説明

インプラント可能な装置

本発明は、少なくとも1つの治療剤に対する供給装置としてのインプラント可能な装置において、少なくとも1つの治療剤に対する少なくとも2つのタイプの貯蔵部を有する少なくとも1つの基材からなり、前記各タイプの貯蔵部は独立して前記少なくとも1つの治療剤に対する同一又は異なる放出率を与えるインプラント可能な装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般的にはインプラント可能な装置、及び人間又は人間以外の患者にインプラント可能な装置の静脈内導入又は外科的導入、すなわち身体領域例えば血管その他のルーメンのような通路への導入、又は軟組織又は骨への直接導入を伴う治療方法に関する。
【背景技術】
【0002】
過去において、インプラント可能な医療装置を血管系、食道、気管、結腸、胆管、尿管、膵臓、子宮、その他人間又は人間以外の患者の部分に部分的又は完全に導入することにより様々な疾患を治療する種々の医療装置が開発されている。
【0003】
一例として、血管系の治療は、典型的には、ステント、カテーテル、カニューレ、バルーン等の装置の導入である。しかし、残念ながら、そのような装置が所望の部位に位置するまで導入されると、血管壁がかき乱され、傷つけられることもある。この結果、傷ついた部位に血栓が起こり、血管の狭窄/閉塞が生じる。
【0004】
さらに、医療装置が身体部位のルーメン内に長期間に配置されていると、血栓が装置に形成され、狭窄/閉塞が生じる。この結果、患者は、発作、心臓発作、肺塞栓を含む様々な合併症を起こす危険性がある。
【0005】
欠陥が狭窄を生じる他の理由は疾病である。例えば、狭窄を生じる最も普通の理由は、アテローム性動脈硬化である。アテローム性動脈硬化は、脂肪物質、コレステロール、細胞老廃物、カルシウムその他の物質が動脈の内層に形成される過程である。プラクは大きく成長し、動脈を通る血液流れを著しく減少する(虚血)。しかし最も危険な損傷はそれらが壊れやすくなり破裂したときに生じる。破裂したプラクは凝血を生じ、血液の流れを閉塞し、心臓発作又は発作を引き起こす。
【0006】
多くの医療装置及び治療方法がアテローム性動脈硬化の治療で公知である。おそらく最も普通のものは経皮径ルーメン血管形成術(PTA)である。PTAはダブルルーメンカテーテルの装着された非順応性(noncompliant)バルーンを使用するグルンツヒ(Gruntzig's)のオリジナルコンセプトに基づいている。第1のルーメンはバルーンカテーテルがガイドワイヤ上を前進するのを許容し、造影剤の注入を可能にする一方、第2のルーメンはバルーンを所定の径に膨張させるのに役立つ。詳細には、バルーンが先端に取り付けられたカテーテルは、バルーンを収縮させて患者の動脈に挿入される。カテーテルの先端は膨張すべきアテローム性動脈硬化の部位まで前進させられる。バルーンは狭窄部分内又は当該狭窄部分を横切るように配置され、その後膨張させられる。
【0007】
血管内ステントのような装置は、特に血管形成後に急性的な閉塞又は閉塞のおそれがある場合に、PTAの補助として有益である。しかしながら、拡張工程後の初期時間の直後又はその時間内に治療血管が急性閉塞をこうむることが観察されると、PTAの使用は妨げられる。PTAで遭遇する他の制限は、再狭窄と呼ばれ、初期の首尾よい血管形成後に動脈を再び狭くすることである。この状態は、典型的には、血管形成後の最初の6ヶ月の間に生じ、血管内皮細胞の増殖及び移動、及び/又は動脈壁の再建によって引き起こされると信じられている。
【0008】
それにもかかわらず、局所支持解放デリバリーシステムは、全身毒(systemic toxicity)の問題が本質的に回避されるような治療剤の高度局部濃縮及び/又は制御供給が望まれる、ある病状を治療する最良の方法を依然として提供している。アテローム性動脈硬化以外の病状及び疾病は、ステント、カテーテル、カニューレその他の装置を血管系、食道、気管、結腸、胆管、尿管、膵臓、子宮、その他の人間又は獣患者の通路、ルーメン、血管のような身体の部分に部分的又は完全に挿入することで治療可能である。
【0009】
このような病状や疾病を治療又は予防するために医療手順中又はその後に適切な治療剤を確実に身体に直接供給する装置及び方法を開発することが望ましい。
【0010】
ポリマーと治療的に活性の物質からなる第1複合層で被覆され、繊維素からなる第2層で被覆された金属ステントがヨーロッパ特許出願EP―A―0701802に開示されている。
【0011】
公知のステント設計は、さらにアテローム性動脈硬化の治療用の薬剤含浸ポリマー被覆金属ステント、パクリタキセルで被覆された生物分解性薬剤溶出ポリマーステントを含む(EP0711158B1)。
【0012】
EP0747069の発明は、インプラント可能な医療装置に関し、その構造の表面又はその構造の少なくとも一部の凹部、穴、溝、スロット等に治療剤を加える。追加の多孔層により治療剤の放出を制御することができる。
【0013】
EP0809515は、ステント材料に治療剤が含浸され、さらに生物分解性コーティング、又は放出投与型治療剤を保持し多孔浸透性非生物分解性コーティングが被覆された生物分解性ステントに関する。この発明の実施形態は、放出量が異なる治療剤を提供することができる。コーティングからの治療剤が早く放出し、その後にステント母体(stent matrix)が分解すると遅れてステント母体に含浸された療剤が放出する。
【0014】
US6562065は、複数の細長いビームからなる膨張可能な医療装置を開示し、複数の細長いビームは互いに結合してほぼ円筒の装置を形成し、有益な薬剤を収容する複数の穴を有している。
【特許文献1】EP―A―0701802
【特許文献2】EP0711158B1
【特許文献3】EP0747069
【特許文献4】EP0809515
【特許文献5】US6562065
【発明の開示】
【0015】
本発明は、請求項1によるインプラント可能な装置を提供する。本発明のさらに好ましい特徴は、従属項により提供されている。さらに、本発明はこのようなインプラント可能な装置を使用する治療の方法を提供する。
【0016】
他の局面では、本発明は請求項10によるインプラント可能な装置を提供する。本発明はまた請求項23による生体動物へのインプラントに適した装置に向けられている。さらに本発明は請求項24に記載のステント配置と請求項29に記載のインプラント可能な装置を提供する。本発明の装置は薬剤溶出繊維からなっていてもよいし、請求項34に記載の装置が提供されている。
【0017】
