説明

グラビア版セル形状測定装置および測定方法

【課題】グラビア版の隣接するセルについて、適正な意図されたチャンネルによる接続と、彫刻機等の不具合による土手の切断による接続とを自動で判別することができるグラビア版セル形状測定装置および測定方法を提供する。
【解決手段】グラビア版の表面に形成された複数配列のセルを撮像して得た画像においてセルの幅を印刷方向に検出しその幅が最小となる部分として接続部を検出し、土手と検出した接続部とを境界として抽出されたセルの開口面積を演算し、演算した開口面積が基準開口面積に対して所定範囲を超えたことにより土手切れ部を検出し、土手切れ部が検出されたときにはその土手切れ部の存在を表示し、土手切れ部が検出されないときにはセルについてセル形状を表すパラメータを抽出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はグラビア印刷やグラビア塗工の技術分野に属する。特に、グラビア版面に形成されたセル形状を測定する装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
グラビア版面に形成されるセルは紙、フィルム等の基材に転移させるインキを溜めておく役割を有する。インキの所望の転移量が得られるようにするためにはセル形状の管理が重要である。セル形状の管理方法としては、セル形状のパラメータであるセル深度、セル幅(最大幅)、セル長(最大長)、セル面積、セル体積等を測定し、その測定値によって管理することが行われる。セルの形成方法と種類が特定されていれば、立体形状としてのセル形状はそれらのパラメータによってほぼ推定することが可能である。セルの形成方法としては、たとえば彫刻方式であって、その種類としては、たとえばコンプレスト、エロンゲート、コアース、ファイン、あるいはカスタムドット、等である。セルの形成方法と種類を考慮に入れると、パラメータはセル形状そのものを表している。
【0003】
そこで、そのようなパラメータを測定するためのセル形状測定方法や装置についての提案がある。たとえば、グラビア版に彫刻されたセルの体積(または開口面積)を測定し、目標のセル体積(または開口面積)と比較判定する発明がある(特許文献1,2,3)。また、印刷方向に隣接するセルとセルとを接続するチャンネルのあるセルの体積(または開口面積)を測定する発明がある(特許文献4)。また、隣接するセルとセルの境界(土手)が途切れているときに、セルのエッジを測定者が支持入力することにより、半自動でセルの体積(または開口面積)を測定する発明がある(特許文献5)
【特許文献1】特開平10−138440
【特許文献2】特開平11−115143
【特許文献3】特開平11−188831
【特許文献4】特開2000−65550
【特許文献5】特開2000−263741
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
グラビア版においてセルサイズが最も大きい網100%部分のセル形状は、印刷物における最大濃度を左右する。そのためグラビア版の状態が適正であるか否かを検査するときには、その最大濃度の部位を特に厳密に検査する必要性がある。しかしながら、網100%付近のセルにおいては、インキの転移量を増加させるため、意図的に印刷方向に配列するセルとセルの間を接続するためのチャンネルが存在することがある(図5(A)参照)。また、本来はセルとセルの間を分離するはずの土手が、彫刻機における彫刻のばらつき(誤差)等により部分的に切断してセルとセルの間が接続してしまうこともある(図5(B)参照)。
【0005】
このように、隣接するセルが接続しているときには、適正な意図されたチャンネルによる接続すなわち適正な接続と、彫刻機等の不具合による土手の切断による接続すなわち不適正な接続が存在する。そこで、グラビア版の状態が適正であるか否かを検査する目的で、網100%付近のセル形状を測定するときには、適正な接続なのか、不適正な接続なのかを自動で判別する必要性がある。ところが、従来はその判別を自動で行うことができず、土手の切断部分を測定者が1箇所づつ指示入力しなければならなかった。そのため、測定には多大の時間を必要とするという問題がある。また、セルのバラツキを評価するため等において多数のセルについてセル形状を測定するときには、著しく多大の時間が必要となるため、グラビア版の検査作業は重大な生産阻害要因の1つとなっているという問題がある。
