説明

ウェット処理装置及びウェット処理方法

【課題】ウェハの被処理面に対する裏面の汚染が被処理面側へ回り込んでしまうことを抑制し、且つ、ウェハの被処理面に対する処理を清浄な処理液によって十分に且つ均一に行う。
【解決手段】ウェハ1を保持するウェハ保持部3と、内部に貯留している処理液19によりウェハ1の被処理面15に対し、剥離処理、洗浄処理又はエッチング処理が行われる処理槽2とを備える。処理槽2の上端2bから処理液19がオーバーフローするように処理液19を処理槽2へ供給する処理液供給手段(例えば、循環ポンプ7及び供給配管51からなる)を備える。処理槽の上端2bの開口2cはウェハ1よりも大径に形成されている。ウェハ保持部3は、ウェハ1の被処理面15を下向きにして保持し、その被処理面15を処理槽2に貯留されている処理液19に浸漬させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェット処理装置及びウェット処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ウェット処理としては、例えば、半導体製造工程の一工程として行われる酸剥離処理がある。酸剥離処理は、レジストをマスクとして半導体基板へ注入処理を行った後で、不要となったレジストを処理液により溶解させて除去する目的で行われる。
【0003】
酸剥離処理を実施するための酸剥離処理装置は、半導体の製造に際して繰り返し使用されるため、レジスト剥離機能の他にパーティクルをウェハに付着させないことも要求される。
【0004】
かつては薬液洗浄と超音波洗浄とを併用してウェハ上のパーティクルを除去していたが、近年では配線パターンの微細化に伴い、超音波によるダメージを受けて配線が倒れる(配線倒れが発生する)可能性があることから、超音波洗浄を採用しにくいという事情がある。
【0005】
このような事情もあって、如何にしてパーティクルを付着させずにレジストを剥離するか、ということが課題となっている。
【0006】
例えば、特許文献1の基板処理装置は、その図1に示すように、処理液貯留槽内の処理液に浸漬されるようにスピンベースを設け、螺旋状の溝が外周に形成された複数本のピンをスピンベースの上面に立設し、これら複数本のピンによりウェハをスピンベースの上方において水平に保持する構成となっている。そして、これらピンを回転させることによって、スピンベースの上方でウェハを昇降させ、ウェハの全体を処理液に浸漬させる動作と処理液から引き上げる動作とが可能となっている。特許文献1には、これらの動作によって、ウェハ表裏を処理液により均一に処理できる旨の記載がある。
【0007】
また、特許文献2の基板処理装置は、その図1に示すように、ウェハを水平に保持して回転するスピンチャックと、スピンチャックの回転軸の上端に固定されたオーバーフロートレイと、を備える。オーバーフロートレイ内には、スピンチャックの回転軸に挿入された処理液供給管を介して処理液が供給され、この処理液はオーバーフロートレイの外周縁部からオーバーフローするようになっている。スピンチャックは、オーバーフロートレイの外側に立設された基板保持ピンにより、オーバーフロートレイの上側でウェハを保持する。オーバーフロートレイはウェハよりも小径に形成されている。この基板処理装置は、オーバーフロートレイを昇降可能であり、オーバーフロートレイを上昇させることにより、該オーバーフロートレイ内の処理液からなる液膜をウェハの下面(被処理面)に対し接触させ、該下面に対する処理を行う。すなわち、オーバーフロートレイよりも大径であるウェハの周縁部を、オーバーフロートレイの外周よりも外側にはみ出させた状態で、該オーバーフロートレイ内の処理液によって、該ウェハの下面に対する処理を行う。
【特許文献1】特開2005−243812号公報
【特許文献2】特開2005−260088号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1の技術では、スピンベースやウェハの下面から処理液貯留槽の処理液中に拡散したパーティクルが処理液とともにウェハの上面に回り込んでしまうため、ウェハの上面がパーティクルによって汚染され、歩留まり低下の原因となってしまうという課題がある。
【0009】
特許文献2の技術では、オーバーフロートレイ内の処理液がウェハの上面(被処理面に対する裏面)には接しない構造であるため、ウェハの上面の汚染が処理液中に拡散し、ウェハの下面(被処理面)側へ回り込むことは防ぐことができると考えられる。
【0010】
しかし、特許文献2の技術では、オーバーフロートレイがウェハよりも小径であるため、ウェハをオーバーフロートレイ内に入り込ませることができない。よって、オーバーフロートレイ内に供給された処理液のうち、該処理液の流体粘性ないしは表面張力によってオーバーフロートレイの上端よりも上側に位置する処理液しか、ウェハに接触させることができない。このため、ウェハの下面に対して処理液を十分に接触させることが困難であり、ウェハの下面に対する処理が不均一となってしまうことがあるという課題がある。特に、オーバーフロートレイとウェハとがそれぞれ完全に水平に配置されない場合には、ウェハの下面に対して処理液を十分に接触させることが、なおさら困難となる。
【0011】
加えて、特許文献2の技術では、オーバーフロートレイよりも大径のウェハによって、オーバーフロートレイの上端の開口を閉塞するような態様で、ウェハの下面に対する処理を行う。すなわち、オーバーフロートレイの上端とウェハの下面との間隔を、極めて小さい間隔に狭めた状態で、処理を行う。このため、オーバーフロートレイからの処理液のオーバーフローをスムーズに行うことが困難である。よって、処理によって処理液中に混入する不純物(剥離されたレジスト等)を処理液とともにスムーズにオーバーフロートレイ外へ排出することが困難である。従って、常に清浄な処理液を用いて処理を行うことが難しく、ウェハの下面が汚染される或いは処理が不均一になるなどの課題がある。
【0012】
このように、ウェハの被処理面に対する裏面の汚染が被処理面側へ回り込んでしまうことを抑制し、且つ、ウェハの被処理面に対する処理を清浄な処理液によって十分に且つ均一に行うことは困難だった。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、ウェハをその被処理面を下向きにして保持するウェハ保持部と、上端が開口した容器形状に形成され、内部に処理液を貯留し、該貯留している処理液により前記ウェハの前記被処理面に対し、剥離処理、洗浄処理又はエッチング処理が行われる処理槽と、前記処理槽の前記上端から前記処理液がオーバーフローするように前記処理液を前記処理槽へ供給する処理液供給手段と、を備え、前記処理槽の前記上端の開口は前記ウェハよりも大径に形成され、前記ウェハ保持部は、該ウェハ保持部により保持されている前記ウェハの前記被処理面が前記処理槽に貯留されている前記処理液に浸漬される処理位置へ、移動可能に構成されていることを特徴とするウェット処理装置を提供する。
