説明

ウエハーレベルアンダーフィル剤組成物、これを用いた半導体装置及びその製造方法

【課題】半田バンプの位置決めが容易であり、ボイドが無く信頼性の高いアンダーフィルを形成することができる組成物及びそれを用いた半導体装置を提供すること。
【解決手段】シリコンウエハ上に平滑な非粘着性の表面を生成するべくB−ステージプロセス中に凝固する、B−ステージ対応可能な液状ウエハーレベルアンダーフィル剤組成物であって、(A)クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、(B)フェノールノボラック樹脂、(C)2−フェニルー4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、(D)有機溶剤及び(E)酸化ジルコニウムを含む、アンダーフィル剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フリップチップ接続におけるアンダーフィル剤組成物、これを用いた半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フリップチップ接続法は、シリコンチップの、電子回路が形成された面(以下「回路面」という)を基板側に向けて、該回路面に設けられた半田バンプを介して、該チップを基板に接続する方法である。アンダーフィル剤は、半田接続部のクラック等を防止して、装置の信頼性を確保するために、シリコンチップと基板の間に施与される。従来、アンダーフィル剤は、基板とシリコンチップの間に、毛細管現象を利用して充填されていた。しかしながら、ダイサイズの一辺が10mm、20mmを超える物も有り、このような大型ダイを用いたフリップチップ半導体装置では、未充填が起き易い。アンダーフィル剤中の充填剤の量を低減すると充填され易くなるが、アンダーフィル剤の熱膨張係数が大きくなる為、アンダーフィル剤とチップ又は基板との界面で剥離が生じる等の問題が起こる。
【0003】
更に、毛細管現象を利用する工程は、工数が多く製造コストアップの原因になっている。そこで、半導体素子を基板に接続する際に、予めフラックス剤を混合したアンダーフィル剤を基板上に滴下し、その後、半田接続と同時にアンダーフィル剤を硬化させる方法、所謂ノンフロー型アンダーフィルが提案されている(特許文献1)。この方法によれば、製造コストを下げることができる。
【0004】
また、シリコンウエハにアンダーフィル剤を塗布してB−ステージ化し、その後ダイシングする方法が開示されている(特許文献2)。いわゆるB−ステージアンダーフィル若しくはウエハーレベルアンダーフィルと呼ばれる手法である。さらに、この改良方法として、アンダーフィル剤を2層とし、半田バンプの周囲にフラックス作用を有するアンダーフィル剤を、基板の接合パッド上に、フィラーを含むアンダーフィル剤を用いることが提案されている(特許文献3)。
【0005】
さらに、アンダーフィル剤の塗布量を半田ボールの先端が突出する程度の厚みとし、予めB−ステージ化した後、半田ボールの先端にフラックスを塗付する方法が知られている(特許文献4)。
【0006】
また、ウエハーレベルアンダーフィルにおいて、ホットメルトタイプのアンダーフィル剤を、バンプの頂部が露出するまで研削し、その後ダイシングを行なう方法が提案されている(特許文献5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平04−280443号公報
【特許文献2】特開2000−174044号公報
【特許文献3】特開2003−243449号公報
【特許文献4】特開2005−268704号公報
【特許文献5】特開2006−229199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載の技術において、フラックス剤はアビエチン酸等のプロトン供与性物質であり、半田バンプ表面の酸化膜を還元する。しかしこの還元反応の際水が生成され、この水が半田リフロー工程で水蒸気となり接続部のボイドとなる場合がある。
【0009】
特許文献2及び特許文献3に記載の技術に関しては、ウエハと基板の夫々にアンダーフィル剤を施与する工程が必要であり、煩瑣である。また、パッド上でのフラックス成分が不足し、接続不良が生じる場合がある。さらに、フィラーを多く含む層は透明性が悪く、半田バンプの高さを越えて塗布されると、半田バンプの位置を特定することが困難になり、即ち、半田バンプの視認性が悪くなり、ダイシング時や、接続時の位置決めが困難となる。また、フラックス作用を有するアンダーフィル剤が半田バンプの周囲を覆っており、前述した水蒸気によるボイドの発生の問題が起こり易い。
【0010】
