サーボ制御装置
【課題】機械特性に起因する振動を低減すると共に、往復時の軌跡を一致させるサーボ制御装置を得る。
【解決手段】微分器8は、位置指令信号を微分することにより速度フィードフォワード信号を演算する。演算器10は、微分器8による演算値を微分すると共に駆動対象機械の総イナーシャを乗算する。振動抑制フィルタ41は、演算器10による演算値から機械2の共振周波数成分を減衰し、反共振周波数成分を増幅することによりトルクフィードフォワード信号を演算する。フィードバック補償部5は、位置指令信号と速度フィードフォワード信号とトルクフィードフォワード信号とに基づいて機械2を駆動する。
【解決手段】微分器8は、位置指令信号を微分することにより速度フィードフォワード信号を演算する。演算器10は、微分器8による演算値を微分すると共に駆動対象機械の総イナーシャを乗算する。振動抑制フィルタ41は、演算器10による演算値から機械2の共振周波数成分を減衰し、反共振周波数成分を増幅することによりトルクフィードフォワード信号を演算する。フィードバック補償部5は、位置指令信号と速度フィードフォワード信号とトルクフィードフォワード信号とに基づいて機械2を駆動する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、工作機械の送り軸や産業ロボットのアームのような負荷機械をモータによって駆動するサーボ制御装置に関するもので、特に、2つ以上の軸を有する機械において軌跡制御を行うサーボ制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のサーボ制御装置としては、位置や速度等の被制御量の指令値に対する応答遅れを補償するためにフィードフォワード制御が行われる。例えば、位置指令を微分し位置のフィードフォワード制御量を求め、位置ループ制御で得られた制御量にフィードフォワード制御量を加算し速度指令とし、位置のフィードフォワード制御量を微分して得られる速度のフィードフォワード制御量を、速度ループ制御によって得られる値に加算して電流指令としてサーボ制御を行うことにより、位置制御の応答性を高めているものがある(例えば下記特許文献1の図1)。
また、トルク伝達機構、負荷機械および電動機から構成された機械系を2慣性共振系として近似して構成した機械系モデルに対する模擬制御回路を構成し、模擬制御回路の模擬電動機位置、速度およびトルクをフィードフォワード制御量として位置ループ制御および速度ループ制御によって得られる値に加算することにより、制御対象の剛性が低く、共振特性を有する場合でも振動を励起せずに位置制御の応答性を高めているものがある(例えば下記特許文献2の図25)。
【0003】
【特許文献1】特許第2762364号公報
【特許文献2】特開2000−92882号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のサーボ制御装置は以上のように構成されているので、特許文献1記載のサーボ制御装置にあっては、制御対象の剛性が高く、剛体と見なすことができる場合にあっては十分な性能を発揮できるが、制御対象の剛性が低く、共振特性を持つ場合に本方式を実施して応答性を高くしようとすると、機械共振により被制御量である位置や速度に振動が生じ、図13に示すように位置決め精度や軌跡精度が低下するという課題があった。
また、特許文献2記載のサーボ制御装置にあっては、制御対象が2慣性共振系と見なすことができる場合には制御対象の位置は常に模擬制御回路の位置に完全に追従し、振動を励起せずに応答性を高めることができるが、模擬制御回路はフィードバック制御系を構成しており、インパルス応答が対称な形にならない。よって、対称な軌跡を指令軌跡として与えても、制御対象の応答軌跡は対称とならない。したがって、図14に示すように同じ形状の指令軌跡を進行方向を変えて往復させた場合、往復の応答軌跡の間には誤差が生じてしまう。このことは、金型を往復加工する際には加工面に傷が生じる原因となるなどの課題があった。
【0005】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、機械特性に起因する振動を低減すると共に、往復時の軌跡を一致させるサーボ制御装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係るサーボ制御装置は、位置指令信号を微分することにより速度のフィードフォワード信号を演算する微分器と、微分器による演算値を微分すると共に駆動対象機械の総イナーシャを乗算する演算器と、演算器による演算値から駆動対象機械の共振周波数成分を減衰し、反共振周波数成分を増幅することによりトルクのフィードフォワード信号を演算する振動抑制フィルタとを備えたものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、振動抑制フィルタにおいて、演算器による演算値から機械の共振周波数成分を減衰し、反共振周波数成分を増幅して、トルクのフィードフォワード信号を演算することにより、簡単な構成で高い振動抑制効果を得ることができる。特に、機械のモータとモータ設置台との間の剛性が低いことが原因で振動が起こる場合において、機械の振動を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1によるサーボ制御装置を示すブロック図であり、図において、サーボ制御装置1は、位置指令信号に応じて機械(駆動対象機械)2を駆動制御するものである。
そのサーボ制御装置1において、FIR(Finite Impulse Response)フィルタ部3は、位置指令信号を補正し、機械特性補償部4は、補正された位置指令信号から、機械2の特性に対応した所定の周波数成分を減衰して、位置、速度およびトルクの各フィードフォワード信号を演算し、フィードバック補償部5は、演算された位置、速度およびトルクの各フィードフォワード信号に応じて機械2を駆動するものである。
また、FIRフィルタ部3は、FIRフィルタ6から構成されている。
【0009】
さらに、機械特性補償部4において、位置指令演算器7は、位置指令信号から機械2の反共振周波数成分を減衰して、位置のフィードフォワード信号を演算し、微分器8は、位置指令信号を微分し、速度指令演算器9は、微分器8による演算値から機械2の反共振周波数成分を減衰して、速度のフィードフォワード信号を演算し、演算器10は、微分器8による演算値を微分すると共に機械2の総イナーシャを乗算し、トルク指令演算器11は、演算器10による演算値から機械2の共振周波数成分を減衰して、トルクのフィードフォワード信号を演算するものである。
【0010】
さらに、フィードバック補償部5において、減算器12は、位置のフィードフォワード信号からモータ位置信号を減算し位置制御器13に出力し、位置制御器13は、速度制御信号を求め、加減算器14は、速度のフィードフォワード信号と速度制御信号とを加算すると共にモータ速度信号を減算し速度制御器15に出力し、速度制御器15は、トルク制御信号を求め、加算器16は、トルクのフィードフォワード信号とトルク制御信号とを加算し、機械2にモータトルク指令信号として出力するものである。
機械2は、モータトルク指令信号に応じて負荷18を駆動するモータ17から構成されている。
【0011】
次に動作について説明する。
図1において、位置指令信号はFIRフィルタ6によって平滑化され、機械特性補償部4に出力される。ここで、FIRフィルタ6は、時定数Tfの移動平均フィルタを2個以上直列に結合して構成される。ここで、移動平均フィルタの時定数とは、移動平均フィルタのタップ数にサンプリング周期を乗じた値を指す。さらに、時定数Tfは、応答軌跡が要求軌跡精度を満たすように、要求軌跡精度パラメータから所定の演算により算出される。要求軌跡精度パラメータは、コーナ通過時のだれ量(応答軌跡がコーナ頂点に最も近付いた時のコーナ頂点までの距離)や、円弧内回り量(応答軌跡の半径の指令半径に対する減少量)等がある。
【0012】
機械特性補償部4では、まず、機械特性補償部4の入力信号xr1が位置指令演算器7に入力されて、位置のフィードフォワード信号xaが演算される。位置指令演算器7は、入力信号xr1中の機械2の反共振周波数ωzの成分を減衰して出力する演算器であり、入力信号xr1と出力信号xaとの間の関係は次の式(1)で表される。なお、sはラプラス演算子である。
【数1】
【0013】
また、機械特性補償部4の入力信号xr1は、微分器8によって微分された後、速度指令演算器9に入力されて、速度のフィードフォワード信号vaが演算される。速度指令演算器9は、入力信号vr1中の機械2の反共振周波数ωzの成分を減衰して出力する演算器であり、入力信号vr1と出力信号vaとの間の関係は次の式(2)で表される。
【数2】
【0014】
さらに、微分器8の出力信号は演算器10によって微分されて機械2の総イナーシャJを乗算された後、トルク指令演算器11に入力されて、トルクのフィードフォワード信号τaが演算される。ここで言う総イナーシャとは、モータイナーシャと負荷イナーシャとの合計イナーシャである。トルク指令演算器11は、入力信号τr1中の機械2の共振周波数ωpの成分を減衰して出力する演算器であり、入力信号τr1と出力信号τaとの間の関係は次の式(3)で表される。
【数3】
【0015】
次に、位置のフィードフォワード信号xa、速度のフィードフォワード信号va、トルクのフィードフォワード信号τaは、フィードバック補償部5に入力される。フィードバック補償部5では、減算器12において、位置のフィードフォワード信号xaから機械2より出力されるモータ位置信号xmを減じて位置制御器13に出力し、位置制御器13では速度制御信号vcを求める。なお、位置制御器13は、フィードバック制御系が安定となるものであればどのような構成でも良いが、通常は比例制御器等が用いられる。また、加減算器14において、速度のフィードフォワード信号vaと速度制御信号vcとを加算した値から、機械2より出力されるモータ速度信号vmを減じて速度制御器15に出力し、速度制御器15ではトルク制御信号τcを求める。なお、速度制御器15は、フィードバック制御系が安定になるものであればどのような構成でも良いが、通常は比例、積分制御器等が用いられる。さらに、加算器16において、トルクのフィードフォワード信号τaとトルク制御信号τcとを加算した値がモータトルク指令信号τmとして機械2に出力されてモータ17が駆動される。機械2はモータ設置台の上に設置されたモータ17と負荷18がトルク伝達機構で結合されており、モータ17に取り付けられた回転検出器によってモータ位置信号xmおよびモータ速度信号vmが出力される。ここで、モータ17が発生するトルクは、モータトルク指令信号τmに十分速く追従するものである。
【0016】
このような構成によれば、機械2の振動特性に応じて、機械2の負荷位置が機械特性補償部4の入力信号xr1に完全に追従するように適切に演算された位置、速度およびトルクのフィードフォワード信号がフィードバック補償部5に出力されるため、負荷位置xlは機械特性補償部4の入力信号xr1に完全に追従する。このことを式で表現すると次のようになる。機械2が2慣性共振系で近似できる場合、モータトルク指令信号τmとモータ位置xmの間の関係は次の式(4)のようになる。