【0014】
このウェット処理装置によれば、ウェハ保持部は、被処理面を下向きにして該ウェハ保持部により保持されているウェハの被処理面が処理槽に貯留されている処理液に浸漬される処理位置へ移動可能であるので、ウェハ保持部を処理位置へ移動させることにより、ウェハの被処理面を処理液に浸漬させて該被処理面に対して処理を行うことができる。また、処理槽の上端の開口はウェハよりも大径に形成されているので、ウェハの被処理面を処理液に対して十分に浸漬させることができ、該被処理面に対する処理を十分に且つ均一に行うことができる。
【0015】
しかも、処理槽は上端が開口した容器形状に形成されている一方で、処理液供給手段は処理槽の上端から処理液がオーバーフローするように処理液を処理槽へ供給するので、ウェハの被処理面に対する裏面の汚染(パーティクル等)が処理液中に拡散したとしても、その汚染された処理液は処理槽からオーバーフローさせることができるため、その汚染された処理液が被処理面側に回り込んでしまうことを好適に抑制できる。つまり、ウェハの被処理面に対する裏面の汚染が被処理面側へ回り込んでしまうことを抑制することができる。
【0016】
加えて、処理槽の上端の開口はウェハよりも大径に形成されているため、処理槽の開口の内周縁部とウェハとの間隔を介して、ウェハよりも下側(被処理面側)の処理液をスムーズに処理槽からオーバーフローさせることができる。よって、処理によって処理液中に混入する不純物(剥離されたレジスト等)を処理液とともにスムーズに処理槽から排出することができる。従って、常に清浄な処理液を用いて被処理面に対する処理を行うことができ、ウェハの被処理面が汚染されたり処理が不均一になってしまったりすることを好適に抑制できる。
【0017】
このように、ウェハの被処理面に対する裏面の汚染が被処理面側へ回り込んでしまうことを抑制し、且つ、ウェハの被処理面に対する処理を清浄な処理液によって十分に且つ均一に行うことができる。
【0018】
また、本発明は、上端がウェハよりも大径に開口した容器形状に形成され、内部に処理液を貯留し、該貯留している処理液により前記ウェハの被処理面に対し、剥離処理、洗浄処理又はエッチング処理が行われる処理槽へ、前記処理槽の前記上端から前記処理液がオーバーフローするように前記処理液を供給する工程と、前記ウェハの前記被処理面を下向きにして、前記処理槽に貯留されている前記処理液に前記被処理面を浸漬させる工程と、を並行して行うことを特徴とするウェット処理方法を提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ウェハの被処理面に対する裏面の汚染が被処理面側へ回り込んでしまうことを抑制し、且つ、ウェハの被処理面に対する処理を清浄な処理液によって十分に且つ均一に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様の構成要素には同一の符号を付し、適宜に説明を省略する。
【0021】
〔第1の実施形態〕
図1は第1の実施形態に係るウェット処理装置の好適な一例としての酸剥離処理装置100の全体構成を示す模式的な正面図、図2は酸剥離処理装置100のブロック構成を示す図、図3は酸剥離処理装置100による半導体ウェハ(以下、単にウェハ)1の保持態様の例を示す平断面図である。
【0022】
本実施形態に係る酸剥離処理装置100は、ウェハ1をその被処理面15を下向きにして保持するウェハ保持部3と、上端2bが開口した容器形状に形成され、内部に処理液19を貯留し、該貯留している処理液19によりウェハ1の被処理面15に対し、剥離処理、洗浄処理又はエッチング処理(本実施形態の場合、例えば、酸剥離処理)が行われる処理槽2と、処理槽2の上端2bから処理液19がオーバーフローするように処理液19を処理槽2へ供給する処理液供給手段(例えば、循環ポンプ7及び供給配管51からなる)とを備える。処理槽2の上端2bの開口2cはウェハ1よりも大径に形成されている。ウェハ保持部3は、該ウェハ保持部3により保持されているウェハ1の被処理面15が処理槽2に貯留されている処理液19に浸漬される処理位置へ、移動可能に構成されている。また、本実施形態に係るウェット処理方法では、上端2bがウェハ1よりも大径に開口した容器形状に形成され、内部に処理液19を貯留し、該貯留している処理液19によりウェハ1の被処理面15に対し、剥離処理、洗浄処理又はエッチング処理(本実施形態の場合、例えば、酸剥離処理)が行われる処理槽2へ、処理槽2の上端2bから処理液19がオーバーフローするように処理液19を供給する工程と、ウェハ1の被処理面15を下向きにして、処理槽2に貯留されている処理液19に被処理面15を浸漬させる工程と、を並行して行う。以下、詳細に説明する。
【0023】
先ず、酸剥離処理装置100の構成を説明する。
【0024】
本実施形態に係る酸剥離処理装置100は、例えば、ウェット処理としての酸剥離処理を行うための装置であり、ウェハ1に対して処理を行うための処理液として、レジスト除去用の薬液を用いる。酸剥離処理装置100は、例えば、ウェハ1に対する処理を枚葉式で行う。
【0025】
ウェハ保持部3は、例えば、1枚のウェハ1の外周端を挟むようにして、該ウェハ1をその被処理面15を下向きにして水平状態で保持する複数(例えば、図3に示すように、3つ)の保持部材17を備える。ここで、「下向き」は、例えば、鉛直下向きであることが好ましい一例であるが、鉛直下向きに対して若干傾いた方向も、この「下向き」に含まれるものとする。ウェハ保持部3は、更に、例えば、この保持部材17を介してウェハ1を処理槽2の上側から吊り下げるようにして保持する本体部3aと、保持部材開閉機構43(図2)と、を備えている。
【0026】
保持部材開閉機構43は、例えばモータからなる保持部材開閉アクチュエータ44(図2)を備える。保持部材開閉機構43は、保持部材開閉アクチュエータ44の動作に伴い複数の保持部材17どうしの間隔を広げたり(開いたり)狭めたり(閉じたり)する。このように複数の保持部材17に開閉動作を行わせることにより、ウェハ1を放したり保持したりする動作を、これら複数の保持部材17に行わせる。
【0027】