本発明の1つの局面では、少なくとも1つの治療剤に対する供給装置としてのインプラント可能な装置において、少なくとも1つの治療剤に対する少なくとも2つのタイプの貯蔵部を有する少なくとも1つの基材からなり、前記各タイプの貯蔵部は独立して前記少なくとも1つの治療剤に対する同一又は異なる放出率を与えるインプラント可能な装置が提供されている。
【0018】
本発明のさらなる1つの局面は、少なくとも1つの治療剤に対する少なくとも2つのタイプの貯蔵部を有する少なくとも1つの基材、例えば金属、プラスチック、生物分解性材料からなり、前記各タイプの貯蔵部は独立して前記少なくとも1つの治療剤に対する同一又は異なる放出率を与えるインプラント可能な装置の生体内設置を含む。
【0019】
少なくとも1つの治療剤に対する少なくとも2つのタイプの貯蔵部を有する異なるタイプの基材、例えば金属又はプラスチックと生物分解性材料との組み合わせからなり、前記各タイプの貯蔵部は独立して前記少なくとも1つの治療剤に対する同一又は異なる放出率を与えるインプラント可能な装置も考慮されている。
【0020】
簡単に述べると、本発明は、少なくとも1つの治療剤の高い局部的集中及び/又は制御されたデリバリーが望まれている病気や症状の治療のための治療組成、この治療組成を利用する方法及び装置を提供し、これにより全身的毒性が本質的に回避される。
【0021】
「治療剤」の用語は、例えば薬、ワクチン、ホルモン、ステロイド、タンパク質、錯化剤、塩、化学化合物、ポリマー等のような治療用及び診断用の薬剤を含むように理解される。さらに、「治療剤」の用語は、人又は動物の組織、細胞、細胞膜、タンパク質及び液体と相互作用し、生理学的又は病理学的な症状の診断、治療、予防を向上する如何なる材料をも含むように理解される。
【0022】
治療剤は、免疫抑制剤、抗腫瘍及び/又は化学治療剤、細胞分裂抑制剤、抗増殖剤、非ステロイド系抗炎症薬、抗菌剤又は抗生物質、成長因子及び成長因子拮抗薬、血栓溶解薬、血管拡張薬、血圧降下薬、抗分泌薬、抗ポリメラーゼ、抗ウィルス剤、光線力学治療剤、抗体標的治療剤、プロドラッグ、性ホルモン、フリーラジカル捕捉剤、抗酸化物質、生物学的作用物質、放射線治療薬、放射線不透過性物資及び放射標識剤を含むがこれらの限定するものではない。
【0023】
したがって、本発明によるインプラント可能な装置の少なくとも1つの治療剤のための貯蔵部は、次の群から選ばれた少なくとも1つの治療剤からなることが好ましい。
1.シクロスポリン、ラパマイシン、SDZ RAD又は他の免疫抑制剤
2.タクソール又は他の抗癌化学療法薬
3.メトトレキサート又は他の代謝拮抗物質若しくは抗増殖剤
4.クエン酸タモキシフェン
5.デキサメタゾンリン酸ナトリウム、酢酸デキサメタゾン又は他のデキサメタゾン派生物、又は他の消炎ステロイド薬、非ステロイド抗炎症剤
6.血管新生阻害剤(例えば、タクソール、レチノイン酸、抗浸潤因子、TNP-470、スクアラミン、プラスミノーゲン活性因子阻害剤1及び2等)
7.コルヒチン若しくは他の抗分裂剤、又は他の微少管阻害剤
8.平滑筋移動及び/又は萎縮抑制剤(例えば、サイトカラシンB,C及びD)又は他のアクチン阻害剤
9.他の成長因子拮抗薬;ドーパミン、メシル酸ブロモクリプチン、メシル酸ペルゴリド又は他のドーパミン作動薬
10.アンギオペプチンやアンギオジェニンのような成長ホルモン拮抗薬
11.ヘパリン、共有結合ヘパリン、又は他のトロンビン阻害剤、ヒルジン、他の抗血栓剤、又はこれらの混合物
12.ウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、組織プラスミノーゲンアクチベータ、又は他の血栓溶解剤、又はこれらの混合物
13.線維素溶解薬
14.血管痙攣剤
15.プロテインキナーゼ阻害薬(例えば、スタウロポリン)
16.カルシウムチャネル遮断薬
17.硝酸塩、酸化窒素、酸化窒素促進剤、又は他の血管拡張剤
18.抗アテローム性動脈硬化剤
19.抗高血圧薬
20.抗血小板薬
21.抗ヒスタミン剤及び/又は抗アレルギー薬(例えば、テルフェナジン)
22.抗菌薬又は抗生物質(例えば、ペニシリン、ストレプトマイシン、セファロスポリン、バンコマイシン、エリスロマイシン、ポリミキシン、リファムピシン、テトラサイクリン、クロラムフェニコール等)
23.デオキシリボ核酸、アンチセンスヌクレオチド又は分子遺伝学的介入の他の薬
24.<60>Co、<192>Ir、<32>P、<111>In、<90>Y、<99m>Tc又は他の放射線治療薬;ヨード含有化合物、ガリウム含有化合物、金、タンタル、プラチナ、タングステン、又は他の放射線不透過性物質として機能する重金属
25.ペプチド、タンパク質、酵素、細胞外基質成分、細胞成分、又は他の生物学的作用物質
26.フリーラジカル捕捉剤、鉄キレート剤、又は抗酸化物質
27.プロゲステロン、エストロゲン、又は他の性ホルモン
28.抗ウィルス薬、AZT、又は他の抗ポリメラーゼ;アシクロビル、ファムシクロビル、塩酸リマンタジン、ガンシクロビルナトリウム、ノルビル又はクリキシバン
29.遺伝子治療薬
又はこれらの類似物質、派生物、又は機能的均等物。
【0024】
本発明の好ましい実施形態では、インプラント可能な装置は、血管系(動脈と静脈の両方)で使用するように意図されている。貯蔵部の少なくとも一部は、シクロスポリン、ラパマイシン、SDZ RAD又は他の免疫抑制剤、タクソール又はその派生物、他の抗癌化学療法薬、ヘパリン又は他のトロンビン阻害剤又は抗血小板薬、ヒルジン、他の抗血栓薬、又はこれらの混合物;ウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、組織プラスミノーゲン活性剤、又は他の血栓溶解剤、又はこれらの混合物;デキサメタゾン、デキサメタゾンリン酸ナトリウム、酢酸デキサメタゾン又は他のデキサメタゾン派生物、又は他の消炎ステロイド薬、非ステロイド抗炎症剤からなる。適切な部位の代表的な例は、冠状動脈、腸骨動脈、腎臓動脈、上大動脈を含む。
【0025】
本発明の非常に好ましい実施形態では、インプラント可能な装置は、癌、アテローム性動脈硬化及び血管新生依存病の治療に意図されている。
【0026】
ここに記載する組成及びインプラント可能な装置を利用して治療される代表的ではあるが限定されない例は、転移性腫瘍及び非転移性腫瘍(実際には任意の組織から派生するが、ごく普通には肺、乳房、メラノーマ、腎臓、胃腸腫瘍)、リンパ腫(例えば、多くのサブタイプ、一次と二次の両方を含むホジキンリンパ腫及び非ホジキンリンパ腫);肉腫(筋肉、腱、線維組織、脂肪、血管及び神経の悪性腫瘍);脳腫瘍(星状細胞腫、上衣細胞腫;グリア芽腫)、神経細胞腫(例えば、髄芽細胞腫、神経芽細胞腫)、及び髄鞘細胞(例えば、神経鞘腫及び神経線維腫)を含む。
