる。
【0016】
複数の層において、異種基板と近い位置の層の組成比x+vから主表面に位置する層の組成比x+vまで順に高く、または低くなっている。このため、それぞれの層を形成するための原料を変更することで、このような複数の層を含むSi(1-v-w-x)wAlxv層を成長することができる。したがって、高い結晶性と低いコストとを両立したSi(1-v-w-x)wAlxv層を容易に製造することができる。
【0017】
上記Si(1-v-w-x)wAlxv基材の製造方法において好ましくは、成長させる工程では、パルスレーザー堆積法(Pulsed Laser Deposition:PLD)によりSi(1-v-w-x)wAlxv層を成長させる。
【0018】
これにより、Si(1-v-w-x)wAlxv層の原料にレーザを照射してプラズマを発生させて、このプラズマを異種基板上に供給することができる。つまり、非平衡状態でSi(1-v-w-x)wAlxv層を成長させることができる。この成長条件は平衡状態のような安定な状態でないので、Siは、C(炭素)およびN(窒素)のいずれとも結合が可能であり、Al(アルミニウム)はCおよびNのいずれとも結合が可能である。このため、Si、C、AlおよびNの4元素が混晶したSi(1-v-w-x)wAlxv層を成長することができる。
【0019】
本発明のエピタキシャルウエハの製造方法は、上記いずれかに記載のSi(1-v-w-x)wAlxv基材の製造方法によりSi(1-v-w-x)wAlxv基材を製造する工程と、Si(1-v-w-x)wAlxv層上にAl(1-y-z)GayInzN層(0≦y≦1、0≦z≦1、0≦y+z≦1)を成長させる工程とを備えている。
【0020】
本発明のエピタキシャルウエハの製造方法によれば、高い結晶性のSi(1-v-w-x)wAlxv層を製造することができる。このため、このSi(1-v-w-x)wAlxv層上に高い結晶性のAl(1-y-z)GayInzN層を成長することができる。また、Al(1-y-z)GayInzN層の格子整合性および熱膨張率は、Si(1-v-w-x)wAlxv層の格子整合性および熱膨張率との差が小さいので、Al(1-y-z)GayInzN層の結晶性を向上することができる。また、Si(1-v-w-x)wAlxv層を製造するために要するコストが低いため、コストを低減してエピタキシャルウエハを製造することができる。
【0021】
本発明のSi(1-v-w-x)wAlxv基材は、主表面と、主表面と反対側の裏面とを有するSi(1-v-w-x)wAlxv層(0≦v≦1、0≦w≦1、0≦x≦1、0≦v+w+x≦1)を備えたSi(1-v-w-x)wAlxv基材である。Si(1-v-w-x)wAlxv層における主表面に位置する組成比x+vは、0<x+v<1である。Si(1-v-w-x)wAlxv層において、裏面から主表面に向けてx+vが単調増加または単調減少していることを特徴としている。
【0022】
本発明のSi(1-v-w-x)wAlxv基材によれば、上述した本発明のSi(1-v-w-x)wAlxv基材の製造方法により製造することにより、高い結晶性と低いコストとを維持したSi(1-v-w-x)wAlxv基材を実現することができる。
【0023】
上記Si(1-v-w-x)wAlxv基材において好ましくは、主表面を有する異種基板をさらに備え、Si(1-v-w-x)wAlxv層の裏面側が、異種基板の主表面に接するように形成され、Si(1-v-w-x)wAlxv層において、裏面の組成比x+vは、主表面の組成比x+vよりも異種基板の材料に近いことを特徴としている。
【0024】
このように、Si(1-v-w-x)wAlxv層の厚みが薄い場合などSi(1-v-w-x)wAlxv基材は必要に応じて異種基板をさらに備えていてもよい。
【0025】
上記Si(1-v-w-x)wAlxv基材において好ましくは、Si(1-v-w-x)wAlxv層は複数の層を含んでいる。
【0026】
これにより、容易に、高い結晶性と低いコストとを維持したSi(1-v-w-x)wAlxv基材を実現することができる。
【0027】
本発明のエピタキシャルウエハは、上記いずれかに記載のSi(1-v-w-x)wAlxv基材と、Si(1-v-w-x)wAlxv層の主表面上に形成されたAl(1-y-z)GayInzN層(0≦y≦1、0≦z≦1、0≦y+z≦1)とを備えている。
【0028】
本発明のエピタキシャルウエハによれば高い結晶性のSi(1-v-w-x)wAlxv層上にAl(1-y-z)GayInzN層が形成されている。このため、Al(1-y-z)GayInzN層の結晶性を向上することができる。また、Al(1-y-z)GayInzN層の格子整合性および熱膨張率は、Si(1-v-w-x)wAlxv層の格子整合性および熱膨張率との差が小さいので、Al(1-y-z)GayInzN層の結晶性を向上することができる。また、Si(1-v-w-x)wAlxv層を製造するために要するコストが低いため、コストを低減したエピタキシャルウエハを実現することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明のSi(1-v-w-x)wAlxv基材の製造方法、エピタキシャルウエハの製造方法、Si(1-v-w-x)wAlxv基材およびエピタキシャルウエハによれば、熱膨張率の差、格子不整合性を緩和できるので、高い結晶性を維持し、かつ低いコストを維持したSi(1-v-w-x)wAlxv結晶を備えたSi(1-v-w-x)wAlxv基材を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施の形態1におけるSi(1-v-w-x)wAlxv基材を概略的に示す断面図である。
【図2】本発明の実施の形態1におけるSi(1-v-w-x)wAlxv基材の製造に使用可能なPLD装置を概略的に示す模式図である。
【図3】本発明の実施の形態1における異種基板上にSi(1-v-w-x)wAlxv層を成長させる工程を概略的に示す模式図である。
【図4】本発明の実施の形態2におけるSi(1-v-w-x)wAlxv基材を概略的に示す断面図である。
【図5】本発明の実施の形態2における異種基板上にSi(1-v-w-x)wAlxv層を成長させる工程を概略的に示す模式図である。
【図6】本発明の実施の形態3におけるSi(1-v-w-x)wAlxv基材を概略的に示す断面図である。
