説明

ガス供給装置

【課題】基板に対向するガス供給面から3種類の処理ガスを基板に供給して成膜処理を行うにあたり、膜厚及び膜質について高い面内均一性を得ることのできる成膜装置等を提供する。
【解決手段】
ガス供給装置4は処理容器内の載置台に載置された基板に対向する多数のガス供給孔から、この基板に対して処理を行い、ガス供給装置本体4aは複数のガス導入ポートと、それらから導入されたガスを前記多数のガス供給孔に導くガス流路512(522、532)を備えている。第1のガス供給プレート45及び第2のガス供給プレート44は、共にこのガス供給装置本体4aに設けられ、ガスの種類または流量が互いに異なる多数のガス供給孔を有している。そして前記第1のガス供給プレート45は、ガス供給孔が処理ガスを供給する導入ポートに連通し、ガス供給装置本体4aに対して着脱自在となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に対して処理ガスをシャワー状に供給するためのガス供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造装置の中には、ガス供給装置と載置台とを処理容器内に対向させ、ガス供給装置から載置台上の基板に処理ガスをシャワー状に供給して基板を処理する装置、例えば成膜装置やエッチング装置等がある。
このうち成膜装置としては、処理ガスを加熱して反応させる熱CVD等があり、また複数種類の処理ガスの供給を例えば2ステップに分けて、第1のステップにて一の処理ガスの供給を行い、また第2のステップにて他の処理ガスの供給を行い、これらステップを交互に行って処理ガスによる反応生成物を順次積層していくいわゆるALD(Atomic Layer Deposition)も知られている。このALDについては、基板の横側から処理ガスを流すサイドフロー方式が知られていたが、本発明者はこのALDにおいても基板と対向するガス供給装置を用いる方式の方が有利であると考えている。
【0003】
このガス供給装置はガスシャワーヘッド等と呼ばれており、ガス導入ポートを備えたガス供給装置本体の最下部に多数のガス供給孔が形成されたシャワープレート等と呼ばれているガス供給プレートが設けられている。ガス供給装置本体は、ガス導入ポートとこれに対応するガス供給孔とを連通するためのガス流路を備え、ガス流路の途中にはガスを横方向に拡散させるための拡散空間が形成されており、例えばALDにより成膜を行うタイプのガス供給装置では、各ステップで供給される処理ガスを夫々異なるガス供給孔から供給できるように構成されている。
【0004】
このALDにおいてガスシャワーヘッドから供給される処理ガスの種類を切り替える際には、次の処理ガスの供給を開始する前にパージガスを供給し、成膜を行う処理雰囲気内に残っている処理ガスを完全に排除する作業が行われる。このようなパージ作業の行われるALD用のガスシャワーヘッドにおいて、本発明者はガスシャワーヘッドの中央領域については処理ガス及びパージガスの供給を行う領域とし、更に周縁領域をパージガスの供給を行う領域とすることによって、中央領域と周縁領域とを併せたガスシャワーヘッド全体から多量のパージガスを供給することでパージ作業の時間を短縮し、成膜装置のスループットを向上させる技術を検討している。
【0005】
一方、ガス供給装置においては、シャワープレートの構成は処理ガスの種類に応じて調整される。例えばガス供給孔の孔径や長さ(深さ)についてみると、一のガス供給孔から処理容器内に供給された一の処理ガスが当該ガス供給孔に隣接する他の処理ガス用のガス供給孔へと拡散、侵入し、ガス流路や拡散空間内で処理ガス同士が反応して反応物が付着することによるパーティクルの発生を防止するために、拡散し易いガスを用いる場合にはガス供給孔のサイズを小さしたりあるいはその長さを大きくする等の調整が必要である。
また、処理ガスのガス供給孔のみに限られず、例えばパージ効率を調整するためにパージガスのガス供給孔を変更することもある。
【0006】
更にまた、実際に製品のウエハを処理する場合に限らず、装置の開発段階においてプロセスレシピに見合ったガス供給孔の孔径や長さを追い込んでいく場合にも、実際に装置を組み立ててガス供給孔の孔径や長さを種々変更することがある。
【0007】
このような場合、例えば処理ガスの種類の変更に応じてガス供給孔を変更する場合には、ガスシャワーヘッド全体を交換するよりも、シャワープレートだけを交換する方がコスト的にも有利であると考えられる。
しかしながら、シャワープレートの製作は、例えば直径1〜2mm程度の微細な多数のガス供給孔を位置、孔径共に高精度に加工しなければならない。そしてウエハが大口径化していることから、シャワープレートも大型化しており、大面積のプレート上にそのような高い精度が要求される加工を施すことは容易ではなく、製作費用も高騰する。
【0008】
そして既述のように例えば処理ガスを中央領域から、またパージガスを周縁領域から夫々供給する場合には、処理ガスのガス供給孔を変更するときにもシャワープレートにパージガスのガス供給孔を加工しなければならないし、また逆にパージガスのガス供給孔を変更するときにも処理ガスのガス供給孔を加工しなければならず、調整すべきガス供給孔以外のガス供給孔についても加工しなければならないという無駄があり、結果として開発コスト、ランニングコストの低廉化の妨げになる。
【0009】
更にエッチング装置において、中央領域と周縁領域とから供給するエッチングガスのガスの種類や流量が互いに異なるガスシャワーヘッドが知られているが(特許文献1)、このようなガスシャワーヘッドにおいても、中央領域、周縁領域の一方のガス供給孔を変更するときにも、同様の無駄がある。なおこの特許文献1には、こうした無駄やそれを解消する技術については記載されていない。
【特許文献1】特開2006−165399号公報:第0037段落〜第0039段落、図3
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は基板に対してシャワー状にガスを供給するガス供給装置において、処理ガスの種類や流量を変更するにあたって一部の部品を交換することで対応でき、しかも交換部品を製作する上で有利なガス供給装置を提供することにある。本発明の他の目的は、このガス供給装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るガス供給装置は、処理容器内の載置台に載置された基板に対向する多数のガス供給孔から、前記基板に対して処理を行うための処理ガスを供給するガス供給装置であって、
複数のガス導入ポートと、これら複数のガス導入ポートから導入されたガスを前記多数のガス供給孔に導くガス流路と、を有するガス供給装置本体と、
このガス供給装置本体の下面側領域を分割することにより構成され、各々多数のガス供給孔を備えると共にガスの種類及び流量の少なくも一方が互いに異なる第1のガス供給プレート及び第2のガス供給プレートと、を備え、
前記第1のガス供給プレートは、ガス供給孔が処理ガスを供給するガス導入ポートに連通し、前記ガス供給装置本体に対して着脱自在に設けられたことを特徴とする。
このとき更に前記第2のガス供給プレートは、前記ガス供給装置本体に対して着脱自在に構成するとよい。
【0012】
また基板が半導体ウエハである場合には、前記第1のガス供給プレート及び第2のガス供給プレートを、ガス供給装置本体の下面領域を径方向に分割することが好適であり、この場合には前記第1のガス供給プレートは、ガス供給装置本体の下面領域の中央部に設け、前記第2のガス供給プレートは、前記第1のガス供給プレートを囲むようにリング状に設けることが好ましい。また、前記第2のガス供給プレートは、パージガスを専用に供給するように構成してもよい。
【0013】
また、前記第1のガス供給プレートのガス供給孔を、互いに異なる処理ガスを導入する複数のガス導入ポートに夫々連通する複数のグループに分け、更にこれら互いに異なる処理ガスを導入する複数のガス導入ポートを、3種類以上の処理ガスを夫々導入する3つ以上のガス導入ポートとして構成してもよい。
【0014】