【0027】
大きさが約1から2ミリメートルより大きく成長する腫瘍は、酸素や栄養を細胞に供給し、老廃物を運び去るために、新しい血管成長を必要とする。本発明の1つの局面では、ここに記載の組成及びインプラント可能な装置を利用して治療すると、新しい血管の生成に伴う血管内皮細胞の成長が抑圧される。この結果、血管新生を奪う腫瘍はもはや成長しない。
【0028】
本発明の他の局面では、血管の異常成長に特徴づけられる血管形成依存病は、抗血管形成組成で治療され、新しい血管の成長を減少する。
【0029】
このような血管形成依存病の代表的ではあるがこれに限定しない例は、乾癬、肥大性瘢痕及びケロイド、創傷治癒遅延、手術及び血管癒着、目の新生血管症、増殖性糖尿病網膜症、関節リウマチ、動静脈奇形(上で説明)、動脈硬化性プラーク、血友病関節、癒着不能骨折、オスラーウェバー症候群を含む。
【0030】
本発明の様々な実施形態では、インプラント可能な装置は、胆道閉塞を除去するために胆道ステントを胆道に挿入することからなり、尿道閉塞を除去するために尿道ステントを尿道に挿入することからなり、食堂閉塞を除去するために食堂ステントを食堂に挿入することからなり、気管/気管支閉塞を除去するために気管/気管支ステントを気管又は気管支に挿入することからなり、卵管閉塞を除去するために卵管ステントを卵管に挿入することからなり、尿管閉塞を除去するために尿管ステントを子宮に挿入することからなり、耳管閉塞を除去するために耳管ステントを耳管に挿入することからなり、膵臓閉塞を除去するために膵臓ステントを膵臓に挿入することからなる。
【0031】
したがって、本発明のさらに好ましい実施形態では、インプラント可能な装置は、胆管閉塞が回避されるように胆管における使用が意図されている。一般に、肝臓から胆汁を十二指腸へ排出する胆汁系は、(1)胆管に侵入する腫瘍(例えば、膵臓癌腫)、(2)胆管細胞を構成する腫瘍(胆管癌)、(3)外圧を及ぼし胆管を押し付ける腫瘍(例えば、リンパ節肥大)により閉塞される。胆汁系の圧縮を生じる初期胆腫瘍と他の腫瘍はここに記載のステントを利用して治療される。
【0032】
本発明のさらに好ましい実施形態では、インプラント可能な装置は、例えば、食堂における癌、又は隣接器官に生じる良性または悪性の癌細胞(例えば、肺又は胃の癌)による侵襲の場合のように、食道閉塞が排除されるように食道での使用が意図されている。
【0033】
本発明のさらに好ましい実施形態では、インプラント可能な装置は、例えば、前立腺の肥大の場合のように、尿道閉塞が回避されるように尿道での使用が意図されている。
【0034】
本発明のさらに他の実施形態では、ステント以外のインプラント可能な装置は、限定するものではないが、股関節、人工心臓弁、ペースメーカー、カテーテル、眼科用レンズ、整形外科用補綴又は歯科用補綴を含み、これらは本発明に従って利用されるものと考えられる。
【0035】
例えば、金属インプラント(例えば、股関節)に被覆されたリン酸カルシウムは、裸のインプラントに比べて、骨伝導性により迅速な骨接合(bone apposition)を許容する。体液との接触の結果、生物学的ヒドロキシル炭酸アパタイト(HCA)の薄層がインプラントの表面に形成され、続いて生体足場織がこのHCA層に直接接合する。このインプラント表面への直接骨接合及び/又はインプラント表面への成長は、著しく治癒過程を向上し、長期的結果をもたらす。本発明によるインプラント可能な装置は、外科、骨置換、補綴歯科、歯根、歯冠、整形外科関節のような医療分野で使用する少なくとも1つの治療剤に対する少なくとも2つのタイプの貯蔵部(例えば、リン酸カルシウムコーティング)を有することができる。
【0036】
本発明のさらに他の実施形態では、インプラント可能な装置は、抗菌薬耐性を治療するのに使用することができる。例えば、呼吸器感染、HIV/AIDS、下痢性疾患、結核及びマラリアは、感染症のなかでも主要原因である。しかしながら、第一線治療剤に対する耐性は、これら全ての疾患で観察された。さらに、薬剤耐性(drug resistance)は病院にとって特に困難な問題である。病院は、一般集団よりも感染症にかかりやすい重症患者を念頭においているため、多くの抗生物質を必要とするからである。したがって、本発明によるインプラント可能な装置は、抗菌薬耐性を治療するのに使用することができる少なくとも1つの治療剤に対する少なくとも2つのタイプの貯蔵部を有することができる。
【0037】
最も単純な形態では、本発明は、食道、気管、結腸、胆道、尿道、血管系、その他生きた人間又は獣患者の通路又は血管のような身体のルーメンに導入するのに適した構造(例えば、ステント)からなるインプラント可能な医療装置に向けられ、その構造は、少なくとも1つの治療剤に対する少なくとも2つのタイプの貯蔵部を有する少なくとも1つのタイプの例えば金属、プラスチック、又は生物分解性材料からなる基材で構成され、これにより各タイプの貯蔵部は少なくとも1つの治療剤に対して同一又は異なる放出率を独立して提供する。
【0038】
一般に、ステントは、治療される部位や疾患に拘わらず、類似の方法で挿入される。典型的には、ステントは、小さなカテーテルを介して小さな空洞に挿入することができるように圧縮することができ、所望の位置に達すると大きな径に拡張することができる。一旦拡張すると、ステントは通路の壁を物理的に押し付けて離し、開口状態に保持する。ステントはそれ自体で小さな開口を介して挿入することができるが、より大きな径の空洞や通路を開いた状態を保持することができる。このステントは、バルーンにより拡張可能でもよいし、自己拡張してもよい、またインプラントされて例えばニチノールのような所謂形状記憶合金を使用して温度変化により膨張されてもよい。
【0039】
本発明の1つの局面では、ほぼ管状構造からなるステントが設けられ、このステントは1又は複数の治療組成が付着されている。詳細には、ステントは、通常は円筒形状の足場(scaffolding)であり、疾病経過(例えば、狭窄、腫瘍成長)により狭められている身体ルーメン(例えば血管、胆道)に挿入され、身体ルーメンの閉塞又は再閉塞を防止する。
【0040】
本発明の他の特徴では、インプラント可能な装置は、身体ルーメンを拡張するために設けられ、ほぼ管状構造を有するステントをルーメンに挿入し、ステント構造及び/又は表面に治療蘇生を付着させることからなる。