【図7】本発明の実施の形態4におけるSi(1-v-w-x)wAlxv基材を概略的に示す断面図である。
【図8】本発明の実施の形態5におけるエピタキシャルウエハを概略的に示す断面図である。
【図9】本発明例1および2におけるSi(1-v-w-x)wAlxv基材を概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には、同一の参照符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0032】
(実施の形態1)
図1は、本実施の形態におけるSi(1-v-w-x)wAlxv基材を概略的に示す断面図である。始めに、図1を参照して、本実施の形態におけるSi(1-v-w-x)wAlxv基材10aを説明する。
【0033】
図1に示すように、本実施の形態におけるSi(1-v-w-x)wAlxv基材10aは、異種基板11と、異種基板11の主表面11a上に形成されたSi(1-v-w-x)wAlxv層12(0≦v≦1、0≦w≦1、0≦x≦1、0≦v+w+x≦1)とを備えている。Si(1-v-w-x)wAlxv層12において、組成比1−v−w−xはSiのモル比であり、wはCのモル比であり、xはAlのモル比であり、vはNのモル比である。
【0034】
異種基板11は、Si(1-v-w-x)wAlxv層12(0<x+v<1)と異なる材料であり、たとえばSi基板、SiC基板、AlN基板などを用いることができる。異種基板として、コストが低い観点から、Si基板およびサファイア基板を用いることが好ましく、加工性が容易である観点からSi基板を用いることがより好ましい。
【0035】
また異種基板11は、大口径であることが好ましく、たとえば1インチ以上の大きさであり、2インチ以上が好ましい。たとえば4インチ、6インチなどの大きさを有する異種基板11を用いることもできる。
【0036】
Si(1-v-w-x)wAlxv層12は、主表面12aと、この主表面12aと反対側の裏面12bとを有している。裏面12bは、異種基板11の主表面11aと接しており、Si(1-v-w-x)wAlxv層12と異種基板11との界面に位置する。
【0037】
Si(1-v-w-x)wAlxv層12は、異種基板11との界面(裏面12b)から主表面12aに向けて組成比x+vが単調増加または単調減少している。ここで、単調増加とは、異種基板11の裏面12bから主表面12aに向けて(成長方向に向けて)、組成比x+vが常に同じまたは増加しており、かつ裏面12bよりも主表面12aの方が組成比x+vが高いことを意味する。つまり、単調増加とは、この成長方向に向けて減少している部分が含まれていない。単調減少とは、異種基板11の裏面12bから主表面12aに向けて(成長方向に向けて)、組成比x+vが常に同じまたは減少しており、かつ裏面12bよりも主表面12aの方が組成比が低いことを意味する。つまり、単調減少とは、この成長方向に向けて増加している部分が含まれていない。
【0038】
Si(1-v-w-x)wAlxv層12における異種基板11との界面(裏面12b)の組成比x+vは、主表面12aの組成比x+vよりも異種基板11の材料に近い。たとえば異種基板11がSi基板またはSiC基板である場合、Si(1-v-w-x)wAlxv層12の組成比x+vは単調増加している。また異種基板11がたとえばAlN基板である場合、Si(1-v-w-x)wAlxv層12の組成比x+vは単調減少している。
【0039】
Si(1-v-w-x)wAlxv層12において主表面12aに位置する組成比x+vは、0<x+v<1である。つまり、Si(1-v-w-x)wAlxv層12の主表面12aに位置するSi(1-v-w-x)wAlxv結晶は、Si、C、AlおよびNの4元素を含んでいる。イオン結合よりも強い結合である共有結合を構成する4元素を含むSi(1-v-w-x)wAlxv結晶は、AlNよりも機械的に硬い性質を有している。
【0040】
続いて、図2を参照して、本実施の形態におけるSi(1-v-w-x)wAlxv基材10aの製造方法を説明する。本実施の形態では、たとえばPLD法によりSi(1-v-w-x)wAlxv基材10aを製造する。なお、図2は、本実施の形態におけるSi(1-v-w-x)wAlxv基材の製造に使用可能なPLD装置を概略的に示す模式図である。図3は、本実施の形態における異種基板上にSi(1-v-w-x)wAlxv層を成長させる工程を概略的に示す模式図である。
【0041】
ここで、図2を参照して、PLD装置100の主要な構成について説明する。図2に示すように、PLD装置100は、真空チャンバ101と、レーザ光源102と、原料103と、ステージ104と、パルスモータ105と、基板保持部106と、ヒータ(図示せず)と、制御部107と、反射高速電子回折装置(RHEED)108と、ガス供給部109とを備えている。
【0042】
真空チャンバ101の外部には、レーザ光源102が配置されている。このレーザ光源102は、レーザ光を照射可能である。真空チャンバ101の内部であって、レーザ光源102からレーザ光が照射される位置に、ターゲットとなる原料103が配置可能である。ステージ104は、この原料103を載置可能である。パルスモータ105は、このステージ104を駆動可能である。基板保持部106は、下地基板である異種基板11を保持可能である。ヒータは、基板保持部106に保持された異種基板11を加熱する。制御部107は、レーザ光源102およびパルスモータ105の動作制御を行なうことが可能である。RHEED108は、振動をモニタすることで、異種基板11上に成長したSi(1-v-w-x)wAlxv層12の厚みを測定可能である。ガス供給部109は、真空チャンバ101の内部にガスを供給可能である。
【0043】
なお、PLD装置100は、上記以外の様々な要素を含んでいてもよいが、説明の便宜上、これらの要素の図示および説明は省略する。
【0044】
まず、Si(1-v-w-x)wAlxv層12の原料103を準備する。この原料103においてSiCとAlNとを混合するモル比により、Si(1-v-w-x)wAlxv層12の組成比x+vを制御することができる。本実施の形態では、図3に示すように、たとえば一方端から他方端にかけてSiCとAlNとを混合するAlNのモル比が単調増加または単調減少するような原料103を準備する。他方端は、製造することを目的とする組成比x+v(主表面12aに位置する組成比x+v)のSi(1-v-w-x)wAlxv結晶となるようにSiCとAlNとを混合するモル比を調整する。この原料103は、たとえばSiCとAlNとを混合した焼結体を用いることができる。このようにして準備した原料103を、図2に示すステージ104上にセットする。