【数4】
また、モータ位置xmと負荷位置xlの間の関係は次の式(5)のようになる。
【数5】
また、モータ速度vmとモータ位置xmの間の関係は、次の式(6)のようになる。
vm(s)=s・xm(s) (6)
【0017】
さらに、位置制御器13および速度制御器15の伝達関数をそれぞれCp(s)およびCv(s)とすると、フィードバック補償部5の入出力関係は、次の式(7)で表される。
τm(s)=Cv(s)(Cp(s)(xa(s)−xm(s))
+va(s)−vm(s))+τa(s) (7)
式(1)から式(5)、式(6)、式(7)の各関係式が成り立つことを考慮して、この実施の形態1における機械特性補償部4の入力信号xr1と機械2の負荷位置xlの間の関係を求めると、xl=xr1となる。すなわち、負荷位置xlは機械特性補償部4の入力信号xr1に完全に追従する。したがって、指令位置から負荷位置までの応答特性は、FIRフィルタ6の応答特性と等しくなる。
【0018】
図2は対称なインパルス応答を示す特性図であり、FIRフィルタ6のインパルス応答がこの図2に示すように対称な形に近ければ、公知のように入力が対称であれば出力も対称になるため、対称な指令軌跡に対する応答軌跡は対称となり、同じ形状の軌跡を往復させた時の往復の応答軌跡がほぼ同じ形となる。さらに、FIRフィルタ6のインパルス応答が完全に対称な形であれば、すなわち直線位相FIRフィルタであれば、対称な指令軌跡に対する応答軌跡は完全に対称となり、同じ形状の軌跡を往復させた時の往復の応答軌跡は一致する。また、トルクのフィードフォワード信号τr1は機械特性補償部4の入力信号xr1を最大で4階微分した成分を含み、機械特性補償部4の入力信号xr1が十分に平滑化されていない場合には、トルクのフィードフォワード信号τr1がインパルス状の非常に大きな値となって機械2に悪影響を与えることが考えられるが、FIRフィルタ6の構成を、移動平均フィルタの2個の直列結合としたことで、位置指令信号xr1が、位置制御で良く用いられる加速度ステップ指令であれば、機械特性補償部4の入力信号xr1を4階微分してもインパルス状の信号にならず、トルクのフィードフォワード信号τr1がインパルス状の非常に大きな成分を含むことが回避される。また、このFIRフィルタ6のインパルス応答は対称な形であることから、対称な指令軌跡に対する応答軌跡は完全に対称となり、同じ形状の軌跡を往復させた時の往復の応答軌跡は一致する。
【0019】
なお、FIRフィルタ6は直線位相FIRフィルタのように直線位相特性を有するものが好ましいが、直線位相特性を有しない一般のFIRフィルタを用いても、出力が過去の有限時間の履歴から定まるため、FIRフィルタ以外のフィルタ、すなわちIIR(Infinite Impulse Response)フィルタを用いる場合よりも対称な応答軌跡を得やすいという利点がある。なお、FIRフィルタについては、例えばF.R.コナー著 フィルタ回路入門(森北出版)等に詳細な解説がある。
【0020】
次に、この実施の形態1による効果を数値シミュレーションによって示す。
図3はこの発明の実施の形態1によるサーボ制御装置を示す全体構成図であり、図において、x軸用、y軸用サーボ制御装置1a,1bにより、2軸の自由度を持つ機械2をx軸用、y軸用モータ17a,17bを用いて駆動するものである。
図4はこの発明の実施の形態1によるサーボ制御装置の指令軌跡と応答軌跡とを示す特性図である。指令軌跡は角度90度のコーナーの形状であり、応答軌跡はこの指令軌跡の進行方向を、進行方向Aおよび進行方向Bとした場合、すなわち同じ形状の軌跡を往復させた場合について示している。機械2の共振周波数ωpは300rad/s、反共振周波数ωzは200rad/sとしている。
図4に示した例では、応答軌跡は従来における特許文献1に比較して振動が抑制されており、特許文献2に比較して往復の応答軌跡の差が低減されていることがわかる。以上により、金型等を往復加工させる場合でも、傷のない加工面が得られる。
【0021】
以上のように、この実施の形態1によれば、機械特性補償部4において、機械2を2慣性共振系と見なせ、機械2の粘性摩擦による減衰特性が無視できる場合に、機械2の特性値(共振周波数、反共振周波数、総イナーシャ)を用いて位置、速度およびトルクのフィードフォワード信号を求めることにより、機械2の特性に起因する振動を低減することができる。
また、機械特性補償部4により得られるフィードフォワード信号をフィードバック補償部5に出力することにより、機械2の位置を機械特性補償部4の入力、すなわちFIRフィルタ部3の出力に完全に追従させることができる。
さらに、FIRフィルタ部3により、軌跡を容易に対称な形にして、往復時の軌跡が一致させることができるため、往復加工を行う場合でも段差のない加工面を得ることができる。
さらに、FIRフィルタ部3を2段以上の移動平均フィルタとし、移動平均フィルタの時定数を要求軌跡精度に応じて設定することにより、軌跡の対称性を保ち、フィードバック補償部5に入力される信号が大きなインパルス状の信号となって機械2に大きなショックを与えることを回避すると共に、応答軌跡の指令軌跡からの誤差を要求軌跡精度以内とすることができる。
【0022】
実施の形態2.
図5はこの発明の実施の形態2によるサーボ制御装置を示すブロック図であり、図において、1次遅れフィルタ21は、機械特性補償部4に設けられ、機械2の粘性摩擦による減衰特性の影響を低減するように、時定数が機械2の減衰定数、反共振周波数および負荷イナーシャに応じて設定されるものであり、位置指令信号を補正するものである。
また、位置指令演算器22は、1次遅れフィルタ21により補正された位置指令信号から、機械2の粘性摩擦による減衰特性を考慮した機械2の反共振周波数成分を減衰して、位置のフィードフォワード信号を演算するものであり、速度指令演算器23は、微分器8による演算値から、機械2の粘性摩擦による減衰特性を考慮した機械2の反共振周波数成分を減衰して、速度のフィードフォワード信号を演算するものであり、トルク指令演算器24は、演算器10による演算値から機械2の粘性摩擦による減衰特性を考慮した機械2の共振周波数成分を減衰して、トルクのフィードフォワード信号を演算するものである。
その他の構成については、図1と同等である。
【0023】
次に動作について説明する。
図5において、上記実施の形態1と相違する点は、機械特性補償部4の入力信号xr1を1次遅れフィルタ21で補正してから位置指令演算器22および微分器8に出力する点と、位置指令演算器22、速度指令演算器23およびトルク指令演算器24において、機械2の減衰特性を考慮した構成とした点である。
機械2の粘性摩擦による減衰特性が無視できない場合、上記実施の形態1に示した構成では、この特性に起因して、機械特性補償部4の入力信号xr1と負荷位置xlとの間に位相のずれが生じ、負荷位置xlを機械特性補償部4の入力信号xr1に正確に追従させることができなくなる場合がある。
【0024】
そこで、1次遅れフィルタ21では、機械2の粘性摩擦による減衰特性に起因する機械特性補償部4の入力信号xr1と負荷位置xlとの間の位相のずれが解消されるように時定数を設置し、機械特性補償部4の入力信号xr1を補正するものである。1次遅れフィルタ21の入力信号xr1と出力信号xr2との間の関係は次の式(8)で表される。
【数6】
ここで、ζzは機械の減衰定数c、反共振周波数ωz、負荷イナーシャJlを用いて次の式(9)のように表せる。
【数7】
【0025】
また、位置指令演算器22は、1次遅れフィルタ21により補正された入力信号xr2中の機械2の減衰特性を考慮した機械2の反共振周波数ωzの成分を減衰して出力する演算器であり、入力信号xr2と出力信号xaとの間の関係は次の式(10)で表される。
【数8】
【0026】
また、速度指令演算器23は、入力信号vr1中の機械2の減衰特性を考慮した機械2の反共振周波数ωzの成分を減衰して出力する演算器であり、入力信号vr1と出力信号vaとの間の関係は次の式(11)で表される。
【数9】
【0027】
さらに、トルク指令演算器24は、入力信号τr1中の機械2の減衰特性を考慮した機械2の共振周波数ωpの成分を減衰して出力する演算器であり、入力信号τr1と出力信号τaとの間の関係は次の式(12)で表される。
【数10】
ここで、減衰比ζpは機械の減衰定数c、共振周波数ωp、負荷イナーシャJl、モータイナーシャJmを用いて次の式(13)のように表せる。
【数11】
【0028】
このような構成によれば、機械2が粘性摩擦等による減衰特性を有する場合でも負荷位置xlは機械特性補償部4の入力信号xr1に完全に追従する。このことを式で表現すると次のようになる。機械2が2慣性共振系で近似できて減衰特性を有する場合、モータトルク指令信号τmとモータ位置xmの間の関係は次の式(14)のようになる。
【数12】
【0029】
また、モータ位置xmと負荷位置xlの間の関係は次の式(15)のようになる。
【数13】
【0030】
また、モータ速度vmとモータ位置xmの間の関係およびフィードバック補償部5の入出力関係は、上記実施の形態1と同様になり、それぞれ式(6)および式(7)で表される。式(6)および式(7)、式(8)から式(15)の各関係式が成り立つことを考慮して、この実施の形態2における機械特性補償部4の入力信号xr1と機械2の負荷位置xlの間の関係を求めると、xl=xr1となる。すなわち、負荷位置xlは機械特性補償部4の入力信号xr1に完全に追従する。したがって、指令位置から機械2の負荷位置までの応答特性が、FIRフィルタ6の応答特性と一致し、対称で振動を励起しない応答軌跡を得ることができる。
【0031】
次に、この実施の形態2の効果を数値シミュレーションによって示す。
図6はこの発明の実施の形態2によるサーボ制御装置の指令軌跡と応答軌跡とを示す特性図であり、図6(a)はx軸、y軸の2軸の自由度を持つ機械を、この実施の形態2によるサーボ制御装置によって駆動した時の指令軌跡と応答軌跡であり、図6(b)は上記実施の形態1による指令軌跡と応答軌跡である。指令軌跡は角度90度のコーナーの形状であり、機械2の共振周波数ωpは300rad/s、反共振周波数ωzは200rad/sとしている。さらに、減衰比ζpを0.2としている。
図6に示した例では、機械2に減衰特性がある場合には、この実施の形態2によるサーボ制御装置を用いることによって、上記実施の形態1によるサーボ制御装置を用いた場合に比較して、応答軌跡の振動を抑制できることがわかる。
【0032】
以上のように、この実施の形態2によれば、位置指令演算器22、速度指令演算器23およびトルク指令演算器24において、機械2の粘性摩擦の減衰特性を考慮した機械2の反共振周波数成分または共振周波数成分を減衰し、1次遅れフィルタ21において、機械特性補償部の入力信号xr1と負荷位置xlとの間の位相のずれが解消されるように時定数が設定され、入力される位置指令信号を補正することにより、機械2が2慣性共振系と見なせる場合で機械2の粘性摩擦による減衰特性がある場合でも機械位置、すなわち負荷位置を機械振動を励起せずに機械特性補償部4の入力すなわちFIRフィルタ部3の出力に完全に追従させることができる。
【0033】
実施の形態3.
