説明

ガラス埋込シリコン基板およびその製造方法

【課題】簡便な方法でありながら狭間隔へもガラスが埋め込まれやすくなるガラス埋込シリコン基板およびその製造方法を提供する。
【解決手段】ガラス埋込シリコン基板の製造方法は、シリコン基板10に凹部11を形成する工程と、凹部11に粉末状、ペースト状または前駆体溶液であるガラス材料20aを充填する工程と、ガラス材料20aを加熱して軟化させる工程と、軟化させたガラス材料20aを焼結させる工程と、凹部11にガラス材料20aが充填されたシリコン基板10の表裏面においてガラス材料20aとシリコン基板10とを露出させる工程とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコン基板本体の内部にガラスが配置されたガラス埋込シリコン基板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、微細な構造を有するガラス基板を製造する目的で、例えば、特許文献1に記載された技術が知られている。
【0003】
この特許文献1に記載されたガラス材料からなるフラット基板の製造方法では、まず、平坦なシリコン基板の表面に窪みを形成し、平坦なガラス基板にシリコン基板の窪みが形成された面を重ね合わせる。そして、ガラス基板を加熱することによりガラス基板の一部をこの窪みの中に埋め込む。その後、ガラス基板を再固化させ、フラット基板の表裏面を研磨し、シリコンを除去する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4480939号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された製造方法では、ガラス基板を加熱することにより軟化させ、この軟化ガラスをシリコン基板の窪みに埋め込んでいる。しかしながら、軟化ガラスの粘度は非常に高いため、長時間の焼結プロセスが必要であり、また、このプロセスでは高温で荷重を印加する必要がある。更に、狭間隔へは軟化ガラスを埋め込むことができなかった。
【0006】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、簡便な方法でありながら狭間隔へもガラスが埋め込まれやすくなるガラス埋込シリコン基板およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ガラス埋込シリコン基板の製造方法であって、シリコン基板に凹部を形成する工程と、前記凹部に粉末状、ペースト状または前駆体溶液であるガラス材料を充填する工程と、前記ガラス材料を加熱して軟化させる工程と、軟化させた前記ガラス材料を焼結させる工程と、前記凹部に前記ガラス材料が充填された前記シリコン基板の表裏面において前記ガラス材料と前記シリコン基板とを露出させる工程とを備えることを特徴とする。
【0008】
また、前記凹部を形成する工程では、前記シリコン基板の両端が薄肉になるように前記凹部を形成し、前記薄肉の部分にガラス基板またはLTCC基板を重ね合わせてもよい。
【0009】
また、前記凹部を形成する工程では、前記シリコン基板の両端が薄肉になるように前記凹部を形成し、前記薄肉の部分に高抵抗シリコン基板を重ね合わせてもよい。
【0010】
また、前記ガラス材料を充填する工程は、真空雰囲気で行われてもよい。
【0011】
また、前記ガラス材料を加熱して軟化させる工程は、初期では真空雰囲気で行われてもよい。
【0012】
また、前記ガラス材料を加熱して軟化させる工程の初期は、加熱を始めてからボイドが出来始めるまでの期間であってもよい。
【0013】
また、前記ガラス材料を加熱して軟化させる工程は、末期では大気圧以上の雰囲気で行われてもよい。
【0014】
また、前記ガラス材料を加熱して軟化させる工程の末期は、ボイドが出来始めてからボイドが出来上がるまでの期間であってもよい。
【0015】
本発明は、シリコン基板の内部にガラスが埋め込まれたガラス埋込シリコン基板であって、その両端が高抵抗シリコンであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、簡便な方法でありながら狭間隔へもガラスが埋め込まれやすくなるガラス埋込シリコン基板およびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明の第1実施形態にかかる半導体装置を示す図であって、(a)は、パッケージ蓋の構成を示す斜視図、(b)は、パッケージ蓋を除く構成を示す斜視図である。