【0045】
次に、異種基板11を、真空チャンバ101内に設置された基板保持部106の表面上であって、原料103と対向する位置にセットする。
【0046】
次に、異種基板11を加熱する。異種基板11の表面の温度を、たとえば550℃未満に加熱する。異種基板11の表面の温度は550℃未満が好ましく、540℃以下がより好ましい。この加熱は、たとえばヒータなどにより行なう。なお、異種基板11の加熱方法は、ヒータに特に限定されず、たとえば電流を流すなどの他の手法であってもよい。なお、この工程は省略されてもよい。
【0047】
次に、レーザ光源102から放射されるレーザ光を原料103に照射する。本実施の形態では、一方端から他方端にかけてSiCとAlNとを混合するAlNのモル比が単調増加または単調減少し、他方端が製造することを目的とする組成比x+vのSi(1-v-w-x)wAlxv結晶となるような原料103を準備している。このため、図3に示すように、原料103の一方端(図3において左端)から他方端(図3において右端)にかけて(図3において矢印の方向に)レーザ光を照射する。この場合、原料103の一方端から他方端の原料がSi(1-v-w-x)wAlxv層12として異種基板11上に堆積されることになるので、一方端のモル比に応じた組成比x+vのSi(1-v-w-x)wAlxv結晶が異種基板11の界面に位置するように成長し、他方端のモル比に応じた組成比x+vのSi(1-v-w-x)wAlxv結晶がSi(1-v-w-x)wAlxv層12の主表面に位置するように成長する。
【0048】
なお、レーザとしては、たとえば発光波長が248nm、パルス繰り返し周波数が10Hz、パルス当たりのエネルギーが1〜3J/shotのKrF(フッ化クリプトン)エキシマレーザを使用することができる。なお、発光波長が193nmのArF(フッ化アルゴン)エキシマレーザなどの他のレーザを使用することもできる。
【0049】
このとき、真空チャンバ101内は、たとえば1×10-3Torr〜1×10-6Torr以下程度の真空状態にする。その後、真空チャンバ101内をガス供給部109によりアルゴン(Ar)などの不活性ガス、窒素などの雰囲気とする。なお、真空チャンバ101内を窒素雰囲気とすると、Si(1-v-w-x)wAlxv層12の成長の際に窒素を補給することができる。また、真空チャンバ内を不活性ガス雰囲気とすると、Si(1-v-w-x)wAlxv層12の成長の際に原料103のみが用いられるので、x+vの値を制御しやすい。
【0050】
レーザ光を原料103に照射するに際し、上記のような短波長のレーザを用いることが好ましい。短波長のレーザを用いた場合には、吸収係数が大きくなるので、原料103の表面近傍でレーザ光のほとんどが吸収されることとなる。この結果、原料103の表面温度が急激に上昇し、真空チャンバ101内で固体からの爆発的な粒子放出を伴うプラズマであるアブレーションプラズマ(プルーム)を生成することができる。プラズマ中に含まれるアブレーション粒子は、再結合や雰囲気ガスとの衝突、反応などにより状態を変化させながら異種基板11へ移動する。そして、異種基板11に到達した各粒子は、異種基板11を拡散し、配置可能なサイトに入ることで、Si(1-v-w-x)wAlxv層12が形成される。
【0051】
ここで、各粒子が入る配置可能なサイトとは、以下の通りである。Al原子の配置可能なサイトは、C原子またはN原子と結合するサイトである。Si原子の配置可能なサイトは、C原子またはN原子と結合するサイトである。C原子の配置可能なサイトは、Al原子またはSi原子と結合するサイトである。N原子の配置可能なサイトは、Al原子またはSi原子と結合するサイトである。
【0052】
なお、成長させるSi(1-v-w-x)wAlxv層12の厚みは、真空チャンバ101に取り付けたRHEED18の振動によりモニタすることができる。
【0053】
以上の工程を実施することによって、PLD法により、異種基板11上にSi(1-v-w-x)wAlxv層12を成長させることができ、図1に示すSi(1-v-w-x)wAlxv基材10aを製造することができる。
【0054】
なお、本実施の形態では、PLD法によりSi(1-v-w-x)wAlxv層12を成長する方法を説明したが、特にこれに限定されない。たとえば、パルス供給方式のMOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition:有機金属化学気相堆積)法、ガスソース方式のMBE(Molecular Beam Epitaxy:分子線エピタキシ)法、スパッタ法などの方法によりSi(1-v-w-x)wAlxv層12を成長させてもよい。たとえばパルス供給方式のMOCVDでは、ガスの流量を変更するような制御をすることで、Si(1-v-w-x)wAlxv層12を成長することができる。ガスソース方式のMBE法では、たとえばセルの開閉と加熱温度を制御することでSi(1-v-w-x)wAlxv層12を成長することができる。スパッタ法では、たとえばターゲットを制御することでSi(1-v-w-x)wAlxv層12を成長することができる。
【0055】
以上説明したように、本実施の形態におけるSi(1-v-w-x)wAlxv基材10aおよびその製造方法は、Si(1-v-w-x)wAlxv層12における主表面12aに位置する組成比x+vは、0<x+v<1であり、Si(1-v-w-x)wAlxv層12において、異種基板11との界面(裏面12b)から主表面12aに向けて組成比x+vが単調増加または単調減少し、Si(1-v-w-x)wAlxv層12において、異種基板11との界面(裏面12b)の組成比x+vは、主表面12aの組成比x+vよりも異種基板11の材料に近い。
【0056】