図7はこの発明の実施の形態3によるサーボ制御装置を示すブロック図であり、図において、5次IIRフィルタ(n次フィルタ)31は、機械特性補償部4に設けられ、所望の周波数遮断特性を有し、位置指令信号を補正するものである。
その他の構成については、図1と同等である。
【0034】
次に動作について説明する。
図7において、上記実施の形態1と相違する点は、機械特性補償部4の入力信号xr1を5次IIRフィルタ31で補正してから位置指令演算器7および微分器8に出力する点である。5次IIRフィルタ31は、例えば次の式(16)で表される構成とする。
【数14】
ここで、K1からK5は5次IIRフィルタ31の周波数遮断特性を決定する極を表すパラメータである。
図8は5次IIRフィルタのゲイン曲線の一例を示す特性図である。一例として、K1=K2=K3=K4=K5=1000のときの5次IIRフィルタ31のゲイン曲線を示すとこの図8のようになり、400rad/s付近よりも高い周波数領域が遮断されていることがわかる。
【0035】
このような構成によれば、機械2が2慣性共振系で近似できず、共振周波数ωpよりも高い周波数領域に別の共振点が存在する場合でも、その共振点付近の周波数成分が5次IIRフィルタ31により遮断されるので、応答軌跡の振動を低減させることができる。また、位置指令信号に高周波のノイズが含まれることによって応答軌跡に振動が生じる場合でも、位置指令信号に含まれる高周波数領域の成分が5次IIRフィルタ31により遮断されるので、応答軌跡の振動を低減させることができる。
【0036】
次に、この実施の形態3の効果を数値シミュレーションによって示す。
図9はこの発明の実施の形態3によるサーボ制御装置の指令軌跡と応答軌跡とを示す特性図であり、図9(a)はx軸、y軸の2軸の自由度を持つ機械を、この実施の形態3によるサーボ制御装置によって駆動した時の指令軌跡と応答軌跡であり、図9(b)は上記実施の形態1による指令軌跡と応答軌跡である。指令軌跡は角度90度のコーナーの形状であり、機械2の共振周波数ωpは300rad/s、反共振周波数ωzは200rad/sとしている。さらに、1000rad/sに第2の共振周波数があり、700rad/sに第2の反共振周波数がある機械としている。
図9に示した例では、機械2が2慣性共振系で近似できず、第2の共振周波数、第2の反共振周波数がある場合には、この実施の形態3によるサーボ制御装置を用いることによって、上記実施の形態1によるサーボ制御装置を用いた場合に比較して、応答軌跡の振動を抑制できることがわかる。
【0037】
以上のように、この実施の形態3によれば、機械特性補償部4に、所望の周波数遮断特性を有する5次IIRフィルタ31を備え、入力される位置指令信号をその5次IIRフィルタ31で補正することにより、位置指令信号に含まれるノイズや、機械特性補償部4のパラメータである機械2の共振周波数、反共振周波数よりも高い周波数領域に別の共振点および反共振点が存在する場合に応答軌跡に現れる悪影響を低減することができる。
なお、この実施の形態3では、5つの所望の極を有する5次IIRフィルタ31を設けたが、1次以上のいずれのIIRフィルタを設けても良い。
【0038】
実施の形態4.
図10はこの発明の実施の形態4によるサーボ制御装置を示すブロック図であり、図において、実施の形態4は、機械特性補償部4に直接に入力された位置指令信号を、位置のフィードフォワード信号として減算器12に出力し、微分器8は、位置指令信号を微分して速度のフィードフォワード信号を演算し、加減算器14に出力し、演算器10は、微分器8による演算値を微分すると共に機械2の総イナーシャを乗算し、振動抑制フィルタ41は、演算器10による演算値から機械2の共振周波数成分を減衰し、反共振周波数成分を増幅して、トルクのフィードフォワード信号を演算し、加算器16に出力するものである。
その他の構成については、図1と同等である。
【0039】
次に動作について説明する。
図10において、機械特性補償部4に直接に入力された位置指令信号xrは位置のフィードフォワード信号xaとしてフィードバック補償部5に出力される。また、位置指令信号は微分器8によって微分され、速度のフィードフォワード信号vaとしてフィードバック補償部5に出力される。さらに、微分器8による演算値は演算器10によって微分されて機械2の総イナーシャが乗算された後、振動抑制フィルタ41に出力され、振動抑制フィルタ41の出力信号はトルクのフィードフォワード信号τaとしてフィードバック制御部5に出力される。フィードバック補償部5および機械2の構成と動作は上記実施の形態1と同様である。
次に、振動抑制フィルタ41について説明する。振動抑制フィルタ41における入力信号τr1と出力信号τaとの関係は、機械2の共振周波数ωpと機械2の反共振周波数ωzを用いて次の式(17)で表されるものとする。
【数15】
このように演算器10による演算値から機械2の共振周波数成分を減衰し、反共振周波数成分を増幅するものである。
【0040】
このような構成によれば、より簡易な構成で機械振動の低減を図ることができる。また、機械2が、モータ17と負荷18との間の剛性は高いがモータ17とモータ設置台との間の剛性が低く、機械振動がモータ17とモータ設置台との間の共振および反共振が原因で起こる場合には、その共振および反共振に起因する振動成分が振動低減フィルタ41によって取り除かれて、負荷位置xlは位置指令信号xrに完全に追従する。
このことを式で表現すると次のようになる。機械2が、モータ17と負荷18との間の剛性は十分高く、モータ17とモータ設置台との間の剛性が低いようなモデルで近似できる場合、モータトルク指令信号τmとモータ位置xmの間の関係は次の式(18)のようになる。
【数16】
【0041】
また、モータ位置xmと負荷位置xlの間の関係は次の式(19)のようになる。
xl(s)=xm(s) (19)
また、モータ速度vmとモータ位置xmの間の関係およびフィードバック補償部5の入出力関係は、上記実施の形態1と同様となり、それぞれ式(6)および式(7)で表される。式(6)および式(7)、式(17)から式(19)の各関係式が成り立つことを考慮して、この実施の形態4における位置指令信号xrと機械2の負荷位置xlの間の関係を求めると、xl=xrとなる。すなわち、負荷位置xlは位置指令信号xrに完全に追従する。したがって、効果的に機械振動を抑制することができる。
【0042】
次に、この実施の形態4の効果を数値シミュレーションによって示す。
図11はこの発明の実施の形態4によるサーボ制御装置の指令軌跡と応答軌跡とを示す特性図であり、x軸、y軸の2軸の自由度を持つ機械2を駆動した時の指令軌跡と応答軌跡とを示したものである。指令軌跡は角度90度のコーナーの形状であり、応答軌跡はこの指令軌跡の進行方向を図14による進行方向Aおよび進行方向Bとした場合、すなわち同じ形状の軌跡を往復させた場合について示している。また、機械2は、モータ17と負荷18との間の剛性は十分高いが、モータ17とモータ設置台との間の剛性が低いものとしている。機械2の共振周波数ωpは300rad/s、反共振周波数ωzは200rad/sとしている。
図11に示した例では、応答軌跡は、機械2においてモータ17とモータ設置台との間の剛性が低い場合でも、この実施の形態4によるサーボ制御装置を用いることによって、従来例に比較して応答軌跡の振動や、往復の応答軌跡の差が抑制されていることがわかる。
【0043】
以上のように、この実施の形態4によれば、振動抑制フィルタ41において、演算器10による演算値から機械2の共振周波数成分を減衰し、反共振周波数成分を増幅して、トルクのフィードフォワード信号を演算することにより、上記実施の形態1よりも簡単な構成で振動抑制効果を得ることができる。特に、機械2のモータ17とモータ設置台との間の剛性が低いことが原因で振動が起こる場合において、機械2の振動を抑制することができる。
【0044】
実施の形態5.
