説明

エポキシ樹脂組成物、プリプレグ、積層板、樹脂シート、多層プリント配線板、及び半導体装置

【課題】低熱線膨張率であり、流動性に優れるエポキシ樹脂組成物、スジムラ等外観不良のないプリプレグ、成形性、加工性に優れる積層板、耐半田性に優れる多層プリント配線板、及び信頼性に優れる半導体装置を提供する。
【解決手段】(A)下記一般式(1)で表される構造を有するエポキシ樹脂、(B)水酸化アルミニウムおよび(C)シアネート樹脂を必須成分とするエポキシ樹脂組成物。


[式中Xは水素、またはエポキシ基(グリシジルエーテル基)を、RおよびRは、水素、炭化水素の中から選択される1種を表す。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ樹脂組成物、プリプレグ、積層板、樹脂シート、多層プリント配線板、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電子部品、電子機器等の多種多様化、小型化、及び薄型化に伴って、それらに用いられる多層プリント配線板も小型化、薄型化が図られており、様々な構成のものが開発されている。一般に多層プリント配線板は、両面金属箔張積層板にエッチングなどの方法で回路形成を行い、絶縁層を積層し、その絶縁層表面に回路を形成し、さらに絶縁層を積層するといった方法で製造され、交互に回路と絶縁層とを積層することで製造される(例えば、特許文献1に記載)。
【0003】
両面金属箔張積層板は、一般にガラス布等の基材にエポキシ樹脂やフェノール樹脂等の熱硬化性樹脂等を浸漬含浸させたプリプレグと呼ばれる絶縁層の両面に、もしくは、プリプレグを複数枚重ねた両面に、銅箔等の金属箔を張り合わせて加熱、加圧することにより、構成される(例えば、特許文献2に記載)。近年では、多層プリント配線板の薄型化の傾向に伴い、両面金属箔張積層板のプリプレグを薄くしたり、プリプレグを用いなかったりすることが検討されている。
【0004】
しかしながら、薄型の多層プリント配線板を用い半導体装置を製造した場合、半導体素子と多層プリント配線板との接続部に、線熱膨張差による応力が生じ、半導体装置の信頼性に影響を及ぼすことがある。そのためプリプレグ、多層プリント配線板の絶縁層に用いられる樹脂組成物は、低熱膨張化が要求される。樹脂組成物には、一般にエポキシ樹脂が使用されるが(例えば、特許文献3に記載)、樹脂組成物の低膨張率化は、エポキシ樹脂を含む樹脂組成物に無機充填材およびシアネート樹脂(例えば、特許文献4、5に記載)を添加するという手法がとられている。
【0005】
また、多層プリント配線板用樹脂組成物に水酸化アルミニウムを配合することで、ドリル加工性や難燃性を向上させることができることが知られているが(例えば、特許文献6に記載)、低熱膨張化のために水酸化アルミニウムなどの比較的比表面積の多きい無機充填材を多量に配合すると、流動性が低下し、ボイドの発生する等の加工性の低下や半田耐熱性の悪化といった不具合が発生するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−305374号公報
【特許文献2】特開2003−64198号公報
【特許文献3】特開2006−274236号公報
【特許文献4】特開2002−299834号公報
【特許文献5】特開2003−128928号公報
【特許文献6】特開2007−51267号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、低熱線膨張率であり、流動性に優れるエポキシ樹脂組成物、スジムラ等外観不良のないプリプレグ、成形性、加工性に優れる積層板、成形性、耐半田性に優れる多層プリント配線板、及び信頼性に優れる半導体装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的は、下記の本発明[1]〜[15]により達成される。
[1](A)下記一般式(1)で表される構造を有するエポキシ樹脂、(B)水酸化アルミニウムおよび(C)シアネート樹脂を必須成分とすることを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
【0009】
【化1】


[式中 Xは水素、またはエポキシ基(グリシジルエーテル基)を、RおよびRは、互いに独立し、水素、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基、およびベンジル基の中から選択される1種を表す。nは1以上の整数であり、p、qは1以上の整数であり、またp、qの値は、繰り返し単位毎に同一でも、異なっていてもよい。]
[2]前記(B)水酸化アルミニウムは、BET比表面積が1.0m/g以上である[1]に記載のエポキシ樹脂組成物。
[3]前記(B)水酸化アルミニウムは、平均粒子径が10.0μm以下である[1]または[2]に記載のエポキシ樹脂組成物。
[4]前記(B)水酸化アルミニウムの含有量は、エポキシ樹脂組成物全体の5〜60重量%である[1]ないし[3]のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
[5][1]ないし[4]のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物は、さらに水酸化マグネシウム、シリカ、タルク、焼成タルク、及びアルミナよりなる群から選ばれる少なくとも1種類の無機充填材を含有するものであるエポキシ樹脂組成物。
[6]前記(A)一般式(1)で表される構造を有するエポキシ樹脂の含有量は、エポキシ樹脂組成物全体の1〜40重量%である[1]ないし[5]のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
[7]前記(C)シアネート樹脂は、フェノールノボラック型シアネート樹脂、クレゾールノボラック型シアネート樹脂、ビスフェノールA型シアネート樹脂、ビスフェノールF型シアネート樹脂、およびジシクロペンタジエン型シアネート樹脂よりなる群から選ばれる少なくとも1種類である[1]ないし[6]のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
[8]前記(C)シアネート樹脂の含有量は、エポキシ樹脂組成物全体の3〜50重量%である[1]ないし[7]のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
[9][1]ないし[8]のいずれかのエポキシ樹脂組成物は、さらに(D)オニウム塩化合物を必須成分とするエポキシ樹脂組成物。
[10]前記(D)オニウム塩化合物は、下記一般式(2)で表される化合物である[9]に記載のエポキシ樹脂組成物。
【0010】
【化2】

(式中、Pはリン原子、R1、R2、R3及びR4は、それぞれ、置換もしくは無置換の芳香環又は複素環を有する有機基、あるいは置換もしくは無置換の脂肪族基を示し、互いに独立し、同一であっても異なっていてもよい。A-は、分子外に放出しうるプロトンを少なくとも1個以上分子内に有するn(n≧1)価のプロトン供与体のアニオン、又はその錯アニオンを示す。)
[11][1]ないし[10]のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物を基材に含浸させてなるプリプレグ。
[12][11]に記載のプリプレグを少なくとも1枚以上重ね合わせた積層体の少なくとも片面に金属箔を有する積層板。
[13][1]ないし[10]のいずれかに記載のエポキシ絶縁樹脂組成物よりなる絶縁層をフィルム上、又は金属箔上に形成してなる樹脂シート。
[14][11]に記載のプリプレグ、[12]に記載の積層板、および[13]に記載の樹脂シートからなる群より選ばれる少なくとも1つを用いて作製される多層プリント配線板。
[15][14]に記載の多層プリント配線板に半導体素子を搭載してなる半導体装置。
【発明の効果】
【0011】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、流動性に優れ、硬化物にした場合、低熱線膨張率である。また、当該エポキシ樹脂組成物を用いたプリプレグは、スジムラ等外観不良がなく、成形性、加工性に優れる積層板を提供することができる。さらに当該樹脂組成物を用いた成形性、耐半田性に優れる多層プリント配線板、及び信頼性に優れる半導体装置を提供するものである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明のエポキシ樹脂組成物、プリプレグ、積層板、樹脂シート、多層プリント配線板、半導体装置について詳細に説明する。
【0013】
まず、本発明のエポキシ樹脂組成物について説明する。
前記エポキシ樹脂組成物に用いられるエポキシ樹脂は(A)下記一般式(1)で表されるエポキシ樹脂を含有する。
【0014】
【化1】


