説明

はんだ付け検査方法およびはんだ付け検査装置

【課題】はんだ過多の不良は、はんだ量によって決定される良否であるため、はんだ付け部の高さ計測により検査することができるが、基板のはんだ付け部はその数が多く、はんだ付け部全ての高さ計測を実施すると、生産タクトが大幅に増大してしまうという課題を解決すること。
【解決手段】課題を解決するための本発明のはんだ付け検査方法は、基板の表面に垂直な垂直方向におけるはんだ量が多い状態をはんだ過多とし、前記はんだ過多を検出するはんだ付け検査方法であって、前記垂直方向から前記基板のはんだを撮像する撮像工程と、前記撮像工程で撮像された画像に基づいてはんだ過多候補を抽出する候補抽出工程と、前記候補抽出で抽出されたはんだ過多候補の前記垂直方向の高さ測定を行う高さ測定工程と、前記高さ測定工程で測定された高さに基づいてはんだ過多を検出する検出工程と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上にはんだ付けされた電子部品のはんだ付けの良否を検査する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、プリント基板上にはんだ付けされた電子部品の良否を、画像処理を用いて検査する手法がある(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
図9は、特許文献1に開示された、従来のはんだ付け検査方法を示すフローチャートである。図9に示すように、従来の検査手法は、電子部品と端子の導電パターンとのはんだ付け部を撮像し、撮像画像のはんだ付け部分に発生した輝点の数が2つである場合に、はんだ過多の不良であると判定する手法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−149886号公報(第3頁、図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
はんだ過多の不良は、はんだ量によって決定される良否であるため、はんだ付け部の高さ計測により検査することができる。しかしながら、基板のはんだ付け部はその数が多く、はんだ付け部全ての高さ計測を実施すると、生産タクトが大幅に増大してしまう。
【0006】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、高速かつ高精度なはんだ付け検査を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記従来の課題を解決するために、本発明のはんだ付け検査方法は、基板の表面に垂直な垂直方向におけるはんだ量が多い状態をはんだ過多とし、前記はんだ過多を検出するはんだ付け検査方法であって、前記垂直方向から前記基板のはんだを撮像する撮像工程と、前記撮像工程で撮像された画像に基づいてはんだ過多候補を抽出する候補抽出工程と、前記候補抽出で抽出されたはんだ過多候補の前記垂直方向の高さ測定を行う高さ測定工程と、前記高さ測定工程で測定された高さに基づいてはんだ過多を検出する検出工程と、を有することを特徴とする。
【0008】
また、本発明のはんだ付け検査装置は、基板の表面に垂直な垂直方向におけるはんだ量が多い状態をはんだ過多とし、前記はんだ過多を検出するはんだ付け検査方法であって、前記垂直方向から前記基板のはんだを撮像する撮像工程と、前記撮像工程で撮像された画像に基づいてはんだ過多候補を抽出する候補抽出工程と、前記候補抽出で抽出されたはんだ過多候補の前記垂直方向の高さ測定を行う高さ測定工程と、前記高さ測定工程で測定された高さに基づいてはんだ過多を検出する検出工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
以上のように、本発明によれば、高速かつ高精度なはんだ付け検査を実現することができる。具体的には、電子部品が30個実装される基板において、はんだ過多不良が0個かつはんだ過多候補が3個の場合、本発明は、従来と比べて、所要時間が1/20になる。数千枚の基板を連続で検査する場合に、特に大きな効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態1のはんだ付け検査装置の概略構成を示す斜視図
【図2】(a)本実施の形態1の測定対象物を説明するための図、(b)チップ部品近傍を上から見た図、(c)チップ部品近傍を横から見た図
【図3】本実施の形態1のはんだ付け検査のフローチャート