特許文献4に記載の方法はパッケージ個別にアンダーフィル剤を塗布しその後仮硬化を行った後さらに個別のパーケージに対しフラックスを塗布しなければならず工程が煩雑であるし、また塗布するフラックスとアンダーフィル剤が反応することによりアンダーフィル剤のモル比がずれアンダーフィル剤の硬化物物性を低下させる恐れがある。
【0011】
また、特許文献5に記載の方法は、アンダーフィル剤の硬化収縮により、接続部にボイドが形成され易く、また、チップ周囲を覆うフィレットも形成され難い。さらに、半田露出部には酸化膜が形成され易く、接続工程において、市販のフラックス剤を基板等に塗布することになるが、通常の市販フラックスは希釈剤(溶剤)を大量に含んでいるため、ボイドの原因となり易い。
【0012】
また、アンダーフィル剤の塗布方法は、フィルム法、スピンコート法、印刷方法などが一般的であるが、フィルム法や印刷法は、作業性が良く実用的である反面、薄膜特に20μm以下の薄膜を形成することが困難である。一方スピンコート法は、薄膜成型に有効であるが、薄膜製作に要する液剤量に対する廃棄液剤量の比率が多く問題となっている。
【0013】
本発明は、半田バンプの位置決めが容易であり、ボイドが無く信頼性の高いアンダーフィルを形成することができる組成物及びそれを用いた半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は下記に関する。
<1>
シリコンウエハ上に平滑な非粘着性の表面を生成するべくB−ステージプロセス中に凝固する、B−ステージ対応可能な常温で液状のウエハーレベルアンダーフィル剤組成物であって、
(A)クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、
(B)フェノールノボラック樹脂、
(C)2−フェニルー4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、
(D)有機溶剤、及び
(E)酸化ジルコニウム
を含む、アンダーフィル剤組成物。
<2>
前記(E)酸化ジルコニウムの平均粒径が0.05〜10μmである、上記<1>に記載のアンダーフィル剤組成物。
<3>
固形分が30〜75質量%である、上記<1>又は<2>に記載のアンダーフィル剤組成物。
<4>
前記(B)フェノールノボラック樹脂の含有量が、前記(A)クレゾールノボラック型エポキシ樹脂中のエポキシ基に対する、該(B)フェノールノボラック樹脂におけるフェノール性水酸基のモル比が0.95以上1.25以下となる量である、上記<1>〜<3>のいずれか1に記載のアンダーフィル剤組成物。
<5>
(1)フリップチップ接続用の半田バンプを備えたシリコンウエハの、該半田バンプを備えた表面上に、常温で液状のウエハーレベルアンダーフィル剤組成物を塗布し、次いで、塗付されたウエハーレベルアンダーフィル剤組成物をB−ステージ化する工程、
(2)前記B−ステージ化工程(1)で得られたシリコンウエハを切断して個片化する工程、
(3)前記個片化工程(2)で得られた個片を、基板上の接続すべき位置に、位置決めする工程、及び
(4)前記位置決め工程(3)で得られた個片を、前記半田バンプを溶融して基板に接続する工程、
を含む半導体装置の製造方法であって、前記アンダーフィル剤組成物が上記<1>〜<4>のいずれか1に記載のアンダーフィル剤組成物である、半導体装置の製造方法。
<6>
前記位置決め工程(3)が、表面が液状となる温度に基板及び個片の少なくとも一方を加熱して、基板に圧着する工程を含む上記<5>に記載の半導体装置の製造方法。
<7>
前記B−ステージ化工程(1)の後かつ前記個片化工程(2)の前に、UVまたはプラズマで前記半田バンプ表面をクリーニングする工程を含む上記<5>又は<6>に記載の半導体装置の製造方法。
<8>
上記<5>〜<7>のいずれか1に記載の製造方法により製造される半導体装置。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、アンダーフィル剤をウエハ上に連続的に施与可能であると共に、半田バンプの位置合わせに支障が無い。また、アンダーフィル剤にフラックス性能の高い物質を配合すれば、パッドと半田バンプとの接続性がさらに高められる。更に薄膜形成が容易にできるため、狭いギャップやファインピッチのフリップチップデバイスに対応できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の製造方法を示すフロー図である。
【図2】本発明の製造方法を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<アンダーフィル剤組成物>