[式中 Xは水素、またはエポキシ基(グリシジルエーテル基)を、RおよびRは、水素、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基、およびベンジル基の中から選択される1種を表す。nは1以上の整数であり、p、qは1以上の整数であり、またp、qの値は、繰り返し単位毎に同一でも、異なっていてもよい。]
【0015】
前記(A)一般式(1)で表されるエポキシ樹脂を使用することで、前記(A)一般式(1)で表されるエポキシ樹脂と、(C)のシアネート樹脂との相溶性が良好になるとともに、樹脂成分に対する(B)水酸化アルミニウムの分散性が良好となり、高充填が可能となる。また、樹脂成分と、(B)水酸化アルミニウムとが分離しないようになる。これにより、(C)のシアネート樹脂、(B)水酸化アルミニウムを使用することで、線膨張係数を低くすることができるとともに、プリプレグ等のシート状物を作製した際のボイドやスジムラの発生を防止でき、表面を平滑化することができる。
これに加え、前記(A)一般式(1)で表されるエポキシ樹脂を用いることにより、比較的比表面積の大きい(B)水酸化アルミニウムを含有しても、低溶融粘度化できる。そのため、積層板等を製造する際の加工性に優れたものとなる。
なお、前記(A)一般式(1)で表されるエポキシ樹脂を使用せず、他の構造のエポキシ樹脂を使用した場合において、低溶融粘度化した場合には、プリプレグ等のように、シート状に成形した際に、樹脂成分と水酸化アルミニウム等の無機充填材が分離しやすくなり、スジムラが発生しやすいものとなってしまう。
【0016】
前記(A)一般式(1)で表されるエポキシ樹脂の含有量は、特に限定されないが、前記エポキシ樹脂組成物全体の1〜40重量%が好ましく、2〜35重量%がさらに好ましい。最も好ましくは、5〜30重量%が最も好ましい。下限値未満の場合には、無機充填材成分と樹脂成分とが各々分離してしまう場合があり、上限値を超える場合には、シアネート樹脂及び無機充填材の相対量が少なくなるために低熱膨張化が難しくなる可能性がある。
【0017】
前記エポキシ樹脂組成物は、(B)水酸化アルミニウムを含有する。水酸化アルミニウムを含有することにより、ドリル加工性、難燃性、低熱膨張性の優れたものとすることができる。無機充填材として一般的に用いられるシリカを用いた場合は、低熱膨張性は得られるものの、シリカの硬度が高く、ドリル加工性が劣るものとなる。また比較的軟らかいタルクを用いた場合、十分な難燃性や低熱膨張性が得られない。
【0018】
前記(B)水酸化アルミニウムは、BET比表面積が、1.0m/g以上であること好ましい。より好ましくは、1.5〜10.0m/gであり、最も好ましくは、2.0〜7.0m/gである。BET比表面積が下限値未満であると、粒子径が大きくなりすぎるため、ワニスへの分散が困難になる可能性があり、上限値を超えると、樹脂ワニスの粘度が高くなりすぎ、高充填化することが難しくなる。通常のエポキシ樹脂を用いた場合は、これほどBET比表面積が大きいものを高充填化することは困難だが、前記(A)一般式(1)で表されるエポキシ樹脂を使用することにより高充填化することが可能となる。BET比表面積は、例えば、Micromeritics社製トライスター3000などの比表面積測定装置を用いて行うことができる。
【0019】
前記(B)水酸化アルミニウムの平均粒子径は、0.5〜10μmであることが好ましい。より好ましくは1.0〜5.0μmであり、最も好ましくは1.5〜3.0μmである。平均粒子径が下限値未満であると、フィラーを均一に分散することが困難であり、凝集等の不具合が発生するため好ましくなく、上限値を超えると、樹脂成分と水酸化アルミニウム粒子が分離しやすくなり、プリプレグ作製時や樹脂シート作製時にスジムラなどが発生する原因となるため好ましくない。平均粒子径は、例えば、島津製作所製SALD−7100などのレーザー回折式粒度分布測定装置を用いて行うことができる。
【0020】
前記(B)水酸化アルミニウムの種類としては特に限定されないが、例えばAl・3HOで表されるギブサイト及びAl・HOで表されるベーマイトなどが挙げられる。これらの水酸化アルミニウムは、高温で脱水反応を起こすため、エポキシ樹脂組成物の難燃性を向上させることができる。
【0021】
前記(B)水酸化アルミニウムの含有量としては特に限定されないが、エポキシ樹脂組成物中5〜60重量%が好ましく、さらに10〜50重量%が好ましい。最も好ましくは15〜40重量%である。水酸化アルミニウムの含有量が下限値未満であると、難燃性や低熱膨張性などの効果が得られず、上限値を超えると、樹脂中への分散が困難になり、粒子が凝集して不具合を起こす恐れがあるため好ましくない。
【0022】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、水酸化アルミニウム以外にさらに無機充填材を含むことができる。無機充填材の種類としては特に限定されないが、例えば、水酸化マグネシウム、シリカ、タルク、焼成タルク、及びアルミナなどが挙げられる。この中でも、シリカが低熱膨張性に優れ、特に好ましい。
【0023】
本発明のエポキシ樹脂組成物中の、水酸化アルミニウムとその他の無機充填材の合計含有量は特に限定されないが、エポキシ樹脂組成物中20〜85重量%が好ましく、さらに30〜75重量%が好ましい。最も好ましくは40〜70重量%である。無機充填材の含有量が下限値未満であると、低熱膨張性の効果が得られず、上限値を超えると、樹脂組成物の流動性が低下し、成形性が悪くなるため好ましくない。
【0024】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、(C)シアネート樹脂を含有することによって、エポキシ樹脂のみでは達成することのできない耐熱性及び低熱膨張性を付与させることができる。シアネート樹脂を含有しない場合は十分な耐熱性、低熱膨張性が得られず、信頼性が低下するため、好ましくない。ここで、シアネート樹脂は、例えばハロゲン化シアン化合物とフェノール類とを反応させ、必要に応じて加熱等の方法でプレポリマー化することにより得ることができる。具体的には、フェノールノボラック型シアネート樹脂、クレゾールノボラック型シアネート樹脂等のノボラック型シアネート樹脂、ビスフェノールA型シアネート樹脂、ビスフェノールE型シアネート樹脂、テトラメチルビスフェノールF型シアネート樹脂等のビスフェノール型シアネート樹脂、およびジシクロペンタジエン型シアネート樹脂等を挙げることができる。これらのシアネート樹脂を使用した樹脂組成物よりなるプリント配線板は、特に加熱時における剛性に優れるので、半導体素子実装時の信頼性に優れる。
【0025】
前記(C)シアネート樹脂の重量平均分子量は、特に限定されないが、重量平均分子量5.0×10〜4.5×10が好ましく、特に6.0×10〜3.0×10が好ましい。重量平均分子量が下限値未満であるとプリプレグを作製した場合にタック性が生じ、プリプレグ同士が接触したとき互いに付着したり、樹脂の転写が生じたりする場合がある。また、重量平均分子量が上限値を超えると反応が速くなりすぎ、特に積層板に用いた場合、成形不良が生じることがある。
前記(C)シアネート樹脂等の重量平均分子量は、例えばGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー、標準物質:ポリスチレン換算)で測定することができる。
【0026】