図12はこの発明の実施の形態5によるサーボ制御装置を示すブロック図であり、図において、位置指令補正部51は、FIRフィルタ部3と機械特性補償部4との間に設けられ、FIRフィルタ6および5次IIRフィルタ31によって生じる、これらのフィルタの遮断周波数以下の低周波数領域のゲイン低下の影響を低減するような特性を有し、位置指令信号を補正するものである。
また、模擬位置制御ループ部52は、位置のフィードフォワード信号と速度のフィードフォワード信号からフィードバック補償部5を模擬した演算を行って模擬速度信号を演算するものであり、トルク補正信号演算部53は、模擬速度信号の符号の変化に応じてトルク補正信号を演算して加算器16に出力するものである。
さらに、模擬位置制御ループ部52において、減算器54は、位置のフィードフォワード信号から模擬位置信号を減算し第2位置制御器55に出力し、第2位置制御器55は、位置制御器13と同様の演算を行って加算器56に出力し、加算器56は、第2位置制御器55の出力と速度のフィードフォワード信号を加算して模擬速度信号を求め、積分器57は、模擬速度信号を積分して模擬位置信号を求めるものである。
その他の構成については、図7と同等である。
【0045】
次に動作について説明する。
図12において、上記実施の形態3と相違する点は、FIRフィルタ部3の出力信号を位置指令補正部51で補正してから機械特性補償部4に出力する点と、位置のフィードフォワード信号と速度のフィードフォワード信号を模擬位置制御ループ部52に出力して模擬速度信号を求め、模擬速度信号をトルク補正信号演算部53に入力してトルク補正信号を演算してモータトルク指令信号に加算する点である。
FIRフィルタ6および5次IIRフィルタ31は、指令を平滑化してフィードバック補償部5への入力信号が大きなインパルス状となって機械2に悪影響を与えることを防ぎ、位置指令信号に含まれる高周波数領域の成分を遮断して応答軌跡の振動を低減させることができるが、いずれも低域通過型フィルタであり、高周波数領域になるほどゲインは低下する。これらのフィルタは、遮断周波数以下の低周波数領域でも僅かなゲインの低下があり、このことが原因で円弧指令時には応答軌跡の半径が指令軌跡の半径よりも小さくなることがある。
そこで、位置指令補正部51では、FIRフィルタ6および5次IIRフィルタ31によって生じるゲイン低下の影響が小さくなるよう位置指令信号を補正するものである。位置指令補正部51の入力信号xr1と出力信号xr11との間の関係は次の式(20)で表される。
xr11(s)=(1+α・s)xr1 (20)
ここで、αは補正量を加減するパラメータであり、位置指令信号xrから5次IIRフィルタ31の出力xr2までの低周波数領域でのゲイン低下が所望の値以下となるように設定される。
【0046】
また、モータ17に摩擦力が働く場合、モータ17の回転方向が反転するときに追従遅れが生じ、指令軌跡と応答軌跡との間に誤差が生じる原因となることがある。このような場合、モータ速度の符号が変化するときにトルク指令に補正指令を与えることで追従遅れを解消することができる。しかし、モータ速度信号の符号の変化時に補正指令を与える方式では、モータ17の停止時に、モータ17や負荷18に加わる僅かな外乱によってモータ速度信号の符号が変化した場合もモータ17の回転方向が反転したと見なして補正指令を与えてしまい、好ましくない。
そこで、模擬位置制御ループ部52において、位置のフィードフォワード信号と速度のフィードフォワード信号からフィードバック補償部5を模擬した演算を行って模擬速度信号を演算してトルク補正信号演算部53に出力する。模擬位置制御ループ部52では、減算器54によって位置のフィードフォワード信号から模擬位置信号を減算して第2位置制御器55に出力し、第2位置制御器55は、位置制御器13と同様の演算を行って加算器56に出力し、加算器56は第2位置制御器55の出力と速度のフィードフォワード信号を加算して模擬速度信号を求め、積分器57は模擬速度信号を積分して模擬位置信号を求める。トルク補正信号演算部53は、模擬速度信号の符号の変化に応じてトルク補正信号を演算して加算器16に出力する。なお、トルク補正信号は、モータ17の方向反転時のトルクの変化を予め測定しておいたものを用いる。
【0047】
以上のように、この実施の形態5によれば、位置指令補正部51によって、FIRフィルタ6と5次IIRフィルタ31によって生じる低周波数領域のゲイン低下が補正されるため、円弧指令時に応答軌跡の半径が指令軌跡の半径より小さくなることがなくなり、指令軌跡と応答軌跡との間の誤差を小さくすることができる。
また、模擬位置制御ループ部52において、位置のフィードフォワード信号と速度のフィードフォワード信号から模擬速度信号を演算し、トルク補正信号演算部53において、模擬速度信号の符号の変化に応じてトルク補正信号を演算してモータトルク指令信号に加算することにより、モータ17の回転方向が反転するときの追従遅れが解消され、指令軌跡と応答軌跡との間の誤差を小さくすることができる。
なお、この実施の形態5では、位置指令補正部51と、模擬位置制御ループ部52およびトルク補正信号演算部53とを含む構成について説明したが、これらのうちの位置指令補正部51のみを含む構成、あるいは模擬位置制御ループ部52およびトルク補正信号演算部53のみを含む構成であっても良い。
さらに、この実施の形態5では、位置指令補正部51はFIRフィルタ部3と機械特性補償部4の間に設けたものとして説明したが、FIRフィルタ部3の前段や機械特性補償部4の後段に設けても良い。
さらに、この実施の形態5では、トルク補正信号をモータトルク指令信号に加算するものとして説明したが、トルクのフィードフォワード信号に加算するものであっても良い。また、速度制御器15が比例・積分制御を行う制御器である場合は、トルク補正信号を速度制御器15の中の積分項に加算するものであっても良い。
【0048】
なお、以上の説明ではフィードバック補償部5の入力が位置、速度、トルクである場合について説明したが、トルクの代わりに加速度を入力するようにしても良い。この場合、上記各実施の形態における演算器10を微分のみを行うものに置き換えることによって、同様の効果を得ることができる。あるいは、トルクの代わりに電流を入力するようにしても良い。この場合、上記各実施の形態における演算器10において乗算する値を、機械2の総イナーシャをモータ17のトルク定数で除した値に置き換えることによって、同様の効果を得ることができる。
また、以上の説明ではモータ17は回転型でトルクを発生するものとして説明したが、リニアモータのように推力を得るものであっても良い。この場合、上記各実施の形態におけるイナーシャを質量に、トルクを推力にそれぞれ置き換えることによって、同様の効果を得ることができる。
【0049】
さらに、以上の説明では位置制御を行う場合について説明したが、速度制御の場合であっても良い。速度制御の場合は上記各実施の形態において位置のフィードバックループと位置のフィードフォワード信号を除くことによって同様の効果を得ることができる。
【0050】
さらに、上記各実施の形態において、位置指令演算部、速度指令演算部、トルク指令演算部において、離散化によって生じるむだ時間や制御対象の微少なモデル誤差に対する調整を行うための調整係数を掛けるものであっても良い。あるいは、微分器8および演算器10に同様の調整係数を掛けるものであっても良い。
【0051】
さらに、上記各実施の形態において、機械特性補償部4は、入力から出力までの伝達関数が異ならなければ各構成要素の順序等が異なっていても良い。例えば、速度のフィードフォワード信号vaは、位置のフィードフォワード信号xaを微分することによって求めても良い。
さらに、上記各実施の形態において、微分を擬似微分(今回値と前回値の差にサンプル周期の逆数を乗算して近似的な微分値を演算すること)で置き換えても良い。
【0052】
さらに、上記実施の形態1から3において、FIRフィルタ部3と機械特性補償部4の順序が入れ替わっていても良い。すなわち、位置指令信号を機械特性補償部4に入力して、その各出力をFIRフィルタ部3にそれぞれ入力して位置、速度およびトルクのフィードフォワード信号を求めても良い。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】この発明の実施の形態1によるサーボ制御装置を示すブロック図である。
【図2】対称なインパルス応答を示す特性図である。
【図3】この発明の実施の形態1によるサーボ制御装置を示す全体構成図である。
【図4】この発明の実施の形態1によるサーボ制御装置の指令軌跡と応答軌跡とを示す特性図である。
【図5】この発明の実施の形態2によるサーボ制御装置を示すブロック図である。
【図6】この発明の実施の形態2によるサーボ制御装置の指令軌跡と応答軌跡とを示す特性図である。
【図7】この発明の実施の形態3によるサーボ制御装置を示すブロック図である。
【図8】5次IIRフィルタのゲイン曲線の一例を示す特性図である。
【図9】この発明の実施の形態3によるサーボ制御装置の指令軌跡と応答軌跡とを示す特性図である。
【図10】この発明の実施の形態4によるサーボ制御装置を示すブロック図である。
【図11】この発明の実施の形態4によるサーボ制御装置の指令軌跡と応答軌跡とを示す特性図である。
【図12】この発明の実施の形態5によるサーボ制御装置を示すブロック図である。
【図13】従来のサーボ制御装置の指令軌跡と応答軌跡とを示す特性図である。
【図14】従来のサーボ制御装置の指令軌跡と応答軌跡とを示す特性図である。
【符号の説明】
【0054】
1 サーボ制御装置、1a x軸用サーボ制御装置、1b y軸用サーボ制御装置、2 機械(駆動対象機械)、3 FIRフィルタ部、4 機械特性補償部、5 フィードバック補償部、6 FIRフィルタ、7,22 位置指令演算器、8 微分器、9,23 速度指令演算器、10 演算器、11,24 トルク指令演算器、12,54 減算器、13 位置制御器、14 加減算器、15 速度制御器、16,56 加算器、17 モータ、17a x軸用モータ、17b y軸用モータ、18 負荷、21 1次遅れフィルタ、31 5次IIRフィルタ(n次フィルタ)、41 振動抑制フィルタ、51 位置指令補正部、52 模擬位置制御ループ部、53 トルク補正信号演算部、55 第2位置制御器、57 積分器。
【技術分野】
【0001】