本発明のB−ステージ対応可能な常温で液状のウエハーレベルアンダーフィル剤組成物(以下「本発明のアンダーフィル剤組成物」とも記載する。)は、(A)クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、(B)フェノールノボラック樹脂、(C)2−フェニルー4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、(D)有機溶剤及び(E)酸化ジルコニウムを含有する。なお、本願発明において、常温(又は室温)とは、23℃±10℃を意味する(以下同様)。
【0018】
[エポキシ樹脂]
(A)クレゾールノボラック型エポキシ樹脂:
本発明のアンダーフィル剤組成物は、エポキシ樹脂としてクレゾールノボラック型エポキシ樹脂を含む。クレゾールノボラック型エポキシ樹脂としては、o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、m−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、及びp−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂のいずれであってもよいが、特にo−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂が好ましい。また、これらの樹脂中のエポキシ基としては、それぞれ対応するクレゾールノボラック樹脂中のフェノール性水酸基をグリシドキシ基(下記化学式)で置換したものが好ましい。
【0019】
【化1】

【0020】
また、B−ステージ状態で、タックフリー、即ち表面が粘着性で無いこと、が後工程で望ましいため、常温で固形である材料が望ましい。常温で液状の材料を用いると、B−ステージ状態で粘着性が残り、タックフリーとするために加熱して半硬化すると、半田接続時に低粘度にならず、半田接続性を阻害する恐れがある。より好ましくは、不純物の少ない、特にイオン性不純物が少ないグレードの樹脂を使用する。
【0021】
[硬化剤]
(B)フェノールノボラック樹脂:
本発明のアンダーフィル剤組成物は、フェノールノボラック樹脂を含有する。このフェノールノボラック樹脂は、アンダーフィル剤において硬化剤として機能する。
【0022】
フェノールノボラック樹脂の含有量としては、フェノールノボラック樹脂における反応性官能基すなわち上記(A)クレゾールノボラック型エポキシ樹脂中のエポキシ基と反応するフェノール性水酸基と、上記(A)のクレゾールノボラック型エポキシ樹脂中のエポキシ基のモル比(フェノールノボラック樹脂中のフェノール性水酸基のモル量/エポキシ基のモル量)が0.95〜1.25の範囲であることが望ましく、特に望ましくは0.95〜1.1である。上記範囲内であればフェノールノボラック樹脂の硬化物物性が低下せず、また、硬化の際に揮発ガスの増大を招くおそれがないため、硬化物中にボイドが発生せず好ましい。また上記範囲内であれば、フラックス作用によるボイド発生のおそれがなく好ましい。
上記モル比は、例えば、下記式により算出できる。
(フェノールノボラック樹脂の含有量(質量)/フェノール当量)÷(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂の含有量(質量)/エポキシ当量)
【0023】
[触媒]
(C)2−フェニルー4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール:
本発明のアンダーフィル剤組成物は、硬化触媒として2−フェニルー4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾールを含有する。2−フェニルー4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾールの含有量は、樹脂100質量部(特には、(A)成分と(B)成分との合計100質量部)に対して0.05〜0.5質量部であることが好ましい。含有量が上記範囲であればバンプ接合時に樹脂組成物が低粘度になり、接合した後十分に硬化するため好ましい。
【0024】
[溶剤]
(D)有機溶剤:
本発明のアンダーフィル剤組成物は、溶剤として有機溶剤を含有する。(D)成分の有機溶剤としては、アルコール類及びグリコール類から選ばれる少なくとも1種のアルコール性有機溶剤を含有することが好ましく、該アルコール性有機溶剤として、特にジエチレングリコールモノエーテルアセテート(EDGAC)を含有することが好ましい。
【0025】
上記に加えて、塗布工程における作業性を向上するために各種揮発性溶剤を添加してもよい。各種揮発性溶剤としては、ケトン、エステル、アルコール、エーテル、γ−ブチロラクトン、プロピレングリコールメチルエチルアセテート(PGMEA)及びそれらの混合物を含む溶剤等を用いることができる。(D)成分の有機溶剤の配合量は、組成物全体(即ち、(A)〜(E)成分の合計、又は、(A)〜(E)成分と後述する任意成分との合計)に対して、25〜70質量%、特に25〜50質量%程度が好ましい。