【0006】
本発明は上記の問題を解決するために成されたものである。その目的は、グラビア版の撮像画像において隣接するセルが接続しているときには、適正な意図されたチャンネルによる接続すなわち適正な接続と、彫刻機等の不具合による土手の切断による接続すなわち不適正な接続とを自動で判別することができるグラビア版セル形状測定装置および測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1に係るグラビア版セル形状測定装置は、グラビア版の表面に形成された複数配列のセルを撮像し撮像画像を得る撮像手段と、前記撮像画像において前記セルの幅を印刷方向に検出しその幅が最小となる部分として接続部を検出する接続部検出手段と、前記土手と前記検出した接続部とを境界として抽出されたセルの開口面積を演算する開口面積演算手段と、前記演算した開口面積が基準開口面積に対して所定範囲を超えたことにより土手切れ部を検出する土手切れ部検出手段と、前記土手切れ部が検出されたときにはその土手切れ部の存在を表示する表示手段と、前記土手切れ部が検出されないときには前記セルについてセル形状を表すパラメータを抽出するパラメータ抽出手段とを有するようにしたものである。
また本発明の請求項2に係るグラビア版セル形状測定方法は、グラビア版の表面に形成された複数配列のセルを撮像し撮像画像を得る撮像過程と、前記撮像画像において前記セルの幅を印刷方向に検出しその幅が最小となる部分として接続部を検出する接続部検出過程と、前記土手と前記検出した接続部とを境界として抽出されたセルの開口面積を演算する開口面積演算過程と、前記演算した開口面積が基準開口面積に対して所定範囲を超えたことにより土手切れ部を検出する土手切れ部検出過程と、前記土手切れ部が検出されたときにはその土手切れ部の存在を表示する表示手段と、前記土手切れ部が検出されないときには前記セルについてセル形状を表すパラメータを抽出するパラメータ抽出過程とを有するようにしたものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の請求項1に係るグラビア版セル形状測定装置によれば、撮像手段によりグラビア版の表面に形成された複数配列のセルが撮像され、接続部検出手段によりセルの幅を印刷方向に検出しその幅が最小となる部分として接続部が検出され、開口面積演算手段により土手と検出した接続部とを境界として抽出されたセルの開口面積が演算され、土手切れ部検出手段により演算した開口面積が基準開口面積に対して所定範囲を超えたことにより土手切れ部が検出され、土手切れ部が検出されたときには表示手段によりその土手切れ部の存在が表示され、土手切れ部が検出されないときにはパラメータ抽出手段によりセルについてセル形状を表すパラメータが抽出される。したがって、グラビア版の撮像画像において隣接するセルが接続しているときには、適正な意図されたチャンネルによる接続すなわち適正な接続と、彫刻機等の不具合による土手の切断による接続すなわち不適正な接続とを自動で判別することができるグラビア版セル形状測定装置が提供される。
また本発明の請求項2に係るグラビア版セル形状測定方法によれば、撮像過程によりグラビア版の表面に形成された複数配列のセルが撮像され、接続部検出過程によりセルの幅を印刷方向に検出しその幅が最小となる部分として接続部が検出され、開口面積演算過程により土手と検出した接続部とを境界として抽出されたセルの開口面積が演算され、土手切れ部検出過程により演算した開口面積が基準開口面積に対して所定範囲を超えたことにより土手切れ部が検出され、土手切れ部が検出されたときには表示過程によりその土手切れ部の存在が表示され、土手切れ部が検出されないときにはパラメータ抽出過程によりセルについてセル形状を表すパラメータが抽出される。したがって、グラビア版の撮像画像において隣接するセルが接続しているときには、適正な意図されたチャンネルによる接続すなわち適正な接続と、彫刻機等の不具合による土手の切断による接続すなわち不適正な接続とを自動で判別することができるグラビア版セル形状測定方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
