説明

はんだフィレットの検査方法および基板外観検査装置

【課題】二次反射による誤判別のない検査を実行できるようにする。
【解決手段】カラーハイライト方式の基板検査装置において、赤、緑、青の光源をすべて点灯して撮像を行うことにより生成されたR−ON画像と、赤色光源を消灯し、その他の光源を点灯して撮像を行うことにより生成されたR−OFF画像との間で、対応する画素毎に色差を求める。この色差が所定のしきい値Aを上回る画素の組のうちR−OFF画像における明度が所定のしきい値Bを上回るものを、二次反射によるノイズ領域50として特定する。そして、ノイズ領域50内の画素についてはR−OFF画像のデータを、その他の画素についてはR−ON画像のデータを、それぞれ選択し、選択されたデータを集合させた処理対象画像を生成する。さらに、この処理対象画像中の各色彩領域の検出や計測を行い、得られた計測値に基づきフィレットの良否を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、部品が搭載されたプリント基板(以下、「部品実装基板」または単に「基板」という。)のうちはんだ付け処理が完了した基板を検査対象として、基板上のはんだフィレット(以下、単に「フィレット」という場合もある。)の形状を検査する方法、およびこの方法を用いた基板外観検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
出願人は、従前より、「カラーハイライト方式」と呼ばれる基板外観検査装置を数多く開発している。このカラーハイライト方式の検査装置は、2次元のカラーカメラ(以下、単に「カメラ」という。)と、赤、緑、青の3種類の色彩光を基板に対して異なる仰角の方向から照射する照明装置とを具備するもので、照明装置による照明下で撮像を行うことにより、はんだフィレットの傾斜状態が赤、緑、青の3色の分布パターンにより表現されたカラー画像を生成する(特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】特公平6−1173号公報
【0004】
上記の検査装置では、基板面から見た仰角が最も大きい方向から赤色光が、仰角が最も小さい方向から青色光が、これらの中間にあたる方向から緑色光が、それぞれ照射される。よって、図7に示すように、各色彩光がチップ部品6のフィレット7に照射された場合、フィレット7の傾斜面のうち、基板面に近い平坦な部位では赤色の反射光が、部品に近い傾斜が急な部位では青色の反射光が、これらの部位の間の傾斜面では緑色の反射光が、それぞれカメラに入射する。よって、カラー画像中のフィレット(各色彩をそれぞれ異なるパターンにより示す。)にも、上記の反射状態を反映した色彩分布が現れる。
【0005】
カラーハイライト方式の検査装置では、上記の原理を利用して、カラー画像中の赤、緑、青の各色彩が現れている領域を2値化により抽出し、抽出された各色彩領域の面積や位置などを計測する。そして、各計測値をあらかじめ登録された判定基準値と比較することによって、フィレットが正しく形成されているかどうかを判断する。
【0006】
ところが、近年、部品の実装密度が高くなったり、フィレットの傾斜が急峻になったことに伴って、あるフィレットに照射されて反射した光が他のフィレットに照射され、その照射光に対する反射光(二次反射光)がカメラに入射する現象が生じることが指摘されている。カメラに入射した二次反射光によって、カラー画像中のフィレットに本来の傾斜状態を反映しない色彩が出現すると、これがノイズとなって、検査に誤りが生じてしまう。
【0007】
図8は、二次反射の例とこの二次反射が生じたときに生成されるカラー画像を、対応づけて示す。
この図に示すように、検査対象の部品6のフィレット7の近傍に他の部品6aのフィレット8が存在する場合、フィレット8で反射した光の一部が部品6のフィレット7に向かって進行し、反射した光がフィレット7で二次反射することがある。特に仰角が大きな方向から照射される赤色光による二次反射光は、カメラに向かって進行する可能性が高い。また近年のフィレットでは傾斜が急な面の割合が大きくなっているので、上記の赤色の二次反射光によって、カラー画像中の青色が現れるはずの箇所に二次反射光による赤色のノイズ領域50が生じる現象が目立つようになっている。
【0008】