【0026】
[充填剤]
(E)酸化ジルコニウム:
本発明のアンダーフィル剤組成物は、充填剤として酸化ジルコニウムを含有する。充填剤は、アンダーフィル剤の機械的強度の向上及び熱膨張係数の低減、また樹脂組成物の透明性維持のために配合される。酸化ジルコニウムを充填剤として含有することにより、充填剤を高充填化した際にも透明性を確保することができ、チップをデバイスに実装する際に必要とされるいわゆるアライメント性が向上する。Bステージ状態での透明性を確保できるのは、酸化ジルコニウムが特定の屈折率(n252.35〜2.55)を有するためと考えられる。
【0027】
酸化ジルコニウムの粒径は半田バンプ間を良く充填させるため、平均粒径(例えば累積重量平均径D50又はメジアン径)が0.05〜10μmであることが好ましい。また最大粒径(D90)は、バンプの高さの1/2以下とすることが望ましい。平均粒径は、遠心沈降法、レーザー回折法により、最大粒径は篩法により、夫々測定することができる。
【0028】
酸化ジルコニウムは、アンダーフィル剤組成物の固形分、即ち揮発分を除いた分の総質量(特には(A)、(B)、(C)及び(E)成分の合計質量)において、25〜75質量%となるように配合されることが好ましく、より好ましくは30〜75質量%である。25質量%以上であれば熱膨張係数が増大することなく信頼性を維持することができ、75質量%以下であればバンプへの噛み込みが発生するおそれがなく好ましい。
【0029】
微粉充填剤:
また、均一な厚みのアンダーフィル剤層が形成されるように、アンダーフィル剤組成物は高チクソ性であることが好ましく、(E)成分の酸化ジルコニウムに加えて、平均粒径が0.005μm以上0.2μm未満の微粉充填剤を必要に応じて、さらに含むことが好ましい。かかる微粉充填剤としては、特に、微粉シリカが好ましく、具体的にはアエロジル130、アエロジル200、アエロジル300、アエロジル380(全て日本アエロジル(株)製、比表面積は順に130、200、300、380m/g)等のヒュームドシリカ、沈降シリカ、焼成シリカ等が挙げられ、また、これらシリカ微粉末はトリメチルシリル基等のオルガノシリル基で表面疎水化処理したものを用いることが好ましい。
【0030】
また、平均粒径が0.005μm以上0.2μm未満の微粉充填剤は、アンダーフィル剤組成物の固形分、即ち揮発分を除いた分の総質量(特には(A)、(B)、(C)、(E)成分及び微粉充填剤の合計質量)において20質量%以下(0〜20質量%)が好ましく、5質量%〜20質量%であることがより好ましい。5質量%以上であれば薄膜成形性が良好で、20質量%以下であれば粘度上昇が起こらずスプレー塗布性が良好である。
【0031】
[その他]
フラックス成分:
本発明のアンダーフィル剤組成物は、良好な半田接続を形成するため、フラックス剤及びフラックス性能を有する硬化剤のうち少なくとも一方(以下「フラックス成分」という)を含むことが好ましい。該フラックス成分は、半田表面の酸化膜を還元する性能を有する物質であり、代表的にはプロトン供与性の物質である。プロトン供与性のフラックス剤としては、例えばアビエチン酸、デヒドロアビエチン酸、ジヒドロアビエチン酸、テトラヒドロアビエチン酸、ネオアビエチン酸、イソピマール酸、ピマール酸、レボピマール酸、パラストリン酸、後者では安息香酸、ステアリン酸、乳酸、クエン酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸等を挙げることができる。
【0032】
フラックス性能を有する硬化剤としては、例えば、フェノール樹脂、酸無水物、アミン系硬化剤等が挙げられ、これらとアビエチン酸等の混合物であってもよい。
フラックス成分の含有量としては、樹脂分(特には、(A)、(B)成分の合計量)100質量部に対し3質量部以下(0〜3質量部)が好ましく、0.5〜3質量部程度がより好ましい。前記下限値以上であればフラックス性能が良好で、また上限値以下であれば樹脂硬化物の物性が低下する恐れがない。また、硬化剤としての作用があるフェノール樹脂や酸無水物を用いる場合は、(B)フェノールノボラック樹脂の欄にて上述のとおり、フェノール性水酸基又は酸無水物基の量/エポキシ基の量のモル比が0.95〜1.25の範囲とすることが望ましい(ただし、酸無水物基1モルは2当量に相当する)。前記下限値以上であればフラックス性能が良好で接続性が低下する恐れがない。また前記モル比が1.0以下の場合はアビエチン酸等のフラックス剤を併用することが望ましい。
【0033】
本発明のアンダーフィル剤組成物は、ダイシング時の機械的強度を向上するため、熱可塑性ポリマーを添加することも可能である。その他、重合触媒、シランカップリング剤、イオントラップ剤等を、本発明の目的を阻害しない範囲で添加してよい。
【0034】