【図2】図2は、本発明の第1実施形態にかかる加速度センサチップの概略構成を示す分解斜視である。
【図3】図3は、本発明の第1実施形態にかかる加速度センサチップの概略構成を示す断面図である。
【図4】図4(a)〜図4(c)は、本発明の第1実施形態にかかるガラス埋込シリコン基板の製造方法を模式的に示す断面図である。
【図5】図5(a)〜図5(e)は、本発明の第1実施形態にかかるガラス埋込シリコン基板の製造方法を模式的に示す断面図である。
【図6】図6(a)〜図6(f)は、本発明の第2実施形態にかかるガラス埋込シリコン基板の製造方法を模式的に示す断面図である。
【図7】図7は、本発明の第2実施形態にかかるガラス埋込シリコン基板の全体構成図であり、(a)はガラス基板の上面図、(b)は微細加工を施したシリコン基板の上面図、(c)は薄肉の部分にガラス基板を重ね合わせた状態の上面図、(d)は(a)〜(c)の断面図である。
【図8】図8は、本発明の第2実施形態にかかるガラス埋込シリコン基板をデバイス応用した場合の断面図である。
【図9】図9(a)〜図9(f)は、本発明の第3実施形態にかかるガラス埋込シリコン基板の製造方法を模式的に示す断面図である。
【図10】図10は、本発明の第3実施形態にかかるガラス埋込シリコン基板をデバイス応用した場合の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。以下では、静電容量式センサとして、加速度センサを例示する。また、錘部の可動電極が形成される側をシリコン基板の表面側と定義する。そして、シリコン基板の短手方向をX方向、シリコン基板の長手方向をY方向、シリコン基板の厚さ方向をZ方向として説明する。
【0019】
また、以下の複数の実施形態には、同様の構成要素が含まれている。よって、以下では、それら同様の構成要素には共通の符号を付与するとともに、重複する説明を省略する。
【0020】
(第1実施形態)
本実施形態にかかる半導体装置1は、図1(a)および図1(b)に示すように、MEMSデバイスの一例としての加速度センサチップ(半導体素子)Aと、加速度センサチップAから出力された信号を処理する信号処理回路が形成された制御ICチップBが収納された表面実装型のパッケージ101とを備えている。
【0021】
パッケージ101は、図1(b)における上面に位置する一面が開放された箱形の形状を有するプラスチックパッケージ本体102と、パッケージ101の開放された一面を閉塞するパッケージ蓋(リッド)103とを備えている。また、プラスチックパッケージ本体102は、加速度センサチップAおよび制御ICチップBに電気的に接続される複数のリード112を備えている。
【0022】
各リード112は、プラスチックパッケージ本体102の外側面から導出されたアウタリード112bと、プラスチックパッケージ本体102の内側面から導出されたインナリード112aとを備えている。
【0023】
各インナリード112aは、ボンディングワイヤWを通じて制御ICチップBが備える各パッドに電気的に接続されている。
【0024】
加速度センサチップAは、加速度センサチップAの外周形状に基づいて規定した仮想三角形の3つの頂点に対応する3箇所に配置された接着部104により、プラスチックパッケージ本体102の底部に位置する搭載面102aに固着されている。この接着部104は、プラスチックパッケージ本体102に連続して一体に突設されている円錐台形状の突起部と、当該突起部を被覆する接着剤とで構成されている。接着剤としては、例えば、弾性率が1MPa以下のシリコン樹脂などのシリコン系樹脂を用いることができる。
【0025】
ここで、加速度センサチップAが備える総てのパッドは、プラスチックパッケージ本体102の開放された一面に対向する加速度センサチップAの主面において、この主面の1辺に沿って配置されている。この1辺の両端の2箇所と、当該1辺に平行な辺の1箇所(例えば、中央部)との3箇所に頂点を有する仮想三角形の各頂点に接着部104が位置している。これにより、各パッドにボンディングワイヤWを安定してボンディングすることができる。なお、接着部104に位置に関し、上記1辺に平行な辺の1箇所については、中央部に限らず、例えば、両端の一方でもよいが、中央部の方が加速度センサチップAをより安定して支持することができるとともに、各パッドにボンディングワイヤWを安定してボンディングすることができる。
【0026】