【0041】
本発明のインプラント可能な装置は、金属、プラスチック、又は生物分解性材料のような少なくとも1つのタイプの基材で作成されている。少なくとも2つの異なるタイプの基材の組み合わせ(例えば、金属/生物分解性又はプラスチック/生物分解性)、または3つの異なるタイプの基材すなわち金属/生物分解性/プラスチックの組み合わせも意図されている。
【0042】
したがって、基材は、ステンレス鋼、タンタル、チタン、ニチノール、金、プラチナ、クロム、イリジウム、銀、タングステン、コバルト、又は他の生体適合性金属、またはこれらの合金;酢酸セルロース、硝酸セルロース、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、これらの共重合体、カーボン又はカーボンファイバー;ポリ無水物、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシブチラート吉草酸、又は他の生物分解性ポリマー、又はこれらの混合物又は共重合体;シリコン、ポリエチレンテレフタレート、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエステル、ポリオルトエステル、ポリ無水物、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリプロピレン、高分子量ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、他の生態適合性ポリマー材料、これらの混合物又は共重合体;タンパク質、細胞外基質要素、コラーゲン、フィブリン、スターチ、その他の生物因子;これらの適切な混合物のうち少なくとも一つを含む。
【0043】
コバルト/クロム合金は、構造が脈管ステントとして構成されているときに、基材として特に有益である。
【0044】
インプラント可能な装置は、少なくとも1つの治療剤に対する少なくとも2つの異なる貯蔵部の組み合わせを使用して、本発明の治療組成を付着させてもよい。これには、次のいずれかから選択される。
(a)インプラント可能な装置の表面構造に治療組成を直接付着させ、生物分解性被覆、多孔又は非生物分解性被覆(完全又は部分的)とする。
(b)治療剤をインプラント可能な装置の開口(例えば、穴、凹部、溝、スロット等)に満たす。
及び/又は
(c)インプラント可能な装置の基材に緒量組成を含浸させる。
【0045】
例えば、本発明によるインプラント可能な装置は、満たされた開口と被覆された表面;満たされた機構と含浸された基材;被覆された表面と含浸された基材の組み合わせからなる。
【0046】
ある特定の実施形態では、インプラント可能な装置は、満たされた開口、被覆された表面及び含浸された基材の組み合わせに基づく、少なくとも1つの治療剤に対する貯蔵部を有する。
【0047】
穴、凹部、溝、スロット等は、様々な技術により、インプラント可能な装置の表面に形成してもよい。例えば、このような技術は、穿孔、切断、レーザの使用、電子ビーム加工等、又は所望の穴をエッチングするといった当業者に公知の他の手順を含む。表面の被覆及び基材の含浸は、治療剤がその治療活性を維持するのに適した当業者に公知の従来の被覆技術(例えば、浸漬、噴霧、電気化学析出)により達成することができる。
【0048】
少なくとも1つの治療剤に対する異なるタイプの貯蔵部の組み合わせにより、治療すべき病気、病状、身体ルーメン、治療剤のタイプ(例えば、親水性、脂肪親和性、生物学的、小分子等)、少なくとも1つの治療剤の望まれる濃度、治療剤の有利な組合わせ、望まれる動的放出パターン(ゼロ次パルス投与、増加、減少、正弦波等)を考慮して、治療剤の所望の制御された放出パターンを独立して設定することができる。
【0049】
この結果、少なくとも1つの治療剤に対する各タイプの貯蔵部は、場合に応じた最適な治療剤の投与を行うように独立して設計することができる。少なくとも1つの治療剤に対する少なくとも2つの異なるタイプの貯蔵部の組み合わせは、身体の様々な部位に目標とする治療剤をデリバリーするためのカスタマイズされた放出力学を与え、これにより全身毒性のような望まれない副作用を減少/排除することができる。
【0050】
被覆は必然的に薄いものであり、表面積は比較的短いので、治療剤は排出する拡散経路が短い傾向があり、治療剤が爆発的に放出する結果となる。しかしながら、開口及び含浸基材の薬剤貯蔵部は、生物分解性ポリマーが劣化すると、治療剤の放出が遅延する(遅延の必要はない)。
【0051】
しかしながら、遅延放出を与える表面被覆も意図されている。さらに、ステントは、同一又は異なる被覆材料に収容された同一又は異なる治療剤からなる2又はそれ以上の層で被覆してもよい。これらの追加の層は、お互いの上面に直接設けることができるし、追加の多孔又は浸透性非生物分解性層により分離することもできる。
【0052】
金属部と生物分解性部の組み合わせからなるインプラント可能な装置が企図されている。さらに、装置の一部のみを被覆する必要がある。さらに、装置の異なる部分は、同一又は異なる治療剤を付着することができる。装置の同一部分の異なる領域又は異なる側に治療剤を付着するができることも企図されている。
【0053】
本発明のさらに他の実施形態では、インプラント可能な基材は、身体へ挿入の後にインプラント可能な装置の検出が促進されるような材料で(少なくとも部分的に)形成されている。このような例えばステントの形態の実施形態では、ステントは、NMR又はCTスキャナーでより高い又はより低い信号を与える金属で形成されている端部領域を備えた中央ステンレス鋼領域を有することができる。
【0054】
本発明のさらに他の実施形態では、インプラント可能な装置の基材は、身体ルーメンへの挿入の後に、身体ルーメン内での治癒過程がよりよく観察されるような材料で(少なくとも部分的に)形成されている。例えば、基材は、半透明材料及び/又は生物分解性材料で部分的に形成することができる。例えば、脈管系に設置されたステントの生物分解性部分の劣化後に、脈管系内皮細胞上の治療剤の治癒効果の監視が向上する。
【0055】
薬物処置中における状況/時期/要求に特に適合したプログラム可能な方法で、本発明によるインプラント可能な装置の少なくとも1つの治療剤に対する貯蔵部に付着することができる。
【0056】
例えば、治療剤Aは表面被覆に基づいて初期爆発で放出することができ、局部的に高濃度の薬剤となった後に、満たされた開口及び/又は含浸された基材の貯蔵部により、放出が制御され遅延される。
【0057】