本発明のアンダーフィル剤組成物は上記各材料をロール混練機等を用いて混練することによって調製することができる。
【0035】
本発明のアンダーフィル剤組成物は、室温で液状であることが好ましい。固体であると流動性を有する温度で加熱しなければならなく、組成物の硬化が促進する恐れがある。そして、組成物における固形分の割合が30〜75質量%であることが好ましく、50〜75質量%であることがさらに好ましい。なお、該固形分の割合とは、溶剤等の揮発成分を除いた分の割合、特には、(A)〜(E)成分の合計質量に対する(A)、(B)、(C)及び(E)成分の合計質量の割合、又は(A)〜(E)成分に微粉充填剤及び/又はフラックス成分を加えた合計質量に対する(A)、(B)、(C)、(E)成分に微粉充填剤及び/又はフラックス成分を加えた合計質量の割合である。固形分の割合が上記範囲内であれば室温において液状で扱いやすく、揮発分が少なくなるためB−ステージの時間を短縮できたり、厚みによるB−ステージ化への影響(溶剤が完全に揮発しないなど)を受けにくいため好ましい。
【0036】
<半導体装置の製造方法>
本発明のアンダーフィル剤組成物は半導体装置の製造に利用することができる。この半導体装置の製造方法には、本発明のアンダーフィル剤組成物により単層のアンダーフィル剤層を形成する方法(製造方法1)と、アンダーフィル剤層を本発明のアンダーフィル剤組成物と、これとは異なる組成のアンダーフィル剤組成物とにより2層のアンダーフィル剤層を形成する方法(製造方法2)とが含まれる。アンダーフィル剤層を単層とすることにより、工程を減らすことができ、それにより作業効率及び生産性が向上する。また、アンダーフィル剤層を2層とすることにより、単層としての厚みでは透明性に欠ける樹脂を厚さの薄い第2層(即ち、基板側の層)として塗布することができる。
【0037】
<製造方法1>
本発明の半導体装置の製造方法1を、図1を参照しながら説明する。先ず、シリコンウエハ1を準備する。該ウエハは、複数の個片(チップ)に区切るスクライブが形成されており、各個片には回路と、フリップチップ接続用の複数の半田バンプ2が備えられている。工程(1)において、シリコンウエハ1の半田バンプ2を備えた表面すなわち回路面に、本発明のアンダーフィル剤組成物をスプレー噴射装置等の塗布手段を用いて塗布する。スプレー噴射による塗布は効率よく薄膜成型が可能であり、特に20um以下の成型には不可欠な方法である。また、近年ウエハーサイズの大型化により大面積を塗布する方法としてもスプレー法が適している。使用するスプレー噴射装置は、公知、既存の装置を用いることができる。薄膜作成における厚みの最適化の為の条件は、スプレー塗布部がウエハまでの距離、移動範囲、ピッチ、速度、塗布量、エアー圧、塗布時間などで調整、設定することにより容易に可能である。
【0038】
次に、塗布されたアンダーフィル剤組成物をB−ステージ状態、即ち、組成物が流動性の無い状態であるが、完全には硬化していない状態にする。B−ステージ化は、加熱して溶剤を揮発させることによって行なう。この加熱は、アンダーフィル剤の硬化を進行させないよう、硬化開始温度より充分低い温度、好ましくは硬化開始温度(オンセット温度)から40℃程度以上低い温度で行う。
【0039】
B−ステージ化した後は、半田バンプの頂上が現れるまで、研削又はアッシング等によりエッチングすることが好ましい。この工程を加えると、半田接続性、半田バンプの視認性が向上する。
【0040】
得られたB−ステージ状態のアンダーフィル剤層3の厚みは、半田バンプの高さの1.0倍〜1.3倍であることが好ましい。厚みが下限値以上であれば半田接続部を保護する性能が十分であり、上限値以下であれば、半田バンプの接続性及び工程(4)で接続する際の半田バンプへの無機充填剤の噛み込みが起こりにくい。また、上限値以下であれば、アンダーフィル剤が半導体素子上面に回りこむことがなく、半導体素子を汚染することがないため好ましい。また、フィレットが小さくなり、素子の高密度化を図ることができる。
【0041】
工程(2)では、シリコンウエハを個片化(ダイシング)する。ダイシングは、公知のダイサーを用いて行なってよい。この際、B−ステージ状態のアンダーフィル剤層も個片化される。
【0042】
次いで、工程(3)で、個片4(以下「チップ」とも記載する)がピックアップされて、回路基板上の該チップを接続すべきパッドに位置決めされる。位置決めは、公知のフリップチップボンダーを用い、下記工程(4)と連続して行なってよい。
【0043】