制御ICチップBは、単結晶シリコン等から成る半導体基板上に形成された複数の半導体素子、これらを接続する配線、および半導体素子や配線を外部環境から保護するパッシベーション膜からなる半導体チップである。そして、制御ICチップBの裏面全体がシリコン系樹脂によりプラスチックパッケージ本体102の底面に固着されている。制御ICチップB上に形成される信号処理回路は、加速度センサチップAの機能に応じて適宜設計すればよく、加速度センサチップAと協働するものであればよい。例えば、制御ICチップBをASIC(Application Specific IC)として形成することができる。
【0027】
図1の半導体装置を製造するには、まず、加速度センサチップAおよび制御ICチップBをプラスチックパッケージ本体102に固着するダイボンディング工程を行う。そして、加速度センサチップAと制御ICチップBとの間、制御ICチップBとインナリード112aとの間を、それぞれボンディングワイヤWを介して電気的に接続するワイヤボンディング工程を行う。その後、樹脂被覆部116を形成する樹脂被覆部形成工程を行い、続いて、パッケージ蓋(リッド)103の外周を、プラスチックパッケージ本体102に接合するシーリング工程を行う。これにより、プラスチックパッケージ本体102の内部は気密状体で封止される。なお、パッケージ蓋103の適宜部位には、レーザマーキング技術により、製品名称や製造日時等を示す表記113が形成されている。
【0028】
なお、制御ICチップBが1枚のシリコン基板を用いて形成されているのに対して、加速度センサチップAは、積層された複数の基板を用いて形成されている。よって、加速度センサチップAの厚みが制御ICチップBの厚みに比べて厚くなっているので、プラスチックパッケージ本体102の底部において加速度センサチップAを搭載する搭載面102aを制御ICチップBの搭載部位よりも凹ませてある。したがって、プラスチックパッケージ本体102の底面について、加速度センサチップAを搭載する部位の厚みは他の部位に比べて薄くなっている。
【0029】
さらに、本実施形態では、プラスチックパッケージ本体102の外形を10mm×7mm×3mmの直方体としているが、この数値は一例であり、加速度センサチップAや制御ICチップBの外形、リード112の本数やピッチなどに応じて適宜設定すればよい。
【0030】
プラスチックパッケージ本体102の材料としては、熱可塑性樹脂の一種であって、酸素および水蒸気の透過率が極めて低い液晶性ポリエステル(LCP)を採用する。しかし、LCPに限らず、例えば、ポリフェニレンサルファイト(PPS)、ポリビスアミドトリアゾール(PBT)等を採用してもよい。
【0031】
また、各リード112の材料、つまり、各リード112の基礎となるリードフレームの材料としては、銅合金の中でもばね性の高いりん青銅を採用する。ここでは、リードフレームとして、材質がりん青銅で板厚が0.2mmにリードフレームを用い、厚みが2μm〜4μmのNi膜と、厚みが0.2μm〜0.3μmのAu膜との積層膜からなるめっき膜を電解めっき法により形成してある。これにより、ワイヤボンディングの接合信頼性と半田付け信頼性とを両立させることができる。また、熱可塑性樹脂成形品のプラスチックパッケージ本体102は、リード112が同時一体に成形されている。しかし、熱可塑性樹脂であるLCPにより形成されるプラスチックパッケージ本体102とリード112のAu膜とは密着性が低い。したがって、上述のリードフレームのうちプラスチックパッケージ本体102に埋設される部位にパンチ穴を設けることで各リード112が抜け落ちるのを防止する。
【0032】
また、図1の半導体装置は、インナリード112aの露出部位およびその周囲を覆う樹脂被覆部116が設けられている。樹脂被覆部116は、例えば、アミン系エポキシ樹脂などのエポキシ系樹脂などの非透湿性の樹脂からなる。ワイヤボンディング工程の後に、ディスペンサを用いてこの非透湿性の樹脂を塗布し、これを硬化させることで、機密性を向上させている。なお、この非透湿性の樹脂に代えてセラミックスを用いてもよく、セラミックスを用いる場合には、プラズマ溶射などの技術を持ちいて局所的に吹き付ければよい。
【0033】
また、ボンディングワイヤとしては、Alワイヤに比べて耐腐食性の高いAuワイヤを用いる。また、直径が25μmのAuワイヤを採用するが、これに限らず、例えば、直径が20μm〜50μmのAuワイヤから適宜選択すればよい。
【0034】