このほか上述の各ガス供給装置は、一のグループに属するガス供給孔と他のグループに属するガス供給孔とから、交互に処理ガスを供給して、それら処理ガスの成分を交互に基板に吸着させ、順次処理ガスの成分同士を反応させて反応生成物を積層するために用いる場合に適している。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、ガス供給装置本体に多数のガス供給孔を備えたガス供給プレートを設け、このガス供給プレートを、ガスの種類及び流量の少なくも一方が互いに異なる第1のガス供給プレート及び第2のガス供給プレートに分割すると共に、処理ガスを供給する第1のガス供給プレートを前記ガス供給装置本体に対して着脱自在に取り付けている。このため、処理ガスの種類や流量を変更する場合、あるいはその処理ガスの種類や流量に見合った適切なガス供給孔にパラメータを求める作業を行う場合に、ガス供給プレート全体を交換することなく、第1のガス供給プレートのみを交換すればよいので、ガス供給プレートを一体に構成する場合に比べて、使用する材料や加工の手間も小さく、ガス供給プレートの製作費用を低減することが可能となる。
【0016】
更にまた第2のガス供給プレートについても交換可能な構造とすれば、これらのガス供給プレートのうち、いずれか一方から供給される処理ガスの種類や流量を変更する場合などには、変更の必要なガス供給プレートだけをガス供給装置から取り外して新たなガス供給プレートを装着すればよく、もう一方のガス供給プレートはそのまま使用することができ、より一層有利である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
先ず、本発明の実施の形態である成膜装置1全体の構成について図1を参照しながら説明する。本実施の形態に係る成膜装置1は、例えば第1の処理ガスとしてストロンチウム(Sr)を含む原料ガス(以下、Sr原料ガスという)、第2の処理ガスとしてチタン(Ti)を含む原料ガス(以下、Ti原料ガスという)を用い、これらを第3の処理ガスとして酸化ガスであるオゾンガスと反応させて、ALDプロセスにより、基板であるウエハ表面に高誘電体材料であるチタン酸ストロンチウム(SrTiO、以下STOと略記する)の薄膜を成膜する機能を備えている。
【0018】
図1の縦断面図に示すように、この成膜装置1は、真空容器をなす処理容器2と、当該処理容器2内に設置され、基板であるウエハWを載置するための載置台3と、この載置台3と対向するように処理容器2の上部に設けられ、載置台3上のウエハW表面に処理ガスを供給するためのガス供給装置であるガスシャワーヘッド4と、を備えている。
【0019】
載置台3は、ウエハWを支持する載置台本体に相当するステージ31と、このステージ31を覆うステージカバー32と、から構成されており、ステージ31は例えば窒化アルミニウムや石英等を材料として、例えば扁平な円板状に形成されている。ステージ31の内部には、載置台3の載置面を加熱することにより、ウエハWを成膜温度まで昇温するためのステージヒータ33が埋設されている。このステージヒータ33は、例えばシート状の抵抗発熱体より構成されていて、電源部68より電力を供給することにより載置台3上に載置されたウエハWを例えば280℃で加熱することができる。なおステージ31内には図示しない静電チャックが設けられており、載置台3上に載置されたウエハWを静電吸着して固定することができるようになっている。
【0020】
一方、ステージ31と共に載置台3を構成するステージカバー32は、ステージ31の上面及び側面を覆うことにより、反応生成物や反応副生成物といった反応物のステージ31表面への堆積を防止する役割を果たしている。ステージカバー32は例えば石英製の着脱自在なカバー部材(デポシールド等と呼ばれている)として構成されており、その上面中央領域には、ウエハWよりやや大きな径を有する円形の凹部が形成されていて、当該ステージカバー32上の載置面に載置されるウエハWの位置決めを行うことができるようになっている。
【0021】
載置台3は、柱状の支持部材34によって例えばステージ31の下面側中央部を支持されており、当該支持部材34は昇降機構69によって昇降されるように構成されている。そしてこの支持部材34を昇降させることにより載置台3は、外部の搬送機構との間でウエハWの受け渡しが行われる受け渡し位置と、ウエハWの処理が行われる処理位置と、の間を例えば最長80mm程度昇降することができる。
【0022】
図1に示すように支持部材34は、処理容器2の底面部、詳しくは後述の下側容器22の底面部を貫通し、既述の昇降機構69によって昇降される昇降板23に接続されていると共に、この昇降板23と下側容器22との間はベローズ24によって気密に接合されている。
【0023】
また載置台3は、ウエハWの裏面を支えて当該ウエハWを載置台3の載置面より昇降させるための例えば3本の昇降ピン35を備えている。これらの昇降ピン35は、例えば図1に示すように載置台3をウエハWの処理位置まで移動させた状態で、各昇降ピン35の扁平な頭部がステージ31の上面にて係止され、その下端部がステージ31の底面から飛び出すように、ステージ31を上下方向に貫通した状態で取り付けられている。
【0024】
ステージ31を貫通した各昇降ピン35の下方側には、リング状の昇降部材36が設けられていて、載置台3をウエハWの受け渡し位置まで降下させた状態で昇降部材36を昇降させ、各昇降ピン35を押し上げたり降下させたりすることにより、これら昇降ピン35に支持されたウエハWを載置台3の載置面より昇降させることができる。
【0025】
ここでステージカバー32の上面側における、既述の昇降ピン35が貫通している位置には、昇降ピン35の頭部を格納するための開口部が設けられている。このため、図1に示すようにウエハWの処理位置まで載置台3を移動させた状態では、ステージカバー32上面と各昇降ピン35の頭部上面とがほぼ面一となって、載置台3の上面に平坦なウエハW載置面が形成されるようになっている。更に当該ステージカバー32の側壁部は、ステージ31の下方側まで延伸されていて、ステージ31の下方領域を側面から取り囲むスカート部321を形成しており、ステージ31本体と一体の側周面を構成している。
【0026】
次に処理容器2の構成について説明する。本実施の形態に係る処理容器2は、扁平な椀形の下側容器22の上に環状に形成された排気ダクト21を積み重ねた構成となっている。この下側容器22は,例えばアルミニウム等により構成され、その底面には貫通孔221が設けられていて、既述したステージ31の支持部材34を貫通させるようになっている。また当該貫通孔221の周囲には、例えば4箇所にパージガス供給路222が設けられていて、パージガス供給源66から供給された窒素ガス等のパージガスを下側容器22内に送り込むことができる。なお図1中、破線で示した搬送口28は、外部の搬送機構によりウエハWの搬入出を行うためのものであり、図示しないゲートバルブによって開閉されるようになっている。
【0027】
排気ダクト21は、例えばアルミニウム製の角状のダクトを湾曲させて形成された環状体として構成されており、当該環状体の内径及び外径は、既述の下側容器22の側壁部223の内径及び外径とほぼ同サイズに構成されている。また当該排気ダクト21の処理雰囲気に近い側の壁面を内壁面、処理雰囲気から遠い側の壁面を外壁面と夫々呼ぶことにすると、内壁面上端部には、横方向に伸びるスリット状の真空排気口211が間隔を置いて周方向に沿って複数配列されている。当該排気ダクト21の外壁面の例えば一箇所には排気管29が接続されていて、例えば当該排気管29に接続された真空ポンプ67を利用して、各真空排気口211からの真空排気を行うことができるようになっている。また図1に示すように、排気ダクト21にはその上面側から外壁面及び下面側にかけての外周部を覆うように断熱部材212が設けられている。
【0028】
以上に説明した構成を備えた排気ダクト21は、断熱部材212を介して下側容器22の上に積み重ねられ、互いに断熱された状態で一体となり、処理容器2を構成している。そして排気ダクト21の内壁面に設けられた複数の真空排気口211は、ガスシャワーヘッド4と載置台3との間に形成された処理雰囲気10を含む空間に向けて開口しているので、これらの真空排気口211より処理雰囲気10の真空排気を行うことができる。
【0029】