工程(4)で、半田バンプを溶融して、チップ4を基板5に半田接続する。半田接続は、パルスヒート型のフリップチップボンダーを用い200℃以上に急速加熱を行ない上記位置決めと、半田接続を同一装置で行なう方法、アンダーフィル剤層3の表面が液状となる程度の温度に基板5及び/又はチップ4を加熱して、該アンダーフィル剤表面を基板に圧着し、その後、IRリフロー装置において、半田接続を行なう方法等で行なうことができる。加熱によって、アンダーフィル剤が低粘度になって、半田バンプと基板とのパッドが接触して半田接続されると共に、アンダーフィル剤の硬化が開始する。硬化触媒を選択する等によって、硬化性を高め、半田接続終了と同時に樹脂の硬化過程を終了するようにできる。また、反応性の遅いアンダーフィル剤の場合は、半田接続後にさらにオーブン等で加熱し硬化を完了させることも可能である。
このようにして、半導体装置10が製造される。
【0044】
<製造方法2>
本発明の半導体装置の製造方法2を、図2を参照しながら説明する。本実施形態では、アンダーフィル剤層を形成する工程(1)が、1層目を形成する工程(i)と2層目を形成する工程(ii)とを含む点以外は、製造方法1と同様である。工程(i)において、シリコンウエハ1の半田バンプ2を備えた表面すなわち回路面に、本発明のアンダーフィル剤組成物を第1アンダーフィル剤組成物としてスプレー噴射装置等の塗布手段を用いて塗布する。使用するスプレー噴射装置、条件は製造方法1と同様である。次いで、製造方法1と同様にBステージ化を行い、第1アンダーフィル剤層3Aを形成する。Bステージ状態の第1アンダーフィル剤層3Aの厚みは、半田バンプ2の高さの0.5〜1.0倍の厚みとする。
【0045】
次いで、工程(ii)において、常温で液状の第2アンダーフィル剤組成物を、第1アンダーフィル剤に関して述べたのと同様のスプレー噴射法で、B−ステージ状態の第1アンダーフィル剤層3Aの上に塗布する。次いで、第2アンダーフィル剤をB−ステージ化して、B−ステージ状態の第1アンダーフィル剤層3Aと第2アンダーフィル剤層3Bの合計の厚みが、半田バンプ2の高さの1.0〜1.3倍、好ましくは1.1〜1.2倍である2層構造のアンダーフィル剤層を得る。アンダーフィル剤層全体の厚みが前記下限値を下回ると、工程(4)の半田接続時に、アンダーフィル剤が流動して広がることによって、シリコンチップと基板の間を満たさず、ボイドが生じる恐れがある。一方、前記上限値を超えると、アンダーフィル剤が半導体素子上面に回りこみ、該素子を汚染し、また、フィレットが大きくなり、素子の高密度化を妨げる。
【0046】
(第2アンダーフィル剤組成物)
第2アンダーフィル剤組成物は、エポキシ樹脂と、フラックス剤及びフラックス性能を有する硬化剤のうち少なくとも一方と、を含有する。
エポキシ樹脂としては、2官能性以上であれば特に限定されない。例としては、ビスフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、シクロペンタジエン型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらのエポキシ樹脂は1種単独で又は2種以上混合して用いることができる。
【0047】
フラックス剤及びフラックス性能を有する硬化剤のうち少なくとも一方(以下「フラックス成分」という)のうち、フラックス剤は、本発明のアンダーフィル剤組成物の説明で述べたものを使用することができる。フラックス性能を有する硬化剤としては、例えば、フェノール樹脂、酸無水物、アミン系硬化剤等が挙げられる。なお、第2アンダーフィル剤組成物と第1アンダーフィル剤組成物とで含まれるフラックス成分は同一でも異なっていてもよい。
【0048】
第2アンダーフィル剤は硬化剤を含んでいてもよい。硬化剤としてはフェノールノボラック樹脂等のフェノール樹脂が良好である。
【0049】
第2アンダーフィル剤は充填剤を含んでもよい。例えば平均粒径が0.005μm以上0.2μm未満の微粉充填剤、特に好ましくは本発明のアンダーフィル剤組成物において説明した微粉シリカが挙げられる。微粉充填剤は、第2アンダーフィル剤組成物の固形分、即ち、揮発分を除いた分の質量に対して、5質量%以上配合されることが好ましい。5質量%以上であれば、薄膜成形性が良好である。また、位置合わせ工程(3)におけるバンプの視認性及び半田接続性の観点から、固形分の20質量%以下、より好ましくは10質量%以下配合されることが好ましい。20質量%を超えると、第2アンダーフィル剤の透明性が低下し、基板に対し半導体素子を位置決めする際に半田バンプの認識が困難となる。またフィラー噛み込みのため半田接続性が低下する。20質量%以下であれば粘度上昇が起こりにくく、スプレー塗布性が良好である。
【0050】
第2アンダーフィル剤組成物は上記各成分に加えて、塗布工程における作業性を向上するために、各種揮発性溶剤を含有してもよい。溶剤としては、ケトン、エステル、アルコール、エーテル、γ‐ブチロラクトン、プロピレングリコールメチルエチルアセテート(PGMEA)及びジエチレングリコールモノエチルエーテルアセタート(EDGAC)及びそれらの混合物を含む溶剤を用いることができる。