なお、前記(C)シアネート樹脂としては、プレポリマー化したものも用いることができる。すなわち、シアネート樹脂を単独で用いてもよいし、重量平均分子量の異なるシアネート樹脂を併用したり、シアネート樹脂とそのプレポリマーとを併用したりすることもできる。
ここでプレポリマーとは、通常、上記シアネート樹脂を加熱反応などにより、例えば3量化することで得られるものであり、エポキシ樹脂組成物の成形性、流動性を調整するために好ましく使用されるものである。
プレポリマーは、特に限定されないが、例えば、3量化率が20〜50重量%であるものを用いることが好ましい。この3量化率は、例えば赤外分光分析装置を用いて求めることができる。
また、前記(C)シアネート樹脂は、特に限定されないが、1種類を単独で用いることもできるし、異なる重量平均分子量を有する2種類以上を併用したり、1種類または2種類以上のシアネート樹脂と、それらのプレポリマーを併用したりすることもできる。
【0027】
前記(C)シアネート樹脂の含有量は、特に限定されないが、前記エポキシ樹脂組成物全体の3〜50重量%が好ましく、なかでも、5〜40重量%が好ましく、プリプレグを作製する場合等においては、さらに10〜30重量%が好ましい。含有量が下限値未満であるとシアネート樹脂の耐熱性向上効果が十分でない場合があり、上限値を超えるとプリプレグ等の成型品の強度が低下する場合がある。
なお前記(A)一般式(1)で表されるエポキシ樹脂を使用せず、他のエポキシ樹脂とシアネート樹脂とを併用した場合、樹脂組成物全体に対し、3重量%以上のシアネート樹脂を含有させた場合において、プリプレグ作製時、及び樹脂シート作製時にスジムラの発生が顕著となることがわかっている。
【0028】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、さらに熱硬化性樹脂(実質的にハロゲンを含まない)を併用することができる。前記熱硬化性樹脂は、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールM型エポキシ樹脂、ビスフェノールP型エポキシ樹脂、ビスフェノールZ型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、アリールアルキレン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、フェノキシ型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ノルボルネン型エポキシ樹脂、アダマンタン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂、ユリア(尿素)樹脂、メラミン樹脂等のトリアジン環を有する樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビスマレイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、ベンゾオキサジン環を有する樹脂等が挙げられる。
これらの中の1種類を単独で用いることもできるし、2種類以上を併用したりすることもできる。
【0029】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、必要に応じて、フェノール樹脂、または硬化促進剤を用いることができる。またフェノール樹脂と硬化促進剤とを併用してもよい。
【0030】
前記フェノール樹脂は、特に限定されないが、例えばフェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、アリールアルキレン型ノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂、未変性のレゾールフェノール樹脂、桐油、アマニ油、クルミ油等で変性した油変性レゾールフェノール樹脂等のレゾール型フェノール樹脂が挙げられる。これらの中の1種類を単独で用いることもできるし、異なる重量平均分子量を有する2種類以上を併用したり、1種類または2種類以上の前述した樹脂と、それらのプレポリマーを併用したりすることもできる。これらの中でも特に、アリールアルキレン型フェノール樹脂が好ましい。これにより、さらに吸湿半田耐熱性を向上させることができる。
【0031】
前記硬化促進剤は、特に限定されないが、例えばナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、オクチル酸スズ、オクチル酸コバルト、ビスアセチルアセトナートコバルト(II)、トリスアセチルアセトナートコバルト(III)等の有機金属塩、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン等の3級アミン類、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−エチル−4−エチルイミダゾール、1−ベンジルー2−メチルイミダゾール、1−ベンジルー2−フェニルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチルー2−エチルー4−メチルイミダゾール、1−シアノエチルー2−ウンデシルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシイミダゾール、2,3−ジヒドロー1H−ピロロ(1,2−a)ベンズイミダゾール等のイミダゾール化合物、フェノール、ビスフェノールA、ノニルフェノール等のフェノール化合物、酢酸、安息香酸、サリチル酸、パラトルエンスルホン酸等の有機酸等、またはこの混合物が挙げられる。これらの中の誘導体も含めて1種類を単独で用いることもできるし、これらの誘導体も含めて2種類以上を併用したりすることもできる。
これらの硬化促進剤のなかでも、特にイミダゾール化合物が好ましい。これにより、樹脂組成物をプリプレグとし、半導体装置に使用した場合の絶縁性、半田耐熱性を高めることができる。
【0032】
前記イミダゾール化合物としては、例えば、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2,4−ジアミノ−6−〔2’−メチルイミダゾリル−(1’)〕−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−(2’−ウンデシルイミダゾリル)−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−〔2’−エチル−4−メチルイミダゾリル−(1’)〕−エチル−s−トリアジン、2−フェニルー4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルー5−ヒドロキシメチルイミダゾールなどを挙げることができる。
これらの中でも、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、及び、2−エチル−4−メチルイミダゾールが好ましい。これらのイミダゾール化合物は、樹脂成分に対し特に優れた相溶性を有することで、均一性の高い硬化物が得られる。
【0033】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、前記硬化促進剤に代えて、または、前記硬化促進剤とともに下記一般式(2)で表される前記(D)オニウム塩化合物を含むことが好ましい。
【0034】
【化2】


