説明

ゴルフ場における距離及び方向の測定表示装置

【課題】 ゴルフ場における携帯式子機のディスプレイに、グリーンまでの距離のみならずグリーンの方向をも表示して各プレーヤーに容易に知らせることができるようにする。
【解決手段】 各ゴルフプレーヤー3が携行することができる携帯測定表示装置に、衛星測位システムを利用して携帯測定表示装置からグリーン1までの距離と真北Nに対するグリーン1の方位θgとを求める手段と、磁北に対する携帯測定表示装置の方位を求める手段と、真北と磁北との偏角θrにもとづき、磁北に対する携帯測定表示装置の方位と真北に対するグリーン1の方位θgとから、携帯測定表示装置に対するグリーン1の方向を求める手段と、このグリーンの方向及び前記グリーンまでの距離を表示する手段とを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はゴルフ場における距離及び方向の測定表示装置に関し、特に、ゴルフ場で使用されるカートに、衛星測位システム(以下「GPS」と称することがある)からの情報を表示するとともに、ゴルフプレーヤーが携行する子機にGPSからの情報を表示するようにした、ゴルフ場における距離及び方向の測定表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の測定表示装置に関し、ゴルフ場においてはグリーンの位置が既知であるため、各カートからグリーンまでの正確な距離を求めて、カートのディスプレイに距離を表示することができ、また各ゴルフプレーヤーの位置からグリーンまでの正確な距離を求めて携帯式の子機のディスプレイに距離を表示することができる。
【特許文献1】特開2001−27542号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、正確な距離表示のみでは、霧が発生したときや、直接グリーンを見通せないとき、グリーンがどの方向にあるのか判らない。
そこで、本発明は、この問題点を解決して、ゴルフ場におけるカートのディスプレイや携帯式子機のディスプレイに、グリーンまでの距離のみならずグリーンの方向をも表示して各プレーヤーに容易に知らせることができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的を達成するため本発明のゴルフ場における距離及び方向の測定表示装置は、各ゴルフプレーヤーが携行することができる携帯測定表示装置に、衛星測位システムを利用して前記携帯測定表示装置からグリーンまでの距離と真北に対するグリーンの方位とを求める手段と、磁北に対する前記携帯測定表示装置の方位を求める手段と、真北と磁北との偏角にもとづき、前記磁北に対する携帯測定表示装置の方位と真北に対するグリーンの方位とから、前記携帯測定表示装置に対するグリーンの方向を求める手段と、このグリーンの方向及び前記グリーンまでの距離を表示する手段とを設けたものである。
【0005】
本発明によれば、上記において、真北と磁北との偏角の値は、既知の値または計算により求めた値であることが好適である。
あるいは、本発明によれば、上記において、真北と磁北との偏角の値は、偏角測定装置によって得られた値であり、この偏角測定装置は、磁北に対する偏角測定装置の方位を求める手段と、衛星測位システムのための一対のアンテナを有して真北に対する前記偏角測定装置の方位を求める手段と、前記磁北に対する偏角測定装置の方位と、前記真北に対する偏角測定装置の方位とから、真北と磁北との偏角を求めるものであることが好適である。
【0006】
本発明によれば、上記において、携帯測定表示装置に対するグリーンの方向が定められた時に、そのことを表示するための、音で知らせる、表示灯を点灯させる、LCD等の表示手段で方位角をゼロ度表示するなどの、表示手段を有することが好適である。
【0007】
本発明のゴルフ場における距離及び方向の測定表示装置は、ゴルフ場で使用されるカートに搭載された衛星測位装置に、衛星測位システムを利用してカートからグリーンまでの距離と真北に対するグリーンの方位とを求める手段と、磁北に対する前記衛星測位装置の方位を求める手段と、真北と磁北との偏角にもとづき、前記磁北に対する衛星測位装置の方位と真北に対するグリーンの方位とから、前記カートに対するグリーンの方向を求める手段と、このカートに対するグリーンの方向及び前記グリーンまでの距離を表示する手段とを設けたものである。
【発明の効果】
【0008】
