説明

ウェハカセット搬送装置

【課題】ウェハ表面に残った水の表面張力によりウェハが貼り付くことを防ぐウェハカセット搬送装置を得ること。
【解決手段】対向する一対の側面の内壁に設けられた複数のリブが形成する複数の保持溝の各々によって、複数のウェハ2を立てた状態で前後に並べて収容するウェハカセットを搬送するウェハカセット搬送装置10であって、ウェハカセット1を把持する把持装置6と、一対の側面と略同じ間隔で二列に配列され、複数の保持溝と同じピッチで配置された複数の歯を有するクシ5と、把持装置6及びクシ5を移動させる移送装置4と、を備え、移送装置4は、把持装置6がウェハカセット1を把持するのに先だって、複数の保持溝の各々において、ウェハ2とリブとの間に歯が挿入されるように把持装置6及びクシ5を移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理されるべきウェハを複数枚収容したウェハカセットを移送して、一列に配列された複数の処理槽に順次浸漬させて自動的に洗浄するウェハカセット搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、シリコンウェハエッチング装置では、洗浄装置の直後に乾燥装置が設けられていて、洗浄後直ちに乾燥を行う構成となっている。このときウェハに付着している残水量が多いと乾燥に時間を要してしまい生産に支障がでる(生産効率が下がる)ことになり、またウェハ同士が貼り付いてしまうと、ウォーターマークが形成されて製品品質を損なうことにもなる。このため、乾燥装置に搬入されるウェハはできる限り付着している残水量が少なく、またウェハ同士が貼り付いていないことが求められている。
【0003】
しかしながら従来のエッチング装置においては、ウェハカセットをウェハカセット搬送装置により水洗槽に浸漬した後、水洗槽からウェハカセットを垂直方向に取り出すため、ウェハがウェハカセットの収容溝の左右側壁にランダムにもたれ掛かることになる。その結果、隣り合うウェハ間が接近したような場合、水の表面張力(毛細管現象)が働いてウェハ同士が貼り付き、ウォーターマークの発生原因となる。
【0004】
この改善策として、ウェハカセット搬送装置に付属しているウェハカセットを掴むためのチャックフックを揺動傾斜可能なように傾斜用シリンダが連結されたシリコンウェハ用洗浄装置が特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−305949号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、ウェハは薄肉化傾向にあり、以前よりもウェハ自体の反り量や撓み量は増加し、ウェハ同士の貼り付きの発生は増加傾向にある。特許文献1記載の従来技術においては、ウェハを複数枚収容したウェハカセットを傾斜させて水洗槽から取り出すため、隣り合うウェハ間隔は一定に保たれるが、薄肉化が進んだ近年のウェハに対して、ウェハ表面に残った水の表面張力によりウェハが貼り付くことを防ぐには不十分である、という問題があった。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、ウェハ表面に残った水の表面張力によりウェハが貼り付くことを防ぐウェハカセット搬送装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、対向する一対の側面の内壁に設けられた複数のリブが形成する複数の保持溝の各々によって、複数のウェハを立てた状態で前後に並べて収容するウェハカセットを搬送するウェハカセット搬送装置であって、ウェハカセットを把持する把持装置と、一対の側面と略同じ間隔で二列に配列され、複数の保持溝と同じピッチで配置された複数の歯を各列に有する櫛部と、把持装置及び櫛部を移動させる移送装置と、を備え、移送装置は、把持装置がウェハカセットを把持するのに先だって、複数の保持溝の各々において、ウェハとリブとの間に歯が挿入されるように把持装置及び櫛部を移動させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ウェハの乾燥に要する時間を短縮できるとともに、ウェハ同士が貼り付いてウォーターマークが生じることを防止できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明にかかるウェハカセット搬送装置の実施の形態の構成を示す図である。
【図2−1】図2−1は、実施の形態のウェハカセット搬送装置の動作を示す側断面図である。
【図2−2】図2−2は、実施の形態のウェハカセット搬送装置の動作を示す前面図である。
【図3】図3は、複数のウェハが収容されるウェハカセットの概略構成を示す上面図である。
【図4】図4は、複数のウェハが収容されるウェハカセットの概略構成を示す斜視図である。
【図5】図5は、クシの部分の拡大断面図である。
【図6】図6は、従来の搬送装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明にかかるウェハカセット搬送装置の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0012】
実施の形態.
図1は、本発明にかかるウェハカセット搬送装置の実施の形態の構成を示す図である。図1(a)は前面図であり、図1(b)は図1(a)におけるIb−Ib断面図である。本実施の形態にかかるウェハカセット搬送装置10は、移送装置4と、櫛部としてのクシ5と把持装置としてのチャックフック6とを有する。クシ5は、所定の間隔を空けて二列に歯が配列されている。チャックフック6は、ウェハカセット1を把持する部材である。
【0013】
図2−1及び図2−2は、実施の形態のウェハカセット搬送装置の動作を示す図である。図2−1は側断面図であり、図2−2は前面図である。なお、図2−1及び図2−2の(a)〜(f)は対応しており、同じ状態を視点を別にして示している。ウェハカセット搬送装置10は、配列された複数の処理槽8に沿って移送装置4によって移動しつつ、チャックフック6の動作によりウェハカセット1の保持・解放を繰り返すことで、処理対象であるウェハ2を複数枚収容したウェハカセット1を一列に配列された複数の処理槽8に順次浸漬させる。なお、複数の処理槽8のうち最後段は洗浄槽3である。ウェハ2は、例えば太陽電池セルの製造に用いるシリコンウェハである。