その他、第2アンダーフィル剤組成物には、ダイシング時の機械的強度を向上するため、熱可塑性ポリマーを添加することも可能である。その他、重合触媒、シランカップリング剤、イオントラップ材等を、本発明の目的を阻害しない範囲で、添加してよい。
【0051】
工程1によりBステージ状態のアンダーフィル剤層を形成した後は、上述の製造方法1における工程(2)〜(4)と同様に各工程に供する。
このようにして、半導体装置20が製造される。
【実施例】
【0052】
以下に実施例及び比較例を用いて、本発明を詳細に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。なお、平均粒子径はレーザー光回折法による累積重量平均径D50であり、最大粒径は篩法によるものであり、屈折率はn25値を示す。
表1に示す質量部で、各成分を室温で、プラネタリーミキサーで混合した後、3本ロールを通過させ、再度プラネタリーミキサーで混合して、アンダーフィル剤組成物a〜eを得た。
(A)エポキシ樹脂:
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(EOCN1050(55)エポキシ当量200、室温で固形)
(B)硬化剤:
フェノールノボラック樹脂(MEHC7800−4S、フェノール当量170、室温で固形)
(C)イミダゾール触媒:
2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール(2PHZ、四国化成製)
(D)溶剤:
ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセタート
(E)充填剤:
(E1)平均粒子径0.8μm、最大粒径5μmの真球状シリカ(屈折率1.45)、
(E2)平均粒子径0.05μm、最大粒径1μmの酸化ジルコニウム(屈折率2.4)、
(E3)平均粒子径0.8μm、最大粒径10μmのアルミナ(屈折率1.76)、
(E4)平均粒子径0.5μm、最大粒径10μmのフッ化カルシウム(屈折率1.43)、
(E5)平均粒子径0.3μm、最大粒径10μmのルチル型酸化チタン(屈折率2.71)、
(E6)平均粒子径0.05μm、最大粒径1μmの微粉シリカ(屈折率1.45)
(その他)熱可塑性樹脂:
質量平均分子量10000のフェノキシ樹脂
【0053】
【表1】

【0054】
評価用の半導体チップとしては、半田バンプが576個搭載された日立超LSIシステムズ社製フリップチップキットのJTEG Phase2E175鉛フリー仕様、バンプ高さ70μm(以下「評価用TEG」と記載する)を用いた。基板として同社製JKIT TYPE−IIIを用いた。この半導体チップと基板は両者の接続によりデイジーチェーンを構成し、チップ内の全ての半田バンプが接続されたときに導通が可能となるものである。即ち576個のバンプの内1個でも接続できなければ導通試験で絶縁性を示し、接続性が良好な実装方法を用いなければ接続が困難である。
【0055】
(実施例1)
アンダーフィル剤組成物として組成物bを用い、個片化する前、即ちウエハの状態である評価用TEGに、スプレー法を用いて塗布した。装置は、ノードソン(株)ファインスワールスプレーガンを用いた。Bステージ後の厚み設定は、20um、40μm、60μmでX軸速度(mm/s)、Y軸ピッチ速度(mm/s)、スプレーガン距離(mm)、マイクロ開度(mm)、霧化エア圧力(MPa)、スワールエア圧力(MPa)を調整した。その後、ウエハを110℃のオーブンに10分投入し、溶剤を除去して、B−ステージ状態にした。B−ステージ状態での平均膜厚を膜厚計で測定したところ、設定通り20±5um、40±7μm、60±10μmであった。
【0056】
(比較例1)
アンダーフィル剤として組成物cを用いた以外は実施例1と同様に薄膜設定を行いBステージ後の薄膜を測定した。
【0057】
(比較例2)
アンダーフィル剤として組成物dを用いた以外は実施例1と同様に薄膜設定を行いBステージ後の薄膜を測定した。
【0058】
(比較例3)
アンダーフィル剤として組成物eを用いた以外は実施例1と同様に薄膜設定を行いBステージ後の薄膜を測定した。
【0059】
(比較例4)
アンダーフィル剤として組成物aを用いた以外は実施例1と同様に薄膜設定を行いBステージ後の薄膜を測定した。
【0060】
各ウエハにつき、以下の評価を行なった。
(1)薄膜安定性
B−ステージ状態での平均膜厚を膜厚計で測定した。設定値からのずれが50%未満であれば良好と評価した。
(2)位置決め性
ダイシングにより得られた個片を、フリップチップボンダー(アスリート社製 CB−501)を用い、各膜厚(20μm、40μm、60μm)において困難なく基板上のパッドと位置合わせできるかどうかを評価した。
(3)半田接続性