一方で、ぬれ不良や部品の欠落時のはんだは、図9に示すような球状の不良はんだ7Eとなる。このような不良はんだ7Eでは、中央部が平坦に近く、周縁に向かうほど傾斜が急になるため、カラーハイライト方式の光学系で処理すると、中央部に赤色が、その外側に緑色が、さらにその外側に青色が現れた画像が生成される。
【0009】
従来の検査装置では、このような不良を検出するために、検査領域の中央部に赤色領域が現れていないかどうかを判別するようにしている。上記の二次反射によるノイズは、この判別対象の位置に対応するため、不良はんだ7E用の判定基準が適用されて、フィレット7が正しく形成されているのに不良と判断されるおそれがある。
【0010】
このような問題に鑑み、出願人は、先般、色彩光毎に、検査領域内の特定方向に沿う強度分布のヒストグラムを求め、これらのヒストグラム間の関係を分析することによって、二次反射によるノイズが発生しているかどうかを判別する方法を提案した(特許文献2参照)。
【0011】
このほか、カラーハイライト方式の検査装置ではないが、照明装置の下方および照明装置とカメラとの間にそれぞれ偏光板を設けることによって、二次反射光がカメラに入射するのを回避するようにしたものもある(特許文献3参照)。
【0012】
【特許文献2】特開2006−140279号公報
【特許文献3】特開平10−122829号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
特許文献2に記載された発明は、色成分毎の強度分布の関係が、二次反射を反映した画像および不良を反映した画像のどちらに相当するものかを分析するものである。しかし、この分析は、従来のフィレット検査で用いた2値化処理による処理とは全く異なるアルゴリズムにより行われるので、これまでに蓄積した画像処理用のプログラムや判定基準を使用することができなくなる。
【0014】
一方、特許文献3に記載の発明は、カラーハイライト方式の検査装置にも適用可能なものであり、また従来と同様のアルゴリズムや判定基準を使用することも可能であるが、偏光板やその支持機構等を設ける必要があり、コスト高になる。
【0015】
この発明は、上記の問題点を考慮してなされたもので、照明状態を切り替えながら複数回の撮像を行い、これらの画像を用いて二次反射の影響を除去した画像を作成することによって、二次反射による誤判別のない検査を実行できるようにすることを、課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の課題を解決するために、この明細書で提案する方法では、はんだ付け後の部品実装基板に対する仰角が異なる方向からそれぞれ色彩の異なる光を照射し、これらの色彩光に対する基板からの正反射光を撮像装置により撮像して生成されたカラー画像を用いて基板上のはんだフィレットの形状を検査する場合に、複数の色彩光のうち、フィレットに照射されて正反射した後に他のフィレットで二次反射して撮像装置に入射する可能性のある色彩光を、あらかじめ特定しておく。そして、複数の色彩光のすべてを照射した状態で基板を撮像する第1撮像と、上記のあらかじめ特定した色彩光を照射せずにその他の色彩光を照射した状態で基板を撮像する第2撮像とを、撮像対象領域を変更せずに順に実行する。さらに、第1撮像によるカラー画像の構成画素の中に、第2撮像によるカラー画像に対する色差が所定のしきい値Aを超え、かつ第2撮像によるカラー画像中の対応画素の明度が所定のしきい値Bを超える画素があるとき、この画素のデータを、第2撮像によるカラー画像中の対応画素のデータに置き換え、この置き換え処理後のカラー画像に対して検査のための画像処理を実行する。
【0017】
上記において、第1撮像は、すべての色彩光による照明下で行われるので、すべての色彩光に対応する色彩が分布するカラー画像を生成することができる。一方、第2撮像では、特定の色彩光が照射されない状態になるので、この光に対応する色彩のないカラー画像が生成される。したがって、第1撮像によるカラー画像と第2撮像によるカラー画像との間で色差を求めると、第2撮像で照射されなかった色彩光に対応する色彩が生じていた部位で大きな色差が抽出されると考えられる。
【0018】