他のシナリオでは、治療剤Aは表面被覆に基づいて初期爆発で放出することができ、その後に、満たされた開口及び/又は含浸された基材の貯蔵部により、治療剤Bの放出が制御され遅延される。
【0058】
本発明によるインプラント可能な装置のさらなる利用分野は、異なるタイプの放出パターンを与える貯蔵部を有する少なくとも2つの異なる治療剤の組み合わせとすることができる(例えば、治療剤A:パルス/減少、治療剤B:正弦波)。
【0059】
以下、本発明を一例ではあるが添付図面を参照して説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0060】
図1を参照すると、ステント10の断面が示されている。ステント10は、ステンレス鋼ストラット12の配置で構成された金属足場(scaffold)からなり、ストラット12はポリマー層14で被覆されている。ストラット12は貫通孔16を有し、該貫通孔16はEP0747069に記載されたような方法で製造された薬剤溶出生物分解性ポリマー貯蔵部で満たされている。ポリマー層14も、生物分解性と薬剤溶出性を有する。
【0061】
図1に示すステント10は、図2に概略的な方法で示されている。理解を容易にするために、ポリマー層14を部分的にのみ示し、ポリマーが充填された貫通孔16を含むストラット12の下方の足場構造を見せている。足場構造の詳細は本発明の理解のためには重要ではない。図に示すように、足場はEP-A-0540290に図示された配置に類似しているが、他の形態をとることができる。適切なステント配置はロッテルダム胸郭センターグループ、1998年、モズビー「冠状動脈ステントのハンドブック」第2版に記載されている。ポリマー層14は、連続被覆しているように示されているが、実際には、下方の足場のみを全体的に又は部分的に被覆することができる。ポリマーは貫通孔16を満たすものと同じでもよいが、この場合、一般にこれらの領域に対するボンド(bond)が形成される。又は異なるポリマーを使用して特有の薬剤溶出率を提供してもよい。
【0062】
ポリマー層14が図2に示すような連続面を提供する場合、これは、シートにステントを包んでシートの2辺を互いに接合することにより、薬剤含浸ステントの表面にポリマーシートを付着することで得られる。僅かに温度を上げて、シートに圧力をかけることで、貫通孔16内にポリマーを有するボンドが形成される。下方の足場のみが被覆される場合、これは薬剤をポリマー/薬剤溶液に浸漬し、露出金属をポリマーで被覆することにより達成される。そして溶剤を蒸発させて薬剤含有ポリマーコーティングを残す。
【0063】
ある利用分野では、金属ステントが生物分解性外被覆剤で被覆されているが、ルーメン壁を最適に支持するために、被覆が身体に吸収された後に金属ステントが拡張するように配置することができれば有益である。金属ステントが自己拡張タイプであれば、生物分解性被覆は患者内でのステントの拡張を抑制する効果がある。しかし、拡張が患者のルーメン内で外部被覆の塑性変形を生じるように膨らむ場合、内部自己拡張ステントを患者内の部位に挿入することができる。一旦、生物分解性被覆が吸収されると、連続的に有効な支持が達成される。分解性被覆が離脱した後に長期の良好な支持動作を可能にするさらなる機構は、マグネシウムのような酸化物形成材のステントの内側にめっき(plating)を設けることである。マグネシウムが酸化すると、内部応力により被覆金属ステントが僅かに拡張し、生物分解性被覆の吸収を補償する。ステントの内面も生物分解性薬剤溶出被覆材からなっていてもよい。このような配置は図2aに示され、ここで金属自己拡張ステント17は生物分解性薬剤溶出被覆剤14で被覆されている。ステント17の内面には、さらなる生物分解性薬剤溶出被覆剤15が設けられている。被覆14と15から溶出する薬剤は、同じあってもよいし、異なっていてもよい。ステント17は薬剤溶出であってもよい。
【0064】
図3は、ステントが2つのポリマー層14,18を含む以外は類似の配置を示す。図4に示すように、ポリマー層は連続的である必要はないが、下方の金属足場上で分離したアイランドの形態であってもよい。
【0065】
本発明のさらなる局面は、図5に示されている。この図は、中央金属領域20と2つのポリマー端部領域22とからなるステント19を示す。金属領域20は、薬剤溶出貯蔵部を備えた従来の足場配置を有する。ポリマー端部領域も、薬剤溶出性であるが、生物分解性である。ポリマー端部領域22が下方の金属領域20に重なった重複領域23がある。この重複領域では、金属を貫通する貫通孔があり、該貫通孔は端部領域を形成するポリマーで満たされ、2つの領域の間の強いボンドを提供している。したがって、患者に挿入した後、所望の治療領域に局部的に高投与量の薬剤を設けることができる。そして、ポリマーが患者に吸収されると、比較的小さな領域の金属ステントが残る。したがって、この配置により、ステント単独の金属部分で設けるよりも、比較的高い濃度の薬剤を所望の部位に設けることができる。
【0066】
図5に示すものの代案の配置が図6に示されている。この配置では、中央生物分解性ポリマー領域26と2つの金属端部領域24とがある。もし望まれるなら、中央ポリマー領域26は、図7に示すように、金属サポートの上に形成することができる。この図では、中央領域30は、ストラット34で形成された金属構造を有し、端部領域32に接続されている。製造中、薬剤溶出ポリマーがストラット34上に成型され、ポリマー領域26が形成される(図7には不図示)。ストラット34は、端部領域32間の物理的に永久接続するのに役立つが、金属端部領域構造よりも著しく開口して構造を有する。したがって、患者に挿入した後、中央領域は、例えばCYスキャナーからくるX線に対して著しく透過性を有する。読者が認識しているように、図7に図示された中央領域はスケール通りではない。
【0067】
例えば、インプラント可能な装置が3つの管状部、中央金属管状部、及び各端部に取り付けられた生物分解性管状部からなるステントである場合、これは、中央金属領域をステント製造の当業者に公知の従来の方法で形成して足場構造を設けることで、製造することができる。次に、例えば金属管の開口を薬剤含有生物分解性ポリマーで満たすことによって、この足場構造に薬剤溶出剤を付加する。そして、薬剤付加された生物分解性ポリマー管状部は、シリコン接着剤のような身体融和性接着剤を使用して、この金属部に付着する。次に、この結合構造は、生物分解性薬剤溶出ポリマーを全体的又は部分的に被覆することができる。
【0068】