更に処理容器2の内部には、図1に示すように載置台3と協働して下側容器22内の空間である下部空間を、載置台3よりも上部の上部空間から区画するためのインナーブロック26が設けられている。このインナーブロック26は、例えばアルミニウムにより形成されたリング状部材であって、下側容器22の側壁部223内壁面と、載置台3の側周面との間の空間に装填できるサイズに形成されている。またインナーブロック26の上面外周部には、当該外周部から外側へ広がるように突起縁262が設けられており、インナーブロック26は、下側容器22の側壁部223と排気ダクト21の内壁面側の下端部との間に設けられた中間リング体252にこの突起縁262を係止させて処理容器2内に固定されている。
【0030】
更にまた図1に示すように、このインナーブロック26の上面から内周面にかけての領域は、石英製のブロックカバー261で覆われており、表面への反応物の堆積を抑えることができるようになっている。そして、載置台3が処理位置にあるとき、このブロックカバー261が例えば2mmの隙間を介してステージカバー32の側面(スカート部321の側面)を取り囲むことにより、処理雰囲気10のガスが下部空間に拡散しにくい状態となる。
【0031】
更に排気ダクト21の内壁面に形成された真空排気口211と処理雰囲気10との間のリング状の空間には、この空間の通流コンダクタンスを小さくすることにより、当該処理雰囲気10からみて処理容器2の周方向における排気の均一化を計るための、断面が逆L字状に形成されたリング部材であるバッフルリング27が配設されている。
【0032】
次にガスシャワーヘッド4について説明する。図2はガスシャワーヘッド4の分解斜視図、図3及び図4は図2に示した一点破線の位置にてガスシャワーヘッド4をカットした縦断斜視図及び縦断面図であり、図3、図4は中心位置から見て左右のカット方向が異なっている。本実施の形態に係るガスシャワーヘッド4は、載置台3上のウエハWの中央部に対向する中央領域から3種類の処理ガスであるSr原料ガス、Ti原料ガス及びオゾンガス若しくはパージガスを処理雰囲気10に吐出し、また当該中央領域を囲むリング状の周縁領域からパージガスを吐出することができるようになっている。そして、当該ガスシャワーヘッド4の中央領域においては、Sr原料ガス、Ti原料ガス及びオゾンガスを夫々専用のガス供給孔から供給するいわゆるポストミックスタイプのガスシャワーヘッドとして構成されている。
【0033】
先ず前記中央領域における処理ガスの供給構造について述べると、図3、図4に示すようにガスシャワーヘッド4の上面にはSr原料ガス、Ti原料ガス及びオゾンガスを夫々導入するための第1の導入ポート51a、第2の導入ポート52a及び第3の導入ポート53aが設けられており、これらの導入ポート51a〜53aには、上述の各種処理ガスとは別にパージガスも供給することができるようになっている。ガスシャワーヘッド4の内部には上から順に各々扁平な第1の拡散空間421、第2の拡散空間422及び第3の拡散空間431が互いに間隔をおいて積層されており、これらの拡散空間421〜431は、同軸の円形状に形成されていて、第3の拡散空間431は、第1の拡散空間421及び第2の拡散空間422よりも直径が大きく構成されている。
【0034】
次にガスシャワーヘッド4上面における各導入ポート51a〜54aの配置について説明すると、図2に示すように第1の導入ポート51aはガスシャワーヘッド4の上面中央部の1箇所に設けられており、図2に示したY方向を手前側とすると第2の導入ポート52aは、前記第1の導入ポート51aを取り囲む前後左右の4箇所に設けられている。また第3の導入ポート53aはこれら第2の導入ポート52aの外側4箇所に設けられていて、全体として9つの導入ポート51a〜53aがガスシャワーヘッド4の上面の中央領域に十字に配列されている。また、パージガス用の第4の導入ポート54aは、この中央領域の外側に、既述の第1の導入ポート51aを中心とする対角線上の2箇所に設けられている。
【0035】
ガスシャワーヘッド4の上面の中央部に設けられた第1の導入ポート51aは、第1のガス導入路511を介して第1の拡散空間421に連通している。ガスシャワーヘッド4は後述のようにプレートを4段積層して構成されており、第1のガス導入路511はそれらプレート群の最上段のプレート41に垂直に形成されている。
また第2の導入ポート52aは、第2のガス導入路521を介して第2の拡散空間422に連通し、第3の導入ポート53aは、第3のガス導入路531を介して第3の拡散空間431に連通している。第2のガス導入路521は、前記最上段のプレート41から第1の拡散空間421を通って垂直に伸びており、従って第1の拡散空間421においては、その内部空間が第2のガス導入路521を形成する小さな筒状部423が配置されている。第3のガス導入路531は、平面方向の位置が第1の拡散空間421、第2の拡散空間422よりも外側位置にて、前記最上段のプレート41から第3の拡散空間431まで伸びている。
【0036】
更に第1の拡散空間421の底面とガスシャワーヘッド4の下面の中央領域にある中央側ガス供給面40aとの間には、上下両端が夫々前記底面及び中央側ガス供給面40aに開口する垂直な第1のガス供給路512が多数設けられている。これら第1のガス供給路512は、第2の拡散空間422及び第3の拡散空間431を通過しているため、これら拡散空間422、431における第1のガス供給路512の通過部位には、その内部空間が当該第1のガス供給路512を形成する小さな筒状部425、432が夫々配置されている。
【0037】
また第2の拡散空間422の底面とガスシャワーヘッド4下面の中央側ガス供給面40aとの間には、上下両端が夫々前記底面及び中央側ガス供給面40aに開口する垂直な第2のガス供給路522が多数設けられている。これら第2のガス供給路522は、第3の拡散空間431を通過しているため、この第3の拡散空間431における第2のガス供給路522の通過部位には、その内部空間が第2のガス供給路522を形成する小さな筒状部433が配置されている。
【0038】
更にまた、第3の拡散空間431の底面とガスシャワーヘッド4下面の中央側ガス供給面40aとの間には、上下両端が夫々これら底面及び中央側ガス供給面40aに開口する垂直な第3のガス供給路532が多数設けられている。なおガス流路の名称については、このように導入ポートから拡散空間までのガス流路を「ガス導入路」とし、拡散空間からガスシャワーヘッド4の下面までの流路を「ガス供給路」としている。
【0039】
ガスシャワーヘッド4の中央領域は上記のように構成されていることから、Sr原料ガス、Ti原料ガス及びオゾンガスを夫々第1の導入ポート51a、第2の導入ポート52a及び第3の導入ポート53aに導入することにより、これらのガスは互いに独立した流路を通ってガスシャワーヘッド4の下面の中央側ガス供給面40aから、図1に示した処理雰囲気10の中央領域10aに供給されることとなる。またこれらの導入ポート51a〜53aに供給するガスをパージガスに切り替えることにより、当該中央領域10aにパージガスを供給することも可能となる。
【0040】
次にガスシャワーヘッド4の周縁領域における処理ガスの供給構造について述べると、ガスシャワーヘッド4の上面における前記中央領域から外れた領域には、既述のように当該ガスシャワーヘッド4の中心を挟んで相対向する位置に、2つの第4の導入ポート54aが設けられている。また前記周縁領域においては、前記第1の拡散空間421よりも高い位置にリング状の第4の拡散空間411が形成され、2つの第4の導入ポート54aからこの第4の拡散空間411に夫々ガスを導入するように垂直に伸びる第4のガス導入路541が形成されている。更に第4の拡散空間411の下方側投影領域であって、第3の拡散空間431よりも低い位置にリング状の第5の拡散空間441が形成されており、第4の拡散空間411から第5の拡散空間441にガスが流れるように垂直に伸びる2本の第5のガス導入路542が形成されている。
【0041】
そして上側の第4のガス導入路541と下側の第5のガス導入路542とは、ガスシャワーヘッド4の周方向に90度ずつずらして、交互に配置されている。そして第5の拡散空間441の底面とガスシャワーヘッド4下面の周縁領域にある周縁側ガス供給面40bとの間には、上下両端が夫々前記底面及び周縁側ガス供給面40bに開口する垂直な第4のガス供給路543が多数設けられている。
