説明

グラビア版セル形状測定装置および測定方法

【課題】グラビア版の撮像画像において隣接するセルが接続しセルの内壁からの乱反射があっても、その乱反射の影響を受けずに正確にセル形状を自動測定することができるグラビア版セル形状測定装置および方法を提供する。
【解決の手段】グラビア版の表面に形成された複数個のセルを撮像し撮像画像を得る撮像手段と、撮像画像に対して表面の性質状態による光ノイズを減らすフィルター処理を行って補正画像を得る補正手段と、補正画像に対して階調変化の大きい部分を強調するロバーツ処理を行って強調画像を得る強調手段と、補正画像と強調画像とにおいて対応する画素の画素値を加算して加算画像を得る加算手段と、加算画像に基づいてセル形状を測定するセル形状測定手段とを備えるようにしたグラビア版セル形状測定装置、およびその装置に適用される方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はグラビア印刷やグラビア塗工の技術分野に属する。特に、グラビア版面に形成されたセル形状を測定する装置と方法に関する。
【背景技術】
【0002】
グラビア版面に形成されるセルは紙、フィルム等の基材に転移させるインキを溜めておく役割を有する。インキの所望の転移量が得られるようにするためにはセル形状の管理が重要である。セル形状の管理方法としては、セル形状のパラメータであるセル深度、セル幅(最大幅)、セル長(最大長)、セル面積、セル体積等を測定し、その測定値によって管理することが行われる。セルの形成方法と種類が特定されていれば、立体形状としてのセル形状はそれらのパラメータによってほぼ推定することが可能である。セルの形成方法としては、たとえば彫刻方式であって、その種類としては、たとえばコンプレスト、エロンゲート、コアース、ファイン、あるいはカスタムドット、等である。セルの形成方法と種類を考慮に入れると、パラメータはセル形状そのものを表している。
【0003】
そこで、そのようなパラメータを測定するためのセル形状測定方法や装置についての提案がある。たとえば、グラビア版に彫刻されたセルの体積(または開口面積)を測定し、目標のセル体積(または開口面積)と比較判定する発明がある(特許文献1,2,3)。また、印刷方向に隣接するセルとセルとを接続するチャンネルのあるセルの体積(または開口面積)を測定する発明がある(特許文献4)。また、隣接するセルとセルの境界(土手)が途切れているときに、セルのエッジを測定者が指示入力することにより、半自動でセルの体積(または開口面積)を測定する発明がある(特許文献5)
【特許文献1】特開平10−138440
【特許文献2】特開平11−115143
【特許文献3】特開平11−188831
【特許文献4】特開2000−65550
【特許文献5】特開2000−263741
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
グラビア版においてセルサイズが最も大きい網100%部分のセル形状は、印刷物における最大濃度を左右する。そのためグラビア版の状態が適正であるか否かを検査するときには、その最大濃度の部位を特に厳密に検査する必要性がある。しかしながら、網100%付近のセルにおいては、インキの転移量を増加させるため、意図的に印刷方向に配列するセルとセルの間を接続するためのチャンネルが存在することがある(図6参照)。このようなチャンネルが存在するグラビア版においてセル形状を測定するときには、セルの内壁からの乱反射の影響を受け易くなる。
【0005】
たとえば、乱反射の影響を受けて自動ではセルの正確な輪郭を抽出できないという問題がある(図7参照)。そのときには、測定者がセルの正確な輪郭をグラビア版セル形状測定装置に手操作で入力する必要性がある。その作業の適否は作業者の技量に左右され、測定には時間がかかるという問題がある。また、セルのバラツキを評価するため等において多数のセルについてセル形状を測定するときには、著しく多大の時間が必要となるため、グラビア版の検査作業は重大な生産阻害要因の1つとなっているという問題がある。
【0006】