(式中、Pはリン原子、R1、R2、R3及びR4は、それぞれ、置換もしくは無置換の芳香環又は複素環を有する有機基、あるいは置換もしくは無置換の脂肪族基を示し、互いに同一であっても異なっていてもよい。A-は分子外に放出しうるプロトンを少なくとも1個以上分子内に有するn(n≧1)価のプロトン供与体のアニオン、又はその錯アニオンを示す。)
【0035】
前記一般式(2)で表される化合物は、例えば特開2004−231765に記載の方法で合成することができる。一例を挙げると、4,4’−ビスフェノールSとテトラフェニルホスホニウムブロミドとイオン交換水を仕込み、加熱撹拌しながら水酸化ナトリウム水溶液を滴下。析出する結晶を濾過、水洗、真空乾燥することにより精製して得ることができる。
【0036】
また前記(D)オニウム塩化合物は、下記一般式(3)で表される化合物が好ましい。
【0037】
【化3】


(式中、Pは、リン原子、R1、R2、R3及びR4は、それぞれ、置換もしくは無置換の芳香環または複素環を有する有機基あるいは置換もしくは無置換の脂肪族基を示し、互いに同一であっても異なっていてもよい。式中Xは、置換基YおよびYと結合する有機基である。式中Xは、置換基YおよびYと結合する有機基である。YおよびYはプロトン供与性置換基がプロトンを放出してなる基であり、同一分子内の置換基Y、およびYが珪素原子と結合してキレート構造を形成するものである。 YおよびYはプロトン供与性置換基がプロトンを放出してなる基であり、同一分子内の置換基YおよびYが珪素原子と結合してキレート構造を形成するものである。X、およびXは互いに同一でも異なっていてもよく、Y、Y、Y、およびYは互いに同一であっても異なっていてもよい。Zは置換もしくは無置換の芳香環または複素環を有する有機基、あるいは置換もしくは無置換の脂肪族基を表す。)
【0038】
前記一般式(3)で表されるで表される化合物は、例えば特開2007−246671にある方法で合成することができる。一例を挙げると、2,3−ジヒドロキシナフタレンと3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン及びメタノールを攪拌下で均一溶解し、トリエチルアミンのアセトニトリル溶液を、攪拌下のフラスコ内に滴下。次いでテトラフェニルホスホニウムブロミドのメタノール溶液をフラスコ内に徐々に滴下し、析出する結晶を濾過、水洗及び真空乾燥することにより精製して得ることができる。
【0039】
また前記(D)オニウム塩化合物は、下記一般式(4)で表される化合物が好ましい。
【0040】
【化4】