【0042】
ガスシャワーヘッド4の周縁領域は上記のように構成されていることから、パージガスを第4の導入ポート54aに導入することにより、ガスシャワーヘッド4下面の周縁側ガス供給面40bにおいて、既述の処理ガスの供給部位である中央領域10a外方の周縁領域10bからパージガスを供給することが可能となっている。
【0043】
ここでガスシャワーヘッド4は、図2に示すようにプレートを4段に積層して構成され、最上段を1段目とすると、1〜3段目までは夫々平面形状が円形のプレート41、42及び43からなり、4段目は前記中央領域10(ガスシャワーヘッド4の下面の中央部)に位置し、第1のガス供給プレートをなす円形の中央側プレート45と、この中央側プレート45から径方向に同心上に分割され、当該中央側プレート45を囲んで前記周縁領域に位置する第2のガス供給プレートをなすリング状の周縁側プレート44と、から構成されている。
【0044】
1段目のプレート41は、上縁部にフランジ部41aを備え、このフランジ部41aは、図1に示すようにインナーブロック26との間に設けられ、当該フランジ部41aと勘合する段差を備えたリング状の支持部材25の段差部上面に密接している。また当該プレート41におけるフランジ部41aの下方側及び2段目以降のプレート42、43及び44の側周面は、前記支持部材25及びバッフルリング27の内周面に密合した状態で処理容器2に固定されている。
【0045】
また図3、図4に示すように1段目のプレート41の下面にはリング状の溝が形成されており、この溝と2段目のプレート42の上面とにより区画される空間が前記リング状の第4の拡散空間411に相当する。更に前記第1のガス導入路511及び第4のガス導入路541は、この1段目のプレート41に形成されている。
【0046】
2段目のプレート42の中央領域における上下両面には、図2〜図4に示すように夫々平面形状が円形の凹部が形成されており、上面側の凹部と1段目のプレート41とで区画される空間が前記第1の拡散空間421に相当し、また下面側の凹部と3段目のプレート43とで区画される空間が前記第2の拡散空間422に相当する。
【0047】
3段目のプレート43の中央領域における下面には、図3、図4に示すように平面形状が円形の凹部が形成されており、この凹部と4段目の円形の中央側プレート45の上面とで区画される空間が前記第3の拡散空間431に相当する。
【0048】
4段目のリング状の周縁側プレート44の上面には、図2〜図4に示すように当該中央側プレート45の周方向に沿ってリング状に凹部が形成されており、この凹部と3段目の円形のプレート43の下面とで区画される空間が前記第5の拡散空間441に相当する。なお図2において、凹部の符号は対応する拡散空間の符号として記載してある。
【0049】
そして既述のガス導入路521、531、542、及びガス供給路512、522は、図3、図4に示すように1段目から4段目のプレート41、42、43、45及び44の中で対応する複数のプレートに分割して形成されている。また既述のようにガス導入路あるいはガス供給路が拡散空間を通る部分は、筒状部423、425、432、433として構成されているので、これら筒状部423、425、432、433は拡散空間421、422、431を形成する凹部の天井面から下方に突出してまたは凹部の底面から上方に突出して設けられている。
【0050】
拡散空間422、431においては、多数の筒状部425、432、433があるため、この部分を通じて熱の伝達が行われるが、拡散空間421では筒状部423が少ないため、上下のプレート41、42の間で伝熱しやすいように既述の筒状部423以外の箇所においても、凹部の底面から上側のプレートに至るまで上方に突出している柱部424が設けられている。
【0051】
筒状部423、425、432、433及び柱部424の上端面または下端面は、凹部以外のプレート42、43の面と面一(同じ高さ)となっており、従って筒状部423、425、432、433の上端面または下端面は、対向するプレート41、43、45の面と密接し、筒状部423、425、432、433内を流れるガスがガス拡散空間421、422、432にリークすることが抑えられる。以上において、各プレート41〜45内の既述のガス拡散空間421、422、431、411、441、ガス導入路511、521、531、541、542、ガス供給路512、522、532、543は、第1〜第3の処理ガス(Sr原料ガス、Ti原料ガス及びオゾンガス)を独立して処理雰囲気に供給するためのガス流路を構成している。
【0052】
以上に説明したガスシャワーヘッド4の各プレート41〜45には、図3、図4にいくつかを代表して示したように、互いを締結するためのボルト孔81a〜84a、81b〜84bが穿設されている。これらのボルト孔81a〜84a、81b〜84bを用いて、例えば図2に示すようにプレート41とプレート42とをボルト81により締結し、プレート43の中心と中央側プレート45の中心とをボルト82により締結してから、このプレート43をボルト83によってプレート42の下面側に締結し、最後にボルト84によって周縁側プレート44をプレート43の下面側に締結することにより、図3、図4に示すガスシャワーヘッド4が構成される。なお、上述のボルト81〜84は、説明の便宜上ガスシャワーヘッド4の各部材41〜45を締結しているボルトの一部を抜き出して例示したものであって、実際には各部材41〜45は、より多数のボルトによって強固に締結されている。また図示の便宜上図3、図4においてはボルト孔81a〜84a、81b〜84bの記載を省略してある。
【0053】
また前記ガス導入路511、521、541、542がガス拡散空間421、422、411、441に開口する部分においては、拡大した拡径部が形成されている。詳細には、図5(a)に例えば第1のガス導入路511について代表して示すように、第1のガス導入路511及びその開口部511aは例えば円管状に形成されていて、開口部511aの断路面積A(=πr:rは当該断路の半径)は第1のガス導入路511の断路面積A(=πr:rは当該断路の半径)の約2倍となっていると共に、第1のガス導入路511の終端部と開口部511aの終端部とを仮想的に繋ぐ面(図5(a)中に破線で示してある)と、開口部511aの側周面と、のなす角度が30°となるように構成されている。このように拡径部を設けることにより、ガス導入路511、521、541、542よりガス拡散空間421、422、411、441内にガスを拡散させ易くすることができる。
【0054】
また4段目の中央側プレート45に形成されたガス供給路512、522及び532は、図5(b)に示すように、中央側ガス供給面40aに開口する下側部分の口径がその上側部分よりも小さくなっている。寸法の一例を示すと、上側部分の口径「L1=2mm」、下側部分の口径「L2=1mm」、下側部分の長さ「H=5mm」である。このようにガス供給路512、522、532の下側部分の口径を小さくすることにより、これらの供給路512、522、532から処理雰囲気10へと供給される各処理ガスやパージガスのペクレ数Peの値を大きくすることが可能となり、処理雰囲気10へと供給した処理ガス等の拡散空間421、422、431への侵入を防止することができる。本実施の形態においては、例えば処理ガスの供給を行っていない期間中のガス供給路512、522、532からは少量のパージガスを流すようになっているが、このパージガスが流れる際のペクレ数が「Pe≧20」となるように下側部分の口径が設定されている。ここでPe=Vs・H/Dであり、Vsはガス供給路512、522、532の下側部分を流れるパージガスの流速、Dはパージガスに対する処理ガスの拡散定数である。ここで本実施の形態においてはSr原料ガス、Ti原料ガス、オゾンガスの3種類の処理ガスを用いているが、ペクレ数Peを算出する際に用いる処理ガスの拡散定数Dには、最も拡散定数の大きな例えばオゾンガスの値を採用することにより、拡散定数の小さなSr原料ガスやTi原料ガスについての逆拡散も防止できるように設定されている。
【0055】