本実施の形態におけるSi(1-v-w-x)wAlxv基材10aおよびその製造方法によれば、異種基板11との界面に位置する領域から、製造することを目的とする組成比x+vのSi(1-v-w-x)wAlxv結晶に向けて、組成比x+vを徐々に近づけるようにSi(1-v-w-x)wAlxv層12を成長させている。言い換えると、Si(1-v-w-x)wAlxv層12の成長方向に対して組成比x+vが単調に変化するようにSi(1-v-w-x)wAlxv層12を成長させている。これにより、主表面12aに位置するSi(1-v-w-x)wAlxv層12と、異種基板11との間に、主表面12aに位置するSi(1-v-w-x)wAlxv層12の組成比x+vと異種基板11との間の組成比x+vのSi(1-v-w-x)wAlxv結晶を成長している。これらの間の組成比x+vのSi(1-v-w-x)wAlxv結晶と異種基板11との格子定数の差および熱膨張率の差と、これらの間の組成比x+vのSi(1-v-w-x)wAlxv結晶と製造することを目的とするSi(1-v-w-x)wAlxv結晶との格子定数の差および熱膨張率の差との両方が、製造することを目的とする組成比x+vのSi(1-v-w-x)wAlxv層と異種基板11との格子定数の差および熱膨張率の差よりも小さい。このため、製造することを目的とする組成比x+vのSi(1-v-w-x)wAlxv結晶を主表面12aに位置するように成長させることで、この製造することを目的とするSi(1-v-w-x)wAlxv結晶と異種基板11との格子不整合性および熱膨張率の差を徐々に緩和することができる。このような超格子構造にすることによって、Si(1-v-w-x)wAlxv層12のうち主表面12aに位置する組成比x+v、つまり製造することを目的とする組成比x+vのSi(1-v-w-x)wAlxv結晶の歪み、割れなどを抑制することができる。したがって、主表面12aに位置し、かつ製造することを目的とする組成比x+vのSi(1-v-w-x)wAlxv結晶の結晶性を向上できる。
【0057】
また、主表面12aと裏面12bとの間の組成比x+vのSi(1-v-w-x)wAlxv結晶の厚みを大きくせずに、Si(1-v-w-x)wAlxv層12のうち主表面12aに位置する組成比x+vのSi(1-v-w-x)wAlxv結晶の結晶性を向上できる。このため、これらの間の組成比x+vのSi(1-v-w-x)wAlxv結晶を下地基板として製造する必要がない。このため、製造することを目的とするSi(1-v-w-x)wAlxv結晶を製造するために要するコストを低減できる。
【0058】
以上より、同じ下地基板を用いる場合には、製造することを目的とする組成比x+vのSi(1-v-w-x)wAlxv結晶の結晶性を向上できる。また所望の結晶性のSi(1-v-w-x)wAlxv結晶を備えたSi(1-v-w-x)wAlxv基材10aを製造するためには、コストを低減することができる。したがって、高い結晶性と、低いコストとを両立できるSi(1-v-w-x)wAlxv基材を製造することができる。
【0059】
上記Si(1-v-w-x)wAlxv基材10aの製造方法において好ましくは、PLD法によりSi(1-v-w-x)wAlxv層12を成長させる。
【0060】
これにより、Si(1-v-w-x)wAlxv層12の原料103にレーザを照射してプラズマを発生させて、このプラズマを異種基板11上に供給することができる。つまり、非平衡状態でSi(1-v-w-x)wAlxv層12を成長させることができる。非平衡状態は平衡状態のような安定な状態でないので、Siは、CおよびNのいずれとも結合が可能であり、AlはCおよびNのいずれとも結合が可能である。このため、Si、C、AlおよびNの4元素が混晶したSi(1-v-w-x)wAlxv層12を成長することができる。このように、PLD法でSi(1-v-w-x)wAlxv層12を成長することにより、組成比x+vを容易に制御できるため、PLD法は本実施の形態におけるSi(1-v-w-x)wAlxv基材10aの製造方法に好適である。
【0061】
なお、平衡状態でSi(1-v-w-x)wAlxv層を成長させると、SiCおよびAlNが安定であるので、SiとCとが結合し、AlとNとが結合する。したがって、SiC層とAlN層とが層状に積層した状態に成長したり、SiC層中に、凝集したAlN層が点在するように成長する場合が多くなる。
【0062】
このようにPLD法により成長させたSi(1-v-w-x)wAlxv層12は、X線回折(X-ray Diffraction:XRD)法で測定されるSiCの回折ピークとAlNの回折ピークとの間に回折ピークを有するSi(1-v-w-x)wAlxv層12を備えたSi(1-v-w-x)wAlxv基材10aを実現することができる。
【0063】
ここで、XRD法で測定される各材料の回折ピークは、固有の値である。たとえば、ターゲットが銅(Cu)で、管球電圧が45kVで、管球電流が40mAで、測定方式が2θ−ωで、角度分解能が0.001degステップである測定条件では、AlN(002)面の回折ピークは36.03deg付近に、SiC(102)面の回折ピークは35.72deg付近に現れる。この条件のPLD法により製造されたSi(1-v-w-x)wAlxv層12の回折ピークは、35.72degと、36.03degとの間に現れる。
【0064】
なお、昇華法、MBE法などの平衡状態でSi(1-v-w-x)wAlxv層12は、XRD法で測定すると、SiCの回折ピークおよびAlNの回折ピークのみが検出され、SiCの回折ピークとAlNの回折ピークとの間に回折ピークは存在しない。ただし、SiCの回折ピークとAlNの回折ピークとの間にノイズなどの誤差程度の回折ピークが発生する場合はある。
【0065】
上記Si(1-v-w-x)wAlxv基材10aおよびその製造方法において好ましくは、異種基板11がSi基板である。
【0066】
Si基板は、現在のエレクトロニクス材料の主流であり、エッチングなどの加工の技術が確立されている。Si基板は、へき開性が高く、酸によるエッチングが容易である。このため、Si基板の厚みを薄くするための加工、Si基板を除去するための加工を容易に行なうことができる。たとえば発光デバイスを作成するためにSi(1-v-w-x)wAlxv基材10aを用いる場合には、Si基板のへき開性などは非常に重要である。したがって、加工性の容易なSi(1-v-w-x)wAlxv基材10aを製造することができる。
【0067】
またSi基板は、SiC基板、サファイア基板などよりも安価である。このため、Si(1-v-w-x)wAlxv基材10aを製造するために要するコストを低減することができる。
【0068】