本発明は上記の問題を解決するために成されたものである。その目的は、グラビア版の撮像画像において隣接するセルが接続しセルの内壁からの乱反射があっても、その乱反射の影響を受けずに正確にセル形状を自動測定することができるグラビア版セル形状測定装置および方法を提供することにある。そして、非熟練の普通の作業者でも正確な測定を短時間に済ませることができ、グラビア版の検査作業が生産阻害要因とはならないようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1に係るグラビア版セル形状測定装置は、グラビア版の表面に形成された複数個のセルを撮像し撮像画像を得る撮像手段と、前記撮像画像に対して前記表面の性質状態による光ノイズを減らすフィルター処理を行って補正画像を得る補正手段と、前記補正画像に対して階調変化の大きい部分を強調するロバーツ処理を行って強調画像を得る強調手段と、前記補正画像と前記強調画像とにおいて対応する画素の画素値を加算して加算画像を得る加算手段と、前記加算画像に基づいてセル形状を測定するセル形状測定手段とを備えるようにしたものである。
また本発明の請求項2に係るグラビア版セル形状測定方法は、グラビア版の表面に形成された複数個のセルを撮像し撮像画像を得る撮像過程と、前記撮像画像に対して前記表面の性質状態による光ノイズを減らすフィルター処理を行って補正画像を得る補正過程と、前記補正画像に対して階調変化の大きい部分を強調するロバーツ処理を行って強調画像を得る強調過程と、前記補正画像と前記強調画像とにおいて対応する画素の画素値を加算して加算画像を得る加算過程と、前記加算画像に基づいてセル形状を測定するセル形状測定過程とを備えるようにしたものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の請求項1に係るグラビア版セル形状測定装置によれば、撮像手段によりグラビア版の表面に形成された複数個のセルが撮像され撮像画像が得られ、補正手段により撮像画像に対して表面の性質状態による光ノイズを減らすフィルター処理が行われて補正画像が得られ、強調手段により補正画像に対して階調変化の大きい部分を強調するロバーツ処理が行われ強調画像が得られ、加算手段により補正画像と強調画像とにおいて対応する画素の画素値が加算されて加算画像が得られ、セル形状測定手段により加算画像に基づいてセル形状が測定される。すなわち、フィルター処理によってグラビア版の表面の傷等による光ノイズを除去することができ、ロバーツ処理により得られた強調画像を元画像(補正画像)に加算することにより、フィルター処理にも係わらず土手とセルとの境界を明瞭化することができる。したがって、グラビア版の撮像画像において隣接するセルが接続しセルの内壁からの乱反射があっても、その乱反射の影響を受けずに正確にセル形状を自動測定することができるグラビア版セル形状測定装置が提供される。
また本発明の請求項2に係るグラビア版セル形状測定方法によれば、撮像過程においてグラビア版の表面に形成された複数個のセルが撮像され撮像画像が得られ、補正過程において撮像画像に対して表面の性質状態による光ノイズを減らすフィルター処理が行われて補正画像が得られ、強調過程において補正画像に対して階調変化の大きい部分を強調するロバーツ処理が行われ強調画像が得られ、加算過程において補正画像と強調画像とにおいて対応する画素の画素値が加算されて加算画像が得られ、セル形状測定過程において加算画像に基づいてセル形状が測定される。すなわち、フィルター処理によってグラビア版の表面の傷等による光ノイズを除去することができ、ロバーツ処理により得られた強調画像を元画像(補正画像)に加算することにより、フィルター処理にも係わらず土手とセルとの境界を明瞭化することができる。したがって、グラビア版の撮像画像において隣接するセルが接続しセルの内壁からの乱反射があっても、その乱反射の影響を受けずに正確にセル形状を自動測定することができるグラビア版セル形状測定方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
次に、本発明の実施の形態について図を参照しながら説明する。本発明のセル形状測定装置における構成の一例を図1、図2に示す。図1、図2において、1は顕微鏡、2はカメラ、3は光源、31は光度調節部、32は光ファイバー、4はパーソナルコンピュータ、401は画像入出力手段、402はセル体積測定手段、403は画像処理プログラム、41はキーボード、42はマウス、43はディスプレイ、44はA/D変換器、5は移動装置、6は昇降ステージ、7は版胴回転台、8はグラビア版である。
【0010】
顕微鏡1はグラビア版8の版面に形成されたセルをカメラ2によって拡大撮影するための撮像光学系である。顕微鏡1は移動装置5における移動台51に固定支持されている。顕微鏡1を移動台51から外せる支持構造とし、顕微鏡1をポータブルで使用してもよい。顕微鏡1はその鏡筒部分を焦点合わせのため光軸方向に移動する焦点調節部11を有する。光軸方向への移動によりグラビア版8の版面から鏡筒部分までの距離を調節することができる。