保持部材17は、処理液19に浸るため、処理液19に対する耐性(耐薬品性)をもつ材質(例えば、フッ素樹脂)により構成されているか、或いは、その材質のコーティングが施されている。
【0028】
酸剥離処理装置100は、更に、ウェハ保持部3を水平面内において回転させるウェハ保持部回転機構4と、ウェハ保持部3を上方及び下方に昇降させるウェハ保持部昇降機構5と、を備える。
【0029】
このうちウェハ保持部回転機構4は、例えば、回転モータ42(図2)を備え、この回転モータ42の回転に伴わせてウェハ保持部3を回転させる。このようにウェハ保持部3が回転するのに伴い、保持部材17により保持されたウェハ1は、水平面内で回転する。
【0030】
また、ウェハ保持部昇降機構5は、例えばモータからなる保持部昇降アクチュエータ41(図2)を備える。ウェハ保持部昇降機構5は、この保持部昇降アクチュエータ41の動作に伴わせて、ウェハ保持部3を昇降させるとともに、該ウェハ保持部3の保持部材17により保持されたウェハ1も昇降させる。
【0031】
また、処理槽2は、上端2bが開口した容器形状に形成され、内部に処理液19を貯留する。処理槽2の上端2bは、例えば、1つの平面内に含まれるような形状に形成されている。そして、処理槽2は、例えば、その上端2bが水平となるように配置されている。また、処理槽2の平面形状は、例えば、ウェハ1の外周に沿うような円形であり、処理槽2の上端2bも円形をなしている。処理槽2の上端2bの開口2cは、ウェハ1よりも大径に形成されている。より詳細には、開口2cは、ウェハ1を保持した保持部材17もこの開口2cの内側に入り込むことが可能な寸法に設定されている。
【0032】
処理槽2の下部(具体的には、例えば、下端)には、該処理槽2内へ処理液19を導入するための導入口2aが形成されている。この導入口2aは、平面視において、例えば、処理槽2の中央に配置されている。導入口2aは、例えば、中心軸が鉛直方向となるように配置された筒型形状をなしている。
【0033】
この導入口2aを介して処理液19が処理槽2内へある程度の勢いで導入されることにより、該処理槽2内では処理液19の噴流が上向きに形成されるようになっている。ここで、「上向き」は、例えば、鉛直上向きであることが好ましい一例であるが、鉛直上向きに対して若干傾いた方向も、この「上向き」に含まれるものとする。なお、導入口2aが上述の配置とされていることにより、この噴流が形成される位置は、例えば、平面視において処理槽2の中央部となる。
【0034】
ウェハ保持部3は、例えば、平面視においてウェハ1の中心と処理槽2の中心とがほぼ一致するように、ウェハ1を保持するようになっている。このため、処理槽2の中央に形成される処理液19の噴流は、例えば、ウェハ1の被処理面のほぼ中央に当たるようになっている。
【0035】
酸剥離処理装置100は、更に、処理槽2へ供給される処理液19を前段において貯留する貯液槽8を備える。
【0036】
ここで、処理液として用いるレジスト除去用の薬液としては、例えば、硫酸と過酸化水素とを混合した薬液を用いる。このため、貯液槽8には、硫酸供給配管10を介して硫酸が、過酸化水素供給配管18を介して過酸化水素が、それぞれ供給されるようになっている。そして、貯液槽8内で硫酸と過酸化水素とが所定の混合比(例えば、3〜10:1)で混合されることにより、上記薬液が生成されるようになっている。
【0037】
また、例えば、貯液槽8の内部には、処理液19を所定温度に調温するためのヒータ9が配置されている。
【0038】
貯液槽8内の処理液19は、処理槽2の導入口2aと貯液槽8とを相互に接続する供給配管51を介して、導入口2aへ供給されるようになっている。すなわち、供給配管51には、循環ポンプ7が介装され、この循環ポンプ7によって、貯液槽8内の処理液19を導入口2a側へ圧送するようになっている。なお、循環ポンプ7及び供給配管51により、処理液供給手段が構成されている。
【0039】
循環ポンプ7は、処理槽2内に上述の噴流が形成されるような圧送力で、処理液19を処理槽2へ供給する。すなわち、処理槽2及び処理液供給手段(例えば、循環ポンプ7及び供給配管51からなる)は、処理槽2内に処理液19の噴流が上向きに形成されるような態様で処理液19を処理槽2内へ導入するように構成されている、といえる。
【0040】
供給配管51には、更に、該供給配管51内を流れる処理液19中の不純物(パーティクルなど)を除去するフィルタ6が、例えば、循環ポンプ7の後段において介装されている。このため、処理槽2には、フィルタ6によって不純物が除去された後の処理液19が供給されるようになっている。
【0041】
処理槽2へ供給される処理液19のうち、該処理槽2に貯留しきれない処理液19は、該処理槽2の上端2bから溢れ出る(オーバーフローする)。処理槽2からオーバーフローする処理液19は、具体的には、処理槽2の上端2bにおける外周端から処理槽2の外側に流れ出す。
【0042】
酸剥離処理装置100は、更に、このように処理槽2からオーバーフローする処理液19を回収する回収樋14を備える。
【0043】
この回収樋14は、例えば、処理槽2の上端2bの外周端におけるいずれの部位からオーバーフローした処理液19も回収できるように、処理槽2の周囲を囲むように該処理槽2の外周面に設けられている。このような回収樋14により回収された処理液19は、回収樋14の下端部に形成された回収口12と、この回収口12に接続された回収配管13と、をこの順に介して貯液槽8へ供給される(戻される)。具体的には、例えば、貯液槽8は回収樋14よりも下方に配置されているとともに、回収配管13は回収口12の下側に接続されており、回収樋14内に回収された処理液19は、回収口12及び回収配管13をこの順に流下して貯液槽8に流れ込むようになっている。なお、回収樋14及び回収配管13により、処理液回収手段が構成されている。
【0044】
なお、酸剥離処理装置100では、次に説明するような構成により、処理液19中の硫酸及び過酸化水素の濃度を一定範囲に保つようにしている。先ず、供給配管51には、支流配管52が接続されている。この支流配管52は、処理液19中の硫酸及び過酸化水素の濃度検出用に、供給配管51を流れる処理液19の一部をサンプリングするためのものである。この支流配管52は、供給配管51から一旦分岐した後、その分岐部の下流側で供給配管51と合流するように、供給配管51に接続されている。この支流配管52には、処理液19中の硫酸及び過酸化水素の濃度を検出する濃度検出装置53が介装されている。この濃度検出装置53は、例えば分光光度計からなる。また、硫酸供給配管10には硫酸供給弁10aが、過酸化水素供給配管18に過酸化水素供給弁18aが、それぞれ設けられている。濃度検出装置53による検出結果に応じて、後述する制御部40が硫酸供給弁10a及び過酸化水素供給弁18aを動作制御することにより、処理液19中の硫酸及び過酸化水素の濃度が一定範囲となるよう、硫酸及び過酸化水素が貯液槽8へ随時に補充される。