特に、Si(1-v-w-x)wAlxv層12をPLD法で成長させることにより、低い温度でSi(1-v-w-x)wAlxv層12を成長することができる。このため、Si基板の劣化を抑制できるので、大面積のSi(1-v-w-x)wAlxv層12を成長することができる。
【0069】
したがって、本実施の形態におけるSi(1-v-w-x)wAlxv基材10aの製造方法により製造されるSi(1-v-w-x)wAlxv基材10aは、高い結晶性と低いコストとを両立している。このため、たとえばトンネル磁気抵抗素子、巨大磁気抵抗素子などの種々の磁気抵抗効果を利用した機能デバイス、発光ダイオード、レーザダイオードなどの発光素子、整流器、バイポーラトランジスタ、電界効果トランジスタ(FET)、スピンFET、HEMT(High Electron Mobility Transistor:高電子移動度トランジスタ)などの電子素子、温度センサ、圧力センサ、放射線センサ、可視−紫外光検出器などの半導体センサ、SAWデバイスなどに好適に用いることができる。
【0070】
(実施の形態2)
図4は、本実施の形態におけるSi(1-v-w-x)wAlxv基材を概略的に示す断面図である。図4を参照して、本実施の形態におけるSi(1-v-w-x)wAlxv基材10bは、基本的には実施の形態1と同様の構成を備えているが、Si(1-v-w-x)wAlxv層12が複数の層を含んでいる点において異なっている。
【0071】
具体的には、図4に示すように、Si(1-v-w-x)wAlxv層12は、第1の層13と、第2の層14と、第3の層15と、第4の層16と、第5の層17と、第6の層18とを含んでいる。第1、第2、第3、第4、第5および第6の層13、14、15、16、17および18は、異種基板11上にこの順で積層されている。第1、第2、第3、第4、第5および第6の層13、14、15、16、17および18の組成比x+vは、この順に大きい、または小さい。たとえば異種基板11がAlN基板の場合には、第1、第2、第3、第4、第5および第6の層13、14、15、16、17および18の組成比x+vは、この順に小さい。たとえば異種基板11がSi基板またはSiC基板の場合には、第1、第2、第3、第4、第5および第6の層13、14、15、16、17および18の組成比x+vは、この順に大きい。
【0072】
続いて、図2および図5を参照して、本実施の形態におけるSi(1-v-w-x)wAlxv基材10bの製造方法について説明する。図5は、本実施の形態における異種基板上にSi(1-v-w-x)wAlxv層を成長させる工程を概略的に示す模式図である。
【0073】
本実施の形態におけるSi(1-v-w-x)wAlxv基材10bの製造方法は、基本的には実施の形態1におけるSi(1-v-w-x)wAlxv基材10aの製造方法と同様の構成を備えていたが、原料103を準備する工程およびレーザ光を原料103に照射する工程において異なっている。
【0074】
具体的には、図5に示すように、原料103を準備する工程では、SiCとAlNとを混合するモル比が異なる2種類以上の材料を準備する。この複数の材料を、図2に示すステージ104上にセットする。このとき、SiCとAlNとを混合するAlNのモル比が高い順(あるいは低い順)に並べて配置することが好ましい。この場合、一定の方向に移動させながらレーザ光を照射することで、Si(1-v-w-x)wAlxv層12の組成比x+vが単調増加または単調減少するように容易に成長させることができる。また、レーザ光の照射方向を一定にして、複数の材料を真空チャンバ101内で取り替えてもよい。この場合にも、複数の材料においてAlNのモル比の高い順に並べておくことで、容易に複数の材料を取替えができる。
【0075】
なお、原料103は、図3に示すように1つの焼結体において、段階的にSiCおよびAlNのモル比が変化するような材料を用いてもよい。
【0076】
レーザ光源102から放射されるレーザ光を原料103に照射する工程では、原料103のうち異種基板11に近い組成比x+vのSi(1-v-w-x)wAlxv層12となるべき材料から、製造したい組成比x+vのSi(1-v-w-x)wAlxv層12(本実施の形態では第6の層18)となるべき材料まで(図5中矢印の方向に)、レーザ光を原料103に順次照射する。これにより、原料103のそれぞれの材料のモル比に応じて、第1、第2、第3、第4、第5および第6の層13、14、15、16、17および18を異種基板11上に順次成長させることができる。
【0077】
なお、本実施の形態では、Si(1-v-w-x)wAlxv層12が含んでいる複数の層は6層としたが、2層以上であれば、特にこれに限定されない。また、第1、第2、第3、第4、第5および第6の層13、14、15、16、17および18のうち、第1の層13の組成比x+vと第6の層18の組成比x+vとが異なっていれば、同じ組成の層が含まれていてもよい。
【0078】
以上説明したように、本実施の形態におけるSi(1-v-w-x)wAlxv基材10bおよびその製造方法によれば、Si(1-v-w-x)wAlxv層12は複数の層を含んでいる。
【0079】
複数の層において、異種基板11と近い(裏面12bに)位置の層の組成比x+vから主表面12aに位置する層の組成比x+vまで順に高く、または低くなっている。このため、それぞれの層を形成するために複数の材料を含む原料103を準備することで、このような複数の層を含むSi(1-v-w-x)wAlxv層12を成長することができる。したがって、容易に高い結晶性と低いコストを両立したSi(1-v-w-x)wAlxv層12を製造することができる。
【0080】
また、本実施の形態におけるSi(1-v-w-x)wAlxv基材10bの製造方法によれば、たとえば、異種基板11としてSi基板を用い、Si(1-v-w-x)wAlxv層12として第1の層13がSiC層で、第2の層14がSi(1-v-w-x)wAlxv(0<v<1、0<w<1、0<x<1、0<v+w+x<1)層を製造することができる。第2の層14としてのSi(1-v-w-x)wAlxv(0<v<1、0<w<1、0<x<1、0<v+w+x<1)層の結晶性は、比較例としてSiC基板上に成長させた同じ組成比x+vのSi(1-v-w-x)wAlxv(0<v<1、0<w<1、0<x<1、0<v+w+x<1)層の結晶性と略同様になる。しかし、本実施の形態における第2の層14としてのSiC層は、比較例としてのSiC基板よりも厚みが薄くてもSi(1-v-w-x)wAlxv(0<v<1、0<w<1、0<x<1、0<v+w+x<1)層の結晶性は同様である。このため、結晶成長させるために必要な異種基板としてのSiC基板よりも、第2の層14としてSiC層を形成する方が、Si(1-v-w-x)wAlxv層12を製造するためのコストを低減することができる。