【0011】
顕微鏡1の鏡筒部分には対物レンズとリレーレンズ(relay lens)が配置されている。対物レンズとリレーレンズを使用したときの総合倍率は計算式:(総合倍率)=(対物レンズの倍率)×(リレーレンズの倍率)により求めることができる。一般的には対物レンズとリレーレンズの両方に凸レンズが使用され、本発明においてもその構成を適用することができる。しかし本発明における好適な撮像光学系の構成は対物レンズに凸レンズを使用しリレーレンズに凹レンズを使用する。すなわち、対物レンズの倍率が所望倍率よりも高く、そのリレーレンズの倍率が1以下であるように構成する。この構成の撮像光学系を適用することにより高い解像性を得ることができる。一般的には、対物レンズの倍率が高いほど開口数(NA)は大きくなり、開口数(NA)が大きいほど高い解像性を得ることができる。
【0012】
カメラ2はCCD(charge coupled device),MOS(metal oxide semiconductor)等のイメージセンサ、その駆動回路、等が内蔵され、イメージセンサに結像した光像を電気信号に変換して出力する。リレーレンズは、ここでは光像をイメージセンサに結像する意味から結像レンズまたは接眼レンズと呼ぶこともできる。カメラ2はパーソナルコンピュータ4と接続されており、パーソナルコンピュータ4によって撮像に係るカメラ2の操作が行われる。また、パーソナルコンピュータ4によってカメラ2の撮像画像が読み込まれる。
【0013】
光源3はグラビア版8の版面におけるカメラ2の撮像領域を照明するための光源である。光源としては、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、LED(light emitting diode)等が使用される。光源3から放射された光線は光ファイバー32の一端に集められ、光ファイバー32を通して顕微鏡1に導かれる。そして、一般的には、同軸落射照明として撮像領域を照明する。通常の光源3は電力を供給した直後と一定時間経過後では経時的に光度が変化する。また、一定の電圧を印加して使用していても長期の使用により光度が変化する。そこで、光源3はその光度を調節するための光度調節部31を有する。
【0014】
光度調節部31はカメラ2による基準プレートの撮像画像における所定の画素が所定の画素値となるように光源3の光度を調節する。その光度の調節は光源3に供給する電力を調節することによって行われる。光度調節部31はパーソナルコンピュータ4と接続されており、光度調節部31が光度を調節するときにはパーソナルコンピュータ4によって光度調節部31が操作される。
【0015】
パーソナルコンピュータ4はカメラ2の撮像画像を取り込んで画像処理を行いセル形状を演算する。そのため、パーソナルコンピュータ4は画像入出力手段401、セル体積測定手段、画像処理プログラム等を有する。またパーソナルコンピュータ4には、キーボード41、マウス42、ディスプレイ43、A/D変換器(analog-to-digital converter
)44が付属している。
【0016】
カメラ2が出力する撮像信号(アナログ信号)はA/D変換器(analog-to-digital converter)44によってデジタル信号に変換される。パーソナルコンピュータ4の画像入出力手段401は、そのデジタル信号を入力して撮像画像としてパーソナルコンピュータ4の画像メモリに記憶する。また画像入出力手段401は、入力した撮像画像または画像メモリに記憶されている撮像画像をディスプレイ43に表示するためビデオメモリ(video memory)に記憶する。
【0017】
パーソナルコンピュータ4のセル体積測定手段402は撮像画像におけるセル面積、セル幅、等からセル体積を演算する処理を行う。撮像画像からセル形状のパラメータ(セル深度、セル幅(最大幅)、セル長(最大長)、セル面積、セル体積、等)を演算する処理については、特許文献3(特開平11−188831)、特許文献4(特開2000−65550)、等において公知であるからここでは詳細な説明を省略する。
パーソナルコンピュータ4の画像処理プログラム403は撮像画像に対する画像処理を行う(詳細を後述する)。たとえば、撮像画像におけるシェーディング補正、土手とセルとを区別し易くする補正、等の補正を行い補正画像を得る処理を行う。また、隣接するセルの接続部分を検出する処理を行う。また、セル領域を抽出しセル面積を導出する処理を行う。また、その接続部分が適正な接続部分(チャンネル)であるか不適正な接続部分(土手切れ)であるかを検出する処理を行う。また、適正なセルについてセル形状を現すパラメータを抽出する処理を行う。