このような構造を有するガス供給路512、522、532は、中央側プレート45の下面の中央側ガス供給面40aに開口し、図7に示すように夫々Sr原料ガス供給孔51b、Ti原料ガス供給孔52b、オゾンガス供給孔53bを構成している。説明の便宜上、図7に示した各ガス供給孔51b〜53bは、表記記号により識別できるようにしてあり、Sr原料ガス供給用のSr原料ガス供給孔51bのグループは「◎」、Ti原料ガス供給用のTi原料ガス供給孔52bのグループは「○」、オゾンガス供給用のオゾンガス供給孔53bのグループは「●」の記号にて、中央側ガス供給面40a上の配置位置に表記してある。
【0056】
ここで当該ガスシャワーヘッド4のように、ウエハWに対抗する中央側ガス供給面40aに多数設けられたガス供給孔51b〜53bより、処理ガスを供給することにより成膜を行う場合は、ガス供給孔51b〜53b同士の間隔(以下、ピッチという)や載置台3上に載置されたウエハWの表面からガスシャワーヘッド4の中央側ガス供給面40aまでの距離(以下、ギャップという)が膜質や膜厚の面内均一性に影響を与える。
【0057】
即ち、ウエハWの表面から中央側ガス供給面40aまでのギャップに対して、同種類の処理ガスを供給するガス供給孔同士51b〜53bのピッチが相対的に大きいと、各ガス供給孔51b〜53bから供給された処理ガスは、十分に拡散して隣のガス供給孔51b〜53bより供給された処理ガスと均一な処理ガス雰囲気を形成する前にウエハWに到達してしまう。この結果、ウエハW面内で処理ガスの吸着量の多い領域と少ない領域が形成され、ガス供給孔51b〜53bの配列パターンに合わせて膜厚が薄くなったり、厚くなったりする現象(以下、ガス供給孔51b〜53bの転写という)を生じる。
【0058】
ここで本実施の形態に係る成膜装置1においては、既に図1にて説明したようにウエハWの受け渡し位置から、ウエハWの処理位置まで載置台3を昇降させることが可能となっており、この処理位置は、例えば図10(a)に示すようにギャップが「h=40mm」と最も大きくなる場合から、図10(b)に示すように「h=8mm」と最も小さくなる場合まで、処理位置を上下方向に自在に変更することができる。この処理位置は、例えば成膜条件を指定したレシピに応じて、予め記憶されている最適な処理位置を選択する等の手法によって決定されるが、各原料ガスの使用量抑制の観点から、できる限りギャップの短い処理位置にて成膜処理を行う要請が強い。そこで本実施の形態に係わるガスシャワーヘッド4においては、ギャップhが最小となる位置にて処理が行われる場合でも転写が抑えられるように可能な限り各ガス供給孔51b〜53bのピッチが小さくなるような配列がなされている。
【0059】
即ち、中央側ガス供給面40aを互いに同一の大きさの正三角形からなる単位区画401に分割し、この単位区画401を構成する各正三角形の3つの頂点に、夫々Sr原料ガス供給孔51b、Ti原料ガス供給孔52b、オゾンガス供給孔53bを割り当てることにより、多数のガス供給孔51b〜53bを中央側ガス供給面40aに配列している。
【0060】
さらに詳細には、図8において三角形ABCの頂点Aに例えばオゾンガス供給孔53bを割り当て、頂点Bに例えばSr原料ガス供給孔51bを割り当て、頂点Cに例えばTi原料ガス供給孔52bを割り当てる。この後三角形ABCの辺BCに対して線対称な三角形BCDを描くと、頂点Dにはこれと線対称な頂点Aのオゾンガス供給孔53bが割り当てられる。同様なことが三角形ABCの各辺AB、ACに対しても行われ、頂点EにはTi原料ガス供給孔52bが割り当てられ、頂点FにはSr原料ガス供給孔51bが割り当てられる。以下はこれを繰返しガスシャワーヘッド4のガス供給面40aに各処理ガスのガス供給孔が形成されることになる。これによれば単位区画401内には必ず3種類のガス孔が1つずつ存在し、つまり3種類のガス孔の分布密度が等しいことになる。さらに各々のガス種の隣り合うガス孔の距離も等しくなり(後述するが3種類のガス孔全てに対し、√3lとなる)、全てのガス種が均一に処理雰囲気10に吐出されることになる。
【0061】
ここで図5(b)に示したように、例えば各ガス供給路512、522、532の上側部分の口径が「L1=2mm」の場合には、工作精度や隣り合うガス供給路512、522、532間に必要な壁の厚み等の観点から、隣り合う各ガス供給路512、522、532同士の距離は例えば約7mmが加工限界であり、この場合には図7に示すように単位区画401の一辺の長さlは7mmなので、例えばオゾンガス供給孔53b同士のピッチは「a=(√3)l」であり約12mmとなって、この距離が製作可能な最小のピッチとなる。また、このような配列法によれば、他のガス供給孔51b、52b同士のピッチについても同様に製作可能な最小のピッチとなるので、図7、図8に示す配列法はギャップhが最小の場合においてもガス供給孔51b〜53bの転写の生じにくい配列になっているといえる。
【0062】
以上に説明した図8によるガス孔の配列法によれば、例えば正四角形の各頂点に4種類の異なるガス種を割り振り、あとは四角形の各辺に対し線対称に四角形を描き各ガス種のガス孔を割り振ってゆけば、4種類のガス孔の分布密度が等しく、各ガス種の隣り合うガス孔の距離も等しいシャワーヘッドを作ることができ、さらには正多角形(正五角形、正六角形等)にまで適用することができる。一方このような中央側ガス供給面40aにおけるガス供給孔51b〜53bの配列法に対して、周縁側プレート44の下面の周縁側ガス供給面40bに形成されているパージガス供給孔の配列については、パージガスの供給のみを目的に設けられているため、図8にて説明したような特別な配列法でなくてもよい。例えば図2に周縁プレート44の上面側から見えるように、第5の拡散空間441を構成する凹部の底面全体に、均一に第4のガス供給路543を配置し、必要な量のパージガスを周縁領域10bに偏りなく、均一に供給できるように配列するとよい。
【0063】
次に、ガスシャワーヘッド4への処理ガスやパージガスの供給ラインの構成について説明する。最上段のプレート41上面の各導入ポート51a〜54aには、図4に示すように各種のガスを供給するためのガス供給ライン610〜640が接続されており、第1の導入ポート51aはSr原料ガス供給ライン610と、第2の導入ポート52aはTi原料ガス供給ライン620と、第3の導入ポート53aはオゾンガス供給ライン630と、また第4の導入ポート54aはパージガス供給ライン640と、夫々接続されている。更にこれらの各ガス供給ライン610〜640は図6のガス供給経路図に示すように、上流側で夫々各種の供給源61〜64と接続されている。
【0064】
詳細には、Sr原料ガス供給ライン610はSr原料供給源61と接続されていて、当該供給源61には、例えばSr(THD)(ストロンチウムビステトラメチルヘプタンジオナト)やSr(MeCp)(ビスペンタメチルシクロペンタジエニエルストロンチウム)等の液体Sr原料が貯留されており、このSr原料が供給ラインに押し出され、気化器611により気化されてSr原料ガスがSr原料ガス供給ライン610へと供給されるようになっている。
【0065】
Ti原料ガス供給ライン620はTi原料供給源62と接続されていて、当該供給源62には、例えばTi(OiPr)(THD)(チタニウムビスイソプロポキサイドビステトラメチルヘプタンジオナト)やTi(OiPr)(チタニウムテトライソプロポキサイド)等のTi原料が貯留されており、Sr原料の場合と同様に気化器621によって気化されたTi原料ガスが供給されるようになっている。
【0066】
また、オゾンガス供給ライン630は例えば周知のオゾナイザ等により構成されるオゾンガス供給源63に接続されると共に、パージガス供給ライン640はアルゴンガスボンベ等により構成されるパージガス供給源64に接続されていて、夫々の供給ライン630、640にオゾンガス及びアルゴンガスを供給できる。また、Sr原料ガス供給ライン610、Ti原料ガス供給ライン620、オゾンガス供給ライン630は夫々経路の途中で分岐してパージガス供給源64へと接続されており、夫々の処理ガスに替えてパージガスを供給することができる。また各ガス供給ライン610〜640とガス供給源61〜64との間には、バルブ、流量計等からなる流量制御機器群65が介設されており、後述する制御部7からの指示に基づいて各種のガスの供給タイミング及び供給量が制御される。なお各ガス供給ライン610〜640は、図2に示した11個の導入ポート51a〜54a全てに接続されているが、図1や図6等では導入ポート51a〜54aの数を略して記載してある。