代案として、生物分解性ポリマー部は、ポリマーを金属の端部領域に直接成形することにより、金属部に付着することができる。この実施形態では、金属領域の端部は、金属に穿孔された孔を含むことが好ましく、これにより成形工程でポリマーが孔に進入し、固化すると、付着機構を形成する。
【0069】
もちろん、ステントは、非生物分解性端部領域が付着された中央生物分解性領域の形態を有することができる。このような配置では、中央領域が最小金属支持構造を含み、2つの金属端部領域を所定の空間的関係に維持することが好ましい。このような配置は、中央領域が2つの端部領域と比べて少ない金属領域を有するように、ステンレス鋼管からあるパターンを切断することにより製造することができる。そして、中央領域、又は中央領域と端部領域にポリマー成形する。
【0070】
図5と図6には、各ポリマー領域が連続であるように示されているが、ポリマー領域が従来の金属ステントの壁にある窓の形態である構造を提供することが望ましい。窓の領域には、金属ストラットにより通常設けられる足場みの効果はポリマーによって提供される。このような配置では、金属足場は有効に連続しているので、ポリマー領域に金属ストラットを持たせる必要はないが、望ましい位置に設けて、ポリマー領域を適所に保持する可能性を抑制することが望ましい。
【0071】
金属中央領域と1又は複数のポリマー生物分解性端部領域を有するステントに加え、全ての領域が金属であるステントも考えられる。例えば、中央領域は、ステンレス鋼から作成して長期間のサポートを提供することができるが、一方又は両方の端部領域は、EP−A−0966979に記載されているマグネシウム合金やその他の吸収可能金属のような生物分解性金属合金から作成されたステント領域を付着することができる。EP−A−0966979は参照することでここに組み入れる。非類似の金属の接合は潜在的に複雑であるが、例えば真空溶接(特に電子ビーム溶接)や接着の技術がある。ステンレス鋼領域にメッキ層を含めて、生物分解性金属領域との融和性を向上することが有益であり、ステンレス領域の上又は中に適合するように寸法を定めることができる。加圧による拡散接合は適切な接合機構を提供することができる。再度言うと、金属領域は、薬剤溶出ポリマーが満たされた貯蔵部を含めることができ、構造の全体又は部分は薬剤溶出ポリマーで被覆することができる。
【0072】
近年、例えばWO01/26702において、組織や器官に制御された方法でNOを放出するために、ナノファイバーの使用が提案されている。同公報に記載されたナノファイバーは本発明の装置に組み入れることができる。一例として、ファイバーは、ステント構造を被覆することができる織地スリーブを、生物分解性ポリマー基質とともに、織るのに使用することができる。代案として、このような織られたファイバーのスリーブは、金属端部領域の端に接続するのに使用することができる。付加的に、短いナノファイバーをポリマー溶液と混合することができ、その結果得られる混合物はポリマー/ファイバー複合構造を形成するのに使用される。
【0073】
前記説明は装置構成に対する薬剤溶出可能性に集中したが、単一の構成に異なる材料を組み合わせる能力もさらなる利点を与えることができる。既存のステント設計の一つの問題は、ステント材料により生じる監視信号が高すぎるため、患者に挿入したときにステントの領域にある管を監視することが困難になることである。したがって、NMR又はCTスキャナーで使用するために大きな透過性を備えたステント構造を有することが望ましい。このような構造は、生物分解性ポリマーを備えた比較的開口したステンレス鋼ステント構造における空隙を満たすことによって得ることができる。患者に挿入した後、ポリマーは管壁を支持するのを助ける一方、同時に医者がステントの位置と従来のスキャン技術を使用した局部的効果とを監視することができる。その後、支持要求が減少すると、ポリマーは生物分解する。この支持可能性の減少が望ましくない場合、非生物分解性ポリマーを使用することができる。このような配置は、図5−7に示すものと類似しているが、ポリマー領域が薬剤溶出性である要求がない限り、望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】被覆ステントの断面図。
【図2】図1の被覆ステントの概略図。
【図2a】自己拡張ステントの断面図。
【図3】2つの被覆層を有するステントの断面図。
【図4】アイランド被覆領域を有するステントの概略図。
【図5】多領域ステントの概略図。
【図6】他の多領域ステントの概略図。
【図7】中間構造を有する多領域ステントの概略図。
【符号の説明】
【0075】
10 ステント
12 ストラット
14 ポリマー層
15 被覆
16 貫通孔
17 ステント
18 ポリマー層
20 中央金属領域
22 ポリマー端部領域
23 重複領域
24 金属端部領域
26 中央生物分解性ポリマー領域
30 中央領域
32 端部領域
34 ストラット
36 ポリマー領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの治療剤に対する供給装置としてのインプラント可能な装置において、少なくとも1つの治療剤に対する少なくとも2つのタイプの貯蔵部を有する少なくとも1つの基材からなり、前記各タイプの貯蔵部は独立して前記少なくとも1つの治療剤に対する同一又は異なる放出率を与えるインプラント可能な装置。
【請求項2】
前記基材は、金属、プラスチック、生物分解性材料の群から選ばれることを特徴とする請求項1に記載のインプラント可能な装置。
【請求項3】
前記インプラント可能な装置は、金属と生物分解性材料の組み合わせで形成されていることを特徴とする請求項2に記載のインプラント可能な装置。
【請求項4】
前記インプラント可能な装置は、プラスチックと生物分解性材料の組み合わせで形成されていることを特徴とする請求項2に記載のインプラント可能な装置。
【請求項5】
前記インプラント可能な装置の基材は、少なくとも部分的に、身体ルーメンに挿入した後に前記インプラント可能な装置の検出が容易になるような材料からなることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のインプラント可能な装置。
【請求項6】
前記インプラント可能な装置の基材は、少なくとも部分的に、身体ルーメンに挿入した後に前記身体ルーメン内での治癒過程をより良く観察することができるような材料からなることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のインプラント可能な装置。
【請求項7】