この発明は、工作機械の送り軸や産業ロボットのアームのような負荷機械をモータによって駆動するサーボ制御装置に関するもので、特に、2つ以上の軸を有する機械において軌跡制御を行うサーボ制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のサーボ制御装置としては、位置や速度等の被制御量の指令値に対する応答遅れを補償するためにフィードフォワード制御が行われる。例えば、位置指令を微分し位置のフィードフォワード制御量を求め、位置ループ制御で得られた制御量にフィードフォワード制御量を加算し速度指令とし、位置のフィードフォワード制御量を微分して得られる速度のフィードフォワード制御量を、速度ループ制御によって得られる値に加算して電流指令としてサーボ制御を行うことにより、位置制御の応答性を高めているものがある(例えば下記特許文献1の図1)。
また、トルク伝達機構、負荷機械および電動機から構成された機械系を2慣性共振系として近似して構成した機械系モデルに対する模擬制御回路を構成し、模擬制御回路の模擬電動機位置、速度およびトルクをフィードフォワード制御量として位置ループ制御および速度ループ制御によって得られる値に加算することにより、制御対象の剛性が低く、共振特性を有する場合でも振動を励起せずに位置制御の応答性を高めているものがある(例えば下記特許文献2の図25)。
【0003】
【特許文献1】特許第2762364号公報
【特許文献2】特開2000−92882号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のサーボ制御装置は以上のように構成されているので、特許文献1記載のサーボ制御装置にあっては、制御対象の剛性が高く、剛体と見なすことができる場合にあっては十分な性能を発揮できるが、制御対象の剛性が低く、共振特性を持つ場合に本方式を実施して応答性を高くしようとすると、機械共振により被制御量である位置や速度に振動が生じ、図13に示すように位置決め精度や軌跡精度が低下するという課題があった。
また、特許文献2記載のサーボ制御装置にあっては、制御対象が2慣性共振系と見なすことができる場合には制御対象の位置は常に模擬制御回路の位置に完全に追従し、振動を励起せずに応答性を高めることができるが、模擬制御回路はフィードバック制御系を構成しており、インパルス応答が対称な形にならない。よって、対称な軌跡を指令軌跡として与えても、制御対象の応答軌跡は対称とならない。したがって、図14に示すように同じ形状の指令軌跡を進行方向を変えて往復させた場合、往復の応答軌跡の間には誤差が生じてしまう。このことは、金型を往復加工する際には加工面に傷が生じる原因となるなどの課題があった。
【0005】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、機械特性に起因する振動を低減すると共に、往復時の軌跡を一致させるサーボ制御装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係るサーボ制御装置は、位置指令信号を微分することにより速度のフィードフォワード信号を演算する微分器と、微分器による演算値を微分すると共に駆動対象機械の総イナーシャを乗算する演算器と、演算器による演算値から駆動対象機械の共振周波数成分を減衰し、反共振周波数成分を増幅することによりトルクのフィードフォワード信号を演算する振動抑制フィルタとを備えたものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、振動抑制フィルタにおいて、演算器による演算値から機械の共振周波数成分を減衰し、反共振周波数成分を増幅して、トルクのフィードフォワード信号を演算することにより、簡単な構成で高い振動抑制効果を得ることができる。特に、機械のモータとモータ設置台との間の剛性が低いことが原因で振動が起こる場合において、機械の振動を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1によるサーボ制御装置を示すブロック図であり、図において、サーボ制御装置1は、位置指令信号に応じて機械(駆動対象機械)2を駆動制御するものである。
そのサーボ制御装置1において、FIR(Finite Impulse Response)フィルタ部3は、位置指令信号を補正し、機械特性補償部4は、補正された位置指令信号から、機械2の特性に対応した所定の周波数成分を減衰して、位置、速度およびトルクの各フィードフォワード信号を演算し、フィードバック補償部5は、演算された位置、速度およびトルクの各フィードフォワード信号に応じて機械2を駆動するものである。
また、FIRフィルタ部3は、FIRフィルタ6から構成されている。
【0009】
さらに、機械特性補償部4において、位置指令演算器7は、位置指令信号から機械2の反共振周波数成分を減衰して、位置のフィードフォワード信号を演算し、微分器8は、位置指令信号を微分し、速度指令演算器9は、微分器8による演算値から機械2の反共振周波数成分を減衰して、速度のフィードフォワード信号を演算し、演算器10は、微分器8による演算値を微分すると共に機械2の総イナーシャを乗算し、トルク指令演算器11は、演算器10による演算値から機械2の共振周波数成分を減衰して、トルクのフィードフォワード信号を演算するものである。
【0010】
さらに、フィードバック補償部5において、減算器12は、位置のフィードフォワード信号からモータ位置信号を減算し位置制御器13に出力し、位置制御器13は、速度制御信号を求め、加減算器14は、速度のフィードフォワード信号と速度制御信号とを加算すると共にモータ速度信号を減算し速度制御器15に出力し、速度制御器15は、トルク制御信号を求め、加算器16は、トルクのフィードフォワード信号とトルク制御信号とを加算し、機械2にモータトルク指令信号として出力するものである。
機械2は、モータトルク指令信号に応じて負荷18を駆動するモータ17から構成されている。
【0011】
次に動作について説明する。
図1において、位置指令信号はFIRフィルタ6によって平滑化され、機械特性補償部4に出力される。ここで、FIRフィルタ6は、時定数Tfの移動平均フィルタを2個以上直列に結合して構成される。ここで、移動平均フィルタの時定数とは、移動平均フィルタのタップ数にサンプリング周期を乗じた値を指す。さらに、時定数Tfは、応答軌跡が要求軌跡精度を満たすように、要求軌跡精度パラメータから所定の演算により算出される。要求軌跡精度パラメータは、コーナ通過時のだれ量(応答軌跡がコーナ頂点に最も近付いた時のコーナ頂点までの距離)や、円弧内回り量(応答軌跡の半径の指令半径に対する減少量)等がある。
【0012】
機械特性補償部4では、まず、機械特性補償部4の入力信号xr1が位置指令演算器7に入力されて、位置のフィードフォワード信号xaが演算される。位置指令演算器7は、入力信号xr1中の機械2の反共振周波数ωzの成分を減衰して出力する演算器であり、入力信号xr1と出力信号xaとの間の関係は次の式(1)で表される。なお、sはラプラス演算子である。
【数1】
【0013】
また、機械特性補償部4の入力信号xr1は、微分器8によって微分された後、速度指令演算器9に入力されて、速度のフィードフォワード信号vaが演算される。速度指令演算器9は、入力信号vr1中の機械2の反共振周波数ωzの成分を減衰して出力する演算器であり、入力信号vr1と出力信号vaとの間の関係は次の式(2)で表される。
【数2】
【0014】
さらに、微分器8の出力信号は演算器10によって微分されて機械2の総イナーシャJを乗算された後、トルク指令演算器11に入力されて、トルクのフィードフォワード信号τaが演算される。ここで言う総イナーシャとは、モータイナーシャと負荷イナーシャとの合計イナーシャである。トルク指令演算器11は、入力信号τr1中の機械2の共振周波数ωpの成分を減衰して出力する演算器であり、入力信号τr1と出力信号τaとの間の関係は次の式(3)で表される。
【数3】
【0015】
次に、位置のフィードフォワード信号xa、速度のフィードフォワード信号va、トルクのフィードフォワード信号τaは、フィードバック補償部5に入力される。フィードバック補償部5では、減算器12において、位置のフィードフォワード信号xaから機械2より出力されるモータ位置信号xmを減じて位置制御器13に出力し、位置制御器13では速度制御信号vcを求める。なお、位置制御器13は、フィードバック制御系が安定となるものであればどのような構成でも良いが、通常は比例制御器等が用いられる。また、加減算器14において、速度のフィードフォワード信号vaと速度制御信号vcとを加算した値から、機械2より出力されるモータ速度信号vmを減じて速度制御器15に出力し、速度制御器15ではトルク制御信号τcを求める。なお、速度制御器15は、フィードバック制御系が安定になるものであればどのような構成でも良いが、通常は比例、積分制御器等が用いられる。さらに、加算器16において、トルクのフィードフォワード信号τaとトルク制御信号τcとを加算した値がモータトルク指令信号τmとして機械2に出力されてモータ17が駆動される。機械2はモータ設置台の上に設置されたモータ17と負荷18がトルク伝達機構で結合されており、モータ17に取り付けられた回転検出器によってモータ位置信号xmおよびモータ速度信号vmが出力される。ここで、モータ17が発生するトルクは、モータトルク指令信号τmに十分速く追従するものである。
【0016】
このような構成によれば、機械2の振動特性に応じて、機械2の負荷位置が機械特性補償部4の入力信号xr1に完全に追従するように適切に演算された位置、速度およびトルクのフィードフォワード信号がフィードバック補償部5に出力されるため、負荷位置xlは機械特性補償部4の入力信号xr1に完全に追従する。このことを式で表現すると次のようになる。機械2が2慣性共振系で近似できる場合、モータトルク指令信号τmとモータ位置xmの間の関係は次の式(4)のようになる。
【数4】
また、モータ位置xmと負荷位置xlの間の関係は次の式(5)のようになる。
【数5】
また、モータ速度vmとモータ位置xmの間の関係は、次の式(6)のようになる。
vm(s)=s・xm(s) (6)
【0017】
さらに、位置制御器13および速度制御器15の伝達関数をそれぞれCp(s)およびCv(s)とすると、フィードバック補償部5の入出力関係は、次の式(7)で表される。
τm(s)=Cv(s)(Cp(s)(xa(s)−xm(s))
+va(s)−vm(s))+τa(s) (7)