【0081】
なお、Si(1-v-w-x)wAlxv層12の主表面12aに位置するSi(1-v-w-x)wAlxv結晶は、Si、C、AlおよびNの4元素を含んでいれば、裏面12bは、SiC、AlNなどの2元素の結晶であってもよい。
【0082】
(実施の形態3)
図6は、本実施の形態におけるSi(1-v-w-x)wAlxv基材を概略的に示す断面図である。図6を参照して、本実施の形態におけるSi(1-v-w-x)wAlxv基材10cは、実施の形態1におけるSi(1-v-w-x)wAlxv基材10aから少なくとも異種基板11が除去されている。
【0083】
続いて、本実施の形態におけるSi(1-v-w-x)wAlxv基材10cの製造方法について説明する。
【0084】
まず、実施の形態1におけるSi(1-v-w-x)wAlxv基材10aの製造方法にしたがって、図1に示すSi(1-v-w-x)wAlxv基材10aを製造する。
【0085】
次に、異種基板11を除去する。なお、異種基板11のみを除去してもよく、異種基板11およびSi(1-v-w-x)wAlxv層12において異種基板11と接触している面を含む一部分を除去してもよい。
【0086】
除去する方法は特に限定されず、たとえばエッチングなど化学的な除去方法、切断、研削、へき開など機械的な除去方法などを用いることができる。切断とは、電着ダイヤモンドホイールの外周刃を持つスライサーなどで機械的にSi(1-v-w-x)wAlxv層12から少なくとも異種基板11を除去することをいう。研削とは、砥石を回転させながら表面に接触させて、厚さ方向に削り取ることをいう。へき開とは、結晶格子面に沿って異種基板11を分割することをいう。
【0087】
以上説明したように、本実施の形態におけるSi(1-v-w-x)wAlxv基材10cおよびSi(1-v-w-x)wAlxv基材10cの製造方法によれば、異種基板11を除去する工程をさらに備えている。これにより、異種基板11を含まず、かつ高い結晶性と低いコストとを両立したSi(1-v-w-x)wAlxv層12を製造することができる。
【0088】
(実施の形態4)
図7は、本実施の形態におけるSi(1-v-w-x)wAlxv基材を概略的に示す断面図である。図7を参照して、本実施の形態におけるSi(1-v-w-x)wAlxv基材10dは、実施の形態2におけるSi(1-v-w-x)wAlxv基材10bから少なくとも異種基板11が除去されている。
【0089】
続いて、本実施の形態におけるSi(1-v-w-x)wAlxv基材10dの製造方法について説明する。
【0090】
まず、実施の形態2におけるSi(1-v-w-x)wAlxv基材10bの製造方法にしたがって、図4に示すSi(1-v-w-x)wAlxv基材10bを製造する。
【0091】
次に、異種基板11を除去する。なお、異種基板11のみを除去してもよく、異種基板11およびSi(1-v-w-x)wAlxv層12の第1、第2、第3、第4および第5の層13、14、15、16および17の任意の層を除去してもよい。除去する方法は、実施の形態3と同様であるので、その説明は繰り返さない。
【0092】
以上説明したように、本実施の形態におけるSi(1-v-w-x)wAlxv基材10cおよびSi(1-v-w-x)wAlxv基材10cの製造方法によれば、異種基板11を除去する工程をさらに備えている。これにより、異種基板11を含まず、かつ高い結晶性と低いコストを両立したSi(1-v-w-x)wAlxv層12を製造することができる。
【0093】
(実施の形態5)
図8は、本実施の形態におけるエピタキシャルウエハを概略的に示す断面図である。図8を参照して、本実施の形態におけるエピタキシャルウエハ20について説明する。
【0094】
図8に示すように、エピタキシャルウエハ20は、実施の形態2におけるSi(1-v-w-x)wAlxv基材10bと、このSi(1-v-w-x)wAlxv基材10b上に形成されたAl(1-y-z)GayInzN(0≦y≦1、0≦z≦1、0≦y+z≦1)層21とを備えている。言い換えると、エピタキシャルウエハ20は、異種基板11と、この異種基板11上に形成されたSi(1-v-w-x)wAlxv層12と、このSi(1-v-w-x)wAlxv層12の主表面12a上に形成されたAl(1-y-z)GayInzN層21とを備えている。
【0095】
続いて、本実施の形態におけるエピタキシャルウエハ20の製造方法について説明する。
【0096】
まず、実施の形態2におけるSi(1-v-w-x)wAlxv基材10bの製造方法にしたがって、Si(1-v-w-x)wAlxv基材10bを製造する。
【0097】
次に、Si(1-v-w-x)wAlxv基材10b(本実施の形態では、Si(1-v-w-x)wAlxv層12の主表面12a)上に、Al(1-y-z)GayInzN層21を成長させる。成長させる方法は特に限定されず、たとえばMOCVD法、HVPE(Hydride Vapor Phase Epitaxy:ハイドライド気相成長)法、MBE法、昇華法などの気相成長法、液相成長法などが採用できる。
【0098】
以上の工程を実施することにより、図8に示すエピタキシャルウエハ20を製造することができる。なお、このエピタキシャルウエハ20から、異種基板11を除去する工程をさらに実施してもよい。また、実施の形態2におけるSi(1-v-w-x)wAlxv基材10bの代わりに、実施の形態1におけるSi(1-v-w-x)wAlxv基材10aを用いてもよい。
【0099】
以上説明したように、本実施の形態におけるエピタキシャルウエハ20およびその製造方法によれば、Si(1-v-w-x)wAlxv基材10bの上にAl(1-y-z)GayInzN層21が形成されている。Si(1-v-w-x)wAlxv基材10bのSi(1-v-w-x)wAlxv層12において主表面12aに位置するSi(1-v-w-x)wAlxv結晶は、結晶性が高い。このため、このSi(1-v-w-x)wAlxv層12の主表面12a上に高い結晶性のAl(1-y-z)GayInzN層21を成長することができる。また、Al(1-y-z)GayInzN層はSi(1-v-w-x)wAlxv層21の格子整合性の差および熱膨張率の差が小さいので、Al(1-y-z)GayInzN層21の結晶性を向上することができる。また、Si(1-v-w-x)wAlxv基材10bのコストが低いため、エピタキシャルウエハ20の製造コストを低減することができる。