上記の大きな色差が生じるのは、第2撮像時に照射されなかった色彩光に対応する傾斜角度を持つ部位になるほか、二次反射によるノイズが生じていた部位になる。これらのうちノイズが生じていた部位では、第2撮像においても、その部位の傾斜に応じた色彩光の反射光が撮像装置に入射するため、カラー画像においても相応の明度が確保される。しかし、ノイズ以外の部位については、第2撮像では撮像装置に入射する反射光がなくなるため、カラー画像中には周囲よりも暗い領域として現れると考えられる。
【0019】
上記の方法では、第1撮像によるカラー画像中に、第2撮像によるカラー画像に対する色差が所定のしきい値Aを超える画素がある場合に、その画素の第2撮像によるカラー画像中の対応画素の明度が所定のしきい値Bを超えていれば、第1撮像により得た画像データを第2撮像により得た画像データに置き換えるので、二次反射によるノイズが生じている部位を本来の傾斜角度を反映した色彩で表された画像に置き換えることができる。一方、ノイズ以外の部位については、第2撮像による暗い画像データではなく、第1撮像により得た画像データが採用されるので、この部位についても傾斜角度を反映した画像を確保することができる。
【0020】
このようにいずれの部位についても、その傾斜角度を反映した色彩が現れた画像を生成することができるので、この画像に従来と同様の画像処理用のプログラムや判定基準値を適用して検査を行うことが可能になる。
【0021】
さらに、上記の方法が適用された基板外観検査装置は、検査対象の基板に対する仰角が異なる複数方向からそれぞれ色彩の異なる光を照射する照明装置と、この照明装置からの照明光に対する基板からの正反射光を入射可能な位置に配置されたカラー画像用の撮像装置と、照明装置による照明下で撮像装置に撮像を行わせ、生成されたカラー画像を用いて前記基板上のはんだフィレットの形状を検査する制御処理装置とを具備するもので、制御処理装置には、以下の撮像制御手段、色差抽出手段、画像合成手段、画像処理手段の各手段が設けられる。
【0022】
撮像制御手段は、照明装置に複数の色彩光のすべてを点灯させた状態下で撮像装置に撮像を行わせる第1撮像と、複数の色彩光のうちはんだフィレットに照射されて正反射した後に他のはんだフィレットで二次反射して撮像装置に入射する可能性のある色彩光が消され、その他の色彩光が点灯するように照明装置を制御して撮像装置に撮像を行わせる第2撮像とを、撮像対象領域を変更せずに順に実行する。色差抽出手段は、第1撮像により生成されたカラー画像と第2撮像により生成されたカラー画像との間で対応関係にある画素毎に色差を抽出する。画像合成手段は、第1および第2の各撮像により生成されたカラー画像間で対応する画素の組毎にいずれかの画像におけるデータを選択し、選択された各データの集合による画像を作成する。画像処理手段は、画像合成手段により作成された画像に対して検査のための画像処理を実行する。
【0023】
さらに画像合成手段は、前記色差抽出手段により抽出された色差が所定のしきい値Aを超える画素の組のうち第2撮像によるカラー画像中の対応画素の明度が所定のしきい値Bを超える組については前記第2撮像によるカラー画像中の対応画素のデータを選択し、色差がしきい値A以下になる画素の組、および色差はしきい値Aを超えるが第2撮像によるカラー画像中の明度が前記しきい値B以下になる画素の組については前記第1撮像によるカラー画像中の対応画素のデータを選択するように、構成される。
【0024】
上記の検査装置の好ましい態様では、照明装置として、赤、緑、青の色彩光を含む複数種の色彩光をそれぞれ発する複数の発光領域が、それぞれ基板に対する仰角が異なる位置に配備された構成のものを使用する。また制御処理装置の撮像制御手段は、第1撮像においてはすべての発光領域を点灯し、第2撮像においては、所定位置を境界として隣り合う一対の発光領域間の前記境界位置を基準に、この基準の位置よりも基板に対する仰角が大きい発光領域を消灯し、基準の位置より基板に対する仰角が小さい発光領域を点灯する。
【0025】
他の好ましい態様では、照明装置は、赤、緑、青の色彩光をそれぞれ発する3種類の発光領域を具備するとともに、赤色光の発光領域の基板に対する仰角が他の発光領域より大きくなるように構成される。また制御処理装置の撮像制御手段は、第1撮像においては3種類の発光領域をすべて点灯し、第2撮像においては赤色光の発光領域を消灯し、緑色光および青色光の各発光領域を点灯する。
【0026】