【0014】
図3は、複数のウェハが収容されるウェハカセットの概略構成を示す上面図である。図4は、複数のウェハが収容されるウェハカセットの概略構成を示す斜視図である。ウェハカセット1の側面内壁1bには複数のカセットリブ1aが形成されており、隣接する二つのカセットリブ1aで挟まれた保持溝1c(端部では前面内壁1d又は後面内壁1eとカセットリブ1aとで挟まれた部分)にウェハ2が1枚ずつ立てた状態で収容されて前後方向に並ぶようになっている。カセットリブ1aは、保持溝1cがウェハ2の厚さよりも幅広になる間隔で並んでいる。このため、保持溝1cに収容されたウェハ2は、前方に位置するカセットリブ1a及び後方に位置するカセットリブ1aのどちらにももたれ掛かる可能性がある。カセットリブ1aの先端には、前面側にテーパ部1fが設けられている。以下の説明では、カセットリブ1aの前面側にテーパ部1fが設けられた構成を例とするが、テーパ部1fはカセットリブ1aの後面側に設けられていても良い。
【0015】
保持溝1cが設けられた側面内壁1b同士の間隔はクシ5の歯の列同士の間隔と同じである。また、保持溝1cの間隔(ピッチ)は、クシ5の歯のピッチと同じである。
【0016】
図5は、クシの部分の拡大断面図である。クシ5の歯の各々は、樹脂棒5bの周りにスポンジ5aが取り付けられた構造となっている。スポンジ5aは、耐薬品性、吸水性に優れた材料(例えばオレフィン系スポンジ)で形成されていることが望ましい。樹脂棒5bの先端はカセットリブ1aのテーパ部1fに倣うようにテーパ状になっている。また、スポンジ5aの先端部分にもテーパが付けられている。
【0017】
洗浄槽3で処理された複数枚のウェハ2が収容されたウェハカセット1を移送装置4が取りに行く際、移送装置4に取り付けているクシ5の歯が保持溝1cのウェハ2の間に挿入される。樹脂棒5bやスポンジ5aの先端はテーパ状になっているため、クシ5の歯はリブのテーパ部1fに案内されることによりウェハカセット1やウェハ2に引っ掛かることなくウェハ2の間に挿入される。クシ5の歯がウェハ2の間に挿入されることにより、ウェハ2は保持溝1c内では前方のカセットリブ1aにもたれ掛かった状態で揃えられる。なお、クシ5の歯がウェハ2の間に挿入された際に、クシ5とウェハ2とには若干の隙間が空くようになっており、クシ5の歯がウェハ2を傷つけることはない。
【0018】
スポンジ状のクシ5の歯がウェハ2間に挿入された状態で移送装置4に付属しているチャックフック6が閉じてウェハカセット1をチャッキングする。クシ5と移送装置4とが上方向へ移動してウェハカセット1を洗浄槽3から取り出す。ウェハ2はクシ5の歯とカセットリブ1aとに挟まれて固定されているため、隣接するウェハ2との距離は残水による表面張力に打ち勝って保たれており、ウェハ2同士が貼り付かない。
【0019】
クシ5は、樹脂棒5bだけでなくスポンジ5aを備えているため、カセットリブ1aの水をスポンジ5aで取ることにより、カセットリブ1aに水が残りにくくなり、ウェハ2の乾燥にかかる時間を短縮できる。
【0020】
比較のため、従来のウェハ搬送装置について説明する。図6は、従来の搬送装置20の断面図である。ウェハカセット1を水洗槽3から上方向に引き上げるため、残水7の表面張力によりウェハが貼り付く。
【0021】
以上のように、本実施の形態のウェハカセット搬送装置は、ウェハの乾燥に要する時間を短縮できるとともに、ウェハが貼り付いてウォーターマークが生じることを防止できる。したがって、本実施の形態のウェハカセット搬送装置を用いてシリコンウェハエッチングを行うことで太陽電池セルの歩留まりを向上させることができる。また、チャックフックを揺動傾斜可能させる機構を設ける必要が無いため、装置の小型化が可能である。
【符号の説明】
【0022】
1 ウェハカセット
1a カセットリブ
1b 側面内壁
1c 保持溝
1d 前面内壁
1e 後面内壁
1f テーパ部
2 ウェハ
3 水洗槽
4 移送装置
5 クシ
5a スポンジ
5b 樹脂棒
6 チャックフック
7 残水
8 処理槽
10 ウェハカセット搬送装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する一対の側面の内壁に設けられた複数のリブが形成する複数の保持溝の各々によって、複数のウェハを立てた状態で前後に並べて収容するウェハカセットを搬送するウェハカセット搬送装置であって、
前記ウェハカセットを把持する把持装置と、
前記一対の側面と略同じ間隔で二列に配列され、前記複数の保持溝と同じピッチで配置された複数の歯を各列に有する櫛部と、
前記把持装置及び前記櫛部を移動させる移送装置と、
を備え、
前記移送装置は、前記把持装置が前記ウェハカセットを把持するのに先だって、前記複数の保持溝の各々において前記ウェハと前記リブとの間に前記歯が挿入されるように前記把持装置及び前記櫛部を移動させることを特徴とするウェハカセット搬送装置。
【請求項2】
前記複数の歯の各々は、前記複数の保持溝の各々に挿入されることにより、前記複数のウェハの各々を、各前記保持溝の前後のいずれか一方の前記リブの側に寄せることを特徴とする請求項1記載のウェハカセット搬送装置。
【請求項3】
前記複数の歯の各々は、樹脂棒と、該樹脂棒の周囲に設置されたスポンジ材とで形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載のウェハカセット搬送装置。
【請求項4】
前記複数のリブの各々は、前記複数の歯の各々を前記保持溝へ案内するテーパ面を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のウェハカセット搬送装置。

【図1】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−38185(P2013−38185A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−172193(P2011−172193)
【出願日】平成23年8月5日(2011.8.5)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】