【実施例】
【0100】
本実施例では、異種基板との界面から主表面に向けて組成比x+vが単調増加または単調減少するようにSi(1-v-w-x)wAlxv層を成長させることによる効果について調べた。
【0101】
(本発明例1)
本発明例1では、基本的には、実施の形態2におけるSi(1-v-w-x)wAlxv基材10bの製造方法にしたがって、図2に示すPLD装置で、図9に示すように3層を含むSi(1-v-w-x)wAlxv層を備えたSi(1-v-w-x)wAlxv基材10aを製造した。また、製造することを目的とする組成比x+vは0.9のSi0.050.05Al0.450.45であった。なお、図9は、本発明例1におけるSi(1-v-w-x)wAlxv基材を概略的に示す断面図である。
【0102】
具体的には、まず、Si(1-v-w-x)wAlxv層12の原料103を準備した。この原料103は、以下の方法により準備した。具体的には、SiC粉末とAlN粉末とを3種類のモル比で混合し、それぞれプレスした。なお、1つは、SiC粉末のみをプレスした。この3種類の混合物を真空容器内に配置して、真空容器内を10-6Torrまで真空引きをし、雰囲気を高純度の窒素ガスで満たした。その後、この3種類の混合物を2300℃で20時間焼成した。これにより、3種類の焼結体材料よりなる原料103を準備した。その後、図2に示すステージ104上に、この3種類の材料よりなる原料103をAlNのモル比が低い順にセットした。
【0103】
次に、異種基板11としてSi基板を準備した。このSi基板は、(001)面を主表面11aとして有し、かつ2インチの大きさを有していた。この異種基板11を、真空チャンバ101内に設置された基板保持部106の表面上であって、原料103と対向する位置にセットした。
【0104】
次に、異種基板11の表面の温度を600℃に加熱した。その後、レーザ光源102から放射されるレーザ光を、原料103のうちAlNのモル比の最も低い材料、つまりAlNを含まないSiCの焼結体に照射した。これにより、異種基板11上に、SiCよりなり、100nmの厚みを有する第1の層13を成長させた。その後、原料103のうちAlNのモル比が2番目に低い材料にレーザ光を照射した。これにより、第1の層13上に、Si0.450.45Al0.050.05よりなり、100nmの厚みを有する第2の層14を成長させた。その後、原料103のうちAlNのモル比が3番目に低い材料、つまりAlNのモル比が最も高い材料にレーザ光を照射した。これにより、第2の層14上に、Si0.050.05Al0.450.45よりなり、100nmの厚みを有する第3の層15を成長させた。
【0105】
このとき、第1、第2および第3の層13、14および15の厚みは、真空チャンバ101に取り付けたRHEED18の振動によりモニタした。これにより、合計300nmの厚みを有するSi(1-v-w-x)wAlxv層12を成長させた。
【0106】
なお、レーザとしては、発光波長が248nm、パルス繰り返し周波数が10Hz、パルス当たりのエネルギーが1〜3J/shotのKrFエキシマレーザを使用した。
【0107】
このとき、真空チャンバ101内は、1×10-6Torrの真空状態にした後、真空チャンバ101内を窒素雰囲気とした。
【0108】
以上の工程を実施することによって、図9に示すSi(1-v-w-x)wAlxv基材を製造した。
【0109】
(本発明例2)
本発明例2は、基本的には本発明例1と同様にSi(1-v-w-x)wAlxv基材を製造したが、第2の層14がSi0.450.45Al0.040.06である点において異なっていた。
【0110】
(本発明例3)
本発明例3は、基本的には本発明例1と同様にSi(1-v-w-x)wAlxv基材を製造したが、第2の層14がSi0.450.45Al0.060.04である点において異なっていた。
【0111】
(本発明例4)
本発明例4は、基本的には本発明例1と同様にSi(1-v-w-x)wAlxv基材を製造したが、第3の層15がSi0.050.05Al0.440.46である点において異なっていた。
【0112】
(本発明例5)
本発明例5は、基本的には本発明例1と同様にSi(1-v-w-x)wAlxv基材を製造したが、第3の層15がSi0.050.05Al0.460.44である点において異なっていた。
【0113】
(本発明例6)
本発明例6は、基本的には本発明例1と同様にSi(1-v-w-x)wAlxv基材を製造したが、主表面が(111)面のSi基板を用いた点において異なっていた。
【0114】
(本発明例7)
本発明例7は、基本的には本発明例6と同様にSi(1-v-w-x)wAlxv基材を製造したが、第2の層14がSi0.450.45Al0.040.06である点において異なっていた。
【0115】
(本発明例8)
本発明例8は、基本的には本発明例6と同様にSi(1-v-w-x)wAlxv基材を製造したが、第2の層14がSi0.450.45Al0.060.04である点において異なっていた。
【0116】
(本発明例9)
本発明例9は、基本的には本発明例6と同様にSi(1-v-w-x)wAlxv基材を製造したが、第3の層15がSi0.050.05Al0.440.46である点において異なっていた。
【0117】
(本発明例10)
本発明例10は、基本的には本発明例6と同様にSi(1-v-w-x)wAlxv基材を製造したが、第3の層15がSi0.050.05Al0.460.44である点において異なっていた。
【0118】
(比較例1)
比較例1は、基本的には本発明例1と同様であったが、Si基板上にAlN層を成長させた点において異なっていた。つまり、原料103は、AlNの原料とした。
【0119】
(比較例2)
比較例2は、基本的には本発明例6と同様であったが、Si基板上にAlN層を成長させた点において異なっていた。つまり、原料103は、AlNの原料とした。
【0120】
(測定方法)