式(1)から式(5)、式(6)、式(7)の各関係式が成り立つことを考慮して、この実施の形態1における機械特性補償部4の入力信号xr1と機械2の負荷位置xlの間の関係を求めると、xl=xr1となる。すなわち、負荷位置xlは機械特性補償部4の入力信号xr1に完全に追従する。したがって、指令位置から負荷位置までの応答特性は、FIRフィルタ6の応答特性と等しくなる。
【0018】
図2は対称なインパルス応答を示す特性図であり、FIRフィルタ6のインパルス応答がこの図2に示すように対称な形に近ければ、公知のように入力が対称であれば出力も対称になるため、対称な指令軌跡に対する応答軌跡は対称となり、同じ形状の軌跡を往復させた時の往復の応答軌跡がほぼ同じ形となる。さらに、FIRフィルタ6のインパルス応答が完全に対称な形であれば、すなわち直線位相FIRフィルタであれば、対称な指令軌跡に対する応答軌跡は完全に対称となり、同じ形状の軌跡を往復させた時の往復の応答軌跡は一致する。また、トルクのフィードフォワード信号τr1は機械特性補償部4の入力信号xr1を最大で4階微分した成分を含み、機械特性補償部4の入力信号xr1が十分に平滑化されていない場合には、トルクのフィードフォワード信号τr1がインパルス状の非常に大きな値となって機械2に悪影響を与えることが考えられるが、FIRフィルタ6の構成を、移動平均フィルタの2個の直列結合としたことで、位置指令信号xr1が、位置制御で良く用いられる加速度ステップ指令であれば、機械特性補償部4の入力信号xr1を4階微分してもインパルス状の信号にならず、トルクのフィードフォワード信号τr1がインパルス状の非常に大きな成分を含むことが回避される。また、このFIRフィルタ6のインパルス応答は対称な形であることから、対称な指令軌跡に対する応答軌跡は完全に対称となり、同じ形状の軌跡を往復させた時の往復の応答軌跡は一致する。
【0019】
なお、FIRフィルタ6は直線位相FIRフィルタのように直線位相特性を有するものが好ましいが、直線位相特性を有しない一般のFIRフィルタを用いても、出力が過去の有限時間の履歴から定まるため、FIRフィルタ以外のフィルタ、すなわちIIR(Infinite Impulse Response)フィルタを用いる場合よりも対称な応答軌跡を得やすいという利点がある。なお、FIRフィルタについては、例えばF.R.コナー著 フィルタ回路入門(森北出版)等に詳細な解説がある。
【0020】
次に、この実施の形態1による効果を数値シミュレーションによって示す。
図3はこの発明の実施の形態1によるサーボ制御装置を示す全体構成図であり、図において、x軸用、y軸用サーボ制御装置1a,1bにより、2軸の自由度を持つ機械2をx軸用、y軸用モータ17a,17bを用いて駆動するものである。
図4はこの発明の実施の形態1によるサーボ制御装置の指令軌跡と応答軌跡とを示す特性図である。指令軌跡は角度90度のコーナーの形状であり、応答軌跡はこの指令軌跡の進行方向を、進行方向Aおよび進行方向Bとした場合、すなわち同じ形状の軌跡を往復させた場合について示している。機械2の共振周波数ωpは300rad/s、反共振周波数ωzは200rad/sとしている。
図4に示した例では、応答軌跡は従来における特許文献1に比較して振動が抑制されており、特許文献2に比較して往復の応答軌跡の差が低減されていることがわかる。以上により、金型等を往復加工させる場合でも、傷のない加工面が得られる。
【0021】
以上のように、この実施の形態1によれば、機械特性補償部4において、機械2を2慣性共振系と見なせ、機械2の粘性摩擦による減衰特性が無視できる場合に、機械2の特性値(共振周波数、反共振周波数、総イナーシャ)を用いて位置、速度およびトルクのフィードフォワード信号を求めることにより、機械2の特性に起因する振動を低減することができる。
また、機械特性補償部4により得られるフィードフォワード信号をフィードバック補償部5に出力することにより、機械2の位置を機械特性補償部4の入力、すなわちFIRフィルタ部3の出力に完全に追従させることができる。
さらに、FIRフィルタ部3により、軌跡を容易に対称な形にして、往復時の軌跡が一致させることができるため、往復加工を行う場合でも段差のない加工面を得ることができる。
さらに、FIRフィルタ部3を2段以上の移動平均フィルタとし、移動平均フィルタの時定数を要求軌跡精度に応じて設定することにより、軌跡の対称性を保ち、フィードバック補償部5に入力される信号が大きなインパルス状の信号となって機械2に大きなショックを与えることを回避すると共に、応答軌跡の指令軌跡からの誤差を要求軌跡精度以内とすることができる。
【0022】
実施の形態2.
図5はこの発明の実施の形態2によるサーボ制御装置を示すブロック図であり、図において、1次遅れフィルタ21は、機械特性補償部4に設けられ、機械2の粘性摩擦による減衰特性の影響を低減するように、時定数が機械2の減衰定数、反共振周波数および負荷イナーシャに応じて設定されるものであり、位置指令信号を補正するものである。
また、位置指令演算器22は、1次遅れフィルタ21により補正された位置指令信号から、機械2の粘性摩擦による減衰特性を考慮した機械2の反共振周波数成分を減衰して、位置のフィードフォワード信号を演算するものであり、速度指令演算器23は、微分器8による演算値から、機械2の粘性摩擦による減衰特性を考慮した機械2の反共振周波数成分を減衰して、速度のフィードフォワード信号を演算するものであり、トルク指令演算器24は、演算器10による演算値から機械2の粘性摩擦による減衰特性を考慮した機械2の共振周波数成分を減衰して、トルクのフィードフォワード信号を演算するものである。
その他の構成については、図1と同等である。
【0023】
次に動作について説明する。
図5において、上記実施の形態1と相違する点は、機械特性補償部4の入力信号xr1を1次遅れフィルタ21で補正してから位置指令演算器22および微分器8に出力する点と、位置指令演算器22、速度指令演算器23およびトルク指令演算器24において、機械2の減衰特性を考慮した構成とした点である。
機械2の粘性摩擦による減衰特性が無視できない場合、上記実施の形態1に示した構成では、この特性に起因して、機械特性補償部4の入力信号xr1と負荷位置xlとの間に位相のずれが生じ、負荷位置xlを機械特性補償部4の入力信号xr1に正確に追従させることができなくなる場合がある。
【0024】
そこで、1次遅れフィルタ21では、機械2の粘性摩擦による減衰特性に起因する機械特性補償部4の入力信号xr1と負荷位置xlとの間の位相のずれが解消されるように時定数を設置し、機械特性補償部4の入力信号xr1を補正するものである。1次遅れフィルタ21の入力信号xr1と出力信号xr2との間の関係は次の式(8)で表される。
【数6】
ここで、ζzは機械の減衰定数c、反共振周波数ωz、負荷イナーシャJlを用いて次の式(9)のように表せる。
【数7】
【0025】
また、位置指令演算器22は、1次遅れフィルタ21により補正された入力信号xr2中の機械2の減衰特性を考慮した機械2の反共振周波数ωzの成分を減衰して出力する演算器であり、入力信号xr2と出力信号xaとの間の関係は次の式(10)で表される。
【数8】
【0026】
また、速度指令演算器23は、入力信号vr1中の機械2の減衰特性を考慮した機械2の反共振周波数ωzの成分を減衰して出力する演算器であり、入力信号vr1と出力信号vaとの間の関係は次の式(11)で表される。
【数9】
【0027】
さらに、トルク指令演算器24は、入力信号τr1中の機械2の減衰特性を考慮した機械2の共振周波数ωpの成分を減衰して出力する演算器であり、入力信号τr1と出力信号τaとの間の関係は次の式(12)で表される。
【数10】
ここで、減衰比ζpは機械の減衰定数c、共振周波数ωp、負荷イナーシャJl、モータイナーシャJmを用いて次の式(13)のように表せる。
【数11】
【0028】
このような構成によれば、機械2が粘性摩擦等による減衰特性を有する場合でも負荷位置xlは機械特性補償部4の入力信号xr1に完全に追従する。このことを式で表現すると次のようになる。機械2が2慣性共振系で近似できて減衰特性を有する場合、モータトルク指令信号τmとモータ位置xmの間の関係は次の式(14)のようになる。
【数12】
【0029】
また、モータ位置xmと負荷位置xlの間の関係は次の式(15)のようになる。
【数13】
【0030】
また、モータ速度vmとモータ位置xmの間の関係およびフィードバック補償部5の入出力関係は、上記実施の形態1と同様になり、それぞれ式(6)および式(7)で表される。式(6)および式(7)、式(8)から式(15)の各関係式が成り立つことを考慮して、この実施の形態2における機械特性補償部4の入力信号xr1と機械2の負荷位置xlの間の関係を求めると、xl=xr1となる。すなわち、負荷位置xlは機械特性補償部4の入力信号xr1に完全に追従する。したがって、指令位置から機械2の負荷位置までの応答特性が、FIRフィルタ6の応答特性と一致し、対称で振動を励起しない応答軌跡を得ることができる。
【0031】
次に、この実施の形態2の効果を数値シミュレーションによって示す。
図6はこの発明の実施の形態2によるサーボ制御装置の指令軌跡と応答軌跡とを示す特性図であり、図6(a)はx軸、y軸の2軸の自由度を持つ機械を、この実施の形態2によるサーボ制御装置によって駆動した時の指令軌跡と応答軌跡であり、図6(b)は上記実施の形態1による指令軌跡と応答軌跡である。指令軌跡は角度90度のコーナーの形状であり、機械2の共振周波数ωpは300rad/s、反共振周波数ωzは200rad/sとしている。さらに、減衰比ζpを0.2としている。
図6に示した例では、機械2に減衰特性がある場合には、この実施の形態2によるサーボ制御装置を用いることによって、上記実施の形態1によるサーボ制御装置を用いた場合に比較して、応答軌跡の振動を抑制できることがわかる。
【0032】
以上のように、この実施の形態2によれば、位置指令演算器22、速度指令演算器23およびトルク指令演算器24において、機械2の粘性摩擦の減衰特性を考慮した機械2の反共振周波数成分または共振周波数成分を減衰し、1次遅れフィルタ21において、機械特性補償部の入力信号xr1と負荷位置xlとの間の位相のずれが解消されるように時定数が設定され、入力される位置指令信号を補正することにより、機械2が2慣性共振系と見なせる場合で機械2の粘性摩擦による減衰特性がある場合でも機械位置、すなわち負荷位置を機械振動を励起せずに機械特性補償部4の入力すなわちFIRフィルタ部3の出力に完全に追従させることができる。
【0033】
実施の形態3.