上記の各態様を含む基板外観検査装置によれば、二次反射によるノイズが生じているか否かに関わらず、被検査部位について常に正しい傾斜状態を反映する色彩分布をとる画像を自動生成して、検査を実行することが可能になる。よって、従来から蓄積した判定基準をベースに、より精度の高い検査を効率良く実行することが可能になる。
【発明の効果】
【0027】
この発明によれば、二次反射によるノイズの影響を受けることなく、はんだフィレットの形状を精度良く検査することが可能になる。また、照明状態を切り替えて2回の撮像を行うことでノイズの影響が除去されたカラー画像を生成できるから、ハード構成を変更する必要がなく、従来のカラーハイライト方式の検査で蓄積した判定基準を適用した処理が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
図1は、この発明が適用された基板検査装置の光学系の構成、および主要な電気的構成を示す。
この基板検査装置は、はんだ付け処理後のプリント基板Sを対象に、各はんだ付け部位に対するはんだ検査などを実行するもので、検査に関する一連の処理を実行する制御処理装置1に、カメラ2、照明装置3、基板ステージ4などが接続された構成のものである。
【0029】
基板ステージ4には、検査対象の基板を支持するためのテーブル部41や、X軸ステージおよびY軸ステージ(いずれも図示せず。)を含む移動機構42などが含まれる。
【0030】
カメラ2および照明装置3は、「カラーハイライト方式」と呼ばれる光学系を構成する。カメラ2は、検査対象の基板のカラー静止画像を生成するもので、基板ステージ4の上方に撮像面を下方に向け、かつ光軸を鉛直方向に合わせた状態で配備される。
【0031】
照明装置3は、基板ステージ4とカメラ2との間に配置された3個の円環状光源31,32,33により構成される。これらの光源31,32,33は、それぞれ、赤色、緑色、青色の各色彩光を発するもので、各中心部をカメラ2の光軸に位置合わせした状態で配備されている。また各光源31,32,33は、基板から見た仰角がそれぞれ異なる方向から光を照射できるように、互いに異なる大きさの径を有するように設定される。具体的には、赤色光源31の径が最も小さく、最も高い位置に配備される。以下、緑色光源32、青色光源33の順に径が大きくなるとともに、径が大きな光源ほど下方位置に配置される。
【0032】
上記構成の光学系によれば、基板上の各はんだ付け部位について、そのはんだ面の傾斜状態が赤、緑、青の各色彩領域の分布状態に反映されたカラー画像を生成することができる。なお、照明装置3の構成は上記に限らず、LED等の発光素子をリング状に配列した構成の装置によって、赤、緑、青の各色彩光が光源31〜33と同様の関係をもって照射されるようにしてもよい。
【0033】
制御処理装置1は、上記の基板ステージ4やカメラ2の動作を制御しつつ、生成されたカラー画像を処理して各種検査を行うもので、コンピュータによる制御部10に、画像入力部11、撮像制御部12、照明制御部13、XYステージ制御部14、メモリ15、検査結果出力部16,操作部17、モニタ18などが接続された構成のものである。
【0034】
画像入力部11には、カメラ2から三原色の画像信号を受け付けるインターフェース回路や、これらの画像信号をディジタル変換するA/D変換回路などが含まれる。このディジタル変換によって、各画素の色彩は、それぞれR,G,Bの各階調データ(たとえば8ビット構成であれば0〜255の数値範囲をとる。)の組み合わせにより表される。
この明細書では、この色彩毎の階調データの値を、r,g,b値といい、画素単位でのr,g,b値の組み合わせを「色彩データ」という。各画素の色彩データは、それぞれ当該画素のアドレスに対応づけられて、メモリ15の画像格納領域に保存される。
【0035】
撮像制御部12は、カメラ2の撮像タイミングを制御し、照明制御部13は、照明装置3の各光源31〜33の点灯、消灯のタイミングや光量調整などを行う。XYステージ制御部14は、基板ステージ4の移動タイミングや移動量を制御する。
【0036】
メモリ15には、画像データのほか、各被検査部位の検査に用いられるプログラムや検査基準データなどが格納される。制御部10は、これらのプログラムや検査基準データを用いて、検査に関する一連の処理を実行する。大まかに説明すると、基板ステージ4の移動を制御することにより、カメラ2の視野を基板の複数位置に順に合わせながらカメラ2に撮像を行わせる。さらに撮像の都度、画像入力部11により処理されたカラー画像に検査領域を設定して、被検査部位の検出、計測、計測値の適否判定などの処理を実行する。判定の結果は、検査結果出力部16を介して、図示しない外部機器などに出力される。