【図4】本実施の形態1のはんだ過多候補の検査のフローチャート
【図5】(a)本実施の形態1のチップ部品を上から見た重心説明用の図、(b)本実施の形態1のチップ部品を横から見た重心説明用の図
【図6】本実施の形態1の検査エリアではんだ色部をラベリングした結果を示す図
【図7】(a)本実施の形態1の検査結果の実画像を示す図、(b)実画像を閾値T1を用いて抽出したはんだ色を有する領域を示す図、(c)実画像を閾値T2を用いて抽出したはんだ色を有する領域を示す図
【図8】(a)本実施の形態1の検査エリアに対して閾値T2を用いてはんだ色部を抽出した結果を示す図、(b)電極基準寸法および電極基準寸法を示す図
【図9】従来のはんだ付け検査方法を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明において、同じ構成には同じ符号を付けて、適宜、説明を省略している。また、図面は、理解を容易にするために一部簡略化している。
【0012】
(実施の形態1)
本実施の形態1のはんだ付け検査装置について、その概略構成を図1を用いて説明する。図1は、本発明の実施の形態1のはんだ付け検査装置の概略構成を示す斜視図である。
【0013】
図1に示すように、検査装置1は、CPUなどの内部の処理部(図示せず)で検査処理を行う処理装置(PC)2と、この処理装置2に接続された撮像用カメラ3および照明装置4と、この撮像用カメラ3および照明装置4が取付けられてXY軸に移動可能なXY可動軸5と、基板6を搬送する搬送コンベア7とから構成される。
【0014】
さらに、検査装置1は、基板6上の電極の判定結果ではんだ過多候補と判定された箇所のはんだ高さを計測するための光学式測長機8を備える。そして、この光学式測長機8での高さ計測の結果が、事前に設定された高さ基準値を超えているものを、はんだ過多(はんだの量が多過ぎる箇所)とみなすことで、従来より高精度な検査を可能とするものである。
【0015】
本実施の形態1の測定対象物について説明する。図2(a)は、本実施の形態1の測定対象物を説明するための図で、図2(b)は、基板6上のチップ部品近傍を上から見た図で、図2(c)は、基板6上のチップ部品近傍を横から見た図である。図2(a)では、実際の基板では、基板6上に複数のチップ部品が実装されるが、ここでは、理解を容易にするために、チップ部品9を1つだけ図示している。
【0016】
図2(a)に示すように、基板6上のランド10a,10bに設けられたチップ部品9は、はんだ11a,11bによりランド10a,10bと接合されている。詳しくは、図2(b)、図2(c)に示すように、チップ部品9の両端の電極部12a,12bが、はんだ11a,11bによりランド10a,10bと接合されている。
【0017】
はんだ過多の検査をするための検査エリアは、図2(b)に破線で示すように、チップ型部品9の電極部10a,10bとはんだ11a,11bを含むような検査エリア14a,14bを設定する。この検査エリア14a,14bで、はんだ色部を抽出するための色空間の閾値として、閾値T1と閾値T2を設定しておく。
【0018】
本実施の形態1の検査方法では、電極部10a,10bと、過剰量のはんだ11aが電極部10aを覆っているような部分(はんだ過多部)とを、照明装置4によって、はんだ色部を有するように光らせることを前提とする。この時に、電極部10a,10bおよびはんだ過多部11aを以外にはんだ色部を有する部分が、検査エリア14a,14b内に存在することが過検出の原因となると考えられる。
【0019】
ここで、本実施の形態1の検査装置1でのはんだ付け検査の流れを説明する。図3は、本実施の形態1のはんだ付け検査のフローチャートである。
【0020】
図3に示すように、まず、照明装置4で、基板6を照明する(図3のステップS1)。次に、照明装置4により照明された基板6を撮像用カメラ3で撮像する(図3のステップS2)。次に、ステップS2での撮像結果より、チップ部品9のはんだ11がはんだ過多候補か否かを判定する(図3のステップS3)。次に、ステップS3ではんだ過多候補だと判定された箇所の高さを測定する(図3のステップS4)。そして、ステップS4の高さの測定結果と所定の閾値とを比較して、はんだ過多か否かを判定する(図3のステップS5)。これらのステップにより、基板6上のチップ部品9のはんだ11のはんだ過多の判定を行う。
【0021】
以下、図3のステップS3のはんだ過多候補抽出の具体的な処理について、図4に示す本実施の形態1のはんだ過多候補の検査のフローチャートを用いて説明する。