【0045】
酸剥離処理装置100は、更に、制御部40(図2)を備える。制御部40は、例えば、各種の演算処理並びに制御動作を行うCPU(Central Processing Unit)と、このCPUの動作用プログラムを格納したROM(Read Only Memory)と、このCPUの作業領域などとして機能するRAM(Random Access Memory)と、を備えて構成されている。
【0046】
制御部40には、濃度検出装置53による検出結果が入力される。制御部40は、この入力される検出結果に応じて、硫酸供給弁10a及び過酸化水素供給弁18aを動作制御することにより、処理液19中の硫酸及び過酸化水素の濃度が一定範囲となるように、硫酸及び過酸化水素の貯液槽8への供給量(補充量)を調節する。
【0047】
更に、酸剥離処理装置100は、例えば、オペレータによる操作を受け付ける操作部45を備える。制御部40は、例えば、操作部45に対する操作に応じて、保持部昇降アクチュエータ41、回転モータ42、保持部材開閉アクチュエータ44、循環ポンプ7及びヒータ9の動作制御を行う。
【0048】
次に、動作を説明する。
【0049】
処理槽2で酸剥離処理を行う前に、予め、貯液槽8内で硫酸と過酸化水素を所定の混合比(例えば、3〜10:1)で混合することにより処理液19を生成しておき、この処理液19をヒータ9により所定温度(例えば、80℃〜160℃)に調温しておく。
【0050】
そして、このように生成及び調温された処理液19を、循環ポンプ7によって、供給配管51を介して処理槽2内に連続的に供給する。これにより、処理槽2内には、処理液19の噴流が上向きに形成されるとともに、処理槽2に貯留しきれない処理液19が処理槽2の上端2bから常時オーバーフローする状態となる。
【0051】
この状態で、例えば、以下に説明するようにして、処理槽2での酸剥離処理を行う。
【0052】
先ず、ウェハ保持部3により、被処理面15を下向きにしてウェハ1を保持する。すなわち、ウェハ保持部3をウェハ保持部昇降機構5により上昇させて、ウェハ保持部3の保持部材17を処理液19の液面19aよりも上側に位置させる。また、ウェハ保持部3の複数の保持部材17どうしの間隔を、保持部材開閉機構43の保持部材開閉アクチュエータ44によって開いた状態とする。この状態で、ウェハ1の被処理面15(例えば、ウェハ1の表側の面)を下向きにして、該ウェハ1をウェハ保持部3の複数の保持部材17の間に配置する。次に、保持部材開閉機構43の保持部材開閉アクチュエータ44によって、複数の保持部材17どうしの間隔を閉じる。これにより、複数の保持部材17によってウェハ1をその被処理面15を下向きにして保持した状態となる。
【0053】
次に、ウェハ保持部3をウェハ保持部昇降機構5により所定の処理位置まで下降させることによって、該ウェハ保持部3により保持されているウェハ1も下降させる。これにより、ウェハ1を処理槽2に貯留されている処理液19に浸漬させる。なお、この状態で、保持部材17も処理液19に浸漬される。
【0054】
詳細には、ここでは、例えば、被処理面15が処理槽2の上端2bよりも下方に位置する状態となるまでウェハ1を下降させる。或いは、ウェハ1の全体が処理槽2に貯留されている処理液19の液面19aよりも下方に位置する状態となるまでウェハ1を下降させる。
【0055】
これにより、ウェハ1の被処理面15を処理液19に十分に浸漬させる。すなわち、酸剥離処理装置100の処理槽2の上端2bの開口2cはウェハ1よりも大径に形成されているので、このようにウェハ1の被処理面15を処理液19に対して十分に浸漬させることができる。よって、被処理面15に対する処理を十分に且つ均一に行うことができる。従って、被処理面15に形成されているレジストを十分に且つ均一に剥離することができる。
【0056】
なお、このように処理液19によって被処理面15に対して行う処理は、例えば、ウェハ保持部回転機構4によりウェハ1を水平面内で回転させながら行う。
【0057】
また、処理槽2の中央部には、処理液19の噴流が上向きに形成されているとともに、処理槽2に貯留しきれない処理液19が処理槽2の上端2bから常時オーバーフローしている。このため、被処理面15の近傍においては、例えば、被処理面15の中心から放射状に外に向かうような処理液19の流れが形成されている。
【0058】
よって、ウェハ1の被処理面15に対する裏面16側にも処理液19が回り込み、裏面16の汚染(パーティクル等)が処理液19中に拡散したとしても、この汚染された処理液19は、被処理面15側の処理液19の流れに伴い、処理槽2の上端2bからオーバーフローする。このため、裏面16側の(汚染を含む)処理液19が被処理面15側に回り込んでしまうことを好適に抑制できる。よって、被処理面15の汚染を抑制でき、ウェハ1の歩留まりを向上させることができる。
【0059】
加えて、処理槽2の上端2bの開口2cはウェハ1よりも大径に形成されているため、処理槽2の開口2cの内周縁部とウェハ1との間隔を介して、ウェハ1よりも下側(被処理面15側)の処理液19をスムーズに処理槽2からオーバーフローさせることができる。よって、処理によって処理液19中に混入する不純物(剥離されたレジスト等)を処理液19とともにスムーズに処理槽2から排出することができる。従って、常に清浄な処理液19を用いて被処理面15に対する処理を行うことができ、ウェハ1の被処理面15が汚染されたり処理が不均一になってしまったりすることを好適に抑制できる。
【0060】
本実施形態では、このように、ウェハ1の被処理面15に対する裏面16の汚染が被処理面15側へ回り込んでしまうことを抑制し、且つ、ウェハ1の被処理面15に対する処理を清浄な処理液19によって十分に且つ均一に行うことができる。
【0061】
ウェハ1の被処理面15に対する処理が終わると、例えば、ウェハ保持部3をウェハ保持部昇降機構5により上昇させて、ウェハ保持部3の保持部材17を処理液19の液面19aよりも上側に位置させる。次に、保持部材開閉機構43により保持部材17どうしの間隔を広げ、ウェハ1を保持部材17から放す。
【0062】
また、処理槽2からオーバーフローした処理液19は、回収樋14内に回収された後、該回収樋14の回収口12と、この回収口12に接続されている回収配管13と、をこの順に通って、貯液槽8へと流下する。