【0067】
成膜装置1の装置構成の説明に戻ると、ガスシャワーヘッド4の上面や排気ダクト21の外壁面の下面側及び上面側等には、図1に示すようにシート状の抵抗発熱体等よりなるシャワーヘッドヒータ47やダクトヒータ213が設けられていて、電源部68より供給される電力によりガスシャワーヘッド4や排気ダクト21全体を加熱することによりガスシャワーヘッド4のガス供給面40や排気ダクト21内面への反応物の付着を防止できるようになっている。なお図示の便宜上、図1以外の図へのヒータ47、213の記載は省略した。なお上述したものの他、反応物の付着を防止するためのヒータは、例えばインナーブロック26内にも埋設されているが、説明の便宜上図示は省略する。
【0068】
以上に説明した成膜装置1は、既述のガス供給源61〜63からのガス供給動作、ステージ31の昇降動作や真空ポンプ67による処理容器2内の排気動作、各ヒータ47、213による加熱動作等を制御する制御部7を備えている。制御部7は例えば図示しないCPUとプログラムとを備えたコンピュータからなり、このプログラムには当該成膜装置1によってウエハWへの成膜処理を行うのに必要な制御、例えばガス供給源61〜64からの各種ガス供給の給断タイミングや供給量調整に係る制御、処理容器2内の真空度を調節する制御、ステージ31の昇降動作制御や各ヒータ47、213の温度制御等についてのステップ(命令)群が組まれている。このプログラムは、例えばハードディスク、コンパクトディスク、マグネットオプティカルディスク、メモリカード等の記憶媒体に格納され、そこからコンピュータにインストールされる。以下、このようなガスシャワーヘッド4を採用した成膜装置1の動作について説明する。
【0069】
先ず図9に示すように、搬送口28を開け、外部の搬送機構を搬送口28より進入させて処理容器2内にウエハWを搬入する。次いで昇降ピン35を介して、受け渡し位置にある載置台3上にウエハWを載置して不図示の静電チャックにより当該ウエハWを吸着する。このとき、各ヒータ213、47等により排気ダクト21やインナーブロック26の表面は例えば各々230℃まで加熱され、またガスシャワーヘッド4のガス供給面40は例えば250℃まで加熱されている。次いで搬送口28を閉じて処理容器2内を気密な状態とした後、真空ポンプ67により排気ダクト21を介して処理容器2内を引き切りの状態とする。
【0070】
このとき既述のようにインナーブロック26はウエハWの受け渡し位置よりも高い位置に固定されているので、図9に示すように載置台3をウエハWの受け渡し位置まで降下させた状態においては、下側容器22内の空間は処理雰囲気10と連通した(区画されていない)状態となっている。このため、上述の真空排気においては下側容器22内を含む処理容器2内全体が真空排気される。
【0071】
処理容器2内が所定の圧力まで真空排気されたら、真空排気を継続したままウエハWの載置された載置台3を、レシピに応じて選択された処理位置、例えば図10(a)に示すギャップ「h=40mm」の処理位置から図10(b)に示すギャップ「h=8mm」の処理位置までの間の予め決められた位置まで上昇させる。ここで処理位置まで載置台3を上昇させると、例えば図10(a)や図10(b)に示すようにステージカバー32の側周面、あるいは当該側周面から延伸されたスカート部321がインナーブロック26に取り囲まれた状態となって、載置台3上方の処理雰囲気10と、下側容器22内の空間とが、載置台3及びインナーブロック26により遮られて互いに区画された状態となる。
【0072】
このようにして処理雰囲気10と下側容器22内の空間とが区画されたら、パージガス供給路222より下側容器22内へのパージガス導入を開始する。そしてステージヒータ33によりウエハWの温度が例えば280℃まで加熱された後、STOの成膜処理を開始する。なお、図9、図10(a)、図10(b)においては、図示の便宜上ステージヒータ33の記載は省略してある。また以下の動作説明では、ウエハWの処理位置が図10(b)に示したギャップ「h=8mm」である場合を例にとって説明を進める。
【0073】
ALDプロセスによるSTOの成膜処理は、図11(a)〜図11(d)に示すガス供給シーケンスに基づいて実行される。図11(a)〜図11(c)の各図に示した白抜きのカラムは各ガス供給ライン610〜630からの処理ガス(Sr原料ガス、Ti原料ガス、オゾンガス)の供給量を示し、また図11(a)〜図11(d)の斜線のハッチで塗りつぶしたカラムは、各ガス供給ライン610〜640からのパージガスの供給量を示している。また図12〜図15は、これらのシーケンス実行中におけるガスシャワーヘッド4内及び処理雰囲気10の各ガスの流れを模式的に示している。
【0074】
ガス供給シーケンスによれば、図11(a)に示すように、まずSr原料ガスの供給を行う(Sr原料ガス供給工程)。このときガスシャワーヘッド4内においてSr原料ガスは、図12に示すように第1のガス導入路511を通って第1の拡散空間421内に拡散し、第1の拡散空間421底面に多数設けられた第1のガス供給路512を通って、中央側ガス供給面40aの各Sr原料ガス供給孔51b(図7参照)から処理雰囲気10の中央領域10aに供給される。
【0075】
このようにして、Sr原料ガスは、ガスシャワーヘッド4の中央側ガス供給面40aから処理雰囲気10内の中央領域10aに供給され、載置台3上のウエハWの中央部に到達する。このとき図1に示すように、処理雰囲気10の周囲には排気ダクト21に設けられた真空排気口211が当該処理雰囲気10を取り囲むように配置されているので、ウエハW中央部に到達した原料ガスはこれらの真空排気口211に向かってウエハWの中央部から周縁部へと流れていく。このようにウエハWの中央部から周縁部に原料ガスが流れることにより、原料ガスの移動距離が短くなって、各原料ガスの分子をウエハWの径方向に均一に吸着させることができる。
【0076】
またこのとき、図11(b)〜(d)及び図12に示すように原料ガスの逆流を防止するため、第2のガス供給路522、第3のガス供給路532及び第4のガス導入路541からは少量のパージガスを流している。一方、図1に示した下側容器22のパージガス供給路222から供給されたパージガスは、載置台3とインナーブロック26との隙間を通って処理雰囲気10内に進入し、これにより原料ガスが下側容器22内の空間へと流入することを抑え、反応物が付着することによる付着物の形成を防止している。この載置台3とインナーブロック26との隙間からのパージガスの供給は、ガス供給シーケンスの実行中、継続して行われる。
【0077】
このようにして所定時間が経過し、ウエハW上にSr原料ガスの吸着層を形成したら、各原料ガスの供給を停止し、図11(a)〜図11(d)に示すようSr原料ガス供給ライン610及びパージガス供給ライン640からパージガスを供給して、処理雰囲気10並びにガスシャワーヘッド4内部に残存するSr原料ガスをパージする(Sr原料ガスパージ工程)。このときガスシャワーヘッド4内では、Sr原料ガス供給ライン610から供給されたパージガスは、図13に示すように既述のSr原料ガスと同様の経路を経て処理雰囲気10の中央領域10aに供給される。一方パージガス供給ライン640より供給されたパージガスは、第4のガス導入路541→第4の拡散空間411→第5のガス導入路542を経てリング状の第5の拡散空間441に到達し、この底面に多数設けられた第4のガス供給路543を通って処理雰囲気10の周縁領域10bに供給される。
【0078】
このように処理容器2内の処理雰囲気10には、中央領域10aと周縁領域10b双方に同時にパージガスが供給されるため、例えばこれらの領域のいずれか一方のみにパージガスを供給する場合に比べてパージガス量が多くなり、短い時間で原料ガスのパージを終えることができる。なおこのとき、図11(b)、(c)及び図13に示すように第2のガス供給路522及び第3のガス供給路532からも少量のパージガスを流している。
【0079】