【0037】
この実施例の基板検査装置では、カラー画像中の各はんだ付け部位(大半はフィレットが形成されている。)に検査領域を設定して、順次はんだ検査を実行する。このはんだ検査では、検査領域内の各画素の色彩データを、それぞれr,g,b毎に設定された2値化しきい値を用いて2値化することによって、視認される色彩が赤色の領域(赤領域)、視認される色彩が緑色の領域(緑領域)、および視認される色彩が青色の領域(青領域)の3種類の色彩領域を抽出する。さらに、これらの色彩領域の面積を個別に計測して、各計測値を判定基準値と照合することにより、はんだ面の傾斜状態の適否を判別する。
【0038】
さらにこの実施例の基板検査装置では、二次反射によるノイズを除去して検査の精度を確保するために、照明状態を切り替えて同じ領域を2回撮像し、各撮像により生成されたカラー画像を合成して、検査のための処理対象画像を生成するようにしている。以下、この処理について詳細に説明する。
【0039】
図2は、この実施例で実施する撮像処理を模式的に示す。なおここでは、チップ部品6の一対のフィレット7,8のうちの右側のフィレット7に、二次反射が生じるものとして、このフィレット7の画像を処理する例を示す。ただし実際の検査では、右側に限らず、ノイズの影響を受けない左側のフィレット8に対しても同様の処理が実行される。
【0040】
この実施例では、1回目の撮像(以下「第1撮像」という。)は、3つの光源31,32,33をすべて点灯した状態で行うが、2回目の撮像(以下「第2撮像」という。)の際には、二次反射光がカメラ2に入射する可能性のある光を発する赤色光源31を消灯し、その他の光源32,33を点灯する。
【0041】
第1撮像では、赤、緑、青の各反射光がカメラ2に入射するため、これらの反射光に対応する赤、緑、青の各色領域を含むカラー画像が生成される(以下、この画像を「R−ON画像」という。)。
一方、第2撮像では、赤色光源31の消灯によって赤色の反射光がカメラ2に入射しない状態になるため、赤色を含まないカラー画像が生成される(以下、この画像を「R−OFF画像」という。)。
【0042】
R−ON画像では、フィレット7の基板面に近い部位が赤色領域として表されるほか、二次反射による赤色のノイズ領域50が現れる。
フィレット7のノイズ領域50に対応する部位では、第2撮像の際には、カメラ2に入射する二次反射光が消失するため、R−OFF画像では、本来の傾斜角度に対応する青色が現れる。一方、フィレット7の基板面に近い部位では、カメラ2に入射する反射光がなくなるため、R−OFF画像においては、明度の低い領域(以下、「暗領域」という。)として表される。
【0043】
そこでこの実施例では、R−ON画像中の赤色領域のうち、フィレット7の本来の傾斜面を表す部位の赤色をそのまま維持する一方で、二次反射によるノイズ領域50を消失させるために、この領域50内の画素の色彩データを、R−OFF画像側のデータに置き換えるようにしている。このような置き換えを行うには、ノイズ領域50を正確に見分ける必要がある。
【0044】
ノイズ領域50を見分けるために、この実施例では、R−ON画像とR−OFF画像との間で対応関係にある画素(座標が実質同一になる画素)の組毎に色差(R,G,Bの色パラメータ毎の差分値の自乗の和またはその平方根)を算出し、その算出値が所定のしきい値Aを上回る画素を抽出する。図2では、この色差の算出およびしきい値との比較の結果を、しきい値Aを上回る画素を白画素、それ以外を黒画素とする2値画像(以下「色差画像」という。)として表している。
【0045】
図3は、色差の算出後に行われる処理を模式的に示す。
この処理では、色差がしきい値Aを上回った画素(色差画像中の白画素)をR−OFF画像の対応画素と照合し、R−OFF画像における明度が所定のしきい値Bを上回る画素による領域をノイズ領域50として特定する。そして、R−ON画像に対してはノイズ領域50に対応するマスクを設定し、R−OFF画像に対してはノイズ領域50以外の部分に対応するマスクを設定し、各画像のマスクがかけられていない部分を合成することによって処理対象画像を生成する。この結果、処理対象画像は、二次反射が生じていないときの画像(図7に示したもの)と同様になる。