次に、加速度センサチップAの概略構成を説明する。加速度センサチップAは、静電容量型の加速度センサチップであって、SOI(Silicon On Insulator)基板10を用いて形成されたセンサ本体1と、ガラス基板20を用いて形成された第1の固定基板2と、ガラス基板30を用いて形成された第2の固定基板3とを備えている。第1の固定基板2は、センサ本体1の一表面側(図2や図3における上面側)に固着され、第2の固定基板3は、センサ本体1の他表面側(図2や図3における下面側)に固着される。第1および第2の固定基板2,3はセンサ本体1と同じ外形寸法に形成されている。
【0035】
なお、図2は、センサ本体1、第1の固定基板2および第2の固定基板3のそれぞれの構成を示すべく、センサ本体1、第1の固定基板2および第2の固定基板3が分離した状態を示している。また、センサ本体1は、SOI基板10に限らず、例えば、絶縁層を備えない通常のシリコン基板を用いて形成してもよい。また、第1および第2の固定基板2,3は、それぞれ、シリコン基板およびガラス基板のどちらで形成してもかまわない。
【0036】
センサ本体1は、2つの平面視矩形状の開口窓12が上記一表面に沿って並設するフレーム部11と、フレーム部11の各開口窓12の内側に配置された2つの平面視矩形状の重り部13と、フレーム部11と重り部13との間を連結する各一対の支持ばね部14とを備えている。
【0037】
2つの平面視矩形状の重り部13は、第1および第2の固定基板2,3からそれぞれ離間して配置されている。第1の固定基板2に対向する各重り部13の主面上に可動電極15A,15Bがそれぞれ配置されている。重り部13の周囲を囲むフレーム部11の外周全体が第1および第2の固定基板2,3に接合されている。これにより、フレーム部11と第1および第2の固定基板2,3は、重り部13および後述する固定子16を収納するチップサイズパッケージを構成している。
【0038】
一対の支持ばね部14は、フレーム部11の各開口窓12の内側で重り部13の重心を通る直線に沿って重り部13を挟む形で配置されている。各支持ばね部14は、ねじれ変形が可能なトーションばね(トーションバー)であって、フレーム部11および重り部13に比べて肉薄に形成されており、重り部13は、フレーム部11に対して一対の支持ばね部14の回りで変位可能となっている。
【0039】
センサ本体1のフレーム部11には、各開口窓12それぞれに連通する平面視矩形状の窓孔17が2つの開口窓12と同じ方向に並設されている。各窓孔17の内側には、それぞれ2つの固定子16が一対の支持ばね部14の並設方向に沿って配置されている。
【0040】
各固定子6と窓孔17の内周面との間、各固定子16と重り部13の外周面との間、および隣り合う固定子16同士の間には、それぞれ隙間が形成され、互いに分離独立して電気的に絶縁されている。各固定子16は、第1および第2の固定基板2,3にそれぞれ接合されている。また、センサ本体1の一表面側において、各固定子16には、例えば、Al−Si膜などの金属薄膜からなる円形状の電極パッド18が形成されている。また、同様に、フレーム11において隣り合う窓孔17の間の部位にも、例えば、Al−Si膜などの金属薄膜からなる円形状の電極パッド18が形成されている。
【0041】
各固定子16に形成された各電極パッド18は、後述する各固定電極25に電気的にそれぞれ接続され、フレーム部11に形成された電極パッド18は、可動電極15Aおよび可動電極15Bに電気的に接続されている。以上説明した複数の電極パッド18は、加速度センサチップAの矩形状の外周形状の1辺に沿って配置されている。
【0042】
第1の固定基板2は、第1の固定基板2の第1の主面とこれに対向する第2の主面(センサ本体1に重なり合う面)との間を貫通している複数の配線28と、第2の主面上に形成された複数の固定電極25とを備えている。
【0043】
固定電極25Aaおよび固定電極25Abは、対をなして可動電極15Aに対向して配置されている。同様に、固定電極25Baおよび固定電極25Bbは、対をなして可動電極15Bに対向して配置されている。各固定電極25は、例えば、Al−Si膜などの金属薄膜からなる。
【0044】
各配線28は、第1の固定基板2の第2の主面において、センサ本体1の電極パッド18にそれぞれ電気的に接続されている。これにより、電極パッド18を介して各固定電極25の電位および可動電極15の電位をそれぞれ加速度センサAの外部へ取り出すことができる。
【0045】
第2の固定基板3の一表面(センサ本体1に重なり合う面)であって、重り部13と対応する位置に、例えば、Al−Si膜などの金属薄膜からなる付着防止膜35が配置されている。付着防止膜35は、変位する重り部13の第2の固定基板3への付着を防止するものである。