【0063】
従って、貯液槽8内の処理液19には、剥離したレジストや、ウェハ1に付着していたパーティクル等の不純物が含まれるが、これらの不純物は、貯液槽8内の処理液19が循環ポンプ7により処理槽2へと圧送される過程でフィルタ6を通過することにより、該処理液19から除去される。
【0064】
このため、処理槽2には、常に、フィルタ6を通過することにより清浄化された処理液19が供給され続ける。よって、処理槽2内の処理液19の一部は、常時、この清浄な処理液19へと入れ替わり続ける。
【0065】
本実施形態では、このように、処理槽2からオーバーフローした処理液19を回収した後、フィルタ6を通して処理槽2へ再供給するため、処理液19の消費量を低減することができる。
【0066】
また、硫酸供給弁10aと過酸化水素供給弁18aとを適宜に開閉し、貯液槽8内に適宜に硫酸と過酸化水素とを随時に補充することにより、処理液19中の硫酸と過酸化水素の濃度は常に一定範囲に保たれる。
【0067】
以上のような第1の実施形態によれば、ウェハ1をその被処理面15を下向きにして保持するウェハ保持部3と、上端2bが開口した容器形状に形成され、内部に処理液19を貯留し、該貯留している処理液19によりウェハ1の被処理面15に対し、剥離処理、洗浄処理又はエッチング処理(本実施形態の場合、例えば、酸剥離処理)が行われる処理槽2と、処理槽2の上端2bから処理液19がオーバーフローするように処理液19を処理槽2へ供給する処理液供給手段(例えば、循環ポンプ7及び供給配管51からなる)とを備え、処理槽2の上端2bの開口2cはウェハ1よりも大径に形成され、ウェハ保持部3は、該ウェハ保持部3により保持されているウェハ1の被処理面15が処理槽2に貯留されている処理液19に浸漬される処理位置へ、移動可能に構成されているので、ウェハ保持部3を処理位置へ移動させることにより、ウェハ1の被処理面15を処理液19に浸漬させて、該被処理面15に対して処理を行うことができる。また、処理槽2の上端2bの開口2cはウェハ1よりも大径に形成されているので、ウェハ1の被処理面15を処理液19に対して十分に浸漬させることができ、該被処理面15に対する処理を十分に且つ均一に行うことができる。
【0068】
しかも、処理槽2は上端2bが開口した容器形状に形成されている一方で、処理液供給手段(循環ポンプ7及び供給配管51)は処理槽2の上端2bから処理液19がオーバーフローするように処理液19を処理槽2へ供給するので、ウェハ1の被処理面15に対する裏面16の汚染(パーティクル等)が処理液19中に拡散したとしても、その汚染された処理液19は処理槽2からオーバーフローさせることができるため、その汚染された処理液19が被処理面15側に回り込んでしまうことを好適に抑制できる。つまり、ウェハ1の被処理面15に対する裏面16の汚染が被処理面15側へ回り込んでしまうことを抑制することができる。
【0069】
加えて、処理槽2の上端2bの開口2cはウェハ1よりも大径に形成されているため、処理槽2の開口2cの内周縁部とウェハ1との間隔を介して、ウェハ1よりも下側(被処理面15側)の処理液19をスムーズに処理槽2からオーバーフローさせることができる。よって、処理によって処理液19中に混入する不純物(剥離されたレジスト等)を処理液19とともにスムーズに処理槽2から排出することができる。従って、常に清浄な処理液19を用いて被処理面15に対する処理を行うことができ、ウェハ1の被処理面15が汚染されたり処理が不均一になってしまったりすることを好適に抑制できる。
【0070】
このように、本実施形態では、ウェハ1の被処理面15に対する裏面16の汚染が被処理面15側へ回り込んでしまうことを抑制し、且つ、ウェハ1の被処理面15に対する処理を清浄な処理液19によって十分に且つ均一に行うことができる。また、上述のように簡素な構成の供給配管51により、これらを両立させることができる。
【0071】
また、ウェハ保持部3の上記処理位置は、例えば、被処理面15を下向きにして該ウェハ保持部3により保持されているウェハ1の被処理面15が、処理槽2の上端2bよりも下方に位置する位置であるので、ウェハ1の被処理面15を処理液19に十分に浸漬させることができ、該被処理面15に対する処理を十分に且つ均一に行うことができる。
【0072】
或いは、ウェハ保持部3の上記処理位置は、例えば、被処理面15を下向きにして該ウェハ保持部3により保持されているウェハ1の全体が、処理槽2に貯留されている処理液19の液面19aよりも下方に位置する位置であるので、ウェハ1の被処理面15を処理液19に十分に浸漬させることができ、該被処理面15に対する処理を十分に且つ均一に行うことができる。
【0073】
また、ウェハ保持部3を昇降させるウェハ保持部昇降機構5を備え、ウェハ保持部昇降機構5は、ウェハ保持部3を下降させることによってウェハ保持部3を処理位置へ移動させるので、ウェハ保持部3を処理位置へ移動させる動作を機械化することができる。更に、ウェハ保持部昇降機構5の動作制御を行う制御部40を備えるので、ウェハ保持部3を処理位置へ移動させる動作を自動的に行うことができる。
【0074】
また、処理槽2及び処理液供給手段(例えば、循環ポンプ7及び供給配管51からなる)は、処理液19の噴流が上向きに形成されるような態様で処理液19を処理槽2内へ導入するように構成されているので、ウェハ1の被処理面15に新たな処理液19を供給することができる。
【0075】
また、処理液供給手段(例えば、循環ポンプ7及び供給配管51からなる)は、処理槽2内に処理液19を連続的に供給するので、処理液19を処理槽2から常時オーバーフローさせることができる。
【0076】
また、酸剥離処理装置100は、処理槽2へ供給される処理液19を貯留する貯液槽8と、処理槽2からオーバーフローした処理液19を回収し、貯液槽8へ供給する処理液回収手段(例えば、回収樋14及び回収配管13からなる)と、フィルタ6と、を備え、この処理液供給手段は、貯液槽8内の処理液19を、フィルタ6を通して処理槽2へ供給するので、オーバーフローした処理液19を再利用することができる。よって、処理液19の消費量を低減することができる。
【0077】
〔第2の実施形態〕
図4は第2の実施形態に係るウェット処理装置の好適な一例としての酸剥離処理装置200の全体構成を示す模式的な正面図、図5は酸剥離処理装置200が備えるシール機構11の模式的な斜視図、図6は酸剥離処理装置200のブロック構成を示す図、図7は酸剥離処理装置200のシール機構11によるウェハ1の保持動作を説明するための図であり、それぞれシール機構11の正面断面を示す。
【0078】