したがって本発明によると、携帯測定表示装置に対するグリーンの方向や、カートに対するグリーンの方向をゴルフプレーヤーに知らせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1において、1はゴルフ場のグリーン、2はカート、3はプレーヤーである。グリーン1までの距離などを知るためには、GPSにより求められる経度および緯度によって表された座標系を、距離についての座標系に変換しなければならない。この変換は、メルカトル変換と呼ばれる公知の手法によって行うことができる。これによって求められたメルカトル座標系に、図1に示すように、グリーン1の位置座標(Eg,Ng)、カート2の位置座標(Ec,Nc)、プレーヤーの位置座標(Ep,Np)が表現される。Nは真北の方向、Eは真東の方向である。
【0010】
図1に示すように、カート2からグリーン1までの南北方向の距離をNL1、その東西方向の距離をEL1とする。またプレーヤー3からグリーン1までの南北方向の距離をNL2、その東西方向の距離をEL2とする。すると、カート2からグリーン1までの距離L1は、
L1=√(EL1×EL1 + NL1×NL1
にて求められる。同様に、プレーヤー3からグリーン1までの距離L2は、
L2=√(EL2×EL2 + NL2×NL2
にて求められる。
【0011】
ここで、カート2はGPSの親機を搭載しており、プレーヤー3は、携帯測定表示装置としての、GPSの子機を携行している。GPSの親機は、上式にもとづいて、この親機すなわちカート2からグリーン1までの距離を演算可能である。GPSの子機は、この子機から親機までの距離を演算可能であるとともに、親機からグリーン1までの距離と、子機から親機までの距離とにもとづいて、子機からグリーン1までの距離を演算可能である。このような構成であることにより、プレーヤー3が携行可能な簡単な構成の子機であっても、この子機すなわちプレーヤー3からグリーン1までの距離を正確に演算可能である。このようなシステムは、上記の特許文献1において詳細に説明されている。
【0012】
図2は子機の構成を示す。ここで5はCPU、6はGPSシステム、7はカート2の親機との間での無線伝送手段、8は演算結果の表示手段であり、これらによって、上述した子機からグリーン1までの距離を演算可能である。
【0013】
本発明においては、子機は、方位センサー9を備えている。この方位センサー9は、図1に示した磁北の方向を検知可能である。図1において磁北の方向と真北の方向との間には偏りがあり、θrはその偏角である。
【0014】
子機のGPSシステムを用いると、その子機についての真北からの方位角、すなわち、プレーヤー3からグリーン1までの方向と真北への方向との成す角θgを求めることができる。しかし、ゴルフ場ではどの方向が真北かはわからず、角θgが求まっても、基準となる真北の方角がわからないために、結局GPSシステムだけではプレーヤー3からグリーン1までの方向は求めることができない。
【0015】
そこで、上記の方位センサー9を用いて磁北の方向を検知し、偏角θrの値から真北の方向を求めることで、プレーヤー3からグリーン1までの方向を求めることが可能となる。磁北と真北との偏角θrの値は、たとえばそのゴルフ場の場所すなわちそのゴルフ場の緯度および経度から計算式によって求めることができ、場所によって既知の場合もあるため、これをデータとして子機のメモリーに保存しておけば、使用時にそのデータを読み出して利用することができる。
【0016】
これによって、子機によりグリーン1の方向を求めることができるため、たとえばプレーヤー3が子機をグリーン1の方に向けたときに図2の表示手段8によってその旨を表示することができる。たとえば、音で知らせる、表示灯を点灯させる、LCD等の表示手段で方位角がゼロ度であることを知らせるなどの手法によって、表示することができる。
【0017】
また、GPSシステムを用いれば、たとえばグリーン1の方向をゼロとして、その方向から子機を左右に振ったときにその振れの角度を表示することもできる。これにより、プレーヤー3が打球を行おうとする方向とグリーン1の方向との差を示すことができる。
【0018】
そのゴルフ場における磁北と真北との偏角θrの値は、上記のように計算によって求めたり既知の値を利用したりすることができるほかに、そのゴルフ場において実際に測定することも可能である。以下、そのための装置および方法について説明する。
【0019】