【0046】
上記のように、3つの光源31〜33をすべて点灯したときに二次反射によるノイズが発生する場合でも、第2撮像と画像合成処理とを実行することによって、ノイズのない、各色彩によりフィレットの傾斜状態が正しく表された処理対象画像を得ることができる。よって、このカラー画像に対し、従来と同様の検査プログラムや判定基準を適用して精度の高い判別処理を行うことができる。
【0047】
また図2,3に示した処理では、ノイズ領域50の赤色は消去されても、本来の傾斜状態を反映した赤領域が誤って消去されることはないので、ノイズのない画像を処理しても、なんら問題が生じるおそれがない。
【0048】
図4は、形状が良好で二次反射が生じていないフィレット7(図4の(1))、形状は良好であるが二次反射が生じているフィレット7(図4の(2))、およびぬれ不良のはんだ7E(図4の(3)について、R−ON画像、R−OFF画像、色差画像の各画像を対比して示す。また、色差画像中の白領域のうち、R−OFF画像中での明度がしきい値Bを超える部分を、斜線で示している。
【0049】
図4の(1)(3)の例では、R−ON画像中に出現する赤色領域は、すべて本来の傾斜角度を反映するものであるから、R−OFF画像では暗領域となる。したがって、これらの暗領域は、R−OFF画像に対する色差がしきい値Aを上回る領域となるが、R−OFF画像における明度はしきい値B以下になるため、二次反射によるノイズではないと判断され、R−ON画像のデータが採用される。
【0050】
このように、ノイズが生じていない場合には、R−ON画像の赤色領域はすべて維持され、検査に誤判別が生じるおそれがない。よって、二次反射が生じているか否かに関わらず、フィレット検査の際に常に図2,3に示した処理を行うことによって、突発的なノイズの発生にも対応することができ、検査の精度を確保することができる。
【0051】
つぎに、図5は、先の図3に示した画像合成を実現するために制御部10が実行する処理手順を示す。この図に示すように、実際の処理では、R−ON画像とR−OFF画像との間で求めた色差やR−OFF画像における明度に基づき、両画像間で対応関係にある画素の組毎にいずれか一方の画像の色彩データを選択する処理を実行し、選択された各色彩データの集合体を処理対象のカラー画像とする。
【0052】
具体的には、図5の処理は、R−ON画像およびR−OFF画像の同一の範囲の画像を対象に実行される。この処理対象範囲は、1つの部品およびその部品に対応するすべてのフィレットを含むように設定される。ただし、フィレット単位で処理対象範囲を定めるようにしてもよい。
【0053】
最初のステップであるST101では、両画像間の対応画素毎に色差を算出する。この場合、フィレットや部品本体など正反射光が優勢になる部位のうち、緑色や青色の反射光がカメラ2に入射する部位については、顕著な色差は算出されない。色差が顕著になるのは、赤色の反射光がカメラ2に入射する部位になると考えられる。
【0054】
つぎのST102では、現在の処理対象範囲の画素毎に「判定用フラグ」を設定する。この判定用フラグは、対応する画素について、R−ON画像およびR−OFF画像のいずれの色彩データを選択するかを示すもので、このフラグがオフであれば、R−ON画像のデータが選択される。ST102の段階では、すべての画素の判定用フラグが「オフ」に設定される。
【0055】
ST103では、各画素の中から、ST101で算出された色差がしきい値Aを上回るものを抽出し、抽出した各画素に対し、ST104〜109のループを実行する。
このループでは、R−OFF画像中の対応画素のr,g,b値を抽出し、これらの値から当該画素の明度Lを算出する(ST105,106)。さらに、この明度Lをしきい値Bと比較し、L>Bであれば、当該画素に対応する判定用フラグをオフからオンに切り替える(ST107,108)。
【0056】
上記のループによれば、色差がしきい値Aを上回り、かつR−OFF画像における明度がしきい値Bを上回る画素(すなわち二次反射によるノイズ領域50に含まれる画素)では、判定用フラグがオンに設定される。それ以外の画素については、判定用フラグはオフのままとなる。
【0057】