【0018】
移動装置5は顕微鏡1を直線移動する装置である。図1に示すように、その直線移動の方向がグラビア版の軸方向と一致するように移動装置5が配置されている。したがってグラビア版8の軸方向における任意の位置で顕微鏡1を停止させ、その位置におけるグラビア版8の表面の撮像をカメラ2によって行うことができる。
【0019】
昇降ステージ6は移動装置5、すなわち顕微鏡1を上下方向に移動する装置である。図1に示すように、上方向とはグラビア版8の表面から遠退く方向であり、セル形状測定装置における顕微鏡1の待機位置がその方向に存在する。また下方向とはグラビア版8の表面に近付く方向であり、セル形状測定装置における顕微鏡1の測定位置がその方向に存在する。
【0020】
版胴回転台7は測定のためグラビア版8を載置するとともに載置したグラビア版8を回転するための台である。グラビア版8を回転することにより、グラビア版8の周方向にお
ける任意の位置を顕微鏡1の真下に停止させることができる。そして、その位置におけるグラビア版8の表面の撮像をカメラ2によって行うことができる。上述の移動装置5と版胴回転台7によりグラビア版8の版面における任意の位置の撮像を行うことができる。
なお版胴回転台7はここでは測定のためものであるが、グラビア彫刻装置において彫刻するグラビア版を載置するためのユニットであってもよい。
【0021】
以上、構成について説明した。次に、本発明のセル形状測定装置における動作について図3を参照して説明する。
まず、図3のステップS1(顕微鏡設置)において、作業者は昇降ステージ6を操作してセル形状測定装置における顕微鏡1を待機位置から測定位置に移す。測定位置に移すことでセル形状測定装置におけるカメラ2による撮像が行われる。カメラ2が出力する撮像信号はA/D変換器44によってデジタル信号に変換される。そのデジタル信号はパーソナルコンピュータ4の画像入力手段401によって入力が行われビデオメモリに撮像画像として記憶が行われる。その撮像画像はディスプレイ43において表示が行われる。ディスプレイ43には撮像画面とともにセル形状測定装置を操作するための操作画面がGUI(graphical user interface)表示されている。
【0022】
カメラ2による撮像は所定の時間間隔で繰返し行われ、表示される撮像画像もそれに合わせて更新が行われる。作業者は、そのディスプレイ43に表示される撮像画像で確認を行いながら移動装置5と版胴回転台7を操作し、グラビア版8の版面におけるテスト彫刻を行った部位が真下となるように顕微鏡1の位置決めを行う。このとき撮像画像には複数個の彫刻セルが同一画面に存在するようにする。そのため顕微鏡1は適正な倍率(所望の倍率)となっている。
なお、光源3の光度調節部31における光度の調節はあらかじめ済ませておく。また、シェーディング補正を行うための補正係数はあらかじめ補正係数メモリに記憶しておく。
【0023】
次に、ステップS2(ピント合わせ)において、作業者はディスプレイ43に表示される撮像画像で確認を行いながら顕微鏡1の焦点調節部11を調節して焦点調節を行い、撮像画像におけるピント合わせを行う。
次に、ステップS3(画像入力)において、作業者はキーボード41、マウス42等を操作し、ディスプレイ43の操作画面においてパーソナルコンピュータ4が形状測定を行うよう指示入力を行う。この指示入力を受けて、パーソナルコンピュータ4の画像入出力手段401はカメラ2による撮像画像をパーソナルコンピュータ4の画像メモリに記憶する。
【0024】
次に、ステップS4(画像前処理)において、パーソナルコンピュータ4の画像処理プログラム403は画像メモリに記憶されている撮像画像に対してシェーディング補正を行い、シェーディング補正済みの撮像画像を画像メモリに記憶する。また、シェーディング補正済みの撮像画像に対してメディアンフィルターを適用する等により、版面の傷のぼかし処理を行う。この処理により、シェーディング補正処理と版面の傷のぼかし処理を行った補正画像を得ることができる。グラビア版の表面における版面の傷を含む性質状態により、不適正な正反射する光ノイズが撮像画像には含まれている。対物レンズの開口数を大きくし解像度を高くするとその傾向が顕著となる。メディアンフィルターは低域フィルターと比較して、エッジ(土手とセルの境界)をぼかすことなくノイズを低減することができて好適である。