次に、本発明の実施の形態について図を参照しながら説明する。本発明のセル形状測定装置における構成の一例を図1、図2に示す。図1、図2において、1は顕微鏡、2はカメラ、3は光源、31は光度調節部、32は光ファイバー、4はパーソナルコンピュータ、401は画像入出力手段、402はセル体積測定手段、403は画像処理プログラム、41はキーボード、42はマウス、43はディスプレイ、44はA/D変換器、5は移動装置、6は昇降ステージ、7は版胴回転台、8はグラビア版である。
【0010】
顕微鏡1はグラビア版8の版面に形成されたセルをカメラ2によって拡大撮影するための撮像光学系である。顕微鏡1は移動装置5における移動台51に固定支持されている。顕微鏡1を移動台51から外せる支持構造とし、顕微鏡1をポータブルで使用してもよい。顕微鏡1はその鏡筒部分を焦点合わせのため光軸方向に移動する焦点調節部11を有する。光軸方向への移動によりグラビア版8の版面から鏡筒部分までの距離を調節することができる。
【0011】
顕微鏡1の鏡筒部分には対物レンズとリレーレンズ(relay lens)が配置されている。対物レンズとリレーレンズを使用したときの総合倍率は計算式:(総合倍率)=(対物レンズの倍率)×(リレーレンズの倍率)により求めることができる。一般的には対物レンズとリレーレンズの両方に凸レンズが使用され、本発明においてもその構成を適用することができる。しかし本発明における好適な撮像光学系の構成は対物レンズに凸レンズを使用しリレーレンズに凹レンズを使用する。すなわち、対物レンズの倍率が所望倍率よりも高く、そのリレーレンズの倍率が1以下であるように構成する。この構成の撮像光学系を適用することにより高い解像性を得ることができる。一般的には、対物レンズの倍率が高いほど開口数(NA)は大きくなり、開口数(NA)が大きいほど高い解像性を得ることができる。
【0012】
カメラ2はCCD(charge coupled device),MOS(metal oxide semiconductor)等のイメージセンサ、その駆動回路、等が内蔵され、イメージセンサに結像した光像を電気信号に変換して出力する。リレーレンズは、ここでは光像をイメージセンサに結像する意味から結像レンズまたは接眼レンズと呼ぶこともできる。カメラ2はパーソナルコンピュータ4と接続されており、パーソナルコンピュータ4によって撮像に係るカメラ2の操作が行われる。また、パーソナルコンピュータ4によってカメラ2の撮像画像が読み込まれる。
【0013】
光源3はグラビア版8の版面におけるカメラ2の撮像領域を照明するための光源である。光源としては、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、LED(light emitting diode)等が使用される。光源3から放射された光線は光ファイバー32の一端に集められ、光ファイバー32を通して顕微鏡1に導かれる。そして、一般的には、同軸落射照明として撮像領域を照明する。通常の光源3は電力を供給した直後と一定時間経過後では経時的に光度が変化する。また、一定の電圧を印加して使用していても長期の使用により光度が変化する。そこで、光源3はその光度を調節するための光度調節部31を有する。
【0014】
光度調節部31はカメラ2による基準プレートの撮像画像における所定の画素が所定の画素値となるように光源3の光度を調節する。その光度の調節は光源3に供給する電力を調節することによって行われる。光度調節部31はパーソナルコンピュータ4と接続されており、光度調節部31が光度を調節するときにはパーソナルコンピュータ4によって光度調節部31が操作される。
【0015】
パーソナルコンピュータ4はカメラ2の撮像画像を取り込んで画像処理を行いセル形状を演算する。そのため、パーソナルコンピュータ4は画像入出力手段401、セル体積測定手段、画像処理プログラム等を有する。またパーソナルコンピュータ4には、キーボード41、マウス42、ディスプレイ43、A/D変換器(analog-to-digital converter
)44が付属している。
【0016】