【0022】
まず、撮像された画像の検査エリア14a,14b内で、はんだ設定値(色ではんだ部か否かを判定する値)の基準である閾値T1と、ランド設定値(色でランド部か否かを判定する値)の基準である閾値T2とを設定する(図4のステップS11)。
【0023】
次に、検査エリア14a,14b内で、閾値T1以上となる領域を抽出し、はんだ色部を抽出する(図4のステップS12)。なお、ここで、必要に応じて検査エリア14a,14bにフィルタリング処理を施しておいてもよい。このフィルタリング処理としては、例えば、検査エリアを収縮することや膨張すること、ランカット(距離1画素)などを用いることで、判定精度がより向上する。
【0024】
次に、検査エリア14a,14bで抽出された領域(はんだ色部を有する部分)にラベリング処理を施し、ラベル付けされた領域の中で、面積が最大の領域を抽出して判定する(図4のステップS13)。面積が最大の領域の重心値15が、事前に設定してある検出重心判定許容値16よりも大きい場合(ステップS13のNO)に良品と判定し、小さい場合(ステップS13のYES)には次の判定処理を実施する。
【0025】
ここで、重心値15と検出重心判定許容値16について、図5(a),(b)を用いて説明する。図5(a)は、本実施の形態1のチップ部品を上から見た重心説明用の図で、図5(b)は、本実施の形態1のチップ部品を横から見た重心説明用の図である。図5(a),(b)に示すように、良品の場合でも、検査エリア14a,14b内に、はんだ付けの状態がめっきのようなる部分(めっき部17)が現れてしまう場合が起こることがある。この時は、めっき部17もはんだ色を有する領域として抽出される。だが、本実施の形態では、めっき部17の重心値15を検出し、検出重心判定許容値16と比較する。めっき部17の重心値15が検出重心判定許容値16よりも大きい場合は、良品と判定する。
【0026】
次に、面積が最大となる塊の重心値が検出重心判定許容値16よりも小さかった場合に実施する判定処理について、図2(b)、(c)と図6を用いて説明する。
【0027】
まず、図2(b)、(c)のように、電極部10aの上部にはんだ11が覆いかぶさっているような場合は、検査エリア14a、14bではんだ色部をラベリングし、最大面積を有する塊を抽出する(図4のステップS14)。この抽出結果は、図6にようになる。
【0028】
まず、検査エリア14a内の塊18a、検査エリア14b内の塊18bの計測面積が、基準電極面積の範囲内(面積比(計測面積/基準電極面積)が、上下限の範囲内)にあるか否かを判定する(面積判定。図4のステップS15)。ここで、基準電極面積は、電極部10a、10bの基準寸法と公差に基づいて事前に設定しておく。
【0029】
抽出された塊の面積が基準電極面積の範囲内に存在する場合(ステップS15のNO)は良品判定とし、範囲外の場合(ステップS15のYES)は次のサイズ判定処理を実施する。図6の場合は、塊18bは面積判定にて良品判定をされ、塊18aに対してサイズ判定が実施される。
【0030】
図6に示すように、塊18aから幅19aを計測し(塊18bの場合は幅19bに相当)、この幅19aが事前に設定しておく基準電極幅の範囲内であるかを判定する(サイズ判定。図4のステップS16)。幅19aが基準電極幅の範囲内の場合(ステップS16のNO)は良品判定とし、範囲外の場合(ステップS16のYES)は次に説明する電極判定のための画像処理をする。図6の場合では、幅19aは基準電極幅の範囲外であったとして、以降の処理を行う。
【0031】
電極判定を実施する前の画像処理として、閾値T2を用いて、はんだ色部を抽出し、閾値T1を用いた時と同様に、ラベリング処理、面積最大の塊の検出重心判定許容値判定を行い、最大面積を有する塊を抽出する(図4のステップS17)。ここで、閾値T2は、前述の閾値T1よりに比べ過剰はんだ部の抽出領域を少なくし、電極部のみを抽出するように設定された閾値である。図7(a)の実画像20に対して閾値T1を用いて抽出したはんだ色を有する領域21を図7(b)に、閾値T2を用いて抽出したはんだ色を有する領域22を図7(c)にそれぞれ示す。
【0032】
図8(a)の領域23は、検査エリア14aに対して閾値T2を用いてはんだ色部を抽出し、前述の画像処理を行った結果である。この領域23より、寸法23aと寸法23bを計測し、図8(b)に示すように、事前に入力しておいた電極基準寸法24aおよび電極基準寸法24bと組み合わせて下の表1のような比を定義する。