【0025】
さらに、パーソナルコンピュータ4の画像処理プログラム403は補正画像に対して階調変化の大きい部分を選択的に強調するロバーツ処理を行って強調画像を得る。なお、撮像画像がシェーディング補正処理、等の前処理を必要としない良質の画像であるときには、補正画像に対してではなくて、撮像画像に対して階調変化の大きい部分を強調するロバーツ処理を行って強調画像を得ることができる。
【0026】
ロバーツ処理は、元画像(撮像画像または補正画像)における2画素×2画素の領域で斜め方向の偏微分を用いてエッジを抽出する処理である。具体的には、たとえば、g(x,y)=|f(x,y)−f(x+1,y+1)|+|f(x+1,y)−f(x,y+1)|という数式によって表される演算を行う処理である。ただし、f(x,y)は整数の画素の座標(x,y)を持つ入力画像(元画像:撮像画像または補正画像)である。また、g(x,y)は整数の画素の座標(x,y)を持つ出力画像(強調画像)である。これにより、画像の濃度が急激に変化する付近では大きな値となり、濃度がほぼ一定の位置では小さな値となる。
【0027】
さらに、パーソナルコンピュータ4の画像処理プログラム403は元画像(撮像画像または補正画像)と強調画像とにおいて対応する画素の画素値を加算して加算画像を得る。版面の傷、等の光ノイズを低減する処理は、版面の土手とセルとの境界をぼけさせる作用を有する。加算画像においては光ノイズを低減させたまま版面の土手とセルとの境界が明確化する。この処理の過程における画像の一例を図4に示す。図4において、図4(A)は元画像、図4(B)はロバーツ処理画像すなわち強調画像、図4(C)は合成画像すなわち加算画像である。
【0028】
次に、ステップS5(画像2値化)において、画像処理プログラム403は補正画像を2値化し2値化画像を得る。2値化の閾値を決定する方法としては多変量解析における判別分析法を適用すると好適な2値化画像を得ることができる。グラビア版面の性質状態により反射光の一部はノイズ成分となって孤立点、孤立穴、等が存在するが、この2値化画像においては土手の部分とセルの部分とが異なった画素値(0または1)によって表現される。
【0029】
次に、ステップS6(セル輪郭抽出)において、画像処理プログラム403は2値化画像に対してモフォロジー(Morphlogy)処理を行い孤立点、孤立穴を除去する。モフォロジー処理は、ダイレーション(dilation)、エロージョン(erosion)、オープニング(opening)、クロージング(closing)等の基本的な演算を含む処理により構成され、膨張収縮処理はその一例である。2値化画像における孤立点、孤立穴、等のノイズ成分はこのモフォロジー処理によって修正され、グラビア版における土手の部分とセルの部分を適正に区分することができる。すなわち、十分な精度でセル形状測定を行うことが可能な画像としての輪郭画像が得られる。図4(D)は輪郭画像である。
【0030】
次に、ステップS7(判定1)において、画像処理プログラム403はチャンネルの有無を判定する処理を行う。チャンネルの有無は次の過程によって判定される。まず、輪郭画像においてセル幅を検出する処理を彫刻方向(印刷方向)に進めながら順次行いセル幅が最小となる部分を検出する。次に、その部分においてセルが開いているか閉じているか、すなわちチャンネル(セルを延長した溝)が有るか無しかを検出する。セル幅の最小値がゼロでなければチャンネルが有ることになる。これら2つの過程によりチャンネルの有無を判定する。チャンネルがあると判定されたときにはステップS8に進み、チャンネルがないと判定されたときにはステップS12に進む。なお、図6はチャンネルが有るセルを示し、図5(A)はその拡大図である。
【0031】
次に、ステップS8(チャンネルの分割処理)において、画像処理プログラム403はチャンネルの部分、すなわちセル幅が最小となる部分を境界としてチャンネルを分割する処理を行う。この分割により、処理対象画像(撮像画像、2値化画像、輪郭画像、等)において、セルは輪郭に囲まれた閉じた領域、すなわち独立領域を有することとなる。撮像画像には複数のセルが存在するから、この分割により独立領域を有する複数のセルが処理対象画像に生成されることとなる。各々のセルにはそのセルを特定する符号が付され、処理対象のセルと他のセルとを区別することができる。なお、図5(B)はチャンネルの分割処理により独立領域となった複数のセルの各々を特定する番号を示し、図5(C)それらのセルの独立領域を示す図である。