カメラ2が出力する撮像信号(アナログ信号)はA/D変換器(analog-to-digital converter)44によってデジタル信号に変換される。パーソナルコンピュータ4の画像入出力手段401は、そのデジタル信号を入力して撮像画像としてパーソナルコンピュータ4の画像メモリに記憶する。また画像入出力手段401は、入力した撮像画像または画像メモリに記憶されている撮像画像をディスプレイ43に表示するためビデオメモリ(video memory)に記憶する。
【0017】
パーソナルコンピュータ4のセル体積測定手段402は撮像画像におけるセル面積、セル幅、等からセル体積を演算する処理を行う。撮像画像からセル形状のパラメータ(セル深度、セル幅(最大幅)、セル長(最大長)、セル面積、セル体積、等)を演算する処理については、特許文献3(特開平11−188831)、特許文献4(特開2000−65550)、等において公知であるからここでは詳細な説明を省略する。
パーソナルコンピュータ4の画像処理プログラム403は撮像画像に対する画像処理を行う(詳細を後述する)。たとえば、撮像画像におけるシェーディング補正、土手とセルとを区別し易くする補正、等の補正を行い補正画像を得る処理を行う。また、隣接するセルの接続部分を検出する処理を行う。また、セル領域を抽出しセル面積を導出する処理を行う。また、その接続部分が適正な接続部分(チャンネル)であるか不適正な接続部分(土手切れ)であるかを検出する処理を行う。また、適正なセルについてセル形状を現すパラメータを抽出する処理を行う。
【0018】
移動装置5は顕微鏡1を直線移動する装置である。図1に示すように、その直線移動の方向がグラビア版の軸方向と一致するように移動装置5が配置されている。したがってグラビア版8の軸方向における任意の位置で顕微鏡1を停止させ、その位置におけるグラビア版8の表面の撮像をカメラ2によって行うことができる。
【0019】
昇降ステージ6は移動装置5、すなわち顕微鏡1を上下方向に移動する装置である。図1に示すように、上方向とはグラビア版8の表面から遠退く方向であり、セル形状測定装置における顕微鏡1の待機位置がその方向に存在する。また下方向とはグラビア版8の表面に近付く方向であり、セル形状測定装置における顕微鏡1の測定位置がその方向に存在する。
【0020】
版胴回転台7は測定のためグラビア版8を載置するとともに載置したグラビア版8を回転するための台である。グラビア版8を回転することにより、グラビア版8の周方向にお
ける任意の位置を顕微鏡1の真下に停止させることができる。そして、その位置におけるグラビア版8の表面の撮像をカメラ2によって行うことができる。上述の移動装置5と版胴回転台7によりグラビア版8の版面における任意の位置の撮像を行うことができる。
なお版胴回転台7はここでは測定のためものであるが、グラビア彫刻装置において彫刻するグラビア版を載置するためのユニットであってもよい。
【0021】
以上、構成について説明した。次に、本発明のセル形状測定装置における動作について図3を参照して説明する。
まず、図3のステップS1(顕微鏡設置)において、作業者は昇降ステージ6を操作してセル形状測定装置における顕微鏡1を待機位置から測定位置に移す。測定位置に移すことでセル形状測定装置におけるカメラ2による撮像が行われる。カメラ2が出力する撮像信号はA/D変換器44によってデジタル信号に変換される。そのデジタル信号はパーソナルコンピュータ4の画像入力手段401によって入力が行われビデオメモリに撮像画像として記憶が行われる。その撮像画像はディスプレイ43において表示が行われる。ディスプレイ43には撮像画面とともにセル形状測定装置を操作するための操作画面がGUI(graphical user interface)表示されている。
【0022】
カメラ2による撮像は所定の時間間隔で繰返し行われ、表示される撮像画像もそれに合わせて更新が行われる。作業者は、そのディスプレイ43に表示される撮像画像で確認を行いながら移動装置5と版胴回転台7を操作し、グラビア版8の版面におけるテスト彫刻を行った部位が真下となるように顕微鏡1の位置決めを行う。このとき撮像画像には複数個の彫刻セルが同一画面に存在するようにする。そのため顕微鏡1は適正な倍率(所望の倍率)となっている。