【0033】
【表1】

【0034】
表1にある電極比1、電極比2、縦横比の上下限をチップ型部品9の基準寸法および公差から算出し、事前に入力しておくことにより、それぞれの値が上下限内にあるか否かを表2のように判断する(図4のステップS18)。このステップS18により、はんだ過多候補を決定する。表2の電極形状との相関判定の判定基準は、種々の実験を基にして、発明者らが見出した条件である。
【0035】
【表2】

【0036】
表2に示すように、電極比1、電極比2、縦横比が全て上下限内の場合(ステップS18の全て上下限外)は、良品と判定し(図4のステップS19)、電極比1、電極比2、縦横比の少なくとも1つが上下限外の場合(ステップS18の上下限外)は、はんだ過多候補であると判定する(図4のステップS20)。
【0037】
本発明は、図4および表1、表2に示すようにしてはんだ過多候補を抽出することで、測定に時間のかかる高さ測定の数を減らし、より高速かつ高精度なはんだ付け検査を実現する事ができる。具体的には、電子部品が30個実装される基板において、はんだ過多不良が0個かつはんだ過多候補が3個の場合、本発明は、従来と比べて、所要時間が1/20になる。数千枚の基板を連続で検査する場合に、特に大きな効果を有する。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、はんだ過多候補を抽出した後に、はんだ過多を検出できるので、高速かつ高精度なはんだ付け検査装置に利用することが可能である。
【符号の説明】
【0039】
1 検査装置
2 処理装置
3 撮像用カメラ
4 照明装置
5 XY可動軸
6 基板
7 搬送コンベア
8 光学式測長機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の表面に垂直な垂直方向における電子部品のはんだ量が多い状態をはんだ過多とし、前記はんだ過多を検出するはんだ付け検査方法であって、
前記垂直方向から前記基板のはんだを撮像する撮像工程と、
前記撮像工程で撮像された画像に基づいてはんだ過多候補を抽出する候補抽出工程と、
前記候補抽出で抽出されたはんだ過多候補の前記垂直方向の高さ測定を行う高さ測定工程と、
前記高さ測定工程で測定された高さに基づいてはんだ過多を検出する検出工程と、を有する、
はんだ付け検査方法。
【請求項2】
前記候補抽出工程が、はんだ部か否かを色で判定するはんだ設定値の閾値T1と、ランド部か否かを色で判定するランド設定値の閾値T2とを基準に判定する工程である、
請求項1記載のはんだ付け検査方法。
【請求項3】
前記候補抽出工程が、はんだ部の重心値が検出重心判定許容値よりも大きい箇所をはんだ過多候補として抽出する工程である、
請求項1または2記載のはんだ付け検査方法。
【請求項4】
前記候補抽出工程が、前記電子部品の基準電極面積に対するはんだ部の計測面積の比に基づいてはんだ過多候補を抽出する工程である、
請求項1から3いずれかに記載のはんだ付け検査方法。
【請求項5】
前記候補抽出工程が、はんだ部の縦横の幅に基づいてはんだ過多候補を抽出する工程である、
請求項1から4いずれかに記載のはんだ付け検査方法。
【請求項6】
前記候補抽出工程が、はんだ部の形状と前記電子部品の電極形状との相関に基づいてはんだ過多候補を抽出する工程である、
請求項1から5いずれかに記載のはんだ付け検査方法。
【請求項7】
基板の表面に垂直な垂直方向におけるはんだ量が多い状態をはんだ過多とし、前記はんだ過多を検出するはんだ付け検査装置であって、
前記垂直方向から前記基板のはんだを撮像する撮像手段と、
前記撮像工程で撮像された画像に基づいてはんだ過多候補を抽出する候補抽出手段と、
前記候補抽出で抽出されたはんだ過多候補の前記垂直方向の高さ測定を行う高さ測定手段と、
前記高さ測定工程で測定された高さに基づいてはんだ過多を検出する検出手段と、を備える、
はんだ付け検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−112420(P2011−112420A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−267107(P2009−267107)
【出願日】平成21年11月25日(2009.11.25)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】