処理雰囲気10からのSr原料ガスのパージを終えたら、図11(b)に示すようにTi原料ガスを供給する。Ti原料ガスは、図14に示すように第2のガス導入路521→第2の拡散空間422→第3のガス供給路532を経て中央側ガス供給面40aの各Ti原料ガス供給孔52b(図7参照)より処理雰囲気10の中央領域10aに供給され、Sr原料ガスの場合と同様にウエハW中央部から周縁部へ向かって流れて当該ウエハWの径方向に均一に吸着する。また図11(a)、(c)、(d)及び図14に示すように第1のガス供給路512、第3のガス供給路532及び第4のガス導入路541からは少量のパージガスを流して原料ガスの逆流を防止している。
【0080】
次いで、既述の図13に示すようにパージガスによるガスシャワーヘッド4内及び処理雰囲気10からのTi原料ガスのパージが行われるが(Ti原料ガスパージ工程)、図11(b)、(d)に示すように、Ti原料ガス供給ライン620とパージガス供給ライン640からのパージガス供給がメインに行われる一方、図11(a)、(c)に示すようにSr原料ガス供給ライン610、オゾンガス供給ライン630から、夫々第1のガス供給路512、第3のガス供給路532へは原料ガスの逆流防止を目的とした少量のパージガス供給が行われている点が既述のSr原料ガスパージ工程と異なっている。
【0081】
このようにして、Sr原料ガス、Ti原料ガスの供給及び夫々のパージを終えたら図11(c)に示すようにオゾンガス供給ライン630からのオゾンガスの供給を行う(オゾンガス供給工程)。このときオゾンガスは、図15に示すようにガスシャワーヘッド4の第3のガス導入路531を通って第3の拡散空間431内に拡散し、この第3の拡散空間431の底面に多数設けられた第3のガス供給路532を通って中央側ガス供給面40aの各オゾンガス供給孔53b(図7参照)から処理雰囲気10の中央領域10aに供給される。なおこのとき図11(a)、(b)、(d)に示すようにSr原料ガス供給ライン610、Ti原料ガス供給ライン620、パージガス供給ライン640からは少量のパージが供給され、ガスシャワーヘッド4内へのオゾンガスの進入を防止している。
【0082】
この結果、処理雰囲気10内でウエハW表面に到達したオゾンが、既にウエハWの表面に吸着している原料ガスとステージヒータ32からの熱エネルギーにより反応して、STOの分子層が形成される。こうして所定時間オゾンガスを供給したらオゾンガスの供給を停止して、図11(c)、図11(d)及び図13に示すようにオゾンガス供給ライン630、パージガス供給ライン640からパージガスを供給して、処理雰囲気10並びにガスシャワーヘッド4内部に残存するオゾンガスをパージする(オゾンガスパージ工程)。またこの際にも図11(a)、図11(b)に示すように、第1のガス供給路512、第2のガス供給路522からは少量のパージガスを流している。
【0083】
図11に示すように、以上に説明した6つの工程を1サイクルとすると、当該サイクルを予め決められた回数、例えば100回繰り返してSTOの分子層を多層化し、所定の膜厚を備えたSTO膜の成膜を完了する。このようにSr原料ガス供給工程〜オゾンガスパージ工程の各工程において、本来大流量で流すガス流路以外のガス流路からも必ず小流量のパージガスを流すようにしている。そして成膜を終えたら各種のガス供給を停止し、ウエハWの載置された載置台3を搬送口28まで降下させ、処理容器2内の圧力を真空排気前の状態に戻した後、搬入時とは逆の経路で外部の搬送機構によりウエハWを搬出し、一連の成膜動作を終える。
【0084】
以上に説明した動作によりSTO膜の成膜を行う本実施の形態に係わる成膜装置1において、3種類の処理ガス及びパージガスを処理雰囲気10の中央領域10aに供給する中央側プレート45と、パージガスを処理雰囲気10の周縁領域10bへ供給する周縁側プレート44とは、図2に示したように異なる部材により構成されている。そして、これらのプレート44、45はボルト83、84により上段側のプレート41〜43(以下、これら上段側のプレートをガスシャワーヘッド本体4aという)に固定されているため、中央側プレート45、周縁側プレート44は必要に応じて各々ガスシャワーヘッド本体4aから取り外すことができる。
【0085】
ここで例えば図5(b)において説明したように、中央側プレート45に形成されているガス供給路512、522、532の下側部分の口径L2は、上流側の拡散空間421、422、431等への処理ガスの逆拡散を防止するために、処理ガスの供給を行っていない期間中のガス供給路512、522、532を流れる少量のパージガスのペクレ数が「Pe≧20」となるように設定されている。このペクレ数は、Pe=Vs・H/Dの定義式に基づき、ガス供給路512、522、532の下側部分を流れるパージガスの流速Vs、当該下側部分の長さH、パージガスに対する処理ガスの拡散定数Dにより決定されるが、例えば処理ガスを変更した場合等にはガス供給路512、522、532の下側部分の口径L2や高さHを変える必要が生じる。
【0086】
例えば、現在使用している中央側プレート45のガス供給路512、522、532は、3種類の処理ガスの中で最も拡散しやすいオゾンガスのパージガスに対する拡散定数Dに基づきペクレ数Peを算出し、「Pe≧20」の条件を満たすように、下側部分の長さHやガス流速Vsを決定する口径L2が決定されているとする。
【0087】
このとき例えば原料ガス(Sr原料ガスやTi原料ガス)の変更に伴って酸性ガスについても例えばオゾンガスを水蒸気に変更する必要が生じたとすると、水蒸気はオゾンガスの3分の1程度の分子量しかないためパージガスに対する拡散係数が大きくなってしまうおそれがある。この結果、ガス供給路512、522、532を流れるパージガスに対する水蒸気のペクレ数Peが小さくなり、処理ガスの逆拡散防止に必要な「Pe≧20」の条件を満たさなくなってしまう。
【0088】
このような場合には、例えばパージガスの供給量を増やすことによりガス流速Vsを大きくしてペクレ数Peを大きくする手法も考えられる。しかしながら例えば図11(a)〜図11(c)の原料ガス供給工程やオゾンガス供給工程においては、他のガス供給路にて処理ガスを供給している期間中に、処理ガスの供給を行っていないガス供給路から少量のパージガスの供給が行われるので、ペクレ数Peを大きくすることを目的としてパージガスの供給量を増やすと成膜結果に悪影響を与えてしまう。そこで、パージガスの供給量を変えることなくガス流速Vsを大きくするためにガス供給路512、522、532の下側部分の口径L2を小さくしたり、下側部分の長さHを長くしたりする必要性が生じる。
【0089】
このような場合に本実施の形態に係わる中央側プレート45は、ガスシャワーヘッド本体4aから着脱自在に構成されているので、図16(a)〜図16(c)に模式的に示すように、ガス供給路512、522、532の下側部分における口径の大きな従来の処理ガス用の中央側プレート45(図16(a))を、ガスシャワーヘッド本体4aから取り外して下側部分における口径の小さな新たな中央側プレート45aに交換し(図16(b))、新たな処理ガスに対応した中央側プレート45aを備えたガスシャワーヘッド4を構成することができる(図16(c))。また下側部分の長さHが十分確保できない場合には、本実施の形態に係る成膜装置1においては図10(a)、(b)に示すようにギャップが可変できるので、中央側プレート45の厚みを厚くしてもよい。なお図16(a)〜図16(c)の各図においては、便宜上、周縁側プレート44における第4のガス供給路543の記載を省略した。
【0090】
以上、図16(a)〜図16(c)にて説明したように現在用いている中央側プレート45を新たな条件に見合ったものに変更する手法は、当該成膜装置1を全く異なるプロセスに転用する場合にも有効である。例えば、実施の形態中に示したSTO膜を成膜するための成膜装置1を、チタン酸バリウム(BaTiO、以下BTOと略記する)膜の成膜を行う装置に転用する場合等においても、これまで使用していた中央側プレート45を、Ba原料ガス、Ti原料ガス及び酸化ガスの性状や供給量に見合ったガス供給路51b〜53bを有する新たな中央側プレート45aに交換するだけで成膜装置1を種類の異なる膜を成膜するプロセスに適用できる。また原料ガスと酸化ガスとを夫々1種類ずつ、合計2種類の処理ガスを中央側プレート45aより供給して成膜を行う成膜装置1に転用することも可能である。この場合には原料ガス用の一方側のガス供給路512、522を塞いだ中央側プレート45aを用いたりするとよい。