図7はこの発明の実施の形態3によるサーボ制御装置を示すブロック図であり、図において、5次IIRフィルタ(n次フィルタ)31は、機械特性補償部4に設けられ、所望の周波数遮断特性を有し、位置指令信号を補正するものである。
その他の構成については、図1と同等である。
【0034】
次に動作について説明する。
図7において、上記実施の形態1と相違する点は、機械特性補償部4の入力信号xr1を5次IIRフィルタ31で補正してから位置指令演算器7および微分器8に出力する点である。5次IIRフィルタ31は、例えば次の式(16)で表される構成とする。
【数14】
ここで、K1からK5は5次IIRフィルタ31の周波数遮断特性を決定する極を表すパラメータである。
図8は5次IIRフィルタのゲイン曲線の一例を示す特性図である。一例として、K1=K2=K3=K4=K5=1000のときの5次IIRフィルタ31のゲイン曲線を示すとこの図8のようになり、400rad/s付近よりも高い周波数領域が遮断されていることがわかる。
【0035】
このような構成によれば、機械2が2慣性共振系で近似できず、共振周波数ωpよりも高い周波数領域に別の共振点が存在する場合でも、その共振点付近の周波数成分が5次IIRフィルタ31により遮断されるので、応答軌跡の振動を低減させることができる。また、位置指令信号に高周波のノイズが含まれることによって応答軌跡に振動が生じる場合でも、位置指令信号に含まれる高周波数領域の成分が5次IIRフィルタ31により遮断されるので、応答軌跡の振動を低減させることができる。
【0036】
次に、この実施の形態3の効果を数値シミュレーションによって示す。
図9はこの発明の実施の形態3によるサーボ制御装置の指令軌跡と応答軌跡とを示す特性図であり、図9(a)はx軸、y軸の2軸の自由度を持つ機械を、この実施の形態3によるサーボ制御装置によって駆動した時の指令軌跡と応答軌跡であり、図9(b)は上記実施の形態1による指令軌跡と応答軌跡である。指令軌跡は角度90度のコーナーの形状であり、機械2の共振周波数ωpは300rad/s、反共振周波数ωzは200rad/sとしている。さらに、1000rad/sに第2の共振周波数があり、700rad/sに第2の反共振周波数がある機械としている。
図9に示した例では、機械2が2慣性共振系で近似できず、第2の共振周波数、第2の反共振周波数がある場合には、この実施の形態3によるサーボ制御装置を用いることによって、上記実施の形態1によるサーボ制御装置を用いた場合に比較して、応答軌跡の振動を抑制できることがわかる。
【0037】
以上のように、この実施の形態3によれば、機械特性補償部4に、所望の周波数遮断特性を有する5次IIRフィルタ31を備え、入力される位置指令信号をその5次IIRフィルタ31で補正することにより、位置指令信号に含まれるノイズや、機械特性補償部4のパラメータである機械2の共振周波数、反共振周波数よりも高い周波数領域に別の共振点および反共振点が存在する場合に応答軌跡に現れる悪影響を低減することができる。
なお、この実施の形態3では、5つの所望の極を有する5次IIRフィルタ31を設けたが、1次以上のいずれのIIRフィルタを設けても良い。
【0038】
実施の形態4.
図10はこの発明の実施の形態4によるサーボ制御装置を示すブロック図であり、図において、実施の形態4は、機械特性補償部4に直接に入力された位置指令信号を、位置のフィードフォワード信号として減算器12に出力し、微分器8は、位置指令信号を微分して速度のフィードフォワード信号を演算し、加減算器14に出力し、演算器10は、微分器8による演算値を微分すると共に機械2の総イナーシャを乗算し、振動抑制フィルタ41は、演算器10による演算値から機械2の共振周波数成分を減衰し、反共振周波数成分を増幅して、トルクのフィードフォワード信号を演算し、加算器16に出力するものである。
その他の構成については、図1と同等である。
【0039】
次に動作について説明する。
図10において、機械特性補償部4に直接に入力された位置指令信号xrは位置のフィードフォワード信号xaとしてフィードバック補償部5に出力される。また、位置指令信号は微分器8によって微分され、速度のフィードフォワード信号vaとしてフィードバック補償部5に出力される。さらに、微分器8による演算値は演算器10によって微分されて機械2の総イナーシャが乗算された後、振動抑制フィルタ41に出力され、振動抑制フィルタ41の出力信号はトルクのフィードフォワード信号τaとしてフィードバック制御部5に出力される。フィードバック補償部5および機械2の構成と動作は上記実施の形態1と同様である。
次に、振動抑制フィルタ41について説明する。振動抑制フィルタ41における入力信号τr1と出力信号τaとの関係は、機械2の共振周波数ωpと機械2の反共振周波数ωzを用いて次の式(17)で表されるものとする。
【数15】
このように演算器10による演算値から機械2の共振周波数成分を減衰し、反共振周波数成分を増幅するものである。
【0040】
このような構成によれば、より簡易な構成で機械振動の低減を図ることができる。また、機械2が、モータ17と負荷18との間の剛性は高いがモータ17とモータ設置台との間の剛性が低く、機械振動がモータ17とモータ設置台との間の共振および反共振が原因で起こる場合には、その共振および反共振に起因する振動成分が振動低減フィルタ41によって取り除かれて、負荷位置xlは位置指令信号xrに完全に追従する。
このことを式で表現すると次のようになる。機械2が、モータ17と負荷18との間の剛性は十分高く、モータ17とモータ設置台との間の剛性が低いようなモデルで近似できる場合、モータトルク指令信号τmとモータ位置xmの間の関係は次の式(18)のようになる。
【数16】
【0041】
また、モータ位置xmと負荷位置xlの間の関係は次の式(19)のようになる。
xl(s)=xm(s) (19)
また、モータ速度vmとモータ位置xmの間の関係およびフィードバック補償部5の入出力関係は、上記実施の形態1と同様となり、それぞれ式(6)および式(7)で表される。式(6)および式(7)、式(17)から式(19)の各関係式が成り立つことを考慮して、この実施の形態4における位置指令信号xrと機械2の負荷位置xlの間の関係を求めると、xl=xrとなる。すなわち、負荷位置xlは位置指令信号xrに完全に追従する。したがって、効果的に機械振動を抑制することができる。
【0042】
次に、この実施の形態4の効果を数値シミュレーションによって示す。
図11はこの発明の実施の形態4によるサーボ制御装置の指令軌跡と応答軌跡とを示す特性図であり、x軸、y軸の2軸の自由度を持つ機械2を駆動した時の指令軌跡と応答軌跡とを示したものである。指令軌跡は角度90度のコーナーの形状であり、応答軌跡はこの指令軌跡の進行方向を図14による進行方向Aおよび進行方向Bとした場合、すなわち同じ形状の軌跡を往復させた場合について示している。また、機械2は、モータ17と負荷18との間の剛性は十分高いが、モータ17とモータ設置台との間の剛性が低いものとしている。機械2の共振周波数ωpは300rad/s、反共振周波数ωzは200rad/sとしている。
図11に示した例では、応答軌跡は、機械2においてモータ17とモータ設置台との間の剛性が低い場合でも、この実施の形態4によるサーボ制御装置を用いることによって、従来例に比較して応答軌跡の振動や、往復の応答軌跡の差が抑制されていることがわかる。
【0043】
以上のように、この実施の形態4によれば、振動抑制フィルタ41において、演算器10による演算値から機械2の共振周波数成分を減衰し、反共振周波数成分を増幅して、トルクのフィードフォワード信号を演算することにより、上記実施の形態1よりも簡単な構成で振動抑制効果を得ることができる。特に、機械2のモータ17とモータ設置台との間の剛性が低いことが原因で振動が起こる場合において、機械2の振動を抑制することができる。
【0044】
実施の形態5.
図12はこの発明の実施の形態5によるサーボ制御装置を示すブロック図であり、図において、位置指令補正部51は、FIRフィルタ部3と機械特性補償部4との間に設けられ、FIRフィルタ6および5次IIRフィルタ31によって生じる、これらのフィルタの遮断周波数以下の低周波数領域のゲイン低下の影響を低減するような特性を有し、位置指令信号を補正するものである。
また、模擬位置制御ループ部52は、位置のフィードフォワード信号と速度のフィードフォワード信号からフィードバック補償部5を模擬した演算を行って模擬速度信号を演算するものであり、トルク補正信号演算部53は、模擬速度信号の符号の変化に応じてトルク補正信号を演算して加算器16に出力するものである。
さらに、模擬位置制御ループ部52において、減算器54は、位置のフィードフォワード信号から模擬位置信号を減算し第2位置制御器55に出力し、第2位置制御器55は、位置制御器13と同様の演算を行って加算器56に出力し、加算器56は、第2位置制御器55の出力と速度のフィードフォワード信号を加算して模擬速度信号を求め、積分器57は、模擬速度信号を積分して模擬位置信号を求めるものである。
その他の構成については、図7と同等である。
【0045】
次に動作について説明する。
図12において、上記実施の形態3と相違する点は、FIRフィルタ部3の出力信号を位置指令補正部51で補正してから機械特性補償部4に出力する点と、位置のフィードフォワード信号と速度のフィードフォワード信号を模擬位置制御ループ部52に出力して模擬速度信号を求め、模擬速度信号をトルク補正信号演算部53に入力してトルク補正信号を演算してモータトルク指令信号に加算する点である。
FIRフィルタ6および5次IIRフィルタ31は、指令を平滑化してフィードバック補償部5への入力信号が大きなインパルス状となって機械2に悪影響を与えることを防ぎ、位置指令信号に含まれる高周波数領域の成分を遮断して応答軌跡の振動を低減させることができるが、いずれも低域通過型フィルタであり、高周波数領域になるほどゲインは低下する。これらのフィルタは、遮断周波数以下の低周波数領域でも僅かなゲインの低下があり、このことが原因で円弧指令時には応答軌跡の半径が指令軌跡の半径よりも小さくなることがある。
そこで、位置指令補正部51では、FIRフィルタ6および5次IIRフィルタ31によって生じるゲイン低下の影響が小さくなるよう位置指令信号を補正するものである。位置指令補正部51の入力信号xr1と出力信号xr11との間の関係は次の式(20)で表される。
xr11(s)=(1+α・s)xr1 (20)
ここで、αは補正量を加減するパラメータであり、位置指令信号xrから5次IIRフィルタ31の出力xr2までの低周波数領域でのゲイン低下が所望の値以下となるように設定される。
【0046】
また、モータ17に摩擦力が働く場合、モータ17の回転方向が反転するときに追従遅れが生じ、指令軌跡と応答軌跡との間に誤差が生じる原因となることがある。このような場合、モータ速度の符号が変化するときにトルク指令に補正指令を与えることで追従遅れを解消することができる。しかし、モータ速度信号の符号の変化時に補正指令を与える方式では、モータ17の停止時に、モータ17や負荷18に加わる僅かな外乱によってモータ速度信号の符号が変化した場合もモータ17の回転方向が反転したと見なして補正指令を与えてしまい、好ましくない。