(式中、Pはリン原子、Bはホウ素原子、R1、R2、R3、及びR4は、それぞれ、置換もしくは無置換の芳香環又は複素環を有する有機基、あるいは置換もしくは無置換の脂肪族基を示し、互いに同一であっても異なっていてもよい。R5、R6、R7及びR8は、それぞれ、置換もしくは無置換の芳香環又は複素環を有する有機基、あるいは置換もしくは無置換の脂肪族基、あるいは分子外に放出しうるプロトンを少なくとも1個以上分子内に有するn(n≧1)価のプロトン供与体であり、互いに同一であっても異なっていてもよい。)
【0041】
前記一般式(4)で表される化合物は、例えば、特開2000−246113にある方法で合成することができる。一例を挙げると、ホウ酸、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、メチルセルソルブ及び純水を攪拌下で均一に溶解し、次いで、テトラフェニルホスホニウムブロミドをメタノール/純水混合溶媒に均一に溶解した溶液を、攪拌下のフラスコ内に滴下し、析出する結晶を濾過、水洗及び真空乾燥することにより精製して得ることができる。
【0042】
前記(D)オニウム塩化合物の含有量は、特に限定されないが、(A)エポキシ樹脂と(B)シアネート樹脂の総量に対して0.01〜10重量%であるのが好ましく、より好ましくは、0.1〜5重量%であり、最も好ましくは0.2〜2.5重量%である。これにより、優れた硬化性、流動性及び硬化物特性を発現することができる。
【0043】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、さらにエポキシ樹脂組成物と導体層との密着性が向上するような樹脂成分を添加しても良い。例えば、フェノキシ樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂等が挙げられる。これらの中でも特に金属との密着性に優れ、硬化反応速度に与える影響が少ないと言う点でフェノキシ樹脂を添加することが好ましい。前記フェノキシ樹脂は、例えばビスフェノール骨格を有するフェノキシ樹脂、ノボラック骨格を有するフェノキシ樹脂、ナフタレン骨格を有するフェノキシ樹脂、ビフェニル骨格を有するフェノキシ樹脂等が挙げられる。また、これらの骨格を複数種類有した構造のフェノキシ樹脂を用いることもできる。
【0044】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、特に限定されないが、カップリング剤を用いることができる。前記カップリング剤は、前記熱硬化性樹脂と、前記無機充填材との界面の濡れ性を向上させる。そして繊維基材に対して熱硬化性樹脂等および無機充填材を均一に定着させ、耐熱性、特に吸湿後の半田耐熱性を改良することができる。
前記カップリング剤は、特に限定されないが、具体的にはエポキシシランカップリング剤、カチオニックシランカップリング剤、アミノシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤およびシリコーンオイル型カップリング剤の中から選ばれる1種以上のカップリング剤を使用することが好ましい。これにより、無機充填材の界面との濡れ性を高くすることができ、それによって耐熱性をより向上させることできる。
【0045】
前記カップリング剤の添加量は、特に限定されないが、無機充填材100重量部に対して0.05〜3重量部が好ましく、特に0.1〜2重量部が好ましい。含有量が0.05重量部未満であると無機充填材を十分に被覆できないため耐熱性を向上する効果が低下する場合があり、3重量部を超えると反応に影響を与え、曲げ強度等が低下する場合がある。
【0046】
前記エポキシ樹脂組成物には、さらに必要に応じて、顔料、染料、消泡剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、発泡剤、酸化防止剤、難燃剤、イオン捕捉剤等の上記成分以外の添加物を添加しても良い。
【0047】
次に、プリプレグについて説明する。
前述したエポキシ樹脂組成物を用いたプリプレグは、前記エポキシ樹脂組成物を基材に含浸させてなるものである。これにより、誘電特性、高温多湿下での機械的、電気的接続信頼性等の各種特性に優れたプリント配線板を製造するのに好適なプリプレグを得ることができる。
【0048】
前記基材は、特に限定されないが、ガラス織布、ガラス不織布等のガラス繊維基材、ポリアミド樹脂繊維、芳香族ポリアミド樹脂繊維、全芳香族ポリアミド樹脂繊維等のポリアミド系樹脂繊維、ポリエステル樹脂繊維、芳香族ポリエステル樹脂繊維、全芳香族ポリエステル樹脂繊維等のポリエステル系樹脂繊維、ポリイミド樹脂繊維、フッ素樹脂繊維等を主成分とする織布または不織布で構成される合成繊維基材、クラフト紙、コットンリンター紙、リンターとクラフトパルプの混抄紙等を主成分とする紙基材等の有機繊維基材等が挙げられる。これらの中でもガラス繊維基材が好ましい。これにより、プリプレグの強度が向上し、吸水率を下げることができ、また熱膨張係数を小さくすることができる。
【0049】
前記ガラス繊維基材を構成するガラスは、特に限定されないが、例えばEガラス、Cガラス、Aガラス、Sガラス、Dガラス、NEガラス、Tガラス、Hガラス等が挙げられる。これらの中でもEガラス、Tガラス、または、Sガラスが好ましい。これにより、ガラス繊維基材の高弾性化を達成することができ、熱膨張係数も小さくすることができる。
【0050】
前記プリプレグを製造する方法は、特に限定されないが、例えば、前述したエポキシ樹脂組成物を用いて樹脂ワニスを調製し、基材を樹脂ワニスに浸漬する方法、各種コーターにより塗布する方法、スプレーにより吹き付ける方法等が挙げられる。これらの中でも、基材を樹脂ワニスに浸漬する方法が好ましい。これにより、基材に対する樹脂組成物の含浸性を向上することができる。なお、基材を樹脂ワニスに浸漬する場合、通常の含浸塗布設備を使用することができる。
【0051】
前記樹脂ワニスに用いられる溶媒は、前記樹脂組成物中の樹脂成分に対して良好な溶解性を示すことが望ましいが、悪影響を及ぼさない範囲で貧溶媒を使用しても構わない。良好な溶解性を示す溶媒は、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、エチレングリコール、セルソルブ系、カルビトール系等が挙げられる。
前記樹脂ワニスの固形分は、特に限定されないが、前記樹脂組成物の固形分50〜80重量%が好ましく、特に60〜78重量% が好ましい。これにより、樹脂ワニスの基材への含浸性を更に向上できる。前記基材に前記樹脂組成物を含浸させる所定温度、特に限定されないが、例えば90〜220℃等で乾燥させることによりプリプレグを得ることが出来る。
【0052】
次に、積層板について説明する。
本発明の積層は、前記プリプレグを少なくとも1枚もしくは複数枚積層したものの上下両面に、金属箔を重ね、加熱、加圧することで得ることができる。前記加熱する温度は、特に限定されないが、120〜230℃が好ましく、特に150〜210℃が好ましい。また、前記加圧する圧力は、特に限定されないが、1〜5MPaが好ましく、特に2〜4MPaが好ましい。これにより、誘電特性、高温多湿化での機械的、電気的接続信頼性に優れた積層板を得ることができる。
【0053】
前記金属箔は、特に限定されないが、例えば銅及び銅系合金、アルミ及びアルミ系合金、銀及び銀系合金、金及び金系合金、亜鉛及び亜鉛系合金、ニッケル及びニッケル系合金、錫及び錫系合金、鉄および鉄系合金等の金属箔が挙げられる。
【0054】
次に、樹脂シートについて説明する。
前述したエポキシ樹脂組成物を用いた樹脂シートは、エポキシ樹脂組成物からなる絶縁層をキャリアフィルム、又は金属箔上に形成することにより得られる。まず、絶縁層を形成する本発明のエポキシ樹脂組成物を、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、酢酸エチル、シクロヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサンシクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、エチレングリコール、セルソルブ系、カルビトール系、アニソール等の有機溶剤中で、超音波分散方式、高圧衝突式分散方式、高速回転分散方式、ビーズミル方式、高速せん断分散方式、および自転公転式分散方式などの各種混合機を用いて溶解、混合、撹拌して樹脂ワニスを作製する。
【0055】
前記樹脂ワニス中の樹脂組成物の含有量は、特に限定されないが、45〜85重量%が好ましく、特に55〜75重量%が好ましい。
【0056】
次に前記樹脂ワニスを、各種塗工装置を用いて、キャリアフィルム上または金属箔上に塗工した後、これを乾燥する。または、樹脂ワニスをスプレー装置によりキャリアフィルムまたは金属箔に噴霧塗工した後、これを乾燥する。これらの方法により樹脂シートを作製することができる。
前記塗工装置は、特に限定されないが、例えば、ロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、グラビアコーター、ダイコーター、コンマコーターおよびカーテンコーターなどを用いることができる。これらの中でも、ダイコーター、ナイフコーター、およびコンマコーターを用いる方法が好ましい。これにより、ボイドがなく、均一な絶縁層の厚みを有する樹脂シートを効率よく製造することができる。
【0057】
前記キャリアフィルムは、キャリアフィルムに絶縁層を形成するため、取扱いが容易であるものを選択することが好ましい。また、樹脂シートの絶縁層を内層回路基板面に積層後、キャリアフィルムを剥離することから、内層回路基板に積層後、剥離が容易であるものであることが好ましい。したがって、前記キャリアフィルムは、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂、フッ素系樹脂、ポリイミド樹脂などの耐熱性を有した熱可塑性樹脂フィルムなどを用いることが好ましい。これらキャリアフィルムの中でも、ポリエステルで構成されるフィルムが最も好ましい。これにより、絶縁層から適度な強度で剥離することが容易となる。