図3において、Nは真北の方向、Eは真東の方向である。11は方位測定装置であり、この方位測定装置11が置かれた位置における磁北と真北との偏角θrを測定可能である。すなわち、方位測定装置11は筐体などの長尺の構造物12を有し、この構造物12には、一対のGPSアンテナ13A、13Bが、互いに距離をおいた状態で設けられている。構造物12には、磁北の方向を検知可能な方位計14が設けられている。
【0020】
ゴルフ場における磁北と真北との偏角θrを求める際には、そのゴルフ場に方位測定装置11を設置する。すると、方位計14によって、方位測定装置11の磁北からの方位角θmを求めることができる。また、一対のGPSアンテナ13A、13Bを用いることによって、方位測定装置11の真北からの方位角θgを求めることができる。以上より、磁北と真北との偏角θrは、
θr=θm−θg
によって求めることができる。
【0021】
偏角θrを求めたら、その値をたとえば子機のメモリーに格納して実際の使用に供する。方位測定装置11は、使用後に撤去する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】メルカトル変換によって求められるメルカトル座標系を利用してカートからグリーンまでの距離などを求める手法を説明するための図である。
【図2】本発明のゴルフ場における距離及び方向の測定表示装置を構成する子機の概略構造を示す図である。
【図3】ゴルフ場において磁北と真北との偏角を求める手法を説明するための図である。
【符号の説明】
【0023】
1 グリーン
3 プレーヤー
θr 磁北と真北との偏角
θg 真北からの方位角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各ゴルフプレーヤーが携行することができる携帯測定表示装置に、衛星測位システムを利用して前記携帯測定表示装置からグリーンまでの距離と真北に対するグリーンの方位とを求める手段と、磁北に対する前記携帯測定表示装置の方位を求める手段と、真北と磁北との偏角にもとづき、前記磁北に対する携帯測定表示装置の方位と真北に対するグリーンの方位とから、前記携帯測定表示装置に対するグリーンの方向を求める手段と、このグリーンの方向及び前記グリーンまでの距離を表示する手段とを設けたことを特徴とするゴルフ場における距離及び方向の測定表示装置。
【請求項2】
真北と磁北との偏角の値は、既知の値または計算により求めた値であることを特徴とする請求項1記載のゴルフ場における距離及び方向の測定表示装置。
【請求項3】
真北と磁北との偏角の値は、偏角測定装置によって得られた値であり、この偏角測定装置は、磁北に対する偏角測定装置の方位を求める手段と、衛星測位システムのための一対のアンテナを有して真北に対する前記偏角測定装置の方位を求める手段と、前記磁北に対する偏角測定装置の方位と、前記真北に対する偏角測定装置の方位とから、真北と磁北との偏角を求めるものであることを特徴とする請求項1記載のゴルフ場における距離及び方向の測定表示装置。
【請求項4】
携帯測定表示装置に対するグリーンの方向が定められた時に、そのことを表示するための、音で知らせる、表示灯を点灯させる、LCD等の表示手段で方位角をゼロ度表示するなどの、表示手段を有することを特徴とする請求項1から3までのいずれか1項記載のゴルフ場における距離及び方向の測定表示装置。
【請求項5】
ゴルフ場で使用されるカートに搭載された衛星測位装置に、衛星測位システムを利用してカートからグリーンまでの距離と真北に対するグリーンの方位とを求める手段と、磁北に対する前記衛星測位装置の方位を求める手段と、真北と磁北との偏角にもとづき、前記磁北に対する衛星測位装置の方位と真北に対するグリーンの方位とから、前記カートに対するグリーンの方向を求める手段と、このカートに対するグリーンの方向及び前記グリーンまでの距離を表示する手段とを設けたことを特徴とするゴルフ場における距離及び方向の測定表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−58290(P2006−58290A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−213556(P2005−213556)
【出願日】平成17年7月25日(2005.7.25)
【出願人】(504282946)株式会社ケル・システム (1)
【Fターム(参考)】