【0046】
次に、加速度センサチップAの構成を説明する。
【0047】
センサ本体1はSOI基板10を用いて形成されている。SOI基板10は、単結晶シリコンからなる支持基板10aと、支持基板10aの上に配置されたシリコン酸化膜からなる絶縁層10bと、絶縁層10bの上に配置されたn型のシリコン層(活性層)10cとを有する。
【0048】
センサ本体1のうちフレーム部11および固定子16は、第1の固定基板2および第2の固定基板3に接合されている。これに対して、重り部13は、第1および第2の固定基板2,3からそれぞれ離間して配置され、一対の支持ばね部14によりフレーム部11に支持されている。
【0049】
重り部13の過度の変位を規制する微小な突起部13cが、重り部13における第1および第2の固定基板2,3のそれぞれとの対向面から突設されている。重り部13には、矩形状に開口された凹部13a,13bがそれぞれ形成されている。凹部13a,13bは、互いに大きさが異なるため、一対の支持ばね部14を通る直線を境にして、重り部13の左右の質量が異なっている。
【0050】
第1の固定基板2の配線28は、電極パッド18に電気的に接続されている。電極パッド18は、固定子16、連絡用導体部16d、金属配線26を通じて、固定電極25に接続されている。
【0051】
上述の加速度センサチップAは、センサ本体1に設けられた可動電極15と第1の固定基板2に設けられた固定電極25との対を4対有し、可動電極15と固定電極25との対ごとに可変容量コンデンサが構成されている。加速度センサチップA、すなわち、重り部13に加速度が加わると、支持ばね部14がねじれて、重り部13が変位する。これにより、対をなす固定電極25と可動電極15との対向面積および間隔が変化し、可変容量コンデンサの静電容量が変化する。よって、加速度センサAは、この静電容量の変化から加速度を検出することができる。
【0052】
次に、第1の固定基板2の形成に用いられるガラス基板20の一例としてのガラス埋込シリコン基板の製造方法について説明する。
【0053】
まず、図4(a)に示すように、p型又はn型の不純物が全体に添加された低抵抗のシリコン基板10を用意する。シリコン基板10の電気抵抗は、例えば0.02Ω・cm程度であり十分に小さい。そして、フォトプロセスによりレジスト70を形成し、図4(b)に示すように、RIE(Reactive Ion Etching)処理等によりシリコン基板10の表面の所定領域を選択的に除去して複数の凹部11を形成する。凸部11が形成されると、図4(c)に示すように、レジスト70が除去される。ここでは、シリコン基板10の全体に不純物を添加する場合を説明するが、シリコン基板10の全体に不純物が添加されていなくても構わない。少なくとも、配線として残す部分の深さまで不純物が添加されていればよい。
【0054】
次に、図5(a)に示すように、ガラス材料20aを用意する。ガラス材料20aの形態は、粉末状、ペースト状、またはゾルゲル前駆体溶液である。そして、図5(b)に示すように、シリコン基板10の凹部11にガラス材料20aを充填する。この際、ガラスの収縮量を考慮してガラス材料20aを多めに充填しておく。この時点で微細構造体内部にまでガラス材料20aが入り込んでいる。このようにガラス材料20aを充填する工程は、真空雰囲気で行われるのが好ましい。真空中で充填することにより粒子間のエアーが抜け、以降の工程でボイドを出来にくくすることができる。
【0055】
次に、図5(c)に示すように、ガラス材料20aを充填したシリコン基板10を加熱し、ガラス材料20aを軟化させる。このようにガラス材料20aを加熱して軟化させる工程は、初期では真空雰囲気で行われるのが好ましい。初期とは、例えば、加熱を始めてからボイドが出来始めるまでの期間である。これにより、エア噛みによるボイドを低減することができる。また、ガラス材料20aを加熱して軟化させる工程は、末期では大気圧以上の雰囲気で行われるのが好ましい。末期とは、例えば、ボイドが出来始めてからボイドが出来上がるまでの期間である。これにより、ボイドに加わる圧力が上がり、ボイドサイズを小さくすることができる。
【0056】
次に、図5(d)に示すように、加熱によりガラス材料20aを焼結させて一体とする。そして、ガラス材料20aが焼結した段階で不活性ガスを流し、圧力を大気圧以上とする。これにより、ガラス焼結体中に残っていたボイドに加わる圧力が上がり、ボイドサイズを小さくすることができる。
【0057】