次に、ステップS9(画像の四辺にかかるセルの削除)において、画像処理プログラム403は複数のセルの内で処理対象画像の外周を形成する四辺にかかるセルを削除する。また、画像処理プログラム403は削除されなかったセルの1つを選択し測定対象のセルとする。
【0032】
次に、ステップS10(セル形状測定)において、画像処理プログラム403はセル形状の測定を行う。たとえば、前述の独立領域だけを残した2値化画像基づいて、セル形状のパラメータであるセル深度、セル幅(最大幅)、セル長(最大長)、セル面積、セル体積等を測定する。その内のセル深度とセル体積は三次元の形状であるから二次元の画像だけからは測定することが原理的にできないが、前述のセルを形成するときの条件を考慮することにより三次元の形状を演算することができ。セル形状測定を終了したセルについては、処理対象から削除する。削除後において、そのセルは測定対象とはならない。
【0033】
そして、処理対象画像における測定対象のセルの内から未測定のセルについてセル形状測定を行うときにはステップS10を繰り返す。また、グラビア版の他の部分に形成されたセル形状を測定する等のためセル形状の測定を続けるときには、ステップS1に戻って前述した以降のステップを繰り返す。セル形状の測定を終了するときには、画像処理プログラム403におけるこの処理のループから抜け出す。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明のセル形状測定装置における構成の一例を示す図(全体図)である。
【図2】本発明のセル形状測定装置における構成の一例を示す図(ブロック図)である。
【図3】本発明のセル形状測定装置における動作の過程を示すフロー図である。
【図4】本発明のセル形状測定装置における画像処理の過程における画像の一例を示す図である。
【図5】チャンネルが有るセルの一例(A)と、独立領域を有する複数のセルの(B)、(C)を示す図である。
【図6】印刷方向に配列するセルとセルの間を接続するためのチャンネルの一例を示す図である。
【図7】乱反射の影響を受けて自動ではセルの正確な輪郭を抽出できない画像の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0035】
1 顕微鏡
2 カメラ
3 光源
31 調節器
32 光ファイバー
4 パーソナルコンピュータ
401 画像入出力手段
402 セル体積測定手段
403 画像処理プログラム
41 キーボード
42 マウス
43 ディスプレイ
44 A/D変換器
5 移動装置
6 昇降ステージ
7 版胴回転台
8 グラビア版

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グラビア版の表面に形成された複数個のセルを撮像し撮像画像を得る撮像手段と、
前記撮像画像に対して前記表面の性質状態による光ノイズを減らすフィルター処理を行って補正画像を得る補正手段と、
前記補正画像に対して階調変化の大きい部分を強調するロバーツ処理を行って強調画像を得る強調手段と、
前記補正画像と前記強調画像とにおいて対応する画素の画素値を加算して加算画像を得る加算手段と、
前記加算画像に基づいてセル形状を測定するセル形状測定手段と、
を備えることを特徴とするグラビア版セル形状測定装置。
【請求項2】
グラビア版の表面に形成された複数個のセルを撮像し撮像画像を得る撮像過程と、
前記撮像画像に対して前記表面の性質状態による光ノイズを減らすフィルター処理を行って補正画像を得る補正過程と、
前記補正画像に対して階調変化の大きい部分を強調するロバーツ処理を行って強調画像を得る強調過程と、
前記補正画像と前記強調画像とにおいて対応する画素の画素値を加算して加算画像を得る加算過程と、
前記加算画像に基づいてセル形状を測定するセル形状測定過程と、
を備えることを特徴とするグラビア版セル形状測定方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−132786(P2007−132786A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−325869(P2005−325869)
【出願日】平成17年11月10日(2005.11.10)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】