なお、光源3の光度調節部31における光度の調節はあらかじめ済ませておく。また、シェーディング補正を行うための補正係数はあらかじめ補正係数メモリに記憶しておく。
【0023】
次に、ステップS2(ピント合わせ)において、作業者はディスプレイ43に表示される撮像画像で確認を行いながら顕微鏡1の焦点調節部11を調節して焦点調節を行い、撮像画像におけるピント合わせを行う。
次に、ステップS3(画像入力)において、作業者はキーボード41、マウス42等を操作し、ディスプレイ43の操作画面においてパーソナルコンピュータ4が形状測定を行うよう指示入力を行う。この指示入力を受けて、パーソナルコンピュータ4の画像入出力手段401はカメラ2による撮像画像をパーソナルコンピュータ4の画像メモリに記憶する。
【0024】
次に、ステップS4(画像前処理)において、パーソナルコンピュータ4の画像処理プログラム403は画像メモリに記憶されている撮像画像に対してシェーディング補正を行い、シェーディング補正済みの撮像画像を画像メモリに記憶する。また、シェーディング補正済みの撮像画像に対してメディアンフィルターを適用する等により、版面の傷のぼかし処理を行う。この処理により、シェーディング補正処理と版面の傷のぼかし処理を行った補正画像を得ることができる。
次に、ステップS5(画像2値化)において、画像処理プログラム403は補正画像を2値化し2値化画像を得る。2値化の閾値を決定する方法としては多変量解析における判別分析法を適用すると好適な2値化画像を得ることができる。グラビア版面の性質状態により反射光の一部はノイズ成分となって孤立点、孤立穴、等が存在するが、この2値化画像においては土手の部分とセルの部分とが異なった画素値(0または1)によって表現される。
【0025】
次に、ステップS6(セル輪郭抽出)において、画像処理プログラム403は2値化画像に対してモフォロジー(Morphlogy)処理を行い孤立点、孤立穴を除去する。モフォロジー処理は、ダイレーション(dilation)、エロージョン(erosion)、オープニング(opening)、クロージング(closing)等の基本的な演算を含む処理により構成され、膨張収縮処理はその一例である。2値化画像における孤立点、孤立穴、等のノイズ成分はこのモフォロジー処理によって修正され、グラビア版における土手の部分とセルの部分を適正に区分することができる。すなわち、十分な精度でセル形状測定を行うことが可能な画像としての輪郭画像が得られる。
【0026】
次に、ステップS7(判定1)において、画像処理プログラム403はチャンネルの有無を判定する処理を行う。チャンネルの有無は次の過程によって判定される。まず、輪郭画像においてセル幅を検出する処理を彫刻方向(印刷方向)に進めながら順次行いセル幅が最小となる部分を検出する。次に、その部分においてセルが開いているか閉じているか、すなわちチャンネル(セルを延長した溝)が有るか無しかを検出する。セル幅の最小値がゼロでなければチャンネルが有ることになる。これら2つの過程によりチャンネルの有無を判定する。チャンネルがあると判定されたときにはステップS8に進み、チャンネルがないと判定されたときにはステップS12に進む。なお、図4(A)はチャンネルが有るセルの一例を示す図である。
【0027】
次に、ステップS8(チャンネルの分割処理)において、画像処理プログラム403はチャンネルの部分、すなわちセル幅が最小となる部分を境界としてチャンネルを分割する処理を行う。この分割により、処理対象画像(撮像画像、2値化画像、輪郭画像、等)において、セルは輪郭に囲まれた閉じた領域、すなわち独立領域を有することとなる。撮像画像には複数のセルが存在するから、この分割により独立領域を有する複数のセルが処理対象画像に生成されることとなる。各々のセルにはそのセルを特定する符号が付され、処理対象のセルと他のセルとを区別することができる。なお、図4(B)は独立領域を有する複数のセルの一例を示す図である。
次に、ステップS9(画像の四辺にかかるセルの削除)において、画像処理プログラム403は複数のセルの内で処理対象画像の外周を形成する四辺にかかるセルを削除する。また、画像処理プログラム403は削除されなかったセルの1つを選択し測定対象のセルとする。