次に、凹部11にガラス材料20aが充填されたシリコン基板10の表裏面においてガラス材料20aとシリコン基板10とを露出させる。具体的には、ダイヤモンド砥石を用いた研削、化学機械研磨(CMP)等の研磨、或いはRIE等のドライエッチングやHFによるウェットエッチング等の方法を用いて、ガラス基板の主面を均一に削り取り、ガラス基板の主面にシリコン基板10を露出させる。同様に、研削、研磨、或いはエッチング等の方法を用いて、シリコン基板10の裏面においてガラス材料20aを露出させる。ガラスとシリコンの除去はどちらを先に行っても構わない。これにより、図5(e)に示すように、シリコン基板の内部にガラスが埋め込まれたガラス埋込シリコン基板が製造されることになる。
【0058】
以上の工程により製造されたガラス埋込シリコン基板は、シリコン基板10にガラス材料20aの一部が埋め込まれたものである。よって、図5のシリコン基板10の部分を配線28に当てはめ、図5のガラス材料20aの部分をガラス基板20に当てはめる。これにより、図2および図3に示した第1の固定基板2の形成に用いられるガラス基板20にガラス埋込シリコン基板を適用することができる。
【0059】
以上のように、本実施形態によれば、簡便な方法でありながら狭間隔へもガラスが埋め込まれやすくなる。すなわち、シリコン基板10の凹部11に粉末状、ペースト状または前駆体溶液であるガラス材料20aを充填するようにしているので、焼結プロセスに要する時間を短縮することができる。また、このプロセスでは高温で荷重を印加する必要がなくなる。更に、狭間隔へもガラスが埋め込まれやすくなる。
【0060】
また、本実施形態では、ガラス材料20aを充填する工程は、真空雰囲気で行われる。これにより、出来上がったガラス埋込シリコン基板中のボイドを低減することができる。
【0061】
また、本実施形態では、ガラス材料20aを加熱して軟化させる工程は、初期では真空雰囲気で行われる。これにより、出来上がったガラス埋込シリコン基板中のボイドを低減することができる。
【0062】
また、本実施形態では、ガラス材料20aを加熱して軟化させる工程は、末期では大気圧以上の雰囲気で行われる。これにより、出来上がったガラス埋込シリコン基板中のボイドサイズを小さくすることができる。
【0063】
(第2実施形態)
図6は、本発明の第2実施形態にかかるガラス埋込シリコン基板の製造方法を模式的に示す断面図である。以下、図6を用いて、本発明の第2実施形態にかかるガラス埋込シリコン基板の製造方法を第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0064】
まず、図6(a)に示すように、凹部11を形成する工程では、シリコン基板10の両端(後述する。)が薄肉になるように凹部11を形成する。そして、図6(b)に示すように、この薄肉の部分にガラス基板20bを重ね合わせる。
【0065】
以降は、第1実施形態と同様である。すなわち、図6(c)に示すように、凹部11にガラス材料20aを充填する。次に、図6(d)に示すように、ガラス材料20aを充填したシリコン基板10を加熱し、ガラス材料20aを軟化させた後、図6(e)に示すように、ガラス材料20aを焼結させて一体とする。最後に、図6(f)に示すように、シリコン基板10の表裏面においてガラス材料20aとシリコン基板10とガラス基板20bとを露出させる。
【0066】
図7は、本発明の第2実施形態にかかるガラス埋込シリコン基板の全体構成図である。具体的には、(a)はガラス基板20bの上面図、(b)は微細加工を施したシリコン基板10の上面図、(c)は薄肉の部分にガラス基板20bを重ね合わせた状態の上面図、(d)は(a)〜(c)の断面図である。図7(a)に示すように、円形のガラス基板20bには貫通孔31が形成され、図7(b)に示すように、円形のシリコン基板10には凹部11が形成されている。ガラス基板20bとシリコン基板10とを重ね合わせると、図7(c)に示すように、貫通孔31に凹部11が嵌まり込む。これにより、図7(d)に示すように、シリコン基板10の両端の薄肉の部分(凹部11でない部分)にガラス基板20bが重ね合わさることになる。
【0067】
図8は、本発明の第2実施形態にかかるガラス埋込シリコン基板をデバイス応用した場合の断面図である。ここでは、ガラス埋込シリコン基板を加速度センサA等のMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)デバイス50に応用した場合を例示している。符号R1は、粉末状、ペースト状または前駆体溶液であるガラス材料20aを用いた領域であり、符号R2は、ガラス基板20bとMEMSデバイス50との接合領域である。ガラス埋込シリコン基板中のシリコン部分は配線として機能する。