【0058】
前記キャリアフィルムの厚さは、特に限定されないが、1〜100μmが好ましく、特に3〜50μmが好ましい。キャリアフィルムの厚さが前記範囲内であると、取扱いが容易で、また絶縁層表面の平坦性に優れる。
【0059】
前記金属箔は、前記キャリアフィルム同様、内層回路基板に樹脂シートを積層後、剥離して用いても良いし、また、金属箔をエッチングし導体回路として用いても良い。前記金属箔は、特に限定されないが、例えば、銅及び/又は銅系合金、アルミ及び/又はアルミ系合金、鉄及び/又は鉄系合金、銀及び/又は銀系合金、金及び金系合金、亜鉛及び亜鉛系合金、ニッケル及びニッケル系合金、錫及び錫系合金等の金属箔などを用いることができる。
【0060】
前記金属箔の厚さは、特に限定されないが、0.1μm以上70μm以下であることが好ましい。さらには1μm以上35μ以下が好ましく、さらに好ましくは1.5μm以上18μm以下が好ましい。前記金属箔の厚さが上記下限値未満であると、金属箔の傷つき、ピンホールの発生し、金属箔をエッチングし導体回路として用いて場合、回路パターン成形時のメッキバラツキ、回路断線、エッチング液やデスミア液等の薬液の染み込みなどが発生する怖れがあり、前記上限値を超えると、金属箔の厚みバラツキが大きくなったり、金属箔粗化面の表面粗さバラツキが大きくなったりする場合がある。
また、前記金属箔は、キャリア箔付き極薄金属箔を用いることもできる。キャリア箔付き極薄金属箔とは、剥離可能なキャリア箔と極薄金属箔とを張り合わせた金属箔である。キャリア箔付き極薄金属箔を用いることで前記絶縁層の両面に極薄金属箔層を形成できることから、例えば、セミアディティブ法などで回路を形成する場合、無電解メッキを行うことなく、極薄金属箔を直接給電層として電解メッキすることで、回路を形成後、極薄銅箔をフラッシュエッチングすることができる。キャリア箔付き極薄金属箔を用いることによって、厚さ10μm以下の極薄金属箔でも、例えばプレス工程での極薄金属箔のハンドリング性の低下や、極薄銅箔の割れや切れを防ぐことができる。前記極薄金属箔の厚さは、0.1μm以上10μm以下が好ましい。さらに、0.5μm以上5μm以下が好ましく、さらに1μm以上3μm以下が好ましい。前記極薄金属箔の厚さが前記下限値未満であると、キャリア箔を剥離後の極薄金属箔の傷つき、極薄金属箔のピンホールの発生、ピンホールの発生による回路パターン成形時のメッキバラツキ、回路配線の断線、エッチング液やデスミア液等の薬液の染み込みなどが発生する怖れがあり、前記上限値を超えると、極薄金属箔の厚みバラツキが大きくなったり、極薄金属箔粗化面の表面粗さのバラツキが大きくなったりする場合がある。
通常、キャリア箔付き極薄金属箔は、プレス成形後の積層板に回路パターン形成する前にキャリア箔を剥離する。
【0061】
次に、多層プリント配線板について説明する。
前記で得られた両面に銅箔を有する積層板を用意し、ドリル等によりスルーホールを形成し、メッキにより前記スルーホールを充填した後、積層板の両面に、エッチング等により所定の導体回路(内層回路)を形成し、導体回路を黒化処理等の粗化処理することにより内層回路基板を作製する。
次に内層回路基板の上下面に、前述した樹脂シート、または前述したプリプレグを形成し、加熱加圧成形する。
具体的には、前記樹脂シート、またはプリプレグと内層回路基板とを合わせて、真空加圧式ラミネーター装置などを用いて真空加熱加圧成形させる。その後、熱風乾燥装置等で加熱硬化させることにより内層回路基板上に絶縁層を形成することができる。
ここで加熱加圧成形する条件としては特に限定されないが、一例を挙げると、温度60〜160℃、圧力0.2〜3MPaで実施することができる。また、加熱硬化させる条件としては特に限定されないが、一例を挙げると、温度140〜240℃、時間30〜120分間で実施することができる。
あるいは、前記樹脂シート、またはプリプレグを内層回路基板に重ね合わせ、これを平板プレス装置などを用いて加熱加圧成形することにより内層回路基板上に絶縁層を形成することもできる。
ここで加熱加圧成形する条件としては、特に限定されないが、一例を挙げると、温度140〜240℃、圧力1〜4MPaで実施することができる。
【0062】
上述した方法にて得られた基板は、絶縁層表面を過マンガン酸塩、重クロム酸塩等の酸化剤などにより粗化処理した後、金属メッキにより新たな導電配線回路を形成することができる
【0063】
その後、前記絶縁層を加熱することにより硬化させる。硬化させる温度は、特に限定されないが、例えば、100℃〜250℃の範囲で硬化させることができる。好ましくは150℃〜200℃で硬化させることである。
次に、絶縁層に、炭酸レーザー装置を用いて開口部を設け、電解銅めっきにより絶縁層表面に外層回路形成を行い、外層回路と内層回路との導通を図る。なお、外層回路には、半導体素子を実装するための接続用電極部を設ける。
その後、最外層にソルダーレジストを形成し、露光・現像により半導体素子が実装できるよう接続用電極部を露出させ、ニッケル金メッキ処理を施し、所定の大きさに切断し、多層プリント配線板を得ることができる。
【0064】
次に、半導体装置について説明する。
半導体装置は、上述した方法にて製造された多層プリント配線板に半導体素子を実装し、製造することができる。半導体素子の実装方法、封止方法は特に限定されない。例えば、半導体素子と多層プリント配線板とを用い、フリップチップボンダーなどを用いて多層プリント配線板上の接続用電極部と半導体素子の半田バンプの位置合わせを行う。その後、IRリフロー装置、熱板、その他加熱装置を用いて半田バンプを融点以上に加熱し、多層プリント配線板と半田バンプとを溶融接合することにより接続する。そして、多層プリント配線板と半導体素子との間に液状封止樹脂を充填し、硬化させることで半導体装置を得ることができる。
【0065】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【実施例】
【0066】
以下、本発明を実施例および比較例により詳細に説明する。
【0067】
実施例及び比較例において用いた原材料は以下の通りである。
(1)水酸化アルミニウムA/ギブサイト;日本軽金属社製BE−033 平均粒子径2.2μm BET比表面積3.6m/g
(2)水酸化アルミニウムB/ギブサイト;昭和電工社製HP−360 平均粒子径2.7μm BET比表面積1.3m/g
(3)水酸化アルミニウムC/ベーマイト;大名化学社製C−20 平均粒子径2.0μm BET比表面積4.0m/g
(4)無機充填材A/球状シリカ;アドマテックス社製・「SO-25R」、平均粒子径0.5μm
(5)無機充填材B/球状シリカ;アドマテックス社製・「SO-32R」、平均粒子径1.0μm
(6)無機充填材C/球状シリカ;電気化学工業社製・「SFP−20M」、平均粒子径0.3μm
(7)無機充填材D/水酸化マグネシウム;協和化学工業社製・「キスマ5Q」、平均粒子径0.8μm
(8)無機充填材E/タルク;富士タルク社製・「LMS−200」、平均粒子径5.0μm
(9)エポキシ樹脂A/メトキシナフタレンジメチレン型エポキシ樹脂;DIC社製 「HP−5000」、エポキシ当量250
(10)エポキシ樹脂B/メトキシナフタレンジメチレン型エポキシ樹脂;DIC社製 「EXA−9900」、エポキシ当量274
(11)エポキシ樹脂C/メトキシナフタレンジメチレン型エポキシ樹脂;DIC社製 「EXA−7320L」、エポキシ当量246
(12)エポキシ樹脂D/ビフェニルジメチレン型エポキシ樹脂:日本化薬社製・「NC−3000」、エポキシ当量275
(13)シアネート樹脂A/ノボラック型シアネート樹脂:ロンザジャパン社製・「プリマセットPT−30」、シアネート当量124
(14)シアネート樹脂B/ビスフェノールA型シアネート樹脂:ロンザジャパン社製・「プリマセットBA−200」、シアネート当量139
(15)シアネート樹脂C/ビスフェノールA型シアネート樹脂:ロンザジャパン社製・「プリマセットBA−230」、シアネート当量232
(16)シアネート樹脂D/ジシクロペンタジエン型シアネート樹脂:ロンザジャパン社製・「プリマセットDT−4000」、シアネート当量174
(17)フェノキシ樹脂/ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂との共重合体:ジャパンエポキシレジン社製・「jER4275」、重量平均分子量60000
(18)フェノール系硬化剤/ビフェニルアルキレン型ノボラック樹脂:明和化成社製「MEH−7851−3H」、水酸基当量220
(19)硬化促進剤/イミダゾール化合物:四国化成工業社製・「キュアゾール1B2PZ(1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール)」
(20)(D)オニウム塩化合物
化合物(D1)、および化合物(D2):合成方法については以下に合成方法を示す。
【0068】
前記(D)オニウム塩化合物は、以下の方法により得られたものを用いた。
【0069】
1.(D)オニウム塩化合物の合成
本発明に用いられる(D)オニウム塩化合物の合成方法の一例を示すが、合成方法はこれに限定されるものではない。
【0070】
(1)化合物(D1)の合成
温度計、撹拌機およびジムロート冷却管を備えた3つ口セパラブルフラスコに、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート(北興化学工業(株)製、TPP−K)32.9g(0.05mol)と1−ナフトエ酸34.4g(0.20mol)を仕込み、窒素雰囲気下、260℃で5時間攪拌した。その際、副生するベンゼンを系外に除去した。冷却後、得られた結晶をメタノールで洗浄した後、乾燥し、さらに真空乾燥することにより精製し、以下の構造式(5)で示される化合物(D1)を47.0g得た。収率は、91%であった。
【0071】
【化5】