【0028】
次に、ステップS10(基準セルサイズファイル)において、画像処理プログラム403は、基準セルサイズファイルを参照して、測定対象のセルに対応する基準のセルの開口面積(セル面積)を入力する。基準セルサイズファイルには、セルを形成するときの条件と、セル形状のパラーメータとの関係が記述されている。セルを形成するときの条件とはセルを形成するときに使用する彫刻針の形状(たとえば針の角度)、その彫刻針によって彫刻するセルの種類(たとえばコンプレスト、エロンゲート)、網点%、等のことである。また、セル形状のパラメータとはセル深度、セル幅(最大幅)、セル長(最大長)、セル面積、セル体積、等のことである。したがって、測定対象のセルがグラビア版に形成されたときの条件に基づいて、基準セルサイズファイルを参照することにより、基準のセルの開口面積(セル面積)を得ることができる。
【0029】
次に、ステップS11(判定2)において、画像処理プログラム403は測定対象のセルの開口面積サイズが基準の開口面積サイズと一致するか否かを判定する処理を行う。画像処理プログラム403は独立領域の内側に存在する画素の画素数を計数することにより測定対象のセルの開口面積サイズを演算する。そして、その測定対象の開口面積サイズと、ステップS10において入力した基準の開口面積サイズとを比較する。そして、その差異が所定の範囲に含まれるときには一致すると判定する。一方、その差異が所定の範囲から外れるときには一致しないと判定する。一致すると判定されたときにはステップS12に進み、一致しないと判定されたときにはステップS13に進む。
【0030】
次に、ステップS12(セル形状測定)において、画像処理プログラム403はセル形状の測定を行う。たとえば、前述の独立領域だけを残した2値化画像基づいて、セル形状のパラメータであるセル深度、セル幅(最大幅)、セル長(最大長)、セル面積、セル体積等を測定する。その内のセル深度とセル体積は三次元の形状であるから二次元の画像だけからは測定することが原理的にできないが、前述のセルを形成するときの条件を考慮することにより三次元の形状を演算することができ。セル形状測定を終了したセルについては、処理対象から削除する。削除後において、そのセルは測定対象とはならない。そして、ステップS16に進む。
【0031】
次に、ステップS13(判定3)において、画像処理プログラム403は測定対象のセルの開口面積サイズと基準の開口面積サイズとの大小を判定する。測定対象のセルの開口面積サイズが基準の開口面積サイズよりも所定の範囲を外れて大きいときにはステップS14に進む。ステップS14(土手切れ表示)においては、画像処理プログラム403はディスプレイ4に土手切れが存在することを表示する。そして、ステップS16に進む。
一方、測定対象のセルの開口面積サイズが基準の開口面積サイズよりも所定の範囲を外れて小さいときにはステップS15に進む。ステップ15(画像削除)においては、画像処理プログラム403はその測定対象のセルを測定対象から削除する。なお、図4(C)は土手切れと判定した箇所(○で示す)、および最終的に測定対象となるセル(中央右にある6つのセル)の一例を示す図である。
【0032】
次に、ステップS16(土手切れのないセル形状の測定)においては、処理対象画像における測定対象のセルの内から未測定のセルについてセル形状測定を行うときにはステップS10に戻って、前述の以降のステップを繰り返す。また、グラビア版の他の部分に形成されたセル形状を測定する等のためセル形状の測定を続けるときには、ステップS1に戻って前述した以降のステップを繰り返す。セル形状の測定を終了するときには、画像処理プログラム403におけるこの処理のループから抜け出す。
【0033】
従来の方式に対する本発明の方式におけるセル体積測定時間の短縮効果について図6を参照して説明する。図6は、サンプル画像1、2についてセル体積の測定にかかる所要時間を従来の方式と本発明の方式とで比較した表として示す図である。図6に示すように、サンプル画像1には1個のセル含まれており、従来方式では所要時間が25秒であったものが本発明においては15秒であった。また、サンプル画像2には18個のセル含まれており、従来方式では所要時間が10分であったものが本発明においては20秒であった。このように、本発明の方式においては従来の方式に対して飛躍的に短い時間でセル体積の測定を行うことができる。なお、セル体積以外のセル形状について測定するときも同様の効果を得ることができる。