【0068】
ここで、ガラス基板20bをMEMSデバイス50のシリコン部に陽極接合することが考えられる。この場合、薄肉の部分に重ね合わせたガラス基板20bが陽極接合可能な材料であれば、ガラス材料20aを用いた領域R1は陽極接合可能な材料でなくてもよい。これにより、ガラス材料20aの選択の自由度が広がり、様々な効果を得ることができる。
【0069】
例えば、ガラス材料20aとして低温焼結タイプのフリットガラスを選択した場合は、低温プロセス化を図ることが可能となる。また、低収縮率のフリットガラスを選択した場合は、工程の安定化を図ることが可能となる。更に、シリコンと同じ熱膨張係数のフリットガラスを選択した場合は、熱衝撃性の向上を図ることが可能となる。加えて、高粘着性のフリットガラスを選択した場合は、気密性の向上を図ることが可能となる。
【0070】
以上のように、本実施形態では、シリコン基板10の両端の薄肉の部分にガラス基板20bを重ね合わせるようにしている。これにより、粉末状、ペースト状または前駆体溶液であるガラス材料20aの部分が少なくなるので、更に焼結時間を短縮することができる。
【0071】
また、ガラス基板20bをMEMSデバイス50のシリコン部に陽極接合する場合は、薄肉の部分に重ね合わせたガラス基板20bが陽極接合可能な材料であればよい。これにより、ガラス材料20aの選択の自由度が広がるという効果もある。
【0072】
なお、ここでは、薄肉の部分にガラス基板20bを重ね合わせることとしているが、本実施形態はこれに限定されるものではない。すなわち、薄肉の部分にLTCC(Low Temperature Co-fired Ceramics)基板を重ね合わせるようにしても同様の効果を得ることができる。
【0073】
(第3実施形態)
図9は、本発明の第3実施形態にかかるガラス埋込シリコン基板の製造方法を模式的に示す断面図である。以下、図9を用いて、本発明の第3実施形態にかかるガラス埋込シリコン基板の製造方法を第1または第2実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0074】
まず、図9(a)に示すように、凹部11を形成する工程では、シリコン基板10の両端が薄肉になるように凹部11を形成する。そして、図9(b)に示すように、この薄肉の部分に高抵抗シリコン基板40を重ね合わせる。ここでは、高抵抗シリコン基板40として1000Ω・cmのものを使用している。もちろん、電気抵抗はこれに限定されるものではなく、導通しない程度のものであればよい。
【0075】
以降は、第1実施形態と同様である。すなわち、図9(c)に示すように、凹部11にガラス材料20aを充填する。次に、図9(d)に示すように、ガラス材料20aを充填したシリコン基板10を加熱し、ガラス材料20aを軟化させた後、図9(e)に示すように、ガラス材料20aを焼結させて一体とする。最後に、図9(f)に示すように、シリコン基板10の表裏面においてガラス材料20aとシリコン基板10と高抵抗シリコン基板40とを露出させる。
【0076】
図10は、本発明の第3実施形態にかかるガラス埋込シリコン基板をデバイス応用した場合の断面図である。図8と同様、符号R1は、粉末状、ペースト状または前駆体溶液であるガラス材料20aを用いた領域であり、符号R2は、高抵抗シリコン基板40とMEMSデバイス50との接合領域である。ここでは、高抵抗シリコン基板40をMEMSデバイス50のシリコン部に表面活性化接合する場合を考える。この場合、薄肉の部分に重ね合わせた高抵抗シリコン基板40が表面活性化接合可能な材料であれば、ガラス材料20aを用いた領域R1は表面活性化接合可能な材料でなくてもよい。これにより、ガラス材料20aの選択の自由度が広がり、第2実施形態で説明したような様々な効果を得ることができる。ここでは、表面活性化接合する場合を例示しているが、低温接合する場合についても同様である。
【0077】
以上のように、本実施形態では、シリコン基板10の両端の薄肉の部分に高抵抗シリコン基板40を重ね合わせるようにしている。これにより、粉末状、ペースト状または前駆体溶液であるガラス材料20aの部分が少なくなるので、更に焼結時間を短縮することができる。
【0078】