【0072】
(5)化合物(D2)の合成
撹拌機およびジムロート冷却管を備えた3つ口セパラブルフラスコに、2,3−ジヒドロキシナフタレン32.0g(0.20mol)、フェニルトリメトキシシラン19.8g(0.10mol)、及びメタノール150mLを仕込み、攪拌下で均一溶解した。予めトリ−n−ブチルアミン18.5g(0.10mol)を20mLのアセトニトリルに溶解した溶液を、攪拌下のフラスコ内に滴下し、次いでテトラフェニルホスホニウムブロミド41.9g(0.10mol)を、予め100mLのメタノールで溶解した溶液を、フラスコ内に徐々に滴下すると結晶が析出した。析出した結晶を、濾過、水洗及び真空乾燥することにより精製し、以下の構造式(5)で示される化合物(D2)を70.0g得た。収率は、92%であった。
【0073】
【化6】

【0074】
<実施例1>
(1)樹脂ワニスの調製
エポキシ樹脂A24.8重量部、シアネート樹脂A30.0重量部、フェノキシ樹脂5.0重量部、硬化促進剤(イミダゾール化合物)0.2重量部をメチルエチルケトンに溶解、分散させた。さらに、水酸化アルミニウムA40.0重量部を添加して、高速攪拌装置を用いて10分間攪拌して、固形分60重量%の樹脂ワニスを調製した。
【0075】
(2)プリプレグの作製
上記の樹脂ワニスをガラス織布(厚さ94μm、日東紡績社製、WEA−116E)に含浸し、150℃の加熱炉で2分間乾燥して、プリプレグ中のワニス固形分が約50重量%のプリプレグを得た。
【0076】
(3)積層板の作製
上記のプリプレグを2枚重ね、両面に12μmの銅箔(三井金属社製)を重ねて、圧力4MPa、温度200℃で2時間加熱加圧成形することによって、両面に銅箔を有する厚さ0.2mmの積層板を得た。
【0077】
(4)多層プリント配線板の作製
前記で得られた積層板に、0.1mmのドリルビットを用いてスルーホール加工を行った後、メッキによりスルーホールを充填した。さらに、両面をエッチングにより回路形成し、内層回路基板として用いた。前記内層回路基板の表裏に、前記で得られたプリプレグを重ね合わせ、これを、真空加圧式ラミネーター装置を用いて、温度100℃、圧力1MPaにて真空加熱加圧成形させた。これを、熱風乾燥装置にて170℃で60分間加熱し硬化させて、多層プリント配線板を得た。
【0078】
(5)半導体装置の作製
前記で多層プリント配線板の絶縁層に炭酸レーザー装置を用いて開口部を設け、電解銅めっきにより絶縁層表面に外層回路形成を行い、外層回路と内層回路との導通を図った。なお、外層回路は、半導体素子を実装するための接続用電極部を設けた。
その後、最外層にソルダーレジスト(太陽インキ社製、PSR4000/AUS308)を形成し、露光・現像により半導体素子が実装できるよう接続用電極部を露出させ、ニッケル金メッキ処理を施し、50mm×50mmの大きさに切断し、多層プリント配線板を得た。
その後、半導体素子(TEGチップ、サイズ15mm×15mm、厚み0.8mm)は、半田バンプはSn/Pb組成の共晶で形成され、回路保護膜はポジ型感光性樹脂(住友ベークライト社製CRC−8300)で形成されたものを使用した。半導体装置の組み立ては、まず、半田バンプにフラックス材を転写法により均一に塗布し、次にフリップチップボンダー装置を用い、上記パッケージ基板上に加熱圧着により搭載した。次に、IRリフロー炉で半田バンプを溶融接合した後、液状封止樹脂(住友ベークライト社製、CRP−4152S)を充填し、液状封止樹脂を硬化させることで半導体装置を得た。尚、液状封止樹脂は、温度150℃、120分の条件で硬化させた。
【0079】
<実施例2>
エポキシ樹脂A8.0重量部、シアネート樹脂A15.0重量部、フェノール系硬化剤7.0重量部をメチルエチルケトンに溶解、分散させた。さらに、水酸化アルミニウムA20.0重量部と無機充填材B50.0重量部を添加して、高速攪拌装置を用いて10分間攪拌して、固形分60重量%の樹脂ワニスを調製した。
この樹脂ワニスを用い、実施例1と同様にして、プリプレグ、積層板、多層プリント配線板及び半導体装置を得た。
【0080】
<実施例3>
エポキシ樹脂B5.0重量部、シアネート樹脂B10.0重量部、フェノール系硬化剤5.0重量部をメチルエチルケトンに溶解、分散させた。さらに、水酸化アルミニウムB30.0重量部と無機充填材A50.0重量部を添加して、高速攪拌装置を用いて10分間攪拌して、固形分60重量%の樹脂ワニスを調製した。
この樹脂ワニスを用い、実施例1と同様にして、プリプレグ、積層板、多層プリント配線板及び半導体装置を得た。
【0081】
<実施例4>
(1)樹脂ワニスの調製
エポキシ樹脂C19.8重量部、シアネート樹脂C15.0重量部、フェノキシ樹脂5.0重量部、硬化促進剤0.2重量部をメチルエチルケトンに溶解、分散させた。さらに、水酸化アルミニウムB20.0重量部と無機充填材C40.0重量部を添加して、高速攪拌装置を用いて10分間攪拌して、固形分60重量%の樹脂ワニスを調製した。
【0082】
(2)プリプレグの作製
上記の樹脂ワニスをガラス織布(厚さ94μm、日東紡績社製、WEA−116E)に含浸し、150℃の加熱炉で2分間乾燥して、プリプレグ中のワニス固形分が約50重量%のプリプレグを得た。
【0083】
(3)積層板の作製
上記のプリプレグを2枚重ね、両面に12μmの銅箔(三井金属社製)を重ねて、圧力4MPa、温度200℃で2時間加熱加圧成形することによって、両面に蒼白を有する厚さ0.2mmの積層板を得た。
【0084】
(4)樹脂シートの作製
上記の樹脂ワニスを、PETフィルム(厚さ38μm、三菱樹脂ポリエステル社製、SFB38)上に、コンマコーター装置を用いて、乾燥後のエポキシ樹脂層の厚さが40μmとなるように塗工し、これを150℃の乾燥装置で5分間乾燥して、樹脂シートを製造した。
【0085】
(5)多層プリント配線板の作製
前記で得られた積層板に、0.1mmのドリルビットを用いてスルーホール加工を行った後、メッキによりスルーホールを充填した。さらに、両面をエッチングにより回路形成し、内層回路基板として用いた。上記で得られた樹脂シートのエポキシ樹脂面を内側にして重ね合わせ、これを、真空加圧式ラミネーター装置を用いて、温度100℃、圧力1MPaにて真空加熱加圧成形させた。樹脂シートから基材のPETフィルムを剥離後、熱風乾燥装置にて170℃で60分間加熱し硬化させて、多層プリント配線板を得た。
【0086】
(6)半導体装置の作製
前記で多層プリント配線板の絶縁層に炭酸レーザー装置を用いて開口部を設け、電解銅めっきにより絶縁層表面に外層回路形成を行い、外層回路と内層回路との導通を図った。なお、外層回路は、半導体素子を実装するための接続用電極部を設けた。
その後、最外層にソルダーレジスト(太陽インキ社製、PSR4000/AUS308)を形成し、露光・現像により半導体素子が実装できるよう接続用電極部を露出させ、ニッケル金メッキ処理を施し、50mm×50mmの大きさに切断し、多層プリント配線板を得た。
その後、半導体素子(TEGチップ、サイズ15mm×15mm、厚み0.8mm)は、半田バンプはSn/Pb組成の共晶で形成され、回路保護膜はポジ型感光性樹脂(住友ベークライト社製CRC−8300)で形成されたものを使用した。半導体装置の組み立ては、まず、半田バンプにフラックス材を転写法により均一に塗布し、次にフリップチップボンダー装置を用い、上記パッケージ基板上に加熱圧着により搭載した。次に、IRリフロー炉で半田バンプを溶融接合した後、液状封止樹脂(住友ベークライト社製、CRP−415S)を充填し、液状封止樹脂を硬化させることで半導体装置を得た。尚、液状封止樹脂は、温度150℃、120分の条件で硬化させた。
【0087】
<実施例5>
エポキシ樹脂A9.8重量部、エポキシ樹脂D20.0重量部、シアネート樹脂A45.0重量部、硬化促進剤0.2重量部をメチルエチルケトンに溶解、分散させた。さらに、水酸化アルミニウムC20.0重量部と無機充填材D5.0重量部を添加して、高速攪拌装置を用いて10分間攪拌して、固形分60重量%の樹脂ワニスを調製した。
この樹脂ワニスを用い、実施例4と同様にして、プリプレグ、積層板、樹脂シート、多層プリント配線板及び半導体装置を得た。
【0088】
<実施例6>
エポキシ樹脂A19.8重量部、シアネート樹脂D10.0重量部、硬化促進剤0.2重量部をメチルエチルケトンに溶解、分散させた。さらに、水酸化アルミニウムA10.0重量部、無機充填材A50.0重量部、および無機充填材E10.0重量部を添加して、高速攪拌装置を用いて10分間攪拌して、固形分60重量%の樹脂ワニスを調製した。
この樹脂ワニスを用い、実施例4と同様にして、プリプレグ、積層板、樹脂シート、多層プリント配線板及び半導体装置を得た。
【0089】
<実施例7>
エポキシ樹脂A23.0重量部、シアネート樹脂A14.0重量部、フェノキシ樹脂2.0重量部、化合物(D1)1.0重量部をメチルエチルケトンに溶解、分散させた。さらに、水酸化アルミニウムA30.0重量部と無機充填材A30.0重量部を添加して、高速攪拌装置を用いて10分間攪拌して、固形分60重量%の樹脂ワニスを調製した。
この樹脂ワニスを用い、実施例1と同様にして、プリプレグ、積層板、多層プリント配線板及び半導体装置を得た。
【0090】
<実施例8>
エポキシ樹脂A19.0重量部、シアネート樹脂A19.5重量部、化合物(D2)1.5重量部をメチルエチルケトンに溶解、分散させた。さらに、水酸化アルミニウムC20.0重量部と無機充填材B40.0重量部を添加して、高速攪拌装置を用いて10分間攪拌して、固形分60重量%の樹脂ワニスを調製した。
この樹脂ワニスを用い、実施例4と同様にして、プリプレグ、積層板、樹脂シート、多層プリント配線板及び半導体装置を得た。
【0091】
<比較例1>
エポキシ樹脂D29.8重量部、シアネート樹脂A15.0重量部、フェノキシ樹脂5.0重量部、硬化促進剤0.2重量部をメチルエチルケトンに溶解、分散させた。さらに、水酸化アルミニウムA50.0重量部を添加して、高速攪拌装置を用いて10分間攪拌して、固形分50重量%の樹脂ワニスを調製した。
この樹脂ワニスを用い、実施例1と同様にして、プリプレグ、積層板、多層プリント配線板及び半導体装置を得た。
【0092】
<比較例2>
エポキシ樹脂A39.8重量部、フェノキシ樹脂10.0重量部、硬化促進剤0.2重量部をメチルエチルケトンに溶解、分散させた。さらに、水酸化アルミニウムA50.0重量部を添加して、高速攪拌装置を用いて10分間攪拌して、固形分50重量%の樹脂ワニスを調製した。
この樹脂ワニスを用い、実施例1と同様にして、プリプレグ、積層板、多層プリント配線板及び半導体装置を得た。
【0093】
<比較例3>
エポキシ樹脂A24.8重量部、シアネート樹脂A20.0重量部、フェノキシ樹脂5.0重量部、硬化促進剤0.2重量部をメチルエチルケトンに溶解、分散させた。さらに、無機充填材B50.0重量部を添加して、高速攪拌装置を用いて10分間攪拌して、固形分50重量%の樹脂ワニスを調製した。
この樹脂ワニスを用い、実施例1と同様にして、プリプレグ、積層板、多層プリント配線板及び半導体装置を得た。
【0094】
実施例および比較例で得られた積層板、多層プリント配線板及び半導体装置について、特性の評価を行った。結果を表1、表2に示す。
【0095】
【表1】