先ず、酸剥離処理装置200の構成を説明する。
【0079】
第2の実施形態に係る酸剥離処理装置200のウェハ保持部3は、保持部材17(図1、図3)及び保持部材開閉機構43(図2:保持部材開閉アクチュエータ44(図2)を含む)に代えて、シール機構11を備える点で、上記の第1の実施形態に係る酸剥離処理装置100と相違し、その他の点は酸剥離処理装置100と同様に構成されている。
【0080】
図5に示すように、本実施形態の場合のウェハ保持部3のシール機構11は、シール機構本体部20と、このシール機構本体部20内において昇降可能となるように該シール機構本体部20内に配設されたシール部30と、このシール部30をシール機構本体部20に対して相対的に昇降させるシール部昇降機構47(図6)と、を備えて構成されている。
【0081】
このうち、シール部30は、ウェハ1の被処理面15に対する裏面16に密着し、該裏面16に対する処理液19の接触を妨げるものである。
【0082】
このシール部30は、例えば、シール部本体部21と、このシール部本体部21の下面に設けられ、ウェハ1の裏面16の周縁部に沿って密着する密着部材29(図7)と、を備える。
【0083】
シール部本体部21は、例えば、図5及び図7に示すように、円柱形状に形成されている。このシール部本体部21の直径は、例えば、ウェハ1と同等に設定されている。このシール部本体部21の下面の周縁部に沿って、密着部材29が設けられている。密着部材29は、例えば、円環状のOリングである。この密着部材29は、後述する第2密着部材23との協働で、ウェハ1の周縁部を表裏から挟んで保持する。
【0084】
また、シール機構本体部20は、例えば、ウェハ1の周縁部が載置される載置面22を有する載置部32を備えている。載置部32における載置面22よりも内側には、該載置部32を上下に貫通するウェハ浸漬用開口(開口)25が形成されている。載置面22にはウェハ1の被処理面15の周縁部に沿って密着する第2密着部材23が設けられている。この第2密着部材23は、密着部材29と同様のものである。なお、密着部材29と第2密着部材23とは、相互に対向する配置とされている。
【0085】
なお、図5及び図7は、シール機構11の各部の水平方向及び上下方向の実際の寸法比を示すものではない。載置部32の厚さ(上下寸法)は、該載置部32が、ウェハ1を支持でき、且つ、シール部30との協働でウェハ1を保持できるような強度を確保できる限りにおいて、なるべく薄くすることが好ましい。
【0086】
シール機構本体部20は、他に、例えば、ウェハ保持部3の本体部3a(図4)に対して固定されている上部31と、この上部31から垂下するように形成されて該上部31と載置部32とを相互に接続し該載置部32を吊り下げるように支持する一対の支持部26と、を備えている。このため、本実施形態では、ウェハ保持部3の本体部3aは、シール機構11を介して処理槽2の上側から吊り下げるようにしてウェハ1を保持する。
【0087】
このうち上部31には、例えば、シール部昇降機構47の少なくとも一部が配設されるシール部昇降機構用開口28が形成されている。シール部昇降機構47は、例えば、このシール部昇降機構用開口28を介してシール部30の(シール部本体部21の)上面と本体部3a(図4)とを相互に接続するように設けられている。
【0088】
シール部昇降機構47は、例えばモータからなるシール部昇降アクチュエータ48(図6)を備えている。シール部昇降機構47のシール部昇降アクチュエータ48の動作に伴いシール部30を本体部3aに対して相対的に昇降させることにより、このシール部30を載置部32に対しても相対的に昇降させることができるようになっている。
【0089】
また、一対の支持部26の内面は、シール部30が昇降する際に、該シール部30の側面の一部をガイドするガイド面27を構成している。すなわち、このガイド面27は、シール部30の側面の一部に沿うような凹曲面に形成されている。
【0090】
また、シール機構本体部20の前面には、ウェハ1をシール機構11の外部から載置面22上に搬入したり、該載置面22上からシール機構11の外部へ搬出したりする際にウェハ1を通過させるための、ウェハ出入用開口24が形成されている。
【0091】
なお、シール部本体部21の下面と、載置面22は、それぞれ平坦であり、それぞれ水平に配置されている。
【0092】
また、シール機構本体部20及びシール部本体部21は、処理液19に浸るため、処理液19に対する耐性(耐薬品性)をもつ材質(例えば、フッ素樹脂)により構成されているか、或いは、その材質のコーティングが施されている。また、密着部材29及び第2密着部材23は、処理液19に浸る上、ウェハ1に対して密着してシール機能を発揮する必要があるため、処理液19に対する耐性(耐薬品性)を持ち、且つ、軟質で弾性を有する材質(例えば、軟質のフッ素樹脂)からなる。
【0093】
また、シール機構11は、処理槽2の導入口2aの上方にウェハ浸漬用開口25が位置するように配置されている。すなわち、本実施形態の場合、処理槽2は、処理槽2内へ処理液19を上向きに導入するための導入口2aを、載置部32のウェハ浸漬用開口25の下方に備え、処理液供給手段(例えば、循環ポンプ7及び供給配管51)は、処理槽2内に処理液19の噴流が上向きに形成されるように、導入口2aを介して処理液19を処理槽2内へ供給する。
【0094】
なお、本実施形態の場合、処理槽2の開口2cは、ウェハ1を保持したシール機構11の一部がこの開口2cの内側に入り込むことにより、ウェハ1の被処理面15を処理液19に浸漬できるような寸法に設定されている。
【0095】
次に、動作を説明する。
【0096】
上記の第1の実施形態と同様に、処理槽2で酸剥離処理を行う前に、予め貯液槽8内で処理液19を生成及び調温し、この処理液19を循環ポンプ7によって供給配管51を介して処理槽2内に連続的に供給する。これにより、処理槽2内に処理液19の噴流を上向きに形成するとともに、処理液19を処理槽2の上端2bから常時オーバーフローさせる。
【0097】
この状態で、例えば、以下に説明するようにして、処理槽2での酸剥離処理を行う。
【0098】