また、表面活性化による常温接合や低温接合等の接合方法を用いて高抵抗シリコン基板40をMEMSデバイス50のシリコン部に接合する場合は、薄肉の部分に重ね合わせた高抵抗シリコン基板40が表面活性化接合や低温接合可能な材料であればよい。これにより、ガラス材料20aの選択の自由度が広がるという効果もある。
【0079】
また、このようなガラス埋込シリコン基板は、その両端が高抵抗シリコンであるため、構成材料がほとんどシリコンと言える。そのため、MEMSデバイスに応用した場合は、デバイス側もシリコンで熱膨張係数が当然同じであるので、熱衝撃に対して耐性がある。また、陽極接合を用いなくても表面活性化による常温接合や低温接合等の接合方法を用いることが可能である。特に、常温接合を用いた場合は熱応力による影響を低減することができ、MEMSデバイスの特性が劣化することを防止することができる。
【0080】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態には限定されず、種々の変形が可能である。
【0081】
例えば、上記実施形態では、X方向とZ方向の2方向の加速度を検出する加速度センサを例示したが、錘部の1つをXY平面内で90度回転させて配置し、Y方向を加えた3方向の加速度を検出する加速度センサとしてもよい。
【0082】
また、上記実施形態では、静電容量式デバイスとして加速度センサを例示したが、これに限ることなく、その他の静電容量式デバイスであっても本発明を適用することができる。
【0083】
また、錘部や固定電極その他細部のスペック(形状、大きさ、レイアウト等)も適宜に変更可能である。
【符号の説明】
【0084】
10 シリコン基板
11 凹部
20a ガラス材料
20b ガラス基板
40 高抵抗シリコン基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン基板に凹部を形成する工程と、
前記凹部に粉末状、ペースト状または前駆体溶液であるガラス材料を充填する工程と、
前記ガラス材料を加熱して軟化させる工程と、
軟化させた前記ガラス材料を焼結させる工程と、
前記凹部に前記ガラス材料が充填された前記シリコン基板の表裏面において前記ガラス材料と前記シリコン基板とを露出させる工程と、
を備えることを特徴とするガラス埋込シリコン基板の製造方法。
【請求項2】
前記凹部を形成する工程では、前記シリコン基板の両端が薄肉になるように前記凹部を形成し、前記薄肉の部分にガラス基板またはLTCC基板を重ね合わせることを特徴とする請求項1に記載のガラス埋込シリコン基板の製造方法。
【請求項3】
前記凹部を形成する工程では、前記シリコン基板の両端が薄肉になるように前記凹部を形成し、前記薄肉の部分に高抵抗シリコン基板を重ね合わせることを特徴とする請求項1に記載のガラス埋込シリコン基板の製造方法。
【請求項4】
前記ガラス材料を充填する工程は、真空雰囲気で行われることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のガラス埋込シリコン基板の製造方法。
【請求項5】
前記ガラス材料を加熱して軟化させる工程は、初期では真空雰囲気で行われることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のガラス埋込シリコン基板の製造方法。
【請求項6】
前記ガラス材料を加熱して軟化させる工程の初期は、加熱を始めてからボイドが出来始めるまでの期間であることを特徴とする請求項5に記載のガラス埋込シリコン基板の製造方法。
【請求項7】
前記ガラス材料を加熱して軟化させる工程は、末期では大気圧以上の雰囲気で行われることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のガラス埋込シリコン基板の製造方法。
【請求項8】
前記ガラス材料を加熱して軟化させる工程の末期は、ボイドが出来始めてからボイドが出来上がるまでの期間であることを特徴とする請求項7に記載のガラス埋込シリコン基板の製造方法。
【請求項9】
シリコン基板の内部にガラスが埋め込まれたガラス埋込シリコン基板であって、その両端が高抵抗シリコンであることを特徴とするガラス埋込シリコン基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−156403(P2012−156403A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−15817(P2011−15817)
【出願日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】