フリップチップボンダーで位置決めして、チップを配置した後、チップマンターツール温度を260℃で設定し、1〜10Nでチップアタッチを行った。次いで、150℃のオーブンに4時間入れて、アンダーフィル剤を硬化させ、半導体装置を得た。得られた半導体装置10個につき、テスターを用い導通性を確認した。
(4)信頼性
試験(3)で得られた半導体装置を、熱サイクル試験(TCT)(−55℃〜125℃)を1000サイクル行なった後、テスターを用い導通性を確認した。
【0061】
表2に上記4項目の評価結果を示す。
【0062】
【表2】

【0063】
無機充填剤が酸化ジルコニウムでない比較例1〜4は、フリップチップボンダーで位置決めをする際、バンプが認識されず、位置決め不能であったため、接続性、信頼性試験を行なうことができなかった。これらに対して、無機充填剤として酸化ジルコニウムを使用した実施例1の半導体装置は、全ての項目で良好であった。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の方法によれば、アンダーフィル剤の薄膜成型が可能であり、半田接続性、ボイド発生の低減が容易であり、信頼性の高い半田接続部を備える半導体装置を作ることができる。
【符号の説明】
【0065】
1 シリコンウエハ
2 半田バンプ
3 アンダーフィル剤層
3A 第1アンダーフィル剤層
3B 第2アンダーフィル剤層
4 個片(チップ)
5 基板
10、20 半導体装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコンウエハ上に平滑な非粘着性の表面を生成するべくB−ステージプロセス中に凝固する、B−ステージ対応可能な常温で液状のウエハーレベルアンダーフィル剤組成物であって、
(A)クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、
(B)フェノールノボラック樹脂、
(C)2−フェニルー4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、
(D)有機溶剤、及び
(E)酸化ジルコニウム
を含む、アンダーフィル剤組成物。
【請求項2】
前記(E)酸化ジルコニウムの平均粒径が0.05〜10μmである、請求項1に記載のアンダーフィル剤組成物。
【請求項3】
固形分が30〜75質量%である、請求項1又は2に記載のアンダーフィル剤組成物。
【請求項4】
前記(B)フェノールノボラック樹脂の含有量が、前記(A)クレゾールノボラック型エポキシ樹脂中のエポキシ基に対する、該(B)フェノールノボラック樹脂におけるフェノール性水酸基のモル比が0.95以上1.25以下となる量である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のアンダーフィル剤組成物。
【請求項5】
(1)フリップチップ接続用の半田バンプを備えたシリコンウエハの、該半田バンプを備えた表面上に、常温で液状のウエハーレベルアンダーフィル剤組成物を塗布し、次いで、塗付されたウエハーレベルアンダーフィル剤組成物をB−ステージ化する工程、
(2)前記B−ステージ化工程(1)で得られたシリコンウエハを切断して個片化する工程、
(3)前記個片化工程(2)で得られた個片を、基板上の接続すべき位置に、位置決めする工程、及び
(4)前記位置決め工程(3)で得られた個片を、前記半田バンプを溶融して基板に接続する工程、
を含む半導体装置の製造方法であって、前記アンダーフィル剤組成物が請求項1〜4のいずれか1項に記載のアンダーフィル剤組成物である、半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記位置決め工程(3)が、表面が液状となる温度に基板及び個片の少なくとも一方を加熱して、基板に圧着する工程を含む請求項5に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記B−ステージ化工程(1)の後かつ前記個片化工程(2)の前に、UVまたはプラズマで前記半田バンプ表面をクリーニングする工程を含む請求項5又は6に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
請求項5〜7のいずれか1項に記載の製造方法により製造される半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−21119(P2013−21119A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−153008(P2011−153008)
【出願日】平成23年7月11日(2011.7.11)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】