先ず、ウェハ保持部3により、被処理面15を下向きにしてウェハ1を保持する。すなわち、ウェハ保持部3をウェハ保持部昇降機構5により上昇させて、ウェハ保持部3のシール機構11を処理液19の液面19aよりも上側に位置させる。また、シール機構11のシール部30を載置部32に対し相対的に上昇させることにより、シール部30と載置部32との間にウェハ1の挿入空間を形成する(図7(a))。この状態で、シール機構11の外部からウェハ出入用開口24を介してウェハ1を載置面22上へ搬入する。この際、第2密着部材23がウェハ1の被処理面15の周縁部に沿って位置するように、ウェハ1を配置する(図7(b))。この状態で、シール部昇降機構47がシール部30を下降させる。その結果、第2密着部材23はウェハ1の被処理面15の周縁部に沿って密着し、密着部材29はウェハ1の裏面16の周縁部に沿って密着するので、これら密着部材29及び第2密着部材23により、ウェハ1の周縁部を表裏から挟んで該ウェハ1を保持した状態となる。すなわち、ウェハ保持部3がウェハ1をその被処理面15を下向きにして保持した状態となる(図7(c))。
【0099】
次に、ウェハ保持部3をウェハ保持部昇降機構5により下降させることによって、該ウェハ保持部3により保持されているウェハ1も下降させる。これにより、ウェハ1を処理槽2に貯留されている処理液19に浸漬させる。
【0100】
詳細には、例えば、被処理面15が処理槽2の上端2bよりも下方に位置する状態となるまでウェハ1を下降させる。或いは、ウェハ1の全体が処理槽2に貯留されている処理液19の液面19aよりも下方に位置する状態となるまでウェハ1を下降させる。
【0101】
これにより、ウェハ浸漬用開口25を介してウェハ1の被処理面15を処理液19に十分に浸漬させることができるので、被処理面15に対する処理を十分且つ均一に行うことができる。よって、被処理面15に形成されているレジストを剥離することができる。
【0102】
また、本実施形態の場合、ウェハ浸漬用開口25の下方に、上向きの処理液19の噴流が形成されているので、ウェハ浸漬用開口25を介してウェハ1の被処理面15を処理液19に十分に浸漬させることができる。
【0103】
また、本実施形態の場合、シール部30がウェハ1の裏面16に密着して該裏面16に対する処理液19の接触を妨げているので、裏面16の汚染(パーティクル等)が処理槽2に貯留されている処理液19中に拡散してしまうことを好適に抑制できる。よって、汚染された処理液19が被処理面15側に回り込んでしまうことを、上記の第1の実施形態よりも好適に抑制することができる。
【0104】
ウェハ1の被処理面15に対する処理が終わると、例えば、ウェハ保持部3をウェハ保持部昇降機構5により上昇させて、ウェハ保持部3のシール機構11を処理液19の液面19aよりも上側に位置させる。次に、シール機構11のシール部30を載置部32に対し相対的に上昇させる。次に、載置面22上のウェハ1をウェハ出入用開口24を介してシール機構11の外部へ搬出する。
【0105】
その他の動作は、上記の第1の実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0106】
以上のような第2の実施形態によれば、ウェハ保持部3は、ウェハ1の被処理面15に対する裏面16に密着して該裏面16に対する処理液19の接触を妨げるシール部30を備えるので、裏面16の汚染(パーティクル等)が処理槽2に貯留されている処理液19中に拡散してしまうことを好適に抑制できる。よって、汚染された処理液19が被処理面15側に回り込んでしまうことを、上記の第1の実施形態よりも好適に抑制することができる。
【0107】
また、シール部30は、シール部本体部21と、シール部本体部21の下面に設けられ、ウェハ1の裏面16の周縁部に沿って密着する密着部材29と、を備えるので、ウェハ1の裏面16の周縁部より内側の部分に対して処理液19が接触してしまうことを好適に妨げることができる。
【0108】
また、酸剥離処理装置200のウェハ保持部3は、ウェハ1の周縁部が載置される載置面22を有する載置部32と、載置部32に対して相対的にシール部30を昇降させるシール部昇降機構47と、を備え、載置部32における載置面22よりも内側には、該載置部32を上下に貫通するウェハ浸漬用開口25が形成され、載置面22にはウェハ1の被処理面15の周縁部に沿って密着する第2密着部材23が設けられ、ウェハ保持部3は、第2密着部材23がウェハ1の被処理面15の周縁部に沿って位置するようウェハ1が載置面22上に載置された状態で、シール部昇降機構47がシール部30を下降させることにより、第2密着部材23と密着部材29とによりウェハ1の周縁部を表裏から挟んで該ウェハ1を保持するので、シール部30によって裏面16に対する処理液19の接触を妨げる構成を好適に実現することができる。また、載置部32のウェハ浸漬用開口25を介して被処理面15を処理液19に浸漬させることができる。
【0109】
また、処理槽2は、処理槽2内へ処理液19を上向きに導入するための導入口2aを、載置部32のウェハ浸漬用開口25の下方に備え、処理液供給手段(循環ポンプ7及び供給配管51)は、処理槽2内に処理液19の噴流が上向きに形成されるように、導入口2aを介して処理液19を処理槽2内へ供給するので、その噴流の影響がウェハ浸漬用開口25を介してウェハ1の被処理面15に及ぶようにでき、被処理面15に対する処理を好適に行うことができる。
【0110】
上記の各実施形態では、枚葉式のウェット処理装置を説明したが、複数枚のウェハに対して一度にウェット処理を行う構成としても良い。具体的には、例えば、平面形状がドーナツ形状の処理槽2と、その処理槽2に沿って環状に配列された複数のウェハ保持部3と、を備え、処理槽2の外周端及び内周端からそれぞれ処理液19をオーバーフローさせるようにしても、上記と同様の効果が得られる。なお、処理槽2内の処理液19を清浄に保つという観点からは、枚葉式の方が好ましい。
【0111】
また、上記の各実施形態では、ウェット処理として酸剥離処理を行う酸剥離処理装置100、200を例示したが、本発明は、ウェット処理として、酸剥離処理以外の剥離処理、洗浄処理、又はエッチング処理を行うウェット処理装置にも同様に適用することができる。
【0112】
また、上記の第2の実施形態では、シール部30のシール部本体部21が円柱形状である例を説明したが、シール部本体部21は、例えば、筒型の壁状体であっても良いし、下向きに開口する半筐体であっても良い。なお、シール部本体部21が筒型の壁状体である場合、シール部本体部21の上下寸法は、ウェハ保持部3によりウェハ1を処理槽2に貯留されている処理液19に浸漬させた状態で、シール部本体部21の上端が処理液19の液面19aよりも上に位置するような寸法に設定する。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】第1の実施形態に係るウェット処理装置の好適な一例としての酸剥離処理装置の全体構成を示す模式的な正面図である。
【図2】図1の酸剥離処理装置のブロック構成を示す図である。