ST110では、合成画素として、各画素のr,g,b値がすべてゼロの画像を初期設定する。以下、この画像中の各画素を対象にST111〜116のループを実行することにより、合成画像を完成させる。
【0058】
このループでは、まず着目中の画素に対応する判定用フラグを読み出し(ST112)、この判定用フラグがオンであれば、着目中の画素のr,g,b値をR−OFF画像の対応画素の値に変更する(ST114)。一方、判定用フラグがオフであれば、着目中の画素のr,g,b値をR−ON画像の対応画素の値に書き換える(ST115)。
【0059】
図6は検査に関する処理手順を示す。ただし、ここでは、説明を簡単にするため、基板に対する撮像対象領域を1つとし、検査もフィレット検査に限定する。
【0060】
まずST1では、検査対象の基板Sを基板ステージ4に搬入し、カメラ2および照明装置3を基板Sに対して位置決めする。位置決めが終了すると、ST2において、すべての光源31,32,33を点灯した状態で撮像(第1撮像)を行う。これによりR−ON画像が生成される。
【0061】
つぎのST3では、赤色光源31を消灯し、その他の光源32,33を点灯した状態下で撮像(第2撮像)を行う。これによりR−OFF画像が生成される。
【0062】
2つのカラー画像が生成されると、この後は、フィレット検査の対象となる部品毎にST4〜8のループを実行する。このループ中のST5は、図5に詳細に示した画像合成処理(ST101〜116)にあたる。この処理により部品単位の合成画像が生成されると、ST6では、この画像中の各ランド部に検査領域を設定する。さらにST7では、設定した検査領域毎に、各色彩領域を2値化により検出し、各色彩領域の位置や面積を計測し、得られた計測値を判定基準値と比較することにより、フィレットの良否を判定する。毎時の判定結果は、メモリ15内に一時保存される。
【0063】
なお、ランド単位での画像合成処理を行う場合には、まずR−ON画像に基づいて各ランド部に検査領域を設定し、検査領域毎に画像合成処理を行えばよい。
【0064】
検査対象の部品に対する処理がすべて実行されると、ST9では、各検査領域毎の判定結果を基板単位の検査結果データに編集し、これをメモリ15に保存するとともに、外部機器などに出力する。この後は、ST10で基板Sを搬出し、処理を終了する。
【0065】
なお、図6の例では、第1撮像を実行した後に第2撮像を実行したが、撮像の順序はこれに限らず、第2撮像を先に行い、その後に第1撮像を行ってもよい。
【0066】
また上記の実施例では、赤、緑、青の3種類の光源31〜33を具備する照明装置3を使用したが、光源の数はこれに限らず、それぞれ異なる色彩光を発する4種類以上の光源(赤、緑、青の各色彩光を含むのが望ましい。)を基板Sに対する仰角が異なる位置に配置した構成のものを使用してもよい。また、この構成において、基板Sに対する仰角が大きい方向にある複数の光源からの色彩光により二次反射によるノイズが生じる可能性がある場合には、第2撮像では、これら複数の光源を消灯対象とすればよい。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】基板検査装置の電気的構成を光学系の構成とともに示すブロック図である。
【図2】フィレット検査の際の処理の概要を示す説明図である。
【図3】フィレット検査の際の処理の概要を示す説明図である。
【図4】二次反射の有無およびぬれ不良について、R−ON画像、R−OFF画像、色差画像を対比して示す説明図である。
【図5】画像合成処理の手順を示すフローチャートである。
【図6】検査の手順を示すフローチャートである。
【図7】良品フィレットにおける反射状態および生成されるカラー画像を示す説明図である。
【図8】二次反射が生じている場合の反射状態および生成されるカラー画像を示す説明図である。
【図9】不良はんだにおける反射状態および生成されるカラー画像を示す説明図である。
【符号の説明】
【0068】
S 基板
1 制御処理装置
2 カメラ
3 照明装置
7 フィレット
10 制御部
31,32,33 光源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
はんだ付け後の部品実装基板を検査対象として、この基板に対する仰角が異なる方向からそれぞれ色彩の異なる光を照射し、これらの色彩光に対する基板からの正反射光を撮像装置により撮像して生成されたカラー画像を用いて前記基板上のはんだフィレットの形状を検査する方法において、