前記金属基材は、タンタル、チタン、金、プラチナ、クロム、イリジウム、銀、タングステン、コバルト、これらの合金、ステンレス鋼、ニチノール、他の生物分解性金属から選択される請求項1から4のいずれかに記載のインプラント可能な装置。
【請求項8】
前記金属基材はコバルトクロム合金であることを特徴とする請求項7に記載のインプラント可能な装置。
【請求項9】
前記プラスチック及び/又は生物分解性基材は、酢酸セルロース、硝酸セルロース、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、これらの共重合体、カーボン又はカーボンファイバー;ポリ無水物、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシブチラート吉草酸、又は他の生物分解性ポリマー、又はこれらの混合物又は共重合体;シリコン、ポリエチレンテレフタレート、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエステル、ポリオルトエステル、ポリ無水物、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリプロピレン、高分子量ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、他の生態適合性ポリマー材料、これらの混合物又は共重合体;タンパク質、細胞外基質要素、コラーゲン、フィブリン、スターチ、その他の生物因子;これらの適切な混合物から選択されることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のインプラント可能な装置。
【請求項10】
インプラント可能な装置において、
少なくとも1つの治療剤のための少なくとも2つの異なる貯蔵部内に少なくとも1つの治療組成を有し、
前記治療組成は、生物分解性、多孔性、浸透性、又は非生物分解性の被覆として前記インプラント可能な装置の表面構造に直接付着され、
前記治療組成は、前記インプラント可能な装置の孔に含有され、
及び/又は
前記治療組成は、前記インプラント可能な装置の基材に含浸されていることを特徴とするインプラント可能な装置。
【請求項11】
満たされた孔と被覆された表面の組み合わせが、前記少なくとも1つの治療剤のための貯蔵部として使用されていることを特徴とする請求項10に記載のインプラント可能な装置。
【請求項12】
前記装置は、満たされた孔と含浸された基材との組み合わせからなることを特徴とする請求項10に記載のインプラント可能な装置。
【請求項13】
前記装置は、被覆された表面と含浸された基材との組み合わせからなることを特徴とする請求項10に記載のインプラント可能な装置。
【請求項14】
前記装置は、満たされた孔、被覆された表面及び含浸された基材の組み合わせからなることを特徴とする請求項10に記載のインプラント可能な装置。
【請求項15】
前記少なくとも1つの治療剤のための貯蔵部は、免疫抑制剤、抗腫瘍及び/又は化学治療剤、細胞分裂抑制剤、抗増殖剤、非ステロイド系抗炎症薬、抗菌剤又は抗生物質、成長因子及び成長因子拮抗薬、血栓溶解薬、血管拡張薬、血圧降下薬、抗分泌薬、抗ポリメラーゼ、抗ウィルス剤、光線力学治療剤、抗体標的治療剤、プロドラッグ、性ホルモン、フリーラジカル捕捉剤、抗酸化物質、生物学的作用物質、放射線治療薬、放射線不透過性物資及び放射標識剤の群から選ばれた少なくとも1つの治療剤からなることを特徴とする請求項1から14のいずれかに記載のインプラント可能な装置。
【請求項16】
前記少なくとも1つの治療剤のための貯蔵部は、シクロスポリン、ラパマイシン、SDZ RAD又は他の免疫抑制剤;タクソール又は他の抗癌化学療法薬;メトトレキサート又は他の代謝拮抗物質若しくは抗増殖剤;クエン酸タモキシフェン;デキサメタゾンリン酸ナトリウム、酢酸デキサメタゾン又は他のデキサメタゾン派生物、又は他の消炎ステロイド薬、非ステロイド抗炎症剤;血管新生阻害剤(例えば、タクソール、レチノイン酸、抗浸潤因子、TNP-470、スクアラミン、プラスミノーゲン活性因子阻害剤1及び2等);コルヒチン若しくは他の抗分裂剤、又は他の微少管阻害剤;平滑筋移動及び/又は萎縮抑制剤(例えば、サイトカラシンB,C及びD)又は他のアクチン阻害剤;他の成長因子拮抗薬;ドーパミン、メシル酸ブロモクリプチン、メシル酸ペルゴリド又は他のドーパミン作動薬;アンギオペプチンやアンギオジェニンのような成長ホルモン拮抗薬;ヘパリン、共有結合ヘパリン、又は他のトロンビン阻害剤、ヒルジン、他の抗血栓剤、又はこれらの混合物;ウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、組織プラスミノーゲンアクチベータ、又は他の血栓溶解剤、又はこれらの混合物;線維素溶解薬;血管痙攣剤;プロテインキナーゼ阻害薬(例えば、スタウロポリン);カルシウムチャネル遮断薬;硝酸塩、酸化窒素、酸化窒素促進剤、又は他の血管拡張剤;抗アテローム性動脈硬化剤;抗高血圧薬;抗血小板薬;抗ヒスタミン剤及び/又は抗アレルギー薬(例えば、テルフェナジン);抗菌薬又は抗生物質(例えば、ペニシリン、ストレプトマイシン、セファロスポリン、バンコマイシン、エリスロマイシン、ポリミキシン、リファムピシン、テトラサイクリン、クロラムフェニコール等);デオキシリボ核酸、アンチセンスヌクレオチド又は分子遺伝学的介入の他の薬;<60>Co、<192>Ir、<32>P、<111>In、<90>Y、<99m>Tc又は他の放射線治療薬;ヨード含有化合物、ガリウム含有化合物、金、タンタル、プラチナ、タングステン、又は他の放射線不透過性物質として機能する重金属;ペプチド、タンパク質、酵素、細胞外基質成分、細胞成分、又は他の生物学的作用物質;フリーラジカル捕捉剤、鉄キレート剤、又は抗酸化物質;プロゲステロン、エストロゲン、又は他の性ホルモン;抗ウィルス薬、AZT、又は他の抗ポリメラーゼ;アシクロビル、ファムシクロビル、塩酸リマンタジン、ガンシクロビルナトリウム、ノルビル又はクリキシバン;遺伝子治療薬;又はこれらの類似物質、派生物、又は機能的均等物の群から選ばれた少なくとも1つの治療剤からなることを特徴とする請求項15に記載のインプラント可能な装置。
【請求項17】
前記少なくとも1つの治療剤のための少なくとも2つのタイプの貯蔵部は、治療すべき病気、病状、身体ルーメン、治療剤のタイプ(例えば、親水性、脂肪親和性、生物学的、小分子等)、少なくとも1つの治療剤の望まれる濃度、治療剤の有利な組合わせ、望まれる動的放出パターン(ゼロ次パルス投与、増加、減少、正弦波等)を考慮して、治療剤の所望の制御された放出パターンを独立して設定することができることを特徴とする請求項1から16に記載のインプラント可能な装置。