【0096】
【表2】

【0097】
(1)熱膨張係数
厚さ0.2mmの積層板の銅箔を全面エッチングし、得られた積層板から4mm×20mmのテストピースを切り出し、TMAを用いて10℃/分の条件で、50℃〜150℃での面方向の線膨張係数(平均線膨張係数)を測定した。各符号は以下のとおりである。
◎:線膨張係数10ppm未満
○:線膨張係数10ppm以上15ppm未満
×:線膨張係数15ppm以上
【0098】
(2)積層板の成型状態
得られた両面銅張り積層板を銅箔エッチングし、外観を観察し、周辺部に見られる無機成分と樹脂成分の分離によるスジの長さを測定した。各符号は以下のとおりである。
◎:スジの長さが5mm未満
○:スジの長さが5〜10mm
×:スジの長さが10mm以上
【0099】
(3)ドリル加工性
厚さ0.2mmの積層板を、0.1mmのドリル刃を用い、30万回転で、2000回穴を開けた後の、刃先の状態を評価した。各符号は以下のとおりである。
○:刃先が十分残っており、再研磨によるドリル刃の再生が可能
×:刃先が丸まってしまい、ドリル刃の再生が不可能
【0100】
(4)半田耐熱性
得られた多層プリント配線板から50mm角にサンプルを切り出し、3/4エッチングし、プレッシャークッカーを用いて121℃2時間処理後、260℃の半田に30秒浸漬させ、膨れの有無を観察した。各符号は以下のとおりである。
○:異常なし
×:膨れが発生
【0101】
(5)熱衝撃性試験
得られた半導体装置をフロリナート中で−55℃10分、125℃10分、−55℃10分を1サイクルとして、1000サイクル処理し、テストピースにクラックが発生していないか目視で確認した。
各符号は以下の通りである。
○:クラック発生なし
×:クラック発生
【0102】
(6)絶縁信頼性試験[1]
得られた多層プリント配線板を用いて、スルーホール壁間の絶縁信頼性試験を実施した。壁間150μmのパターンで、130℃/85%環境下で20V印加させ、200時間後のサンプルを試験槽から取り出し、常温常湿下での抵抗値を測定した。各符号は下記の通りである。
◎:抵抗値10Ω以上
○:抵抗値10Ω以上109未満
△:抵抗値10Ω以上108Ω未満
×:抵抗値10Ω未満
【0103】
(7)絶縁信頼性試験[2]
上記と同様に絶縁信頼性試験を実施し、200時間後の湿中(130℃/85%環境下)における抵抗挙動を観測した。尚、湿中では常温常湿環境に比べ、過酷な条件での抵抗値測定となるため一般的には抵抗値が低くなる傾向がある。各符号は下記の通りである。
◎:抵抗値10Ω以上
○:抵抗値10Ω以上109未満
△:抵抗値10Ω以上108Ω未満
×:抵抗値10Ω未満
【0104】
実施例1〜8は、本発明のエポキシ樹脂組成物を用いたものである。評価全般にわたり良好であり、積層板の成形不良もなく、良好な成形状態であった。一方、比較例1は、メトキシナフタレンジメチレン型エポキシ樹脂を用いなかったため、積層板の成型時に不具合が見られ、半導体装置の信頼性も劣る結果であった。比較例2は、シアネート樹脂を用いなかったため、低熱膨張性及び耐熱性に劣り、半導体装置の信頼性も満足なものではなかった。比較例3は水酸化アルミニウムを用いておらず、シリカのみを用いたためドリル加工性が低下した。成形性、低熱膨張性、耐熱性、加工性、信頼性をすべて満足させるためには、本発明のエポキシ樹脂組成物が有効であることがわかった。
【0105】
参考例1〜4は、前記実施例1の配合を基準に硬化促進(イミダゾール)(参考例1)を、フェノール系化合物(参考例2)、化合物(D1)(参考例3)、または化合物(D2)(参考例4)に置き換え、プリプレグ、積層板、多層プリント配線板及び半導体装置を作製したものである。
従来の絶縁信頼性試験では、湿中から取り出し、絶縁信頼性を評価する方法であるため、参考例1〜4では差は見られないが、より過酷な評価となる、湿中測定での絶縁信頼性試験では、参考例1のイミダゾール化合物を用いたものは、200時間後の抵抗値が10Ω未満と比較的低い抵抗値となった。また、参考例2のフェノール系硬化剤を用いたものは、10Ω以上を保っており良好であった。最も良好であったのは参考例3および4のオニウム塩化合物を用いたものであり、ほとんど抵抗値の低下が見られなかった。
【0106】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、小型化、高道度配線化、高信頼性が要求されるシステム・イン・パッケージ(SiP)等に用いられるパッケージ基板と呼ばれる基板に好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記一般式(1)で表される構造を有するエポキシ樹脂、(B)水酸化アルミニウムおよび(C)シアネート樹脂を必須成分とすることを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
【化1】


[式中 Xは水素、またはエポキシ基(グリシジルエーテル基)を、R1およびR2は、互いに独立し、水素、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基、およびベンジル基の中から選択される1種を表す。nは1以上の整数であり、p、qは1以上の整数であり、またp、qの値は、繰り返し単位毎に同一でも、異なっていてもよい。]
【請求項2】
前記(B)水酸化アルミニウムは、BET比表面積が1.0m/g以上である請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
前記(B)水酸化アルミニウムは、平均粒子径が10.0μm以下である請求項1または2に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
前記(B)水酸化アルミニウムの含有量は、エポキシ樹脂組成物全体の5〜60重量%である請求項1ないし3のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物は、さらに水酸化マグネシウム、シリカ、タルク、焼成タルク、及びアルミナよりなる群から選ばれる少なくとも1種類の無機充填材を含有するものであるエポキシ樹脂組成物。
【請求項6】
前記(A)一般式(1)で表される構造を有するエポキシ樹脂の含有量は、エポキシ樹脂組成物全体の1〜40重量%である請求項1ないし5のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項7】
前記(C)シアネート樹脂は、フェノールノボラック型シアネート樹脂、クレゾールノボラック型シアネート樹脂、ビスフェノールA型シアネート樹脂、ビスフェノールF型シアネート樹脂、およびジシクロペンタジエン型シアネート樹脂よりなる群から選ばれる少なくとも1種類である請求項1ないし6のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項8】
前記(C)シアネート樹脂の含有量は、エポキシ樹脂組成物全体の3〜50重量%である請求項1ないし7のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかのエポキシ樹脂組成物は、さらに(D)オニウム塩化合物を必須成分とするエポキシ樹脂組成物。
【請求項10】
前記(D)オニウム塩化合物は、下記一般式(2)で表される化合物である請求項9に記載のエポキシ樹脂組成物。
【化2】

(式中、Pはリン原子、R1、R2、R3及びR4は、それぞれ、置換もしくは無置換の芳香環又は複素環を有する有機基、あるいは置換もしくは無置換の脂肪族基を示し、互いに独立し、同一であっても異なっていてもよい。A-は、分子外に放出しうるプロトンを少なくとも1個以上分子内に有するn(n≧1)価のプロトン供与体のアニオン、又はその錯アニオンを示す。)
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物を基材に含浸させてなるプリプレグ。
【請求項12】
請求項11に記載のプリプレグを少なくとも1枚以上重ね合わせた積層体の少なくとも片面に金属箔を有する積層板。
【請求項13】
請求項1ないし10のいずれかに記載のエポキシ絶縁樹脂組成物よりなる絶縁層をフィルム上、又は金属箔上に形成してなる樹脂シート。
【請求項14】
請求項11に記載のプリプレグ、請求項12に記載の積層板、および[請求項13に記載の樹脂シートからなる群より選ばれる少なくとも1つを用いて作製される多層プリント配線板。
【請求項15】
請求項14に記載の多層プリント配線板に半導体素子を搭載してなる半導体装置。

【公開番号】特開2010−31263(P2010−31263A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−151517(P2009−151517)
【出願日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】