【0034】
以上のように本発明を用いることにより、下記の効果を得ることができる。
1) 測定時間の短縮
チャネル、土手切れの区別なく、セルの測定を自動で行うことが可能となるため、グラビア版の検版時間を大幅に短縮できる。
2) 測定精度の向上
同一面内のセル形状にばらつきがあり、複数のセル形状を測定する必要がある場合において、従来は測定時間等の制約から十分な個数のセルを測定できず測定精度が悪かったが、本発明によれば複数セルの測定を効率的に行うことができるため、検版精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明のセル形状測定装置における構成の一例を示す図(全体図)である。
【図2】本発明のセル形状測定装置における構成の一例を示す図(ブロック図)である。
【図3】本発明のセル形状測定装置における動作の過程を示すフロー図である。
【図4】チャンネルが有るセルの一例(A)、独立領域を有する複数のセルの一例(B)と、土手切れと判定した箇所(○で示す)および最終的に測定対象となるセル(中央右にある6つのセル)の一例(C)を示す図である。
【図5】印刷方向に配列するセルとセルの間を接続するためのチャンネルの一例(A)と、セルとセルの間を分離するはずの土手が部分的に切断して接続してしまう一例(B)を示す図である。
【図6】サンプル画像1、2についてセル体積の測定にかかる所要時間を従来の方式と本発明の方式とで比較した表として示す図である。
【符号の説明】
【0036】
1 顕微鏡
2 カメラ
3 光源
31 調節器
32 光ファイバー
4 パーソナルコンピュータ
401 画像入出力手段
402 セル体積測定手段
403 画像処理プログラム
41 キーボード
42 マウス
43 ディスプレイ
44 A/D変換器
5 移動装置
6 昇降ステージ
7 版胴回転台
8 グラビア版


















【特許請求の範囲】
【請求項1】
グラビア版の表面に形成された複数配列のセルを撮像し撮像画像を得る撮像手段と、
前記撮像画像において前記セルの幅を印刷方向に検出しその幅が最小となる部分として接続部を検出する接続部検出手段と、
前記土手と前記検出した接続部とを境界として抽出されたセルの開口面積を演算する開口面積演算手段と、
前記演算した開口面積が基準開口面積に対して所定範囲を超えたことにより土手切れ部を検出する土手切れ部検出手段と、
前記土手切れ部が検出されたときにはその土手切れ部の存在を表示する表示手段と、
前記土手切れ部が検出されないときには前記セルについてセル形状を表すパラメータを抽出するパラメータ抽出手段と、
を有することを特徴とするグラビア版セル形状測定装置。
【請求項2】
グラビア版の表面に形成された複数配列のセルを撮像し撮像画像を得る撮像過程と、
前記撮像画像において前記セルの幅を印刷方向に検出しその幅が最小となる部分として接続部を検出する接続部検出過程と、
前記土手と前記検出した接続部とを境界として抽出されたセルの開口面積を演算する開口面積演算過程と、
前記演算した開口面積が基準開口面積に対して所定範囲を超えたことにより土手切れ部を検出する土手切れ部検出過程と、
前記土手切れ部が検出されたときにはその土手切れ部の存在を表示する表示手段と、
前記土手切れ部が検出されないときには前記セルについてセル形状を表すパラメータを抽出するパラメータ抽出過程と、
を有することを特徴とするグラビア版セル形状測定方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−130869(P2007−130869A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−325870(P2005−325870)
【出願日】平成17年11月10日(2005.11.10)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】