【図3】図1の酸剥離処理装置によるウェハの保持態様の例を示す平断面図である。
【図4】第2の実施形態に係るウェット処理装置の好適な一例としての酸剥離処理装置の全体構成を示す模式的な正面図である。
【図5】図4の酸剥離処理装置が備えるシール機構の要部を示す模式的な斜視図である。
【図6】図4の酸剥離処理装置のブロック構成を示す図である。
【図7】図4の酸剥離処理装置のシール機構によるウェハの保持動作を説明するための図であり、それぞれシール機構の正面断面を示す。
【符号の説明】
【0114】
1 ウェハ
2 処理槽
2a 導入口
2b 上端
2c 開口
3 ウェハ保持部
3a 本体部
4 ウェハ保持部回転機構
5 ウェハ保持部昇降機構
6 フィルタ
7 循環ポンプ
8 貯液槽
9 ヒータ
10 硫酸供給配管
10a 硫酸供給弁
11 シール機構
12 回収口
13 回収配管
14 回収樋
15 被処理面
16 裏面
17 保持部材
18 過酸化水素供給配管
18a 過酸化水素供給弁
19 処理液
19a 液面
20 シール機構本体部
21 シール部本体部(本体部)
22 載置面
23 第2密着部材
24 ウェハ出入用開口
25 ウェハ浸漬用開口(開口)
26 支持部
27 ガイド面
28 シール部昇降機構用開口
29 密着部材
30 シール部
31 上部
32 載置部
40 制御部
41 保持部昇降アクチュエータ
42 回転モータ
43 保持部材開閉機構
44 保持部材開閉アクチュエータ
45 操作部
47 シール部昇降機構
48 シール部昇降アクチュエータ
51 供給配管
52 支流配管
53 濃度検出装置
100 酸剥離処理装置(ウェット処理装置)
200 酸剥離処理装置(ウェット処理装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェハをその被処理面を下向きにして保持するウェハ保持部と、
上端が開口した容器形状に形成され、内部に処理液を貯留し、該貯留している処理液により前記ウェハの前記被処理面に対し、剥離処理、洗浄処理又はエッチング処理が行われる処理槽と、
前記処理槽の前記上端から前記処理液がオーバーフローするように前記処理液を前記処理槽へ供給する処理液供給手段と、
を備え、
前記処理槽の前記上端の開口は前記ウェハよりも大径に形成され、
前記ウェハ保持部は、該ウェハ保持部により保持されている前記ウェハの前記被処理面が前記処理槽に貯留されている前記処理液に浸漬される処理位置へ、移動可能に構成されていることを特徴とするウェット処理装置。
【請求項2】
前記処理位置は、前記被処理面を下向きにして該ウェハ保持部により保持されている前記ウェハの前記被処理面が、前記処理槽の前記上端よりも下方に位置するような位置であることを特徴とする請求項1に記載のウェット処理装置。
【請求項3】
前記処理位置は、前記被処理面を下向きにして該ウェハ保持部により保持されている前記ウェハの全体が、前記処理槽に貯留されている前記処理液の液面よりも下方に位置するような位置であることを特徴とする請求項1に記載のウェット処理装置。
【請求項4】
前記ウェハ保持部を昇降させるウェハ保持部昇降機構を備え、
前記ウェハ保持部昇降機構は、前記ウェハ保持部を下降させることによって前記ウェハ保持部を前記処理位置へ移動させることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のウェット処理装置。
【請求項5】
前記ウェハ保持部は、前記ウェハの前記被処理面に対する裏面に密着して該裏面に対する前記処理液の接触を妨げるシール部を備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のウェット処理装置。
【請求項6】
前記シール部は、
本体部と、
前記本体部の下面に設けられ、前記ウェハの前記裏面の周縁部に沿って密着する密着部材と、
を備えることを特徴とする請求項5に記載のウェット処理装置。
【請求項7】
前記ウェハ保持部は、
前記ウェハの周縁部が載置される載置面を有する載置部と、
前記載置部に対して相対的に前記シール部を昇降させるシール部昇降機構と、
を備え、
前記載置部における前記載置面よりも内側には、該載置部を上下に貫通する開口が形成され、
前記載置面には前記ウェハの前記被処理面の周縁部に沿って密着する第2密着部材が設けられ、
前記ウェハ保持部は、前記第2密着部材が前記ウェハの前記被処理面の周縁部に沿って位置するよう前記ウェハが前記載置面上に載置された状態で、前記シール部昇降機構が前記シール部を下降させることにより、前記第2密着部材と前記密着部材とにより前記ウェハの周縁部を表裏から挟んで該ウェハを保持することを特徴とする請求項6に記載のウェット処理装置。
【請求項8】
前記処理槽及び前記処理液供給手段は、前記処理槽内に前記処理液の噴流が上向きに形成されるような態様で前記処理液を前記処理槽内へ導入するように構成されていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載のウェット処理装置。
【請求項9】
前記処理槽は、前記処理槽内へ前記処理液を上向きに導入するための導入口を、前記載置部の前記開口の下方に備え、
前記処理液供給手段は、前記処理槽内に前記処理液の噴流が上向きに形成されるように、前記導入口を介して前記処理液を前記処理槽内へ供給することを特徴とする請求項7に記載のウェット処理装置。
【請求項10】
前記処理液供給手段は、前記処理液を前記処理槽内へ連続的に供給することを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載のウェット処理装置。
【請求項11】
上端がウェハよりも大径に開口した容器形状に形成され、内部に処理液を貯留し、該貯留している処理液により前記ウェハの被処理面に対し、剥離処理、洗浄処理又はエッチング処理が行われる処理槽へ、前記処理槽の前記上端から前記処理液がオーバーフローするように前記処理液を供給する工程と、
前記ウェハの前記被処理面を下向きにして、前記処理槽に貯留されている前記処理液に前記被処理面を浸漬させる工程と、
を並行して行うことを特徴とするウェット処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−153653(P2010−153653A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−331290(P2008−331290)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】