本発明例1〜10のSi(1-v-w-x)wAlxv基材および比較例1および2のAlN基材を、室温まで冷却して、PLD装置100から取り出した。その後、本発明例1〜10のSi(1-v-w-x)wAlxv層、比較例1および比較例2のAlN層の主表面において10mm四方の領域について、クラックの数を光学顕微鏡で測定した。クラックは、長手方向の総距離が1mm以上のものを1つとし、それ未満の長さのものはカウントしなかった。その結果を下記の表1に示す。
【0121】
【表1】

【0122】
(測定結果)
表1に示すように、異種基板11との界面から主表面12aに向けて異種基板11の材料に近い組成から遠い組成になるように成長させた本発明例1〜10のSi(1-v-w-x)wAlxv層のクラック数は、5個であった。一方、比較例1および2のAlN層のクラック数は10個であった。このことから、異種基板から、Si(1-v-w-x)wAlxv層において主表面に位置するSi0.050.05(AlN)0.9層まで組成比x+vを単調増加させた本発明例1〜10は、異種基板との熱膨張率の差を緩和できたので、クラック数を低減することができた。
【0123】
なお、本発明例1〜10のSi0.050.05(AlN)0.9層と、比較例1および2のAlN層とは、AlNのモル比(組成比x+v)が高い点で共通している。このため、比較例1および2においてAlN層の代わりにSi0.050.05(AlN)0.9層を成長させた場合であっても、クラック数は9個程度と推定でき、本発明例1〜10のSi0.050.05(AlN)0.9層のクラック数と同程度まで低減することはできない。
【0124】
以上より、本実施例によれば、異種基板との界面から主表面に向けて組成比x+vが単調増加または単調減少するようにSi(1-v-w-x)wAlxv層を成長させることにより、Si(1-v-w-x)wAlxv層の結晶性を向上できることを確認した。
【0125】
以上のように本発明の実施の形態および実施例について説明を行なったが、各実施の形態および実施例の特徴を適宜組み合わせることも当初から予定している。また、今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0126】
10a,10b,10c,10d Si(1-v-w-x)wAlxv基材、11 異種基板、11a,12a 主表面、12 Si(1-v-w-x)wAlxv層、12b 裏面、13 第1の層、14 第2の層、15 第3の層、16 第4の層、17 第5の層、18 第6の層、20 エピタキシャルウエハ、21 Al(1-y-z)GayInzN層、100 PLD装置、101 真空チャンバ、102 レーザ光源、103 原料、104 ステージ、105 パルスモータ、106 基板保持部、107 制御部、109 ガス供給部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異種基板を準備する工程と、
前記異種基板上に、主表面を有するSi(1-v-w-x)wAlxv層(0≦v≦1、0≦w≦1、0≦x≦1、0≦v+w+x≦1)を成長させる工程とを備え、
前記Si(1-v-w-x)wAlxv層における前記主表面に位置する組成比x+vは、0<x+v<1であり、
前記Si(1-v-w-x)wAlxv層において、前記異種基板との界面から前記主表面に向けて組成比x+vが単調増加または単調減少し、
前記Si(1-v-w-x)wAlxv層において、前記異種基板との界面の組成比x+vは、前記主表面の組成比x+vよりも前記異種基板の材料に近い、Si(1-v-w-x)wAlxv基材の製造方法。
【請求項2】
前記成長させる工程後に、前記異種基板を除去する工程をさらに備えた、請求項1に記載のSi(1-v-w-x)wAlxv基材の製造方法。
【請求項3】
前記成長させる工程では、複数の層を含む前記Si(1-v-w-x)wAlxv層を成長させる、請求項1または2に記載のSi(1-v-w-x)wAlxv基材の製造方法。
【請求項4】
前記成長させる工程では、パルスレーザー堆積法により前記Si(1-v-w-x)wAlxv層を成長させる、請求項1〜3のいずれかに記載のSi(1-v-w-x)wAlxv基材の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のSi(1-v-w-x)wAlxv基材の製造方法によりSi(1-v-w-x)wAlxv基材を製造する工程と、
前記Si(1-v-w-x)wAlxv層上にAl(1-y-z)GayInzN層(0≦y≦1、0≦z≦1、0≦y+z≦1)を成長させる工程とを備えた、エピタキシャルウエハの製造方法。
【請求項6】
主表面と、前記主表面と反対側の裏面とを有するSi(1-v-w-x)wAlxv層(0≦v≦1、0≦w≦1、0≦x≦1、0≦v+w+x≦1)を備えたSi(1-v-w-x)wAlxv基材であって、
前記Si(1-v-w-x)wAlxv層における前記主表面に位置する組成比x+vは、0<x+v<1であり、
前記Si(1-v-w-x)wAlxv層において、前記裏面から前記主表面に向けてx+vが単調増加または単調減少していることを特徴とする、Si(1-v-w-x)wAlxv基材。
【請求項7】
主表面を有する異種基板をさらに備え、
前記Si(1-v-w-x)wAlxv層の前記裏面側が、前記異種基板の前記主表面に接するように形成され、
前記Si(1-v-w-x)wAlxv層において、前記裏面の組成比x+vは、前記主表面の組成比x+vよりも前記異種基板の材料に近いことを特徴とする、請求項6に記載のSi(1-v-w-x)wAlxv基材。
【請求項8】
前記Si(1-v-w-x)wAlxv層は複数の層を含む、請求項6または7に記載のSi(1-v-w-x)wAlxv基材。
【請求項9】
請求項6〜8のいずれかに記載のSi(1-v-w-x)wAlxv基材と、
前記Si(1-v-w-x)wAlxv層の前記主表面上に形成されたAl(1-y-z)GayInzN層(0≦y≦1、0≦z≦1、0≦y+z≦1)とを備えた、エピタキシャルウエハ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−280485(P2009−280485A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−56914(P2009−56914)
【出願日】平成21年3月10日(2009.3.10)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】