前記複数の色彩光のうち、はんだフィレットに照射されて正反射した後に他のはんだフィレットで二次反射して前記撮像装置に入射する可能性のある色彩光を、あらかじめ特定しておき、
前記複数の色彩光のすべてを照射した状態で前記基板を撮像する第1撮像と、前記あらかじめ特定した色彩光を照射せずにその他の色彩光を照射した状態で前記基板を撮像する第2撮像とを、撮像対象領域を変更せずに順に実行し、
前記第1撮像によるカラー画像の構成画素の中に、前記第2撮像によるカラー画像に対する色差が所定のしきい値Aを超え、かつ第2撮像によるカラー画像中の対応画素の明度が所定のしきい値Bを超える画素があるとき、この画素のデータを、第2撮像によるカラー画像中の対応画素のデータに置き換え、この置き換え処理後のカラー画像に対して検査のための画像処理を実行する、
ことを特徴とする、はんだフィレットの検査方法。
【請求項2】
検査対象の基板に対する仰角が異なる複数方向からそれぞれ色彩の異なる光を照射する照明装置と、この照明装置からの照明光に対する基板からの正反射光を入射可能な位置に配置されたカラー画像用の撮像装置と、前記照明装置による照明下で撮像装置に撮像を行わせ、生成されたカラー画像を用いて前記基板上のはんだフィレットの形状を検査する制御処理装置とを具備する装置であって、
前記制御装置には、
前記照明装置に複数の色彩光のすべてを点灯させた状態下で前記撮像装置に撮像を行わせる第1撮像と、前記複数の色彩光のうちはんだフィレットに照射されて正反射した後に他のはんだフィレットで二次反射して撮像装置に入射する可能性のある色彩光が消され、その他の色彩光が点灯するように前記照明装置を制御して前記撮像装置に撮像を行わせる第2撮像とを、撮像対象領域を変更せずに順に実行する撮像制御手段、
前記第1撮像により生成されたカラー画像と第2撮像により生成されたカラー画像との間で対応関係にある画素毎に色差を抽出する色差抽出手段、
前記第1および第2の各撮像により生成されたカラー画像間で対応する画素の組毎にいずれか一方の画素のデータを選択し、選択された各データの集合による画像を作成する画像合成手段、
前記画像合成手段により作成された画像に対して検査のための画像処理を実行する画像処理手段、
の各手段を具備し、
前記画像合成手段は、前記色差抽出手段により抽出された色差が所定のしきい値Aを超える画素の組のうち、第2撮像によるカラー画像の明度が所定のしきい値Bを超える組については前記第2撮像によるカラー画像のデータを選択し、前記色差がしきい値A以下になる画素の組、および色差はしきい値Aを超えるが第2撮像によるカラー画像の明度が前記しきい値B以下になる画素の組については前記第1撮像によるカラー画像のデータを選択する、
ことを特徴とする基板外観検査装置。
【請求項3】
前記照明装置は、赤、緑、青の色彩光を含む複数種の色彩光をそれぞれ発する複数の発光領域が、それぞれ基板に対する仰角が異なる位置に配備されて成り、
前記制御処理装置の撮像制御手段は、第1撮像においてはすべての発光領域を点灯し、第2撮像においては、所定位置を境界として隣り合う一対の発光領域間の前記境界位置を基準に、この基準の位置よりも基板に対する仰角が大きい発光領域を消灯し、前記基準の位置より基板に対する仰角が小さい発光領域を点灯する、請求項2に記載された基板外観検査装置。
【請求項4】
前記照明装置は、赤、緑、青の色彩光をそれぞれ発する3種類の発光領域を具備するとともに、赤色光の発光領域の基板に対する仰角が他の発光領域より大きくなるように構成され、
前記制御処理装置の撮像制御手段は、第1撮像においては3種類の発光領域をすべて点灯し、第2撮像においては赤色光の発光領域を消灯し、緑色光および青色光の各発光領域を点灯する、請求項2に記載された基板外観検査装置。

【図1】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−309580(P2008−309580A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−156515(P2007−156515)
【出願日】平成19年6月13日(2007.6.13)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】