【請求項18】
前記インプラント可能な装置は、ステント、股関節、人工心臓弁、ペースメーカー、カテーテル、眼科用レンズ、整形外科用補綴又は歯科用補綴であることを特徴とする請求項1から17のいずれかに記載のインプラント可能な装置。
【請求項19】
前記インプラント可能な装置は、食道、気管、結腸、胆道、尿道、脈管系、又は人又は動物の生体における通路、ルーメン又は血管のような他の身体部位のルーメンに導入するように適合されたステントであることを特徴とする請求項18に記載のインプラント可能な装置。
【請求項20】
少なくとも1つの治療剤に対するデリバリー装置としてインプラント可能な装置に付着される組成の使用であって、前記組成は、少なくとも1つの治療剤に対する少なくとも2つのタイプの貯蔵部を有する少なくとも1つのタイプの基材からなり、各タイプの貯蔵部は、癌、アテローム性動脈硬化、血管新生依存病の治療用の少なくとも1つの治療剤に対して、独立して同一の又は異なる放出率を与えることを特徴とする組成の使用。
【請求項21】
少なくとも1つの治療剤に対するデリバリー装置としてインプラント可能な装置に付着される組成の使用であって、前記組成は、少なくとも1つの治療剤に対する少なくとも2つのタイプの貯蔵部を有する少なくとも1つのタイプの基材からなり、各タイプの貯蔵部は、外科、骨置換、補綴歯科、歯根、歯冠、整形外科関節のような医療分野で使用する少なくとも1つの治療剤に対して、独立して同一の又は異なる放出率を与えることを特徴とする組成の使用。
【請求項22】
少なくとも1つの治療剤に対するデリバリー装置としてインプラント可能な装置に付着される組成の使用であって、前記組成は、少なくとも1つの治療剤に対する少なくとも2つのタイプの貯蔵部を有する少なくとも1つのタイプの基材からなり、各タイプの貯蔵部は、抗菌薬耐性の治療用の少なくとも1つの治療剤に対して、独立して同一の又は異なる放出率を与えることを特徴とする組成の使用。
【請求項23】
第1領域と少なくとも第2領域からなり、前記第1領域は電磁放射線に対する第1応答特性を有する材料からなり、前記第2領域は電磁放射線に対する前記第1応答特性と異なる第2応答特性を有する、生体動物におけるインプラントに適した装置において、前記第2領域は、装置の構造に組み込まれて、少なくとも一時的に、第1材料で作成されたのと実質的に同一の特性を提供するが、その電磁放射線に対する応答特性が異なるために、生体動物の中の装置を内部的に作像するのに使用される画像形成技術に関し、第2領域が第1材料で作成された場合と比較して、向上した画像生成能力を提供することを特徴とする装置。
【請求項24】
患者のルーメンへのインプラントのためのステントにおいて、前記ステントは、金属のルーメン壁支持手段を有する複数の第1支持領域と、この金属支持領域内またはそれらの間の少なくとも1つの第2支持領域とからなり、前記第2支持領域は、構造的ポリマールーメン壁支持手段からなることを特徴とするステント。
【請求項25】
前記少なくとも1つの第2支持領域は、金属ルーメン壁支持手段に接合された金属ストラットの配置からなり、前記ポリマー支持領域の金属ストラットは、金属ルーメン壁支持手段の単位表面積当たりの突出表面積のステント比よりも実質的に小さい単位表面積当たりの突出表面積のステント比を有することを特徴とする請求項24に記載のステント。
【請求項26】
前記構造的ポリマーは、生物分解性である請求項24又は25に記載のステント。
【請求項27】
前記構造的ポリマーは、薬剤溶出性である請求項24から26のいずれかに記載のステント。
【請求項28】
前記金属ルーメン壁支持手段は、薬剤溶出性である請求項24から27のいずれかに記載のステント。
【請求項29】
患者へのインプラント用のインプラント可能な装置において、前記装置は、ポリマーで満たされた窓を有する金属構造からなることを特徴とするインプラント可能な装置。
【請求項30】
前記ポリマーは、生物分解性ポリマーである請求項29に記載のインプラント可能な装置。
【請求項31】
前記ポリマーは、薬剤溶出性ポリマーである請求項29又は30に記載のインプラント可能な装置。
【請求項32】
前記金属構造は、薬剤溶出領域を組み込んでいる請求項29から31のいずれかに記載のインプラント可能な装置。
【請求項33】
前記装置はステントである請求項29から32のいずれかに記載のインプラント可能な装置。
【請求項34】
動物の体へのインプラントのための装置において、ポリマーと薬剤溶出繊維からなる合成材料を含むことを特徴とする装置。
【請求項35】
前記薬剤溶出繊維は織られている請求項34に記載の装置。
【請求項36】
自己拡張支持構造とその外面に生物分解性薬剤溶出層とからなり、前記自己拡張支持構造は、患者に挿入した後、被覆が患者に吸収された際に、拡張することを特徴とするステント。
【請求項37】
前記支持構造は、自己拡張金属支持構造である請求項36に記載のステント。
【請求項38】
前記自己拡張支持構造は薬剤溶出手段を含む請求項36又は37に記載のステント。
【請求項39】
前記ステントはさらに前記支持構造の内面に薬剤溶出層を有する請求項36から38に記載のステント。

【図1】
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【図2】
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【図2a】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2008−501456(P2008−501456A)
【公表日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−526308(P2007−526308)
【出願日】平成17年6月9日(2005.6.9)
【国際出願番号】PCT/EP2005/006223
【国際公開番号】WO2005/120393
【国際公開日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【出願人】(506408829)イェー・アー・ツェー・ツェー・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (1)
【氏名又は名称原語表記】J.A.C.C. GmbH
【Fターム(参考)】