【0091】
以上に説明した本実施の形態に係わるガスシャワーヘッド4によれば以下の効果がある。ガスシャワーヘッド本体4aに多数のガス供給路512、522、532を備えたプレート44、45を設け、このプレート44、45を、主として処理ガスを供給する中央側プレート45及びパージガスのみを供給する周縁側プレート44に分割すると共に、処理ガスを供給する中央側プレート45をシャワーガスヘッド本体4aに対して着脱自在に取り付けている。このため、例えば中央側プレート45から供給される処理ガスの種類を変更する場合、あるいはその処理ガスの種類や流量に見合った適切なパラメータを求め、このパラメータに合わせてガス供給孔の口径等の変更を行う場合に、プレート44、45全体を交換することなく、中央側プレート45のみを交換すればよいので、プレート44、45を一体に構成する場合に比べて、使用する材料や加工の手間も小さく、ガスシャワープレート4の製作費用を低減することが可能となる。
【0092】
ここで中央側プレート45を交換する要因は、上述のように処理ガスの変更に限定されるものではなく、例えば処理ガスの流量を増やす場合等に中央側プレート45の圧力損失を低減する目的等でガス供給路512、522、532の口径を大きくしてもよい。
【0093】
更に、第1のガス供給プレートとして着脱自在に構成するプレートは中央側プレート45に限定されるものではなく、例えばパージ時間の更なる短縮のためパージガス供給量を増やすことを目的として周縁側プレート44のパージガス供給孔の口径を大きくする等してもよい。このように周縁側プレート44についても交換可能な構造とすれば、これらのプレート44、45のうち、いずれか一方から供給される処理ガス(パージガスを含む)の種類や流量を変更する場合などには、変更の必要なプレート44、45だけをガス供給装置から取り外して新たなプレート44、45を装着すればよく、もう一方のプレート44、45はそのまま使用することができ、より一層有利である。
【0094】
また、以上に説明したガスシャワーヘッド4のように、中央側プレート45と周縁側プレート44とを分割して構成し、各々のプレート44、45に設けたガス供給孔よりガスの種類や流量の異なるガスを供給するタイプのガス供給装置を適用可能な装置は、実施の形態中に示した成膜装置1に限定されるものではない。例えば背景技術にて例示した特許文献1に記載のエッチング装置のように、ガスシャワーヘッド下面の中央領域から所定濃度のエッチングガスを供給する一方で、周縁領域からは中央領域からのエッチングガスよりも濃度の高いエッチングガスを供給し、夫々の領域から供給するエッチングガスの流量を独立して調整するタイプのエッチング装置にも、本発明に係るガス供給装置は適用することができる。このような場合においても中央領域、周縁領域のいずれか一方のガス供給孔を変更する必要が生じた際に、変更の必要なプレート44、45のみを変更することにより、プレート44、45の製作費用を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】実施の形態に係る成膜装置の縦断面図である。
【図2】上記成膜装置に設けられたガスシャワーヘッドの分解斜視図である。
【図3】上記ガスシャワーヘッドの縦断斜視図である。
【図4】上記ガスシャワーヘッドの縦断面図である。
【図5】ガスシャワーヘッド内のガス導入路及びガス供給路部分の縦断面図である。
【図6】上記成膜装置のガス供給経路図である。
【図7】上記ガスシャワーヘッドに設けられたガス供給孔の配列を示す平面図である。
【図8】上記ガス供給孔の配列を示す説明図である。
【図9】上記成膜装置の第1の動作説明図である。
【図10】上記成膜装置におけるウエハの処理位置を示す説明図である。
【図11】上記成膜装置による成膜処理におけるガス供給シーケンス図である。
【図12】上記成膜装置の第2の動作説明図である。
【図13】上記成膜装置の第3の動作説明図である。
【図14】上記成膜装置の第4の動作説明図である。
【図15】上記成膜装置の第5の動作説明図である。
【図16】上記ガスシャワーヘッドに係る作用図である。
【符号の説明】
【0096】
W ウエハ
1 成膜装置
2 処理容器
3 載置台
4 ガスシャワーヘッド
4a ガスシャワーヘッド本体
7 制御部
10 処理雰囲気
10a 中央領域
10b 周縁領域40 ガス供給面
40a 中央側ガス供給面
40b 周縁側ガス供給面
41〜43 プレート
44 周縁側プレート
45 中央側プレート
51a 第1の導入ポート
51b Sr原料ガス供給孔
52a 第2の導入ポート
52b Ti原料ガス供給孔
53a 第3の導入ポート
53b オゾンガス供給孔
54a 第4の導入ポート
411 第4の拡散空間
421 第1の拡散空間
422 第2の拡散空間
431 第3の拡散空間
441 第5の拡散空間
511 第1のガス導入路
512 第1のガス供給路
521 第2のガス導入路
522 第2のガス供給路
531 第3のガス導入路
532 第3のガス供給路
541 第4のガス導入路
542 第5のガス導入路
543 第4のガス供給路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理容器内の載置台に載置された基板に対向する多数のガス供給孔から、前記基板に対して処理を行うための処理ガスを供給するガス供給装置であって、
複数のガス導入ポートと、これら複数のガス導入ポートから導入されたガスを前記多数のガス供給孔に導くガス流路と、を有するガス供給装置本体と、
このガス供給装置本体の下面側領域を分割することにより構成され、各々多数のガス供給孔を備えると共にガスの種類及び流量の少なくも一方が互いに異なる第1のガス供給プレート及び第2のガス供給プレートと、を備え、
前記第1のガス供給プレートは、ガス供給孔が処理ガスを供給するガス導入ポートに連通し、前記ガス供給装置本体に対して着脱自在に設けられたことを特徴とするガス供給装置。
【請求項2】
前記第2のガス供給プレートは、前記ガス供給装置本体に対して着脱自在に設けられたことを特徴とする請求項1に記載のガス供給装置。
【請求項3】
基板は半導体ウエハであり、前記第1のガス供給プレート及び第2のガス供給プレートは、ガス供給装置本体の下面領域を径方向に分割して構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のガス供給装置。
【請求項4】
前記第1のガス供給プレートは、ガス供給装置本体の下面領域の中央部に設けられ、前記第2のガス供給プレートは、前記第1のガス供給プレートを囲むようにリング状に設けられていることを特徴とする請求項3に記載のガス供給装置。
【請求項5】
前記第2のガス供給プレートは、パージガスを専用に供給するものであることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一つに記載のガス供給装置。
【請求項6】
前記第1のガス供給プレートのガス供給孔は、互いに異なる処理ガスを導入する複数のガス導入ポートに夫々連通する複数のグループに分けられていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一つに記載のガス供給装置。
【請求項7】
前記互いに異なる処理ガスを導入する複数のガス導入ポートは、3種類以上の処理ガスを夫々導入する3つ以上のガス導入ポートであることを特徴とする請求項6に記載のガス供給装置。
【請求項8】
一のグループに属するガス供給孔と他のグループに属するガス供給孔とは、交互に処理ガスを供給して、それら処理ガスの成分を交互に基板に吸着させ、順次処理ガスの成分同士を反応させて反応生成物を積層するために用いられることを特徴とする請求項6または7に記載のガス供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2009−88232(P2009−88232A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−255808(P2007−255808)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】