そこで、模擬位置制御ループ部52において、位置のフィードフォワード信号と速度のフィードフォワード信号からフィードバック補償部5を模擬した演算を行って模擬速度信号を演算してトルク補正信号演算部53に出力する。模擬位置制御ループ部52では、減算器54によって位置のフィードフォワード信号から模擬位置信号を減算して第2位置制御器55に出力し、第2位置制御器55は、位置制御器13と同様の演算を行って加算器56に出力し、加算器56は第2位置制御器55の出力と速度のフィードフォワード信号を加算して模擬速度信号を求め、積分器57は模擬速度信号を積分して模擬位置信号を求める。トルク補正信号演算部53は、模擬速度信号の符号の変化に応じてトルク補正信号を演算して加算器16に出力する。なお、トルク補正信号は、モータ17の方向反転時のトルクの変化を予め測定しておいたものを用いる。
【0047】
以上のように、この実施の形態5によれば、位置指令補正部51によって、FIRフィルタ6と5次IIRフィルタ31によって生じる低周波数領域のゲイン低下が補正されるため、円弧指令時に応答軌跡の半径が指令軌跡の半径より小さくなることがなくなり、指令軌跡と応答軌跡との間の誤差を小さくすることができる。
また、模擬位置制御ループ部52において、位置のフィードフォワード信号と速度のフィードフォワード信号から模擬速度信号を演算し、トルク補正信号演算部53において、模擬速度信号の符号の変化に応じてトルク補正信号を演算してモータトルク指令信号に加算することにより、モータ17の回転方向が反転するときの追従遅れが解消され、指令軌跡と応答軌跡との間の誤差を小さくすることができる。
なお、この実施の形態5では、位置指令補正部51と、模擬位置制御ループ部52およびトルク補正信号演算部53とを含む構成について説明したが、これらのうちの位置指令補正部51のみを含む構成、あるいは模擬位置制御ループ部52およびトルク補正信号演算部53のみを含む構成であっても良い。
さらに、この実施の形態5では、位置指令補正部51はFIRフィルタ部3と機械特性補償部4の間に設けたものとして説明したが、FIRフィルタ部3の前段や機械特性補償部4の後段に設けても良い。
さらに、この実施の形態5では、トルク補正信号をモータトルク指令信号に加算するものとして説明したが、トルクのフィードフォワード信号に加算するものであっても良い。また、速度制御器15が比例・積分制御を行う制御器である場合は、トルク補正信号を速度制御器15の中の積分項に加算するものであっても良い。
【0048】
なお、以上の説明ではフィードバック補償部5の入力が位置、速度、トルクである場合について説明したが、トルクの代わりに加速度を入力するようにしても良い。この場合、上記各実施の形態における演算器10を微分のみを行うものに置き換えることによって、同様の効果を得ることができる。あるいは、トルクの代わりに電流を入力するようにしても良い。この場合、上記各実施の形態における演算器10において乗算する値を、機械2の総イナーシャをモータ17のトルク定数で除した値に置き換えることによって、同様の効果を得ることができる。
また、以上の説明ではモータ17は回転型でトルクを発生するものとして説明したが、リニアモータのように推力を得るものであっても良い。この場合、上記各実施の形態におけるイナーシャを質量に、トルクを推力にそれぞれ置き換えることによって、同様の効果を得ることができる。
【0049】
さらに、以上の説明では位置制御を行う場合について説明したが、速度制御の場合であっても良い。速度制御の場合は上記各実施の形態において位置のフィードバックループと位置のフィードフォワード信号を除くことによって同様の効果を得ることができる。
【0050】
さらに、上記各実施の形態において、位置指令演算部、速度指令演算部、トルク指令演算部において、離散化によって生じるむだ時間や制御対象の微少なモデル誤差に対する調整を行うための調整係数を掛けるものであっても良い。あるいは、微分器8および演算器10に同様の調整係数を掛けるものであっても良い。
【0051】
さらに、上記各実施の形態において、機械特性補償部4は、入力から出力までの伝達関数が異ならなければ各構成要素の順序等が異なっていても良い。例えば、速度のフィードフォワード信号vaは、位置のフィードフォワード信号xaを微分することによって求めても良い。
さらに、上記各実施の形態において、微分を擬似微分(今回値と前回値の差にサンプル周期の逆数を乗算して近似的な微分値を演算すること)で置き換えても良い。
【0052】
さらに、上記実施の形態1から3において、FIRフィルタ部3と機械特性補償部4の順序が入れ替わっていても良い。すなわち、位置指令信号を機械特性補償部4に入力して、その各出力をFIRフィルタ部3にそれぞれ入力して位置、速度およびトルクのフィードフォワード信号を求めても良い。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】この発明の実施の形態1によるサーボ制御装置を示すブロック図である。
【図2】対称なインパルス応答を示す特性図である。
【図3】この発明の実施の形態1によるサーボ制御装置を示す全体構成図である。
【図4】この発明の実施の形態1によるサーボ制御装置の指令軌跡と応答軌跡とを示す特性図である。
【図5】この発明の実施の形態2によるサーボ制御装置を示すブロック図である。
【図6】この発明の実施の形態2によるサーボ制御装置の指令軌跡と応答軌跡とを示す特性図である。
【図7】この発明の実施の形態3によるサーボ制御装置を示すブロック図である。
【図8】5次IIRフィルタのゲイン曲線の一例を示す特性図である。
【図9】この発明の実施の形態3によるサーボ制御装置の指令軌跡と応答軌跡とを示す特性図である。
【図10】この発明の実施の形態4によるサーボ制御装置を示すブロック図である。
【図11】この発明の実施の形態4によるサーボ制御装置の指令軌跡と応答軌跡とを示す特性図である。
【図12】この発明の実施の形態5によるサーボ制御装置を示すブロック図である。
【図13】従来のサーボ制御装置の指令軌跡と応答軌跡とを示す特性図である。
【図14】従来のサーボ制御装置の指令軌跡と応答軌跡とを示す特性図である。
【符号の説明】
【0054】
1 サーボ制御装置、1a x軸用サーボ制御装置、1b y軸用サーボ制御装置、2 機械(駆動対象機械)、3 FIRフィルタ部、4 機械特性補償部、5 フィードバック補償部、6 FIRフィルタ、7,22 位置指令演算器、8 微分器、9,23 速度指令演算器、10 演算器、11,24 トルク指令演算器、12,54 減算器、13 位置制御器、14 加減算器、15 速度制御器、16,56 加算器、17 モータ、17a x軸用モータ、17b y軸用モータ、18 負荷、21 1次遅れフィルタ、31 5次IIRフィルタ(n次フィルタ)、41 振動抑制フィルタ、51 位置指令補正部、52 模擬位置制御ループ部、53 トルク補正信号演算部、55 第2位置制御器、57 積分器。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
位置指令信号から演算した位置フィードフォワード信号と速度フィードフォワード信号とトルクフィードフォワード信号のうち、前記位置フィードフォワード信号からモータ位置信号を減算した信号に対して位置制御を行う位置制御器と、前記位置制御器の出力に前記速度フィードフォワード信号を加算し、モータ速度信号を減算した信号に対して速度制御を行う速度制御器とを備え、前記速度制御器の出力に前記トルクフィードフォワード信号を加算した信号をモータトルク指令信号として出力することにより駆動対象機械を駆動するサーボ制御装置において、
位置指令信号を微分することにより速度のフィードフォワード信号を演算する微分器と、
前記微分器による演算値を微分すると共に前記駆動対象機械の総イナーシャを乗算する演算器と、
前記演算器による演算値から駆動対象機械の共振周波数成分を減衰し、反共振周波数成分を増幅することによりトルクのフィードフォワード信号を演算する振動抑制フィルタとを備えたサーボ制御装置。
【請求項2】
前記位置フィードフォワード信号から模擬位置信号を減算した信号に対して前記位置制御器と同様の演算を行う第2位置制御器を備え、前記第2位置制御器の出力に前記速度フィードフォワード信号を加算した信号を模擬速度信号とし、前記模擬速度信号を積分して模擬位置信号を演算する模擬位置制御ループ部を有し、
前記模擬速度信号の符号が変化したときに所定のトルク補正信号を前記モータトルク指令信号に加算することを特徴とする請求項1記載のサーボ制御装置。
【請求項1】
位置指令信号から演算した位置フィードフォワード信号と速度フィードフォワード信号とトルクフィードフォワード信号のうち、前記位置フィードフォワード信号からモータ位置信号を減算した信号に対して位置制御を行う位置制御器と、前記位置制御器の出力に前記速度フィードフォワード信号を加算し、モータ速度信号を減算した信号に対して速度制御を行う速度制御器とを備え、前記速度制御器の出力に前記トルクフィードフォワード信号を加算した信号をモータトルク指令信号として出力することにより駆動対象機械を駆動するサーボ制御装置において、
位置指令信号を微分することにより速度のフィードフォワード信号を演算する微分器と、
前記微分器による演算値を微分すると共に前記駆動対象機械の総イナーシャを乗算する演算器と、
前記演算器による演算値から駆動対象機械の共振周波数成分を減衰し、反共振周波数成分を増幅することによりトルクのフィードフォワード信号を演算する振動抑制フィルタとを備えたサーボ制御装置。
【請求項2】
前記位置フィードフォワード信号から模擬位置信号を減算した信号に対して前記位置制御器と同様の演算を行う第2位置制御器を備え、前記第2位置制御器の出力に前記速度フィードフォワード信号を加算した信号を模擬速度信号とし、前記模擬速度信号を積分して模擬位置信号を演算する模擬位置制御ループ部を有し、
前記模擬速度信号の符号が変化したときに所定のトルク補正信号を前記モータトルク指令信号に加算することを特徴とする請求項1記載のサーボ制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2009−70396(P2009−70396A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−286520(P2008−286520)
【出願日】平成20年11月7日(2008.11.7)
【分割の表示】特願2003−418459(P2003−418459)の分割
【原出願日】平成15年12月16日(2003.12.16)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年11月7日(2008.11.7)
【分割の表示】特願2003−418459(P2003−418459)の分割
【原出願日】平成15年12月16日(2003.12.16)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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